(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
三次元実装技術が進歩するに伴い、半導体基板は、数十nmレベルの精度でパターニングが施されており、僅か数十nmの寸法変化が生じた場合でも歩留り低下の原因になる。半導体基板の寸法変化を抑制するためには、半導体基板を支持するための支持ガラス基板を用いることが有効であり、平坦な支持ガラス基板を用いることが特に有効である。
【0004】
しかし、平坦な支持ガラス基板を用いると、半導体パッケージの製造工程で静電気による問題が発生し易くなる。すなわち、半導体パッケージの製造工程では、支持ガラス基板と定盤との接触剥離が繰り返される。この接触剥離が繰り返されると、支持ガラス基板内の帯電量が増加して、絶縁破壊を引き起こす可能性が高くなる。また、支持ガラス基板と定盤の熱膨張係数差が大きい場合、熱プロセスで支持ガラス基板と定盤の摩擦によって支持ガラス基板が帯電して、絶縁破壊を起こす虞もある。支持ガラス基板が絶縁破壊すれば、半導体基板が汚染されて、コスト高の原因になる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その技術的課題は、半導体パッケージの製造工程で絶縁破壊し難い支持ガラス基板を創案することにより、半導体パッケージの高密度実装に寄与することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々の実験を繰り返した結果、ガラス基板の表面に特定の粗面化領域を形成することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明の半導体用支持ガラス基板は、半導体基板を積層させる側となる第一の表面と第一の表面とは反対側の表面である第二の表面とを有し、第一の表面及び第二の表面の少なくとも一方に、表面粗さRaが0.3nm以上、且つ表面粗さRmaxが100nm以下となる粗面化領域を有することを特徴とする。ここで、「表面粗さRa」と「表面粗さRmax」は、走査型プローブ顕微鏡(例えば、Bruker社製Dimension Icon)を用いて、5μm角の面積で測定した値である。例えば、ガラス基板の第二の表面の全面に粗面化領域が形成されている場合、ガラス基板の面内中央部と周縁部(ガラス基板の端面から約50mm内側の部分)の9カ所について、5μm角の面積で表面粗さRaとRmaxをそれぞれ測定した時の平均値である。
【0007】
本発明の半導体用支持ガラス基板は、少なくとも一方の表面に、表面粗さRaが0.3nm以上となる粗面化領域を有する。これにより、支持ガラス基板と定盤の接触面積が小さくなり、支持ガラス基板内の帯電量を低減することができる。一方、粗面化領域の表面粗さRmaxが大き過ぎると、支持ガラス基板にマイクロクラックが発生して、支持ガラス基板の強度が低下し易くなる。そこで、本発明の半導体用支持ガラス基板は、粗面化領域の表面粗さRmaxを100nm以下に規制している。
【0008】
第二に、本発明の半導体用支持ガラス基板は、粗面化領域が、第二の表面に形成されていることが好ましい。
【0009】
第三に、本発明の半導体用支持ガラス基板は、粗面化領域が、面積比で、第二の表面の5%以上に形成されていることが好ましい。
【0010】
第四に、本発明の半導体用支持ガラス基板は、粗面化領域が、第一の表面と第二の表面の両方に形成されていることが好ましい。このようにすれば、支持ガラス基板と定盤を接触させる時だけでなく、半導体基板を剥離する時にも、支持ガラス基板内の帯電量を低減することができる。
【0011】
第五に、本発明の半導体用支持ガラス基板は、粗面化領域内に、円弧状の研磨傷が存在することが好ましい。このようにすれば、支持ガラス基板内の帯電量が低下するだけでなく、支持ガラス基板の全体板厚偏差も低減し易くなる。
【0012】
第六に、本発明の半導体用支持ガラス基板は、全体板厚偏差が3.0μm以下であることが好ましい。このようにすれば、加工処理の精度を高め易くなる。特に配線精度を高めることができるため、高密度の配線が可能になる。また支持ガラス基板の強度が向上して、支持ガラス基板及び積層基板が破損し難くなる。更に支持ガラス基板の再利用回数を増やすことができる。ここで、「全体板厚偏差」は、支持ガラス基板全体の最大板厚と最小板厚の差であり、例えばコベルコ科研社製のBow/Warp測定装置 SBW−331ML/dにより測定可能である。
【0013】
第七に、本発明の半導体用支持ガラス基板は、板厚が2.0mm未満であり、且つ反り量が60μm以下であることが好ましい。ここで、「反り量」は、支持ガラス基板全体における最高位点と最小二乗焦点面との間の最大距離の絶対値と、最低位点と最小二乗焦点面との絶対値との合計を指し、例えばコベルコ科研社製のBow/Warp測定装置 SBW−331ML/dにより測定可能である。
【0014】
第八に、本発明の積層基板は、少なくとも半導体基板と半導体基板を支持するための半導体用支持ガラス基板とを備える積層基板であって、半導体用支持ガラス基板が上記の半導体用支持ガラス基板であることが好ましい。
【0015】
第九に、本発明の積層基板は、半導体用支持ガラス基板の20〜260℃における平均熱膨張係数が50×10
−7/℃以上であり、且つ半導体基板が少なくとも封止材でモールドされた半導体チップを備えることが好ましい。ここで、「20〜260℃における平均熱膨張係数」は、ディラトメーターで測定可能である。
【0016】
新たなWLPとして、fan out型のWLPが提案されている。fan out型のWLPは、ピン数を増加させることが可能であり、また半導体チップの端部を保護することにより、半導体チップの欠け等を防止することができる。fan out型のWLPでは、複数の半導体チップを樹脂の封止材でモールドして、半導体基板を形成した後に、半導体基板の一方の表面に配線する工程、半田バンプを形成する工程等を有する。これらの工程は、約200〜300℃の熱処理を伴うため、封止材が変形して、半導体基板が寸法変化する虞がある。半導体基板が寸法変化すると、半導体基板の一方の表面に対して、高密度に配線することが困難になり、また半田バンプを正確に形成することも困難になる。
【0017】
上記の通り、半導体基板の寸法変化を抑制するために、支持ガラス基板を用いることが有効であるが、支持ガラス基板を用いた場合であっても、半導体基板内で半導体チップの割合が多く、封止材の割合が少ない場合に、半導体基板の反り変形が生じる場合があった。そこで、上記のように支持ガラス基板の平均熱膨張係数を規定すると、半導体基板内で半導体チップの割合が多く、封止材の割合が少ない場合でも、半導体基板の反り変形を抑制することができる。
【0018】
第十に、本発明の積層基板は、半導体用支持ガラス基板が無アルカリガラスであり、且つ半導体基板がシリコンウェハを備えることが好ましい。ここで、「無アルカリガラス」とは、ガラス組成中のアルカリ成分(Li
2O、K
2O、Na
2O)の含有量が0.5質量%以下のガラスを指す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の半導体用支持ガラス基板は、少なくとも一方の表面に粗面化領域を有し、その粗面化領域の表面粗さRaは0.3nm以上であり、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは0.8nm以上、特に好ましくは1.0〜8.0nmである。表面粗さRaが小さ過ぎると、支持ガラス基板内の帯電量を低減し難くなる。一方、表面粗さRaが大き過ぎると、粗面化処理の処理時間が長くなり、支持ガラス基板の製造コストが高騰し易くなる。
【0021】
粗面化領域の表面粗さRmaxは100nm以下であり、好ましくは80nm以下、より好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。表面粗さRmaxが大き過ぎると、支持ガラス基板にマイクロクラックが発生して、支持ガラス基板の強度が低下し易くなる。
【0022】
本発明の半導体用支持ガラス基板は、粗面化領域が薬液により形成されてなることが好ましい。つまり薬液処理により粗面化領域が形成されていることが好ましい。このようにすれば、滑らかな粗面化領域を形成することができる。結果として、粗面化領域を形成した場合でも、支持ガラス基板の強度を維持し易くなる。薬液としては、粗面化効率の観点から、酸性水溶液が好ましく、酸として、例えば、フッ酸、バッファードフッ酸(BHF)、塩酸、硝酸、硫酸が好ましい。
【0023】
粗面化処理として、支持ガラス基板の表面を研磨処理した後に薬液処理することが好ましい。つまり研磨処理により支持ガラス基板の表面の表面粗さを大きくした後、薬液処理により研磨面内に存在するマイクロクラックを低減することが好ましい。このようにすれば、強度を維持した上で、粗面化処理の処理時間を短縮することができる。この場合、薬液として、酸性水溶液以外にも、アルカリ性水溶液が使用可能になり、例えば、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液が使用可能である。
【0024】
薬液処理の方法として、種々の方法が利用可能であるが、その中でも、安全性と製造効率の観点から、薬液を含浸させたローラーを用いて、薬液をガラス表面に塗布する方法、ガラス表面の一部をレジスト膜で保護した上で、ガラス基板を薬液中に浸漬させる方法が好ましい。
【0025】
また、本発明の半導体用支持ガラス基板は、粗面化領域が反応性ガスにより形成されてなることも好ましい。つまり反応性ガスにより粗面化領域が形成されていることも好ましい。このようにすれば、薬液を飛散させることなく、反応性ガスの流れを制御するだけで、粗面化処理を安全に行うことができる。反応性ガスとして、種々のガスが使用可能であるが、その中でも、CF
4、SF
6等のFを含有するガス、或いはSiCl
4等のClを含むガスをソースとして、大気圧プラズマプロセスにより反応性ガスを発生させることが好ましい。更に、大気圧プラズマプロセスでは、反応性ガスに加えて、He、Ar等の不活性キャリアガスをガラス表面に吹き付けることが好ましい。
【0026】
本発明の半導体用支持ガラス基板は、粗面化領域が研磨処理により形成されてなることも好ましい。つまり研磨処理により粗面化領域が形成されていることも好ましい。特に、円弧状の研磨傷により、第一の表面と第二の表面の両方に粗面化領域を形成することが好ましい。このようにすれば、全体板厚偏差を低減しつつ、粗面化処理を安全に行うことができる。
【0027】
本発明の半導体用支持ガラス基板は、粗面化領域が、第二の表面に形成されていることが好ましい。このようにすれば、支持ガラス基板と定盤との接触剥離が繰り返されても、支持ガラス基板内の帯電量を低減することができる。なお、第一の表面に粗面化領域を形成すると、半導体基板を剥離する際に支持ガラス基板内の帯電量を低減し易くなるが、第一の表面に粗面化領域を形成しなくてもよい。第一の表面に粗面化領域を形成しない場合、半導体基板を安定して支持することが可能になる。
【0028】
本発明の半導体用支持ガラス基板において、粗面化領域が、面積比で、第二の表面の5%以上、10%以上、30%以上、50%以上、80%以上、特に全面に形成されていることが好ましい。このようにすれば、定盤に接触させる際に、支持ガラス基板内の帯電量を低減し易くなる。
【0029】
粗面化領域が、面積比で、第一の表面の5%以上、10%以上、30%以上、50%以上、特に80%以上に形成されていることも好ましい。このようにすれば、半導体基板を剥離する際に、支持ガラス基板内の帯電量を低減し易くなる。
【0030】
30〜260℃の温度範囲における平均熱膨張係数は、半導体基板内で半導体チップの割合が少なく、封止材の割合が多い場合は、上昇させることが好ましく、逆に、半導体基板内で半導体チップの割合が多く、封止材の割合が少ない場合は、低下させることが好ましい。
【0031】
30〜260℃の温度範囲における平均熱膨張係数を0×10
−7/℃以上、且つ50×10
−7/℃未満に規制したい場合、支持ガラス基板は、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 55〜75%、Al
2O
3 15〜30%、Li
2O 0.1〜6%、Na
2O+K
2O 0〜8%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜10%を含有することが好ましく、或いはSiO
2 55〜75%、Al
2O
3 10〜30%、Li
2O+Na
2O+K
2O 0〜0.3%、MgO+CaO+SrO+BaO 5〜20%を含有することも好ましい。30〜260℃の温度範囲における平均熱膨張係数を50×10
−7/℃以上、且つ70×10
−7/℃未満に規制したい場合、支持ガラス基板は、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 55〜75%、Al
2O
3 3〜15%、B
2O
3 5〜20%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、ZnO 0〜5%、Na
2O 5〜15%、K
2O 0〜10%を含有することが好ましく、SiO
2 64〜71%、Al
2O
3 5〜10%、B
2O
3 8〜15%、MgO 0〜5%、CaO 0〜6%、SrO 0〜3%、BaO 0〜3%、ZnO 0〜3%、Na
2O 5〜15%、K
2O 0〜5%を含有することがより好ましい。30〜260℃の温度範囲における平均熱膨張係数を70×10
−7/℃以上、且つ85×10
−7/℃以下に規制したい場合、支持ガラス基板は、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 60〜75%、Al
2O
3 5〜15%、B
2O
3 5〜20%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、ZnO 0〜5%、Na
2O 7〜16%、K
2O 0〜8%を含有することが好ましく、SiO
2 60〜68%、Al
2O
3 5〜15%、B
2O
3 5〜20%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、SrO 0〜3%、BaO 0〜3%、ZnO 0〜3%、Na
2O 8〜16%、K
2O 0〜3%を含有することが好ましい。30〜260℃の温度範囲における平均熱膨張係数を85×10
−7/℃超、且つ120×10
−7/℃以下に規制したい場合、支持ガラス基板は、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 55〜70%、Al
2O
3 3〜13%、B
2O
3 2〜8%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、ZnO 0〜5%、Na
2O 10〜21%、K
2O 0〜5%を含有することが好ましい。30〜260℃の温度範囲における平均熱膨張係数を120×10
−7/℃超、且つ165×10
−7/℃以下に規制したい場合、支持ガラス基板は、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 53〜65%、Al
2O
3 3〜13%、B
2O
3 0〜5%、MgO 0.1〜6%、CaO 0〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、ZnO 0〜5%、Na
2O+K
2O 20〜40%、Na
2O 12〜21%、K
2O 7〜21%を含有することが好ましい。このようにすれば、熱膨張係数を所望の範囲に規制し易くなると共に、耐失透性が向上するため、全体板厚偏差が小さい支持ガラス基板を成形し易くなる。なお、「Na
2O+K
2O」は、Na
2OとK
2Oの合量を指す。「MgO+CaO+SrO+BaO」は、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量を指す。
【0032】
本発明の半導体用支持ガラス基板において、ガラス組成中のアルカリ成分の含有量は、好ましくは15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、特に0.5質量%未満である。ガラス組成中のアルカリ成分の含有量が少ない程、大気中に静電気が放出され難く、支持ガラス基板内の帯電量が増加し易いため、本発明の効果が相対的に大きくなる。また、ガラス組成中のアルカリ成分の含有量が少ない場合、帯電量を低減する観点から、上記粗面化処理に加えて、イオナイザ―による除電処理を組み合わせることが好ましい。
【0033】
支持ガラス基板の熱膨張係数が高い程、支持ガラス基板と定盤の熱膨張係数差が大きくなり、熱プロセスによって支持ガラス基板と定盤の摩擦が大きくなり易い。これにより、支持ガラス基板内の帯電量が増加し易くなるため、本発明の効果が相対的に大きくなる。また、支持ガラス基板の熱膨張係数が高い場合(例えば、支持ガラス基板の20〜260℃における平均熱膨張係数が50×10
−7/℃以上の場合)、帯電量を低減する観点から、上記粗面化処理に加えて、イオナイザ―による除電処理を組み合わせることが好ましい。
【0034】
本発明の半導体用支持ガラス基板において、全体板厚偏差は、好ましくは3.0μm以下、2.0μm未満、1.5μm以下、1.0μm以下、特に0.1〜1.0μm未満である。全体板厚偏差が小さい程、加工処理の精度を高め易くなる。特に配線精度を高めることができるため、高密度の配線が可能になる。また支持ガラス基板の強度が向上して、支持ガラス基板及び積層基板が破損し難くなる。更に支持ガラス基板の再利用回数を増やすことができる。
【0035】
本発明の半導体用支持ガラス基板は、全体板厚偏差を2.0μm未満、1.5μm以下、1.0μm以下、特に1.0μm未満に低減するために、表面が研磨処理されてなることが好ましい。研磨処理の方法としては、種々の方法を採用することができるが、ガラス基板の両表面を一対の研磨パッドで挟み込み、ガラス基板と一対の研磨パッドを共に回転させながら、ガラス基板を研磨処理して、ガラス基板の両表面に円弧状の研磨傷を付与する方法が好ましい。更に一対の研磨パッドは外径が異なることが好ましく、研磨の際に間欠的にガラス基板の一部が研磨パッドから食み出すように研磨処理して、ガラス基板の両表面に円弧状の研磨傷を付与することが好ましい。これにより、全体板厚偏差を低減し易くなり、また反り量も低減し易くなる。なお、研磨処理において、研磨深さは特に限定されないが、研磨深さは、好ましくは50μm以下、30μm以下、0.01〜20μm、特に0.1〜10μmである。研磨深さが小さい程、ガラス基板の生産性が向上する。
【0036】
本発明の半導体用支持ガラス基板は、矩形状であってもよいが、ウェハ状(略真円状)が好ましく、その直径は100mm以上500mm以下、特に150mm以上450mm以下が好ましい。このようにすれば、半導体パッケージの製造工程に適用し易くなる。この場合、支持ガラス基板の真円度(但し、ノッチ部を除く)は1mm以下、0.1mm以下、0.05mm以下、特に0.03mm以下が好ましい。真円度が小さい程、半導体パッケージの製造工程に適用し易くなる。なお、真円度の定義は、支持ガラス基板の外形の最大値から最小値を減じた値である。
【0037】
本発明の半導体用支持ガラス基板において、板厚は、好ましくは2.0mm未満、1.5mm以下、1.2mm以下、1.1mm以下、1.0mm以下、特に0.9mm以下である。板厚が薄くなる程、積層基板の質量が軽くなるため、ハンドリング性が向上する。一方、板厚が薄過ぎると、支持ガラス基板自体の強度が低下して、支持基板としての機能を果たし難くなる。よって、板厚は、好ましくは0.1mm以上、0.2mm以上、0.3mm以上、0.4mm以上、0.5mm以上、0.6mm以上、特に0.7mm超である。
【0038】
反り量は、好ましくは60μm以下、55μm以下、50μm以下、1〜45μm、特に5〜40μmである。反り量が小さい程、加工処理の精度を高め易くなる。特に配線精度を高めることができるため、高密度の配線が可能になる。
【0039】
本発明の半導体用支持ガラス基板は、支持ガラス基板の外周の一部にノッチ部(位置決め部)を有することが好ましい。このようにすれば、支持ガラス基板のノッチ部に位置決めピン等の位置決め部材を当接させて、支持ガラス基板を位置固定し易くなる。結果として、半導体基板と支持ガラス基板の位置合わせが容易になる。なお、半導体基板にもノッチ部を形成して、位置決め部材を当接させると、半導体基板と支持ガラス基板の位置合わせが更に容易になる。
【0040】
このノッチ部は、面取り加工されていることが好ましい。つまりノッチ部に面取り部が形成されていることが好ましい。更にノッチ部の表面が薬液によりエッチング処理されて、微小傷が除去されていることが好ましい。これにより、支持ガラス基板がノッチ部から破損する事態を防止し易くなる。なお、好適な薬液は、既述の通りである。
【0041】
本発明の半導体用支持ガラス基板において、端面(ノッチ部を除く)は面取り加工されていることが好ましい。つまり端面に面取り部が形成されていることが好ましい。更に端面の表面が酸によりエッチング処理されて、微小傷が除去されていることが好ましい。これにより、支持ガラス基板が端面から破損する事態を防止し易くなる。なお、好適な薬液は、既述の通りである。
【0042】
本発明の半導体用支持ガラス基板は、反り量を低減する観点から、化学強化処理がなされていないことが好ましい。つまり反り量を低減する観点から、表面に圧縮応力層を有しないことが好ましい。
【0043】
本発明の半導体用支持ガラス基板は、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、耐熱性の樋状構造物の両側から溶融ガラスを溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下頂端で合流させながら、下方に延伸成形してガラス基板を製造する方法である。オーバーフローダウンドロー法では、ガラス基板の表面となるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形される。このため、板厚が小さいガラス基板を作製し易くなると共に、少量の研磨によって、或いは研磨処理しなくても、全体板厚偏差を2.0μm未満、特に1.0μm未満まで低減することができ、結果として、ガラス基板の製造コストを低廉化することができる。なお、樋状構造物の構造や材質は、所望の寸法や表面精度を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行う際に、力を印加する方法も特に限定されない。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールを帯状ガラスの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。
【0044】
ガラス基板の成形方法として、オーバーフローダウンドロー法以外にも、例えば、スロットダウンドロー法、リドロー法、フロート法等を採択することもできる。
【0045】
本発明の半導体用支持ガラス基板は、オーバーフローダウンドロー法で成形した後に、第一の表面と第二の表面の全面が研磨処理されてなることが好ましい。このようにすれば、全体板厚偏差を2.0μm未満、1.5μm以下、1.0μm以下、特に0.1〜1.0μm未満に規制し易くなる。
【0046】
本発明の積層基板は、少なくとも半導体基板と半導体基板を支持するための半導体用支持ガラス基板とを備える積層基板であって、半導体用支持ガラス基板が上記の半導体用支持ガラス基板であることを特徴とする。ここで、本発明の積層基板の技術的特徴(好適な構成、効果)は、本発明の半導体用支持ガラス基板の技術的特徴と重複する。よって、本明細書では、その重複部分について、詳細な記載を省略する。
【0047】
本発明の積層基板は、半導体用支持ガラス基板の20〜260℃における平均熱膨張係数が50×10
−7/℃以上であり、且つ半導体基板が少なくとも封止材でモールドされた半導体チップを備えることが好ましい。このようにすれば、支持ガラス基板と半導体基板の熱膨張係数が整合し易くなり、fan out型のWLPの製造工程に好適に適用可能になる。
【0048】
本発明の積層基板は、半導体用支持ガラス基板が無アルカリガラスであり、且つ半導体基板がシリコンウェハを備えることも好ましい。このようにすれば、支持ガラス基板と半導体基板の熱膨張係数が整合し易くなり、支持ガラス基板をバックグラインド基板に用いて、半導体基板を薄型化する工程に好適になる。
【0049】
本発明の積層基板は、半導体基板と支持ガラス基板の間に、接着層を有することが好ましい。接着層は、樹脂であることが好ましく、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化樹脂)等が好ましい。また半導体パッケージの製造工程における熱処理に耐える耐熱性を有するものが好ましい。これにより、半導体パッケージの製造工程で接着層が融解し難くなり、加工処理の精度を高めることができる。
【0050】
本発明の積層基板は、更に半導体基板と支持ガラス基板の間に、より具体的には半導体基板と接着層の間に、剥離層を有すること、或いは支持ガラス基板と接着層の間に、剥離層を有することが好ましい。このようにすれば、半導体基板に対して、所定の加工処理を行った後に、半導体基板を支持ガラス基板から剥離し易くなる。半導体基板の剥離は、生産性の観点から、レーザー光等の照射光により行うことが好ましい。
【0051】
剥離層は、レーザー光等の照射光により「層内剥離」又は「界面剥離」が生じる材料で構成される。つまり一定の強度の光を照射すると、原子又は分子における原子間又は分子間の結合力が消失又は減少して、アブレーション(ablation)等を生じ、剥離を生じさせる材料で構成される。なお、照射光の照射により、剥離層に含まれる成分が気体となって放出されて分離に至る場合と、剥離層が光を吸収して気体になり、その蒸気が放出されて分離に至る場合とがある。
【0052】
本発明の積層基板において、支持ガラス基板は、半導体基板よりも大きいことが好ましい。これにより、半導体基板と支持ガラス基板を支持する際に、両者の中心位置が僅かに離間した場合でも、支持ガラス基板から半導体基板の縁部が食み出し難くなる。
【0053】
図面を参酌しながら、本発明を更に説明する。
【0054】
図1は、本発明の積層基板1の一例を示す概念斜視図である。
図1では、積層基板1は、半導体用支持ガラス基板10と半導体基板11とを備えている。半導体用支持ガラス基板10は、半導体基板11の寸法変化を防止するために、半導体基板11に貼着されている。半導体用支持ガラス基板10と半導体基板11との間には、剥離層12と接着層13が配置されている。剥離層12は、半導体用支持ガラス基板10と接触しており、接着層13は、半導体基板11と接触している。
【0055】
図1から分かるように、積層基板1は、半導体用支持ガラス基板10、剥離層12、接着層13、半導体基板11の順に積層配置されている。半導体用支持ガラス基板10の形状は、半導体基板11に応じて決定されるが、
図1では、半導体用支持ガラス基板10及び半導体基板11の形状は、何れも略円板形状である。剥離層12は、非晶質シリコン(a−Si)以外にも、酸化ケイ素、ケイ酸化合物、窒化ケイ素、窒化アルミ、窒化チタン等が用いられる。剥離層12は、プラズマCVD、ゾル−ゲル法によるスピンコート等により形成される。接着層13は、樹脂で構成されており、例えば、各種印刷法、インクジェット法、スピンコート法、ロールコート法等により塗布形成される。接着層13は、剥離層12により半導体基板11から半導体用支持ガラス基板10が剥離された後、溶剤等により溶解除去される。
【0056】
図2は、fan out型のWLPの製造工程を示す概念断面図である。
図2Aは、支持部材20の一方の表面上に接着層21を形成した状態を示している。必要に応じて、支持部材20と接着層21の間に剥離層を形成してもよい。次に、
図2Bに示すように、接着層21の上に複数の半導体チップ22を貼付する。その際、半導体チップ22のアクティブ側の面を接着層21に接触させる。次に、
図2Cに示すように、半導体チップ22を樹脂の封止材23でモールドする。封止材23は、圧縮成形後の寸法変化、配線を成形する際の寸法変化が少ない材料が使用される。続いて、
図2D、Eに示すように、支持部材20から半導体チップ22がモールドされた半導体基板24を分離した後、接着層25を介して、半導体用支持ガラス基板26と接着固定させる。その際、半導体基板24の表面の内、半導体チップ22が埋め込まれた側の表面とは反対側の表面が半導体用支持ガラス基板26側に配置される。ここで、半導体用支持ガラス基板26の接着層25と接する側の表面とは反対側の表面には、大気圧プラズマプロセス(ソースCF
4、キャリアガスAr)により、粗面化領域が形成されている。このようにして、積層基板27を得ることができる。なお、必要に応じて、接着層25と半導体用支持ガラス基板26の間に剥離層を形成してもよい。更に、得られた積層基板27を搬送した後に、
図2Fに示すように、半導体基板24の半導体チップ22が埋め込まれた側の表面に配線28を形成した後、複数の半田バンプ29を形成する。最後に、半導体用支持ガラス基板26から半導体基板24を分離した後に、半導体基板24を半導体チップ22毎に切断し、後のパッケージング工程に供される(
図2G)。
【0057】
図3は、半導体用支持ガラス基板をバックグラインド基板に用いて、半導体基板を薄型化する工程を示す概念断面図である。
図3Aは、積層基板30を示している。積層基板30は、半導体用支持ガラス基板31、剥離層32、接着層33、半導体基板(シリコンウェハ)34の順に積層配置されている。半導体用支持ガラス基板31の接着層34に接する側の表面とは反対側の表面には、酸水溶液を用いた薬液処理により粗面化領域が形成されている。半導体基板34の接着層33に接する側の表面には、半導体チップ35がフォトリソグラフィー法等により複数形成されている。
図3Bは、半導体基板34を研磨装置36により薄型化する工程を示している。この工程により、半導体基板34は、機械的に研磨処理されて、例えば数十μmまで薄型化される。
図3Cは、半導体用支持ガラス基板31を通して、剥離層32に紫外光37を照射する工程を示している。この工程を経ると、
図3Dに示す通り、半導体用支持ガラス基板31を分離することが可能になる。分離された半導体用支持ガラス基板31は、必要に応じて、再利用される。
図3Eは、半導体基板34から接着層33を取り除く工程を示している。この工程を経ると、薄型化した半導体基板34を採取することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0059】
表1は、本発明の実施例(試料No.1〜4)及び比較例(試料No.5、6)を示している。
【0060】
【表1】
【0061】
<試料No.1の調製>
まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合したガラスバッチを白金坩堝に入れた後、1500〜1600℃で24時間溶融、清澄、均質化を行った。ガラスバッチの溶解に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、溶融ガラスをカーボン板上に流し出して、板状に成形した後、徐冷点付近の温度で30分間徐冷した。
【0062】
続いて、得られたガラス基板を300mm×300mm×0.8mm厚に切断加工した後、その両表面を研磨装置により研磨処理した。具体的には、ガラス基板の両表面を外径が相違する一対の研磨パットで挟み込み、ガラス基板と一対の研磨パッドを共に回転させながらガラス基板の両表面を研磨処理して、ガラス基板の両表面に円弧状の研磨傷を付与した。研磨処理の際、時折、ガラス基板の一部が研磨パッドから食み出すように制御した。なお、研磨パッドはウレタン製、研磨処理の際に使用した研磨スラリーの平均粒径は2.5μm、研磨速度は15m/分であった。得られた各研磨処理済みガラス基板について、コベルコ科研社製のBow/Warp測定装置SBW−331ML/dにより全体板厚偏差と反り量を測定した。その結果、全体板厚偏差がそれぞれ0.65μmであり、反り量がそれぞれ35μmであった。
【0063】
更に、研磨処理後のガラス基板上にポリイミドテープで格子状にマスキングした後に、50℃、10質量%HCl水溶液に1時間浸漬して、ガラス基板の表面を薬液処理した。次に、薬液処理後のガラス基板を水洗し、ポリイミドテープを剥がして、再度、水洗し、乾燥した。
【0064】
<試料No.2の調製>
まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合したガラスバッチを白金坩堝に入れた後、1500〜1600℃で24時間溶融、清澄、均質化を行った。ガラスバッチの溶解に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、溶融ガラスをカーボン板上に流し出して、板状に成形した後、徐冷点付近の温度で30分間徐冷した。
【0065】
続いて、得られたガラス基板をφ300mm×0.8mm厚に切断加工した後、その両表面を鏡面研磨した。次に、50℃、5質量%水酸化カリウム水溶液中に1時間浸漬して、ガラス基板の両表面を薬液処理した。次に、薬液処理後、ガラス基板を水洗し、乾燥した。
【0066】
<試料No.3の調製>
まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合したガラスバッチを連続溶融炉に投入した後、1500〜1600℃で24時間溶融、清澄、均質化を行った。次いで、オーバーフローダウンドロー法でガラス基板に成形した。
【0067】
続いて、得られたガラス基板をφ300mm×0.7mm厚に切断加工した後、その両表面を研磨装置により研磨処理した。具体的には、ガラス基板の両表面を外径が相違する一対の研磨パットで挟み込み、ガラス基板と一対の研磨パッドを共に回転させながらガラス基板の両表面を研磨処理して、ガラス基板の両表面に円弧状の研磨傷を付与した。研磨処理の際、時折、ガラス基板の一部が研磨パッドから食み出すように制御した。なお、研磨パッドはウレタン製、研磨処理の際に使用した研磨スラリーの平均粒径は2.5μm、研磨速度は15m/分であった。得られた各研磨処理済みガラス基板について、コベルコ科研社製のBow/Warp測定装置SBW−331ML/dにより全体板厚偏差と反り量を測定した。その結果、全体板厚偏差がそれぞれ0.45μmであり、反り量がそれぞれ25μmであった。
【0068】
<試料No.4の調製>
まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合したガラスバッチを白金坩堝に入れた後、1500〜1600℃で24時間溶融、清澄、均質化を行った。ガラスバッチの溶解に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、溶融ガラスをカーボン板上に流し出して、板状に成形した後、徐冷点付近の温度で30分間徐冷した。
【0069】
続いて、得られたガラス基板を300mm×400mm×1.0mm厚に切断加工した後、その両表面を鏡面研磨した。更に、鏡面研磨後のガラス基板上にポリイミドテープでストライプ状にマスキングした後に、反応性ガスとしてCF
4、キャリアガスとしてArを用いた大気圧プラズマ処理を行った。次に、大気圧プラズマ処理を行った後、ガラス基板を水洗し、ポリイミドテープを剥がして、再度、水洗し、乾燥した。
【0070】
<試料No.5の調製>
まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合したガラスバッチを連続溶融炉に投入した後、1500〜1600℃で24時間溶融、清澄、均質化を行った。次いで、オーバーフローダウンドロー法でガラス基板に成形した。続いて、得られたガラス基板をφ300mm×0.7mm厚に切断加工した。
【0071】
<試料No.6の調製>
まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合したガラスバッチを連続溶融炉に投入した後、1500〜1600℃で24時間溶融、清澄、均質化を行った。次いで、ロールアウト法でガラス基板に成形した。続いて、得られたガラス基板をφ300mm×0.7mm厚に切断加工した後、その両表面を研磨装置により研磨処理した。
【0072】
得られた各ガラス基板について、30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数α
30〜380、粗面化領域の面積、表面粗さRa、表面粗さRmax、帯電量及びマイクロクラックについて評価した。その結果を表1に示す。
【0073】
30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数α
30〜380は、ディラトメーターで測定した値である。
【0074】
表面粗さRa,Rmaxは、走査型プローブ顕微鏡(Bruker社製Dimension Icon)を用いて、5μm角の面積で測定したものである。具体的には、ガラス基板の面内中央部と周縁部(ガラス基板の端面から約50mm内側の部分)の9カ所について、5μm角の面積で表面粗さRa,Rmaxをそれぞれ測定し、その平均値を表記したものである。なお、試料No.5以外の試料については、粗面化領域について表面粗さRa,Rmaxを測定した。
【0075】
帯電量の評価には、
図4A及び
図4Bに示すような装置を用いた。この装置は以下の構成を有している。
【0076】
ガラス基板40の支持台41は、ガラス基板4隅を支持するテフロン(登録商標)製のパッド42を備えている。また、支持台41には、昇降自在な金属アルミニウム製のプレート43が設けられており、プレート43を上下させることによって、ガラス基板40とプレート43を接触、剥離させ、ガラス基板40を帯電させることができる。なお、プレート43はアースされている。また、プレート43には孔(図示せず)が形成されており、この孔がダイアフラム型の真空ポンプ(図示せず)に接続されている。真空ポンプを駆動させると、プレート43の孔から空気が吸引され、これによってガラス基板40をプレート43に真空吸着させることができる。また、ガラス基板40の上方10mmの位置には表面電位計44が設置され、これによってガラス基板40中央部に発生する帯電量を連続測定することができる。また、ガラス基板40の上方にはイオナイザ付きエアーガン45が設置されており、これによってガラス基板40の帯電を徐電することができる。なお、この装置のプレート43のサイズはφ150mmの円である。
【0077】
この装置を用いて帯電量を測定する方法を説明する。なお、実験は20℃±1℃、湿度40%±1%の環境で行う。この帯電量は雰囲気、大気中の湿度の影響を受けて大きく変化するので、特に湿度の管理に留意する必要がある。
(1) ガラス基板40の粗面化領域を有する表面を下側にして支持台41に載置する。なお、両表面に粗面化領域を有しない場合は、どちらの表面が下側でもよい。
(2) イオナイザ付きエアーガン45により、ガラス基板40を10V以下に除電する。
(3) プレート43を上昇させてガラス基板40に接触させるとともに真空吸着させて、プレート43とガラス基板40を30秒間密着させる。
(4) プレート43を下降させることでガラス基板40を剥離し、ガラス基板40中央部に発生する帯電量を表面電位計で連続的に測定する。
(5) (3)と(4)を繰り返し、計5回の帯電量の評価を連続して行う。
(6) 各測定における最大帯電量を求め、これらを積算して帯電量とする。
【0078】
マイクロクラックは、ガラス基板内を観察して、マイクロクラックが殆どないものを「○」、マイクロクラックが多く存在しているものを「×」として評価したものである。
【0079】
表1から明らかなように、試料No.1〜4は、粗面化領域の表面粗さが適正であるため、帯電量とマイクロクラックの評価が良好であった。よって、試料No.1〜4は、半導体用支持ガラス基板として好適に使用可能であると考えられる。一方、試料No.5は、表面が平滑過ぎるため、帯電量が大きかった。また、試料No.6は、表面が粗過ぎるため、マイクロクラックの評価が不良であった。