特許第6663610号(P6663610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6663610慣性モーメントを測定する方法およびその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663610
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】慣性モーメントを測定する方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 1/10 20060101AFI20200302BHJP
【FI】
   G01M1/10
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-236120(P2017-236120)
(22)【出願日】2017年12月8日
(65)【公開番号】特開2019-105446(P2019-105446A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390023308
【氏名又は名称】日章電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】東島 哲二
(72)【発明者】
【氏名】東島 鎮▲かく▼
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−111436(JP,A)
【文献】 特開2015−083987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定すべき物体を着脱可能に装着できる回転本体を回転駆動機構により回転させ、回転軸周りに加わるトルクm(t)をトルク検出器で、また回転軸周りの回転角θ(t)を回転角検出器でそれぞれ検出し、前記回転軸周りの当該物体の慣性モーメントIを測定する方法であって、下記1)〜4)の過程、即ち、
1)トルク印加開始時点tと印加終了時点tにわたる測定期間[t,t]の間で回転本体が回転した全回転角度Θ(t,t)を求め、
2)測定期間内の多数の時点tに対応するトルクm(t)を求め、
3)求めたトルクm(t)の値を前記測定期間に関して数値的に二重時間積分し、
4)二重時間積分したトルクの値M(t,t)を全回転角度Θ(t,t)で割り算してその時の測定系の慣性モーメントを求める、
過程を回転本体に当該物体を装着した場合と、装着しない場合についてそれぞれ実施し、測定すべき物体を装着した測定系の慣性モーメントIから測定すべき物体を装着していない測定系の慣性モーメントIを引き算した値を測定すべき物体の慣性モーメントIとする方法において、
トルク印加開始時前の予め定めた所定時間(T)におけるトルク計測信号値を積分平均値化することにより前記トルクm(t)測定値の計測開始時読取誤差を抑制し、さらにトルク印加終了後の予め定めた所定時間(T)におけるトルク計測信号値を積分平均値化することにより前記トルクm(t)測定値の計測終了時読取誤差を抑制することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記トルクm(t)の一回時間積分の測定値をトルク印加終了時点(t)およびトルク印加終了時点(t)より予め定めた所定時間(T)後の時点(t)の二点において積分平均値化した上で、トルク印加終了後の予め定めた所定時間(T)におけるドリフト誤差に基づくトルク計測信号値傾斜直線部分の傾斜を求め、当該直線と時間軸との間の三角形領域(B)を求め、前記測定値曲線と前記時間軸との間の測定領域(A)から前記三角形領域を差し引く演算処理を行なうことにより補正した一回時間積分の測定値(C)を求め、さらに、この補正した一回時間積分をさらに時間積分して前記トルクm(t)の二重時間積分を求めることにより、トルクm(t)測定値のドリフト誤差を抑制することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
回転角の実際値θ(t)と回転角検出器のその時の出力信号の値e(t)との間の比例係数cおよびトルクの実際値m(t)とトルク検出器のその時の出力信号の値e(t)との間の比例係数cを求めて、両方の比例係数の比Kを、
【数10】
とし、回転本体に物体を装着しない状態で、測定期間[t,t]中の回転本体の全回転角度Θ(t,t)に相当する検出信号Ea0と、トルク検出信号の値m(t)をこの測定期間に付いて二回積分した値に相当する二重時間積分値Eb0をそれぞれ求め、さらに、回転本体に測定すべき物体を装着した状態で、測定期間[t,t]中の回転本体の全回転角度Θ(t,t)に相当する検出信号Ea1と、トルク検出信号の値m(t)を上記測定期間に付いて二回時間積分した値M(t,t)に相当する二重時間積分値Eb1をそれぞれ求め、測定すべき物体の慣性モーメントIを、
【数11】
として求める、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
更に、下記の過程、慣性モーメントIが既知の基準分銅を回転本体に装着した状態で、対応する測定期間中の回転本体の回転角度に相当する検出信号Ea2と、トルク検出信号を対応する測定期間に付いて二回時間積分した値に相当する二重時間積分値Eb2をそれぞれ求め、比例係数の比Kを、
【数12】
とし、このKの値を請求項3で定めた比例係数Kの比の代わりに使用する、ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
測定すべき物体を着脱可能に装着できる回転本体(4)と、
回転本体(4)の回転軸回りに加わるトルクを検出するトルク検出器(3)と、
回転本体(4)の回転軸回りの回転角を検出する回転角検出器(11)と、
前記回転本体(4)に外部から回転運動を与える回転駆動手段(7,8,9,10)と、請求項1〜4の何れか1項の方法を実施する数値演算プログラムを格納する記憶器と、
前記トルク検出器(3)および回転角検出器(11)の検出信号に基づき前記数値演算プログラムを実施して慣性モーメントを算出するプロセッサとを含む演算処理部(22)と、
所望の角度変化を与える駆動信号を発生させて前記回転駆動手段の電動モータ(7)を駆動するモータ駆動部(24)を有する電気制御装置(20)と、
を備えていることを特徴とする物体の慣性モーメント測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転部品、特に電気的および機械的な回転部品の慣性モーメントを測定する方法およびこの方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転運動を伴う電気的もしくは機械的部品の動的運動特性には、その部品の慣性モーメントが重要な役割を演ずる。例えば、各種電動機のロータ、OA機器、ビデオ、あるいはオーディオ機器のディスク・ドライブ機構、自動車の回転部品(ブレーキディスク、クラッチ板、過給器のロータ等)では回転軸回りの慣性モーメントを正しく評価することが大切である。また、円弧運動を伴う機械部品、例えばロボットアーム等にもこのことが当てはまる。更に、運動器具で、例えばゴルフクラブのヘッドの設計にもその慣性モーメントの知識は重要である。特に駆動源を電動機としたサーボ系では、この種の回転部品を含む全系の応答周波数特性を正しく理解するのに、その部品の慣性モーメントを知ることが極めて重要である。
【0003】
しかしながら、慣性モーメントを正確にしかも簡単な操作で測定できる実用的な装置は未だ市場に提供されていない。従って、慣性モーメントの知見を必要とする場合、装置の開発設計者が必要に応じて実験室的に当該部品の慣性モーメントを求めているに過ぎない。計測すべき対象物に直結する回転体の回転軸の回りに適当な回転駆動装置を用いて回転運動を与え、時刻tでのその対象物の回転軸の回りの回転角θ(t) と回転トルクm(t) を測定して、以下の関係、
【数1】
から満たす慣性モーメントIを求める。従って、各時点tでのトルクm(t)と回転角加速度d2θ(t)/dt2 を実測できれば、慣性モーメントIを原理的に求めることができる。しかし、実際には、回転角加速度を一定の期間にわたり一定に維持するような回転運動を与えることが困難であるため、トルクと回転角度θ(t) あるいは回転角速度 dθ(t)/dtの瞬時値を求める必要があり、回転角加速度を求めるには更に回転角あるいは回転角速度を時間微分する必要がある。このような操作では、トルクと回転角または回転角速度の現実の測定値に避けがたい時間変動を含むため、測定精度の著しく低下した慣性モーメントしか求まらない。
【0004】
また、慣性モーメントIを高精度で測定する必要がある場合、この方式では回転運動を与える機構に計測すべき対象物を組み入れた状態で、回転角計とトルクメータを別々に較正する必要がある。特に両方の検出器の経時変化等のため、この較正を比較的頻繁に行う必要がある。
【0005】
上記に鑑み、使用上の操作が簡単で、それにもかかわらず測定精度が極めて高い慣性モーメントの測定方法およびその装置であって、更に、この測定装置の較正が簡単に行えるような慣性モーメントの測定方法および装置を提供するために、本願出願人は、下記のような測定方法および装置を提案している。詳細は図と共に後述する。
【0006】
即ち、測定方法としては、測定すべき物体を着脱可能に装着できる回転本体を回転駆動機構により回転させ、回転軸周りに加わるトルクm(t) をトルク検出器で、また回転軸周りの回転角θ(t) を回転角検出器でそれぞれ検出し、前記回転軸周りの当該物体の慣性モーメントIx を測定する方法にあって、下記の過程、即ち、トルク印加期間内の第一時点ts とそれ以後の第二時点te にわたる測定期間[ts,e] の間で回転本体が回転した全回転角度Θ(ts,e) を求め、測定期間内の多数の時点tに対応するトルクm(t) を求め、求めたトルクm(t) の値を前記測定期間に関して数値的に二重時間積分し、二重時間積分したトルクの値M(ts,e) を全回転角度Θ(ts,e) で割り算してその時の測定系の慣性モーメントを求める、を回転本体に当該物体を装着した場合と、装着しない場合についてそれぞれ実施し、測定すべき物体を装着した測定系の慣性モーメントI1 から測定すべき物体を装着していない測定系の慣性モーメントI0 を引き算した値を測定すべき物体の慣性モーメントIx とする方法である。
【0007】
また、上記方法を実施するための測定装置としては、測定すべき物体を着脱可能に装着できる回転本体4と、回転本体4の回転軸回りに加わるトルクを検出するトルク検出器3と、回転本体4の回転軸回りの回転角を検出する回転角検出器11と、前記回転本体4に外部から回転運動を与える回転駆動手段7,8,9,10と、上に述べた方法を実施する数値演算プログラムを格納する記憶器と、トルク検出器3および回転角検出器11の検出信号に基づき前記数値演算プログラムを実施して慣性モーメントを算出するプロセッサとを含む演算処理部22と、所望の角度変化を与える駆動信号を発生させて前記回転駆動手段の電動モータ7を駆動するモータ駆動部24を有する電気制御装置20とを備えている慣性モーメント測定装置である。
【0008】
上記のような測定方法および装置によれば、従来に比較して大幅な改善がなされるものの、まだ、下記のような問題点があった。
【0009】
トルク印加開始時とトルク計測開始時とを同時とした場合であっても、計測開始時のトルクの読み取り値に誤差が含まれる(以下、計測開始時読取誤差という。)。また、トルク印加終了時と計測終了時とを同時とした場合であっても、計測終了時に振動が止まっていない場合があり、トルク読み取り値に誤差が含まれる(以下、計測終了時読取誤差という。)。
【0010】
さらに、回転加振中のトルク検出器のドリフト誤差が含まれる。ドリフト誤差は較正終了後に時間経過と共に発生する検出器の出力電圧の変化に起因し、検出器内部の接続ケーブルの熱膨張や周波数変換器の温度ドリフトなどが要因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、この発明の課題は、前述した本願出願人の提案になる慣性モーメントの測定方法および装置を改善し、さらに測定精度を高めた測定方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決するために、この発明の測定方法は下記のような方法とする。即ち、測定すべき物体を着脱可能に装着できる回転本体を回転駆動機構により回転させ、回転軸周りに加わるトルクm(t) をトルク検出器で、また回転軸周りの回転角θ(t) を回転角検出器でそれぞれ検出し、前記回転軸周りの当該物体の慣性モーメントIx を測定する方法であって、下記1)〜4)の過程、即ち、
1)トルク印加開始時点ts と印加終了時点te にわたる測定期間[ts,te] の間で回転本体が回転した全回転角度Θ(ts,te) を求め、
2)測定期間内の多数の時点tに対応するトルクm(t) を求め、
3)求めたトルクm(t) の値を前記測定期間に関して数値的に二重時間積分し、
4)二重時間積分したトルクの値M(ts,te) を全回転角度Θ(ts,te) で割り算してその時の測定系の慣性モーメントを求める、
過程を回転本体に当該物体を装着した場合と、装着しない場合についてそれぞれ実施し、測定すべき物体を装着した測定系の慣性モーメントI1 から測定すべき物体を装着していない測定系の慣性モーメントI0 を引き算した値を測定すべき物体の慣性モーメントIx とする方法において、 トルク印加開始時前の予め定めた所定時間(Ts)におけるトルク計測信号値を積分平均値化することにより前記トルクm(t)測定値の計測開始時読取誤差を抑制し、さらにトルク印加終了後の予め定めた所定時間(Te)におけるトルク計測信号値を積分平均値化することにより前記トルクm(t)測定値の計測終了時読取誤差を抑制する、ことによって解決される。
【0013】
また、上記発明において、下記の方法とすることが好ましい。即ち、前記トルクm(t) の一回時間積分の測定値を積分平均値化した上で、トルク印加終了後の予め定めた所定時間(Te)におけるドリフト誤差に基づくトルク計測信号値傾斜曲線と時間軸との間の三角形領域(B)を求め、前記測定値曲線と前記時間軸との間の測定領域(A)から前記三角形領域を差し引く演算処理を行なうことにより補正した一回時間積分の測定値(C)を求め、さらに、この補正した一回時間積分をさらに時間積分して前記トルクm(t) の二重時間積分を求めることにより、トルクm(t)測定値のドリフト誤差を抑制することが好ましい。
【0014】
この発明による他の有利な方法は、特許請求の範囲の従属請求項3および4に記載されている。
【0015】
さらに、装置に関する上記課題は下記により解決される。即ち、測定すべき物体を着脱可能に装着できる回転本体(4)と、回転本体(4)の回転軸回りに加わるトルクを検出するトルク検出器(3)と、回転本体(4)の回転軸回りの回転角を検出する回転角検出器(11)と、前記回転本体(4)に外部から回転運動を与える回転駆動手段(7,8,9,10)と、別記請求項1〜4の何れか1項の方法を実施する数値演算プログラムを格納する記憶器と、前記トルク検出器(3)および回転角検出器(11)の検出信号に基づき前記数値演算プログラムを実施して慣性モーメントを算出するプロセッサとを含む演算処理部(22)と、所望の角度変化を与える駆動信号を発生させて前記回転駆動手段の電動モータ(7)を駆動するモータ駆動部(24)を有する電気制御装置(20)と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、使用上の操作が簡単で、測定精度が高い慣性モーメントの測定方法およびその装置であって、更に、この測定装置の較正が簡単に行えるような慣性モーメントの測定方法および装置を提供することができる。特に、前述の本願出願人が提案している測定方法および装置に比較して、計測開始時読取誤差、計測終了時読取誤差ならびに検出器のドリフト誤差を抑制することが可能となり、これにより、極めて高い測定精度が得られる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】単発駆動による回転体の回転角θ,回転角速度 dθ/dt(θの上に一点ドットの付いているもの)および回転角加速度 d2θ/dt2 (θの上に二点ドットの付いているもの)の時間変化を示すグラフ。
図2】測定装置全体のブロック図。
図3】モータ制御および演算処理部の詳細な回路図。
図4】実測したトルクの瞬時値(α)とトルクを二重時間積分した総積算値(β)およびその時の回転体の回転角速度の指令信号(γ)を例示するグラフ。
図5】計測開始時読取誤差および計測終了時読取誤差の模式的説明図。
図6】トルクm(t) の一回時間積分値に対する計測開始時読取誤差および計測終了時読取誤差の影響に関する説明図。
図7】トルクm(t) の二重時間積分値に対する計測開始時読取誤差および計測終了時読取誤差の影響に関する説明図。
図8】計測開始時読取誤差および計測終了時読取誤差の平均値化に関する説明図
図9】ドリフト誤差によるトルク検出器のみかけ上の出力の説明図であって、(a) はみかけ上のトルク出力m(t) の時間変化に関する図、(b)はみかけ上のトルク出力m(t) の一回時間積分値に関する図、(c)はみかけ上のトルク出力m(t) の二重時間積分値に関する図。
図10】ドリフト誤差を除去する説明図であって、(a) は図9(b)を二つの領域に分けて示した一回時間積分値に関する図、(b)は(a) 図の二つの領域の差に基づく一回時間積分値に関する図、(c)はドリフト誤差を除去した二重時間積分値に関する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図4に基づき、まず、前述の本願出願人が提案している測定方法および装置に関して詳述する。これらの方法および装置は本発明のベースとなる。前記本願出願人が提案する構成によれば、使用する慣性モーメント測定装置には試験片を回転させる回転軸にトルク検出器と回転角検出器を組み込み、この回転軸に適当な回転駆動手段を用いて図1に示す単発的な回転運動を加える。
【0019】
特に好ましくは図1に示すように、トルクの印加開始時点回転ts と印加終了時点te で回転角速度 dθ/dtと回転角加速度d2θ/dt2 が共に零であり、回転角速度 dθ/dt が半周期の正弦波を示すように選ぶと有利である。
【0020】
上記計測方法を数式で示す。先ず、測定には3つのモードを使用し、このモードを記号i=0〜2で指定する。即ち、
第0測定モード(i=0): 測定系に試験片を装着していない無負荷状態での測定
第1測定モード(i=1): 実際に計測すべき試験片を装着した状態での測定
第2測定モード(i=2): 既知の慣性モーメントを持つ基準分銅を装着した状態での測定
である。以下に述べる諸量をこれ等の測定モードに関して区別したい場合、i=0,1および2がそれぞれ第0、第1および第2測定モードを意味する下付きの添字iを対応する諸量の記号に付加する。
【0021】
図1に示す回転モーメント印加期間 [tA,tB ]中に回転軸に加わったi測定モードでのトルクm(t) の二重積分値M(ts,te)は、
【数2】
となる。更に、式 (1)の回転角加速度d2θ(t)/dt2 を二回積分した値は回転軸に印加したトルクにより回転軸が実際に回転した角度Θに相当する。従って、測定中に回転軸が回転した角度Θ(ts,te)は、図1から、
Θ(ts,te)=Θ(te)−Θ(ts) (3)
となる。図1の場合、Θ(te)が零であるから、Θ(ts,te)=Θ(te)である。
【0022】
更に、I0 を無負荷時の測定系の慣性モーメント、Ix を試験片のみの慣性モーメントおよびIs を基準分銅のみの慣性モーメントとすると、第i測定モードで求まる測定系全体の慣性モーメントIi は、
i =I0 +Ix δi1+Is δi2 (i = 0, 1, 2) (4)
と表すことができる。ここでδijはi=jのとき1であり、i≠jのとき0であることを意味する。
【0023】
更に、上に定義した諸量を用い、式 (1)を二重積分すると、第i測定モードでの慣性モーメントIi は、
【数3】
と表せる。
【0024】
試験片の慣性モーメントIX は (4)式から、
x=I−I0 (6)
として求めることができる。
【0025】
今までの算出方法では、回転角度検出器およびトルク検出器は既に較正されているもので、各検出器の出力信号は対応する量の絶対値を示すとした。しかし、実際に測定系を作製する場合、両方の検出器の出力信号と実際の検出量の値を較正しておく必要がある。次にこの場合に付いて説明する。回転角検出器の検出信号ea(t) と実際の回転角θ(t) の間、およびトルク検出器の検出信号eb(t)と実際に印加されているトルクm(t) の間の比例係数をそれぞれca およびcbとすると、
θ(t) =ca・ea(t) (7)
m(t) =cb・eb(t) (8)
と表すことができる。比例係数ca,cb を用いると、式(2) によるトルクm(t)の二重時間積分値Mはトルク検出器の検出信号eb(t) の測定期間 [ts,te ]での二重積分値Eb(ts,te ) を用いて、
【数4】
と表すことができる。同時に、この測定期間中に回転体が実際に回転した全回転角Θ(ts,te) は、
Θ(ts,te) =ca[ea(te)−ea(ts)]≡caa(ts,te) (10)
となる。ここでは、図1に示すトルクの印加パターンの場合、ea(ts) =0で、dea(te)/dt=0であるので、 Θ(ts,te) =caa(te) ・≡caa(ts,te)となる。
【0026】
第0測定モードと第1測定モードに付いて、式(5) に式(9) と式(10)とをそれぞれ代入すると、比例係数ca,cb の比K(下記式)
【数5】
を用いて、
【数6】
となる。
【0027】
式(12), (13)を用い、式(4) から試験片の慣性モーメントIx

【数7】
として求めることができる。なお、ここではEa,b の測定期間を示すパラメータts,e の表示を見通しを良くするため省いている。以後の式でも同様な省略を行う。
【0028】
同様に、第0測定モードと第2測定モードから既知の慣性モーメントIS は、
【数8】
として求めることができる。従って、既知の慣性モーメントIS と両測定モードの回転角検出器の検出信号Ea0,Ea2とトルク検出器の二重時間積分した値Eb0,Eb2から比例係数の比Kを、
【数9】
として求めることができる。ここで、注意すべきことは較正分銅を用いると、比例係数ca とcb の値を実測しなくてもKの値を決定できる点にある。
【0029】
次に、図2に基づき前述の本願出願人が提案している本発明のベースとなる測定装置に関して詳述する。図2に主要部を示す慣性モーメント測定装置では、回転本体4に印加されるトルクを検出するため、トルク検出器3を介して回転本体4の一方の端部に試験片1を取り付けるチャック2が固定連結されている。回転本体4は軸受5を介して架台6に回転可能に固定されている。この架台6は図示していない適当な支持部材を介して床あるいはテーブル(何れも図示せず)に固定されている。回転本体4の他端にはプーリ8が連結し、更にその軸方向の先端にはこの回転本体の回転角位置を検出する回転角検出器11のローター部が連結されていて、回転角検出器11の本体部分は架台6の一部に固定されている。
【0030】
更に、回転本体4への回転運動を伝達するため、架台6の回転本体4の近くに電動モータ7が設けてあり、この電動モータ7のシャフトの先端にはプーリ9が固定されている。プーリ8とプーリ9の間には適当な減速比でトルクを伝達するベルト10が張架されている。
【0031】
回転本体4の中心軸とチャック2の中心軸は同芯に配置されているので、試験片1の中心軸C0 の回りにトルクを矢印のように加えることができる。従って、この装置では試験片1の中心軸C0 回りの慣性モーメントを測定することになる。更に、測定系の較正を行うため、無負荷、つまり試験片1をチャック2から取り外し、何も装着しない状態や、上記中心軸C0 回りに既知の慣性モーメントを有する基準分銅を装着する状態を実現できる。
【0032】
トルク検出器3は両端のフランジに軸方向C0 に指し渡されている弾性部材ビームの捩じれ量を検出してトルク量に換算する方式のもので、捩じれ量はビームに貼り付けた歪みゲージを用いて検出される。回転角検出器11はローター部に直列の2本の磁気抵抗素子を採用し、本体部分に永久磁石を内蔵しているもので、直列の磁気抵抗素子の両端に一定電位を印加して中間タップでの電圧変化からローター部の相対回転角を検出できるものである。
【0033】
この慣性モーメント測定装置の付属電気制御装置20は、図2に示すように、演算処理部22,モータ駆動部24および付属する出力表示部DSP,入力ユニットINHおよび出力印字部PRTで構成されている。入力ユニットINHは測定モード(i=0〜2)の指定、測定開始の指定、所要入力数値等を入力する機能キーや数字キーを有し、全ての入力指令をこのユニットで指定ないしは入力する。測定途中あるいは測定後の結果は逐次出力表示部DSPに表示でき、最終測定結果は出力印字部PRTのプリンターで打ち出せる。演算処理部22とトルク検出器3の歪みゲージのブリッジへの印加電位およびブリッジからのトルク検出信号の入出力は導線L1 を介して行われ、演算処理部22と回転角検出器11の磁気抵抗素子へのバイアス電流の印加および中間タップからの回転角検出信号の取り出しは導線L2 を介して行われる。モータの駆動電流はモータ駆動部24から導線L3 を経由して電動モータ7に導入され、図1の回転角加速度 d2θ/dt2を与える駆動指令信号Sc は、演算処理部22に内蔵されている記憶器から導線L4 を経由してモータ駆動部24に導入されるプログラム制御信号(インバータ回路に対する)の指令により決定される。
【0034】
演算処理部22とモータ駆動部24の詳しい回路構成を図3に示す。演算処理部22では、導線L1 を介して導入されたトルク検出器3の検出信号が濾波とインピーダンス変換用の初段増幅回路A1 に導入され、その出力信号はサンプル・ホールド回路SHを経由してアナログ・デジタル変換器A/D1 に入力する。このデンジタル検出信号は中央演算部26に導入される。同様に、導線L2 を経由して導入された回転角検出器11の検出信号は初段増幅回路Aに導入され、その出力信号はアナログ・デジタル変換器A/D1 によりデジタル検出信号にして中央演算部26に入力する。発振器OSCの発振パルスの周波数を分周器DIVで適当な周波数に分周して導線LS を介してサンプル・ホールド回路SHへ導入し、サンプリング期間は分周されたパルス期間で決まる。トルクに関する二重時間積分値Eb は一定時間間隔でサンプリングしたトルク検出値eb (t) の全てを一旦記憶器に保管し、保管した検出値を測定期間に対して二回積算して算出される。中央演算部26は計算途中の数値を一時保管する第一記憶器RAM,所定のプログラムや数値および既に説明した種々の数式を保管して必要に応じて取り出して処理できる第二記憶器ROM,マイクロプロセッサμPを主要部としてインターフェースIO1 〜IO4 を含めてバス結線されたものである。これ等の素子の全て、あるいは複数の特定な組を一体に集積した大規模ICとして使用することもできる。図3にはこのICを参照符号26として例示的に示してある。
【0035】
モータ駆動部24では、商用交流電力を整流して出力トランジスタTr1,Tr2のコレクタに加え制御回路CTLの出力を両方のトランジスタのベースに印加して所望の出力電流を導線L3 を介して電動モータ7に送る。その際、サーボモータとして中心的な役割を担う制御回路CTLは、図1に示すような、角速度 dθ/dt がほぼ半周期の正弦波状の回転出力を与えるように電動モータ7の励磁電流を制御するもので、その出力パターンは記憶器ROMに保管されているプログラム数値に入力ユニットINHで指定された適当な振幅値を乗算して導線L4 により制御回路CTLへ供給される。更に、この制御回路CTLへ導入される帰還監視信号としては、モータへの印加電流の検出信号SI および、必要であれば、回転位置信号SP や回転速度信号SV も導入される。
【0036】
測定すべき試験片の慣性モーメントIx を求めるには、これは既に説明したように、トルク検出器3の検出感度の比例係数ca と回転角度検出器11の検出感度の比例係数cb を何らかの方法で求め(例えば製造メーカーの個々の検出器の検出感度の公称値を用いることもできる),これ等の値とその比K(式(11))を予め記憶器ROMに保管しておく。更に、試験片の重量に応じて回転速度がトルク検出器3の最適測定値の範囲内にあるように回転駆動系による回転速度を設定する。これには、通常試行錯誤による数回予備試験が必要である。最適回転速度を決定したら、第0測定モードを実行して無負荷状態での計測を行い系自体の慣性モーメントI0 を求める。このI0 を記憶器ROMに保管して第1測定モードの測定を実行して、式 (14) から試験片の慣性モーメントIX を求める。
【0037】
更に、測定精度を上げたい場合には、既知の慣性モーメンIS の基準分銅を使用し、第2測定モードの測定値から式 (16) により比例係数の比Kを予め求めておき、これを再び記憶器ROMに保管し、この時のKを使用して、第1測定モードの測定を実行し、式 (14) から試験片の慣性モーメントIX を求める。
【0038】
各測定ステップで求まる信号波形の時間変化を図4に示す。αで示す波形はトルクに対応する実測検出信号eb で、本来のトルク信号に大きく頻繁に突発する雑音信号が重畳している。この実測検出信号eb を式(9) により二回時間積分した信号Eb は非常に滑らかで、時間積分のため平滑化が行われている。なお、信号Eb は説明の都合上時間反転させて示してある。加えて、この時に実行すべき回転角速度の指令信号をγとして示してある。この信号γにもかなりな雑音信号が重畳していることが分かる。何れにしても、二回時間積分による平滑化は、式(1) からトルクの値と回転角の二回微分値から直接トルク求める方式よりはるかに測定精度が高い。何故なら、数値微分処理はそれぞれ誤差を含む角度の値からその差分を求めると大きな誤差を与えるからである。既知の慣性モーメントIsを持つ基準分銅を較正試験を行い、測定精度は測定可能な最大慣性モーメントの0.3%以内を容易に保証できる。
【0039】
上記説明の実施態様は、種々の変形、改良等が考えられる。例えば、回転角センサとして磁気抵抗素子を使用しない、スライド抵抗式のポテンシオメータ、あるいは歯車の歯列を光電検出する市販の回転角センサも使用できる。その外、回転駆動用のモータをパルス駆動し、その制御パルスから直接回転角度を求めることもできる。この場合、回転角度検出器は不要で、回転角度信号として制御パルスを使用する。更に、トルク検出器としては両端のフランジ間に固定連結された弾性部材の軸方向に異なる位置で捩じれを直接光電検出する市販のデジタルトルク計を採用してもよい。
【0040】
その外、付属する電気制御装置20の演算処理部22で回転角度をサンプリングする方式を導入してもよい。その場合、初段増幅器A2 とアナログ・デジタル変換器A/D2 の間にサンプルホールド回路を挿入しても良い。このような方式は回転角の異常を逐一見出す安全回路の導入を容易にする。
【0041】
上記のような出願人の提案する測定方法および装置によれば、従来に比較して、使用上の操作や測定精度などに関して大幅な改善がなされるものの、かかる方法および装置においても前述のように、計測開始時読取誤差、計測終了時読取誤差ならびに検出器のドリフト誤差が生ずる問題がある。これらの問題とその解決方法に関し以下に詳述する。
【0042】
前記図4から明らかなように、トルク印加開始時とトルク計測開始時とを同時(t)とした場合であってもトルク計測値の振動により計測開始時読取誤差が生ずる。また、トルク印加終了時と計測終了時とを同時(t)とした場合であっても、計測終了時にトルク振動が止まらず計測終了時読取誤差が生ずる。これらの状態を模式的に図5に示す。
【0043】
図5は、図4におけるトルク瞬時値αの変化曲線を模式的に示すもので、トルク計測開始時(t)の前および計測終了時(t)の後のトルク計測値の振動も模式的に示す。図5において、δeは計測開始時読取誤差を示し、δeeは計測終了時読取誤差を示す。
【0044】
図6は、トルクm(t) の一回時間積分値(∫m(t)dt)に対する計測開始時読取誤差δeおよび計測終了時読取誤差δeeの影響に関する説明図であり、図6(a)は前記δeによる影響を示し、図6(b)は前記δeeによる影響を示す。図6の縦軸は前記一回時間積分値(∫m(t)dt)であり、横軸は時間(t)である。そして、図6(a)の前記一回時間積分値の直線はδe×tで示され、計測終了時(t)の前記一回時間積分値はδe(t−t)で示される。一方、図6(b)の前記一回時間積分値の直線はδee(t−t) で示される。
【0045】
図7は、トルクm(t) の二重時間積分値(∫∫m(t)dt)に対する計測開始時読取誤差および計測終了時読取誤差の影響に関する説明図であり、図7(a)は前記δeによる影響を示し、図7(b)は前記δeeによる影響を示す。そして、図7(a)の前記二重時間積分値の曲線は(δe/2)×tで示される。一方、図7(b)の前記二重時間積分値の曲線は(δe/2)×(t−t)で示される。
【0046】
上記のように、二重時間積分値(∫∫m(t)dt)が、計測開始時読取誤差および計測終了時読取誤差の影響に基づき誤差が生ずると、前記(2)〜(6)式の説明から明らかとおり、慣性モーメントの測定値に誤差が生ずる。このような誤差を抑制する本願発明の方法に関し、図8に基づいて以下に述べる。
【0047】
図8は、図5の読取誤差の模式的説明図と同様の図であって、計測開始時読取誤差および計測終了時読取誤差を抑制するために、トルク印加開始時前の予め定めた所定時間T(t−t)におけるトルク計測信号値を積分平均値化し、さらにトルク印加終了後の予め定めた所定時間Te(t−t)におけるトルク計測信号値を積分平均値化することを示す図である。所定時間Tにおけるトルク計測信号値の積分平均値化は、(∫δedt)/Tで示され、計測開始前の積分平均値化された値は略零となるので、前記トルクm(t)測定値の計測開始時読取誤差は略零となる。一方、所定時間Teにおけるトルク計測信号値を積分平均値化は、(∫δeedt)/Teで示され、同様に計測終了後の積分平均値化された値は略零となるので、計測終了時読取誤差は略零となる。
なお、前記TとTeが大きい程、誤差を低減できるが、測定時間が長くなる。そこで、許容誤差と測定時間とのかね合いを考慮して、前記tおよびtを予め設定する。
【0048】
上記のような計測開始前の積分平均値化および計測終了後の積分平均値化の処理により、後述する計測中の検出器のドリフト誤差がなければ、慣性モーメントの測定誤差は極めて少なくなる。次に、ドリフト誤差の問題とその解決方法に関し、図9及び図10に基づき、以下に述べる。
【0049】
図9は、ドリフト誤差によるトルク検出器のみかけ上の出力の説明図であって、(a) はドリフトを含むみかけ上のトルク出力m´(t) の時間変化に関する図、(b)はみかけ上のトルク出力m´(t) の一回時間積分値に関する図、(c)はみかけ上のトルク出力m´(t) の二重時間積分値に関する図である。また、図10は、ドリフト誤差を除去する説明図であって、(a)は前記図9(b)を二つの領域に分けて示した一回時間積分値に関する図、(b)は(a) 図の二つの領域の差に基づく一回時間積分値に関する図、(c)はドリフト誤差を除去した二重時間積分値に関する図である。
【0050】
図9(a)において、実線の出力差、即ち、(t−t)間の実線と、(t−t)間の実線との出力差は計測中のドリフトを示す。トルク計測開始時(t)と計測終了時(t)との間のドリフトは破線で示しているが、計測の途中は定常でない可能性があるので破線で示す。
【0051】
図9(b)はみかけ上のトルク出力m´(t) の一回時間積分値を例示的に示し、例えば、破線で示す部分が一回時間積分値(∫m´(t)dt)のドリフト誤差であり、計測終了時(t)以後の実線が右上がりの直線となるのは一回時間積分値に対するドリフトの影響によるものである。なお、(t)以後においては振動が存在するが、前記平均値化によって平滑化される。
【0052】
図9(c)はみかけ上のトルク出力m´(t) の二重時間積分値を示し、前記平均値化に関しては、図9(c)のトルク印加開始時前の予め定めた所定時間T(t−t)およびトルク印加終了後の予め定めた所定時間Te(t−t)に示している。図9(c)から明らかなように、ドリフト誤差が生ずると、前記(2)〜(6)式の説明から明らかとおり、慣性モーメントの測定値に大きな誤差が生ずる。
【0053】
図10はドリフト誤差を除去する説明図であって、図10(a)において、斜線を施した(B)の領域を、t〜tの一回時間積分値に関する全領域である(A)の領域から差し引いた領域を図10(b)において領域(C)として示す。即ち、図10(b)は(a) 図の二つの領域の差に基づく補正された一回時間積分値(∫m´´(t)dt)に関する図であって、トルク印加終了後の予め定めた所定時間におけるドリフト誤差に基づくトルク計測信号値傾斜曲線と時間軸との間の三角形領域を求め、前記測定値曲線と前記時間軸との間の測定領域から前記三角形領域を差し引く演算処理を行なうことにより補正した一回時間積分の測定値を示すものである。
【0054】
図10(c)はドリフト誤差を除去した二重時間積分値(∫∫m´´(t)dt2)に関する図であり、前記補正された一回時間積分値を再度積分することにより得られる。
【0055】
以上、計測開始時読取誤差、計測終了時読取誤差ならびにドリフト誤差が生ずる問題とその解決方法に関し説明したが、前記解決方法を実施するための演算処理は、図3に示す演算処理部22において行われる。
【0056】
上記本願発明によれば、計測開始時読取誤差、計測終了時読取誤差ならびに検出器のドリフト誤差を抑制することが可能となり、使用上の操作が簡単で、かつ測定精度が極めて高い慣性モーメントの測定方法およびその装置が提供できる。
【符号の説明】
【0057】
1:試験片、2:チャック、3:トルク検出器、4:回転本体、5:軸受、6:架台、7:電動モータ、8,9:プーリ、10:ベルト、11:回転角検出器、20:電気制御装置、22:演算処理部、24:モータ駆動部
図1
図2
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