【実施例】
【0036】
(実施例1)有機酸の種類の検討(1)
(1) 試料の調製
蒸留水500mLに、コハク酸4.00g(0.034mol)を添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液に、活性グルテン(水分量5.8W/W%)100gを添加し、十分に撹拌しながら、ウォーターバスを用いて80℃まで加熱した。80℃達温後、300分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。得られた反応液に対してホモジナイザーを用いて、120秒間、乳化処理を行った。乳化処理液をバット(vat)に広げ、凍結乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物(水分量7.0W/W%)を得た。フードプロセッサーを用いて、当該乾燥物を粉砕し、粉末Aを得た。
【0037】
上記のコハク酸4.00gをリンゴ酸4.56g(0.034mol)に変更する以外は同様にして、粉末Bを得た。
【0038】
また、上記のコハク酸4.00gをクエン酸6.53g(0.034mol)に変更する以外は同様にして、粉末Cを得た。
【0039】
(2)パン生地の調製および製パン
下記表1に示す配合量で、原料(小麦粉(強力粉)、冷凍生地用イースト、グラニュー糖、食塩、脱脂粉乳、水)、および、実施品Aには粉末A(コハク酸処理グルテン)、実施品Bには粉末B(リンゴ酸処理グルテン)、実施品Cには粉末C(クエン酸処理グルテン)、比較品1には未処理の活性グルテンをそれぞれ混合した。
【0040】
【表1】
【0041】
混合原料を、低速で3分間、中速で2分間、高速で2分間ミキシングした。ショートニングを添加後、さらに低速で2分間、中速で3分間、高速で2分間ミキシングし、本捏生地を得た。なおミキシングは最終の生地温度が24℃となるように調整した。28℃で30分間フロアータイムをとった後、本捏生地を50gずつ分割し、20分間ベンチタイムをとり、モルダーを用いて、それぞれ、ロール成形を行った。マイナス40℃で60分間、急速凍結して得られた冷凍生地を、マイナス25℃で、所定の期間冷凍保存した。冷凍保存後、30℃、湿度65%の条件下で、30分間静置し、解凍を行った後、38℃、湿度85%の条件下で、60分間、最終発酵を行った。その後、オーブン(上火210℃、下火190℃)で9分間焼成し、ロールパンを製造した。なお、ロールパンは、各試験区(実施品A〜C区、比較品1区、無添加区)につき6個ずつ製造した。
【0042】
(3) 評価方法
(2)で製造したロールパンについて、外観観察を行い、以下の方法でパンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
比容積:各試験区あたりロールパン3個ずつそれぞれについて2回ずつ、重量と容積を測定し、容積/重量を算出してその平均値を求めた。容積は以下の菜種置換法(食品加工学実験書、森孝夫 著、22ページ参照)により測定した。
【0043】
<菜種置換法>
検体よりも一回り大きな容器を用意し、中に菜種を満たして、すり切る。容器中の菜種をいったん取り出してパンを容器に入れ、再び菜種を満たして、すり切る。あふれた菜種の容積をメスシリンダーで測定する。この菜種の容積が、検体の容積に相当する。
【0044】
パンの高さ:各試験区あたりロールパン6個について、ノギスを用いてパンの最も高い部分を測定し、その平均値を求めた。
パンの腰もち:各試験区あたりロールパン6個について、ノギスを用いて「パンの幅の最も広い部分(α)」と「パンの天板に接地している面の最も広い幅(γ)」を測定し(
図15参照)、下記式βにより算出した値の平均値を求めた。
腰もち=1−(γ/α)(式β)
【0045】
(4) 評価結果
外観観察の結果を
図1に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの測定結果を下記表2に示す。
【表2】
【0046】
表2に示すように、粉末A(コハク酸処理グルテン)、粉末B(リンゴ酸処理グルテン)、粉末C(クエン酸処理グルテン)をそれぞれ用いた実施品A〜C区では、焼成後のロールパンの比容積、高さ、腰もちのどれもが、無添加区と未処理の活性グルテンを用いた比較品1区と比べて、高い値を示した。また、粉末A〜Cを用いた場合は、冷凍保存14日後でも、その高い値を維持し続けた。また、
図1に示すように、粉末A〜Cを用いた場合は、腰もちの良い形状であった。以上の結果から、有機酸(コハク酸、リンゴ酸、クエン酸)処理グルテンは、パン生地に優れた冷凍耐性を付与する効果があることがわかった。
【0047】
(実施例2)有機酸の種類の検討(2)
(1) 試料の調製
蒸留水500mLに、マロン酸8.85g(0.085mol)を添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液に、活性グルテン(水分量5.8W/W%)100gを添加し、十分に撹拌しながら、ウォーターバスを用いて75℃まで加熱した。75℃達温後、90分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとマロン酸を反応させた。得られた反応液(pHは2.56)に対して、ホモジナイザーを用いて、120秒間、乳化処理を行った。乳化処理液をバット(vat)に広げ、凍結乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物(水分量8.8W/W%)を得た。フードプロセッサーを用いて、当該乾燥物を粉砕し、粉末Dを得た。
【0048】
上記のマロン酸8.85gをコハク酸10.00g(0.085mol)に変更する以外は同様にして反応液(pH3.47)を得た後、乳化及び乾燥処理を行って粉末Eを得た。
上記のマロン酸8.85gをグルタル酸11.23g(0.085mol)に変更する以外は同様にして反応液(pH3.79)を得た後、乳化及び乾燥処理を行って粉末Fを得た。
上記のマロン酸8.85gをアジピン酸12.40g(0.085mol)に変更する以外は同様にして、反応液(pH3.85)を得た後、乳化及び乾燥処理を行って粉末Gを得た。
なお、500mLの蒸留水に活性グルテンを溶解したものは、pH4.97であった。
【0049】
(2)パン生地の調製および製パン
(1)で調製した粉末D(マロン酸処理グルテン)、粉末E(コハク酸処理グルテン)、粉末F(グルタル酸処理グルテン)、粉末G(アジピン酸処理グルテン)、または未処理の活性グルテンを用いて、下記表3の配合量となるように、各原料を混合する以外は、実施例1と同様にしてパン生地を調製し、各試験区(実施品D区、実施品E区、実施品F区、実施品G区、比較品2区)のロールパンを製造した。
【0050】
【表3】
【0051】
(3) 評価方法
(2)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に、外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0052】
(4) 評価結果
外観観察の結果を
図2に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの測定結果を下記表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
表4に示すように、粉末D(マロン酸処理グルテン)、粉末E(コハク酸処理グルテン)、粉末F(グルタル酸処理グルテン)、粉末G(アジピン酸処理グルテン)をそれぞれ用いた実施品D〜G区では、焼成後のロールパンの比容積、高さ、腰もちのどれもが、未処理の活性グルテンを用いた比較品2区と比べて、高い値を示した。また、粉末D〜Gを用いた場合は、冷凍保存30日後でも、その高い値を維持し続けた。また、
図2に示すように、粉末D〜Gを用いた場合は、腰もちの良い形状であった。以上の結果から、有機酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸)処理グルテンは、パン生地に優れた冷凍耐性を付与する効果があることがわかった。
【0055】
(実施例3)有機酸の量の検討(1)
(1) 試料の調製
蒸留水500mLに、コハク酸2.00g(0.017mol)を添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液に、活性グルテン(水分量5.8W/W%)100gを添加し、十分に撹拌しながら、ウォーターバスを用いて75℃まで加熱した。75℃達温後、90分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。得られた反応液(pHは4.36)に対して、ホモジナイザーを用いて、120秒間、乳化処理を行った。乳化処理液をバット(vat)に広げ、凍結乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物(水分量5.2W/W%)を得た。フードプロセッサーを用いて、当該乾燥物を粉砕し、粉末Hを得た。
【0056】
上記のコハク酸2.00gをコハク酸4.00g(0.034mol)に変更する以外は同様にして反応液を得た後、乳化及び乾燥処理を行って粉末Iを得た。
上記のコハク酸2.00gをコハク酸6.00g(0.051mol)に変更する以外は同様にして反応液を得た後、乳化及び乾燥処理を行って粉末Jを得た。
上記のコハク酸2.00gをコハク酸8.00g(0.068mol)に変更する以外は同様にして反応液を得た後、乳化及び乾燥処理を行って粉末Kを得た。
上記のコハク酸2.00gをコハク酸10.00g(0.085mol)に変更する以外は同様にして反応液を得た後、乳化及び乾燥処理を行って粉末Lを得た。
また、上記の粉末H、I、およびLの調製において反応液の段階で、そのpHおよび粘度(粘度測定時温度35℃)を測定した。その結果を表5に示す。
【0057】
【表5】
【0058】
(2)パン生地の調製および製パン
(1)で調製した粉末H(コハク酸2.00g処理グルテン)、粉末I(コハク酸4.00g処理グルテン)、粉末J(コハク酸6.00g処理グルテン)、粉末K(コハク酸8.00g処理グルテン)、粉末L(コハク酸10.00g処理グルテン)または未処理の活性グルテンを用いて、下記表6の配合量となるように、各原料を混合する以外は、実施例1と同様にしてパン生地を調製し、各試験区(実施品H区、実施品I区、実施品J区、実施品K区、実施品L区、比較品3区)のロールパンを製造した。
【0059】
【表6】
【0060】
(3) 評価方法
(2)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に、外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0061】
(4) 評価結果
外観観察の結果を
図3に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの測定結果を下記表7に示す。
【0062】
【表7】
【0063】
表7に示すように、粉末H(コハク酸2.00g処理グルテン)、粉末I(コハク酸4.00g処理グルテン)、粉末J(コハク酸6.00g処理グルテン)、粉末K(コハク酸8.00g処理グルテン)、粉末L(コハク酸10.00g処理処理グルテン)をそれぞれ用いた実施品H〜L区では、焼成後のロールパンの比容積、高さ、腰もちのどれもが、未処理の活性グルテンを用いた比較品3区と比べて、高い値を示した。また、粉末H〜Lを用いた場合は、冷凍保存30日後でも、その高い値を維持し続けた。また、
図3に示すように、粉末H〜Lを用いた場合は、腰もちの良い形状であった。以上の結果から、グルテン100重量部に対し有機酸(コハク酸)を2〜10重量部の量で反応させた有機酸(コハク酸)処理グルテンは、パン生地に優れた冷凍耐性を付与する効果があることがわかった。
【0064】
(実施例4)反応温度の検討(1)
(1) 試料の調製
蒸留水500mLに、コハク酸4.00g(0.034mol)を添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液に、活性グルテン(水分量5.8W/W%)100gを添加し、十分に撹拌しながら、ウォーターバスを用いて70℃まで加熱した。70℃達温後、300分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。得られた反応液に対して、ホモジナイザーを用いて、120秒間、乳化処理を行った。乳化処理液をバット(vat)に広げ、凍結乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物(水分量5.2W/W%)を得た。フードプロセッサーを用いて、当該乾燥物を粉砕し、粉末Mを得た。
【0065】
上記の反応温度70℃を80℃に変更する以外は同様にして、粉末Nを得た。
上記の反応温度70℃を90℃に変更する以外は同様にして、粉末Oを得た。
【0066】
(2)パン生地の調製および製パン
(1)で調製した粉末M(コハク酸/70℃処理グルテン)、粉末N(コハク酸/80℃処理グルテン)、粉末O(コハク酸/90℃処理グルテン)または未処理の活性グルテンを用いて、下記表8の配合量となるように、各原料を混合する以外は、実施例1と同様にしてパン生地を調製し、各試験区(実施品M区、実施品N区、実施品O区、比較品4区)のロールパンを製造した。
【0067】
【表8】
【0068】
(3) 評価方法
(2)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に、外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0069】
(4) 評価結果
外観観察の結果を
図4に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの測定結果を下記表9に示す。
【0070】
【表9】
【0071】
表9に示すように、粉末M(コハク酸/70℃処理グルテン)、粉末N(コハク酸/80℃処理グルテン)、粉末O(コハク酸/90℃処理グルテン)をそれぞれ用いた実施品M〜O区では、焼成後のロールパンの比容積、高さ、腰もちのどれもが、未処理の活性グルテンを用いた比較品4区と比べて、高い値を示した。また、粉末M〜Oを用いた場合は、冷凍保存30日後でも、その高い値を維持し続けた。また、
図4に示すように、粉末M〜Oを用いた場合は、腰もちの良い形状であった。以上の結果から、グルテンと有機酸(コハク酸)を70〜90℃で反応させた有機酸(コハク酸)処理グルテンは、パン生地に優れた冷凍耐性を付与する効果があることがわかった。
【0072】
(実施例5)反応温度の検討(2)
(1) 試料の調製
蒸留水500mLに、コハク酸10.00g(0.085mol)を添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液に、活性グルテン(水分量5.8W/W%)100gを添加し、十分に撹拌しながら、ウォーターバスを用いて40℃まで加熱した。40℃達温後、90分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。しかしながら、得られた反応液は、40℃加熱時に液中でダマ(塊り)となったため、反応していないと判断し、粉末化は行わなかった。
【0073】
蒸留水500mLに、コハク酸10.00g(0.085mol)を添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液に、活性グルテン(水分量5.8W/W%)100gを添加し、十分に撹拌しながら、ウォーターバスを用いて50℃まで加熱した。50℃達温後、90分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。得られた反応液に対して、ホモジナイザーを用いて、120秒間、乳化処理を行った。乳化処理後液をバット(vat)に広げ、凍結乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物(水分量5.6W/W%)を得た。フードプロセッサーを用いて、当該乾燥物を粉砕し、粉末Qを得た。
【0074】
上記の反応温度50℃を60℃に変更する以外は同様にして、粉末Rを得た。
上記の反応温度50℃を70℃に変更する以外は同様にして、粉末Sを得た。
また、上記の粉末P〜Sの調製において反応液の段階で、そのpHおよび粘度(粘度測定時温度35℃)を測定した。その結果を表10に示す。
【0075】
【表10】
【0076】
(2)パン生地の調製および製パン
(1)で調製した粉末Q(コハク酸/50℃処理グルテン)、粉末R(コハク酸/60℃グルテン)、粉末S(コハク酸/70℃処理グルテン)または未処理の活性グルテンを用いて、下記表11の配合量となるように、各原料を混合する以外は、実施例1と同様にしてパン生地を調製し、各試験区(比較品Q区、比較品R区、実施品S区、比較品5区)のロールパンを製造した。
【0077】
【表11】
【0078】
(3)評価方法
(2)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に、外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0079】
(4) 評価結果
外観観察の結果を
図5に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの測定結果を下記表12に示す。
【0080】
【表12】
【0081】
表12に示すように、粉末Q(コハク酸/50℃処理グルテン)、粉末R(コハク酸/60℃グルテン)を用いた比較品Q、R区では、未処理の活性グルテンを用いた比較品5区と比べて、差異は見られなかった。一方、粉末S(コハク酸/70℃処理グルテン)を用いた比較品S区では、焼成後のロールパンの比容積、高さ、腰もちのどれもが、未処理の活性グルテンを用いた比較品5区と比べて、高い値を示した。また、粉末Sを用いた場合は、冷凍保存30日後でも、その高い値を維持し続けた。また、
図5に示すように、粉末Sを用いた場合は、腰もちの良い形状であった。以上の結果から、グルテンと有機酸(コハク酸)を50〜60℃で反応させた有機酸(コハク酸)処理グルテンは、パン生地への冷凍凍耐性付与効果が不十分であることがわかった。
【0082】
(実施例6)反応時間の検討(1)
(1) 試料の調製
蒸留水500mLに、コハク酸4.00g(0.034mol)を添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液に、活性グルテン(水分量5.8W/W%)100gを添加し、十分に撹拌しながら、ウォーターバスを用いて80℃まで加熱した。80℃達温後、30分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。得られた反応液に対して、ホモジナイザーを用いて、120秒間、乳化処理を行った。乳化処理後液をバット(vat)に広げ、凍結乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物(水分量4.8W/W%)を得た。フードプロセッサーを用いて、当該乾燥物を粉砕し、粉末Tを得た。
【0083】
上記の反応時間30分を60分に変更する以外は同様にして、粉末Uを得た。また、上記の反応時間30分を300分に変更する以外は同様にして、粉末Vを得た。
【0084】
(2)パン生地の調製および製パン
(1)で調製した粉末T(コハク酸/80℃/30分処理グルテン)、粉末U(コハク酸/80℃/60分処理グルテン)、粉末V(コハク酸/80℃/300分処理グルテン)または未処理の活性グルテンを用いて、下記表13の配合量となるように、各原料を混合する以外は、実施例1と同様にしてパン生地を調製し、各試験区(実施品T区、実施品U区、実施品V区、比較品6区)のロールパンを製造した。
【0085】
【表13】
【0086】
(3)評価方法
(2)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に、外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0087】
(4) 評価結果
外観観察の結果を
図6に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの測定結果を下記表14に示す。
【0088】
【表14】
【0089】
表14に示すように、粉末T(コハク酸/80℃/30分処理グルテン)、粉末U(コハク酸/80℃/60分処理グルテン)、粉末V(コハク酸/80℃/300分処理グルテン)をそれぞれ用いた実施品T〜V区では、焼成後のロールパンの比容積、高さ、腰もちのどれもが、未処理の活性グルテンを用いた比較品6区と比べて、高い値を示した。また、粉末T〜Vを用いた場合は、冷凍保存30日後でも、その高い値を維持し続けた。また、
図6に示すように、粉末T〜Vを用いた場合は、腰もちの良い形状であった。以上の結果から、グルテンと有機酸(コハク酸)を80℃で30〜300分反応させた有機酸(コハク酸)処理グルテンは、パン生地に優れた冷凍耐性を付与する効果があることがわかった。
【0090】
(実施例7)反応時間の検討(2)
(1) 試料の調製
蒸留水500mLに、コハク酸4.00g(0.034mol)を添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液に、活性グルテン(水分量5.8W/W%)100gを添加し、十分に撹拌しながら、ウォーターバスを用いて70℃まで加熱した。70℃達温後、90分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。得られた反応液に対して、ホモジナイザーを用いて、120秒間、乳化処理を行った。乳化処理後の反応液をバット(vat)に広げ、凍結乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物(水分量5.2W/W%)を得た。フードプロセッサーを用いて、当該乾燥物を粉砕し、粉末Wを得た。
【0091】
上記の反応時間90分を180分に変更する以外は同様にして、粉末Xを得た。また、上記の反応時間90分を300分に変更する以外は同様にして、粉末Yを得た。
【0092】
(2)パン生地の調製および製パン
(1)で調製した粉末W(コハク酸/70℃/90分処理グルテン)、粉末X(コハク酸/70℃/180分処理グルテン)、粉末Y(コハク酸/70℃/300分処理グルテン)または未処理の活性グルテンを用いて、下記表15の配合量となるように、各原料を混合する以外は、実施例1と同様にしてパン生地を調製し、各試験区(実施品W区、実施品X区、実施品Y区、比較品7区)のロールパンを製造した。
【0093】
【表15】
【0094】
(3)評価方法
(2)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に、外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0095】
(4) 評価結果
外観観察の結果を
図7に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの測定結果を下記表16に示す。
【0096】
【表16】
【0097】
表16に示すように、粉末W(コハク酸/70℃/90分処理グルテン)、粉末X(コハク酸/70℃/180分処理グルテン)、粉末Y(コハク酸/70℃/300分処理グルテン)をそれぞれ用いた実施品W〜Y区では、焼成後のロールパンの比容積、高さ、腰もちのどれもが、未処理の活性グルテンを用いた比較品7区と比べて、高い値を示した。また、粉末W〜Yを用いた場合は、冷凍保存30日後でも、その高い値を維持し続けた。特に、粉末Yを用いたものは、腰もち、比容積で高い値を示した。また、
図7に示すように、粉末W〜Yを用いた場合は、腰もちの良い形状であった。以上の結果から、グルテンと有機酸(コハク酸)を70℃で90〜300分反応させた有機酸(コハク酸)処理グルテンは、パン生地に優れた冷凍耐性を付与する効果があることがわかった。
【0098】
(実施例8)乾燥方法の検討
(1) 試料の調製
30L発酵槽(Jar fermentor)内で、蒸留水12.5Lに、コハク酸100g(0.847mol)を添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液に、活性グルテン(水分量5.8W/W%)2500gを添加し、十分に撹拌しながら、蒸気を用いてジャケット加熱を行い、80℃まで加熱した。80℃達温後、210分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。得られた反応液に対して、ホモジナイザーを用いて、120秒間、乳化処理を行った。乳化処理液をバット(vat)に広げ、凍結乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物(水分量4.8W/W%)を得た。フードプロセッサーを用いて、上記乾燥物を粉砕し、フリーズドライ粉末(粉末FD)を得た。
【0099】
30L発酵槽(Jar fermentor)内で、蒸留水12.5Lに、コハク酸100g(0.847mol)を添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液に、活性グルテン(水分量5.8W/W%)2500gを添加し、十分に撹拌しながら、蒸気を用いてジャケット加熱を行い、80℃まで加熱した。80℃達温後、210分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。得られた反応液に対して、ダブルドラム型ドラムドライヤーを用いて、乾燥・粉末化処理し、ドラムドライ粉末(粉末DD)を得た。
【0100】
蒸留水1000mLに、コハク酸8g(0.068mol)と食塩2gを添加して混合し、混合液を得た。得られた混合液に、活性グルテン(水分量5.8W/W%)200gを添加し、十分に撹拌しながら、ウォーターバスを用いて、80℃まで加熱した。80℃達温後、300分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。得られた反応液に対して、1.5倍重量の蒸留水を加え、ホモジナイザーを用いて、120秒間、乳化処理を行った。乳化処理液を、噴霧乾燥(スプレードライ)し、スプレードライ粉末(粉末SD:水分量4.6W/W%)を得た。
【0101】
(2)パン生地の調製および製パン
(1)で調製した粉末FD、粉末DD、粉末SD、または未処理の活性グルテンを用いて、下記表17の配合量となるように、各原料を混合する以外は、実施例1と同様にしてパン生地を調製し、各試験区(実施品FD区、実施品DD区、実施品SD区、比較品8区)のロールパンを製造した。
【0102】
【表17】
【0103】
(3)評価方法
(2)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に、外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0104】
(4) 評価結果
外観観察の結果を
図8に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの測定結果を下記表18に示す。
【0105】
【表18】
【0106】
表18に示すように、粉末FD(フリーズドライ乾燥)、粉末DD(ドラムドライ乾燥)、粉末SD(スプレードライ乾燥)をそれぞれ用いた実施品FD、DD、SD区では、焼成後のロールパンの比容積、高さ、腰もちのどれもが、未処理の活性グルテンを用いた比較品8区と比べて、高い値を示した。また、
図8に示すように、粉末FD、DD、SDを用いた場合は、腰もちの良い形状であった。以上の結果から、有機酸(コハク酸)処理グルテンの冷凍耐性付与効果は、乾燥方法を問わず得られることがわかった。
【0107】
(実施例9)加水量の変更
(1)パン生地の調製および製パン
実施例8で調製した粉末FDまたは未処理の活性グルテンを用い、下記表19の配合量(加水量を変更)となるように、各原料を混合する以外は、実施例1と同様にしてパン生地を調製し、各試験区(実施品FD65区、実施品FD70区、実施品FD75区、比較品9A区、比較品9B区、比較品9C区)のロールパンを製造した。
【0108】
【表19】
【0109】
(2)評価方法
(1)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に、外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0110】
(3) 評価結果
外観観察の結果を
図9に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの測定結果を下記表20に示す。
【0111】
【表20】
【0112】
表20に示すように、粉末FD(コハク酸処理グルテン)を用いた実施品FD65、FD70、FD75区では、焼成後のロールパンの比容積、高さ、腰もちのどれもが、未処理の活性グルテンを用いた比較品9A、9B、9C区と比べて、高い値を示した。また、粉末FDを用いた場合は、冷凍保存30日後でも、その高い値を維持し続けた。また、
図9に示すように、粉末FDを用いた場合は、腰もちの良い形状であった。以上の結果から、有機酸(コハク酸)処理グルテンの冷凍耐性付与効果は、加水量を増加させても得られることがわかった。
【0113】
(実施例10)L−アスコルビン酸と併用した影響
(1)パン生地の調製および製パン
実施例8で調製した粉末FDを用い、下記表21の配合量(L−アスコルビン酸(L-ascorbic acid)量を変更)となるように、各原料を混合する以外は、実施例1と同様にしてパン生地を調製し、各試験区(実施品AA00区、実施品AA10区、実施品AA50区、実施品AA100区)のロールパンを製造した。
【0114】
【表21】
【0115】
(2)評価方法
(1)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に、外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0116】
(3) 評価結果
外観観察の結果を
図10に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの測定結果を下記表22に示す。
【0117】
【表22】
【0118】
表22に示すように、粉末FD(コハク酸処理グルテン)を用いることで、L−アスコルビン酸の添加量を減らした場合においても、焼成後のロールパンの比容積、高さ、腰もちのどれもが、高い値を示した。また、冷凍保存30日後でも、その高い値を維持し続けた。また、
図10に示すように、粉末FD(コハク酸処理グルテン)を用いた場合、L−アスコルビン酸の添加量に関わらず、腰もちの良い形状であった。以上の結果から、有機酸(コハク酸)処理グルテンの冷凍耐性付与効果は、L−アスコルビン酸の添加量を減らしても得られることがわかった。
【0119】
(実施例11)生地の種類の検討
(1)パン生地の調製および製パン
下記表23に示す配合量で、原料(小麦粉(強力粉)、スクラッチ生地用イースト、L−アスコルビン酸水溶液(水100mLに対して、L−アスコルビン酸を1g添加した水溶液)、グラニュー糖、食塩、脱脂粉乳、水)、および、実施品FD001には実施例8で調製した粉末FD(コハク酸処理グルテン)、比較品001には未処理の活性グルテンをそれぞれ混合した。
【0120】
【表23】
【0121】
混合した原料は、低速で3分間、中速で2分間、高速で2分間ミキシングした。ショートニングを添加後、さらに低速で2分間、中速で3分間、高速で3分間ミキシングし、本捏生地を得た。なおミキシングは最終の生地温度が27℃となるように調整した。28℃で60分間フロアータイムをとった後、本捏生地を50gずつ分割し、20分間ベンチタイムをとり、モルダーを用いて、それぞれ、ロール成形を行った。その後、38℃、湿度85%の条件下で、60分間、最終発酵を行い、オーブン(上火210℃、下火190℃)で8分間焼成し、各試験区(無添加品002区、比較品001区、実施品FD001区)のロールパンを製造した。
【0122】
(2)評価方法
(1)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に、外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0123】
(3) 評価結果
パンの比容積、高さ、腰もちの測定結果を下記表24に示す。
【0124】
【表24】
【0125】
表24に示すように、粉末FD(コハク酸処理グルテン)を用いた実施品FD001区では、未処理の活性グルテンを用いた比較品001区や無添加品002区と比べて、焼成後のロールパンの腰もちが高い値を示した。有機酸(コハク酸)処理グルテンは、冷凍生地のみならず、スクラッチ法の生地にも用いることができた。また、有機酸処理グルテンを用いることで、同じ生地からスクラッチ法の生地と冷凍生地とを同時に製造できることも示された。
【0126】
(比較試験1)アミン処理グルテンを用いた比較試験
(1) 試料の調製
実施例1のコハク酸4.0gをプトレシン9.0gに変更する以外は同様にして、比較粉末PTを調製した。また、実施例1のコハク酸4.0gをカダベリン10.9gに変更する以外は同様にして、比較粉末CVを調製した。
【0127】
(2)パン生地の調製および製パン
(1)で調製した比較粉末PT(プトレシン処理グルテン)、比較粉末CV(カダベリン処理グルテン)、または未処理の活性グルテンを用いて、下記表25の配合量となるように、各原料を混合する以外は、実施例1と同様にしてパン生地を調製し、各試験区(比較品PT区、比較品CV区、比較品10区)のロールパンを製造した。
【0128】
【表25】
【0129】
(3)評価方法
(2)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に、外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0130】
(4) 評価結果
外観観察の結果を
図11に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの測定結果を下記表26に示す。
【0131】
【表26】
【0132】
図11に示す外観から明らかなように、比較粉末PT(プトレシン処理グルテン)、比較粉末CV(カダベリン処理グルテン)を用いた比較品PT区、比較品CV区では、発酵不良が発生した。表24に示すように、比較粉末PT(プトレシン処理グルテン)、比較粉末CV(カダベリン処理グルテン)を用いた比較品PT区、比較品CV区では、未処理の活性グルテンを用いた比較品10区と比べた場合においても、焼成後のロールパンの比容積および高さが明らかに劣っていた。
【0133】
(比較試験2)pH変化による比較試験
(1) 試料の調製
実施例1のコハク酸4.0gを酢酸10.0gに変更する以外は同様にして反応液(pH3.3)を得た後、乳化及び乾燥処理を行って比較粉末SAを調製した。また、実施例1のコハク酸4.0gの代わりに、12N塩酸を用いて、水溶液をpH3.5に調整する以外は同様にして反応液(pH3.14)を得た後、乳化及び乾燥処理を行って比較粉末HAを調製した。
【0134】
(2)パン生地の調製および製パン
(1)で調製した比較粉末SA(酢酸処理グルテン)、比較粉末HA(塩酸処理グルテン)、または未処理の活性グルテンを用いて、下記表27の配合量となるように、各原料を混合する以外は、実施例1と同様にしてパン生地を調製し、各試験区(比較品SA区、比較品HA区、比較品11区)のロールパンを製造した。
【0135】
【表27】
【0136】
(3)評価方法
(2)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に、外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0137】
(4) 評価結果
外観観察の結果を
図12に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの測定結果を下記表28に示す。
【0138】
【表28】
【0139】
表28に示されるように、比較粉末SA(酢酸処理グルテン)、比較粉末HA(塩酸処理グルテン)を用いた比較品SA区、比較品HA区では、未処理の活性グルテンを用いた比較品11区と比べて、焼成後のロールパンの比容積、高さ、腰もちのいずれにおいても大きな差異は見られなかった。以上の結果から、カルボニル基を2つ以上有さない有機酸や無機酸による処理グルテンでは冷凍耐性付与効果は、得られないことがわかった。
【0140】
(実施例12)2種以上の有機酸併用の検討
(1)試料の調製
蒸留水500gに、活性グルテン(水分量5.8W/W%)100gを添加し、溶解し、コハク酸4.00g(0.034mol)を添加し、十分に撹拌しながら、ウォーターバスを用いて80℃まで加熱した。80℃達温後、240分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。得られた反応液をバットに広げ、凍結乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物(水分量5.5W/W%)を得た。ハンマーミルを用いて、当該乾燥物を粉末化し、粉末121を得た。
【0141】
上記のコハク酸4.00gを、コハク酸2.00gおよびクエン酸2.00gの合計4.00gの有機酸に変更する以外は同様にして、粉末122を得た。
【0142】
また、上記コハク酸4.00gを、コハク酸2.00gおよびリンゴ酸2.00gの合計4.00gの有機酸に変更する以外は同様にして、粉末123を得た。
【0143】
また、上記コハク酸4.00gを、クエン酸2.00gおよびリンゴ酸2.00gの合計4.00gの有機酸に変更する以外は同様にして、粉末124を得た。
【0144】
(2)パン生地の調製および製パン
下記表29に示す配合量で、原料(小麦粉(強力粉)、冷凍生地用イースト、グラニュー糖、食塩、脱脂粉乳、水)、および実施品121には粉末121(コハク酸4.00g処理グルテン)、実施品122には粉末122(コハク酸2.00g、クエン酸2.00g処理グルテン)、実施品123には粉末123(コハク酸2.00g、リンゴ酸2.00g処理グルテン)、実施品124には粉末124(クエン酸2.00g、リンゴ酸2.00g処理グルテン)をそれぞれ混合した。
【0145】
【表29】
【0146】
混合原料を、低速で3分間、中速で2分間、高速で2分間ミキシングした。ショートニングを添加後、さらに低速で2分間、中速で3分間、高速で2分間ミキシングし、本捏生地を得た。なお、ミキシング最終生地温度が24℃となるように調整した。28℃で30分間フロアータイムをとった後、本捏生地を50gずつに分割し、20分間ベンチタイムをとり、モルダーを用いて、それぞれ、ロール成形を行った。上記ロール成形した生地を、マイナス35℃で60分間、急速凍結して、冷凍生地を得た。得られた冷凍生地を、マイナス25℃で、所定の期間、冷凍保存した。冷凍保存後、30℃、湿度65%の条件下で30分間静置し、解凍を行った。解凍後、38℃、湿度85%の条件下で60分間、最終発酵を行った。その後、オーブン(上火210℃、下火200℃)で9分間焼成し、ロールパンを製造した。なお、ロールパンは各試験区につき、6個ずつ製造した。
【0147】
(3)評価方法
(2)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0148】
(4)評価結果
外観観察の結果を
図13に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの結果を下記表30に示す。
【0149】
【表30】
【0150】
表30に示すように、粉末121(コハク酸4.00g処理グルテン)、粉末122(コハク酸2.00g、クエン酸2.00g処理グルテン)、粉末123(コハク酸2.00g、リンゴ酸2.00g処理グルテン)、粉末124(クエン酸2.00g、リンゴ酸2.00g処理グルテン)をそれぞれ用いた、実施品121〜実施品124区では、焼成後ロールパンの比容積、高さ、腰もちのどれもが、高い値を示した。また、冷凍保存30日目においても、その高い値を維持し続けた。以上の結果から、カルボニル基を二つ以上有する有機酸を2種類混合した場合においても、冷凍耐性付与効果が得られることが分かった。
【0151】
(実施例13)有機酸の量の検討(2)
(1)試料の調製
蒸留水500gに、活性グルテン(水分量5.8W/W%)100gを添加し、溶解し、コハク酸0.50g(0.004mol)を添加し、十分に撹拌しながら、ウォーターバスを用いて80℃まで加熱した。80℃達温後、240分間、さらに撹拌を行い、活性グルテンとコハク酸を反応させた。得られた反応液をバットに広げ、凍結乾燥機を用いて乾燥し、乾燥物(水分量5.5W/W%)を得た。ハンマーミルを用いて、当該乾燥物を粉末化し、粉末131を得た。
【0152】
上記のコハク酸0.50gを、コハク酸1.00gに変更する以外は同様にして、粉末132を得た。
【0153】
また、上記コハク酸0.50gを、コハク酸2.00gに変更する以外は同様にして、粉末133を得た。
【0154】
(2)パン生地の調製および製パン
下記表31に示す配合量で、原料(小麦粉(強力粉)、冷凍生地用イースト、グラニュー糖、食塩、脱脂粉乳、水)、および、比較品130には反応前の活性グルテン、比較品131には粉末131(コハク酸0.50g処理グルテン)、実施品132には粉末132(コハク酸1.00g処理グルテン)、実施品133には粉末133(コハク酸2.00g処理グルテン)をそれぞれ混合した。
【0155】
【表31】
【0156】
混合原料を、低速で3分間、中速で2分間、高速で2分間ミキシングした。ショートニングを添加後、さらに低速で2分間、中速で3分間、高速で2分間ミキシングし、本捏生地を得た。なお、ミキシング最終生地温度が24℃となるように調整した。28℃で30分間フロアータイムをとった後、本捏生地を50gずつに分割し、20分間ベンチタイムをとり、モルダーを用いて、それぞれ、ロール成形を行った。上記ロール成形した生地を、マイナス35℃で60分間、急速凍結して、冷凍生地を得た。得られた冷凍生地を、マイナス25℃で、所定の期間、冷凍保存した。冷凍保存後、30℃、湿度65%の条件下で30分間静置し、解凍を行った。解凍後、38℃、湿度85%の条件下で60分間、最終発酵を行った。その後、オーブン(上火210℃、下火200℃)で9分間焼成し、ロールパンを製造した。なお、ロールパンは各試験区につき、6個ずつ製造した。
【0157】
(3)評価方法
(2)で製造したロールパンについて、実施例1と同様に外観観察を行い、パンの比容積、高さ、腰もちを測定した。
【0158】
(4)評価結果
外観観察の結果を
図14に、また、パンの比容積、高さ、腰もちの結果を下記表32に示す。
【0159】
【表32】
【0160】
表32に示すように、反応前の活性グルテンを用いた比較品130区、および、粉末131(コハク酸0.50g処理グルテン)を用いた比較品131区は、冷凍保存後の焼成後のロールパンにおいて、高さが保たれず、腰もちが大きく低下していた。それに対して、粉末132(コハク酸1.00g処理グルテン)、粉末133(コハク酸2.00g処理グルテン)をそれぞれ用いた、実施品132および実施品133区では、焼成後ロールパンの比容積、高さ、腰もちのどれもが、高い値を示した。また、冷凍保存30日目においても、その高い値を維持し続けた。