(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663405
(24)【登録日】2020年2月18日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】装着可能物体により決定空間へ安全にアクセスする方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20200227BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20200227BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
E05B49/00 K
B60R25/24
H04Q9/00 301B
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-192404(P2017-192404)
(22)【出願日】2017年10月2日
(65)【公開番号】特開2018-59395(P2018-59395A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2017年10月2日
(31)【優先権主張番号】16192418.8
(32)【優先日】2016年10月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】アルノー・カサグランデ
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・ヴェラスケス
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・デュク
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/107609(WO,A1)
【文献】
特開2016−030919(JP,A)
【文献】
特開2011−063939(JP,A)
【文献】
特開2001−027063(JP,A)
【文献】
特開2009−166550(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01152108(EP,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0265035(US,A1)
【文献】
特表2008−533436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
B60R 25/24
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレス信号通信を通じて、装着可能物体(3)により、アクセス又は解錠デバイス(2)を備える空間に安全にアクセスする方法であって、前記アクセス又は解錠デバイス(2)は、高周波数での無線周波数信号送信器(21)、高周波数での無線周波数信号受信器(22)、処理ユニット(25)、及び前記アクセス又は解錠デバイス(2)の動作をクロック制御する局部発振器(23)を備え、前記装着可能物体(3)は、高周波数での無線周波数信号送信器(31)、高周波数での無線周波数信号受信器(32)、処理ユニット(35)、及び前記装着可能物体(3)の動作をクロック制御する局部発振器(33)を備え、前記方法は、
−前記装着可能物体(3)を起動するステップ、
−前記アクセス又は解錠デバイス(2)から第1のコード化信号を送信するステップ、
−前記アクセス又は解錠デバイス(2)からの前記第1のコード化信号を前記装着可能物体(3)内で受信するステップ、
−前記装着可能物体(3)からのコード化応答信号(応答2)を前記アクセス又は解錠デバイス(2)内で受信するステップ、
−前記アクセス又は解錠デバイス(2)と前記装着可能物体との間の信号の飛行時間を決定するために、前記アクセス又は解錠デバイス(2)の前記処理ユニット(25)において、変換された前記コード化応答信号(応答2)を処理して、推定した距離が距離閾値を下回る場合に前記装着可能物体(3)の認識後に前記空間へのアクセスを許可するために、前記装着可能物体(3)と前記アクセス又は解錠デバイス(2)とを隔てる距離を前記飛行時間から推定するステップ
を含み、
前記アクセス又は解錠デバイス(2)の前記局部発振器(23)は、水晶振動子(24)を有する発振器であり、前記装着可能物体(3)の前記局部発振器(33)は、前記アクセス又は解錠デバイス(2)の前記水晶振動子(24)と同様である水晶振動子(34)を有する発振器であり、
前記第1のコード化信号は、前記アクセス又は解錠デバイス(2)によって送信し、前記装着可能物体(3)によって受信し、前記装着可能物体(3)は、前記装着可能物体(3)の前記処理ユニット(35)内での分析を実施すること、前記第1のコード化信号の送信後、更なる変調によりスクランブル化した前記アクセス又は解錠デバイスのコード化応答信号(応答1)は、時間遅延(TR1)を伴って前記アクセス又は解錠デバイス(2)によって生成、送信すること、前記装着可能物体は、第1の受信時間窓において前記アクセス又は解錠デバイスからスクランブル化した前記コード化応答信号(応答1)を受信し、前記第1の受信時間窓は、前記アクセス又は解錠デバイスのスクランブル化した前記コード化応答信号(応答1)の持続時間に調節してあること、前記アクセス又は解錠デバイスのスクランブル化した前記コード化応答信号(応答1)の処理は、前記装着可能物体(3)の前記処理ユニット(35)内での変換後に、時間遅延を伴って実施し、更なる変調によってスクランブル化した前記装着可能物体からの前記コード化応答信号(応答2)を生成、送信すること、前記アクセス又は解錠デバイス(2)は、前記アクセス又は解錠デバイスの第2の受信時間窓において前記装着可能物体(3)からスクランブル化した前記コード化応答信号(応答2)を受信し、前記第2の受信時間窓は、前記装着可能物体(3)からのスクランブル化した前記コード化応答信号(応答2)の持続時間に調節してあること、及び前記装着可能物体(3)の変換したスクランブル化した前記コード化応答信号(応答2)の処理は、前記アクセス又は解錠デバイス(2)の前記処理ユニット(25)内で時間遅延を伴って実施し、前記アクセス又は解錠デバイス(2)と前記装着可能物体(3)との間の飛行時間及び距離を計算し、
前記装着可能物体(3)は、起動後、搬送周波数の連続信号(CW)を送信し、前記搬送周波数の連続信号(CW)は、前記第1のコード化信号の送信前に前記アクセス又は解錠デバイス(2)によって受信すること、前記アクセス又は解錠デバイス(2)の前記局部発振器(23)に関係する前記装着可能物体(3)の前記局部発振器(33)の周波数誤差の計算は、前記アクセス又は解錠デバイス(2)の前記処理ユニット(25)内で実施すること、前記周波数誤差の計算と並行して、前記第1のコード化信号は、前記アクセス又は解錠デバイス(2)によって送信すること、及び前記アクセス又は解錠デバイスのスクランブル化した前記コード化応答信号(応答1)は、正確な同期要求を伴って送信される
ことを特徴とする、安全なアクセス方法。
【請求項2】
前記アクセス又は解錠デバイス(2)の前記局部発振器(23)は、前記装着可能物体(3)の前記局部発振器(33)が生成する発振信号と同様の周波数で発振信号を生成することを特徴とする、請求項1に記載の安全なアクセス方法。
【請求項3】
前記アクセス又は解錠デバイス(2)及び前記装着可能物体(3)が送受信する信号の周波数は、約5.8GHzの周波数にあること、前記アクセス又は解錠デバイス(2)が送信するローリング・コード信号又は擬似ランダム雑音コード化信号である前記第1のコード化信号のデータ送信速度は、1Mbit/sであること、前記スクランブル化した前記コード化応答信号(応答1)及び前記スクランブル化した前記コード化応答信号(応答2)は、擬似ランダム雑音コード化信号により規定されており、1Mbit/sの更なる変調を伴う約26Mbit/s又は125Mbit/sの送信速度にあることを特徴とする、請求項1に記載の安全なアクセス方法。
【請求項4】
前記アクセス又は解錠デバイス(2)のローリング・コード信号である前記第1のコード化信号は、前記装着可能物体(3)によって受信し、前記装着可能物体(3)の前記局部発振器(33)に関係する前記アクセス又は解錠デバイス(2)の前記局部発振器(23)の周波数誤差の計算は、前記装着可能物体(3)の前記処理ユニット(35)内で実施すること、前記装着可能物体(3)のスクランブル化した前記コード化応答信号(応答2)の送信の間、正確な同期を規定するために、前記装着可能物体(3)の前記処理ユニット(35)は、前記アクセス又は解錠デバイス(2)のスクランブル化した前記コード化応答信号(応答1)の送信から前記装着可能物体(3)のスクランブル化した前記コード化応答信号(応答2)の送信時間を計算し、前記装着可能物体(3)のスクランブル化した前記コード化応答信号(応答2)は、前記アクセス又は解錠デバイスの第2の受信時間窓において受信することを特徴とする、請求項1に記載の安全なアクセス方法。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の前記安全なアクセス方法を実施するための、装着可能物体により空間へ安全にアクセスするシステム(1)であって、前記システム(1)は、アクセス又は解錠デバイス(2)、及び前記アクセス又は解錠デバイス(2)とのワイヤレス信号通信のための装着可能物体(3)を備え、前記アクセス又は解錠デバイス(2)は、高周波数での無線周波数信号の送信器(21)、高周波数での無線周波数信号の受信器(22)、処理ユニット(25)、及び前記アクセス又は解錠デバイス(2)の動作をクロック制御する局部発振器(23)を備え、前記装着可能物体(3)は、高周波数での無線周波数信号の送信器(31)、高周波数での無線周波数信号の受信器(32)、処理ユニット(35)、及び前記装着可能物体(3)の動作をクロック制御する局部発振器(33)を備える、安全なアクセスシステム(1)。
【請求項6】
前記アクセス又は解錠デバイス(2)の前記局部発振器(23)は、水晶振動子(24)を有する発振器であり、前記装着可能物体(3)の前記局部発振器(33)は、前記アクセス又は解錠デバイス(2)の前記水晶振動子(24)と同様の水晶振動子(34)を有する発振器であることを特徴とする、請求項5に記載の安全なアクセス・システム(1)。
【請求項7】
前記無線周波数信号の高周波数は、約5.8GHzであることを特徴とする、請求項5に記載の安全なアクセス・システム(1)。
【請求項8】
前記アクセス又は解錠デバイス(2)の前記送信器(21)及び前記受信器(22)は、高周波数で信号を送受信する単一のアンテナ(26)を有するマルチプレクサの形態の切替え要素(120)により接続していること、並びに前記装着可能物体(3)の前記送信器(31)及び前記受信器(32)は、同じ高周波数で信号を送受信する単一のアンテナ(36)を有するマルチプレクサの形態の切替え要素(150)により接続していることを特徴とする、請求項5に記載の安全なアクセス・システム(1)。
【請求項9】
前記アクセス又は解錠デバイス(2)は、車両内に配置すること、及び前記装着可能物体(3)は、電子キーであり、前記電子キーは、前記電子キーのボタン又は接触による手動動作によって起動するか、又は前記アクセス又は解錠デバイス(2)による低周波数始動信号の送信により起動することができることを特徴とする、請求項5に記載の安全なアクセス・システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人化電子キー等の個人化された装着可能物体により車両等の決定空間に安全にアクセスする方法に関する。
【0002】
本発明は、安全なアクセス方法を実施する安全なアクセス・システムに関する。
【背景技術】
【0003】
車両等の決定空間への安全なアクセスの分野では、指令をワイヤレスに送信するスマート・キーの使用による、車両への進入システムの使用が公知である。アクセス・システムにより、個人化電子キーの確認又は認証に基づき、電子キー等の個人化された装着可能物体の装着者に対しこの空間へのアクセスを許可することが可能である。まず、車両のアクセス許可又は解錠デバイスから個人化電子キーに呼掛け信号を送信することができる。この呼掛け信号を受信するとすぐに、電子キーを起動することができ、車両のアクセス許可デバイスへコード化送信する前に前記電子キー内で応答信号の計算を実施する。その後、車両のアクセス・デバイス内で制御を実施し、前記車両を開放するために、キーが適切に認識されているかどうかを決定する。
【0004】
例えば電子スマート・キーによる車両へのアクセスの制御に関して、車両解錠デバイスは、まず、例えば、車両ドア・ハンドルへの機械的動作によって起動することができる。この瞬間から、解錠デバイスは、コード化呼掛け信号を送信し、コード化呼掛け信号は、解錠デバイスを起動する電子キーによって受信する。電子キーには、電池等のそれ自体のエネルギー源によって電力を供給することができる。一般に、この呼掛け信号は、低搬送周波数で車両から送信する一方で、電子キーのコード化応答信号は、高搬送周波数で送信する。
【0005】
電子キーは、処理ユニット又はデジタル処理ユニットを備え、処理ユニット又はデジタル処理ユニットは、例えば車両へのアクセスのための暗号化アルゴリズム及び/又は識別コードを保存する記憶デバイスに接続されている。電子キーは、呼掛けコード信号によって起動されると、車両の施錠又は解錠部品若しくは機能に向けた指令のためにコード化識別信号を車両に送信する。
【0006】
電子キーを扱う必要を伴わずに車両へアクセスすることを容易にするために、車両から受信した呼掛け信号に従って、応答信号を車両に自動的に送信する電子キーが既に提案されている。このため、キーは、車両から到来するこの呼掛け信号を受信することができるように、車両周囲の限定領域に位置しなければならない。更に、キーは、呼掛け信号がキーによって認識された場合にのみ車両に応答信号を送信する。したがって、この応答信号は、車両の施錠及び解錠部品又は機能に向けた指令を可能にする。
【0007】
信号の受信制限は、情報の交換に使用する無線周波数信号の伝播特性によって、並びに送電特性、車両及びキー内で使用する送信器−受信器の感度によって決定する。車両周囲の限定区域は、一般に、最小受電閾値によって規定する。
【0008】
車両から到来する呼掛け信号によって自動的に制御するそのような電子キーの場合、電子キーの装着者に知られることなく、中間中継器によって車両の開放を可能にする危険性がある。このことにより、悪意のある人が、車両と電子キー装着者との間でこうした中間中継器を使用して、車両を開放、始動させることができる。これらの中継器は、キー又は車両それぞれに向かうコード化呼掛け信号又はコード化応答信号を複製することができ、信号のそれぞれは、バイナリ・データ・シーケンスを含む。
【0009】
第1の悪意のある人の第1の中間中継器は、車両からの呼掛け信号を受信するように車両に近接する。この呼掛け信号を無線周波数信号に変換し、車両を開放、始動させる個人化電子キー装着者の近傍に位置する第2の悪意のある人の第2の中間中継器に送信する。第2の中間中継器は、第1の中間中継器の無線周波数信号を低周波数で新たな呼掛け信号に再度変換する。車両へのアクセスを許可された人が装着する個人化電子キーは、新たな呼掛け信号を受信し、この呼掛け信号を認識した後、コード化識別応答信号を高周波数で送信する。電子キーのこの無線周波数応答信号は、車両からの距離が短い、例えば50m未満である場合、車両解錠デバイスによって直接受信することができる。しかし、電子キーと車両との間の距離がかなり大きい、例えば1kmを超える場合、キーから2つの中間中継器を介して車両に至る無線周波数信号の更なる交換がなければならない。
【0010】
当技術分野から公知の安全なアクセス・システムは、個人化電子キーによってのみ車両を開放することを保証するにはいくつかの問題が生じている。具体的には、車両から短距離にある電子キーのみによって、電子キーと車両とを隔てる距離を決定し、車両の開放を許可することは一般に困難である。このことは、従来技術の安全なアクセス・システムの欠点とみなされる。
【0011】
欧州特許第673003B1号は、電子キーにより車両へ安全にアクセスするシステムを記載している。車両ハンドルによる動作の後、車両解錠デバイスは、コード化呼掛け信号をキーに向けて送信し、キーは、コード化呼掛け信号を受信し、コード化応答信号を解錠デバイスに送信する。キーが送信する応答コードが解錠デバイスの基準コードと一致する場合、車両へのアクセスの許可が生じる。キーと車両との間の距離を測定し、キーが車両近傍の応答コードのみを送信することを可能にする距離検出デバイスも提供される。そのような安全なアクセス・システムは、中間中継器による無許可の車両開放の可能性をなくすものではなく、このことは欠点とみなされる。
【0012】
米国特許第6538560B1号は、電子応答器キーによる車両の解錠デバイスへのアクセス・システムを記載している。車両のデバイスは、低周波数でコード化信号を送信し、電子キーを起動し、電子キーが電子キーの送信器及び受信器ユニットを高周波数で起動できるようにする。次に、キーによって、高周波数コード化呼掛け信号を送受信するが、このキーの有効性を確認しなければならない。キー内で低周波数コード化信号の処理を実施し、高周波数でのコード化応答信号の送信を可能にし、送信器の識別を考慮する。車両のデバイスは、キーから高周波数コード化信号を受信してキーの有効性を確認し、肯定の場合、車両へのアクセスを許可する。車両解錠デバイスから受信したコード化信号の処理は、キー内で実施しなければならず、このことは、キー内に複雑な回路を必要とし、電池を支給されたキーの電力消費量を増大させ、このことは、欠点とみなされる。
【0013】
従来技術では、電子スマート・キーによって車両へのアクセスを許可するUWB通信システムの使用も公知である。この種類のUWB通信では、車両からキーへ及びキーから車両への信号の飛行時間、したがって、これらの2つの実体の間の距離は、正確に決定される。対照的に、この種類の無線周波数リンクは、車両解錠デバイス及び電子キーの両方においてデジタル信号処理(DSP)マイクロプロセッサの使用も伴う。このことは、複雑な技術、したがって、高い電気エネルギー消費を必要とする。したがって、このことは、そのようなアクセス・システムの欠点とみなされる。更に、そのようなシステムでは、距離測定段階は、一般的に、認証段階とは区別され、このことは、距離測定段階のみをハッキングし得る攻撃の可能性を許す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第673003B1号
【特許文献2】米国特許第6538560B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を改善するために、個人化された装着可能物体により決定空間へ安全にアクセスする方法を提案するものであり、少なくとも1つの応答信号を送信する間、装着可能物体により決定空間へ容易且つ安全にアクセスするようにする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的で、本発明は、個人化された装着可能物体により車両等の決定空間へ安全にアクセスする方法に関し、方法は、独立請求項1に記載の特徴を備える。
【0017】
方法の特定のステップは、従属請求項2から14に記載する。
【0018】
方法の利点は、決定空間へのアクセス・デバイスと個人化された装着可能物体との間の送信信号の通信時間又は飛行時間を決定することにある。アクセス又は解錠デバイス及び装着可能物体において、信号を管理するのに十分な時間遅延指令が得られるため、装着可能物体の応答時、装着可能物体とアクセス又は解錠デバイスとを隔てる距離を十分正確に決定することが容易である。このことにより、決定された距離が決定閾値を超える場合、中間中継器からのあらゆる要求の拒絶が可能になる。したがって、このことは、悪意のある人の中間中継器による決定空間へのアクセスを防止する。
【0019】
有利には、コード化信号の送信は、高送信速度、例えば、26Mbit/s又は125Mbit/sとすることができる。そのような高送信速度では、送受信信号データのエッジは、平均送信速度のものよりも強固である。このため、装着可能物体とアクセス又は解錠デバイスとを隔てる距離の決定をより高度な精度で得ることができる。したがって、個人化された装着可能物体による決定空間へのアクセス許可に対しより高度な安全性を保証することができる。
【0020】
有利には、デバイスと装着可能物体との同期に続き、良好な規定信号受信時間窓は、装着可能物体又は解錠デバイスが送信した応答信号の完全な受信を可能にする。したがって、呼び掛けられた装着可能物体に関係する中間中継器による決定空間へのアクセスを防止することができる。
【0021】
電子キー等の装着可能物体の安全なアクセス制御の大部分は、車両等の決定空間へのアクセス又は解錠デバイス内のデジタル信号処理ユニット内で実行する。このことは、電子キーの回路を大幅に簡略化し、電子キーの電力消費量を低減する。というのは、電力は小型寸法の電池により供給するためである。更に、単一の通信周波数上で使用する通信リンクは主に狭帯域であるため、このことも使用する無線周波数成分を簡略化する。電子キーは、車両への安全なアクセスの制御の瞬間にのみ起動する。
【0022】
安全なアクセス・システムは、産業科学医療(ISM)無線帯域において無免許で実施することができる狭帯域無線周波数技術を使用する。システムは、狭帯域のアンテナを有し、アンテナは、UWBシステムのアンテナの利得よりも高い利得を有しており、これにより、安全なアクセス方法を実施する本発明のシステムをUWB技術よりも経済的にするものである。
【0023】
この目的で、本発明は、独立請求項15に記載の特徴を含む安全なアクセス方法を実施する安全なアクセス・システムにも関する。
【0024】
アクセス・システムの特定の実施形態は、従属請求項16から19で定義する。
【0025】
電子キー等の個人化された装着可能物体により車両等の決定空間へ安全にアクセスする方法及びシステムの目的、利点及び特性は、以下の説明においてより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明によるアクセス方法を実施する、決定空間への安全なアクセス・システムの一実施形態の図である。
【
図2】本発明による安全なアクセス方法の第1の変形形態による、
図1のアクセス・システムのアクセス・デバイスと装着可能物体との間で送受信する異なる信号の図である。
【
図3】本発明による安全なアクセス方法の第2の変形形態による、
図1のアクセス・システムのアクセス・デバイスと装着可能物体との間で送受信する異なる信号の図である。
【
図4】本発明による安全なアクセス方法の第3の変形形態による、
図1のアクセス・システムのアクセス・デバイスと装着可能物体との間で送受信する異なる信号の図である。
【
図5】本発明による安全なアクセス方法の第4の変形形態による、
図1のアクセス・システムのアクセス・デバイスと装着可能物体との間で送受信する異なる信号の図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明では、当業者に周知である、安全なアクセス方法を実施する安全なアクセス・システムの全ての構成要素は、簡略化した様式でのみ説明する。
【0028】
図1は、安全なアクセス方法を実施する、装着可能物体による決定空間への安全なアクセス・システム1の一実施形態を示す。安全なアクセス・システム1のこの実施形態では、決定空間は、車両のアクセス又は解錠デバイス2を備える車両であり、装着可能物体は、好ましくは、車両ユーザが装着する電子スマート・キー3である。
【0029】
当然、バス、安全な建物内の部屋、金庫、又は個人化された装着可能物体を有する許可された人にのみ進入が許可されているあらゆる他の空間等の別の決定空間が可能である。更に、装着可能物体3は、アクセス又は解錠デバイス2との通信を確立し得る電子回路を収容することができるカード、バッジ、腕時計、指輪、携帯電話又はあらゆる他の物体とすることができる。
【0030】
電子キー3による車両への安全なアクセス方法によれば、個人化電子キー3とアクセス又は解錠デバイス2とを隔てる距離は、十分に正確に検出しなければならない。電子キー3を起動すると、コード化し得る無線周波数制御又はデータ信号の送信又は受信が、時間シフト又は遅延した状態で解錠デバイス2から電子キー3に生じ、その逆も同様に生じる。解錠デバイス2に送信した、電子キー3のコード化応答信号の距離情報の合併も実施し、中間中継器によるあらゆる攻撃を防止することができる。信号デジタル処理は、電子キー3を認識するために解錠デバイス2内で実施し、電子キー3内でも車両の開放及び始動を可能にするために部分的に実施する。したがって、デバイスとキー、及びキーとデバイスとの間の信号の飛行時間を解錠デバイス2内で正確に決定し、この飛行時間から、アクセス・デバイスと電子キーとを隔てる距離を決定し、車両へのアクセスを許可する。
【0031】
アクセス・システム1のアクセス又は解錠デバイス2は、具体的には、送信器21、受信器22、並びに送信器21及び受信器22に接続した少なくとも1つの信号デジタル処理ユニット25を備える。本実施形態では、単一のアンテナ26は、切替え要素120により送信器21及び受信器22に接続している。切替え要素120は、マルチプレクサであり、このマルチプレクサは、それぞれが送信器21及び受信器22に接続している2つの入力、並びにアンテナ26に接続している1つの出力を有する。このマルチプレクサ120は、処理ユニット25により制御し、送信器21からアンテナ26を通じて高周波数信号を送信すること、又はアンテナ26を通じて受信器22へ高周波数信号を受信することを可能にする。好ましくは水晶振動子24を有する発振器である局部発振器23も、解錠デバイス2の動作をクロック制御するように設けられる。
【0032】
デジタル処理ユニット25は、局部発振器23によりクロック制御されるマイクロプロセッサ、マルチプル・レジスタのメモリ、乱数生成器を有する対称又は非対称暗号化システム、及び暗号化キー管理システムを備えることができる(図示せず)。デジタル処理ユニット25は、中間信号を中間デジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換器ADC、中間デジタル信号の包絡線検出器、時間遅延素子、信号周波数変調生成器を備えることもできる(図示せず)。デジタル処理ユニット25は、電子キー3に送信すべきデジタル信号を変換するデジタル・アナログ変換器DACも備える。
【0033】
アクセス・システム1の電子キー3は、具体的には、送信器31、受信器32、及び送信器31及び受信器32に接続した少なくとも1つのデジタル処理ユニット35を備える。本実施形態では、単一のアンテナ36は、切替え要素150により送信器31及び受信器32に接続している。切替え要素150は、マルチプレクサであり、このマルチプレクサは、それぞれが送信器31及び受信器32に接続している2つの入力、並びにアンテナ36に接続している1つの出力を有する。このマルチプレクサ150は、アクセス又は解錠デバイス2の場合のように、デジタル処理ユニット35により制御し、送信器31からアンテナ36を通じて高周波数信号を送信することを可能にするか、又はアンテナ36を通じて受信器32に高周波数信号を受信することを可能にする。
【0034】
好ましくは水晶振動子34を有する発振器である局部発振器33も設け、電子キー3の動作、及び主としてデジタル処理ユニット35による処理をクロック制御するようにする。局部発振器33の発振信号は、約26MHzの周波数、又は除算器によって2つのアセンブリで除算した周波数にあることができる。この局部発振器33は、解錠デバイス2の水晶振動子24を有する局部発振器23と同様のものである。したがって、発振信号の周波数は、±40ppmと実質的に同様である。このことにより、最初の較正ステップの後、又は以下で説明する安全なアクセス方法の間、解錠デバイス2及び電子キー3における良好な処理の同期を可能にする。
【0035】
デジタル処理ユニット35は、局部発振器33によりクロック制御されるプロセッサ又は有限状態機械、マルチプル・レジスタのメモリ、乱数生成器を有する対称又は非対称暗号化システム、及び暗号化キー管理システムを備えることができる(図示せず)。デジタル処理ユニット35は、中間信号を中間デジタル信号に変換するアナログ・デジタル変換器ADC、中間デジタル信号の包絡線検出器、時間遅延素子、信号周波数変調生成器を備えることもできる(図示せず)。デジタル処理ユニット35は、解錠デバイス2に送信すべきデジタル信号を変換するデジタル・アナログ変換器も備える。
【0036】
例えば、車両ドア・ハンドルから到来した起動指令、又は電子キー3が送信した指令の後、アクセス又は解錠デバイス2の送信器21は、アンテナ26を通じて、以下で詳細に説明する電子キー3のアンテナ36に制御又はデータ信号を送信することができる。車両から到来する起動指令の場合、デバイスが送信する起動信号は、低周波数信号LFである。対照的に、起動指令が電子キー3から到来する場合、これを待ち受けているアクセス又は解錠デバイス2は、高周波数制御又はデータ信号を送信することになる。アクセス・システム1のこの実施形態のこの高周波数は、例えば5.8GHzのISM周波数にあることができる。受信器22は、受信アンテナ26を通じて、呼び掛けられた電子キー3から到来する無線周波数信号を同じ搬送周波数で受信することができる。
【0037】
アクセス又は解錠デバイス2では、送信器21は、受信器22でも使用する周波数合成器113を備える。周波数合成器113は、水晶振動子24を有する発振器23からの基準信号を受信する。周波数合成器113は、第1の混合器114及び第2の混合器115に高周波数発振信号を供給することができる。第1の混合器114は、デジタル処理ユニット25から少なくとも1つの同相中間信号IF_Iを受信し、同相中間信号IF_Iは、低域フィルタ116内でフィルタ処理され、周波数合成器113の第1の発振信号によってこの中間信号の周波数を逓昇変換する。第2の混合器115は、デジタル処理ユニット25から少なくとも1つの直交中間信号IF_Qを受信し、直交中間信号IF_Qは、低域フィルタ117内でフィルタ処理され、周波数合成器113の第2の発振信号によってこの中間信号の周波数を逓昇変換する。第1の混合器114の出力信号及び第2の混合器115の出力信号は、送信器21の加算器112内で加算する。出力増幅器111は、加算器112の出力に接続し、マルチプレクサ120により、送信モードで第1のアンテナ26を通じて送信すべき無線周波数出力信号を増幅させる。
【0038】
送信器21の周波数合成器113によって供給する第1の発振信号は、同相発振信号である一方で、第2の発振信号は直交発振信号であることに留意されたい。このことは、フィルタ処理した同相中間信号IF_I及びフィルタ処理した直交中間信号IF_Qにそれぞれの混合をもたらす。したがって、周波数合成器113は、2つの混合器114、115のための5.8GHzに近接する周波数で同相及び直交発振信号を生成するように設けられる。
【0039】
図2から
図6を参照して後で説明するように、各中間信号IF_I及びIF_Qは、変数又はローリング・コードの変調を含むことができ、変数又はローリング・コードは、マルチプレクサ120により、送信モードで第1のアンテナ26を通じて送信する。この変調は、このローリング・コードのためのFSK又はGFSK周波数変調とすることができる。しかし、合成器113により供給する各発振信号の周波数をデジタル処理ユニット25により送信する変調信号Smによって変調するようにも設けることもできる。PSK又はBPSK位相変調、及び擬似ランダム雑音シーケンス(PN)の変調をもたらすこともでき、これらの変調は、方法の中間ステップで使用し、例えば、解錠デバイス2と電子キー3との間の距離を決定する。
【0040】
アクセス又は解錠デバイス2では、受信器22は、低入力雑音増幅器121を備え、マルチプレクサ120によりアンテナ26からの無線周波数信号を受信モードで受信する。受信器22の低入力雑音増幅器121は、受信した無線周波数信号の増幅、フィルタ処理を可能にする。受信器22の第1の混合器123は、周波数合成器113から到来する同相発振信号LO_Iによって増幅、フィルタ処理した無線周波数信号の周波数変換をもたらして同相中間信号IF_Iを供給するようにする。この同相中間信号IF_Iは、低域フィルタ125によってフィルタ処理する。受信器22の第2の混合器124は、周波数合成器113の直交発振信号LO_Qによって増幅、フィルタ処理した無線周波数信号の周波数変換をもたらして直交中間信号IF_Qを供給するようにする。直交中間信号IF_Qは、別の低域フィルタ126によりフィルタ処理する。フィルタ処理した同相IF_I及び直交IF_Q中間信号は、デジタル処理ユニット25に送信する。
【0041】
デジタル処理ユニット25には、まず、アナログ・デジタル変換器ADC(図示せず)があり、中間信号を中間デジタル信号に変換し、中間デジタル信号を処理ユニット25内で処理する。処理ユニット25は、中間デジタル信号の包絡線検出器、マルチプル・レジスタの不揮発性メモリ等の少なくとも1つの記憶ユニット、及び送信すべきデジタル信号を変換するデジタル・アナログ変換器を備えることもできる(図示せず)。処理ユニット25は、局部発振器23によって供給されるタイミング信号によってクロック制御し、局部発振器23は、約26MHzの周波数、又は除算器によって2つのアセンブリで除算した周波数にあることができる。
【0042】
電子キー3には、唯一の周波数合成器143もあり、5.8GHzに近接する周波数で同相及び直交発振信号を生成する。電子キー3の送信器31では、周波数合成器143は、同相発振信号を第1の混合器145に供給し、送信すべき同相中間信号IF_Iの周波数を上昇させ、同相中間信号IF_Iは、デジタル処理ユニット35から到来した場合、低域フィルタ147内でフィルタ処理する。周波数合成器143は、直交発振信号を第2の混合器146に供給し、送信すべき直交中間信号IF_Qの周波数を上昇させ、直交中間信号IF_Qは、デジタル処理ユニット35から到来した場合、低域フィルタ148内でフィルタ処理する。2つの混合器の出力信号は、増幅器141により増幅する前に加算器142内で加算され、増幅器141の出力は、切替え要素150に接続され、切替え要素150は、信号送受信のための単一のアンテナ36に接続されている。特にデジタル処理ユニット35による切替え要素150への送信の切替え指令に従って、アンテナ36を通じて送信器31が送信モードで供給する信号の送信がある。この切替え要素150は、好ましくはマルチプレクサであり、このマルチプレクサは、アンテナ36に連結している2つの入力及び1つの出力を有し、切換え指令は、タイミング信号によりクロック制御する処理ユニット35から到来し、タイミング信号は、局部発振器33から到来する。マルチプレクサの一方の入力は、送信器31に接続している一方で、もう一方の入力は受信器32に接続している。
【0043】
受信器32は、低雑音増幅器131を備え、低雑音増幅器131は、マルチプレクサ150の入力に受信モードで接続している。増幅器131の出力信号は、第1の混合器133及び第2の混合器134に供給する。周波数合成器143は、受信器32の第1の混合器133の同相発振信号LO_I、及び受信器32の第2の混合器134の直交発振信号LO_Qも供給する。第1の同相中間信号IF_Iは、第1の混合器133の出力で周波数を低減させて供給し、第2の直交中間信号IF_Qは、第2の混合器134の出力で周波数を低減させて供給する。同相中間信号IF_Iは、低域フィルタ135内でフィルタ処理し、デジタル処理ユニット35に送信する。直交中間信号IF_Qは、低域フィルタ136内でフィルタ処理し、デジタル処理ユニット35に送信する。
【0044】
車両の要素上で実施した起動指令後の最初の段階では、送信器21の第1のアンテナ26を通じて低周波LF起動信号を最初に送信し、車両の近傍にある電子キー3を始動させることができる。しかし、前記電子キー3は、電子キー3が備えるプッシュボタン、又はタッチ・キー等の前記キーの別の制御要素により起動するように実現することもできる。電子キー3の起動信号を受信すると、アクセス又は解錠デバイス2は、例えば、高周波数呼掛け信号を電子キー3に送信することができる。この最初の段階に続く方法の様々なステップを以下でより詳細に説明する。
【0045】
擬似ランダム雑音生成器は、
図2及び段落33から37を参照する欧州特許第2796988B1号に記載のように解錠デバイス2内に設けることができることに留意されたい。この生成器は、発振器23によってクロック制御し、処理ユニット25に関連する擬似ランダム雑音コードを生成することができる。そのような生成器は、電子キー3の処理ユニット内に設けることもできる。ローリング・コードの生成は、ガレージ・ドア開放の分野で既に公知である。
【0046】
図2による安全なアクセス方法の第1の変形形態によれば、少なくとも、ローリング・コードの基礎信号等の第1のコード化信号の送信、又は解錠デバイス2から電子キー3への擬似ランダム雑音シーケンスの変調がなければならない。このコード化基礎信号は、電子キーのLF起動に続く、決定時間間隔の後に送信することができる。解錠デバイスの送信の間、正確な時間遅延は、水晶振動子を有する発振器により、又は局部発振器に基づくより高い周波数、例えば250MHzにおいてクロック制御デバイス内で固定することができる。
【0047】
電子キーは、この第1の基礎信号を受信し、時間を規定する際にこの信号を復調する。次に、電子キーは、解錠デバイス内の基礎信号の開始から適切に決定した第1の規定の送信時間T
Fの後、コード化応答信号等の第2のコード化信号を生成する。約0.1msとし得るこの第1の規定の送信時間T
Fは、基礎信号の受信後の時間遅延によって、解錠デバイスの局部発振器と同様の局部発振器の結果として得られる。このコード化応答信号を解錠デバイスによって受信する。2つの実体の間の飛行時間、及び電子キーの第1の規定の応答時間を決定するために、時間シフトした処理動作、即ち、解錠デバイス内での一定時間ラップの後、処理動作を実施する。時間遅延はデバイス及びキー内で非常に正確であり、基礎信号及びコード化応答信号は高送信速度、例えば26Mbit/sで送信するため、電子キーと車両とを隔てる実際の距離を決定することが容易である。更に、このことは、悪意のある人の中間中継器により車両が開放されないようにする際、高い保証を約束する。
【0048】
電子キー3からのコード化応答信号の送信を終了すると、電子キー3を自動的に無効にし、静止モードに留めることができる。電子キー3の時間遅延及び応答コードの制御は、電子キーを無効にした後、時間遅延を伴ってアクセス又は解錠デバイス2の処理ユニット25内で実施することができる。その後、車両ドア開放指令を作動することができる。電子キー3の起動と車両ドアの開放との間の時間T
0は、約1msとすることができる。
【0049】
図3による安全なアクセス方法の第2の変形形態によれば、ローリング・コードを伴う基礎信号の送信、又は解錠デバイス2から電子キー3への擬似ランダム雑音シーケンスの変調がある。上記のように、このコード化基礎信号は、電子キーの起動に続き、決定時間間隔の後に送信することができる。解錠デバイスから送信する基礎信号を生成すると、正確な時間遅延は、水晶振動子を有する発振器により、又は局部発振器に基づくより高い周波数、例えば250MHzにおいてクロック制御デバイス内で固定される。
【0050】
電子キーは、このコード化基礎信号を受信し、時間を規定する際にこの信号を復調する。次に、電子キーは、解錠デバイス内の基礎信号コードの開始から適切に決定した第1の規定の送信時間T
Fの後、コード化応答信号を生成する。約0.1msとし得るこの第1の規定の送信時間T
Fは、基礎信号の受信に続く時間遅延によって、及び解錠デバイスの局部発振器と同様の局部発振器の結果として得られる。
【0051】
このコード化応答信号は、受信したコード化基礎信号に対し更なる変調を伴うスクランブル化したコード化信号であるか、又は前もってプログラム若しくは生成してある対称暗号化キー若しくは非対称暗号化キーを伴う暗号化信号である。このスクランブル化したコード化応答信号の生成は、アクセス方法の第1の変形形態の生成よりも長い。変調は、例えば5.8GHzの周波数にあるコード化応答信号において1Mbit/sとすることができる。このスクランブル化したコード化応答信号の持続時間T
Bは、約0.25msとすることができる。
【0052】
このスクランブル化したコード化応答信号は、解錠デバイスによって、解錠デバイス内の決定受信時間窓で受信する。デバイスは、この時間窓又は時間間隔でスクランブル化したコード化応答信号を受信するように構成する。この受信時間窓の持続時間は、スクランブル化したコード化応答信号の持続時間T
Bに等しい。
【0053】
スクランブル化したコード化応答信号を完全に受信した後、解錠デバイスの処理ユニット内で処理動作を実施する。処理ユニットでは、電子キーからのコード化応答信号受信を、最初のコードに基づきローカルに生成したバージョンと比較する。この後、2つの実体の間の飛行時間、及び更には電子キーの第1の規定の応答時間T
Fを決定する。時間遅延はデバイス及びキー内で非常に正確であり、基礎信号及びコード化応答信号は高送信速度、例えば26Mbit/sで送信するため、電子キーと車両とを隔てる実際の距離を決定することが容易である。このことは、高度な安全性を目的として、車両の近傍の電子キーのみによる車両へのアクセスも保証する。
【0054】
方法の第1の変形形態に関して、電子キーからのスクランブル化したコード化応答信号送信の終了時に、電子キーを自動的に無効にし、静止モードに留めることができる。次に、処理ユニットでの処理の後、車両ドア開放指令を作動させることができる。電子キーの起動と車両ドアの開放との間の時間T
0は、約10msとすることができる。
【0055】
図4及び
図5を参照して説明する安全なアクセス方法の変形形態では、解錠デバイスから電子キーである装着可能物体に第1のコード化信号を常に送信しなければならない。次に、解錠デバイスによって、時間遅延を伴ってコード化応答信号を電子キーに送信する。電子キー内で受信した情報を処理することにより、スクランブル化したコード化応答信号を解錠デバイスに送信し、電子キー及び電子キーの車両からの距離の認識時に車両へのアクセスを確認、許可することを可能にする。
【0056】
図4による安全なアクセス方法の第3の変形形態によれば、二重スクランブル・データ転送を電子キー内にもたらす。まず、解錠デバイスが送信するLF低周波数信号によって電子キーを起動する。電子キーの起動後、例えば約5.8GHzの搬送周波数CWで、電子キーから連続信号の送信をもたらすことができる。解錠デバイスは、例えば、高速フーリエ変換によって、処理ユニット内で電子キーの周波数誤差を計算するように働くことになる搬送周波数でこの信号を受信する。
【0057】
次に、解錠デバイスは、基礎信号コードを送信し、この基礎信号コードは、約1Mbit/sの平均速度にあるローリング・コード信号、又は対称キー若しくは非対称キーを有するローリング・コード若しくはランダムに暗号化した信号である。この基礎信号の送信は、例えば約1msである、方法の第1の変形形態及び第2の変形形態の基礎信号の送信よりも長い。その後、距離決定は、平均送信速度で精度を減じて実施されるが、処理構成要素の複雑さを低減させる。
【0058】
電子キーは、このコード化基礎信号を受信、復調、復号し、電子キーの処理ユニット内で実施した分析をパラメータ化するようにする。デバイス及びキーの2つの発振器をまだ較正していないため、電子キーによるコード化基礎信号受信時の同期は依然としてファジイ同期である。(キーが送信した)CW信号を受信すると、解錠デバイスの処理ユニット内で発振器の周波数誤差の計算を実施する。
【0059】
デバイスの局部発振器の周波数の修正後、例えば、時間遅延を伴って、即ち、ローリング・コード基礎信号の送信に続く、決定時間T
R1の後、第1のコード化応答信号応答1の新たな送信を解錠デバイスから実施する。第1のコード化応答信号は、電子キーに送信し、この送信は、正確な同期を伝える。電子キーは、例えば、第1のコード化応答信号の持続時間に等しい受信時間窓でこの第1のスクランブル応答信号を解錠デバイスから受信する。
【0060】
この第1のスクランブル化したコード化応答信号の受信後、電子キーの処理ユニット内で第1のスクランブル応答信号の処理を実施する。(最初のローリング・コードから復号した)予期される第1のスクランブル応答信号の相互関連付けによって、開始時間の計算を実施する。この相互関連付けにより、第1の応答の到着に関係する第2の応答信号送信の開始を正確に整合することを可能にする。その後、電子キーは、第2の(擬似ランダム)スクランブル化したコード化応答信号を生成し、この応答信号は、処理ユニット内での処理が終了すると送信される。この第2のコード化応答信号の送信は、良好な同期を伴って、例えば125Mbit/sの高送信速度で解錠デバイスに対し実施する。
【0061】
解錠デバイスは、解錠デバイスによる良好な同期受信時間窓において、(擬似ランダム)スクランブル化したこの第2のコード化応答信号応答2を受信する。その後、時間遅延を伴って、即ち、第2の(擬似ランダム)スクランブル化したコード化応答信号の受信が終了後の決定時間の後、電子キーの第2のコード化応答信号の相互関連付けをデバイスの処理ユニット内で実施する。この第2のスクランブル化したコード化応答信号の相互関連付けは、電子キー応答の予期されるコード化に従って実施する。デバイスからキー及びキーからデバイスへの信号の飛行時間の計算は、処理ユニット内で再度実施する。電子キーと解錠デバイスとの間の距離を再度決定し、キーが適切に認識され、車両近傍において、決定距離閾値に関係する良好な決定距離に位置する場合は、車両の開放を可能にする。
【0062】
この上記した安全なアクセス方法の第3の変形形態では、高度な安全性を保証する。このことにより、電子キーの所有者に知られずに車両開放を試みようとして使用されるあらゆる中間中継器(したがって更なる送信期間)の検出を可能にする。電子キーを認識した後、デバイスの処理ユニット内での処理後、短時間の間車両を開放することができる。電子キーの起動から、解錠デバイスに保存した情報の完全な処理までの合計持続時間T
0は、約10msとすることができる。
【0063】
図5による安全なアクセス方法の第4の変形形態によれば、安全な距離測定及び安全性の確認を実施する。まず、解錠デバイスが送信するLF低周波数信号によって電子キーを起動する。LF起動信号の後、解錠デバイスは、基礎信号コードを送信し、この基礎信号コードは、約1Mbit/sの平均送信速度にあるローリング・コード信号、又は対称キー若しくは非対称キーを有するローリング・コード若しくはランダム暗号化信号である。この基礎信号の送信は、例えば約1msである、方法の第1の変形形態及び第2の変形形態の基礎信号の送信よりも長い。
【0064】
電子キーは、このコード化基礎信号を受信、復調、復号する。この第1の送信の間、送信速度、したがって帯域幅を低減しているため、電子キーによるコード化基礎信号受信時の同期は、やはりファジイ同期である。電子キーの処理ユニットでは、電子キーは、受信したローリング・コード基礎信号に基づき、解錠デバイスの電子キーに対する周波数誤差の計算を実施する。この処理の後、キーの局部発振器の周波数の修正を行う。
【0065】
解錠デバイスからの第1のコード化応答信号応答1の送信は、時間遅延を伴って、即ち、ローリング・コード基礎信号の送信に続く、決定時間T
R1の後に実施する。この第1のコード化応答信号は、例えば約125Mbit/sの超高速度にある擬似ランダム雑音コード化信号PNである。電子キー内での相互関連付けの後、第1のコード化応答信号を電子キーに送信し、正確に同期させる。この受信したコード化信号PNは、電子キーのメモリレジスタ内に保存する。電子キーは、この第1の応答信号PNを良好な規定受信時間窓において解錠デバイスから受信する。
【0066】
この第1の応答信号PNの受信時、解錠デバイスの第1の応答と最初のローリング・コードから推定されたPNシーケンスとの相互関連付けをキーの処理ユニット内で実施する。この相互関連付けにより、デバイスの第1のコード化応答信号の送信から電子キーの送信までの決定時間の後、(超高速、例えば約125Mbit/sである)第2の擬似ランダム雑音コード化信号PNの送信時間の正確な規定を可能にする。固定時間に加えて、この決定時間は、デバイスから電子キー及びキーからデバイスへの信号の飛行時間を考慮する。超高速、例えば約125Mbit/sにある第2の擬似ランダム雑音コード化信号PNの送信の瞬間に、正確な同期が得られる。
【0067】
解錠デバイスは、良好な同期受信時間窓においてこの第2の擬似ランダム雑音コード化信号PNを受信し、電子キーの第2の応答の情報を第1のメモリレジスタ内に保存する。デバイスの受信窓における受信持続時間は、電子キーの第2の応答信号の持続時間に等しい。キーからの第2の応答信号の受信後、電子キーからの第2の応答2の既知のPNコードとの相互関連付けをデバイスの処理ユニット内で実施する。飛行時間の安全な計算を再度実施し、同様に電子キーと解錠デバイスとを隔てる距離を決定し、電子キーが認識された場合は短時間の車両の開放を可能にする。キーの起動と車両ドアの開放との間の時間T
0は、約10msとすることができる。
【0068】
キーから車両に送信する第2の応答の持続時間は、車両からキーに送信する第1の応答よりも長くてもよいことに留意されたい。したがって、このことは、車両キー送信の信号対雑音比と同様の信号対雑音比を保持することによって、相互関連付けの利得を増大し、有利には、キーの送信電力を低減することを可能にし、電力の取得がより容易である。
【0069】
上記した安全なアクセス方法の様々な変形形態の全てのステップは、連続して繰り返すことができ、車両を前記車両の個人化電子キーによってのみ開放可能にすることにも留意されたい。
【0070】
上記説明に基づいて、当業者は、特許請求の範囲が定義する本発明の枠組から逸脱することなく、決定空間に安全にアクセスする方法及びシステムのいくつかの変形形態を想到することができる。第1の高周波数における通信信号の送信アンテナ、及び第2の高周波数における通信信号の受信アンテナは、アクセス又は解錠デバイス及び電子キー内に設けることができる。安全なアクセス・システムの各変形形態では、いくつかの切替えアンテナも想到できることに留意されたい。したがって、このことにより、様々なアンテナを通じたシステムのいくつかの連続動作段階の過程の間、当業者に周知の多様なアンテナを有するトポロジの使用を可能にする。
【符号の説明】
【0071】
1 システム
2 アクセス又は解錠デバイス
3 装着可能物体
21 送信器
22 受信器
23 局部発振器
25 デジタル処理ユニット
26 アンテナ
31 送信器
32 受信器
33 局部発振器
35 デジタル処理ユニット
36 アンテナ