特許第6663553号(P6663553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663553
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20200302BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20200302BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20200302BHJP
【FI】
   H01M8/0258
   H01M8/2465
   !H01M8/10
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-227051(P2016-227051)
(22)【出願日】2016年11月22日
(65)【公開番号】特開2018-85207(P2018-85207A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】近藤 考司
(72)【発明者】
【氏名】橋本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】菅野 大輔
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−203669(JP,A)
【文献】 特開2008−053197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0258
H01M 8/2465
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体を有する第1プレートと、同第1プレートを挟む一対の第1セパレータと、それら前記第1セパレータおよび前記第1プレートの間に形成されて発電用ガスが通過する第1流路と、を備えて積層された複数の発電セルと、
第2プレートと、同第2プレートを挟む一対の第2セパレータと、それら前記第2セパレータおよび前記第2プレートの間に形成されて発電用ガスが通過する第2流路と、を備えて前記発電セルの積層方向における両端のうちの少なくとも一方に設けられたエンドセルと、
前記第1セパレータと前記第1プレートと前記第2セパレータと前記第2プレートとに各別に形成された貫通孔からなるとともに、前記積層方向に延びて前記第1流路および前記第2流路に発電用ガスを分配して導入する導入路と、を有する燃料電池であって、
前記エンドセルは、
前記一対の第2セパレータのうちのガス流れ方向上流側のセパレータに形成された前記貫通孔における前記導入路の底壁にあたる部分、および前記第2プレートに形成された前記貫通孔における前記導入路の底壁にあたる部分の少なくとも一方が、前記発電セルの対応する部分と比較して下方に窪んでなる「第1構造」と、
前記第2プレートに形成された前記貫通孔における前記導入路の底壁にあたる部分、および前記一対の第2セパレータのうちのガス流れ方向下流側のセパレータに形成された前記貫通孔における前記導入路の底壁にあたる部分の少なくとも一方が、前記発電セルの対応する部分と比較して上方に突出してなる「第2構造」と、の両方の構造をなし
前記エンドセルは、前記「第2構造」をなしており、前記第2プレートに形成された前記貫通孔における前記導入路の底壁にあたる部分、および前記一対の第2セパレータのうちのガス流れ方向下流側のセパレータに形成された前記貫通孔における前記導入路の底壁にあたる部分の少なくとも一方の上端が、前記導入路に流入する水の最大水位よりも上方になっている燃料電池。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池において、
前記積層方向における一方の端部に配置される前記エンドセルは、前記導入路の外部から内部に発電用ガスを流入させるガス供給路が接続されており、前記「第1構造」と前記「第2構造」との両方の構造をなしていることを特徴とする燃料電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池において、
前記エンドセルは、前記第2流路が前記導入路に各別に連通される複数の並列路からなるとともに、同複数の並列路のうちの下方側の並列路の圧力損失が上方側の並列路の圧力損失よりも小さくなっていることを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
請求項に記載の燃料電池において、
前記エンドセルは、前記下方側の並列路における前記導入路側の端部の上端が、前記導入路に流入する水の最大水位よりも上方になっていることを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルが積層されてなる燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型の燃料電池の発電セルは、イオン交換膜からなる電解質膜を一対の電極で挟む構造の膜電極接合体(いわゆるMEA)と、膜電極接合体を挟む一対のセパレータとを備えている。そして、一方のセパレータと膜電極接合体との間のガス流路に燃料ガス(例えば水素ガス)が供給され、他方のセパレータと膜電極接合体との間のガス流路に酸化ガス(例えば空気)が供給される。
【0003】
通常、燃料電池は複数の発電セルが積層された構造になっている。そして、燃料電池の内部には、各発電セルのガス流路に発電用ガスを分配して導入する導入路や、各ガス流路を通過した後の発電用ガスを合流させて排出する排出路が設けられている。
【0004】
特許文献1では、そうした燃料電池が、複数の発電セルの積層方向の端部に設けられたエンドセルを有している。エンドセルは例えば、プレートと同プレートを挟む一対のセパレータとからなる。そして、プレートと各セパレータの間には、上記導入路と排出路とを連通して発電用ガスの流れをバイパスするバイパス流路が区画形成されている。
【0005】
このエンドセルは、発電しない構造であり、複数の発電セルの積層方向の端部において断熱効果を発揮する。こうしたエンドセルにより、積層方向の端部に配置された発電セルの温度が低くなることが抑えられて、同発電セルの内部での結露等による水の発生が抑えられるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−164051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、結露などによる水の発生は、発電セルの内部に限らず、燃料電池の外部から内部に発電用ガスを供給するガス供給路内でも起こりうる。そして、そうしたガス供給路内の水がガス流れによって押し流される等して発電セルに侵入して滞留すると、膜電極接合体へのガス供給量の低下を招いて、発電効率の低下を招くおそれがある。
【0008】
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、発電セルへの水の流入を抑えることのできる燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための燃料電池は、膜電極接合体を有する第1プレートと、同第1プレートを挟む一対の第1セパレータと、それら前記第1セパレータおよび前記第1プレートの間に形成されて発電用ガスが通過する第1流路と、を備えて積層された複数の発電セルと、第2プレートと、同第2プレートを挟む一対の第2セパレータと、それら前記第2セパレータおよび前記第2プレートの間に形成されて発電用ガスが通過する第2流路と、を備えて前記発電セルの積層方向における両端のうちの少なくとも一方に設けられたエンドセルと、前記第1セパレータと前記第1プレートと前記第2セパレータと前記第2プレートとに各別に形成された貫通孔からなるとともに、前記積層方向に延びて前記第1流路および前記第2流路に発電用ガスを分配して導入する導入路と、を有する燃料電池であって、前記エンドセルは、前記一対の第2セパレータのうちのガス流れ方向上流側のセパレータに形成された前記貫通孔における前記導入路の底壁にあたる部分、および前記第2プレートに形成された前記貫通孔における前記導入路の底壁にあたる部分の少なくとも一方が、前記発電セルの対応する部分と比較して下方に窪んでなる「第1構造」と、前記第2プレートに形成された前記貫通孔における前記導入路の底壁にあたる部分、および前記一対の第2セパレータのうちのガス流れ方向下流側のセパレータに形成された前記貫通孔における前記導入路の底壁にあたる部分の少なくとも一方が、前記発電セルの対応する部分と比較して上方に突出してなる「第2構造」と、のうちの少なくとも一方の構造をなしている。
【0010】
上記構成によれば、外部で発生して燃料電池の内部(導入路)に侵入した水を、導入路からエンドセル(第2流路)に流入する発電用ガスの流れによって同エンドセル内に吸引することができる。これにより、発電セルへの水の流入を抑えることができる。
【0011】
しかも、第1構造を採用することにより、導入路の前記エンドセル内に配置された部分のうちの上流側の部分を、発電セルの対応する部分(導入路の前記発電セル内に配置された部分のうちの上流側の部分)と比較して、底壁が下方に向けて凹んだ形状にすることができる。これにより、エンドセル内の導入路の上流側の部分が下方に広がる構造にすることができるため、同部分において発電用ガスの流れが下方に曲がり易くなり、その流れによって導入路内の水(あるいは水滴)が第2流路に流入し易くなる。
【0012】
また、第2構造が採用された燃料電池では、導入路の前記エンドセル内に配置された部分のうちの下流側の部分を、発電セルの対応する部分(導入路の前記発電セル内に配置された部分のうちの下流側の部分)と比較して、底壁が上方に向けて突出した形状にすることができる。そのため、同部分に水(あるいは水滴)が当たるとともに、その水が下方に落ちることによって第2流路に流入するようになる。また、導入路の底壁における上方に突出した部分に発電用ガスの流れが突き当たることによって、その流れの一部が下方に偏向されるようになり、この発電用ガスの流れによって導かれて水(あるいは水滴)が第2流路に流入するようになる。
【0013】
このように上記構成によれば、第1構造および第2構造のいずれかを採用することにより、エンドセルの第2流路に水が流入し易くなるため、発電セルへの水の流入を抑えることができるようになる。
【0014】
上記燃料電池において、前記積層方向における一方の端部に配置される前記エンドセルは、前記導入路の外部から内部に発電用ガスを流入させるガス供給路が接続されており、前記「第1構造」と前記「第2構造」とのうちの少なくとも一方の構造をなしている。
【0015】
上記構成によれば、ガス供給路から導入路に水が流入した場合に、その水を、発電セルに到達する前にエンドセルの第2流路の内部に吸引することができる。これにより、発電セルに到達する水の量を抑えることができるため、同発電セルへの水の流入を的確に抑えることができる。
【0016】
上記燃料電池において、前記エンドセルは、前記「第2構造」をなしており、前記第2プレートに形成された前記貫通孔における前記導入路の底壁にあたる部分、および前記一対の第2セパレータのうちのガス流れ方向下流側のセパレータに形成された前記貫通孔における前記導入路の底壁にあたる部分の少なくとも一方の上端が、前記導入路に流入する水の最大水位よりも上方になっていることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、導入路に流入した水がエンドセルの配設部分(第2流路と導入路との連通部分)に到達した場合に、その水が、第2プレートの貫通孔の内縁、あるいは下流側の第2セパレータの貫通孔の内縁に当たって下方に落ちることによって第2流路に流入するようになる。このように上記構成によれば、エンドセルの配設部分に到達した水を、同配設部分よりも下流側に通過させることのないように、第2流路に好適に流入させることができる。
【0018】
上記燃料電池において、前記エンドセルは、前記第2流路が前記導入路に各別に連通される複数の並列路からなるとともに、同複数の並列路のうちの下方側の並列路の圧力損失が上方側の並列路の圧力損失よりも小さくなっていることが好ましい。
【0019】
導入路からエンドセルの第2流路に水が流入した場合に、同第2流路内において水が滞留すると、その分だけ第2流路の流路断面積が小さくなってしまい、第2流路に流入する発電用ガスの流れが滞るようになって、導入路から第2流路への水の吸引を適正に行うことができなくなるおそれがある。
【0020】
上記構成では、複数の並列路のうちの、水が流入し易い下方側の並列路の圧力損失が、水が流入しにくい上方側の並列路の圧力損失よりも小さくなっている。そのため、上方側の並列路に流入する発電用ガスの量を少量に抑える一方で、下方側の並列路に流入する発電用ガスの量を多くすることができる。これにより、下方側の並列路内に水が吸引されて流入した場合に、その流入した水が並列路内に流入する比較的多量のガス流れによって押し流され易くなるため、並列路内での水の滞留を抑えることができ、第2流路に水を吸引する機能を維持することができる。
【0021】
上記燃料電池において、前記エンドセルは、前記下方側の並列路における前記導入路側の端部の上端が、前記導入路に流入する水の最大水位よりも上方になっていることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、導入路に流入した水がエンドセルの配設部分(第2流路と導入路との連通部分)に到達した場合に、その水が、第2流路を構成する複数の並列路のうちの上方側の並列路の端部ではなく、下方側の並列路の端部に位置するようになる。そのため、導入路から下方側の並列路に流入するガス流れを利用して、導入路内の水を第2流路に好適に吸入することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の燃料電池によれば、発電セルへの水の流入を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態の燃料電池の分解構造を概略的に示す略図。
図2】発電セルの上流側第1セパレータの平面図。
図3】発電セルのフレームプレートの平面図。
図4】発電セルの下流側第1セパレータの平面図。
図5】エンドセルの上流側第2セパレータの平面図。
図6】エンドセルのフレームプレートの平面図。
図7】エンドセルの下流側第2セパレータの平面図。
図8】エンドセルの水素ガス排出路およびその周辺を燃料電池の外方側から見た平面図。
図9図8の9−9線に沿った燃料電池の端面図。
図10】エンドセルの水素ガス導入路およびその周辺を燃料電池の外方側から見た平面図。
図11図10の11−11線に沿った燃料電池の端面図。
図12】エンドセル内での水素ガスの流通態様とともに示す上流側第2セパレータの平面図。
図13】発電セル内での水素ガスの流通態様とともに示す上流側第1セパレータの平面図。
図14】変形例の燃料電池の水素ガス導入路についての積層方向に沿った端面図。
図15】変形例の燃料電池の水素ガス導入路についての積層方向に沿った端面図。
図16】変形例の燃料電池の水素ガス導入路についての積層方向に沿った端面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、燃料電池の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、燃料電池の概略構成について説明する。
図1に示すように、燃料電池は、積層された複数(本実施形態では、330個)の発電セル10と、それら発電セル10をその積層方向D(図1の左右方向)において挟む位置に設けられた一対のエンドセル11とを備えている。
【0026】
燃料電池の内部には、各発電セル10や各エンドセル11に対して、水素ガスを分配して導入する水素ガス導入路12と、空気を分配して導入する空気導入路13とが設けられている。また、燃料電池の内部には、各発電セル10や各エンドセル11を通過した後の水素ガスを合流させて排出する水素ガス排出路14と、発電セル10やエンドセル11を通過した後の空気を合流させて排出する空気排出路15とが設けられている。さらに、燃料電池の内部には、隣り合う発電セル10の間や発電セル10とエンドセル11との間に冷却水を導入する冷却水導入路(図示略)と、冷却水を合流させて排出する冷却水排出路(図示略)とが設けられている。
【0027】
一対のエンドセル11の一方(図1の左側)には、積層方向Dにおける外方側の端面を覆うように、スタックマニホールド16が取り付けられている。このスタックマニホールド16には、水素ガスを給排する水素ガス配管17と、酸素ガス(具体的には空気)を給排する空気配管18と、冷却水を給排する冷却水配管19とが接続されている。燃料電池では、上記スタックマニホールド16を介して、水素ガス導入路12への水素ガスの供給や、空気導入路13への空気の供給、水素ガス排出路14からの水素ガスの排出、空気排出路15からの空気の排出、冷却水導入路への冷却水の供給、冷却水排出路からの冷却水の排出が行われる。なお、水素ガス配管17には、上記スタックマニホールド16よりも上流側に、水素ガスを加湿する加湿器20が設けられている。本実施形態では、スタックマニホールド16および水素ガス配管17が、水素ガス導入路12の外部から内部に水素ガスを流入させるガス供給路に相当する。
【0028】
一対のエンドセル11の他方(図1の右側)には、積層方向Dにおける外方側の端面を覆うように、エンドプレート21が取り付けられている。このエンドプレート21により、エンドセル11の端面に配置された各流体流路(水素ガス導入路12、空気導入路13、水素ガス排出路14、空気排出路15、冷却水導入路、および冷却水排出路)の開口が塞がれている。
【0029】
なお本実施形態の燃料電池は、積層方向Dにおけるスタックマニホールド16側の端部が下方になるように所定の角度α(本実施形態では、数°)だけ傾斜した状態で、電気自動車に電力源として搭載されている。このように傾斜した状態で燃料電池を搭載することにより、水素ガス排出路14がスタックマニホールド16側に向けて徐々に低くなるように傾斜した状態になっている。これにより、燃料電池は水素ガス排出路14内の水を排出し易い構造になっている。
【0030】
次に、発電セル10の構造について説明する。
発電セル10は膜電極接合体50Aを有している。この膜電極接合体50Aは、固体高分子膜である電解質膜と、同電解質膜を挟む一対の電極と、それら電解質膜および電極を挟むカーボンシートからなる一対のガス拡散層とを備えた5層構造になっている。各発電セル10は、上流側第1セパレータ30と下流側第1セパレータ60との間に平板形状のフレームプレート50が挟まれた構造になっている。フレームプレート50は、中央部分が上記膜電極接合体50Aをなすとともにそれ以外の部分が絶縁体によって構成されている。
【0031】
図2に示すように、上流側第1セパレータ30は、金属製の薄板状部材に対してプレス加工によって凹凸が付与されたものである。この凹凸は、発電セル10の内部に水素ガスを通過させる第1流路(水素ガス流路10A)を区画したり、隣り合う発電セル10の間に冷却水を流通させる冷却水流路を区画したりする役割がある。なお図2は、フレームプレート50(図1参照)に対向する面が手前になる状態の上流側第1セパレータ30を示している。
【0032】
上流側第1セパレータ30は貫通孔31〜36を有している。貫通孔31は上流側第1セパレータ30の長手方向(図2の左右方向)における一方の縁部の上方部分(図2の左上)に設けられて、前記水素ガス導入路12の一部を構成している。貫通孔32は上流側第1セパレータ30の長手方向における他方の縁部の下方部分(図2の右下)に設けられて、前記水素ガス排出路14の一部を構成している。貫通孔33は上流側第1セパレータ30の長手方向における一方の縁部の上方部分(図2の右上)に設けられて、前記空気導入路13の一部を構成している。貫通孔34は上流側第1セパレータ30の長手方向における他方の縁部の下方部分(図2の左下)に設けられて、前記空気排出路15の一部を構成している。貫通孔35は上流側第1セパレータ30の長手方向における一方(図2の左側)の縁部に設けられて、前記冷却水流路に冷却水を分配して導入する冷却水導入路22の一部を構成している。貫通孔36は上流側第1セパレータ30の長手方向における他方(図2の右側)の縁部に設けられて、冷却水流路を通過した後の冷却水を合流させて排出する冷却水排出路23の一部を構成している。なお、各貫通孔31,32,33,34,35,36の内周縁は、フレームプレート50から離間する方向に向けて窪んだ凹部31A,32A,33A,34A,35A,36Aになっている。
【0033】
上流側第1セパレータ30の長手方向における中央部分には凹部37が形成されている。この凹部37の形成範囲は、膜電極接合体50Aに隣接する部分(図2中に破線で示す部分)を含んでいる。発電セル10の内部では、上流側第1セパレータ30と上記フレームプレート50(図1参照)とが密着している。これにより、上流側第1セパレータ30とフレームプレート50との間には、凹部37によって、水素ガスが通過する水素ガス流路10Aの一部になる空間が区画形成されている。
【0034】
上記凹部37の底部には、複数の流路凸部38が形成されている。これら流路凸部38は細長い形状に形成されて並列に延びている。そして、これら流路凸部38によって、水素ガス流路10Aが、水素ガス導入路12(貫通孔31)と水素ガス排出路14(貫通孔32)との間を各別に連通する複数(本実施形態では10本)の並列路40に区画されている。詳しくは、それら並列路40は、水素ガス導入路12に各別に接続される複数(同10本)の導入流路41と、導入流路41を複数本(同8本)に分岐する分配流路42と、それら分配流路42に各別に接続されて平行に延びる複数(同80本)の主流路43とを有している。また、複数の並列路40は、主流路43を合流させて複数(同10本)の流路に収束させる収束流路44と、収束させた収束流路44を水素ガス排出路14に各別に接続する複数の排出流路45とを有している。本実施形態では、1本の並列路40に流入した水素ガスが8本の主流路43に分配されるように、分配流路42および収束流路44の形状が定められている。なお本実施形態では、分配流路42および主流路43が分岐路に相当する。
【0035】
図3に示すように、フレームプレート50は、各流体流路(水素ガス導入路12、空気導入路13、水素ガス排出路14、空気排出路15、冷却水導入路22、および冷却水排出路23)の一部を構成する貫通孔51〜56を有している。発電セル10の内部では、それら貫通孔51〜56の周縁において、フレームプレート50と上流側第1セパレータ30(図2参照)とが密着している。これにより、フレームプレート50と上流側第1セパレータ30との対向面間において、水素ガス導入路12や、空気導入路13、水素ガス排出路14、空気排出路15、冷却水導入路22、冷却水排出路23がその外部に対してシールされている。
【0036】
ただし、図2または図3に示すように、フレームプレート50には、貫通孔31(詳しくは、凹部31A)に隣接する位置から凹部37に隣接する位置まで延びる長孔51Aが複数(本実施形態では10本)形成されている。これら長孔51Aは、上流側第1セパレータ30と下流側第1セパレータ60(図1参照)との間において、水素ガス導入路12(詳しくは、貫通孔31)と凹部37の内部とを連通する隙間になる。本実施形態では、各長孔51Aが、水素ガス流路10Aの一部(具体的には、各導入流路41の上記水素ガス導入路12側の部分)を構成する。
【0037】
また、フレームプレート50には、貫通孔32(詳しくは、凹部32A)に隣接する位置から凹部37に隣接する位置まで延びる長孔52Aが複数(同10本)形成されている。これら長孔52Aは、上流側第1セパレータ30と下流側第1セパレータ60との間において、水素ガス排出路14(詳しくは、貫通孔32)と凹部37の内部とを連通する隙間になる。本実施形態では、各長孔52Aが、水素ガス流路10Aの一部(具体的には、各排出流路45の上記水素ガス排出路14側の部分)を構成する。
【0038】
図4に示すように、下流側第1セパレータ60は、金属製の薄板状部材にプレス加工により凹凸が付与されたものである。この凹凸は、発電セル10の内部に空気を通過させるガス流路(空気流路10B)を区画したり、前記冷却水流路を区画したりする役割がある。上記下流側第1セパレータ60の形状は、基本的には、上流側第1セパレータ30(図2参照)の形状の鏡像になっている。なお図4はフレームプレート50(図1参照)に対向する面が手前になる状態の下流側第1セパレータ60を示している。
【0039】
下流側第1セパレータ60は貫通孔61〜66を有している。貫通孔61は下流側第1セパレータ60の長手方向における一方の縁部の上方部分(図4の右上)に設けられて、前記水素ガス導入路12の一部を構成している。貫通孔62は下流側第1セパレータ60の長手方向における他方の縁部の下方部分(図4の左下)に設けられて、前記水素ガス排出路14の一部を構成している。貫通孔63は下流側第1セパレータ60の長手方向における一方の縁部の上方部分(図4の左上)に設けられて、前記空気導入路13の一部を構成している。貫通孔64は下流側第1セパレータ60の長手方向における他方の縁部の下方部分(図4の右下)に設けられて、前記空気排出路15の一部を構成している。貫通孔65は下流側第1セパレータ60の長手方向における一方(図4の右側)の縁部に設けられて、前記冷却水導入路22の一部を構成している。貫通孔66は下流側第1セパレータ60の長手方向における他方(図4の左側)の縁部に設けられて、前記冷却水排出路23の一部を構成している。なお、各貫通孔61,62,63,64,65,66の内周縁は、フレームプレート50から離間する方向に向けて窪んだ凹部61A,62A,63A,64A,65A,66Aになっている。
【0040】
下流側第1セパレータ60の長手方向における中央部分には凹部67が形成されている。この凹部67の形成範囲は、膜電極接合体50Aに隣接する部分(図4中に破線で示す部分)を含んでいる。発電セル10の内部では、下流側第1セパレータ60と上記フレームプレート50(図3参照)とが密着している。これにより、下流側第1セパレータ60とフレームプレート50との間には、凹部67によって、空気が通過する空気流路10Bの一部になる空間が区画形成されている。
【0041】
上記凹部67の底部には、複数の流路凸部68が形成されている。これら流路凸部68は細長い形状に形成されて並列に延びている。そして、これら流路凸部68によって、空気流路10Bが、空気導入路13(貫通孔63)と空気排出路15(貫通孔64)との間を各別に連通する複数(本実施形態では10本)の並列路70に区画されている。詳しくは、それら並列路70は、空気導入路13に各別に接続される複数(同10本)の導入流路71と、導入流路71を複数本(同8本)に分岐する分配流路72と、それら分配流路72に各別に接続されて並列に延びる複数(同80本)の主流路73とを有している。また、複数の並列路70は、主流路73を合流させて複数(同10本)の流路に収束させる収束流路74と、収束させた収束流路74を空気排出路15に各別に接続する複数の排出流路75とを有している。そして、本実施形態では、1本の並列路70に流入した空気が8本の主流路73に分配されるように、分配流路72および収束流路74の形状が定められている。これにより、各並列路70の圧力損失がほぼ同一になっている。なお、上流側第1セパレータ30の主流路43(図2参照)は直線状の流路が等間隔で平行に延びているのに対して、下流側第1セパレータ60の主流路73は波状の流路が等間隔で並列に延びている。
【0042】
発電セル10の内部では、フレームプレート50(図3)の各貫通孔51〜56の周縁において、同フレームプレート50と下流側第1セパレータ60(図4参照)とが密着している。これにより、フレームプレート50と下流側第1セパレータ60との対向面間において、水素ガス導入路12や、空気導入路13、水素ガス排出路14、空気排出路15、冷却水導入路22、冷却水排出路23がその外部に対してシールされている。
【0043】
ただし、図3または図4に示すように、フレームプレート50には、貫通孔63(詳しくは、凹部63A)に隣接する位置から凹部67に隣接する位置まで延びる長孔53Aが複数(本実施形態では10本)形成されている。これら長孔53Aは、上流側第1セパレータ30(図2参照)と下流側第1セパレータ60との間において、空気導入路13(詳しくは、貫通孔63)と凹部67の内部とを連通する隙間になる。本実施形態では、各長孔53Aが、空気流路10Bの一部(具体的には、各導入流路71の上記空気導入路13側の部分)を構成する。
【0044】
また、フレームプレート50には、貫通孔64(詳しくは、凹部64A)に隣接する位置から凹部67に隣接する位置まで延びる長孔54Aが複数(同10本)形成されている。これら長孔54Aは、上流側第1セパレータ30と下流側第1セパレータ60との間において、空気排出路15(詳しくは、貫通孔64)と凹部67の内部とを連通する隙間になる。本実施形態では、各長孔54Aが、空気流路10Bの一部(具体的には、各排出流路75の上記空気排出路15側の部分)を構成する。
【0045】
燃料電池の内部において隣り合う一対の発電セル10(図1)の間には、前記冷却水流路が、一方の発電セル10の上流側第1セパレータ30外面と他方の発電セル10の下流側第1セパレータ60外面とによって区画形成されている。また、一方(図1の左側)のエンドセル11と発電セル10との間には、エンドセル11の下流側第2セパレータ110外面と発電セル10の上流側第1セパレータ30外面とによって、冷却水流路が区画形成されている。さらに、他方(図1の右側)のエンドセル11と発電セル10との間には、エンドセル11の上流側第2セパレータ80外面と発電セル10の下流側第1セパレータ60外面とによって、冷却水流路が区画形成されている。そして、これら冷却水流路には、冷却水導入路22と冷却水排出路23とが連通されている。
【0046】
次に、エンドセル11の構造について説明する。
図1に示すように、エンドセル11は、上流側第2セパレータ80と下流側第2セパレータ110との間にフレームプレート100が挟まれた構造になっている。
【0047】
図5に示すように、上流側第2セパレータ80の基本構造は、上流側第1セパレータ30(図2参照)と同様である。ただし、上流側第1セパレータ30と上流側第2セパレータ80とは、水素ガス導入路12の一部を構成する貫通孔の形状と、水素ガス流路の一部を構成する分配流路および収束流路の形状とが大きく異なる。以下、この相違点を中心に上流側第2セパレータ80の構造を説明する。なお、上記貫通孔、分配流路および収束流路以外の構成は上流側第1セパレータ30と上流側第2セパレータ80とで同様であるため、同一の符号を付して示し、以下での詳細な説明は割愛する。なお図5はフレームプレート100(図1参照)に対向する面が手前になる状態の上流側第2セパレータ80を示している。
【0048】
上流側第2セパレータ80は、前記水素ガス導入路12の一部を構成する貫通孔81を有している。この貫通孔81の内周縁は、フレームプレート100から離間する方向に向けて窪んだ凹部81Aになっている。貫通孔81は上流側第2セパレータ80の長手方向(図5の左右方向)における一方の縁部の上方部分(図5の左上)に設けられている。この貫通孔81の開口形状と上流側第1セパレータ30の貫通孔31(図2参照)の開口形状とは共に、角が丸められた四角形状である。そして、貫通孔81の略四角形状の開口における底辺にあたる部分が、上流側第1セパレータ30の貫通孔31の開口における同部分よりも下方側になっている。これにより、貫通孔81の開口形状が、上流側第1セパレータ30の貫通孔31の開口形状よりも、下方側に広くなっている。
【0049】
上流側第2セパレータ80の凹部37の底部には、複数の流路凸部98が形成されている。これら流路凸部98によって、貫通孔81(水素ガス導入路12)と貫通孔32(水素ガス排出路14)とを連通して水素ガスを通過させる第2流路(以下、バイパス流路11A)が複数(本実施形態では10本)の並列路90に区画されている。そして、それら並列路90のうちの上方側に配置される複数(同5本)の並列路90は、流入した水素ガスが4本の主流路43に分配されるように、分配流路92および収束流路94の形状が定められている。一方、全ての並列路90のうちの下方側に配置される複数(同5本)の並列路90は、流入した水素ガスが12本の主流路43に分配されるように、分配流路92および収束流路94の形状が定められている。
【0050】
図6に示すように、フレームプレート100の基本構造は、フレームプレート50(図3参照)と同様である。フレームプレート100は、膜電極接合体50Aの代わりにプレート100Aを有している点と、前記水素ガス導入路12の一部を構成する貫通孔101の形状とがフレームプレート50と異なる。以下、この相違点を中心に、フレームプレート100の構造について説明する。なお、図6において、フレームプレート50と同様の構成は同一の符号を付して示し、以下での詳細な説明は割愛する。
【0051】
フレームプレート100は、中央部分が上記プレート100Aをなすとともにそれ以外の部分が絶縁体によって構成されている。プレート100Aは、非通気性の電気伝導体(本実施形態では、金属板)からなるプレート本体と同プレート本体を挟む一対のカーボンシートとを備えた3層構造である。このプレート100Aは、上流側第2セパレータ80と下流側第2セパレータ110とに接触しており、それら上流側第2セパレータ80および下流側第2セパレータ110を導通している。なお、各エンドセル11は膜電極接合体50A(図1参照)を備えていないため、水素ガスおよび空気が通過するとはいえ、発電しない構造になっている。
【0052】
フレームプレート100は、水素ガス導入路12の一部を構成する貫通孔101と、前記貫通孔52〜56とを有している。貫通孔101は、フレームプレート100の長手方向(図6の左右方向)における一方の縁部の上方部分(図6の左上)に設けられている。この貫通孔101の開口形状とフレームプレート50の貫通孔51(図3参照)の開口形状とは共に、角が丸められた四角形状である。そして、貫通孔101の略四角形状の開口における底辺にあたる部分が、フレームプレート50の貫通孔51の開口における同部分よりも下方側になっている。これにより、貫通孔101の開口形状が、上流側第2セパレータ80の貫通孔81と略同一の形状(詳しくは、若干小さい形状)になっており、フレームプレート50の貫通孔51の開口形状よりも下方側に広くなっている。
【0053】
エンドセル11の内部では、各貫通孔101,52〜56の周縁において、フレームプレート100と上流側第2セパレータ80(図5参照)とが密着している。これにより、上流側第2セパレータ80とフレームプレート100との対向面間において、水素ガス導入路12や、空気導入路13、水素ガス排出路14、空気排出路15、冷却水導入路22、冷却水排出路23がその外部に対してシールされている。
【0054】
ただし、図5または図6に示すように、フレームプレート100には、貫通孔81(詳しくは、凹部81A)に隣接する位置から凹部37に隣接する位置まで延びる長孔51Aが複数形成されている。これら長孔51Aは、上流側第2セパレータ80と下流側第2セパレータ110との間において、水素ガス導入路12(詳しくは、貫通孔81)と凹部37の内部とを連通する隙間になる。本実施形態では、フレームプレート100の各長孔51Aが、バイパス流路11Aにおける各導入流路41の上記水素ガス導入路12側の部分を構成する。
【0055】
また、フレームプレート100には、貫通孔32(詳しくは、凹部32A)に隣接する位置から凹部37に隣接する位置まで延びる長孔52Aが複数形成されている。これら長孔52Aは、上流側第2セパレータ80と下流側第2セパレータ110との間において、水素ガス排出路14(詳しくは、貫通孔32)と凹部37の内部とを連通する隙間になる。本実施形態では、フレームプレート100の各長孔52Aが、バイパス流路11Aにおける各排出流路45の上記水素ガス排出路14側の部分を構成する。
【0056】
図7に示すように、下流側第2セパレータ110は、下流側第1セパレータ60(図4参照)と略同一の構造である。以下、下流側第2セパレータ110の構造を、下流側第1セパレータ60との相違点を中心に説明する。なお、図7において、下流側第1セパレータ60と同一形状の構成は同一の符号を付して示し、以下での詳細な説明は割愛する。
【0057】
下流側第2セパレータ110は、前記水素ガス導入路12の一部を構成する貫通孔111と前記貫通孔62〜66とを有している。貫通孔111は下流側第2セパレータ110の長手方向(図7の左右方向)における一方の縁部の上方部分(図7の左上)に設けられている。貫通孔111の内周縁は、フレームプレート100から離間する方向に向けて窪んだ凹部111Aになっている。この貫通孔111の開口形状と下流側第1セパレータ60の貫通孔61(図4参照)の開口形状とは共に、角が丸められた四角形状である。そして、貫通孔111の略四角形状の開口における底辺にあたる部分が、下流側第1セパレータ60の貫通孔61の開口における同部分よりも上方側になっている。これにより、貫通孔111の開口形状における下方側の部分が、下流側第1セパレータ60の貫通孔61の開口形状における同部分よりも上方側に狭くなっている。
【0058】
エンドセル11の内部では、各貫通孔111,62〜66の周縁において、下流側第2セパレータ110とフレームプレート100(図5参照)とが密着している。これにより、フレームプレート100と下流側第2セパレータ110との対向面間において、水素ガス導入路12や、空気導入路13、水素ガス排出路14、空気排出路15、冷却水導入路22、冷却水排出路23がその外部に対してシールされている。
【0059】
ただし、図6または図7に示すように、フレームプレート100には、貫通孔63(詳しくは、凹部63A)に隣接する位置から凹部67に隣接する位置まで延びる長孔53Aが複数形成されている。これら長孔53Aは、上流側第2セパレータ80と下流側第2セパレータ110との間において、空気導入路13(詳しくは、貫通孔63)と凹部67の内部とを連通する隙間になる。本実施形態では、フレームプレート100の各長孔53Aが、空気導入路13と空気排出路15とを連通するバイパス流路11B(図1参照)の一部(具体的には、各導入流路71の上記空気導入路13側の部分)を構成する。
【0060】
また、フレームプレート100には、貫通孔64(詳しくは、凹部64A)に隣接する位置から凹部67に隣接する位置まで延びる長孔54Aが複数形成されている。これら長孔54Aは、上流側第2セパレータ80と下流側第2セパレータ110との間において、空気排出路15(詳しくは、貫通孔64)と凹部67の内部とを連通する隙間になる。本実施形態では、フレームプレート100の各長孔54Aが、バイパス流路11Bにおける各排出流路75の上記空気排出路15側の部分を構成する。
【0061】
図8および図9に示すように、発電セル10およびエンドセル11において、水素ガス排出路14を構成する各貫通孔32,52,62は略同一の形状になっている。詳しくは、上流側第1セパレータ30の貫通孔32と下流側第1セパレータ60の貫通孔62と上流側第2セパレータ80の貫通孔32と下流側第2セパレータ110の貫通孔62とが同一形状になっている。また、フレームプレート50の貫通孔52とフレームプレート100の貫通孔52とが同一形状であり、且つ各貫通孔32,62よりも若干小さい形状になっている。同様に、発電セル10およびエンドセル11において、空気導入路13を構成する各貫通孔33,53,63や、空気排出路15を構成する各貫通孔34,54,64、冷却水導入路22を構成する各貫通孔35,55,65、冷却水排出路23を構成する各貫通孔36,56,66は、それぞれ略同一の形状になっている。
【0062】
これに対して、図10および図11に示すように、発電セル10およびエンドセル11において、水素ガス導入路12を構成する各貫通孔31,51,61,81,101,111は異なる形状になっている。
【0063】
詳しくは、上流側第2セパレータ80の貫通孔81の開口形状が、上流側第1セパレータ30の貫通孔31の開口形状よりも下方側に広くなっている。また、フレームプレート100の貫通孔101の開口形状が、上流側第2セパレータ80の貫通孔81と略同一の形状であり、且つフレームプレート50の貫通孔51の開口形状よりも下方側に広くなっている。
【0064】
これにより、水素ガスの流れ方向上流側(以下、単に上流側)の上流側第2セパレータ80の貫通孔81における水素ガス導入路12の底壁にあたる部分、およびフレームプレート100の貫通孔101における水素ガス導入路12の底壁にあたる部分の両方が、発電セル10の対応する部分と比較して、下方に窪んだ構造(第1構造)になっている。
【0065】
一方、下流側第2セパレータ110の貫通孔111の開口形状は、下流側第1セパレータ60の貫通孔61の開口形状と比較して、下方側の部分が上方に突出することによって狭くなっている。
【0066】
これにより、水素ガスの流れ方向下流側(以下、単に下流側)の下流側第2セパレータ110の貫通孔111における水素ガス導入路12の底壁にあたる部分が、発電セル10の対応する部分(詳しくは、下流側第1セパレータ60の貫通孔61における水素ガス導入路12の底壁にあたる部分)と比較して上方に突出した構造(第2構造)になっている。
【0067】
図10に示す線Wは、静止状態の燃料電池において、想定範囲における最大の流量で水素ガス導入路12に水が流入した場合における水位(以下、最大水位)を示している。なお、この最大水位Wは、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果から求められた水位を示している。
【0068】
図10に示すように、下流側第2セパレータ110では、貫通孔111の開口部分の下端が最大水位Wよりも上方になるように、同貫通孔111の形状が定められている。
また、上流側第2セパレータ80では、下方側の並列路90(図5参照)の中で最も上方側に配置される並列路90の上記水素ガス導入路12側の端部上端(図中に矢印Eで示す部分)が最大水位Wよりも上方になるように、各並列路90の形状が定められている。なお図10中の一点鎖線は、下方側の並列路90と上方側の並列路90との境界を示している。
【0069】
以下、上述した構造のエンドセル11を採用することによる作用効果を説明する。
エンドセル11の内部には、水素ガス導入路12と水素ガス排出路14とを連通するバイパス流路11Aが形成されている。そのため、水素ガス配管17や加湿器20で発生して燃料電池の内部(水素ガス導入路12)に侵入した水を、水素ガス導入路12からエンドセル11(詳しくは、バイパス流路11A)に流入する水素ガスの流れによって同エンドセル11の内部に吸引することができる。これにより、発電セル10への水の流入を抑えることができるようになる。
【0070】
しかも、図11に示すように、前記「第1構造」が採用されているために、水素ガス導入路12のエンドセル11内に配置された部分のうちの上流側の部分を、発電セル10の対応する部分(詳しくは、水素ガス導入路12の発電セル10内に配置された部分のうちの上流側の部分)と比較して、底壁が下方に向けて凹んだ形状にすることができる。これにより、エンドセル11内の水素ガス導入路12の上流側の部分が下方に広がる構造になるため、同部分において水素ガスの流れが下方に曲がり易くなり、その流れによって水素ガス導入路12内の水(あるいは水滴)がバイパス流路11Aに流入し易くなる。
【0071】
また、前記「第2構造」が採用されているため、水素ガス導入路12のエンドセル11内に配置された部分のうちの下流側の部分を、発電セル10の対応する部分(水素ガス導入路12の発電セル10内に配置された部分のうちの下流側の部分)と比較して、底壁が上方に向けて突出した形状にすることができる。そのため、同部分に水(あるいは水滴)が当たるとともに、その水が下方に落ちることによってバイパス流路11Aに流入するようになる。また、水素ガス導入路12の底壁における上方に突出した部分に水素ガスの流れが突き当たることによって、その流れの一部が下方に偏向されるようになり、この水素ガスの流れによって導かれて水(あるいは水滴)がバイパス流路11Aに流入するようになる。
【0072】
このように本実施形態によれば、「第1構造」および「第2構造」が採用されているために、エンドセル11のバイパス流路11Aに水が流入し易くなっており、発電セル10への水の流入を抑えることができるようになる。
【0073】
本実施形態の燃料電池では、積層方向Dにおける一方(図1の左側)の端部に配置されたエンドセル11に、スタックマニホールド16を介して水素ガス配管17が接続されている。これにより、水素ガス配管17やスタックマニホールド16から水素ガス導入路12に水が流入した場合に、その水が発電セル10に到達する前にエンドセル11によって吸引されるようになるため、発電セル10に到達する水の量を抑えることができる。また、電気自動車の走行時における揺れや旋回などによって、水素ガス導入路12に流入した水が発電セル10の配設部分を通過して前記スタックマニホールド16から遠い側(図1の右側)のエンドセル11の配設位置まで到達する場合がある。こうした場合に、エンドセル11の配設位置に到達した水を同エンドセル11のバイパス流路11Aの内部に吸引させることができる。本実施形態の燃料電池によれば、このようにして発電セル10への水の流入を的確に抑えることができる。
【0074】
ここで、エンドセル11のバイパス流路11Aに水が流入した場合に、同バイパス流路11A内において水が滞留すると、その分だけバイパス流路11A(詳しくは、水が流入した並列路90)の流路断面積が小さくなってしまい、バイパス流路11Aに流入する水素ガスの流れが滞るようになるおそれがある。そして、この場合には水素ガス導入路12からバイパス流路11Aへの水の吸引を適正に行うことができなくなる。
【0075】
図5に示すように、エンドセル11のバイパス流路11Aでは、1本の並列路90が水素ガスの分配対象とする主流路43の本数(詳しくは、1本の並列路90に接続される主流路43の本数)が、上方側の並列路90よりも下方側の並列路90において多くなっている。これにより、上方側の並列路90における主流路43の流路断面積の積算値(4本分)と比較して、下方側の並列路90における主流路43の流路断面積の積算値(12本分)が大きくなっている。そのため、バイパス流路11Aを構成する複数の並列路90のうちの、水が流入し難い上方側の並列路90の圧力損失と比較して、水が流入し易い下方側の並列路90の圧力損失を小さくすることができる。
【0076】
したがって、図12に模式的に示すように、上方側の並列路90に流入する水素ガスの量を少量に抑える一方で、下方側の並列路90に流入する水素ガスの量を多くすることができる。これにより、下方側の並列路90内に水が吸引されて流入した場合に、その流入した水が並列路90内に流入する比較的多量のガス流れによって押し流され易くなるため、並列路90内での水の滞留を抑えることができ、バイパス流路11Aに水を吸引する機能を維持することができる。なお図12中の一点鎖線は、下方側の並列路90と上方側の並列路90との境界を示している。
【0077】
また図2に示すように、発電セル10の水素ガス流路10Aでは、1本の並列路40が水素ガスの分配対象とする主流路43の本数が各並列路40において同一(8本)になっている。そのため、各並列路40における主流路43の流路断面積の積算値(8本分)も同一になっており、それら並列路40の圧力損失がほぼ等しくなっている。
【0078】
したがって、図13に模式的に示すように、発電セル10の水素ガス流路10A(各並列路40)には、水素ガスが、流入量の偏りが抑えられた状態で満遍なく流入するようになる。その一方で、上述したようにエンドセル11のバイパス流路11A(図12)には、上方側の並列路90への流入量を少量に抑えることによって下方側の並列路90への流入量が多くなる態様で、水素ガスが流入するようになる。こうしたことから、燃料電池の内部において水素ガス導入路12から水素ガスが流入する部分(具体的には、発電セル10の各並列路40、エンドセル11の下方側の並列路90、および上方側の並列路90)の中でも、エンドセル11の下方側の並列路90に流入する水素ガスの量を最も多くすることができる。これにより、水素ガス導入路12内の水がエンドセル11に吸引され易くなるため、発電セル10への水の流入を好適に抑えることができる。
【0079】
図10に示すように、エンドセル11の下方側の5本の並列路90における水素ガス導入路12側(図10の左側)の端部の上端E(詳しくは、それら並列路90と貫通孔31との連通部分の上端)が前記最大水位Wよりも上方になっている。そのため、水素ガス導入路12に流入した水がエンドセル11の配設部分(詳しくは、水素ガス導入路12とバイパス流路11Aとの連通部分)に到達した場合に、その水が、上方側の並列路90の端部ではなく、水素ガスの流入量が多いために流入速度が速い下方側の並列路90の端部に位置するようになる。したがって、水素ガス導入路12から下方側の並列路90に流入する水素ガスの流れを利用して、水素ガス導入路12内の水をバイパス流路11Aに好適に吸入することができる。
【0080】
エンドセル11では、下流側第2セパレータ110の貫通孔111における水素ガス導入路12の底壁にあたる部分の上端が、最大水位Wよりも上方になっている。そのため、水素ガス導入路12に流入した水がエンドセル11の配設部分(バイパス流路11Aと水素ガス導入路12との連通部分)に到達した場合に、その水が、下流側第2セパレータ110の貫通孔111の内縁に当たって堰き止められるとともに下方に落ちることによってバイパス流路11Aに流入するようになる。このように本実施形態によれば、水素ガス導入路12におけるエンドセル11の配設部分に到達した水を、同配設部分よりも下流側に通過させることのないように、バイパス流路11Aに好適に流入させることができる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)水素ガス配管17や加湿器20で発生して水素ガス導入路12に侵入した水を、水素ガス導入路12からエンドセル11のバイパス流路11Aに流入する水素ガスの流れによって同バイパス流路11Aの内部に吸引することができる。そのため、発電セル10への水の流入を抑えることができる。しかも、水素ガス導入路12のエンドセル11内に配置された部分のうちの上流側の部分が下方に広がる構造になっており、同下流側の部分が、発電セル10の対応する部分と比較して、底壁が上方に向けて突出した形状になっている。これにより、エンドセル11のバイパス流路11Aに水が流入し易い構造になるため、発電セル10への水の流入を抑えることができるようになる。
【0082】
(2)積層方向Dにおける一方の端部に配置されるエンドセル11にスタックマニホールド16を介して水素ガス配管17が接続されている。これにより、水素ガス配管17から水素ガス導入路12に水が流入した場合に、その水が発電セル10に到達する前にエンドセル11のバイパス流路11Aの内部に吸引されるようになるため、発電セル10への水の流入を的確に抑えることができる。
【0083】
(3)エンドセル11において、下流側第2セパレータ110の貫通孔111における水素ガス導入路12の底壁にあたる部分の上端を最大水位Wよりも上方にした。そのため、水素ガス導入路12におけるエンドセル11の配設部分に到達した水を、同配設部分よりも下流側に通過させることのないように、バイパス流路11Aに好適に流入させることができる。
【0084】
(4)バイパス流路11Aを構成する複数の並列路90のうちの、水が流入し難い上方側の並列路90の圧力損失と比較して、水が流入し易い下方側の並列路90の圧力損失を小さくした。これにより、下方側の並列路90内に水が吸引されて流入した場合に、その流入した水が並列路90内に流入する比較的多量のガス流れによって押し流され易くなるため、並列路90内での水の滞留を抑えることができ、バイパス流路11Aに水を吸引する機能を維持することができる。
【0085】
(5)下方側の並列路90の中で最も上方側に配置される並列路90における水素ガス導入路12側の端部の上端を、前記最大水位Wよりも上方にした。そのため、水素ガス導入路12から下方側の並列路90に流入する水素ガスの流れを利用して、水素ガス導入路12内の水をバイパス流路11Aに好適に吸入することができる。
【0086】
<変形例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上流側第1セパレータ30や上流側第2セパレータ80の主流路43を波状の流路が並列に延びる形状にしたり、下流側第1セパレータ60や下流側第2セパレータ110の主流路73を直線状の流路が平行に延びる形状にしたりしてもよい。
【0087】
・下流側第2セパレータ110の貫通孔111における水素ガス導入路12の底壁にあたる部分の上端を、最大水位Wよりも下方にしたり、最大水位Wと同一の高さにしたりしてもよい。
【0088】
・「第1構造」および「第2構造」のうちの少なくとも一方の構造をなすのであれば、エンドセル11において水素ガス導入路12を構成する各貫通孔81,101,111の開口形状は、任意の形状に変更することができる。なお、この場合の「第1構造」は、上流側第2セパレータに形成された貫通孔における水素ガス導入路の底壁にあたる部分、およびエンドセルのフレームプレートに形成された貫通孔における水素ガス導入路の底壁にあたる部分の少なくとも一方が、発電セルの対応する部分と比較して下方に窪んでなる構造である。また、この場合の「第2構造」は、エンドセルのフレームプレートに形成された貫通孔における水素ガス導入路の底壁にあたる部分、および下流側第2セパレータに形成された貫通孔における水素ガス導入路の底壁にあたる部分の少なくとも一方が、発電セルの対応する部分と比較して上方に突出してなる構造である。以下、そうした燃料電池の具体例について説明する。
【0089】
図14に示すように、上流側第2セパレータ120の貫通孔121の開口形状を、上流側第1セパレータ30の貫通孔31の開口形状と同一にしてもよい。なお、図14において、上記実施形態のエンドセル11(図11参照)と同様の構成は同一の符号を付して示し、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0090】
こうした構成によっても、水素ガス導入路12のエンドセル11内に配置された部分のうちの上流側の部分を、発電セル10の対応する部分と比較して、底壁が下方に向けて凹んだ形状にすることができる。しかも、水素ガス導入路12のエンドセル11内に配置された部分のうちの下流側の部分を、発電セル10の対応する部分と比較して、底壁が上方に向けて突出した形状にすることができる。
【0091】
図15に示すように、上流側第2セパレータ120の貫通孔121の開口形状を上流側第1セパレータ30の貫通孔31の開口形状と同一にするとともに、下流側第2セパレータ130の貫通孔131の開口形状を、下流側第1セパレータ60の貫通孔61の開口形状と同一にしてもよい。なお、図15において、上記実施形態のエンドセル11(図11参照)と同様の構成は同一の符号を付して示し、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0092】
こうした構成によっても、水素ガス導入路12のエンドセル11内に配置された部分のうちの上流側の部分を、発電セル10の対応する部分と比較して、底壁が下方に向けて凹んだ形状にすることができる。また上記構成によれば、水素ガス導入路12を構成する各貫通孔121,101,131の内縁が同水素ガス導入路12内に突出しない構造になるため、同水素ガス導入路12の圧力損失を小さくすることができる。
【0093】
図16に示すように、フレームプレート140の貫通孔141の開口形状を、フレームプレート50の貫通孔51の開口形状と比較して、下方側の部分を上方に突出させることによって狭くしてもよい。また、下流側第2セパレータ130の貫通孔131の開口形状を、下流側第1セパレータ60の貫通孔61の開口形状と同一にしてもよい。なお、図16において、上記実施形態のエンドセル11(図11参照)と同様の構成は同一の符号を付して示し、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0094】
こうした構成によっても、水素ガス導入路12のエンドセル11内に配置された部分のうちの上流側の部分を、発電セル10の対応する部分と比較して、底壁が下方に向けて凹んだ形状にすることができる。しかも、水素ガス導入路12のエンドセル11内に配置された部分のうちの下流側の部分を、発電セル10の対応する部分と比較して、底壁が上方に向けて突出した形状にすることができる。
【0095】
・バイパス流路11Aの一部を構成する複数の主流路43の通路幅や通路高さを互いに相異させる等して各主流路43の流路断面積を相異させることによって、複数の並列路90の圧力損失を互いに相異させるようにしてもよい。
【0096】
・上流側第2セパレータ80と下流側第2セパレータ110との間に、フレームプレート100が挟み込まれた構造のエンドセル11を採用にすることに限らず、多孔質材料からなるプレートやシート(例えばガス拡散層と同一構造のカーボンシート)が挟み込まれた構造のエンドセルを採用することもできる。この場合、1つのエンドセルに水素ガスと空気とを共に通過させるようにすると、エンドセルの内部において水素ガスの流れと空気の流れとが干渉して、エンドセル内部への水の吸引やエンドセル外部への水の排出をうまく行うことができなくなるおそれがある。そのため、こうした場合には、水素ガスのみが通過する構造のエンドセルと空気のみが通過する構造のエンドセルとからなる一対のエンドセルを、複数の発電セル10の積層方向Dの両端に設けることが好ましい。
【0097】
・下方側の並列路90の上記水素ガス導入路12側の端部上端を、前記最大水位Wよりも下方にしたり、最大水位Wと同一の高さにしたりしてもよい。
・エンドセルの下流側第2セパレータとして、基本構造が上流側第2セパレータ80の形状の鏡像となるものを採用することができる。例えばエンドセルの下流側第2セパレータの複数の並列路のうちの、上方側の並列路の圧力損失と比較して、下方側の並列路の圧力損失を小さくするようにしてもよい。こうした構成によれば、空気配管から空気導入路に水が侵入するおそれのある燃料電池において、その侵入した水を空気導入路からバイパス流路に流入する空気の流れによって同バイパス流路の内部に吸引することができ、発電セルへの水の流入を抑えることができる。しかも、エンドセルの下方側の並列路内に水が吸引されて流入した場合に、その流入した水が同並列路内に流入する比較的多量のガス流れによって押し流され易くなるため、並列路内での水の滞留を抑えることができ、バイパス流路に水を吸引する機能を維持することができる。
【0098】
・エンドセル11のバイパス流路11Aを構成する複数の並列路90のうちの上方側の並列路90の圧力損失と下方側の並列路90の圧力損失とを同一にしてもよい。
・水素ガス導入路12に適用した「第1構造」および「第2構造」と同様の構造を、空気導入路13に適用することができる。
【0099】
空気導入路13に適用する「第1構造」としては例えば、上流側第2セパレータ80の貫通孔33の開口形状を上流側第1セパレータ30の貫通孔33の開口形状よりも下方側に広くするとともに、フレームプレート100の貫通孔53の開口形状をフレームプレート50の貫通孔53の開口形状よりも下方側に広くした構造を採用することができる。これにより、空気の流れ方向上流側の上流側第2セパレータ80の貫通孔33における空気導入路13の底壁にあたる部分、およびフレームプレート100の貫通孔33における空気導入路13の底壁にあたる部分の両方を、発電セル10の対応する部分と比較して下方に窪んだ構造にすることができる。
【0100】
また、空気導入路13に適用する「第2構造」としては例えば、下流側第2セパレータ110の貫通孔63の開口形状を、下流側第1セパレータ60の貫通孔63の開口形状と比較して、下方側の部分が上方に突出することによって狭くした構造を採用することができる。これにより、空気の流れ方向下流側の下流側第2セパレータ110の貫通孔63における空気導入路13の底壁にあたる部分が、発電セル10の対応する部分(詳しくは、下流側第1セパレータ60の貫通孔63における空気導入路13の底壁にあたる部分)と比較して上方に突出した構造にすることができる。
【0101】
こうした「第1構造」や「第2構造」を空気導入路13に採用することにより、空気導入路13内に水が侵入した場合にその水がエンドセル11のバイパス流路11Bに流入し易い構造になるため、発電セル10への水の流入を抑えることができるようになる。
【0102】
・燃料電池に設けられる複数のエンドセルのうちの幾つかに、上記実施形態の燃料電池のエンドセル11を適用するようにしてもよい。
・複数の発電セル10の積層方向Dの両端に、エンドセル11を1つずつ設けることに限らず、複数のエンドセルを設けるようにしてもよい。
【0103】
・発電セル10の積層方向Dにおける両端のうちの一方のみにエンドセルが設けられる燃料電池にも、上記実施形態の燃料電池は適用することができる。
・上記実施形態の燃料電池は、水素ガス配管17に加湿器20が設けられていない燃料電池にも適用することができる。
【0104】
・上記実施形態の燃料電池は、電気自動車に搭載される燃料電池に限らず、住宅用の燃料電池など、地面に対して移動不能に固定される燃料電池にも適用可能である。
【符号の説明】
【0105】
10…発電セル、10A…水素ガス流路、10B…空気流路、11…エンドセル、11A,11B…バイパス流路、12…水素ガス導入路、13…空気導入路、14…水素ガス排出路、15…空気排出路、16…スタックマニホールド、17…水素ガス配管、18…空気配管、19…冷却水配管、20…加湿器、21…エンドプレート、22…冷却水導入路、23…冷却水排出路、30…上流側第1セパレータ、31〜36…貫通孔、31A〜36A…凹部、37,67…凹部、38,68,98…流路凸部、40,70,90…並列路、41,71…導入流路、42,72,92…分配流路、43,73…主流路、44,74,94…収束流路、45,75…排出流路、50…フレームプレート(第1プレート)、50A…膜電極接合体、51〜56,101,141…貫通孔、51A〜54A…長孔、60…下流側第1セパレータ、61〜66…貫通孔、61A〜66A…凹部、80,120…上流側第2セパレータ、81,121…貫通孔、81A…凹部、100,140…フレームプレート(第2プレート)、100A…プレート、110,130…下流側第2セパレータ、111,131…貫通孔、111A…凹部。
図1
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