特許第6663477号(P6663477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6663477親指の大菱形骨と中手骨間の関節用のプロテーゼ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663477
(24)【登録日】2020年2月18日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】親指の大菱形骨と中手骨間の関節用のプロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/42 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
   A61F2/42
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-500876(P2018-500876)
(86)(22)【出願日】2016年4月7日
(65)【公表番号】特表2018-512984(P2018-512984A)
(43)【公表日】2018年5月24日
(86)【国際出願番号】IB2016051974
(87)【国際公開番号】WO2016166641
(87)【国際公開日】20161020
【審査請求日】2017年9月27日
(31)【優先権主張番号】MI2015A000522
(32)【優先日】2015年4月13日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517339822
【氏名又は名称】ランツェッタ マルコ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(72)【発明者】
【氏名】ランツェッタ マルコ
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−040250(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0295379(US,A1)
【文献】 特開昭50−041379(JP,A)
【文献】 特開2007−262568(JP,A)
【文献】 特表2013−502285(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0147332(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0021839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親指の大菱形骨と中手骨間の関節用のプロテーゼ(1)であって、親指の船状骨(31)と中手骨(30)との間に配置するのに適した本体(2)を備え、前記本体は、前記船状骨(31)と中手骨(30)との間のスペーサとして機能するのに適しているプロテーゼにおいて、前記本体(2)が、アルキメデスの立体の形状を有しており、
前記アルキメデスの立体の形状をした本体(2)の面(17)の間には、表面の溝(16)を設け、
前記本体(2)を取り囲むように、ネット又は格子状要素(10)を、前記表面の溝内に備えることを特徴とするプロテーゼ。
【請求項2】
前記格子状要素(10)が、前記本体(2)の表面の溝(16)に挿入されていることを特徴とする請求項に記載のプロテーゼ。
【請求項3】
前記格子状要素(10)の糸が、非吸収性の糸、例えばプロレン又はナイロンからなる糸であることを特徴とする請求項に記載のプロテーゼ。
【請求項4】
前記本体が、ゴアテックス、ダクロン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又は他の生体適合性のプラスチック材料若しくは金属材料からなっていることを特徴とする請求項1に記載のプロテーゼ。
【請求項5】
前記プロテーゼの本体(2)を手の骨に固定できるようにするのに適した固定手段(13、18)が備わっていることを特徴とする請求項1に記載のプロテーゼ。
【請求項6】
前記固定手段が、格子状要素(10)の少なくとも2個のアイレット(13)又はプロテーゼの本体(2)から直接突出し、前記プロテーゼの本体と一体になった少なくとも2個のアイレット(18)であることを特徴とする請求項5に記載のプロテーゼ。
【請求項7】
前記本体が、20面体の形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のプロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の公知要件事項部に記載の親指の大菱形骨と中手骨間の関節用のプロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
大菱形骨と中手骨間の関節の関節症は、大菱形骨と中手骨間の関節の進行性劣化を引き起こし、通常の人間の作業活動における手の使用、とりわけ親指の使用を制限する疾患であることが知られている。この疾患は皆、痛みを伴うものである。
【0003】
この病気は、薬で治療することができるが、最も重い関節症の症状においては、手に外科手術を施す必要がある。
【0004】
非常に良好な結果をもたらす見込みのある手術は、大菱形骨を全摘出し、生体適合性の材料からなり、親指の大菱形骨と中手骨間の関節用のプロテーゼとして作用し、船状骨と中手骨との間の相対位置を安定化させる効用を有するスペーサと取り替えることを伴う手術である。
【0005】
ヨーロッパ特許第1112753号は、2個の可動な骨の表面の間に挟み込ませるインプラントを開示しており、このインプラントは、熱分解炭素を含む材料からなり、間にインプラントが配置される骨への固定手段が不要である。この特許文献は、何れの場合にも常に連続的で丸みのある表面を有するインプラントの種々の実施の形態を開示している。この解決策は、こうした丸みのある表面があるため、インプラントの骨への最適な固定を確保していない。
【0006】
米国特許出願公開第2013/0226306号は、骨の間に配置するのに適した、ポリカーボネートウレタンからなり、圧縮力及び剪断力に耐えるインプラントを開示している。先行技術であるこの特許文献には、この先行技術の発明の種々の実施の形態が、開示されている。これらの実施の形態のほとんどが、隣接する骨の間に挟み込むのに適した本体を備えており、この本体から、骨に形成された穴に挿入するのに適したピンが突出している。こうしたピンが備わっておらず、本体だけが隣接する骨の間に挟み込まれている実施の形態も、開示されている。こうした本体は、凹状の及び/又は凸状の及び/又は平坦な表面を備えた形状を有することができ、これらの表面は、適切な方法で、骨に処置をしてそれらの骨を成形し、インプラントの表面とぴったりと接触するようにすることによって得られる対応する表面と協働する。米国特許出願公開第2013/0226306号公報に記載のインプラントを使用するには、患者の骨を処置してそれらの骨をインプラントの表面及び/又は軸と協働するように整える必要がある。軸が備わっていない場合には、インプラントの本体は、本体に面する骨に全く固定されておらず、骨と骨の間及び骨とインプラントの間に望ましくないずれが生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、公知のプロテーゼと比較して改良された、船状骨に対して中手骨の基部を最適に安定させることのできる上記のタイプのプロテーゼを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、大菱形骨の代わりに公知のプロテーゼを配置するのに用いられる手法よりも簡単な手法で、手に組み入れることのできる上記のタイプのプロテーゼを提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、手の組織に手早く組み入れることのできるプロテーゼを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、X線検査の際に識別することのできるプロテーゼを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的及び当業者には明らかになるであろう目的は、本発明による、親指の大菱形骨と中手骨間の関節用のプロテーゼであって、親指の船状骨と中手骨との間に配置するのに適した本体を備え、前記本体は、前記船状骨と中手骨との間のスペーサとして機能するのに適しているプロテーゼにおいて、本体が、アルキメデスの立体の形状を有していることを特徴とするプロテーゼプロテーゼによって達成される。
【0012】
本発明がより良く理解されるよう、単なる説明の目的で、したがって非限定の例示として以下の図面を添付する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるプロテーゼの正面図を示している。
図2図1のプロテーゼの平面図を示している。
図3】図のプロテーゼが挿入された手の概略透視図を示している。
図4図1のプロテーゼの斜視図を示しており、分かり易くなるよう一部分が切り取られている。
図5図1のプロテーゼの変更実施形態の正面図を示している。
図6図5のプロテーゼが挿入された手の概略透視図を示している。
図7図5のプロテーゼの斜視図を示しており、分かり易くなるよう一部分が切り取られている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面において、同じ又は対応する部分は、同じ参照符号で示されている。
【0015】
図1〜4を参照すると、それらの図面は、本発明の第1の実施の形態を示しており、この第1の実施の形態では、プロテーゼが、全体を参照符号1で示され、生体適合性の材料からなる中実な本体2を備えている。例えば、この本体2は、ゴアテックス、ダクロン又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなっていてよい。
【0016】
本体2は、図4に示すように、X線検査において本発明によるプロテーゼ1を見えるようにするのに適した金属コア3を備えていてもよい。
【0017】
こうした本体2は、アルキメデスの立体(半正多面体)形状で、最も好ましくは手の大菱形骨によって占められているスペースを「占める」形状を有している。外科手術中、この骨(大菱形骨)を手から摘出すると、最も好ましくはアルキメデスの立体形状のプロテーゼによってぴったりと塞がれる実質的に立方体形状のスペースができる。そのため、本体2は、手の中手骨30と船状骨31との間に配置され、これらの骨の間のスペーサとして機能する。中手骨30の基部32は、本体に載っている。
【0018】
本体2には、例えば、ナイロン、プロレン(ポリプロピレン)等、本体2の、手の組織への組み込みと固定を容易にし、本体の又は周囲の組織の繊維化反応を刺激する他の材料からなる非吸収性の糸10が巻き付けられているのが好ましい。
【0019】
こうした非吸収性の糸からなるネットは、互いに反対側の位置に配置された少なくとも2個のアイレット又は小穴12及び13を備えることにより、本体を所定の位置に固定しており、このアイレット又は小穴を通じて、腱組織又は被膜組織に、好ましくは非吸収性タイプのものである1本以上の縫合糸(図示せず)を通してかがり縫いをし、プロテーゼ1をそれらの組織の間に固定させるようにすることができる。
【0020】
ネット10は、2個以上のアイレットを備え、実際にプロテーゼを手の骨にも固定することができる。
【0021】
図5図6及び図7では、本発明によるプロテーゼ1は、正20面体、すなわち、複数の切子面を特徴とする中実体である。本明細書で考察する本体は、プロテーゼの個々の6角形及び5角形の面17の間に表面の溝16を有していてもよく、有していなくてもよい。こうした溝内又は何れにしても本体2の表面上には、図1図4に示す実施の形態の場合のように、(例えば、ナイロン又はプロレンからなる)ネット又は格子状要素10が配置される。
【0022】
図5図7に示す本発明によるプロテーゼ1は、さらに、本体2と一体になった複数の突出した、(縫合糸を用いて)プロテーゼを腱組織又は皮膜組織に固定するアイレット18を備えている。
【0023】
図5に示す解決策は、さらに、金属コアを有することにより、X線検査において本発明によるプロテーゼを検知可能にしてもよい。
【0024】
この図5図7に示す本発明によるプロテーゼ1の手への組み込みは、図1図4に関して既に述べた手法と同様の手法で行われるので、こうした組み込み法は、これ以上説明しない。
【0025】
本発明によるプロテーゼ1は、その形状のおかげで、手の大菱形骨を摘出して空いたスペースに容易に組み込むことができる。実際には、本体2は、隣接する骨と接触するのに好ましい部分を有しないアルキメデスの立体の形状を有しているので、この組み込みに関して、好ましい方向はない。本体の切子面のある形状が、(必ずしも、プロテーゼの表面と協働するよう表面処理をする必要がない)隣接する骨の表面での滑りが制限されることを保証する。これは、先行技術によるプロテーゼの湾曲した表面と骨との間に生じる摩擦として述べた摩擦よりも大きな本発明によるプロテーゼの平坦な表面と骨との間に生じる摩擦のために起きる事柄である。
【0026】
さらに、この本体は、取り扱いが容易であり、本体を取り囲む部分(ネット10)のネット状の形態のおかげで、隣接するプロテーゼ周辺の組織に容易に組み込むことができる。実際、こうしたネット又は格子状要素10は、プロテーゼを受け入れる組織体の繊維性の増殖を刺激するので、組み込みが容易なこと及び交換領域におけるインプラントのプロテーゼ強度が増すだけでなく、プロテーゼの固定を促進し強度を高める。
【0027】
本発明の種々の実施の形態を説明してきたが、上記の記載に基づいて、他の実施の形態も為し得ると考えられる。例えば、本体2は、種々の公知のアルキメデスの立体の形状を維持しながら、20面体の切子面とは異なる複数の切子面を有していてもよい。こうした本発明の実施の変更形態も、以下の特許請求の範囲の範囲内にあると考えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7