(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のフレームの次フレームとなる第2のフレームの描画内容に基づいて、描画に必要な時間を予測し、前記予測された時間に基づき、前記第1のフレームの映像信号が出力開始されてから、前記第1のフレームの次フレームとなる第2のフレームの映像信号が出力開始されるまでの間隔を示すフレーム間隔情報を算出するフレーム間隔情報処理部と、
前記映像信号および前記フレーム間隔情報処理部が算出した前記フレーム間隔情報を、映像を表示する表示装置に送信する送信部と、
を有する、映像出力装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0021】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0022】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0023】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0024】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0026】
(実施の形態1)
〈映像表示システムの構成例〉
図1は、本実施の形態1による映像表示システム10における構成の一例を示す説明図である。
【0027】
映像表示システム10は、
図1に示すように、映像出力装置11および表示装置12から構成されている。映像出力装置11と表示装置12とは、映像インタフェースを介して接続されている。映像インタフェースは、例えばHDMI(High Definition Multimedia Interface、登録商標)などの接続標準規格からなるインタフェースなどからなる。
【0028】
映像出力装置11と表示装置12とは、映像インタフェースを通じて制御情報を交換し、表示装置12が対応可能な範囲で映像信号のフォーマットを決めて、映像信号のメタデータを送受信する。
【0029】
映像表示システム10は、映像出力装置11が出力した映像信号を表示装置12へ伝送して映像を表示するシステムであり、例えばパーソナルコンピュータやゲーム機器などである。映像表示システム10がパーソナルコンピュータの場合、映像出力装置11は、該パーソナルコンピュータ本体であり、表示装置12は、液晶ディスプレイなどのモニタに当たる。
【0030】
映像出力装置11は、描画処理部101、送信部102、制御部103、および描画時間予測部104を有する。描画処理部101は、例えば画像処理であるGPUなどからなり、制御部103の制御に基づいて、フレーム毎における描画処理を行う。
【0031】
フレーム間隔情報処理部である描画時間予測部104は、次のフレームの描画にかかる描画時間を描画内容に基づいて予測する。そして、その予測結果から次のフレームを映像信号として出力するまでのフレーム間隔、すなわち次の映像信号が出力されるまでの時間を算出する。
【0032】
送信部102は、描画処理部101が描画したフレームの映像信号および描画時間予測部104が算出したフレーム間隔からなるフレーム間隔情報をHDMIなどのインタフェースを介して表示装置12に送信する。
【0033】
制御部103は、例えばCPUなどからなり、図示しない主メモリに格納されているアプリケーションなどに基づいて、描画処理部101における描画処理を制御する。また、制御部103は、描画時間予測部104における動作制御を行う。
【0034】
表示装置12は、受信部111、一時記憶部112、輝度補正部113、応答補正部114、表示素子115、および制御部116を有する。この表示装置12において、受信部111は、映像出力装置11からインタフェースを介して送信された映像信号およびフレーム間隔情報を受信する。
【0035】
一時記憶部112は、いわゆるフレームメモリであり、受信部111が受信した映像信号を一時的に格納する。一時記憶部112は、例えばRAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリからなる。
【0036】
輝度補正部113は、映像信号における輝度の補正処理を行う。輝度の補正処理は、例えばフレーム周期に基づいて、表示素子115に表示される映像の輝度を調整する。応答補正部114は、表示素子115の光学応答を改善するオーバドライブ用の信号を生成する。
【0037】
表示素子115は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの表示部であり、表示駆動回路やバックライトなどを含む。制御部116は、フレーム間隔情報に基づいて、一時記憶部112、輝度補正部113、および応答補正部114などの動作を制御する。
【0038】
受信部111が受信した映像信号は、一時記憶部112に一時的に格納された後、輝度補正部113、応答補正部114から表示素子115へ伝えられて映像が表示される。また、受信部111が受信したフレーム間隔情報は、制御部116に出力される。
【0039】
制御部116は、受け取ったフレーム間隔情報に基づいて、一時記憶部112、輝度補正部113、応答補正部114、および表示素子115を制御して、フレーム間隔変動に備えた補正を行う。これにより、高画質表示を維持する。
【0040】
〈映像表示システムの動作例〉
図2は、
図1の映像表示システム10による描画、伝送、および表示タイミングの一例を示す説明図である。
図2において、上方から下方にかけては、描画、伝送、および表示走査のタイミングをそれぞれ示している。
【0041】
図2において、描画は、描画処理部101による描画期間である。伝送は、映像出力装置11から表示装置12に伝送される映像信号およびフレーム間隔情報の出力期間である。表示は、表示素子115による表示走査期間である。
【0042】
具体的には、描画に示すAiは、第iフレームの描画期間を示しており、伝送に示すBjは、第jフレームの伝送期間を示している。また、表示に示すCk0とCk1とは、第kフレームの表示走査期間を示しており、t10iは、第iフレームの描画時間、t11jは、第jフレームと第j+1フレームとの伝送フレーム間隔(第jフレームの伝送フレーム周期とも言う)を示す。t12kとt13kは、それぞれCk0とCk1の表示走査期間のフレーム間隔を示す。ここで、i,j,kは、それぞれ整数である。
【0043】
さらに、
図2では、説明の簡略化のため、第i+1フレームの描画期間Ai+1と、第iフレームの伝送期間Bi、第iフレームの表示走査期間Ci0の開始位置を一致させて示しているが、伝送期間Biや表示走査期間Ciは、図示より信号処理などによって所定の遅延が生じても、何ら影響もないことは明らかである。以降に示す
図3、
図4、および
図6においても同様である。
【0044】
まず、映像出力装置11の描画処理部101が描画期間A1に描画した第1フレームは、描画処理部101が第2フレームを描画している描画期間A2の期間中に、第1フレーム伝送期間B1において送信部102から表示装置12の受信部111に出力される。
【0045】
この時、描画時間予測部104は、第2フレームの描画内容に基づいて、描画に必要な時間t102を予測し、その予測時間t102と等しい伝送フレーム間隔t111を算出する。送信部102は、伝送フレーム間隔t111を受信部111に出力する。すなわち、第1フレームの映像信号伝送期間B1の期間に、第2フレームの描画予測時間t102に相当する、第1フレームと第2フレームの伝送フレーム間隔t111の情報を、送信部102から受信部111へ伝送する。以下、同様に第2フレーム以降の描画や描画時間予測、それらの伝送が行われる。
【0046】
送信部102と受信部111との間の映像伝送において、伝送速度などの制約から、1フレームを伝送する最短時間が決まっている。たとえば、伝送の最短時間よりも描画時間が短い第4フレーム描画期間A4の場合、第3フレームの伝送期間B3の終了を待って伝送開始する。
【0047】
図2では、第4フレームの伝送開始を待つことなく、第5フレームの描画を開始しているが、フレームメモリなどの制約により第5フレームの描画開始が困難な場合は、第3フレームの伝送終了後に開始させてもよい。
【0048】
このように、例えば、フレーム描画予測時間t104がフレーム伝送最短時間より短い場合は、伝送フレーム間隔t113の伝送に加えて、描画予測時間t104も表示装置12に伝送してもよい。
【0049】
例えば、後述するような事情により、伝送タイミングよりも表示走査タイミングに遅延が生じた際には、その遅延を伝送フレーム間隔t113と描画予測時間t104との差分だけ短縮する使い方ができる。これにより、描画から表示までの遅延時間を短くしてレスポンスのよい表示を実現できる。
【0050】
表示装置12は、受信部111が受信した映像信号を表示素子115に表示させる。
図2は、伝送期間と表示走査期間がほぼ等しい場合を示している。表示素子115は、通常、表示走査期間と表示タイミングとの間に所定の同期関係を有する。
【0051】
例えば、表示素子115がCRT(Cathode Ray Tube)の場合には、表示走査とほぼ同時に発光する。また、表示素子115がLCDの場合には、表示走査時点から透過率や反射率が変化し始める。そして、LCDのバックライトが連続発光バックライトの場合は、それらの変化が直ちに表示につながる。
【0052】
また、バックライトがパルス状発光バックライトの場合は、表示走査後の所定のタイミングにて発光する。表示素子の種類によって異なるが、一般的には、リフレッシュレートが高い、すなわちフレーム間隔が短い方が、フリッカが少なく動画質を良好にすることができる。
【0053】
〈フリッカの低減〉
そこで、制御部116は、例えば、第3フレームの描画期間A3が長く、第2フレーム伝送B2と第3フレーム伝送期間B3の間隔t112が、表示素子115の最短表示走査フレーム間隔の2倍以上長い場合に、一時記憶部112に格納された第2フレームの映像信号を用いて2つの表示走査期間C20と表示走査期間C21を設ける。
【0054】
すなわち、フレーム伝送間隔を最短表示走査フレーム間隔で割った商(小数以下切り捨て)の回数、表示走査期間を繰り返すとよい。この場合、各表示走査期間は、フレーム伝送期間内に均等な間隔で配置するとフリッカが生じにくい。
【0055】
一時記憶部112は、映像信号を複数の表示走査期間で繰り返し使用するために、制御部116が制御して映像信号を一時的に記憶させるものである。
【0056】
表示素子115には、表示走査フレーム間隔の最短時間以外に最長時間も設けられている場合がある。最長時間が最短時間の2倍以上あれば、上記のやり方を常に適用することができる。
【0057】
しかし、そうでない場合は、上記の均等配置の表示走査フレーム間隔が表示素子で決められた最長時間を超えてしまう場合がある。その際は、表示走査フレーム間隔を最短時間とした上で、繰り返しを1回増やす。
【0058】
その結果、繰り返した表示走査期間の累計値が、該当するフレーム伝送時間を超えてしまうので、表示走査期間終了後、直ちに次のフレームの表示走査を始め、次のフレームの伝送時間内で超過した時間を調整すればよい。
【0059】
これらの表示走査処理の結果、
図2の表示走査タイミングCk0と表示走査タイミングC21における表示走査フレーム間隔t1k0と表示走査フレーム間隔t132は、表示素子115において決められている最短時間から最長時間の範囲内にて変動する。
【0060】
〈表示走査フレーム間隔の変動による表示補正〉
続いて、表示走査フレーム間隔の変動によって、明るさや光学応答の画質への影響や、表示素子115の信頼性への影響が生じることがあるので、それらの対策方法について説明する。
【0061】
表示素子115が例えばLCDであり、常時点灯バックライト付きのライトバルブを有する場合、表示走査フレーム間隔の変動による明るさの変動は少ない。しかし、パルス発光バックライト付きのライトバルブの場合には、表示走査フレーム間隔単位で平均輝度を一定として明るさ変動を抑圧し、フリッカ現象を防ぐ必要がある。
【0062】
すなわち、発光時間や発光パルス数、発光輝度を表示走査フレーム間隔で制御し、((発光時間)/(表示走査フレーム間隔))×(発光輝度)、または((発光パルス数)/(表示走査フレーム間隔))×(パルス発光輝度)を一定とすることによって、明るさの変動を防ぐことができる。
【0063】
また、表示素子115が例えばOLED(Organic Electro-Luminescence)などのパルス幅変調素子の場合には、基準となるパルス幅を表示走査フレーム間隔に比例させるか、輝度が表示走査フレーム間隔に比例するように駆動電圧を調整する。
【0064】
表示素子115がプラズマディスプレイなどのパルス数変調素子の場合には、輝度が表示走査フレーム間隔に比例するように駆動電圧を調整するか、パルス数を表示走査フレーム間隔に比例させてもよい。これらの処理は、制御部116が図示しない表示駆動回路やバックライトを含む表示素子115を制御して行われる。
【0065】
また、表示素子115の輝度が表示走査フレーム間隔に依存する場合には、上記した変動防止技術に代えてあるいは併用して、その変動を補償するように表示素子115に与える映像信号を、輝度補正部113によって補正する。輝度補正部113は、例えばLUT(Look Up Table)や乗算器などによって構成してもよい。
【0066】
このような輝度補正を行う場合、例えば第1フレームと第2フレームの表示走査フレーム間隔t121が、第1フレームの表示走査期間C10の開始前に必要となる。それを決める伝送フレーム間隔情報t111は、第1フレームの伝送期間B1の最初またはそれよりも以前のタイミングで伝送するとよい。
【0067】
応答補正部114は、前述したように表示素子115の光学応答を改善するオーバドライブ用の信号を生成するものである。オーバドライブとは、前フレームからの変化が大きい場合にその変化を拡大補償するものである。表示走査フレーム間隔が短いと補償不十分に、表示走査フレーム間隔が長いと過補償になりやすので、その不足分または過剰分を補正する働きを担う。
【0068】
さらに、表示素子115がLCDなどのように、表示走査期間毎に極性を反転させて交流駆動させる場合、交流バランスが崩れて直流分が増えると、表示素子の信頼性や表示品質へ影響を与えることがあるため、交流バランスをとる必要がある。
【0069】
このため、正極性で駆動した表示走査フレーム間隔の累計から負極性で駆動した表示走査フレーム間隔の累計を差し引いた差分時間が正であれば、次の表示走査フレーム期間は負極性で駆動し、該差分時間が負であれば正極性で駆動するとよい。この差分時間の絶対値は、表示走査フレーム間隔の約半分となることがバランスがよい。この観点から、隣接する表示走査フレーム間隔は、ほぼ同等であることが好ましい。
【0070】
このためには、
図2の表示走査フレーム間隔t120とt121が等しくなるように、表示走査フレーム期間C10を伝送フレーム間隔t111とt110の差の半分、(t111−t110)/2だけ遅らせてもよい。
【0071】
次に、表示走査フレーム間隔t121とt122とt132が等しくなるようにするとよい。この場合、次の関係となる。
【0072】
t120=(t110+t111)/2
(但し、表示走査期間C10が伝送期間B1よりも前に配置できないので、t120<t110の場合は、t120=t110)
t121=(t110+t111+t112−t120)/3
t122=(t110+t111+t112+t113−t120−t121)/3
(但し、表示走査期間C30が伝送期間B3よりも前に配置できないので、
図2の例ではt122=t121)
t132=t122
ここで、表示走査期間C30と伝送期間B3とが同じタイミングとなるので、再度、上記の計算を繰り返して表示走査フレーム間隔t123以降を決めていく。
【0073】
このように、表示素子115の信頼性または描画から表示までにかかる遅延時間のどちらを優先するかで、表示走査フレーム間隔の計算結果は異なることなる。よって、表示システム12としてどちらを優先させるかを決めるとよいし、両者の計算結果の中間値を使ってもよい。
【0074】
以上、説明してきたように、映像出力装置11は、描画予想時間から次のフレームが伝送開始するまでの伝送フレーム間隔、すなわちフレーム間隔情報を映像信号と共に表示装置12へあらかじめ伝送する。表示装置12は、伝送フレーム間隔に応じて表示走査期間を挿入し、各フレームの平均輝度を一定として、光学応答補正用オーバドライブを制御することができる。
【0075】
これにより、リフレッシュレートが変化しても、表示装置12に表示される映像の明るさの変動を抑えることが可能となり、光学応答を最適化した映像表示システム10を実現することができる。
【0076】
なお、表示走査フレーム間隔の最短時間や最長時間の情報は、表示装置12の制御部116から、映像出力装置11の制御部103に伝達することによって、表示装置12の種類に応じた描画期間や伝送フレーム間隔を映像出力装置11が選択することができる。
【0077】
(実施の形態2)
〈映像表示システムの動作例〉
本実施の形態では、伝送時間が描画時間や表示走査時間よりも短い場合について説明する。映像インタフェースに高速のインタフェースを用いた際には、伝送時間を短くすることができる。例えば横4000ピクセル程度×縦2000ピクセル程度の高解像の映像である4K2Kの映像信号を伝達することのできるインタフェースを用いて、4K2Kよりも解像度が低い映像信号、例えば横1920ピクセル程度×縦1080ピクセル程度の解像度のフルHDなどを伝達する際には、映像信号の伝送時間を大幅に短くすることができる。
【0078】
なお、映像表示システム10における構成については、前記実施の形態1の
図1と同様であるので、説明は省略する。
【0079】
図3は、本実施の形態2による映像表示システム10における描画、伝送、および表示タイミングの一例を示す説明図である。
【0080】
図3において、上方から下方にかけては、
図2と同様に、描画、伝送、および表示走査のタイミングをそれぞれ示している。
図3において、描画は、描画処理部101による描画期間である。伝送は、映像出力装置11から表示装置12に伝送される映像信号およびフレーム間隔情報である。表示は、表示素子115における表示走査期間である。
【0081】
具体的には、
図3の描画に示すDiは、第iフレームの描画期間を示し、伝送に示すEjは、第jフレームの伝送期間を示す。表示に示すFk0およびFk1は、第kフレームの表示走査期間を示す。また、t20iは、第iフレームの描画時間を示し、t21jは、第jフレームと第j+1フレームの伝送フレーム間隔(第jフレームの伝送フレーム周期とも言う)示す。t22kとt23kは、それぞれFk0とFk1の表示走査期間のフレーム間隔を示す。ここで、i,j,kは、いずれも整数である。
【0082】
また、伝送期間が短い点を除いて、第4フレーム描画期間D4、第3フレームの伝送期間E3、第2フレームの表示走査期間F30までは、
図2と同様であるので説明は省略する。
【0083】
まず、伝送期間E3においては期間が短いので、描画期間D4が終了した後、直ちに伝送期間E4が始まる。しかしながら、表示走査期間F30は、伝送フレーム間隔t213を過ぎても継続する。
【0084】
表示走査期間F30において、伝送期間E4と重なる領域はあっても、重なる領域の表示走査の画像位置は、未伝送である。そのため、第3フレームの映像信号で表示走査することになる。第3フレームの表示走査期間F30が終了すると、第4フレームの表示走査期間F40が開始される。
【0085】
描画期間D5、伝送期間E4も短いので、第4フレームの表示走査期間F40が終了する前に、第5フレームの伝送期間E5が先に終了する。このため、表示走査期間F40の後半では、第5フレームにおける映像信号の表示に使うことができる。
【0086】
しかし、同一の表示走査期間内で異なるフレームの映像信号に切り換えると、その切り換え部分が目立つ場合がある。例えば、縦線が右に動く場合には、後フレームの縦線が前フレームの縦線の右に分かれてしまう。この現象を防ぐため、切り換え領域は、第4フレームと第5フレームとを混合して徐々に切り替えるようにするとよい。
【0087】
光学応答を補償する目的の応答補正部114は、前フレームからの差異を強調するような動作となっている。そこで、第4フレームと第5フレームとの映像を混合して切り換える領域については、応答補正部114の強調動作を弱めることによって過補償による弊害を弱めることができる。
【0088】
このように、応答補正部114の制御パラメータを調整して活用することによって、隣接フレーム映像の混合動作に用いる特別な応答補正部などの回路が不要となり、回路コスト増を抑えることができる。
【0089】
以上により、伝送速度が速く、伝送フレーム間隔を短くとれる場合は、表示素子の表示走査周期が長い場合であっても、描画データの変化を早く表示に反映することができ、表示装置12の表示レスポンスを向上させることができる。
【0090】
(実施の形態3)
本実施の形態3においては、表示走査時間が描画時間や伝送時間よりも短い場合における映像表示システムの動作について、
図1および
図4を用いて説明する。
【0091】
〈映像表示システムの動作例〉
図4は、本実施の形態3による映像表示システム10による描画、伝送、および表示タイミングの一例を示す説明図である。この
図4は、前記実施の形態1の
図2や前記実施の形態2の
図3と同様に、描画、伝送、および表示タイミングを説明する図である。
【0092】
図4において、上方から下方にかけては、
図2および
図3と同様に、描画、伝送、および表示走査のタイミングをそれぞれ示している。
図4において、描画は、描画処理部101による描画期間である。伝送は、映像出力装置11から表示装置12に伝送される映像信号およびフレーム間隔情報である。表示は、表示素子115における表示走査期間である。
【0093】
具体的には、
図4の描画に示すGiは、第iフレームの描画期間を示す。
図4の伝送に示すHjは、第jフレームの伝送期間を示す。
図4の表示に示すLk0とLk1、Lk2、Lk3は、第kフレームの表示走査期間を示す。また、t30iは第iフレームの描画時間、t31jは第jフレームと第j+1フレームの伝送フレーム間隔(第jフレームの伝送フレーム周期とも言う)、t32kとt33k、t34k、t35kは、それぞれLk0とLk1、Lk2、Lk3の表示走査期間のフレーム間隔を示す。ここで、i,j,kはそれぞれ整数である。
【0094】
前記実施の形態2の
図2では、伝送フレーム間隔t11jや表示走査期間のフレーム間隔t12k、t13kを伝送期間Bkjや表示走査期間Ck0、Ck1の開始時点をベースに示した。本実施の形態3の
図4と
図2とが異なる点は、伝送フレーム間隔t31jや表示走査期間のフレーム間隔t32k、t33k、t34k、t35kを、伝送期間Hkjや表示走査期間Lk0、Lk1、Lk2、Lk3の終了時点をベースに示しているところである。
【0095】
表示走査期間Lk0に伝送期間Hkに伝送された映像信号使う必要があるため、表示走査期間Lk0の終了時を伝送期間Hkの終了時に合わせると、描画から表示までの遅延時間を最小にできるので、終了時点をベースとした記述に変えている。
【0096】
描画期間G1に描画された第1フレームの映像データが、伝送期間H1で伝送され、表示走査期間L10で表示素子に与えられる。描画から表示までの遅延時間を最小にするため、描画期間G1の終了と伝送期間H1の開始をほぼ一致させ、伝送期間H1の終了と表示走査期間L10の終了をほぼ一致させている。
【0097】
図2と同様に、第1フレームと第2フレーム間の伝送フレーム間隔t311を、第2フレームの描画期間t302の予測値に予測誤差程度の余裕を加えた時間として算出し、その算出結果を第1フレームの伝送期間以前で映像出力装置11から表示装置12へ伝えられる。
【0098】
図2と異なるのは、表示走査期間L10が短いため、伝送期間H1の終了タイミングに合わせて配置されている点と、伝送フレーム間隔t311を半分ずつの表示走査期間t321とt331に分けて、それぞれ表示走査期間L11,L20を配置している点である。
【0099】
表示装置12がLCDなどのいわゆるホールド型の場合では、応答速度改善を狙って映像インタフェースが60Hzの映像信号を送受信している場合でも、表示素子115のリフレッシュレートを2倍〜4倍の120〜240Hzとしている例がある。このような高速リフレッシュレートの表示素子115を使用する場合を想定している。
【0100】
第3フレームの描画期間G3が長いので、伝送フレーム間隔t312も長く、表示走査期間L21,L22,L23,L30を均等に配置し、表示走査フレーム間隔t322,t332、t342、t352を等しくしている。
【0101】
但し、事前に表示装置12に伝えられていた伝送フレーム間隔t312の予測値が、実際の値と異なる場合は、最後の表示走査フレーム間隔t352を調整して、表示走査期間L30と伝送期間H3の終了タイミングを合わせるとよい。
【0102】
伝送フレーム間隔の実際の値は、伝送期間H3の開始時点で伝送期間H2の開始時点からの経過時間を測定すれば判明する。よって、表示走査期間L30が始まる前に入手することができ、表示走査フレーム間隔t352が算出できる。
【0103】
伝送時間よりも描画時間の短い描画期間G4,G5,G6が続くと、第4フレームの伝送開始は、描画期間G5の途中からとなるが、少なくとも描画期間G5が終了するまでは描画期間G4で描画されたフレームを伝送する。
【0104】
この場合、(1)描画期間G5終了後も描画期間G4で描画されたフレームを伝送し続けるか、(2)伝送期間H4の途中から描画期間G5で描画されたフレームに切り換えるか、(3)描画期間G4とG5でそれぞれ描画されたフレームを組み合わせたフレームに切り換えるか、(4)伝送期間H4を途中終了させて描画期間G5で描画されたフレームを伝送する伝送期間H5へ移行するかの4通りが考えられる。
【0105】
上記(1)〜(4)のどの方式をとったかを、表示装置12へ伝えることによって、表示装置12の制御部116が輝度補正部113、応答補正部114、および表示素子115などを制御して視聴者へ好ましい映像を提供することができる。
【0106】
図4の例では、上記(1)を選択した場合を例示しており、伝送期間H4の終了時点で描画期間G6が終了している。よって、描画期間G5で描画したフレームは、表示装置12へ伝送せずに、伝送期間H4の後に描画期間G6で描画したフレームを伝送している。
【0107】
このように、伝送されないフレームの描画は無駄になってしまうので、描画時間t304,t305,t306の合計時間を予測し、フレーム伝送時間の2倍以内であれば、描画期間G5は、描画を停止して、消費電力を減らすとよい。
【0108】
以上のように、表示素子115の表示走査期間のフレーム間隔が短い場合には、伝送期間の終了のすぐ後に表示走査周期が終了するように設定することによって、フレーム伝送時間描画データの変化を早く表示に反映することができる。
【0109】
また、表示走査フレーム間隔の最短時間や最長時間の情報を表示装置12の制御部116から、映像出力装置11の制御部103に伝達することによって、映像出力装置11は、伝送フレーム間隔を表示走査フレーム間隔へ近づけて、描画から表示までの遅延時間をさらに小さくすることができる。
【0110】
逆の論理として、表示走査フレーム間隔の最短時間が長い場合は、伝送フレーム間隔や描画時間を無理に短くせず、消費電力などに配慮した設計としてもよい。表示走査フレーム間隔の設定方法や、輝度補正、応答補正などの動作は、
図2と同様であり、その動作と効果の説明は省略する。
【0111】
(実施の形態4)
〈映像表示システムの構成例〉
本実施の形態4では、描画期間中に外部トリガが入り、描画のし直しを行う場合について説明する。
【0112】
図5は、本実施の形態4による映像表示システム10における構成の一例を示す説明図である。
【0113】
図5に示す映像表示システム10は、前記実施の形態1の
図1の映像表示システム10と同様の構成に、操作部105が新たに追加されたものとなっている。操作部105は、例えばゲームのプレイ時などにおいて用いられる操作盤、いわゆるゲームコントローラなどである。
【0114】
操作部105は、制御部103に接続されている。描画中にユーザが操作部105から描画条件などの変更指示が入力された際、制御部103は、外部トリガと認識して、その時点での描画を中止させて、新たなフレームの描画を開始する指示を行う。このような外部トリガの例としては、他にジェスチャー入力や各種センサなどがある。
【0115】
〈映像表示システムの動作例〉
図6は、
図5の映像表示システム10による描画、伝送、および表示タイミングの一例を示す説明図である。
図6において、上方から下方にかけては、描画、伝送、および表示走査のタイミングをそれぞれ示している。
図6において、描画は、描画処理部101による描画期間である。伝送は、映像出力装置11から表示装置12に伝送される映像信号およびフレーム間隔情報である。表示は、表示素子115における表示走査期間である。
【0116】
具体的には、
図6の描画に示すPiは、第iフレームの描画期間を示し、伝送に示すQjは、第jフレームの伝送期間を示す。
図6の表示に示すRk0とRk1は、第kフレームの表示走査期間を示す。ここでi,j,kはそれぞれ整数である。
【0117】
また、伝送に示すt40iは、第iフレームの描画時間を示し、t41jは、第jフレームと第j+1フレームの伝送フレーム間隔(第jフレームの伝送フレーム周期とも言う)を示す。表示に示すt42kとt43kは、それぞれRk0とRk1の表示走査期間のフレーム間隔を示す。また、矢印にて示す801,802、803は、操作部105から出力される外部トリガのタイミングを示す。なお、
図2と同様の動作部分については説明を省略する。
【0118】
図6では、第2フレームの描画期間P2において、操作部105から出力される描画のやり直しの外部トリガ801があると、描画処理部101が描画期間P2を中断し、第3フレームの描画期間P3へ移行する。
【0119】
第1フレームの伝送期間Q1またはそれ以前に第2フレームの描画予測時間t402から推定される伝送フレーム間隔t411が表示装置12へ伝達されているので、更新が必要になる。
【0120】
そこで、描画時間予測部104は、第3フレームの描画時間t403を予測し、描画期間P2の開始から外部トリガ801までの期間を加算して、新たな伝送フレーム間隔t412を予測して表示装置12に伝える。
【0121】
制御部116は、更新された伝送フレーム間隔t412に対して、表示走査期間のフレーム間隔の下限値と上限値から、表示走査期間の配置数を計算する。
図5の例では、第1フレームの表示走査期間R10に、R11を追加配置することは困難と判断した場合を示している。追加配置するかどうかは、これまで説明してきた各実施の形態で記載された方法で判断すればよい。
【0122】
表示走査期間R10は、当初予定のフレーム間隔t411と同じ表示走査期間のフレーム間隔を想定して、輝度補正や応答補正を行っているので、補正量の修正が必要となる。しかし、フレーム内での補正量変更境界が目立つので、補正量の修正をしないで、次のフレームでの輝度補正や応答補正を加減してもよい。
【0123】
この輝度補正や応答補正の加減は、外部トリガによる描画映像変更がシーンチェンジのように大幅な切り換えである場合は適用せず、部分的な動きなどの場合だけ加減が適用できるように、外部トリガによる映像変更に関する情報を映像出力装置11から表示装置12へメタデータとして提供してもよい。
【0124】
外部トリガ802および外部トリガ803は、描画期間に対して入るタイミングを順次遅らせた例を示している。第4フレームの描画期間P4において外部トリガ802が入ると、描画期間P5が開始され、更新された伝送フレーム間隔t414が表示装置12に伝えられる。これに伴い、表示走査期間R30に加えて、表示走査期間R31が追加される。
【0125】
表示走査期間R30における表示素子115の駆動は、当初予定の伝送フレーム間隔413と同じ表示走査期間のフレーム間隔を想定していたが、それが表示走査期間フレーム間隔t423に短縮される。これによって、輝度補正や応答補正などの修正が必要になるが、表示走査期間R30では修正せず、表示走査期間R31での輝度補正や応答補正を加減する。
【0126】
外部トリガ803は、第6フレームの描画期間P6の終了に近いタイミングにおいて入力されており、かつ伝送期間C5も終了している。
【0127】
第4フレームの描画時間t407の間に伝送期間Q6が配置でき、かつ描画期間P6の主要部分が描画完了していると判断される場合、途中終了した描画期間P6のフレームを伝送期間Q6で伝送し、表示走査期間R60で表示素子115に与えてもよい。
【0128】
伝送期間Q6のフレームは、描画を中断したフレームなので、どの部分が不十分かの情報を映像出力装置11から表示装置12へ伝えておくことにより、不十分な映像部分を前フレームの映像に挿入して表示することもできる。もちろん、前フレーム映像を一部挿入した映像を映像出力装置11にて生成して伝送期間Q6に表示装置12に伝送してもよい。
【0129】
このように、描画時間予測部104は、描画期間中に外部トリガが入って描画をやり直す場合に、あらためて描画時間を予測し、次に伝送するフレームまでの間隔情報を修正して表示装置12に伝送する。これによって、描画から表示までの遅延時間を短くすることが可能となり、高画質な映像を表示することができる。
【0130】
以上、伝送期間を比較的自由に配置する例で説明してきたが、上記した技術は、いわゆるフレーム間引き映像伝送方式にも適用することができる。フレーム間引き映像伝送方式は、例えば240Hzなどの高フレームレートであるが一定のフレームレートを用い、描画期間終了後で最も早いフレームで映像伝送を行い、それ以外は映像伝送しない方式である。
【0131】
この場合、映像伝送するフレームに、次の映像伝送フレームまでの伝送フレーム間隔をフレーム単位で表記して表示装置に伝送することにより、上記の実施の形態1〜4と同様の効果を得ることができる。
【0132】
以上によって、これまで述べてきたように、映像出力装置11が描画時間を予測し、その予測をもとに各フレームの伝送間隔を表示装置12に事前に伝えることにより、該表示装置12は、その各フレーム伝送間隔に応じた表示走査期間の数や配置タイミングを決め、輝度補正および応答補正などの映像信号処理や、表示素子の駆動条件を最適に制御することができる。それにより、描画から表示までの遅延時間を短縮することができると共に、高画質の映像表示を実現することができる。
【0133】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0134】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0135】
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。