(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラは、前記ポンプトルク補正量を記憶するための記憶部を備え、前記記憶部に記憶された前記ポンプトルク補正量に基づいて、前記ポンプトルク目標値を調整することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
前記コントローラは、通信が可能な外部装置からの指令に基づいて、前記ポンプトルク補正量を求める処理と、前記記憶部に記憶された前記ポンプトルク補正量を初期化する処理とのうち、いずれかの処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の建設機械。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態による建設機械として、ハイブリッド式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0014】
ここで、
図1ないし
図12は本発明の第1の実施の形態を示している。
図1および
図2に示すように、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、移動手段となる下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に設けられ掘削作業等を行う多関節構造の作業装置5とを備えている。下部走行体2は、走行動作を行うための油圧モータ2Aを備えている。旋回装置3は、旋回動作を行うための油圧モータ3Aを備えている。なお、下部走行体2としてクローラ式を例示したが、ホイール式でもよい。
【0015】
上部旋回体4は、旋回フレーム6上に設けられエンジン20等が収容された建屋カバー7と、運転席8を内包するキャブ9とを備えている。モニタ装置10は、運転席8の前方に位置して、キャブ9内に設けられている。モニタ装置10は、コントローラ26からの信号を受信して、機械の稼動情報を表示する。モニタ装置10は、ボタン、タッチパネル等の入力装置を備えてもよい。この場合、モニタ装置10によって、コントローラ26の各種の処理を操作してもよい。操作装置11は、例えば操作レバー、操作ペダルからなり、運転席8の周囲に位置して、キャブ9内に設けられている。エンジン制御ダイヤル12は、エンジン20の目標回転数を設定するものであり、キャブ9内に設けられている。
【0016】
作業装置5は、フロントアクチュエータ機構である。作業装置5は、例えばブーム5A、アーム5B、バケット5Cと、これらを駆動するブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fとによって構成されている。作業装置5は、旋回フレーム6に取付けられ、シリンダ5D〜5Fを伸長または縮小することによって、俯仰の動作を行う。なお、
図1には、バケット5Cを使用した場合を例示したが、バケット5C以外でもブレーカ等の各種アタッチメントを使用してもよい。
【0017】
図2に示すように、操作装置11は、例えばキャブ9内の運転席8の両脇に設けられ、作業用および旋回用の操作レバー11Aを含んでいる。これらの操作レバー11Aは、任意の方向へ傾転操作されることで、作業装置5の駆動操作と、旋回装置3の旋回操作とを行う。また、操作装置11は、運転席8の前側に位置して、下部走行体2の走行操作を行うための操作レバー11Bおよび操作ペダル11Cも含むものである。
【0018】
ゲートロックレバー13は、運転席8よりもキャブ9の出入口側に位置して、キャブ9内に設けられている。具体的には、ゲートロックレバー13は、運転席8の左横に配置されている。ゲートロックレバー13は、上下方向に傾転操作が可能である。ゲートロックレバー13が上がっている状態は、ロック状態であり、エンジン稼動中に操作装置11を倒しても車体が動作不能な状態である。一方、エンジン稼動中にゲートロックレバー13を下げると、車体の動作が可能となる。
【0019】
次に、油圧ショベル1に搭載された、作業装置5等の動作を制御する油圧システムの構成について、
図3を参照して説明する。
【0020】
エンジン20は、旋回フレーム6に搭載されている。このエンジン20は、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関によって構成されている。エンジン20の出力側には、油圧ポンプ22と電動発電機30とが機械的に直列接続して取付けられ、これらの油圧ポンプ22と電動発電機30とは、エンジン20によって駆動される。エンジン20は、エンジン回転数ωeを検出する回転センサ20Aを備えている。
【0021】
ここで、エンジン20の作動はエンジンコントロールユニット21(以下、ECU21という)によって制御されている。ECU21は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。ECU21は、コントローラ26からのエンジン出力指令に基づいて、エンジン20の出力トルク、回転速度(エンジン回転数)等を制御する。また、ECU21は、回転センサ20Aに接続されている。ECU21は、回転センサ20Aによって検出したエンジン回転数ωeをコントローラ26に出力する。なお、エンジン20の最大出力は、例えば油圧ポンプ22の最大動力よりも小さくなっている。
【0022】
油圧ポンプ22は、エンジン20に機械的に接続されている。油圧ポンプ22は、エンジン20単独のトルクによって駆動可能である。また、油圧ポンプ22は、エンジン20のトルクに電動発電機30のアシストトルクを加えた複合トルク(合計トルク)によっても駆動可能である。油圧ポンプ22は、タンク(図示せず)内に貯溜された作動油を加圧し、下部走行体2の油圧モータ2Aと、旋回装置3の油圧モータ3Aと、作業装置5のシリンダ5D〜5Fとに圧油として吐出する。このとき、走行用の油圧モータ2A、旋回用の油圧モータ3Aおよび作業用のシリンダ5D〜5Fは、油圧アクチュエータを構成している。走行用の油圧モータ2A、旋回用の油圧モータ3Aおよび作業用のシリンダ5D〜5Fは、油圧ポンプ22の吐出圧によって作動する。
【0023】
油圧ポンプ22は、例えば斜板式または斜軸式の可変容量型油圧ポンプによって構成され、斜板または斜軸の傾転角に応じて容量が調整可能となっている。油圧ポンプレギュレータ23は、斜板等の傾転角を制御する傾転制御アクチュエータであり、油圧ポンプ22に設けられている。また、油圧ポンプ22には、作動油温度を検出する温度センサ(図示せず)が設けられている。温度センサによって検出した作動油温度は、コントローラ26に入力される。
【0024】
油圧ポンプ用電磁比例弁24は、ポンプトルク調整装置を構成している。油圧ポンプ用電磁比例弁24は、コントローラ26からのポンプトルク目標値Tpに応じて油圧ポンプレギュレータ23を駆動し、油圧ポンプ22の傾転角を変化させる。これにより、油圧ポンプ用電磁比例弁24は、油圧ポンプ22の最大ポンプトルクを調整する。
【0025】
油圧ポンプ22は、コントロールバルブ25を介して油圧モータ2A,3A、シリンダ5D〜5Fに接続されている。これらの油圧モータ2A,3A、シリンダ5D〜5Fは、油圧ポンプ22からの圧油によって駆動する。コントロールバルブ25は、操作装置11に対する操作に応じて、油圧ポンプ22から吐出された圧油を油圧モータ2A,3A、シリンダ5D〜5Fに供給または排出する。
【0026】
コントローラ26は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。コントローラ26は、操作装置11の操作量OA、車体出力の調整が可能なエンジン制御ダイヤル12の調整量、油圧ポンプ22や油圧アクチュエータから計測した圧力値等に基づいて、エンジン20の目標回転数やポンプトルク目標値Tpを算出する。目標回転数は、ECU21に出力(送信)される。ECU21は、目標回転数に従って、エンジン20の燃料噴射量を制御する。ポンプトルク目標値Tpは電流指示値に変換され、油圧ポンプ用電磁比例弁24を励磁して、油圧ポンプレギュレータ23を駆動する。これにより、油圧ポンプレギュレータ23は、油圧ポンプ22の傾転角を変化させて、油圧ポンプ22の最大ポンプトルクを制御する。
【0027】
図4は、油圧システムのP−Q特性線図を示している。
図5は、操作装置11の操作量OAとポンプ流量Qとの関係を示している。油圧ポンプ22の出力は、ポンプ圧力Pとポンプ流量Qの積で表される(出力=P×Q)。一般的には、油圧ポンプ22の出力特性は、理想曲線L1に近似した近似特性L2が設定される(
図4参照)。即ち、本実施の形態に係る油圧ショベル1は、基本特性として、
図4に示すポンプ吐出圧と押し除け容積の関係、即ち、ポンプ吐出圧(ポンプ圧力P)と押し除け容積に相応する吐出流量Qの関係であるPQ線図で示す特性を有する。
【0028】
このとき、ポンプ圧力Pが予め決められた所定のポンプ圧力値P1よりも低いときには、油圧ポンプ22は、最大ポンプ流量Qmaxを流す。これに対し、ポンプ圧力Pがポンプ圧力値P1以上に差し掛かると、油圧ポンプ22は、近似特性L2に従ってポンプ流量Qが制限される。これにより、油圧ポンプ22は、エンジン出力特性L3を超えない範囲で、そのポンプ出力が制御される。このとき、油圧ポンプ22のポンプ流量Qは、主に操作装置11の操作量OA(レバー操作量)に基づいて決定される。このため、
図5中の特性線L4のように、操作装置11の操作量OAの増加に伴って、油圧ポンプ22に要求されるポンプ流量Qは、増加する。このとき、操作量OAが予め決められた所定の操作量OA1よりも大きいときには、最大のポンプ流量Qmaxが要求される。
【0029】
また、
図6に示すように、油圧ショベル1は、基本特性として、PQ線図移動特性を有する。
図6中の特性線L21は、エンジン20の目標回転数に基づく最大ポンプトルクに相応するPQ線図である。これに対し、
図6中の特性線L22は最大ポンプトルクよりも低い低トルク制御によるポンプトルク、例えば最小ポンプトルクに相応するPQ線図である。油圧システムの特性は、ポンプトルク目標値Tpに応じて、最大ポンプトルクに相応するPQ線図(特性線L21)と、最小ポンプトルクに相応するPQ線図(特性線L22)との間を移動可能になっている。
【0030】
次に、油圧ショベル1に搭載された、電動発電機30等を制御する電動システムの構成について、
図3および
図7を参照して説明する。
【0031】
図3に示すように、電動発電機30(モータジェネレータ)は、エンジン20に機械的に接続されている。電動発電機30は、例えば同期電動機等によって構成されている。電動発電機30は、エンジン20を動力源に発電機として働き蓄電装置34への電力供給を行う発電と、蓄電装置34からの電力を動力源にモータとして働きエンジン20および油圧ポンプ22の駆動をアシストする力行との2通りの役割を果たす。従って、エンジン20のトルクには、状況に応じて電動発電機30のアシストトルクが追加され、これらのトルクによって油圧ポンプ22は駆動する。この油圧ポンプ22から吐出される圧油によって、作業装置5の動作や車両の走行等が行われる。
【0032】
電動発電機30は、インバータ31を介して一対の直流母線32A,32Bに接続されている。インバータ31は、例えばトランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等からなる複数のスイッチング素子を用いて構成されている。インバータ31は、電動発電機30を制御する。インバータ31は、パワーコントロールユニット33(以下、PCU33という)によって、各スイッチング素子のオン/オフが制御される。PCU33は、例えばマイクロコンピュータによって構成されている。
【0033】
電動発電機30の発電時には、インバータ31は、電動発電機30からの交流電力を直流電力に変換して蓄電装置34に供給する。電動発電機30の力行時には、インバータ31は、直流母線32A,32Bの直流電力を交流電力に変換して電動発電機30に供給する。そして、PCU33は、コントローラ26からの発電またはアシストの指令に基づいて、インバータ31の各スイッチング素子のオン/オフを制御する。これにより、PCU33は、電動発電機30の発電時の発電電力や力行時の駆動電力を制御する。
【0034】
蓄電装置34は、リレー35を介してインバータ31および電動発電機30に電気的に接続されている。蓄電装置34は、例えばリチウムイオンバッテリからなる複数個のセル(図示せず)によって構成され、直流母線32A,32Bに接続されている。リレー35は、蓄電装置34とインバータ31との間を電気的に接続または切断する。蓄電装置34は、電動発電機30の発電時に、電動発電機30の発電電力によって充電される。蓄電装置34は、電動発電機30の力行時に、電動発電機30に駆動電力を供給する。
【0035】
バッテリコントロールユニット36(以下、BCU36という)は、蓄電装置34およびリレー35を制御する。BCU36は、例えばマイクロコンピュータによって構成されると共に、蓄電装置34の状態を検出する蓄電装置状態検出部を構成している。
図7に示すように、BCU36は、電圧測定部37、電流測定部38、温度測定部39、SOC推定部40を備えている。電圧測定部37は、蓄電装置34に搭載されたセルの電圧を測定する。電圧測定部37は、測定して各セルの電圧に基づいて、例えば最大(最高)セル電圧、最小(最低)セル電圧、セル全体の総電圧等を算出する。
【0036】
電流測定部38は、セル内に流れる電流Iを計測する。即ち、電流測定部38は、蓄電装置34と電動発電機30との間で授受する電流Iを測定する。温度測定部39は、各セルの温度を測定する。BCU36は、温度測定部39によって測定して各セルの温度に基づいて、例えば最大(最高)セル温度TCmax、最小(最低)セル温度TCminを求める。SOC推定部40は、電圧測定部37によって検出した各種の電圧V(最大セル電圧、最小セル電圧、セル全体の総電圧)と、電流測定部38によって測定した電流Iとが入力される。SOC推定部40は、これらの電圧Vと電流Iに基づいて、蓄電装置34の蓄電率SOC(充電率)を推定する。このため、SOC推定部40は、蓄電装置34の蓄電率SOC(充電率)を演算する充電率演算部となっている。このとき、蓄電率SOCは、蓄電装置34の蓄電量に対応した値になる。BCU36は、電流I、蓄電率SOC、最大セル温度TCmax、最小セル温度TCmin等を、コントローラ26に出力(送信)する。
【0037】
次に、コントローラ26によるポンプトルクの補正処理について、
図8を参照して説明する。
図8は、コントローラ26について、ポンプトルク補正を実行する部分の機能ブロック図を示している。
【0038】
コントローラ26は、アシスト指令演算部41を備えている。また、コントローラ26は、ポンプトルク補正演算部42、ポンプ基準流量演算部43、乗算器44、ポンプトルク目標値演算部45を備えている。さらに、コントローラ26は、記憶部46、切換部47を備えている。
【0039】
アシスト指令演算部41は、操作装置11の操作量OAと、エンジン20の駆動状態と、蓄電率SOCとに基づいて、電動発電機30をアシスト動作させるためのアシスト指令Saを演算する。このため、アシスト指令演算部41には、操作装置11の操作量OAと、エンジン回転数ωeと、蓄電率SOCとが入力される。アシスト指令演算部41は、操作装置11の操作量OAと蓄電率SOCとに基づいて、車体に要求される要求トルクを演算する。アシスト指令演算部41は、エンジン回転数ωeに基づいて、エンジン20が発生するエンジントルクを算出する。アシスト指令演算部41は、要求トルクよりもエンジントルクが小さいとき、即ち、要求トルクに対してエンジントルクが不足するときには、要求トルクとエンジントルクとの差分に応じてアシストトルクを算出する。アシスト指令演算部41は、アシストトルクに応じた電流を電動発電機30に供給するために、アシストトルクに応じたアシスト指令SaをPCU33に出力する。これにより、PCU33は、アシスト指令Saに応じてインバータ31を制御し、電動発電機30によってアシストトルクを発生させる。
【0040】
なお、アシスト指令演算部41は、操作装置11の操作量OAと、エンジン20の駆動状態と、蓄電率SOCとに限らず、例えば蓄電装置34の状態(電圧、電流)も考慮して、アシスト指令Saを演算してもよい。
【0041】
ポンプトルク補正演算部42は、蓄電装置34から電動発電機30に流れる電流Iに基づいて、ポンプトルク補正量Qadjを演算する。ポンプトルク補正演算部42は、例えば公差のある油圧ポンプ22が搭載された油圧ショベル1について、ポンプ出力を補正する場合に実行される。ポンプトルク補正演算部42は、積分器42A、偏差演算部42B、正負判定器42C、特性マップ42Dを有している。
【0042】
積分器42Aは、蓄電装置34に流れる電流値を所定の時間(例えば、数秒間)積算し、電流積算値AH1を求める。このとき、積分器42Aは、油圧アクチュエータ(油圧モータ2A,3A、シリンダ5D〜5F)が駆動したときに電流測定部38により測定した電動発電機30へ流れる電流Iの電流値を積算し、指標として電流積算値AH1を取得する指標取得部となっている。偏差演算部42Bは、測定した電流積算値AH1から基準値AH0(電流積算基準値AH0)を減算し、測定した電流積算値AH1と基準値AH0との偏差ΔAHを求める。
【0043】
ここで、基準値AH0は、基準となるエンジン20および油圧ポンプ22を搭載した機械で、予め計測された指標基準値としての電流積算値である。具体的には、公差がない校正されたエンジン20と油圧ポンプ22を搭載した機械で、電流積算値を予め計測しておく。この電流積算値が基準値AH0であり、基準値AH0は、制御パラメータとしてコントローラ26に記憶されている。
【0044】
正負判定器42Cは、偏差演算部42Bから出力される偏差ΔAHに基づいて、基準となる機械に対して車体出力が高いのか低いのかを判断する。特性マップ42Dは、正負判定器42Cの判定結果を考慮して、偏差ΔAHからポンプトルク補正量Qadjを求める。偏差ΔAHの結果が負であれば、基準よりも低い車体出力であるため、特性マップ42Dは、ポンプ出力を増加させるようなポンプトルク補正量Qadjを求める。このとき、ポンプトルク補正量Qadjは、例えば1よりも大きい値になる(Qadj>1)。一方、偏差ΔAHの結果が正であれば、基準よりも高い車体出力であるため、特性マップ42Dは、ポンプ出力を制限するようなポンプトルク補正量Qadjを求める。このとき、ポンプトルク補正量Qadjは、例えば1よりも小さい値になる(Qadj<1)。
【0045】
なお、操作装置11の操作量OAが所定値よりも大きいとき(例えば、最大操作量のとき)、車体に対する要求トルクがエンジントルクを上回る。このとき、電動発電機30による動力アシストが開始され、蓄電装置34から電動発電機30に向けて、動力アシストに必要なエネルギ(電流)が供給される。一方、操作装置11の操作量OAが所定量よりも小さいときには、車体に対する要求トルクがエンジントルクを下回るから、動力アシストは実行されない。そこで、動力アシストが実行される状態で、ポンプトルク補正演算部42は、ポンプトルク補正量Qadjの演算処理を実行する。
【0046】
ポンプ基準流量演算部43は、ポンプ基準流量として、操作装置11の操作量OAに応じて必要となるポンプ流量Q0(以下、要求ポンプ流量Q0という)を求める。具体的には、操作装置11の操作量OAが大きいときには、ポンプ基準流量演算部43は、操作量OAに応じて要求ポンプ流量Q0を増加させる。操作装置11の操作量OAが小さいときには、ポンプ基準流量演算部43は、操作量OAに応じて要求ポンプ流量Q0を減少させる。
【0047】
乗算器44は、要求ポンプ流量Q0に対してポンプトルク補正量Qadjに基づく補正演算を行う補正演算部を構成している。具体的には、乗算器44は、要求ポンプ流量Q0に対して、ポンプトルク補正演算部42で求められたポンプトルク補正量Qadjを乗算する。これにより、乗算器44は、ポンプトルク補正量Qadjに基づいて、ポンプ流量Q1を調整する。
【0048】
ポンプトルク目標値演算部45は、調整後のポンプ流量Q1をポンプトルク目標値Tpに換算する。ポンプトルク目標値演算部45は、ポンプトルク目標値Tpを油圧ポンプ用電磁比例弁24に出力する。このような構成によれば、数秒間のレバー操作を行うだけで、油圧ポンプ出力の補正を実施することができ、補正作業の効率向上を図ることができる。
【0049】
なお、コントローラ26は、補正演算として、ポンプトルク目標値Tpを算出するための要求ポンプ流量Q0に対して、ポンプトルク補正量Qadjを乗算するものとした。本発明はこれに限らず、コントローラ26は、例えばポンプトルク目標値Tpを求めた後に、ポンプトルク補正量Qadjに基づく補正演算(例えば乗算)を行ってもよい。また、コントローラ26は、補正演算として、要求ポンプ流量Q0またはポンプトルク目標値Tpに対して、ポンプトルク補正量に応じた値を加算または減算することによって、補正演算を行ってもよい。
【0050】
記憶部46は、ポンプトルク補正演算部42によって算出したポンプトルク補正量Qadjを格納する。記憶部46は、例えば不揮発性メモリ等によって構成されている。ポンプトルク補正演算部42が補正演算を実行し、ポンプトルク補正量Qadjが算出されたときには、記憶部46は、新たな算出されたポンプトルク補正量Qadjを格納する。
【0051】
切換部47は、記憶部46とポンプトルク補正演算部42とのうちいずれか一方のポンプトルク補正量Qadjを選択する。例えば機械組立直後のように、ポンプトルク補正量Qadjを演算するときには、切換部47は、ポンプトルク補正演算部42によって算出したポンプトルク補正量Qadjを選択して、乗算器44に入力する。一方、ポンプトルク補正量Qadjの演算が終了して、ポンプトルク補正量Qadjが記憶部46に格納された後は、切換部47は、記憶部46に記憶されたポンプトルク補正量Qadjを選択して、乗算器44に入力する。即ち、車体の出荷時やメンテナンス時には、切換部47は、ポンプトルク補正演算部42によって算出したポンプトルク補正量Qadjを選択する。これ以外の通常の動作時には、切換部47は、記憶部46に格納されたポンプトルク補正量Qadjを選択する。
【0052】
次に、外部指令によってポンプトルク補正量Qadjの演算処理を実行する場合について、
図9を参照して説明する。
【0053】
ポンプトルク補正量Qadjの演算処理を実行する作業状況は、例えば機械組立直後が想定される。作業者が外部装置としてのコンピュータ50(以下、PC50という)から油圧ショベル1に搭載されたコントローラ26にアクセスして、ポンプトルク補正量Qadjの演算処理を実行するための作業準備に入る。例えば、機械組立後に行われる試験のために普段から利用しているサービスツール(PC50)があれば、そのツールにポンプトルク補正メニューを追加しておき、PC50上から開始ボタンを押下して、補正を実行させる仕組みを設けておくことが望ましい。
【0054】
図9は、外部指令に基づいてポンプトルク補正量Qadjの演算処理を実行する部分について、コントローラ26の機能ブロック図を示している。コントローラ26は、ポンプトルク補正演算部42に加えて、補正開始判定部51、カウンタ演算部52、記憶処理部53を備えている。
【0055】
補正開始判定部51は、ポンプトルク補正量Qadjの演算処理が開始可能か否かを判定する。具体的には、補正開始判定部51では、PC50から開始トリガを受け付けたら、ポンプトルク補正量Qadjの演算が開始できるか否かを判定する。補正開始判定部51は、判定結果に応じてポンプトルク補正開始フラグF1の有効と無効を切り換える。ポンプトルク補正開始フラグF1は、カウンタ演算部52に入力される。
【0056】
カウンタ演算部52は、ポンプトルク補正開始フラグF1が有効であるときに、ポンプトルク補正量Qadjの演算を開始させる。カウンタ演算部52は、ポンプトルク補正量Qadjが算出されると、ポンプトルク補正量Qadjの演算を終了させる。具体的には、カウンタ演算部52は、ポンプトルク補正開始フラグF1に応じて、ポンプトルク補正実行フラグF2の有効と無効を切り換える。カウンタ演算部52は、ポンプトルク補正量Qadjの演算開始(測定開始)からの時間を計測し、予め設定された測定に必要な時間(測定時間)が経過すると、ポンプトルク補正終了フラグF3を無効から有効に切り換える。
【0057】
記憶処理部53は、ポンプトルク補正演算部42でポンプトルク補正量Qadjが算出されると、ポンプトルク補正量Qadjを、例えばEEPROMのような不揮発性メモリ領域からなる記憶部46に書き込む。これにより、車体が次回起動する以後は、コントローラ26は、記憶部46に記憶されたポンプトルク補正量Qadjに基づいて、ポンプトルク目標値Tpを補正する。このため、コントローラ26は、補正された状態でポンプ出力を制御できる。但し、油圧ポンプ22を載せ替える状況が発生した場合には、再度、ポンプトルク補正量Qadjを算出し直す必要がある。その際には、記憶処理部53は、記憶部46に記憶済みのポンプトルク補正量Qadjを初期化する。初期化作業は、ポンプトルク補正量Qadjの演算処理を実行するときと同様に、サービスツールからボタン押下をトリガに、コントローラ26に対して初期化命令を実行できることが望ましい。
【0058】
次に、ポンプトルクの補正を実行するとき、および記憶部46を初期化するときの処理内容について、
図10ないし
図12を参照して説明する。
【0059】
まず、補正開始判定部51が実行する補正開始判定処理の内容について、
図10を参照して説明する。
図10は、補正開始判定部51が実行する補正開始判定処理のフローチャートを示している。補正開始判定処理では、ポンプトルク補正量Qadjの演算を開始するための開始条件を判定する。
【0060】
ステップS1で、開始トリガが有効であるか否かを判定する。開始トリガが有効であれば、ステップS1で「YES」と判定し、ステップS2に遷移する。ステップS2では、機械に異常が無いか否かを判定する。例えばポンプ制御に必要なセンサ、電磁比例弁等の電気機器が断線またはショートしたとき、電動系のシステムエラーが生じたときのように、各種の機器故障が生じると、正常な値のポンプトルク補正量Qadjを算出することができなくなる。このため、機械に故障が無いことを、ポンプトルク補正量Qadjの演算を開始するための条件の1つとしている。機械に異常がないときには、ステップS2で「YES」と判定し、ステップS3に遷移する。
【0061】
ステップS3では、エンジン回転数ωeが規定値以上であるか否かを判定する。エンジン回転数ωeの規定値は、例えば、車体が高出力を出すために必要な回転数を設定する。エンジン回転数ωeが規定値以上であるときには、ステップS3で「YES」と判定し、ステップS4に遷移する。
【0062】
ステップS4では、蓄電装置34の蓄電率SOCが規定値の範囲内に維持されているか否かを判定する。蓄電率SOCが過度に放電されている状態で、ポンプトルク補正量Qadjの演算を実行すると、電動発電機30による動力アシスト量が低下してしまい、事前に定めた電流積算値の基準値AH0と大きく乖離して正常な測定結果を判定できなくなる虞れがある。蓄電装置34の蓄電率SOCが規定値の範囲内にあるときには、ステップS4で「YES」と判定し、ステップS5に遷移する。
【0063】
ステップS5では、BCU36から受信する最小セル温度が規定値の範囲内に収まっているか否かを判定する。最小セル温度が著しく低温である場合には、セルの内部抵抗が上昇して、常温時と比較すると得られる電動発電機30の出力が低下する。これにより、車体出力に影響が生じるため、最小セル温度の規定範囲は、電動出力が低下しない温度で設定する。最小セル温度が規定値の範囲内にあるときには、ステップS5で「YES」と判定し、ステップS6に遷移する。
【0064】
ステップS6では、作動油温度が規定値の範囲内に収まっているか否かを判定する。作動油温度が過度に低温状態または高温状態にあると作動油の粘度が影響し、圧力特性が変化する虞れや、低温状態と高温状態を防止する観点から車体出力を制限する制御が働く可能性がある。このため、ステップS6では、作動油温度の温度条件を判定している。作動油温度が規定値の範囲内にあるときには、ステップS6で「YES」と判定し、ステップS7に遷移する。
【0065】
ステップS7では、操作装置11の操作量OAが最大(フルレバー操作)か否かを判定する。ポンプトルク補正量Qadjの演算処理は、例えばフロントアクチュエータ(シリンダ5D〜5F)の駆動時に実行させる。このため、操作レバー11Aの操作量から判断する。なお、ステップS7の判定内容は、車体出力(ポンプ出力)を最大出力(最大要求ポンプ流量)にすることが目的である。このため、作業装置5を動作させるための作業操作に限らず、例えば、旋回操作または走行操作でもよく、作業操作と旋回操作とを組み合わせた複合操作でもよく、高出力を要求する操作であれば、いずれの操作でもよい。また、操作量OAは、必ずしも最大である必要はなく、要求ポンプ流量Q0が最大値になる値(例えば操作量OA1)以上であればよい。操作装置11の操作量OAが最大であるときには、ステップS7で「YES」と判定し、ステップS8に遷移する。
【0066】
このように、ステップS1〜S7の全てで条件成立の場合、即ちステップS1〜S7の全てで「YES」と判定した場合には、ステップS8で、ポンプトルク補正開始フラグF1を有効にする。ポンプトルク補正開始フラグF1は、カウンタ演算部52に送られる。一方、ステップS1〜S7のいずれかで条件非成立の場合、即ちステップS1〜S7のいずれかで「NO」と判定した場合には、ステップS9で、ポンプトルク補正開始フラグF1を無効にする。
【0067】
次に、カウンタ演算部52が実行する補正実行処理の内容について、
図11を参照して説明する。
図11は、補正実行処理のフローチャートを示している。
【0068】
ステップS11では、ポンプトルク補正開始フラグF1を判定する。ポンプトルク補正開始フラグF1が有効であれば、ステップS11で「YES」と判定し、ステップS12に遷移する。ステップS12では、予め決められた所定の待ち時間を経過しているか否かを判定する。待ち時間を設けるのは、ポンプトルク補正の開始直後は急激な電流の立ち上りが発生し、安定して電流値を計測できないためである。電流値は直ぐに安定するため、待ち時間は例えば数秒程度でよい。待ち時間が経過していないときには、ステップS12で「NO」と判定し、ステップS11以降の処理を繰り返す。待ち時間が経過したときには、ステップS12で「YES」と判定し、ステップS13に遷移する。
【0069】
ステップS13では、ポンプトルク補正実行フラグF2を有効にする。このポンプトルク補正実行フラグF2が有効になった時点で、コントローラ26は、ポンプトルク補正演算部42を起動させる。続くステップS14では、測定時間が経過しているか否かを判定する。測定時間は、車体出力がどの程度高出力を維持できるかという点を考慮して決められている。このため、測定時間は、十分に計測が可能な時間として、例えば、数秒〜十数秒程度に設定されている。測定時間が経過していないときには、ステップS14で「NO」と判定し、そのまま待機する。測定時間が経過したときには、ステップS14で「YES」と判定し、ステップS15に遷移する。
【0070】
ステップS15では、ポンプトルク補正終了フラグF3を有効にする。本実施の形態では、作業者がPC50上で作業しているため、測定が終了したかどうかを通知する必要がある。ポンプトルク補正終了フラグF3が有効のときに、PC50上の画面に測定完了の通知アクションを実施する。なお、測定完了通知以外にも測定完了までの時間を進捗バーで示してもよい。作業が完了したらPC50から開始トリガが無効であることを受信する。そのときは、ポンプトルク補正開始フラグF1が無効になるため、ステップS11で「NO」と判定し、ステップS16に遷移する。ステップS16では、ポンプトルク補正実行フラグF2およびポンプトルク補正終了フラグF3を無効にする。
【0071】
次に、記憶部46を初期化する初期化処理の内容について、
図12を参照して説明する。
図12は、初期化処理のフローチャートを示している。
図12では、ポンプトルク補正量Qadjの初期化は、サービスツールとしてのPC50で、初期化ボタンを押下したときに、実行されることを想定している。このため、
図12中の初期化処理は、PC50およびコントローラ26で実行される。
【0072】
ステップS21では、サービスツール起動時にPC50とコントローラ26との間で相互に通信が可能であるか否かを判定する。通信が可能なときには、ステップS21で「YES」と判定し、ステップS22に遷移する。
【0073】
ステップS22では、コントローラ26からポンプトルクの補正処理が終了しているか否かを判定する。即ち、ステップS22では、ポンプトルク補正量Qadjが記憶部46に既に格納されているか否かを判定する。具体的には、PC50は、コントローラ26から記憶部46に格納されたポンプトルク補正量Qadjに応じた信号を受信し、この信号に基づいて、補正処理が終了しているか否かを判定する。補正処理が終了しているときには、ステップS22で「YES」と判定し、ステップS23に遷移する。
【0074】
なお、サービスツール側では、補正処理が終了したときの信号をコントローラ26から受信したときのみ、初期化ボタンを活性化させておくとよい。具体的には、記憶部46に格納されたポンプトルク補正量Qadjの数値が、0(ゼロ)や無効なデータと定義している値となっている場合は、初期化ボタンを非活性にしておく。
【0075】
ステップS23では、作業者は、PC50の初期化ボタンを押下する。これにより、PC50からコントローラ26に記憶部46の初期化を実行するためのトリガが出力(送信)される。
【0076】
続くステップS24では、コントローラ26は、初期化の実行指令となるトリガをPC50から受信したときに、記憶部46に記憶されたポンプトルク補正量Qadjをクリアする。なお、一般的にソフトウエアのアップデート時には、不揮発性メモリからなる記憶部46に記憶されたパラメータは、全て初期化される。このときに、ポンプトルク補正量Qadjも一緒にクリアされると、その都度ポンプトルクの補正作業を実行しなければならないという問題が生じる。このため、ポンプトルク補正量Qadjは、記憶部46のうちソフトウエアのアップデート時に初期化されない領域に配置される。ポンプトルク補正量Qadjは、
図12に示す初期化処理が実行されて、初めて初期化されることが好ましい。
【0077】
かくして、第1の実施の形態によれば、コントローラ26は、蓄電装置34から電動発電機30へ流れる電流Iの電流値を積算した電流積算値AH1を、指標として取得する積分器42A(指標取得部)を備えている。具体的には、油圧ショベル1は、蓄電装置34と電動発電機30との間で授受する電流Iを測定する電流測定部38を備えている。積分器42Aは、油圧アクチュエータ(油圧モータ2A,3A、シリンダ5D〜5F)が駆動したときに電流測定部38により測定した電動発電機30へ流れる電流Iの電流値を積算し、指標として電流積算値AH1を取得する。コントローラ26は、油圧アクチュエータが駆動したときに積分器42A(指標取得部)で取得した電流積算値AH1(指標)と、基準となるエンジン20と油圧ポンプ22とを用いて電流積算値を予め計測した電流積算基準値AH0(指標基準値)との偏差ΔAHに基づいて、ポンプトルク目標値Tpを補正するためのポンプトルク補正量Qadjを求める。このため、例えば数十秒程度の車体の動作によって、ポンプトルク補正量Qadjの演算を実行することができ、組立直後のキャリブレーション工数の低減と作業時間短縮に寄与することができる。
【0078】
また、油圧アクチュエータが駆動したときに電動発電機30へ流れる電流Iの電流値に基づいてポンプトルク補正量Qadjを求めるから、電動発電機30の駆動特性も考慮してポンプトルクの補正を行うことができる。このため、ハイブリッド式の油圧ショベル1で電動発電機30がアシスト動作を行うときであっても、電動発電機30のアシスト動作を考慮して、油圧ポンプ22の出力ばらつきを抑制することができる。
【0079】
また、コントローラ26は、ポンプトルク補正量Qadjを記憶するための記憶部46を備え、記憶部46に記憶されたポンプトルク補正量Qadjに基づいて、ポンプトルク目標値Tpを調整する。このため、例えば組立直後のキャリブレーション作業で、ポンプトルク補正量Qadjの演算処理を実行したときに、算出したポンプトルク補正量Qadjを記憶部46に記憶することができる。次回以降の起動時には、コントローラ26は、記憶部46に記憶されたポンプトルク補正量Qadjを用いてポンプトルク目標値Tpを調整することができる。この結果、ポンプトルク補正量Qadjを逐次演算する場合に比べて、コントローラ26の演算負荷を低減することができる。
【0080】
さらに、コントローラ26は、通信が可能なPC50(外部装置)からの指令に基づいて、ポンプトルク補正量Qadjを求める処理と、記憶部46に記憶されたポンプトルク補正量Qadjを初期化する処理とのうち、いずれかの処理を実行する。このため、組立直後のキャリブレーション作業時には、コントローラ26は、PC50からの指令に基づいて、ポンプトルク補正量Qadjを求める処理を実行することができる。また、油圧ポンプ22を交換するようなメンテナンス時には、コントローラ26は、PC50からの指令に基づいて、記憶部46に記憶されたポンプトルク補正量Qadjを初期化することができる。この場合、コントローラ26は、改めてポンプトルク補正量Qadjを求める処理を実行し、ポンプトルク補正量Qadjを新たな油圧ポンプ22に応じた値に更新することができる。
【0081】
なお、第1の実施の形態では、外部装置としてのPC50を操作することによって、ポンプトルクの補正処理を実行する場合を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、外部のコンピュータではなく、例えば油圧ショベル1に予め搭載されたモニタ装置10を操作することによって、ポンプトルクの補正処理を実行してもよい。
【0082】
次に、
図13は本発明の第2の実施の形態によるコントローラを示している。第2の実施の形態の特徴は、コントローラは、油圧アクチュエータを駆動したときの充電率減少量(指標)と、基準となるエンジンと油圧ポンプとを用いて充電率減少量を予め計測した充電率減少量基準値(指標基準値)との偏差に基づいて、ポンプトルク補正量を求めることにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0083】
第2の実施の形態によるコントローラ61は、第1の実施の形態によるコントローラ26とほぼ同様に構成されている。このため、コントローラ61は、アシスト指令演算部41、ポンプトルク補正演算部62、ポンプ基準流量演算部43、乗算器44、ポンプトルク目標値演算部45、記憶部46、切換部47を備えている。但し、ポンプトルク補正演算部62は、蓄電装置34の蓄電率SOCの減少量Dsoc1(充電率減少量)に基づいて、ポンプトルク補正量Qadjを演算する。この点で、第2の実施の形態によるコントローラ61は、第1の実施の形態によるコントローラ26とは異なる。ポンプトルク補正演算部62は、減算処理部62A、偏差演算部62B、正負判定器62C、特性マップ62Dを有している。
【0084】
減算処理部62Aは、蓄電装置34の蓄電率SOCについて操作開始時の値から所定の時間(例えば、数秒間)が経過した後の値を減算し、減少量Dsoc1を求める。このとき、減算処理部62Aは、油圧アクチュエータ(油圧モータ2A,3A、シリンダ5D〜5F)が駆動したときにBCU36のSOC推定部40で演算した蓄電率SOCの減少量Dsoc1を求め、指標として充電率減少量を取得する指標取得部となっている。偏差演算部62Bは、測定した減少量Dsoc1から基準値Dsoc0を減算し、測定した減少量Dsoc1と基準値Dsoc0との偏差ΔDを求める。
【0085】
ここで、基準値Dsoc0は、基準となるエンジン20および油圧ポンプ22を搭載した機械で、予め計測された蓄電率SOCの減少量である。具体的には、公差がない校正されたエンジン20と油圧ポンプ22を搭載した機械で、蓄電率SOCの減少量を予め計測しておく。この減少量が基準値Dsoc0であり、基準値Dsoc0は、制御パラメータとしてコントローラ61に記憶されている。
【0086】
正負判定器62Cは、偏差演算部62Bから出力される偏差ΔDに基づいて、基準となる機械に対して車体出力が高いのか低いのかを判断する。特性マップ62Dは、正負判定器62Cの判定結果を考慮して、偏差ΔDからポンプトルク補正量Qadjを求める。偏差ΔDの結果が負であれば、基準より低い車体出力であるため、特性マップ62Dは、ポンプ出力を増加させるようなポンプトルク補正量Qadjを求める。一方、偏差ΔDの結果が正であれば、基準より高い車体出力であるため、特性マップ62Dは、ポンプ出力を制限するようなポンプトルク補正量Qadjを求める。
【0087】
かくして、第2の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。第2の実施の形態によるコントローラ61は、蓄電装置34の蓄電率SOCの減少量Δsoc1を、指標として取得する減算処理部62A(指標取得部)を備えている。具体的には、油圧ショベル1は、蓄電装置34の蓄電率SOC(充電率)を演算するSOC推定部40(充電率演算部)を備えている。減算処理部62Aは、油圧アクチュエータ(油圧モータ2A,3A、シリンダ5D〜5F)が駆動したときにSOC推定部40で演算した蓄電率SOCの減少量Δsoc1を求め、指標として充電率減少量を取得する。コントローラ61は、油圧アクチュエータが駆動したときに減算処理部62Aで取得した減少量Δsoc1(指標)と、基準となるエンジン20と油圧ポンプ22とを用いて蓄電率SOCの減少量を予め計測した基準値Dsoc0(指標基準値)との偏差に基づいて、ポンプトルク目標値Tpを補正するためのポンプトルク補正量Qadjを求める。即ち、コントローラ61は、電流積算値に代えて蓄電率SOCの減少量Δsoc1を用いてポンプトルク補正量Qadjを求める。このとき、電流積算値に応じて蓄電率SOCの減少量Δsoc1も変化する。このため、第2の実施の形態によるコントローラ61のポンプトルク補正演算部62でも、第1の実施の形態と同様に、ポンプトルク補正量Qadjを求めることができる。
【0088】
なお、電流Iの精度は、BCU36(電流測定部38)の測定精度に依存する。また、蓄電率SOCの精度は、電流測定部38の測定精度に加え、電圧測定部37の測定精度およびSOC推定部40の演算精度に依存する。このため、コントローラは、第1の実施の形態によるポンプトルク補正演算部42と、第2の実施の形態によるポンプトルク補正演算部62とを両方とも備え、電流Iと蓄電率SOCのどちらを利用するか選択してもよい。また、外部からのトリガに応じて、第1の実施の形態によるポンプトルク補正演算部42と、第2の実施の形態によるポンプトルク補正演算部62とを切り換える構成としてもよい。
【0089】
前記実施の形態では、建設機械としてクローラ式のハイブリッド油圧ショベル1を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、エンジンおよび油圧ポンプに連結された電動発電機と、油圧ポンプで駆動する油圧アクチュエータとを備えた建設機械であればよく、例えばホイール式のハイブリッド油圧ショベル、ハイブリッドホイールローダ等の各種の建設機械に適用可能である。