(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ハイドロタルサイト類化合物は、通常、M
2+ 1-x M
3+ x (OH)
2A
n-x/n ・mH
2Oの組成式で表わされ、結晶構造が層状構造をしており、2価(M
2+ )および3価(M
3+ )の金属の複合水酸化物からなる基本層と、その基本層間にアニオン(A
n-)と水を有する中間層からなる。基本層は2価の金属イオンの一部の代わりに3価の金属イオンが配位することで正に帯電しており、基本層の層間にアニオンがインターカレートすることで、トータルの電荷が中和している。
ハイドロタルサイト類化合物は、基本層の表層および層間にアニオンを吸着することが可能であり、その能力によって合成樹脂、合成ゴム、セラミック、塗料、紙、トナー等に配合され、ハロゲン捕捉剤や受酸剤、吸収剤としての効能を有する優れた安定剤として広範な用途に使用されている。
【0003】
ポリ塩化ビニル樹脂などの塩素含有樹脂は、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性に優れ、難燃性と電気絶縁性を有し、熱を加えると軟化し冷却すると硬化することから加工性に優れ、また可塑剤の添加によって成形品自体の柔らかさの変更も可能であり、更に安価である等から用途は多岐にわたり、衣類、壁紙、バッグ、クッション材、断熱材、防音材、保護材、ロープ、電線被覆、網戸、包装材料、水道管、建築材料、農業用フィルム、消しゴムなど幅広く使用されている。
【0004】
しかし、塩素含有樹脂は熱や紫外線等を受けると、分子鎖中の塩化水素が脱離して分子鎖中の炭素の二重結合を生成しやすく、その二重結合や脱離した塩化水素が更に分子鎖から塩化水素の脱離を誘引し、分子鎖中の炭素の二重結合の連続体を生み出し、着色や脆性を大きくして商品価値を低下させる問題を抱えており、成形加工時の加熱や長時間の使用に対する対策が必要である。
その対策として、以前から様々な安定剤を添加して塩素含有樹脂の安定性を改善、向上させることが行われており、鉛系、有機スズ系、金属石鹸系などの各種安定剤が提案、使用されている。
しかしながら、鉛系や有機スズ系安定剤は、近年、鉛やスズ自体が人体や環境に有害であることから使用が避けられる方向にあり、環境への負荷が少ない金属石鹸系の亜鉛−カルシウム系や亜鉛−バリウム系安定剤への代替が進んでいる。
ところが、耐熱性の向上を目的に亜鉛系安定剤を多量に塩素含有化合物に配合すると、亜鉛焼けと呼ばれる樹脂が黒化する現象や、亜鉛系安定剤が外部滑剤としても働くため混練を阻害する等の問題がある。
そこで、亜鉛系安定剤に加えて、先に挙げたハイドロタルサイト類化合物等の安定助剤を添加して併用することで耐熱性を向上させる研究が進み、現在、軟質塩化ビニル樹脂を中心に使用されている。
【0005】
一方、ポリ塩化ビニル樹脂などの塩素含有樹脂の成形品は、用途によって屋外あるいは屋内で太陽光に曝されることがあり、紫外線等による着色や脆性低下といった耐候性劣化を起こす問題があり、それらを抑制する目的で、有機酸金属塩、無機金属塩、亜リン酸エステル類等の酸化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤等を配合している。
しかしながら、その酸化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤が塩素含有樹脂中で金属イオンと反応して着色し、本来の色調が出ずに商品価値を下げるだけでなく、紫外線吸収剤が当初の性能を発揮できず、設計した耐候性も得られなくなるなどの問題が生じている。
【0006】
この現象は、マグネシウムやアルミニウムを基本とし、僅かであるが他の金属元素も含有するハイドロタルサイト類化合物を安定助剤として塩素含有樹脂に使用した際にも発生し、βジケトン等の有機安定化助剤を添加するなどして着色等の問題を解決している(特許文献1,2)。
また、例えばメルカプトのエステル化合物を更に添加することで耐候性を損なうことなく、よりいっそう着色を防止する方法等が提案されている(特許文献3)。
【0007】
近年、環境保護や環境負荷低減の観点から塩素含有樹脂にも、その長寿命化やリサイクル、リユースが強く求められ、対策としてハイドロタルサイト類化合物などの安定助剤や紫外線吸剤などの各種安定剤の配合量増加による対応が提案・検討されている。
しかしながら、ハイドロタルサイト類化合物や紫外線吸収剤等の各種安定剤の配合量を単純に増やすことは、金属イオンと紫外線吸収剤等との反応機会が増えることになり、樹脂の着色や安定剤の能力低下による耐候性劣化が著しくなり好ましくない。
そこで、ハイドロタルサイト類化合物から脱離する各種金属イオンと紫外線吸収剤の反応を抑制するβジケトン等の配合量をハイドロタルサイト類化合物に応じて増やすことが提案されたが、βジケトンの配合量を増やすと混練や成形時にβジケトン自体が焼けたり、黒化の起点になって樹脂全体を黒色化し、商品化できないなどの新たな問題が生じる。
また、メルカプトのエステル化合物は、有機物であることからブリードと呼ばれる樹脂から浮き上がる現象が生じるため、電線の如き長期にわたって使用される用途においては、大量添加は不向きである。
更に、βジケトン等の安定化助剤やメルカプトのエステル化合物は、鉛系、金属石鹸系の安定剤はもとより、ハイドロタルサイト類化合物等の安定助剤より高価という問題がある。
【0008】
ハイドロタルサイト類化合物は、反応時の条件によって、その金属水酸化物からなる基本層中の金属イオンの置き換えが可能であり、例えば上述のハイドロタルサイト類化合物の2価の金属イオンであるマグネシウムを一部ないし全てを他の金属に置き換えることも可能である。
例えば、マグネシウムの全てを亜鉛に置き換えた組成式Zn
x Al
2(OH)
4+2zxCO
3 ・mH
2O(式中、3.5 ≦x≦4.5 、0≦m≦4)で表わされるハイドロタルサイト類化合物が提案され、該ハイドロタルサイト類化合物のハロゲン吸収・受酸能力が先述のハイドロタルサイト類化合物も含めた従来品より優れていることから、塩素含有樹脂の耐熱性が向上すると報告されている(特許文献4)。
【0009】
また、マグネシウムの一部を亜鉛に置き換えた組成 (Mg
y Zn
z )
1-xAl
x (OH)
2A
n-x/n ・mH
2O(式中、0.1 ≦x≦0.5 、y+z=1、0.5 ≦y≦1、0≦z≦0.5 、A はn価のアニオン、0≦m≦1)を有するハイドロタルサイト類化合物が、塩素含有樹脂の耐熱性を向上させることが報告されている(特許文献5,6)。
【0010】
しかし、それらはあくまでもそれらのハイドロタルサイト類化合物を塩素含有樹脂に配合した場合の耐熱性の向上にのみ着目しており、それらのハイドロタルサイト類化合物の原料となる亜鉛の使用について考慮されていない。
【0011】
上述のハイドロタルサイト類化合物のマグネシウムの一部ないし全てを置換する亜鉛は、通常、塩化物ないし硫酸化物、硝酸化物として反応時に添加され、高度な反応条件の設定の下で、ハイドロタルサイト類化合物の基本層である金属水酸化物層に組み込まれる。
亜鉛の塩化物、硫酸化物、硝酸化物は、酸化亜鉛や金属亜鉛を塩酸、硫酸、硝酸と反応して得られるが、酸化亜鉛や金属亜鉛はほとんどが、閃亜鉛鉱(ZnS )や菱亜鉛鉱(ZnCO
3 )等の亜鉛鉱を精製した後、焙焼して亜鉛焼鉱(ZnO )を得るか、亜鉛焼鉱を乾式法ないし湿式法(電解精錬)で精錬することにより得られている。
もっとも、硫酸亜鉛は電解精錬時に硫酸亜鉛の形態にするため、それを得ることを目的とする場合は、金属亜鉛まで精錬する必要はない。
ただ、閃亜鉛鉱はカドミウムを、また菱亜鉛鉱は鉛を含有するため、それらの有害物の除去や環境保護、作業者の防護等のための精製工程が高度になる上、酸化亜鉛や金属亜鉛と反応させる塩酸、硫酸、硝酸も必要になり、製造コストが高騰する。
更に、わが国おいて亜鉛自体が、水質汚濁法で排出水中の濃度(排水基準)を2ml/L以下(平成18年11月10日公布)に規定される等、亜鉛の使用や貯蔵について環境保全の点でも厳しくなり、それがコストやハンドリングの更なる負担となっている。
よって、亜鉛等の環境やコスト、ハンドリングに負荷をかける原料を使わずに、アニオンの吸収能力をより向上させることが求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、各種樹脂、特に塩素含有樹脂において、昨今の環境負荷低減を目的に、該樹脂の特性である優れた耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐溶剤性、難燃性、電気絶縁性、加工性、成形品の用途に応じた特性を維持しつつ、経済性を損なうことなく耐熱性を向上させ、長寿命化、リサイクル、リユースを可能にするハイドロタルサイト類化合物を提供することを目的とする。
具体的には、ハイドロタルサイト類化合物のエネルギー状態に着目し、特定の結晶構造を有することにより、従来のハイドロタルサイト類化合物よりアニオンの吸着性が優れた上に、粒子の大きさや均一性等の粒度特性を有することで、各種樹脂に配合して樹脂組成物とした場合に、その強度特性を損なわないハイドロタルサイト類組成物を提供することを目的とする。
更に、アニオンの吸着性が優れていることを利用して、例えば、紫外線や加熱などによってポリ塩化ビニル樹脂等の分子鎖から脱離する塩化水素ないし塩素イオンを吸収する安定剤として本発明のハイドロタルサイト類化合物を配合したポリ塩化ビニル樹脂組成物等の樹脂組成物及び成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、かかる実情に鑑み、上記目的を達成せんと鋭意検討の結果、特定のエネルギー状態の結晶構造と特定の粒度特性を有するハイドロタルサイト類化合物が、アニオンの吸着能力と樹脂中での分散性に優れており、樹脂に配合された場合に樹脂中のハロゲンを始めとするアニオンの吸収に優れていることを見出し、具体的には、該ハイドロタルサイト類化合物を、例えばハロゲンを含有する樹脂組成物に配合した場合に、優れたハロゲンの捕捉・吸着性により、樹脂組成物に優れた安定性を付与することを見出し、本発明を完成した。
【0015】
本発明は下記の発明を包含する。
(1)下記(a)の化学式で表わされ、フーリエ変換(FT-IR)で求められる水酸基の
伸縮振動波数が3430cm
-1以上であり、下記(b)〜(d)の粒度特性:
(a)Mg
1-xAl
x(OH)
2A
n-x/n・mH
2O
(b)
9.4≦Sw≦
19.6 (m
2/g)
(c)
1.11≦Dp
50≦
1.94 (μm)
(d)
7.778≦D
Max≦10.09 (μm)
ただし、(a)の式中、A
n-はn価のアニオンを示し、xは0.1≦x≦0.5、mは0≦m<1であり、
Sw:窒素吸着法で測定したBET 比表面積(m
2/g)、
Dp
50:レーザー回折散乱式粒度分布計で測定したハイドロタルサイト類化合物の50%平均粒子径(μm)、
D
Max:レーザー回折散乱式粒度分布計で測定したハイドロタルサイト類化合物の最大粒子径(μm)
を満足する、ハイドロタルサイト類化合物であって、
脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸、それらの金属塩、それらのエステルから選択される少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されていることを特徴とする、ハイドロタルサイト類化合物。
(2)フーリエ変換(FT-IR)で求められる水酸基の
伸縮振動波数が3451cm
-1以上であることを特徴とする請求項1記載のハイドロタルサイト類化合物。
(3)上記(1)又は(2)のハイドロタルサイト類化合物と樹脂を含有してなることを特徴とする樹脂組成物。
(4)樹脂が塩化ビニル樹脂であることを特徴とする上記(3)の樹脂組成物。
(5)上記(3)の樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。
(6)上記(4)の樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特定のエネルギー状態の結晶構造と特定の粒度特性を有することにより、従来のハイドロタルサイト類化合物よりアニオンの吸着性が優れたハイドロタルサイト類化合物と、それを含有してなる樹脂組成物及びその成形体を提供することができる。
本発明のハイドロタルサイト類化合物は、そのアニオンの吸着性が優れていることを利用して、例えば、紫外線や加熱等によってポリ塩化ビニル樹脂等の分子鎖から脱離する塩化水素ないし塩素イオンの捕捉・吸着剤や安定剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のハイドロタルサイト類化合物は、下記(a)の化学式で表わされ、フーリエ変換(FT-IR )で求められる水酸基の
伸縮振動波数が3430cm
-1以上であり、下記(b)〜(d)の粒度特性を満足することを特徴とする。
(a)Mg
1-x Al
x (OH)
2A
n-x/n ・mH
2O
(b)5≦Sw≦20 (m
2/g)
(c)0.5 ≦D
p50≦2 (μm )
(d)D
Max ≦10.09 (μm )
ただし、式中、A
n-はn価のアニオンを示し、xは0.1≦x≦0.5、mは0≦m<1である。
Sw:窒素吸着法で測定したBET 比表面積(m
2/g)、
D
p50:レーザー回折散乱式粒度分布計で測定したハイドロタルサイト類化合物の50%平均粒子径(μm )、
D
Max :レーザー回折散乱式粒度分布計で測定したハイドロタルサイト類化合物の最大粒子径(μm )。
【0018】
本発明のハイドロタルサイト類化合物は、上記(a)の化学式で表わされる。n価のアニオンは、2価のCO
32- ,SO
42- と1価のOH
- , F
- , Cl
- ,Br
- , NO
3- , I
- が挙げられる。2価CO
32- が、入手しやすく経済的にも有効であり、環境への負荷の点でも有利である上、これまでの検討でハイドロタルサイト類化合物としても安定で良好ある。本発明のハイドロタルサイト類化合物は、フーリエ変換(FT-IR )で求められる水酸基(O-H) の
伸縮振動波数(以下、単に水酸基の
伸縮振動波数と記す)が上記の範囲内にあることによって、アニオンの吸着量が多くなり、樹脂に配合された場合にハロゲンの捕捉・吸着・吸収能力が向上し、受酸剤・安定剤として効能を発揮する。
このメカニズムについて必ずしも明らかでないが、ハロゲンがハイドロタルサイト粒子の表面や層間の水酸基と水素結合等で結合したり吸着し、水酸基のエネルギー状態が結合や吸着のしやすさ、吸着速度、吸着量に大きく影響しており、上述の範囲のエネルギー状態にすることにより、それらが良好になるものと推測される。
なお、水酸基の
伸縮振動波数は、ハイドロタルサイトの基本層(金属水酸化物層)の水酸基だけでなく、層間に含有する層間水の水酸基の伸縮振動エネルギーも測定しているものと考えられる。また、層間水の水酸基の
伸縮振動波数は、ハイドロタルサイト基本層の水酸基のエネルギー状態に強く影響されていると思われるが、その影響については不明である。そして、層間水の水酸基の
伸縮振動波数がハロゲンの捕捉・吸着・吸収になんらかの影響を及ぼしていることも考えられるが、そのメカニズムも不明である。
上記の理由により、水酸基の
伸縮振動波数が通常よりも大きい状態のハイドロタルサイト類化合物を選択して樹脂に配合すれば、例えばポリ塩化ビニル樹脂中の分子鎖から脱離した塩素ないし塩素イオンや塩化水素と、ハイドロタルサイト類化合物粒子の表面および層間の水酸基との結合や吸着反応が良好に行われ、樹脂中の塩素ないし塩素イオンの捕捉量、吸着量、吸収量が向上し、樹脂の耐熱安定性が向上すると考えられる。
【0019】
水酸基の
伸縮振動波数は3430cm
-1以上であることが必要で、この値より小さいハイドロタルサイト類化合物は、アニオン吸着量が少なくなり、例えばポリ塩化ビニル樹脂に配合すると樹脂中の塩素ないし塩素イオンに対する捕捉量、吸着量、吸収量が不十分であり、これを向上するための手段が必要となる。従来技術に挙げたハイドロタルサイトがこれに該当する。
なお、水酸基の
伸縮振動波数が4000cm
-1を超えるハイドロタルサイト類化合物は、本発明の検討では得られていない。
本発明における水酸基の
伸縮振動波数は、日本分光(株)製FT-IR660Plusで測定した。
【0020】
上記(b)の窒素吸着法で測定したハイドロタルサイト類化合物のBET 比表面積Swは5〜20m
2/g であり、この範囲内にあることによって、該ハイドロタルサイト類化合物の製造時や使用時のハンドリングが良好になり、さらに例えば塩化ビニル樹脂に安定剤や受酸剤として配合した際に、樹脂中に良好に分散してハロゲンの吸着反応が起こりやすくなる。
【0021】
BET 比表面積Swが5m
2/g 未満のものは製造が困難であり、一方、20m
2/g を超えると、該ハイドロタルサイト化合物の製造時のコストやハンドリングが悪化して好ましくなく、また、塩素含有樹脂に配合した場合に、ヒケと呼ばれる空洞や窪み、微細な発泡を起こしやすくなり、それらが成形物の外観を損ねるだけでなく、強度物性や絶縁性が低下する原因となり好ましくない。
塩素含有樹脂に配合した場合にヒケや微細な発泡が生じる理由は不明であるが、ハイドロタルサイト類化合物粒子の表面積が大きくなり、樹脂の系内に曝される面積が増えることが影響しているのではないかと推測される。
本発明における窒素吸着式BET 比表面積Swは、ユアサアイオニクス(株)製NOVA2000で測定した。
【0022】
上記(c)のレーザー回折散乱式粒度分布計で求められるハイドロタルサイト類化合物の50%平均粒子径Dp
50は0.5 ≦Dp
50≦2(μm )であり、好ましくは0.5 ≦Dp
50≦1.5 (μm )であり、同じく、上記(d)のレーザー回折散乱式粒度分布計により測定した最大粒子径D
Max はD
Max ≦10.09 (μm )であり、好ましくはD
Max ≦8.482 (μm )であり、二次凝集が殆どないか、あるいは少ないものが好ましい。
【0023】
50%平均粒子径Dp
50が0.5 μm 未満のものは製造が困難であり、また、電子顕微鏡観測等により該50%平均粒子径Dp
50が0.5 μm 未満の粒子を得ることは出来るが、微細になりすぎるために粒子の表面エネルギーが大きくなり、凝集して安定化を図る傾向があるため、粒度測定でその様な値を示す粒子は現時点では得られていない。
一方、平均粒子径Dp
50が2μm を超えると、例えば塩素含有樹脂に配合した際に耐熱性が若干劣り、それらの樹脂を電線の被覆材用途に使用した場合に、絶縁性が低下する傾向があるため好ましくない。この理由は不明であるが、塩素含有樹脂に配合した際、粒子1個が大きいために樹脂中での個数の密度が下がってアニオンの吸着能力が低下するためと推測される。
【0024】
上記(d)の最大粒子径D
Max が10.09 μm を超えると、塩素含有樹脂に配合した際に耐熱性が若干劣り、初期着色と呼ばれる着色が悪化する傾向があるため好ましくない。
この理由も不明であるが、塩素含有樹脂に配合した際、大きな粒子が樹脂中に存在することが悪い影響を与えていると推測される。
【0025】
本発明のハイドロタルサイト類化合物は、下記の反応条件を考慮することにより製造することができる。
上記の如き、水酸基の
伸縮振動波数、平均粒子径D
p50、最大粒子径D
Max 、BET 比表面積Swは、これまでの検討でMg・Al・CO
3 ・OH等の各原料を溶解した溶液を混合してハイドロタルサイト類化合物を反応生成する時の溶液反応のpH、得られたハイドロタルサイト類化合物の反応溶液に水熱反応を行う際の温度、時間、撹拌が影響していることが判明している。
ただ、上記の条件は本発明のハイドロタルサイト類化合物の各物性に影響しており、その個々の影響の大きさや相関関係等は必ずしも明確でない。
傾向としては、先ず、溶液反応時のpHを高くすると水酸基の
伸縮振動波数が大きくなる。次に、水熱反応時の温度を高くすると平均粒子径D
p50、最大粒子径D
Max が大きくなり、BET 比表面積Swは小さくなる傾向がある。なお、最大粒子径D
Max は、温度を低くし過ぎると大きくなるが、これは微粒子の凝集によって発生すると考えられる。
水熱反応時の時間については、長くするほど平均粒子径D
p50、最大粒子径D
Max が大きくなり、BET 比表面積Swは小さくなる傾向がある。ただ、最大粒子径D
Max は、時間が短いと大きくなるが、これは微粒子の凝集によって生じたと考えられる。
水熱反応時の撹拌について、撹拌数を大きくすると平均粒子径D
p50は小さく、最大粒子径D
Max が小さくなる傾向がある。
BET 比表面積Swについては、撹拌数が大きくても小さくても大きくなるたため、反応装置や反応条件によって適宜撹拌数を選ぶ必要がある。
【0026】
本発明のハイドロタルサイト類化合物は、樹脂に配合され成形されて樹脂成形体とした際に、耐久性、強度等の諸物性を向上させる目的で、また粒子の安定性、分散性,樹脂との親和性や撥水性付与のために、脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸、それらの金属塩、それらのエステル等の表面処理剤で表面処理することが好ましい。
上記の表面処理剤は単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられるが、樹脂組成物の諸物性や、用途、環境への影響、ハンドリング性、コストの観点から、脂肪酸やその金属塩が好ましい。
【0027】
本発明に使用する脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸としては、例えば、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸等の飽和脂肪酸;ソルビン酸、エライジン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、セトレイン酸、エルカ酸、リシノール酸等の不飽和脂肪酸;シクロペンタン環やシクロヘキサン環を持つナフテン酸等の脂環族カルボン酸;安息香酸、フタル酸等に代表されるベンゼンカルボン酸類、ナフトエ酸やナフタル酸等のナフタレンのカルボン酸等の芳香族カルボン酸;アビエチン酸、ピマル酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸等の樹脂酸が挙げられ、中でもハイドロタルサイト類化合物との反応性や、粒子の安定性、分散性、入手しやすさ、コストの点でステアリン酸とパルミチン酸の混合酸が好ましい。
【0028】
脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸の各金属塩としては、例えば、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸コバルト(II)、ステアリン酸錫(IV)、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸鉛(II)等の飽和脂肪酸塩;オレイン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸コバルト(II)、オレイン酸ナトリウム等の不飽和脂肪酸塩;ナフテン酸鉛、シクロヘキシル酪酸鉛等の脂環族カルボン酸塩;安息香酸ナトリウムやサリチル酸ナトリウム等の芳香族カルボン酸塩が挙げられる。
【0029】
また、本発明のハイドロタルサイト類化合物の表面処理時または以前に、既述の脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸に、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、鉛、コバルト、錫を持つ化合物を混合・反応させて、これらの酸の金属塩を作成しても良い。
【0030】
以上の脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸の金属塩の中でもハイドロタルサイト類化合物との反応性や、粒子の安定性、分散性、入手しやすさ、コストの点でステアリン酸ないしパルミチン酸を主成分とする混合石鹸の使用が好ましい。
【0031】
脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸の各エステルとしては、例えば、カプロン酸エチル、カプロン酸ビニル、アジピン酸ジイソプロピル、カプリル酸エチル、カプリン酸アリル、カプリン酸エチル、カプリン酸ビニル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、イソオクタン酸セチル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸ラウリル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸イソセチル、ベヘニン酸メチル、ベヘニン酸ベヘニル等の飽和脂肪酸エステル;オレイン酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オリーブオレイン酸エチル、エルカ酸メチル等の不飽和脂肪酸エステル;その他、長鎖脂肪酸高級アルコールエステル、ネオペンチルポリオール( 長鎖・中鎖を含む) 脂肪酸系エステルおよび部分エステル化合物、ジペンタエリスリトール長鎖脂肪酸エステル、コンプレックス中鎖脂肪酸エステル、12- ステアロイルステアリン酸イソセチル・イソステアリル・ステアリル、牛脂脂肪酸オクチルエステル、多価アルコール脂肪酸エステル/アルキルグリセリルエーテルの脂肪酸エステル等の耐熱性特殊脂肪酸エステル、安息香酸エステル系に代表される芳香族エステルが挙げられる。中でもハイドロタルサイト類化合物との反応性や、粒子の安定性、分散性、コストの点で多価アルコール脂肪酸エステルの多価アルコールステアリン酸、多価アルコールパルミチン酸、多価アルコールステアリン酸ステアリルの使用が好ましい。
【0032】
表面処理剤の処理量は、本発明で得られるハイドロタルサイト類化合物が使用される樹脂の種類や用途によって適宜選択されるが、例えばポリオレフィン系樹脂の触媒の受酸剤やポリ塩化ビニル系樹脂の安定剤として使用される場合、通常、粒子100 重量%に対して0.01〜15重量%、好ましくは0.05〜8重量%である。
表面処理剤の処理量が0.01重量%未満の場合、表面処理剤の十分な効能が認められず、製造時のハンドリングの悪化とコストアップを招くだけで好ましくない。一方、処理量が15重量%を超えると、例えば樹脂に配合して成形体を作成した場合、樹脂の強度が著しく低下し、場合によっては成形体としての形状すら保てなくなるため好ましくない。
【0033】
本発明の第二は、本発明のハイドロタルサイト類化合物と樹脂を含有してなることを特徴とする樹脂組成物に関する。
本発明のハイドロタルサイト類化合物は、通常、樹脂100 重量部に対して0.001 〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部配合される。
【0034】
本発明のハイドロタルサイト類化合物が使用される樹脂は、通常、成形品として使用されるものであればよいが、一般には、熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
例えば、ポリエチレン、ポリプリピレン、エチレン−プロピレン重合体、ポリブテン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等の如きC2 〜C8 のオレフィン( αオレフィン) の重合体もしくは共重合体のようなポリオレフィン系樹脂や、これらオレフィンとジエンの共重合体類、エチレン−アクリレート共重合体、ポリスチレン、ABS 樹脂、AAS 樹脂、AS樹脂、MBS 樹脂、エチレン−塩化ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩化ビニル−プロピレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、フェノキシ樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、メタクリロ系の樹脂等が挙げられ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0035】
これらの熱可塑性樹脂のうち、本発明のハイドロタルサイト類化合物による熱劣化防止効果および機械強度保持特性の優れた例としては、ポリオレフィンまたはその共重合体、およびハロゲン含有樹脂であり、具体的には、ポリプロピレンホモポリマー、エチレン−プロピレン共重合体の如きポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、EEA(エチレンエチルアクリレート樹脂)、EVA(エチレンビニルアセテート樹脂)、EMA(エチレンアクリルメチル共重合樹脂)、EAA(エチレンアクリル酸共重合樹脂)、超高分子ポリエチレンの様なポリエチレン系樹脂、およびポリブデン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のC2 〜C8 のポリオレフィン(α−エチレン)の重合体もしくは共重合体等が挙げられる。
中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、ポリ(4−メチルペンテン−1)またはこれらの共重合体が特に好ましい。更にポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリアミド11、ポリヒドロキシ酪酸等の生分解性プラスチックやバイオマスプラスチックも使用可能である。
【0036】
これらのポリオレフィン樹脂は、チーグラー系の重合触媒に由来するハロゲンをその樹脂中に含有するが、本発明のハイドロタルサイト類化合物がそれらハロゲンの吸収・受酸に極めて優れていることから、そのハロゲンが原因となって生じる熱劣化の抑制効果が優れている。
また、ポリ塩化ビニル樹脂もしくはその共重合体に対しても本発明のハイドロタルサイト類化合物は、同様の理由で熱劣化の抑制効果が特に優れている。
【0037】
更に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂および尿素樹脂等の熱硬化性樹脂、および、EPDM、ブチルゴム、イソプレンゴム、SBR 、NBR 、クロロスルホン化ポリエチレン、NIR 、ウレタンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴムおよびフッ素ゴム等の合成ゴムにも適用することができる。
【0038】
本発明のハイドロタルサイト類化合物の樹脂やゴムへの配合方法に特別な制約はなく、例えば上述の樹脂やゴムに用いられる各種安定剤や充填剤等をこれらに配合する公知の方法と同様の手段で、他の配合剤と共に、もしくは別個に樹脂やゴムに可能な限り均一になるよう配合すればよい。
具体的には、リボンブレンダー、高速ミキサー、ニーダー、ペレタイザー、押し出し機等の公知の混合装置を利用して配合する方法や、ハイドロタルサイト類化合物を有効成分としてなる熱劣化防止剤の懸濁液を重合後のスラリーに攪拌しつつ添加して混合し乾燥する方法を挙げることができる。
【0039】
本発明のハイドロタルサイト類化合物を含有する樹脂組成物には、本発明の効能を損なわない限り、上記成分以外に他の添加剤を配合することが出来る。このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、発泡剤、可塑剤、充填剤、補強剤、難燃剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、上記以外の無機系あるいは有機系安定剤が挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何等限定されるものではない。
なお、本発明の実施例および比較例において、ハイドロタルサイト類化合物の水酸基の
伸縮振動波数は、日本分光(株)製FT-IR660Plusで行った。
ハイドロタルサイト類化合物の平均粒子径D
p50および最大粒子径D
Max は、マイクロトラック・ベル(株)社製マイクロトラックMT3300EX IIレーザー回折散乱式粒度分布計で測定した。
ハイドロタルサイト類化合物のBET比表面積Swは、ユアサアイオニクス(株)製NOV2000で測定した。
ハイドロタルサイト類化合物のSO
2 吸着量の測定は、ハイドロタルサイトを載せた秤を密閉した容器中に入れ、容器内に窒素を封入した後、二酸化硫黄を500torr の圧力で封入し、1時間経過後、系内を窒素に封入して二酸化硫黄を脱気し、ハイドロタルサイト類化合物の増加した重量を二酸化硫黄の吸着量、すなわちアニオン吸着量とした。
ハイドロタルサイト類化合物の組成分析はICP-MS法で、CO
3 はCHN 測定法で、OHとH
2O量は熱量分析法で測定・算出した。
【0041】
実施例1
3.5mol/Lの塩化マグネシウム溶液と1.0mol/L 硫酸アルミニウム溶液をマグネシウムとアルミニウムのモル比が2.1:1になるように混合し20℃に調整した。
次に、18.08mol/Lの水酸化ナトリウム溶液と0.51mol/Lの炭酸ソーダ溶液を水酸化物と炭酸基のモル比が6.4:1になるよう混合し20℃に調整した。
両混合溶液を撹拌下で、pHを11.8に維持しつつ混合して反応を行い、更に反応タンクの上部から反応液を溢流させる連続法で、ハイドロタルサイト類化合物の反応液を作成した。
更に、得られた反応液をオートクレーブに投入し、120rpmの回転数で攪拌下、70分で150℃まで昇温し18時間維持した後、室温まで放冷してハイドロタルサイト類化合物の懸濁液を得た。
得られたハイドロタルサイト類化合物懸濁液をプレスフィルターで脱水、水道水で洗浄を行い、洗浄廃水が水道水の電気伝導度より20μS/cm高くなった時点で洗浄を終了した。
更に、液温を80℃に調整し、該ハイドロタルサイト類化合物の懸濁液中のハイドロタルサイト類化合物に対して2.2重量%に当る、市販のステアリン酸ナトリウム65%−パルミチン酸ナトリウム35%の混合石鹸(工業用)からなる表面処理剤を80℃の水に溶かしたのちに添加し、60分間攪拌してハイドロタルサイト類化合物の表面処理を行った。
得られた表面処理ハイドロタルサイト類化合物の懸濁液を再びプレスフィルターで脱水してケーキ状とし、次いでギアオーブンで105℃・12時間乾燥後、コロフレックス解砕機で解砕して、表面処理ハイドロタルサイト類化合物の乾粉を得た。
得られた表面処理ハイドロタルサイト化合物は、水酸基の
伸縮振動波数が3432cm
-1、BET比表面積Swが12.6m
2/g、化学式がMg
0.673Al
0.327(OH)
2(CO
3)
0.15・0.53H
2O で、平均粒子径Dp
50が1.52μm、最大粒子径D
Maxが10.09μm 、SO
2吸着量が202mg/gの粒子であった。
得られた表面処理ハイドロタルサイト類化合物の反応条件と諸物性と化学式を表1に示す。
【0042】
実施例2〜16,比較例1〜4
溶液反応時のpH、水熱反応時の撹拌数、温度、時間を表1記載の内容に変更する以外は、実施例1と同様に操作し、表1に示す、水酸基の
伸縮振動波数、BET 比表面積、平均粒子径、最大粒子径、SO
2 吸着量を有する表面処理ハイドロタルサイト類化合物を得た。
【0043】
実施例17〜32,比較例5〜8
実施例1〜16、比較例1〜4で得られた表面処理ハイドロタルサイト類化合物を、下記の配合組成で混合した後、161 ℃に設定したロール混練機でシートを作成した。
配合組成
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100 重量部
DOP 50 重量部
ステアリン酸亜鉛 0.5 重量部
ジベンゾイルメタン(βジケトン) 0.1 重量部
ハイドロタルサイト類化合物 1.5 重量部
更に、得られたシートを160 ℃に設定したヒーター付圧力プレスを使用し、厚さ1mmのシートを作成し、下記の方法により物性を測定・評価した。結果を表2、表3に示した。
【0044】
<耐熱劣化性>
作成したシートを20mm×10mmに切り取り、190 ℃でダンパー開度50%にしたギアオーブン( タバイエスペック社製ギアオーブンGPHH−100)に置いて15分毎に取り出し、試験片が黒色化するまでの時間を求めた。
【0045】
<初期着色性>
作成したシートを20mm×20mmに切り取り、ヒーター付圧力プレスを使用して圧力をかけながら、190 ℃で30分間、シートを加熱した後に取り出し、シートの色相を測定した。
なお、装置は、日本電色工業(株)製測色色差計ZE 2000 を用い、透過光のYI値で評価した。
【0046】
<耐ヒケ、耐発泡性>
作成したシートを20mm×20mmに切り取り、ヒーター付圧力プレスを使用して圧力をかけながら、190 ℃で5分、15分および30分間、シートを加熱した後に取り出し、気泡や、ヒケと呼ばれる表面のくぼみやシート内の空隙を観察し、以下の5段階で評価した。
5:シートにヒケ・気泡なし
4:シートの端に微細(0.1 mm以下)な気泡がみられる
3:シートに2〜5個の1〜2mm程度のヒケと微細な気泡がみられる
2:シートに1〜2mm程度のヒケが6個以上みられる
1:シート全面に著しいヒケ、気泡がある
【0047】
<体積固有抵抗>
JIS K6723 に準拠して下記の手順で測定した。即ち、作成したシートから縦横120mm 以上のシートを打ち抜き、試験片の厚みを5個所測定してその平均値を厚みとし、試験装置と打ち抜いたシートを30℃に設定した恒温槽に30分以上置き、印加電圧500V、充電時間1分で体積固有抵抗を測定した。
なお、装置は、Agilent Technologies製4339B High Resistance Mater を使用した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】