特許第6663645号(P6663645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許6663645フィードポンプを運転するための方法および装置
<>
  • 特許6663645-フィードポンプを運転するための方法および装置 図000002
  • 特許6663645-フィードポンプを運転するための方法および装置 図000003
  • 特許6663645-フィードポンプを運転するための方法および装置 図000004
  • 特許6663645-フィードポンプを運転するための方法および装置 図000005
  • 特許6663645-フィードポンプを運転するための方法および装置 図000006
  • 特許6663645-フィードポンプを運転するための方法および装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663645
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】フィードポンプを運転するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 9/00 20060101AFI20200302BHJP
   F01N 3/36 20060101ALI20200302BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20200302BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   F01N9/00 ZZAB
   F01N3/36 B
   F01N3/08 A
   B01D53/94 223
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-68047(P2015-68047)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2015-197102(P2015-197102A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2018年3月12日
(31)【優先権主張番号】10 2014 206 265.9
(32)【優先日】2014年4月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・フェルゲス
(72)【発明者】
【氏名】イェンズ・ラインホルド
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン・デュルブッシュ
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/008493(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102011088703(DE,A1)
【文献】 特開2002−256850(JP,A)
【文献】 特開2013−249801(JP,A)
【文献】 特開2012−082819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 9/00
B01D 53/94
F01N 3/00〜 3/38
H01F 7/06〜 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁コイルと可動子とを有するフィードポンプを運転するための方法であって、前記フィードポンプが調量ユニット(80)の構成部分であり、前記調量ユニット(80)によって、内燃機関(1)の排気ガス後処理システム内において、窒素酸化物を還元させるための液体が、排気ガスの流れ方向で見て前記排気ガス後処理システムの触媒構造群の前で、排気ガス流(20)に噴射ユニット(70)を介して調量噴射される方法において、
前記フィードポンプが制御運転され、この際に、制御後の定められた制限時間内で可動子の運動が行われ、このときに発生したコイル電流(201)が所定の電流限界値内にあるかどうかを点検するものであり、
前記可動子の引き寄せ段階において、前記電磁コイルのパルス幅変調制御のアダプションを介して、発生した電流増加の勾配に影響を及ぼすことによって、前記可動子の運動開始および前記可動子停止の時点が設定され、
前記液体は、内燃機関(1)の燃料噴射のための高圧ポンプの戻し管路から前記調量ユニット(80)に供給されることを特徴とする、フィードポンプを運転するための方法。
【請求項2】
フィードポンプの電磁コイルを通って流れる前記コイル電流(201)を、前記フィードポンプの制御ユニット(101)を介して読み込み、ソフトウエアアルゴリズムによって、可動子の運動開始のための時点および/または可動子停止の時点、並びにそれに対応する可動子の運動開始のための電流値および/または可動子停止のための電流値を決定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィードポンプを、前記可動子の運動開始、およびその際に発生した前記コイル電流(201)および/または前記可動子停止の時点、およびその際に発生した前記コイル電流(201)が、最小時点および最大時点、並びに上限および下限の電流限界値(211,212)によって予め設定された、許容された電流特性変化範囲(215)内にあるように、運転することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
制御のために、前記可動子停止のための目標時点および/または前記可動子運動の開始のための目標時点、並びにそれに対応する、可動子停止の際の目標電流および/または前記可動子運動の開始時の目標電流を予め設定し、相応の実際値と比較することを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記許容された電流特性変化範囲(215)を外れた場合、フィードポンプ内の故障を推測し、上位のエンジン制御装置(100)内で相応の故障の登録を行うことを特徴とする、請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の方法の使用法において、前記方法を調量システム(60)に使用し、前記調量システム(60)によって、ディーゼルエンジンとして構成された内燃機関(1)の高負荷運転中に、窒素酸化物を還元させるために、排気ガスの流れ方向で見て窒素酸化物吸蔵型触媒(40)の前で、ディーゼル燃料としての炭化水素が排気ガス通路(30)内に調量噴射され、前記調量システム(60)が、構造群として、調量弁(71)と冷却体とを含む噴射ユニット(70)と、往復ピストンポンプ(86)として構成されたフィードポンプを含む調量ユニット(80)と、圧力センサ(87)と制御ユニット(101)とを有している、使用法。
【請求項7】
電磁コイルと可動子とを有する、往復ピストンポンプ(86)として構成された、調量ユニット(80)の構成部分であるフィードポンプを運転するための装置である制御ユニット(101)であって、前記調量ユニット(80)によって、内燃機関(1)の排気ガス後処理システム内において、窒素酸化物を還元させるための液体が排気ガスの流れ方向で見て前記排気ガス後処理システムの触媒構成要素の前で、噴射ユニット(70)を介して排気ガス流(20)に調量噴射される形式のものにおいて、
前記制御ユニット(101)が、請求項1からのいずれか1項に記載の方法を実施するための装置である、前記可動子の運動を点検するための分析ソフトウエア、並びに制御装置(311)およびPWM調節部材(312)を有していることを特徴とする、フィードポンプを運転するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁コイルと可動子とを有するフィードポンプを運転するための方法であって、前記フィードポンプが調量ユニットの構成部分であり、前記調量ユニットによって、内燃機関の排気ガス後処理システム内において、窒素酸化物を還元させるための液体が排気ガスの流れ方向で見て前記排気ガス後処理システムの触媒構造群の前で、噴射ユニットを介して排気ガス流に調量噴射される方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、本発明による方法を実施するための装置、特に制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0003】
今日の排ガス規制法を満たすために、小型ディーゼル分野では主に窒素酸化物吸蔵型触媒(NSC)が使用される。窒素酸化物吸蔵型触媒によって、排ガス管路内で窒素酸化物(NO,NO)を還元させることができる。このために、窒素酸化物は、まず触媒内に貯蔵される。触媒の貯蔵容量が一杯になると、エンジン制御装置によって過濃な排気ガス混合気が調節される。この際に、触媒内に中間貯蔵された窒素酸化物は窒素に還元される。
【0004】
この方法は、低いまたは平均的な負荷範囲、例えば温度範囲において良好に機能する。将来的な排ガス規制法を順守するために、さらに、高負荷範囲の限界値を監視する必要がある。
【0005】
窒素酸化物吸蔵型触媒(NSC)が高負荷運転時および高温時においても窒素酸化物を還元させるために、窒素酸化物吸蔵型触媒はいわゆるDiAirモードで運転されなければならない。DiAirは、“Diesel NOx Aftertreatment by Adsorbed Intermediate Reductants”(吸蔵された還元性中間体によるディーゼルNOx後処理)を表わしている。この場合、炭化水素(Hydro Carbons)が、窒素酸化物吸蔵型触媒の前で調量噴射され、これは、HCI(Hydro Carbons Injection「炭化水素噴射」)と呼ばれている。このために、通常は追加のディーゼル燃料が排気ガス管路内に調量噴射される。
【0006】
このために、特殊なDiAir調量システムが必要であり、これは以下の構造群、
主に調量弁と冷却体とからなる噴射ユニットと、
主に圧縮行程(例えばフィードポンプ)と圧力センサとから成る調量ユニットと、
例えばハードウエアおよび/またはソフトウエアとしてエンジン制御装置内で実行する制御ユニットと、
から成っている。
【0007】
排気ガスに関る構成要素若しくは部分システムとして、DiAir構成要素は、排ガス規制法によって極めて厳しい要求が課せられる。オンボード診断(OBD)の範囲内で、すべての部分構成要素は、その正しい機能および誤機能が監視される。
【0008】
DiAir調量システムにおいては、調量ユニットの圧縮行程中のフィードポンプの監視が極めて重要である。フィードポンプは一般的に往復ピストンポンプとして構成されており、この場合、電磁コイルの制御によって可動子が移動せしめられ、この可動子がダイヤフラムを介して液体を送り、噴射のために必要な圧力を形成する。この場合、特に可動子の運動を監視することが重要である。
【0009】
特許文献1には、電磁弁可動子の機械的運動をコントロールするための方法および装置について記載されており、電磁弁可動子の操作のために電磁コイルが設けられており、この場合、電磁コイルによって運動電流が遮断された後で、電磁弁可動子の運動により生ぜしめられた、電磁コイルにおける、機械的な遮断時点(BOP,EIP)が割り当てられたインダクタンス電圧が監視され、それによって生ぜしめられた信号がそれぞれ、外部のエネルギ源によって、検出可能な信号レベルに増大される。さらに、電磁コイルのインダクタンス電圧が測定コイルにより監視される、ことが記載されている。
【0010】
特許文献2には、特に液体を、燃料に調量噴射するかまたは燃焼時に発生する排気ガスに調量噴射するための液体調量噴射システムについて記載されており、この液体調量噴射システムは、調量噴射しようとする液体を調量液タンクから調量液と混合させようとする媒体に供給するための、電気的に運転可能な調量ポンプ装置と、調量ポンプ装置の運転中に発生する、この調量ポンプ装置の特徴を表わす運転値を検出するための検出装置と、前記運転値を少なくとも1つの基準値と比較し、かつこの比較結果に基づいて調量ポンプ装置の運転状態を決定するための比較/決定装置とを有している。この場合、特に、ポンプを通るコイル電流が評価され、様々な運転状態間の差に関連して、少なくとも1つの基準値と比較される。
【0011】
特許文献3によれば、本質安全直流回路で電磁石を操作するための方法および装置が公知である。この場合、コイル巻線内の実際電流が電磁石の制御後に連続的に測定され、可動子の運動を検知するために評価される。この場合、電磁石のコイル巻線内の実際電流の連続的な電流測定は、弁内の電気的、電子的、機械的または電磁的な機能障害を検出するためにも使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第3730523号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国実用新案登録第0102002号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許公開第10212092号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、以上すべての文献のどれにも、フィードポンプの所定の運転を耐用年数に亘って保証する制御運転について開示されてはいない。そこで本発明の課題は、相応の方法を提供することである。
【0014】
さらに本発明の課題は、この方法を実施するための相応の装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
方法に関する前記課題は、請求項1から7の特徴によって解決される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィードポンプが制御運転され、この際に、制御後の定められた制限時間内で可動子の運動が行われ、このときに発生したコイル電流が所定の電流限界値内にあるかどうかの点検が行われる。これによって、フィードポンプは耐用年数に亘って所定の運転範囲内で駆動されるので、フィードポンプの確実な機能が保証される。フィードポンプは、許容された必要な電流範囲内の電流だけによって運転される。従って、フィードポンプ自体も、また制御のために必要な構成要素、例えばパワースイッチ、出力段等も、過負荷に対して保護され、ひいては早期の故障に対して保護される。
【0017】
好適な形式で、フィードポンプの電磁コイルを通って流れるコイル電流が、フィードポンプの制御ユニットを介して読み込まれ、ソフトウエアアルゴリズムによって、可動子の運動開始のための時点(tBMP)および/または可動子停止の時点(tMSP)、並びにそれに対応する可動子の運動開始のための電流値(IBMP)および/または可動子停止のための電流値が(IMSP)決定される。これは、電流変化の時間微分の評価によって行われ、例えば内部整理番号R.348498およびR.346347を有する、まだ公開されていない本出願人による特許出願明細書に記載されている。
【0018】
特に好適な方法変化例によれば、引き寄せ段階中に、前記電磁コイルのパルス幅変調制御のアダプションを介して、発生した電流増加の勾配、およびひいては間接的に前記可動子の運動開始および前記可動子停止の時点に影響が及ぼされる。この場合、変動デューティ比によって、固定された電圧実効値が設定される。同時に高い電圧実効値を生ぜしめる大きいPWMデューティ比は、急勾配の電流増加を意味する。相応に低い電圧実効値を生ぜしめる小さいPWMデューティ比は、なだらかな電流増加を意味する。これによって、可動子の運動開始時点も、また可動子停止の時点も、所定の電流特性範囲が維持され、特に許容できない程度の電流値は発生しないことが保証される。
【0019】
この場合、方法の変化実施例によれば、フィードポンプは、可動子の運動開始(BMP)、およびその際に発生したコイル電流および/または可動子停止の時点(MSP)、およびその際に発生したコイル電流が、最小時点および最大時点、並びに上限および下限の電流限界値によって予め設定された、許容された電流特性変化範囲内にあるように、運転される。
【0020】
同様に好適な変化実施例によれば、制御のために、可動子停止のための目標時点および/または可動子運動の開始のための目標時点、並びにそれに対応する、可動子停止の際の目標電流および/または可動子運動の開始時の目標電流が予め設定され、相応の実際値と比較される。この場合、可動子運動の調節特性が分析され、この際に、妨害の影響、例えばバッテリ電圧の変動、可能な可動子摩擦、ダイヤフラム粘性および温度の影響等が、調節特性に影響を及ぼし、このような形式で補正される。
【0021】
オンボード診断(OBD)に関連した法的な規制を満たすことを考慮して、許容された電流特性変化範囲を外れた場合、フィードポンプ内の故障を推測し、上位のエンジン制御装置内で相応の故障の登録を行うようにすれば、好適である。
【0022】
変化実施例を有する前記方法の好適な使用法によれば、前記方法を調量システムに使用し、この調量システムによって、ディーゼルエンジンとして構成された内燃機関の高負荷運転中に、窒素酸化物を還元させるために、排気ガスの流れ方向で見て窒素酸化物吸蔵型触媒の前で、ディーゼル燃料としての炭化水素が排気ガス通路内に調量噴射され、調量システムが、構造群として、概ね調量弁と冷却体とから成る噴射ユニットと、概ね往復ピストンポンプとして構成されたフィードポンプより成る調量ユニットと、圧力センサと制御ユニットとを有している。この調量システムは、DiAirシステムとしても公知であり、特に窒素酸化物還元のために小型ディーゼル内燃機関、例えばPKW(乗用車)に使用される。DiAirモードにおいては、冒頭に述べたように、特に内燃機関の高負荷運転中に追加的にディーゼル燃料が噴射される。さらに、この燃料噴射は、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)の再生中に、排気ガスの温度を上昇させるためにも使用される。
【0023】
基本的に、この方法は、窒素酸化物を還元させるために、アンモニア分解液例えば尿素水溶液が、SCR触媒の前で排気ガス通路内に調量噴射される排気ガス後処理システムにおいても好適な形式で使用される。このようなシステムにおいても、フィードポンプの確実な機能形式が得られる。また、オンボード診断(OBD)に関連した相応の法的規制も、前記方法によって順守することができる。
【0024】
装置に関する前記課題は、制御ユニットが、前記方法を実施するための装置、特に可動子の運動を点検するための分析ソフトウエア、並びに制御装置およびPWM調節部材を有していることによって、解決される。この場合、少なくとも部分的にソフトウエアに基づいて実施され、制御ユニットは、別個のユニットとして、または上位のエンジン制御装置の一体的な構成部分として構成されていてよい。制御装置およびPWM調節部材によって、発生した電流増加の勾配を介して、可動子運動の開始の時点および可動子停止の時点並びに発生した電流値が影響を受け、それによって電流値が許容された電流特性範囲内に残るように、パルス幅変調制御のアダプションが行われる。
【0025】
以下に本発明を、図面に示した実施例を用いて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の技術的環境の例を示す概略図である。
図2】調量システムの概略図である。
図3】調量システムの往復ピストンのための時間的な電流特性変化を概略的に示す第1の変化特性グラフである。
図4】往復ピストンのための異なる電流変化を示す第2の変化特性グラフである。
図5】可能な電流特性変化範囲内での往復ピストンのための電流変化を示す第3の変化特性グラフである。
図6】本発明による評価法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、技術的環境の例が示されており、この技術的環境内で本発明による方法を用いることができる。この場合、図面は、本発明を説明するために必要な構成要素に限定されている。
【0028】
図1は、ディーゼルエンジンとして構成された内燃機関1の1例が示されており、この内燃機関1は、エンジンブロック10と排気ガス通路30とから成っていて、この排気ガス通路30内で排気ガス流20がガイドされている。排気ガス通路30は、排気ガス浄化装置を有しており、この排気ガス浄化装置は、図示の実施例では、触媒コーティングされた構成要素として排気ガスの流れ方向に配置されていて、まず窒素酸化物吸蔵型触媒40(NSC)、それからディーゼル微粒子フィルタ50(DPF)とを有している。窒素酸化物吸蔵型触媒40(NSC)の前で排気ガス通路30に噴射ユニット70が設けられており、この噴射ユニット70によって、高負荷運転中の高温において窒素酸化物を還元させるために、炭化水素(HC)が例えば燃料の形で、DiAir段階中に噴射される。さらに、この燃料噴射を、ディーゼル微粒子フィルタ50(DPF)の再生中に排気ガスの温度を高めるために使用してもよい。
【0029】
噴射ユニット70は、調量ユニット80と共に1つの調量システム60に属しており、この調量システム60は制御ユニット101によって制御される。この制御ユニット101の機能性は、ディーゼルエンジンにおいて一般的であるように、ソフトウエアおよび/またはハードウエアに基づいて、上位のエンジン制御装置100、ECU(Electronic Control Unit)で実行される。
【0030】
PSU−HCI(Power Supply Unit for Hydro Carbon Injection「炭化水素噴射のための電源ユニット」)とも称呼される調量ユニット80に、内燃機関1の燃料噴射のための、図示されていない高圧ポンプの戻し管路からインレット81を介してディーゼル燃料が供給される。アウトレット83を介して、余剰の燃料がタンク90(図2参照)へ戻し案内される。噴射ユニット70は、この噴射ユニット70内に取り付けられた構成要素を排気ガス通路30内の高温に対して保護するために、水冷装置72を有している。
【0031】
図2は、調量システム60のさらなる詳細を概略的に示す。調量ユニット80内で、ディーゼル燃料の圧力が、インレット81からフィード経路82を介して往復ピストンポンプ86として構成されたフィードポンプによって噴射圧、典型的には10barに高められる。調量システム60に量的な要求がされると、噴射ユニット70の構成部分である調量弁71が開放される。調量システム60の監視および制御並びに液圧的な診断は、圧力センサ87を介して行われる。ディーゼル燃料の流れ方向で、往復ピストンポンプ86の前後に、それぞれ弁85が設けられており、これらの弁は、逆流若しくは後退を阻止する。リターン装置88によって、リターン経路84内で、例えば漏れによる余剰の燃料が、アウトレット83を介してタンク90内に送られる。
【0032】
往復ピストンポンプ86、圧力センサ87および調量弁71は、制御ユニット101によって制御されるか、若しくはこれらの構成要素から、例えば往復ピストンポンプ86の電磁コイルを通って流れる電流および温度に関するフィードバックを得る。
【0033】
ピーク段階207中に往復ピストンポンプ86内で可動子が確実に引き寄せられるようにし、それによってこの段階中に高いコイル電流201が強い磁力を生ぜしめるようにし、また、ホールド段階208中にエネルギ供給若しくは出力損失を還元させるために、往復ピストンポンプ86は、制御ユニット101によって、いわゆる“Peak & Hold(ピークホールド)”電流特性変化を介して制御される。このような形式の電流特性変化203は、図3の第1の変化特性グラフに概略的に示されている。電磁コイルによるコイル電流201は、時間202に関連して示されている。一般的な形式で、制御はパルス幅変調(PWM)を介して行われる。
【0034】
図4は、やはり時間202に関連したコイル電流201が示されている第2の変化特性グラフ200で、ピーク段階207およびホールド段階208中における往復ピストンポンプ86の吊り上げ磁石のための規則的な電流変化204を示し、この場合、ストローク毎に所定量の燃料が調量ユニット80のフィード経路82内に送られる。この電流変化から、開始時点209(BMP)および可動子停止210(MSP)の時点を決定することができる。開始時点209(BMP)および可動子停止210(MSP)を決定するための相応のアルゴリズムが、内部整理番号R.348498およびR.346347を有する、特に本特許出願人によるまだ公開されていない特許出願明細書に記載されている。
【0035】
実際には、ハードウエアの制約に基づいて、設定された運転範囲を有する構成要素同士の協働作業は制限されている。従って、ポンプの確実な運転のための、つまり可動子を引き寄せるために必要なコイル電流201は、すべての運転範囲内では提供されないか、または制御のために使用された出力段を保護のために早期に遮断する。
【0036】
図4には、さらに例として、PWM1−電流変化205が示されており、このPWM1−電流変化205においては、開始時点209(BMP)または可動子停止210(MSP)は省かれている。何故ならば、磁力は、可動子ストロークのために十分に高くないからである。これは、例えば熱いコイルにおいてそうである。熱いコイルは、高い電気抵抗に基づいて、下限の電流限界値212Iminを下回る小さい電流しか許容せず、従って小さい引き寄せ力しか発生しない。
【0037】
図4にさらに図示されたPWM2−電流変化206は、例えば出力段限界若しくは遮断若しくは飽和に達し、開始時点209(BMP)および、可動子停止210(MSP)の時点が、上限の電流限界値211Imaxの上の電流変化にある状態を示す。これは、例えば電磁コイルが常温であり、従って小さい電気抵抗を有している場合である。その結果、比較的高い電流が発生し、それによって出力段限界に達する。図4に示されているように、開始時点209(BMP)の位置および可動子停止210(MSP)の時点は、電流−時間グラフ内にずれる。
【0038】
ポンプの所定の運転を耐用年数に亘って保証するために、本発明による方法は、フィードポンプの、DiAirシステムで制御された運転を前提とする。この機能によって、可動子運動が定められた時間内で実施され、かつ発生したコイル電流201が、確実な運転のために必要な許容された電流−時間範囲内にあることが保証される。
【0039】
図5は、第3の変化特性グラフ200で、許容された電流特性変化範囲215を示し、この電流特性変化範囲215は、上限の電流限界値211Imaxと下限の電流限界値212Iminとの間のコイル電流201に関連して、かつ最大時点214tmaxと最小時点213tminとの間の許容された時間ウインドに関連して規定されている。開始時点209(BMP)およびこれに対応する電流値の位置を有する電流特性変化203、並びに可動子停止210(MSP)およびこれに対応する電流値のための時点は、制御頻度の増大(PWM+)または制御頻度の減少(PWM−)時に、この許容された電流特性変化範囲215内で移動することができる。この範囲から外れると、故障が発生する原因となる。
【0040】
図6のブロック図300に概略的に示されているように、吊り上げ磁石のコイル電流201が測定装置315を介して読み込まれ、ソフトウエアに提供される。これは例えば、制御ユニット101内に設けられた測定分流器によって行われる。実際時点MSP305tMSPおよび/または実際時点BMP307tBMP並びにこれに対応する実際電流MSP306IMSPおよび/または実際電流BMP308IBMPは、ソフトウエアアルゴリズムを介してコイル電流201により決定され、この場合、評価法は、内部整理番号R.348498およびR.346347を有する本特許出願人の前記明細書に記載された評価法を用いることができる。
【0041】
閉ループ制御回路によって、所望の目標時点MSP301tMSPおよび/または目標時点BMP303tBMP並びにこれに対応する目標電流MSP302IMSPおよび/または目標電流BMP304IBMPが、特性マップユニット309によって設けられ、この場合、実際値の時間および電流値は、減算器310内で相応の目標値から差し引かれ、差分が制御装置311に供給される。
【0042】
PWM調節部材312内で実行される、引き寄せ段階中のパルス幅変調制御のアダプションを介して、発生した電流増加の勾配に影響を及ぼし、それによって間接的に、可動子の開始時点209(BMP)および可動子停止210(MSP)のための時点が予め設定される。この場合、変動デューティ比によって、例えば12Vの固定された電圧実効値が設定される。同時に高い電圧実効値を生ぜしめる大きいPWMデューティ比は、急勾配の電流増加を意味する。相応に低い電圧実効値を生ぜしめる小さいPWMデューティ比は、なだらかな電流増加を意味する。
【0043】
演算ユニット313で、可動子運動の調節特性が分析され、この際に、妨害の影響314、例えばバッテリ電圧の変動、可能な可動子摩擦、ダイヤフラム粘性および温度の影響等によって、調節特性は影響を受ける。これらの妨害の影響314は、制御によって補正され得る。
【符号の説明】
【0044】
1 内燃機関
10 エンジンブロック
20 排気ガス流
30 排気ガス通路
40 窒素酸化物吸蔵型触媒
50 ディーゼル微粒子フィルタ
60 調量システム
70 噴射ユニット
71 調量弁
72 水冷装置
80 調量ユニット
81 インレット
82 フィード経路
83 アウトレット
84 リターン経路
85 弁
86 往復ピストンポンプ
87 圧力センサ
88 リターン装置
90 タンク
100 エンジン制御装置
101 制御ユニット
200 変化特性グラフ
201 コイル電流
202 時間
203 電流特性変化
204 電流変化
205 PMW1−電流変化
206 PWM2−電流変化
207 ピーク段階
208 ホールド段階
209 開始時点(BMP)
210 可動子停止(MSP)
211 上限の電流限界値
212 下限の電流限界値
213 最小時点
214 最大時点
215 電流特性変化範囲
300 ブロック図
301 目標時点MSP
302 目標電流MSP
303 目標時点BMP
304 目標電流BMP
305 実際時点MSP
306 実際電流MSP
307 実際時点BMP
308 実際電流BMP
309 特性マップユニット
311 制御装置
312 PWM調節部材
313 演算ユニット
314 妨害の影響
315 測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6