(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
<動作支援装置の全体構成>
図1及び
図2に、本実施の形態の動作支援装置1を適用した歩行支援装置100の全体を示す。
図3は、動作支援装置1についての
図1のA―A線矢視断面図である。なお、
図1では、移動部材が最も基端側に位置する状態の各部を実線で示し、支柱部24を終端側に伸長した状態のハンドル部26、付勢部材70を破線で示す。ただし、
図1及び
図2において、付勢部材70の本体部分等、移動部材の移動により位置や形状が変化しない部材については、便宜上実線で示す。また、
図1においては、内部の構造を説明できるよう、最も基端側に位置する支柱部24の内部等のように一部の構造を透過させて図示している。ここで、基端側と終端側とは、動作支援装置1全体における装置の基体10の側を基端側といい、基体10から延出した先端側を終端側という。基端側と終端側とのどちらが基準となるかによって、移動部材20は、その移動方向を示される。
図1及び
図2では、基端側を動作支援装置1の下側、終端側を動作支援装置1の上側としているが、動作支援装置1がどのような動作を支援するかの目的に応じて、基端及び終端を水平方向に配置したり、基端及び終端を水平方向に対して傾斜する方向に配置してもよい。
【0012】
動作支援装置1は、荷物等の荷重を付与する無生物を装置により行われる昇降動作などの移動動作を支援することができる。動作支援装置1が歩行支援装置100に用いられた場合には、ユーザが着座状態から立ち上がる際の立ち上がりを支援する機能を有する。歩行支援装置100では、動作支援装置1は、例えば、使用者の立ち上がりやしゃがみ込み等の、動作支援の対象である使用者が動作する際の荷重を、昇降する移動部材20に接続された支柱部24、支柱部24に取り付けられたハンドル部26で受けて、対象物の動作を支援する。なお、支援対象を使用者としたが、これに限らず、動作可能な対象となりうる物であればどのような物を動作支援する対象としてもよい。また、支柱部24及びハンドル部26はフレーム21を構成する。支柱部24は、ハンドル部26を支持し、また、ハンドル部26を移動させる。歩行支援装置100は、ハンドル部26に腕や上半身などを載置することで、ユーザに使用される。
【0013】
動作支援装置1は、基体10、移動部材20、駆動部材40、伝達部材50、付勢部材70を有する。本実施の形態の動作支援装置1では、移動部材20は、駆動部材40の駆動によって基体10に対して昇降し、フレーム21を介してかかる使用者による荷重に対しては、昇降しないように構成される。
【0014】
本実施の形態の動作支援装置1は、着座状体のユーザが基端側位置にあるハンドル部26に上半身を預けた状態において、動作支援装置1の駆動部材40を駆動させる。すると、移動部材20は、終端側である上端側に移動し、これに伴い移動部材20に支柱部24を介して固定されたハンドル部26は、ユーザによる荷重がかかった状態で上昇する。このとき、ハンドル部26は、駆動部材40の駆動力と付勢部材70の付勢力とを受けて上昇することにより、ユーザが上半身を預けることで付加される荷重やハンドル部26の重量により負荷される荷重に抗して終端側に移動する。そのため、ユーザは、ハンドル部26に乗せた上半身が上昇することになり、立ち上がることが容易となる。
【0015】
また、ハンドル部26を下降する場合には、移動部材20を終端側から基端側へと移動させるため、駆動部材40によるスピンドル58の回転を、上昇方向とは逆方向にする。すると、移動部材20は、付勢部材70の付勢力に抗して、基端側に移動する。そのため、付勢部材70が抵抗になるので、移動部材20に、ユーザが体重を掛けた状態或いは荷物が載置された際などの急降下を防止できる。
【0016】
<基体10の構成>
基体10は、移動部材20の昇降移動に基準となる部材である。基体10は、移動部材20、駆動部材40および伝達部材50を支える土台となる。
基体10は、本実施の形態では、平面視で略U字状に形成されている。基体10は、使用者側が凹状となるように設けられる。基体10は、基体10がユーザを囲んだ状態で、基体10の内側でユーザが歩行できる空間を有している。
基体10には、上方に延在するレール部14が取り付けられる。
【0017】
また、本実施の形態の基体10には、基体10の移動を補助する基体移動補助部材12が固定されている。基体10は、基体移動補助部材12により移動可能である。
基体移動補助部材12は、基体10の移動を円滑に行わせる部材である。基体移動補助部材12は、例えば、キャスター等の転動部材であり、基体10の下面に取り付けられる。転動部材は、基体10を移動すると転動し、基体10の移動を円滑に行わせる。
【0018】
<移動部材20の構成>
移動部材20は、基端側と終端側の間を移動することにより、基体10に対して昇降移動する。移動部材20は、駆動部材40の駆動力により移動する。移動部材20は、駆動部材40から駆動力を受けて移動する部材であるが、使用者が動作する際の荷重を受ける部材の一部であってもよく、フレーム21の一部、或いは、フレーム21と一体であってもよい。移動部材20は、本実施の形態では、ナット部材25を有し、伝達部材50が有するスピンドル58の軸周り方向の回転によって基端側と終端側の間を移動する。移動部材20は、移動部材20の外側に支柱部24が配置され、移動部材20の内側においては、伝達部材50を介して、駆動部材40により移動部材20が移動可能に構成されている。
【0019】
支柱部24は、レール部14に対して軸方向に相対移動可能に設けられ、上端にハンドル部26が固定される。支柱部24は、筒状に形成され、レール部14の外側に配置されている。支柱部24は、移動部材20がレール部14に対して移動することによって移動するように構成されていれば、レール部14の内側に設けられてもよい。移動部材20が基端側と終端側の間を移動することにより、支柱部24は、レール部14の外周でレール部14の延在方向に沿って移動する。この支柱部24の移動とともに、ハンドル部26が昇降する。支柱部24は、レール部14に設けられた軸方向に延びる被係合部と係合して支柱部24が軸周り方向に回転が抑制され、軸方向に移動できるように構成されてもよく、例えば、レール部14が角柱状の外面を有し、支柱部24の内側にレール部14の外周の凸角と係合する角柱状の内部空間が設けられていてもよい。支柱部24は、複数の筒状の構成部材から構成されて、一部が移動することにより、
図1に示すように伸長した状態とすることができる。
図1において、複数の構成部材の間の繋ぎ目は省略している。
【0020】
移動部材20は、本実施の形態では、レール部14内を、レール部14に沿って長手方向に移動自在に摺動するスライダーである。移動部材20は、レール部14内において、レール部14の内壁によってレール部14の長手方向以外の方向への移動を規制された状態で配置されている。移動部材20は、レール部14の軸方向に延びる突条(例えば、外周の角柱状の角)と係合する係合部を有してもよい。
本実施の形態では、
図3に示すように、移動部材20に取り付けられた支柱部24とレール部14との間に、軸方向と直交する方向において、摺動可能な程度に間隔が設けられている。
図3に示すように、移動部材20は、外周が横断面で四角形であり、レール部14が四角形の内部空間を有する。移動部材20は、レール部14によって軸周り方向の回転が抑制されれば、レール部14の軸方向に延びる切欠きに移動部材20の突部が係合しながら摺動することで、レール部14の軸方向に延びる被係合部との係合によってレール部14の軸周り方向の回転が抑制された状態で移動するように構成できる。
【0021】
移動部材20は、
図1に示すように、レール部14の上端側では、上端側移動規制部141により上端側への移動を規制され、下端側では、基体10の下端規制部で下端側への移動を規制される。上端側移動規制部141は、レール部14において移動部材20を案内する案内部分を上端側で閉塞する。
【0022】
なお、レール部14は、後述するスピンドル58の軸周りの回転を抑制して、スピンドル58の長手方向(レール部14の延在方向)に移動部材20を案内する。また、レール部14は、移動部材20を、スピンドル58の全長にわたって回転を抑制しつつ移動させるために、スピンドル58の長さに対応した長さを有する。
本実施の形態では、
図3に示すように、移動部材20から突出し、移動部材20に支柱部24を接続するための突出部22aが、レール部14の軸周り方向において、レール部14と干渉するように構成されている。
これにより、
図1及び
図3に示す移動部材20は、回転することなく、スピンドル58及びレール部14の軸方向へと移動する。具体的には、レール部14の内側から、スピンドル58及びレール部14の軸方向に延びるスリット142より外側へ突出する突出部22aに支柱部24が止着部材としてのボルト23に止着されることにより、ナット部材25と支柱部24とが接続されて、その突出部22aがスリット142の端部と接触することで回転規制されている。なお、移動部材20は、レール部14の軸周り方向の回転が抑制された係合を維持した状態で昇降方向に案内される係合構造を、レール部14とで構成することにより、安定した昇降をすることができる。
【0023】
移動部材20は、伝達部材50に接続される。移動部材20は、駆動部材40が駆動した際に、伝達部材50を介して駆動力が伝達されて移動するように、伝達部材50と接続される。本実施の形態では、移動部材20は、駆動部材40の駆動により、直線状に移動するように伝達部材50と接続される。
【0024】
具体的には、移動部材20は、スピンドル58上に設けられ、スピンドル58の回転によって、レール部14の軸方向と同じ方向であるスピンドル58の軸方向に沿って移動するナット部材25を有する。移動部材20は、ナット部材25を介して、伝達部材50のスピンドル58に螺合することで接続される。
【0025】
ナット部材25は、スピンドル58の回転によって、レール部14で上下方向に移動可能に案内された移動部材20を昇降させる。移動部材20がレール部14内で、スピンドル58の基端側と終端側の間を移動することにより、フレーム21は移動する。
ナット部材25(
図1及び
図3参照)は、移動部材20に軸方向及び軸回りの方向への移動を規制して固定されている。本実施の形態では、ナット部材25の外周を多角形状に形成して移動部材20に固定されている。
ナット部材25は、回転規制された状態でスピンドル58と螺合して、スピンドル58の軸周り回転によりスピンドル58の軸方向に移動する。これにより、ナット部材25の移動に伴って、ナット部材25に接続された移動部材20が移動し、ひいては移動部材20に接続されるフレーム21に接続された対象物としての使用者が移動する。なお、ナット部材25と移動部材20とは、一体であってもよい。例えば、移動部材20にスピンドル58と螺合するねじ溝を有する貫通孔を形成し、このねじ溝をナット部材25としてもよい。
本実施の形態では、ナット部材25は、雌ねじ部を有しており、雄ねじ部を有するスピンドル58と螺合して、スピンドル58の軸周り回転によりスピンドル58の軸方向に移動する。
【0026】
<付勢部材70の構成>
付勢部材70は、基体10と移動部材20とに接続する。本実施の形態の付勢部材70は、移動部材20の移動方向に沿って移動部材20を付勢する。付勢部材70は、基体10と移動部材20のそれぞれに接続される。付勢部材70は基体10及び移動部材20のうちの一方に一端側が接続され、他端側で、基体10及び移動部材20のうちの他方に対して接続される。
図1及び
図2に示す付勢部材70は、基体10と移動部材20に接続されるハンドル部26とのそれぞれに固定され、基体10とハンドル部26との間に配置されている。
付勢部材70は、移動部材20が終端側つまり上端側から、基端側つまり下端側に移動するときに収縮し、移動部材20が基端側から終端側に移動するように伸長して移動部材20を付勢する。付勢部材70は、基体10に対して、移動部材20を上昇方向に付勢する。付勢部材70は、移動部材20を下降させる方向にかかる外力に対抗する方向に付勢する。
【0027】
付勢部材70は、伸縮する機能を有し、伸長することによって移動部材20を上昇方向に付勢するものであればどのような構成でもよい。付勢部材70は、コイルバネ、ガススプリングエアダンパー、オイルダンパー、或いはエアダンパー等のように両端部が互いに離間する方向に付勢される構成のダンパーであってもよい。本実施の形態の付勢部材70は、本実施の形態では、一端から他端が離間する方向に付勢されたガスダンパーであり、ガスダンパーにより移動部材20を上方に付勢している。
【0028】
<駆動部材40の構成>
図4は、
図1に示す駆動部材40及び伝達部材50の説明に供する図であり、
図1に示す駆動部材40と伝達部材50の拡大図である。なお、
図4では、終端側及び基端側に延びる回転軸を中心に右側を断面で示し、左側を駆動部材40のモータのステータ44及び基体10を断面で示した部分断面図で示す。
【0029】
駆動部材40は、移動部材20を基体10に対して昇降させる駆動力を発生する。駆動部材40は、駆動することにより、減速機等を含む伝達部材50を介して接続された移動部材20を基端側と終端側との間で移動させて、移動部材20に接続されるフレーム21を昇降させる。駆動部材40は、電動機あるいは発動機等のそれ自体で駆動力を発生してもよく、また、水力、手動力等の電力以外の外的負荷が加わることで駆動力を発生してもよい。なお、駆動部材40により移動する移動部材20は、フレーム21およびハンドル部26を含めて移動部材と認識することもできる。
【0030】
本実施の形態では、駆動部材40は、モータを有する。
図4に示すように、モータは、ロータ46の出力軸42が上下方向に向けて位置するように、ステータ44が基体10の中央部分の下面に取り付けられている。モータは、図示しないバッテリなどの駆動源に接続され、この駆動源からの電力により駆動し、伝達部材50を介して移動部材20を移動する。
【0031】
なお、駆動部材40を手動により駆動力を発生する駆動部材40とする場合、駆動部材40としては、操作者により操作可能なハンドル或いはレバー等の操作部材を介した操作を駆動力に変換する部材が挙げられる。
【0032】
<伝達部材50の構成>
図1に示す伝達部材50は、移動部材20に対して駆動部材40の駆動力を移動部材20に伝達する。
伝達部材50は、駆動部材40と移動部材20とを接続し、駆動部材40の駆動力により移動部材20を昇降させる。
伝達部材50は、本実施の形態では、駆動部材40の回転力を移動部材20に、移動部材20の移動する方向への駆動力に変換して伝達する。
【0033】
伝達部材50は、回転軸としてのスピンドル58を有し、スピンドル58の回転により、移動部材20に駆動部材40の回転力を伝達する。本実施の形態では、伝達部材50は、駆動部材40の回転力を移動部材20に伝達して移動部材20を移動させる際に、モータにより回転するスピンドル58を用いたが、駆動部材40の回転力を伝達して移動部材20を基端側と終端側との間で移動させる構成であればどのように構成されてもよい。例えば、基端側と終端側とに設けたスプロケットにチェーン或いはベルトを巻回し、このチェーン或いはベルトに移動部材20を固定して、チェーン或いはベルトの周回に伴い、基端側と終端側との間を移動部材20が移動するように構成してもよい。また伝達部材50は、ワイヤーや伸縮部材などの駆動力を伝達する機能を有する部材を用いてもよく、遊星ギアまたはクラッチ等を介して伝達するように構成してもよい。ワイヤーやチェーンを用いる場合、例えば、歩行支援装置100において、終端側及び基端側の少なくとも一方に設けたプーリー或いはガイド部材等の方向転換部材を設けて、ワイヤーやチェーンを巻回する。このワイヤーやチェーンの一部に移動部材20を固定し、ワイヤー等自体を駆動部材40により延在方向の一方または他方に移動させる構造とすることで実現できる。ベルトを用いた場合も同様である。伸縮部材を用いる場合では、伸縮部材において基端側部分に対して伸縮する終端側部分に移動部材20を固定し、伸縮部材を伸縮させることで実現できる。このように、伝達部材50は、駆動部材40の回転力をワイヤーの押し戻し、伸縮部材の伸縮、或いは、遊星ギアを介して変換した回転力を駆動力として移動部材20に伝達するようにしてもよい。
【0034】
図5は、基端側から見た伝達部材50の要部構成を模式的に示す図である。なお、
図5では、伝達部材50のブレーキスプリング60は、便宜上ハッチングを付した領域で示される。また、
図6及び
図7は、駆動部側回転部材52の説明に供する図であり、
図6(a)は、駆動部側回転部材52を動作支援装置1の上面側から見た駆動部側回転部材52の平面図であり、
図6(b)は、駆動部側回転部材52を動作支援装置1の正面側から見た駆動部側回転部材52の側面図である。
図6(c)は、
図6(a)のB−B線部分断面図であり、
図6(d)は
図6(a)において矢印Cから見た部分を示す図である。また、
図7(a)は、駆動部側回転部材52を動作支援装置1の底面側から見た駆動部側回転部材52の背面図であり、
図7(b)は、
図7(a)のD−D線断面図であり、
図7(c)は、
図7(a)のE−E線断面図である。
図8は、移動部材側回転部材54の説明に供する図であり、
図8(a)は、移動部材側回転部材54を動作支援装置1の上面側から見た移動部材側回転部材の平面図であり、
図8(b)は、移動部材側回転部材54の側面図であり、
図8(c)は移動部材側回転部材54を動作支援装置1の底面側から見た移動部材側回転部材の背面図である。
【0035】
伝達部材50は、
図1及び
図3〜
図8に示すように、駆動部側回転部材52、移動部材側回転部材54、スピンドル58及び、ブレーキスプリング60を有する。
【0036】
駆動部側回転部材52は、伝達部材50において、駆動部材40側に設けられ、駆動部材40の駆動により回転する。
駆動部側回転部材52は、駆動部材40のモータの出力軸42に同一軸で接続され、出力軸42の回転に伴い回転する。
駆動部側回転部材52は、回転する際に、移動部材側回転部材54に接続されて、移動部材側回転部材54に回転力を伝達する。駆動部側回転部材52から回転力が伝達された移動部材側回転部材54は、駆動部側回転部材52と共に供回する。
具体的には、駆動部側回転部材52は、駆動部側押圧部を有している。駆動部側押圧部は、駆動部側第1押圧部521と駆動部側第2押圧部522とを有している。駆動部側回転部材52は、駆動部側第1押圧部521と駆動部側第2押圧部522との間に空間が形成され、本実施形態では、
図6及び
図7に示すように、出力軸42(
図1及び
図5参照)が中央の出力軸接続部520aで接合された円盤状の駆動部側本体520の外周縁部に径方向内側に切欠かれた形状の切欠部として設けられている。
図6及び
図7おいて、駆動部側回転部材52には、駆動部側本体520において出力軸42と同軸上の中心軸を挟んだ2箇所を切り欠いて形成された主切欠部52a及び補助切欠部52bを有する。
【0037】
主切欠部52aにより形成された周方向に長さを有する空間内には、移動部材側回転部材54の移動部材側主押圧部54aが周方向で回動可能に配置される。また補助切欠部52bにより形成された周方向に長さを有する空間内には、移動部材側回転部材54の移動部材側補助押圧部54bが周方向で回動可能に配置される。
主切欠部52aは、円弧状の空間を形成し、また、周方向で離間する駆動部側第1押圧部521と駆動部側第2押圧部522とを有する。
【0038】
駆動部側第1押圧部521と駆動部側第2押圧部522は、
図5に示すように、駆動部側回転部材52の回動により周方向に移動して、ブレーキスプリング60とともに移動部材側主押圧部54aを押圧して周方向に移動させ、移動部材側回転部材54を移動する。
駆動部側第1押圧部521と駆動部側第2押圧部522は、モーメントを移動部材側へ伝達できるように、駆動部側本体520の回転方向の異なる方向にそれぞれ面して設けられているが、本実施形態においては、駆動部側本体520の外周から軸と平行に、且つ、駆動部側本体520の径方向外側に突出した面状に形成されている。駆動部側第1押圧部521と駆動部側第2押圧部522は、ブレーキスプリング60および移動部材側主押圧部54aの移動方向、つまり、回転方向である周方向で重なる位置に位置する。駆動部側第1押圧部521と駆動部側第2押圧部522は、移動部材側回転部材54を回転させる際に、駆動部側回転部材52が駆動部材40の駆動によって回転して、移動部材側第1押圧部541と第2押圧部542から離間した位置からいずれかと当接した位置まで移動して、ブレーキスプリング60を介して移動部材側主押圧部54aを押圧する。駆動部側第1押圧部521と駆動部側第2押圧部522は、移動部材側第1押圧部541または第2押圧部542に駆動する力を伝達するために、所定の大きさで構成されている。
【0039】
駆動部側第1押圧部521は、周方向で、ブレーキスプリング60の一端部(以下、「第1端部」という)61を挟み移動部材側主押圧部54aの移動部材側第1押圧部541と対向する。駆動部側第1押圧部521は、駆動部40の駆動によって回転し、移動部材側回転部材54を回転させる際に、ブレーキスプリング60と移動部材側回転部材54とを同時または略同時に回転させる。
駆動部側第2押圧部522は、周方向で、ブレーキスプリング60の他端部(以下、「第2端部」という)62を挟み移動部材側主押圧部54aの移動部材側第2押圧部542と対向する。駆動部側第2押圧部522についても、駆動部40の駆動によって回転し、移動部材側回転部材54を回転させる際に、ブレーキスプリング60と移動部材側回転部材54とを同時または略同時に回転させることとなる。
【0040】
駆動部側第1押圧部521は、駆動部側回転部材52の一方向の回動により同一周方向に移動して移動部材側第1押圧部541を押圧する。
駆動部側第2押圧部522は、駆動部側回転部材52の一方向とは逆向きの回動により同一周方向に移動して移動部材側第2押圧部542を押圧する。
【0041】
補助切欠部52bは、形成された周回り方向に長さを有する空間を形成し、主切欠部52aと同様に円弧状をなす。補助切欠部52bは、周方向で離間する駆動部側第3押圧部523と駆動部側第4押圧部524とを有する。駆動部側第3押圧部523と駆動部側第4押圧部524は、移動部側本体520の外周から軸と平行に、且つ、移動部材側回転部材54側に交差するように突出した面状に形成されている。駆動部側第3押圧部523と駆動部側第4押圧部524は、移動部材側補助押圧部54bの移動方向、つまり、回転方向である周方向で重なる位置に位置する。駆動部側第3押圧部523と駆動部側第4押圧部524は、駆動部側第1押圧部521と駆動部側第2押圧部522と略同一の形状を有している。駆動部側第1押圧部521がブレーキスプリング60を介して移動部材側押圧部54aを押圧するのと、駆動部側第3押圧部523が移動部材側第3押圧部543を押圧するのが、ほぼ同時となるように、移動部材側補助押圧部54bと補助切欠部52bとの間隔が設けられている。
【0042】
駆動部側第3押圧部523と駆動部側第4押圧部524は、
図5に示すように、駆動部側回転部材52の回動により周方向に移動して移動部材側補助押圧部54bを押圧して周方向に移動させ、移動部材側回転部材54を移動する。駆動部側第3押圧部523と駆動部側第4押圧部524は、駆動部側第1押圧部521と駆動部側第2押圧部522が移動部材側主押圧部54aを押圧すると同時に、移動部材側補助押圧部54bを押圧するように形成される。
【0043】
なお、補助切欠部52bは、本実施の形態では、主切欠部52aと回転中心で点対称の位置に配置され、主切欠部52aよりも周方向の長さを短くしている。
【0044】
駆動部側第3押圧部523と駆動部側第4押圧部524は、フランジ部の外周から軸と平行に移動部材側回転部材54側に突出した面状に形成されている。
駆動部側第3押圧部523は、周方向で、移動部材側補助押圧部54bの移動部材側第3押圧部543と対向する。
駆動部側第4押圧部524は、周方向で、移動部材側補助押圧部54bの移動部材側第4押圧部544と対向する。
【0045】
駆動部側第3押圧部523は、駆動部側回転部材52の一方向の回動により同一周方向に移動して移動部材側第3押圧部543を押圧する。
【0046】
駆動部側第4押圧部524は、駆動部側回転部材52の一方向とは逆向きの回動により同一周方向に移動して移動部材側第4押圧部544を押圧する。
【0047】
移動部材側回転部材54は、移動部材20側に、駆動部側回転部材52の回転力を移動部材20に駆動力として伝達する。
移動部材側回転部材54は、移動部材20と駆動部側回転部材52とを接続する。
移動部材側回転部材54は、本実施の形態では、駆動部側回転部材52の回転により回転する部材である。移動部材側回転部材54は、回転軸であるスピンドル58に接続され、駆動部側回転部材52の回転によりスピンドル58を回転する。移動部材側回転部材54は、本実施の形態では、スピンドル58と同一軸で回転するように配置される。
また移動部材側回転部材54は、移動部材20側からの力の入力、つまり、スピンドル58の回転によっても回転可能な部材である。
【0048】
図8に示す移動部材側回転部材54は、移動部材側主押圧部54a、移動部材側補助押圧部54b、移動部材側接続部54c及び回転部材本体540を有する。
移動部材側回転部材54では、回転部材本体540は、駆動部側回転部材52と対向して配置される。回転部材本体540は板状である。移動部材側主押圧部54aと移動部材側補助押圧部54bは、回転部材本体540の駆動部側回転部材52側の面において、駆動部側回転部材52に向って突出して設けられ、反対側の面の中央部に、移動部材側接続部54cが突出して設けられている。
【0049】
移動部材側主押圧部54aは、周方向で離間する両端部に移動部材側第1押圧部541及び移動部材側第2押圧部542を有する。移動部材側第1押圧部541及び移動部材側第2押圧部542は、スピンドル58の回転による移動部材側回転部材54の回転によって、回転部材本体540の軸周り方向に移動して、それぞれブレーキスプリング60の第1端部押圧を押圧したり、第2端部62を押圧する。ブレーキスプリング60の第1端部押圧及び第2端部62と、駆動部側第1押圧部521と駆動部側第2押圧部522とのそれぞれの間には、駆動部材40から駆動部側回転部材52に駆動力が入力されていない状態では、間隔が設けられている。このため、スピンドル58の回転によって移動部材側第1押圧部541及び移動部材側第2押圧部542が移動した場合には、ブレーキスプリング60の第1端部押圧または第2端部62がその間隔を、駆動部側第1押圧部521または駆動部側第2押圧部522に近接するように移動して、ブレーキスプリング60のブレーキ力が発揮されることになる。なお、ブレーキスプリング60の第1端部押圧または第2端部62は、このような移動をすると、ブレーキスプリング60が径変化をするように変形して、ブレーキ作用を生じる。
【0050】
移動部材側補助押圧部54bは、周方向で離間する両端部に移動部材側第3押圧部543及び移動部材側第4押圧部544を有する。移動部材側第3押圧部543及び移動部材側第4押圧部544は、駆動部側回転部材52及び移動部材側回転部材54の相対的な移動により、駆動部側第3押圧部523及び駆動部側第4押圧部524に押圧されたりする。
【0051】
移動部材側接続部54cは、スピンドル58の基端部が直交して接合され、移動部材側主押圧部54aと移動部材側補助押圧部54bは、スピンドル58を中心に周方向に移動する。 移動部材側接続部54cは、本実施の形態では筒状に形成され、スピンドル58が内嵌して接合されている。
【0052】
なお、移動部材側接続部54cと移動部材側主押圧部54a及び移動部材側補助押圧部54bを連結する回転部材本体540の形状は、移動部材側回転部材54が移動部材20側に駆動部側回転部材52の回転力を移動部材20に駆動力として伝達するものであれば、どのように形成されてもよい。回転部材本体540は、軸方向の厚みを短くするため、駆動部側本体520と同様に、板状であることが好ましく、
図8に示すように本実施の形態の回転部材本体540は円盤状に形成される。
【0053】
本実施の形態では、駆動部材40は、動作支援装置1の基端側に配置され、モータの出力軸42とスピンドル58とが同軸上で、駆動部側回転部材52及び移動部材側回転部材54を介して接続されている。
【0054】
スピンドル58は、モータの出力軸42の回転により回転するものである。
スピンドル58は、移動部材20の移動方向に延びるように配置される。スピンドル58は、本実施の形態では、レール部14内に、レール部14の延在方向に沿って配置され、ナット部材25に螺合される。
スピンドル58は、レール部14内で駆動部材40のモータの出力軸42と同一軸上に配置されているが、これに限らず、同一軸上で配置されていなくてもよく、駆動部材40のモータの回転力が移動部材20に駆動力として伝達されるようにギアなどを介してモータの出力軸42と平行に配置したり、交差する方向に配置したりしてもよい。
【0055】
<伝達部材50のブレーキスプリング60>
ブレーキスプリング60は、駆動部側回転部材52と移動部材側回転部材54とに係合する。ブレーキスプリング60は、駆動部側回転部材52の回転によって移動部材側回転部材54と共に回転する。すなわち、ブレーキスプリング60は、駆動部材40の回転を受けた駆動部側回転部材52の回転である駆動部材40側からの回転により回転する。
【0056】
ブレーキスプリング60は、駆動部材40側からの回転で移動部材側回転部材54と一体的に回転することにより、駆動部材40の回転力による移動部材側回転部材54の回転を阻害しない。
また、ブレーキスプリング60は、移動部材側回転部材54の回転によっては当該回転に対する制動力を発生させる。例えば、ブレーキスプリング60は、移動部材の回転を受けた移動部材側回転部材54側の回転、ここでは移動部材20側からの回転を受けると、この回転を止めるように作用する。ブレーキスプリング60は、移動部材20側からの回転を制動して、駆動部側回転部材52側には伝達しない。これにより、移動部材20側からの回転は、駆動部側回転部材52を介して駆動部材40に伝達することがなく、移動部材側からの回転により駆動部側回転部材52は回転することがない。
【0057】
ブレーキスプリング60は、駆動部材40の非駆動状態において移動部材20に入力される力による移動部材側回転部材54の回転によって移動部材20の移動が規制される。また、ブレーキスプリング60による移動部材20の当該規制の状態で、移動部材側回転部材54の当該回転の回転方向と同方向に、駆動部側回転部材52の回転によって移動部材側回転部材54が回転するように、駆動部側回転部材52を回転させることで当該規制状態が解除されて移動部材20が移動する。
【0058】
ブレーキスプリング60は、駆動部側回転部材52及び移動部材側回転部材54のうち一方側から入力される力に対しては制動力を発生させず、他方側に伝達し、他方側から入力される力に対しては、制動力を発生して、一方側に伝達しない。
本実施の形態では、一方側は、駆動部材40側であり、他方側は、移動部材20側であり、他方側から入力される力は、移動部材20を介して入力される外力である。付勢部材70は移動部材20を上昇方向にするので、移動部材20を介して入力される外力は、付勢部材70の付勢力に抗して入力される力であり、この力が移動部材20側から入力されると、制動力を発生する。
【0059】
ブレーキスプリング60は、拡縮可能な外径或いは内径である径を有し、径が拡径或いは縮径する等のように径が変化することにより制動力を発揮する。ブレーキスプリング60は、駆動部材40側及び移動部材20側のうち一方からの力の入力に対しては拡径せず、他方からの力の入力に対しては拡径する。
ブレーキスプリング60は、他方からの力の入力で拡径することにより、他方から入力される力に対して制動力を発生する。ブレーキスプリング60が拡縮することにより、基体10に対して回転しない部材との係合を生じることにより、ブレーキスプリング60は制動部材として機能する。
ブレーキスプリング60は、拡径した場合、外部と接触して摩擦抵抗による制動力を発生する。ブレーキスプリング60は、拡径しない場合、外部とは接触せずに係合する駆動部側回転部材52及び移動部材側回転部材54と供回りする。
【0060】
ブレーキスプリング60が拡径した際に接触する外部とは、本実施の形態では、
図4に示すように、ブレーキスプリング60を収容するハウジング17である。ハウジング17は、基体10に設けられる。
ブレーキスプリング60は、移動部材側回転部材54の回転によって拡径する。拡径したブレーキスプリング60の外径、つまりブレーキスプリング60の外面60aが、ハウジング17の内面17aと摩擦接触して、ブレーキスプリング60自体の回転が規制され、移動部材側回転部材54の回転を制動する。
本実施の形態では、ブレーキスプリング60は、1つのトーションばねにより構成される。ブレーキスプリング60は、付勢部材70の付勢力や移動対象物からの荷重によって移動部材20側から外力が入力されたときに、移動部材側回転部材54の回転によって制動力を発揮することができる。
【0061】
図9に示すようにブレーキスプリング60は、コイル部63の両端にそれぞれコイル部63の巻回方向に対して折曲した一端部である第1端部61と他端部である第2端部62を有する。本実施の形態のブレーキスプリング60の第1端部61及び第2端部62は、コイル部63の巻回方向に対して内側に折曲して形成されているが、外方向に向けて折曲した構成としてもよい。ブレーキスプリング60は、第1端部61及び第2端部62をコイル部63の巻回方向で離間させることにより、ブレーキスプリング60は変形して、コイル部63は拡径する。また、第1端部61及び第2端部62をコイル部63の巻回方向に沿って接近させると、ブレーキスプリング60は変形して、コイル部63は縮径する。
【0062】
ブレーキスプリング60は、ハウジング17内に、駆動部側回転部材52と移動部材側回転部材54との間に、回転軸を中心に周方向に回動自在に配置され、周方向に回動した際に、第1端部61及び第2端部62のそれぞれが駆動部側回転部材52と移動部材側回転部材54とに係合可能に配置される。ブレーキスプリング60は、本実施形態においては、移動部材側回転部材54と係合した状態として設けられている。
【0063】
図5に示すように、ブレーキスプリング60の第1端部61は、移動部材側第1押圧部541と駆動部側第1押圧部521との間に配置され、ブレーキスプリング60の第2端部62は、移動部材側第2押圧部542と駆動部側第2押圧部522との間に配置されている。
第1端部61と第2端部62とが接近する方向に移動すると、ブレーキスプリング60のコイル部63(
図9参照)は縮径し、第1端部61と第2端部62とが離間する方向に移動すると、ブレーキスプリング60のコイル部63は拡径する。
【0064】
なお、ブレーキスプリング60は、トーションばねにより構成しているが、これに関わらず、平線、板ばね等により構成してもよく、また、コイル部63をそれぞれ有する複数のトーションばねにより構成してもよい。ブレーキスプリング60を平線で形成すれば、移動部材側第1押圧部541、駆動部側第1押圧部521、移動部材側第2押圧部542及び駆動部側第2押圧部522に対して線接触或いは面接触できるので、点接触よりも接触部分が大きくなる。これにより、移動部材側第1押圧部541、駆動部側第1押圧部521、移動部材側第2押圧部542及び駆動部側第2押圧部522がブレーキスプリング60に接触して押圧する際に、ブレーキスプリング60を確実に拡縮して制動力を発揮させたり、制動力を解除させたりすることができる。
【0065】
また、ブレーキスプリング60は、本実施の形態では拡径時に制動力を発揮する構成としたが、内径側に、縮径時に外面で摩擦接触する筒状部を設けて、ブレーキスプリング60の縮経時に制動力を発揮するように構成してもよい。
【0066】
<動作支援装置1の動作支援動作>
・駆動部側回転部材52側が回転駆動する場合
図10は、本発明の実施の形態に係る動作支援装置において駆動部側回転部材52の正回転動作を説明するために基端側から見た伝達部材50の要部構成を模式的に示す図である。
【0067】
図10(a)に示すように、ブレーキスプリング60の基準位置、ここでは、ブレーキスプリング60が押圧されていない状態を、例えば、移動部材20が基端側の位置(
図1においてハンドル部26を実線で示す位置)と終端側の位置(ハンドル部26を破線で示す位置)の中間の位置とする。
【0068】
この位置において、駆動部材40を駆動する。具体的には、駆動部材40のモータを一方、例えば正回転方向に駆動して、出力軸42を正回転で回転駆動する。すると、
図10(a)に示すように、出力軸42に接続される駆動部側回転部材52が、駆動部材40からの駆動力により、出力軸42と同方向(図では反時計回りである矢印D1方向)に回転駆動する。
【0069】
駆動部側回転部材52が反時計回りである矢印D1方向に回転すると、駆動部側回転部材52の駆動部側第1押圧部521がブレーキスプリング60の第1端部61に接近する方向に移動する。同時に、駆動部側回転部材52の駆動部側第3押圧部523が、移動部材側補助押圧部54bの移動部材側第3押圧部543に接近する方向に移動する。
【0070】
次いで、
図10(b)に示すように、駆動部側第1押圧部521が第1端部61を押圧し、駆動部側第3押圧部523が移動部材側第3押圧部543を押圧する。駆動部側第1押圧部521が第1端部61を押圧する場合では、ブレーキスプリング60には、駆動部側第1押圧部521の移動によりブレーキスプリング60のコイル部63が縮径する方向に押圧力が掛かる。
【0071】
次いで、駆動部側回転部材52は、駆動部側第1押圧部521で第1端部61を介して移動部材側第1押圧部541を押圧して、移動部材側主押圧部54aが周方向(矢印D2で示す方向)に移動し、移動部材側第2押圧部542で第2端部62を押圧する。同時に、駆動部側第3押圧部523が押圧する移動部材側第3押圧部543により移動部材側補助押圧部54bが周方向である矢印D2方向に移動する。
【0072】
これにより、ブレーキスプリング60は、拡径することなく駆動部側回転部材52とともに回転し、移動部材側回転部材54も供回りする。これにより、移動部材側回転部材54に接続されたスピンドル58は回転して、スピンドル58は、その外周に形成された雄ねじ部に螺合するナット部材25を回転させる。
【0073】
ナット部材25を有する移動部材20は、レール部14により、スピンドル58の回転方向である軸周りの移動が規制されているため、ナット部材25は、スピンドル58上をスピンドル58の軸方向に移動し、これに伴い移動部材20も移動する。
【0074】
移動部材20が、終端側に移動する場合には、移動部材20は、基体10に対して上昇する。これにより、ユーザが歩行支援装置100を使用して立ち上がる際の動作を行う際に、ハンドル部26を介して移動部材20に荷重が掛かっても、その荷重に抗して移動部材20を移動してハンドル部26を上昇させることにより、動作の支援を行うことができる。
【0075】
また、移動部材20は、上昇する方向に、付勢部材70に付勢されているので、駆動部材40の駆動とともに、ユーザの荷重に抗した付勢部材70の付勢力により、ユーザの立ち上がり動作及び歩行を支援できる。
【0076】
また、移動部材20の上方への移動は、付勢部材70による上方への付勢力により補助されるので、移動部材20を上昇させるための駆動部材40のモータの回転駆動時において、スピンドル58とナット部材25との螺合部分に、螺合する軸と交差する荷重が加わりにくく、螺合部分にかかる負荷を減少できる。
【0077】
また、移動部材20の移動において移動方向に沿うスピンドル58或いはレール部14に対する負荷が軽減されるので、移動部材20のスムーズな移動が実現できる。ここでは、駆動部材40の駆動により移動部材20が基端側から終端側に移動する際には、付勢部材の付勢力により、駆動部材40の駆動力を低減しつつ安定して移動させることができる。つまり、付勢部材70は、付勢する方向である終端側への移動部材20の移動をアシストするので、移動部材20が付勢方向へ移動する際のモータの駆動力を小さくでき、モータへの電気的エネルギーも軽減できる。つまりは、モータに電気的エネルギーを供給するためにバッテリを搭載する構成に自由度を与えることができ、駆動部材40としての設計の範囲も広がるために、小型や軽量化も可能となる。
【0078】
図11は、本発明の実施の形態に係る動作支援装置において駆動部側回転部材52の逆回転動作を説明するために基端側から見た伝達部材50の要部構成を模式的に示す図である。
【0079】
駆動部材40のモータを逆方向に駆動する場合では、駆動部材40の回転駆動により、
図11(a)に示すように、駆動部材40の出力軸42に接続される駆動部側回転部材52は、基準位置から出力軸42と同方向(時計回りである矢印−D1方向)に回転する。
【0080】
駆動部側回転部材52が時計回りである矢印−D1方向に回転すると、駆動部側回転部材52の駆動部側第2押圧部522がブレーキスプリング60の他端部である第2端部62に接近する方向に移動する。同時に、駆動部側回転部材52の駆動部側第4押圧部524が、移動部材側補助押圧部54bの移動部材側第4押圧部544に接近する方向に移動する。
【0081】
次いで、
図11(b)に示すように、駆動部側第2押圧部522が第2端部62を押圧し、駆動部側第4押圧部524が移動部材側第4押圧部544を押圧する。駆動部側第2押圧部522が第2端部62を押圧する場合では、ブレーキスプリング60には、駆動部側第2押圧部522の移動によりブレーキスプリング60のコイル部63が縮径する方向に押圧力が掛かる。
【0082】
次いで、駆動部側回転部材52は、駆動部側第2押圧部522で第2端部62を介して移動部材側第2押圧部542を押圧して、移動部材側主押圧部54aが周方向(矢印−D2で示す方向)に移動し、移動部材側第1押圧部541で第1端部61を押圧する。同時に、駆動部側第4押圧部524が押圧する移動部材側第4押圧部544により移動部材側補助押圧部54bが周方向である矢印−D2方向に移動する。
【0083】
これにより、ブレーキスプリング60は、拡径することなく駆動部側回転部材52とともに回転し、移動部材側回転部材54も供回りする。これにより、移動部材側回転部材54に接続されたスピンドル58は逆回転である時計回りに回転して、その外周に形成された雄ねじ部に螺合するナット部材25を回転させる。
【0084】
ナット部材25を有する移動部材20は、レール部14により、スピンドル58の回転方向である軸周りの移動が規制されているため、ナット部材25は、スピンドル58上をスピンドル58の軸方向に移動し、これに伴い移動部材20も移動する。
【0085】
移動部材20が、基端側に移動する場合には、移動部材20は、基体10に対して下降する。
【0086】
これにより、動作支援装置1を使用してハンドル部26に凭れ掛かった対象物を下げる際の動作を行う際に、ハンドル部26を介して移動部材20に付勢部材70の付勢力より大きな荷重が掛かっても、その荷重に対して、付勢部材70の付勢力により対象物からの荷重を緩和した状態で、駆動部材40の駆動力により移動部材20を移動してハンドル部26を下降させることにより、動作の支援を行うことができる。また、動作支援装置1により対象物を上昇させる場合においても、ブレーキスプリング60によって付勢部材70の付勢力では移動部材20が上昇することがなく、移動部材20は、駆動部材40が駆動することにより、駆動部材40の駆動力と付勢部材70の付勢力とで移動部材20が移動する。
【0087】
・移動部材側回転部材54側が外力により回転駆動する場合
図12は、本発明の実施の形態に係る動作支援装置において移動部材側回転部材54の正回転動作を説明するために基端側から見た伝達部材50の要部構成を模式的に示す図である。
【0088】
例えば、
図12(a)に示すブレーキスプリング60の基準位置において、移動部材側回転部材54が、移動部材20を介してユーザの荷重等の外力を受けて矢印D2方向の反時計回りに回転する。
【0089】
すると、
図12(b)に示すように、移動部材側主押圧部54aの移動部材側第2押圧部542が矢印D2方向に回転して、ブレーキスプリング60の第2端部62に接近する方向に移動する。同時に、移動部材側補助部押圧部54bの移動部材側第4押圧部544が駆動部側第4押圧部524に接近する方向に移動する。
【0090】
次いで、移動部材側第2押圧部542は、第2端部62を押圧し、第2端部62が、移動部材側第2押圧部542に押圧されながら、移動部材側第2押圧部542とともに移動する。また、移動部材側第4押圧部544は駆動部側第4押圧部524を押圧する。
【0091】
このとき、ブレーキスプリング60の第1端部61には、移動部材側回転部材54側からの押圧力は掛からず、ブレーキスプリング60では、第1端部61と第2端部62とが周方向で離間するように移動する。これによりブレーキスプリング60には拡径する方向に押圧力が掛かり、変形して拡径する。
【0092】
拡径したブレーキスプリング60の外面60aは、
図12(b)に示すように、ハウジング17の内面17aに接触し、摩擦抵抗が発生する。
【0093】
この摩擦抵抗により、移動部材側第2押圧部542及び移動部材側第4押圧部544の押圧力に対する抵抗力が発生し、抵抗力が押圧力を上回ると、移動部材側第2押圧部542及び移動部材側第4押圧部544の移動が停止、つまり、移動部材側回転部材54の回転移動が停止する。これにより、駆動部側回転部材52側には、移動部材側回転部材54側からの押圧力は伝達されない。
【0094】
よって、駆動部材40の非駆動状態において、外力、つまり、移動部材20に入力される力により発生する移動部材側回転部材54の回転によって移動部材側回転部材54の回転が規制され、これによりスピンドル58の回転も規制されることにより、スピンドル58に螺合するナット部材25の移動が停止され、移動部材20自体の移動が規制される。
【0095】
図13は、本発明の実施の形態に係る動作支援装置において移動部材側回転部材54の逆回転動作を説明するために基端側から見た伝達部材50の要部構成を模式的に示す図である。
【0096】
例えば、
図13(a)に示すブレーキスプリング60の基準位置において、移動部材側回転部材54が、移動部材20を介してユーザの荷重等の外力を受けて矢印−D2方向の時計回りに回転する。
【0097】
すると、
図13(b)に示すように、移動部材側主押圧部54aの移動部材側第1押圧部541が矢印−D2方向に回転して、ブレーキスプリング60の第1端部61に接近する方向に移動する。同時に、移動部材側補助部押圧部54bの移動部材側第3押圧部543が駆動部側第3押圧部523に接近する方向に移動する。
【0098】
次いで、移動部材側第1押圧部541は、第1端部61を押圧し、第1端部61が、移動部材側第1押圧部541に押圧されながら、移動部材側第1押圧部541とともに移動する。また、移動部材側第3押圧部543は駆動部側第3押圧部523を押圧する。
【0099】
このとき、ブレーキスプリング60の第2端部62には、移動部材側回転部材54側からの押圧力は掛からず、ブレーキスプリング60では、第1端部61と第2端部62とが周方向で離間するように移動する。これによりブレーキスプリング60には拡径する方向に押圧力が掛かり、変形して拡径する。
【0100】
拡径したブレーキスプリング60の外面60aは、
図13(b)に示すように、ハウジング17の内面17aに接触し、摩擦抵抗が発生する。
【0101】
この摩擦抵抗により、移動部材側第1押圧部541及び移動部材側第3押圧部543の押圧力に対する抵抗力が発生し、抵抗力が押圧力を上回ると、移動部材側第1押圧部541及び移動部材側第3押圧部543の移動が停止、つまり、移動部材側回転部材54の回転移動が停止する。これにより、駆動部側回転部材52側には、移動部材側回転部材54側からの押圧力は伝達されない。
【0102】
よって、駆動部材40の非駆動状態において、外力、つまり、移動部材20に入力される力により発生する移動部材側回転部材54の回転によって移動部材側回転部材54の回転が規制され、これによりスピンドル58の回転も規制されることにより、スピンドル58に螺合するナット部材25の移動が停止され、移動部材20自体の移動が規制される。
【0103】
このように、移動部材20に外力、具体的には、ハンドル部26に掛かるユーザの体重或いはハンドル部26に荷物が載置された際など移動部材20が下降する方向或いは上昇する方向に外力が加わる場合でも、ハンドル部26の急上昇或いは急降下を防止できる。特に、移動部材20が下降する場合では付勢部材70の付勢力に抗することになるので、移動部材20を下降する方向に掛かる外力は、付勢部材70の付勢力よりも大きな外力である場合に、移動部材側回転部材54側の回転を規制することで、その下降を防止する。
【0104】
また、スピンドル58が回転しないため、スピンドル58とナット部材25とによる自己拘束機能によっても移動部材20の移動が抑制され、移動部材20は、停止した位置で保持される。
【0105】
<効果のまとめ>
付勢部材70が移動部材20を上昇方向に付勢し、ブレーキスプリング60が移動部材20に入力される力、例えば、ユーザの体重等によって移動部材20が下降するのを抑制するので、ユーザが移動部材20に体重を掛けても移動部材20が下がることなく、駆動部材40の駆動力で支持できる。これにより、駆動部材40によって駆動力を大きくすることなく、移動部材20を昇降させることができる。
【0106】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。