特許第6663658号(P6663658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6663658ガス吸着材、および、これを用いた真空断熱材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663658
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】ガス吸着材、および、これを用いた真空断熱材
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/18 20060101AFI20200302BHJP
   F16L 59/065 20060101ALI20200302BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20200302BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20200302BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20200302BHJP
   C01B 39/38 20060101ALN20200302BHJP
【FI】
   B01J20/18 D
   F16L59/065
   B01J20/28 Z
   B01J20/30
   B01D53/04 110
   !C01B39/38
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-138163(P2015-138163)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2016-101574(P2016-101574A)
(43)【公開日】2016年6月2日
【審査請求日】2018年7月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-230823(P2014-230823)
(32)【優先日】2014年11月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 長久
(72)【発明者】
【氏名】神谷 亮介
(72)【発明者】
【氏名】永山 健一
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3693626(JP,B2)
【文献】 特開平08−019740(JP,A)
【文献】 特開2008−037721(JP,A)
【文献】 特開2008−064135(JP,A)
【文献】 特開2014−113524(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/174837(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/111311(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
B01D 53/02−53/12
B01D 53/34−53/96
F16L 59/00−59/22
C01B 39/00−39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットガスに対する吸着能を有するガス吸着材であって、
ゼオライト骨格中のシリカ対アルミナ比が10以上50以下の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトであるガス吸着組成物と、酸化カルシウムからなり、BET比表面積が10m/g以下であり、2次粒子径が100μm以下である吸水材との焼結体であり、
前記焼結体は、ガス吸着組成物と前記吸水材との真空焼結圧縮成型物であり、前記圧縮成型物の固体密度が、1.2g/cm以上2.0g/cm以下であることを特徴とし
前記銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの焼結前後での脱アルミニウム率が15%以上であることを特徴とするガス吸着材。
【請求項2】
前記銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅イオン含有量は、3wt%以上6.4wt%以下の重量であることを特徴とする請求項1に記載のガス吸着材。
【請求項3】
前記ガス吸着組成物を前記吸水材で被覆させ、前記ガス吸着組成物のターゲットガス吸着面のガスに対する曝露領域に前記吸水材を配置させたことを特徴とする請求項1乃至2のいずれか一項に記載のガス吸着材。
【請求項4】
前記ターゲットガスの吸着速度が、0.005cc/min・g以上0.1cc/min・g以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガス吸着材。
【請求項5】
少なくとも窒素が前記ターゲットガスであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガス吸着材。
【請求項6】
内部環境を減圧状態にし、熱伝導領域に置かれることによって、断熱効果を発揮する真空断熱材であって、請求項1乃至いずれか一項に記載のガス吸着材を有する真空断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス吸着材、および、ガス吸着材を用いた真空断熱材に関するものである。ガス吸着材は、真空保持、希ガス中の微量ガスの除去、蛍光灯中のガスの除去等様々な分野で用いられている。
【背景技術】
【0002】
最近では、省エネルギーを推進する動きが活発化し、家電製品や設備機器で優れた断熱効果を有する真空断熱材が求められている。真空断熱材として、グラスウールやシリカ粉末などの微細空隙を有する芯材を、ガスバリア性を有する外装材で覆い、外装材の内部を減圧密封したものが知られている。真空断熱材は、その優れた断熱効果を長期にわたって維持するために、真空断熱材へ侵入する水蒸気や酸素、窒素などのガスを除去する吸着材が芯材とともに真空断熱材に減圧密封されている。
【0003】
吸着材のうち、水分を吸着剤に不可逆的に固定吸着する化学型吸着材が、真空断熱材に好ましいものとして知られている。酸化カルシウムCaOはこの一例である。しかしながら、真空断熱材の外装材を透過してくる大気中の酸素および窒素に対しては、酸化カルシウム等の吸湿剤は吸着能を有していない。したがって、真空断熱環境における減圧状態を維持するためには、これらガスに対する吸着材が必要である。
【0004】
酸素や窒素に対し吸着能力を示すものとして、バリウムゲッターやジルコニウム−バナジウム−鉄の三元系合金からなる金属吸着材が知られている。これら金属吸着材は、減圧環境中で400℃以上の高温で活性化される必要がある。しかし、減圧環境をプラスチックフィルムと金属箔を多層化した外装材を利用して構築する態様では、外装材が溶融し破損するため、金属吸着材を加熱することができない。
【0005】
精製対象ガスから窒素などの不純物ガスを除去する吸着材として、銅イオン交換したZSM−5型ゼオライトがある。例えば特許文献1には、従来既存のイオン交換方法によって、ZSM−5型ゼオライトに銅イオンを導入し、熱処理を行うことによって、窒素吸着活性を付与する真空断熱材が開示されている。
【0006】
しかし、かかる真空断熱材の断熱体中には必ず水分が共存する。銅イオン交換したZSM−5型ゼオライトでは、窒素活性サイトである銅イオンが窒素よりも水分との反応活性が高いため、水分により酸化されて銅水酸化物を形成し、窒素に対して不活性となる問題を有する。実際にこの真空断熱材によれば、平衡圧力10Paにおける最大窒素吸着量は、0.238mol/kg(5.33cc−STP/g)と報告されている。
【0007】
この問題を解決すべく、特許文献2では、銅イオン交換したZSM−5型ゼオライトの周囲を水分吸着性物質で覆うことにより、水分の影響を回避した真空断熱材が開示されている。しかし、シリカ対アルミナ比が8以上25以下である銅イオン交換したZSM−5型ゼオライトは、水分に対する吸着速度が大きい。そのため、不活性ガス下において水分吸着材で覆う作業を行っても、不活性ガス中の微量水分により失活するリスクがある。
【0008】
さらに特許文献3には、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、少なくとも84%以上が酸素三配位の銅1価サイトであることを特徴とした吸着材が開示されている。特許文献3の吸着材は、従来の既存の吸着材よりも一層大容量の気体種を吸着、固定化でき、また水素ガスなど発生しない取扱上安全なものである。しかし、気体種との反応速度が大き過ぎて大気中で急速に吸着反応が進む特徴がある。
【0009】
一般に真空断熱材は、製造工程上、大気下で吸着材を金属容器内に真空封止する必要がある。真空加熱を行いながら封止する工程は、複雑であり、かつエネルギーコストがかかる。特に上記特許文献3の吸着材を投入する場合、吸着反応の速さ故に、真空断熱材への投入まで封止材の取り扱いに注意する必要があるため、生産面からコストへの影響が懸念される。
【0010】
上記のとおり、従来、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを用いたガス吸着材の性能向上については、銅イオンに関する報告が多い。しかし、他の観点からのアプローチにより、さらにガス吸着能を向上させることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3693626号公報
【特許文献2】特許第4734865号公報
【特許文献3】特許第4807552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するため、大気中での真空封止時に失活を低減するため吸着速度を下げて取り扱い性の改善を行い、かつ真空断熱材中で窒素吸着能を有効活用するガス吸着材、及び、当該ガス吸着材を用いた真空断熱材を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明者らは、ゼオライトの脱アルミニウム化とガス吸着能との関係を鋭意研究し、ゼオライトを脱アルミニウム化させることで、ガス吸着能を向上させることができるとの新たな知見を得た。本発明は、本発明者らが新たに得た知見を利用して、ガス吸着容量を向上できるガス吸着材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明は、ターゲットガスに対する吸着能を有するガス吸着材であって、ゼオライト骨格中のシリカ対アルミナ比が10以上50以下の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトであるガス吸着組成物と、酸化カルシウムからなり、BET比表面積が10m/g以下であり、2次粒子径が100μm以下である吸水材との焼結体であり、前記焼結体は、ガス吸着組成物と前記吸水材との真空焼結圧縮成型物であり、前記圧縮成型物の固体密度が、1.2g/cm以上2.0g/cm以下であることを特徴とし前記銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの焼結前後での脱アルミニウム率が15%以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明において、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの銅イオン含有量は、3wt%以上6.4wt%以下の重量であることが好ましい。
【0017】
前記ガス吸着組成物を吸水材で被覆させ、前記ガス吸着組成物のターゲットガス吸着面のガスに対する曝露領域に前記吸水材を配置させることも好ましい。
【0018】
本発明は、ターゲットガスの吸着速度が、0.005cc/min・g以上0.1cc/min・g以下である。本発明においては、少なくとも窒素がターゲットガスである。
【0019】
本発明の他の態様は、内部環境を減圧状態にし、熱伝導領域に置かれることによって、断熱効果を発揮する、上記のガス吸着材を有する真空断熱材である。当該真空断熱材は、ターゲットガス濃度を低減する必要がある環境下で好ましく使用される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガス吸着性能を維持しながら、ガス吸着速度を低減させてターゲットガスに対するガスバリア性を高め、また銅担持量を抑制できるガス吸着材、及び当該ガス吸着材を用いた真空断熱材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の真空断熱材の一例を示す模式断面図である。
図2図1に示すガス吸着材の構成を示す説明図である。
図3】ガス吸着材の別構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、ターゲットガスに対する吸着能を有するガス吸着材であって、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトであり、ゼオライト骨格中のシリカ対アルミナ比が10以上50以下であり、前記ZSM−5型ゼオライトの脱アルミニウム率が15%以上であるガス吸着組成物を含有し、少なくとも窒素を吸着できるガス吸着材である。本発明は、上記のガス吸着組成物を含有することで良好なガス吸着容量を備える。また本発明の他の態様として、当該ガス吸着組成物と吸水材との焼結体を含有させてもよい。
【0023】
本発明に含有されるガス吸着組成物は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト(以下、「銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト」を、単に「ゼオライト」と記載する場合がある。)は、その脱アルミニウム率が15%以上である。これにより本発明は、銅担持量の多少にかかわらず、窒素や一酸化炭素等のターゲットガスに対する吸着容量を向上できる。そのため本発明は、銅使用量を抑制できる。脱アルミニウム率が15%未満の場合、ガス吸着容量が減少するため、そのようなガス吸着材を用いた真空断熱材は断熱効果が低い。
【0024】
本発明において「脱アルミニウム率」とは、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトのアルミニウムの原子数について、焼成後のゼオライト中のアルミニウムの原子数と焼成前のゼオライト中のアルミニウムの原子数との差を、焼成前のアルミニウムの原子数で除した値である。
【0025】
本発明において所定のゼオライトの脱アルミニウム率に調整する方法は、焼結体中のゼオライトの脱アルミニウム率が15%以上になる限り限定されず、また調整工程をガス吸着材製造時のいずれに設けてもよい。脱アルミニウム率の調製方法の例としては、ゼオライトを含有するガス吸着組成物の前駆体を真空焼結する方法が挙げられる。所定の脱アルミニウム率に調節するための条件例としては、シリカ対アルミニウム比や、焼結条件等が挙げられる。本発明の脱アルミニウム率は、上記に例示する条件の組み合わせにより決まる。
【0026】
所定の脱アルミニウム率とガス吸着容量向上との関係についての考察の一つとしては、脱アルミニウムにより不安定化したゼオライト骨格がターゲットガスを吸着して安定化しようとすることが挙げられる。ガス吸着組成物については、後に再度説明する。
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明のガス吸着材と真空断熱材との好適な実施形態を詳細に説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
本発明のガス吸着材の態様の一つに窒素吸着材がある。窒素吸着材は真空断熱材内の窒素ガスの除去の用途に用いられるが、特定のものに限定されるべきものではない。
【0029】
真空断熱材は、グラスウールやシリカ粉末などの微細空隙を有する芯材を、ガスバリア性を有する外装材で覆い、外装材の内部を減圧密封したものが知られており、冷蔵庫、冷凍庫、給湯容器、自動車用断熱材、建造物用断熱材、自動販売機、保冷箱、保温庫、保冷車等に使用されている。
【0030】
図1は、真空断熱材1の一例を示す模式断面図である。図1に示されるように、本発明に係る真空断熱材1は、芯材6およびガス吸着材7を2枚の外装材で挟むように内包され、密閉される。
【0031】
2枚の外装材2の周囲は、開口端を残して3方が封止され、全体として袋状の形態が形成される。これに芯材6およびガス吸着材7を収容した後、内部を減圧し開口部を封止する。封止形態の例としては、ヒートシールが挙げられる。符号8は、開口部が封止された接合部である。以下、本発明の真空断熱材の各部材について説明する。
【0032】
本発明における外装材2には、ガスバリア性を有し気体侵入を抑止可能な種々の材料および複合材料であれば、従来の如何なるものも利用できる。通常、外装材は、熱可塑性樹脂や金属箔やプラスチックフィルム等をラミネート加工することでバリア性を付与したものであり、芯材を空気や水分から隔離する役割を果たす。
【0033】
好ましい形態によれば、図1に示すように、外装材2に使用できるラミネートフィルムは、最内層を熱溶融層(熱溶融フィルム)5とし、中間層にはガスバリア層(ガスバリアフィルム)4として金属箔あるいは金属蒸着層を有し、最外層には表面保護層(表面保護フィルム)3を有する形態を備えている。
【0034】
熱溶着フィルム5は、外装材2の熱溶着層が熱と圧力により溶融した後に固化したものであり、外装材2を所定の形状に保持する役割を果たす。また、ガスや水蒸気が外装材2の端部から真空断熱材1内へ侵入することを抑える役割を果たす。
【0035】
熱溶着フィルム5は、通常のシール法(例えば、ヒートシール)によって接着できるものであれば特に限定されない。熱溶着フィルムを構成する材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0036】
なお、上記材料は単独で使用されてもよく、2種類以上の混合物であってもよい。また、熱溶着フィルム5は単層であってもよく、2層以上の積層形態であってもよい。後者の場合、各層は、同様の組成を有していてもよく、異なる組成を有していてもよい。
【0037】
熱溶着フィルム5の厚みは、特に制限されず、公知の厚みと同様の厚みでありうる。具体的には、熱溶着フィルム5の厚みは、好ましくは10〜100μmである。10μmより薄い場合、ヒートシール時に十分な密着強度を得ることができない虞がある。100μmより厚い場合、屈曲性等の加工性が悪くなる虞がある。なお、熱溶着フィルムが2層以上の積層構造を有する場合には、熱溶着フィルムの厚みは、合計厚みを意味する。また、この場合には、各層の厚みは、同じであってもまたは異なっていてもよい。
【0038】
ガスバリアフィルムの材料は、特に制限されず、アルミニウム箔や銅箔などの金属箔や、ポリエチレンテレフタレートフィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体へアルミニウムや銅等の金属原子や、アルミナやシリカ等の金属酸化物を蒸着したフィルム等を使用できる。ガスバリアフィルムの厚みは、特に制限されず、公知の厚みと同様の厚みでありうる。
【0039】
表面保護フィルム3は、特に制限されず、外装材の表面保護フィルムとして通常使用されるのと同様の材料が使用できる。表面保護フィルムを構成する材料としては、例えば、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド(ナイロン)(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのポリオレフィン、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリルニトリル樹脂(PAN)などが挙げられる。
【0040】
表面保護フィルム3の厚みは、特に制限されず、公知の厚みと同様の厚みでありうる。具体的には、表面保護フィルム3の厚みは、好ましくは10〜100μmである。10μmより薄い場合、バリア層の保護が十分でない虞がある。また100μmより厚い場合、熱溶着フィルムと同様に屈曲性等の加工性が悪くなる虞がある。なお、表面保護フィルム3が2層以上の積層構造を有する場合には、上記厚みは、合計厚みを意味する。また、この場合には、各層の厚みは、同じであってもまたは異なっていてもよい。
【0041】
また、これらのフィルムは周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていてもよい。なお、上記材料は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物であってもよい。また、表面保護フィルムは、単層であってもよく、2層以上の積層形態であってもよい。後者の場合、各層は、同様の組成を有していてもよく、異なる組成を有していてもよい。
【0042】
外装材2の厚みは、特に制限されない。具体的には、好ましくは1〜100μmである。上記の厚みを備える外装材は、ヒートブリッジをより有効に抑制・防止して断熱性能が向上でき、また、ガスバリア性および加工性にも優れる。
【0043】
また、別の好ましい形態によれば、ガスバリア性フィルムからなる外装材2は、金属箔を積層したラミネートフィルムからなる面と、金属箔を積層しないラミネートフィルムからなる面の少なくとも2面で構成され、金属箔を積層しないラミネートフィルムからなる面には、少なくとも内層側にアルミニウム蒸着を施したエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂組成物からなるフィルム層、もしくは内層側にアルミニウム蒸着を施したポリエチレンテレフタレート樹脂組成物からなるフィルム層のいずれかを有する。
【0044】
また、本発明による外装材2は、上記のようなラミネートフィルムでなくてもよく、例えば、金属容器やガラス容器、樹脂と金属の積層されたガスバリア容器のようなものであってもよい。そのようなプラスチックラミネートフィルム容器としては、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、金属蒸着フィルムなどの一種または二種以上のフィルムをラミネートした容器などが使用できる。
【0045】
図1に示すように、芯材6は、外装材の内部に配置される。本発明で使用できる芯材は、真空断熱材の骨格となり、真空空間を形成する。ここで、芯材6の材料は特に限定されず、公知の材料を使用できる。具体的には、グラスウール、ロックウール、アルミナ繊維、熱伝導率の低い金属からなる金属繊維等の無機繊維;ポリエステルやポリアミド、アクリル、ポリオレフィン、アラミドなどの合成繊維や木材パルプから製造されるセルロース、コットン、麻、ウール、シルクなどの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維等の有機繊維などが挙げられる。
【0046】
上記芯材の材料は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物であってもよい。これらのうち、グラスウールが好ましい。これらの材料からなる芯材は、繊維自体の弾性が高い、繊維自体の熱伝導率が低い、工業的に安価である等の点で有用である。
【0047】
図1のガス吸着材7の構成例を図2図3とに示す。図3は、ガス透過性開放部を有するハードケースに、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライト10を水分吸着材11で被覆した圧縮成型体を収納した構成を例示する。ガス吸着組成物は、その外側に配置される材料を透過して到達したターゲットガスを吸着する。ガス吸着組成物を吸水材で被覆させた構成で、ガス吸着組成物のターゲットガス吸着面は、ガス吸着組成物と吸水材との界面である。図3では、ハードケースの上端の開放面がガス透過性開放部に相当する。圧縮成型体は、粒状、或いは、ペレット状の塊状体として形成し、この塊状体の複数を芯材中に分散させてもよい。ガス吸着材の他の構成例として、ハードケースに替えてガス透過性フィルムを用いてもよい。また、図3に例示するような、ガス吸着材と吸水材とを積層させる構成の他、ガス吸着材は、図2に例示するような、ガス吸着組成物の周囲に吸水材層を形成する構成も好ましい。
【0048】
ガス吸着材の主体となる銅イオン交換ZSM−5型ゼオライト10は、多孔性結晶性アルミノケイ酸塩からなり、ゼオライト骨格中のシリカ対アルミナ比(Si/Al)が10以上50以下のZSM−5型ゼオライトを銅イオン交換させたものである。本発明において、当該ゼオライトを含有する焼結体は、脱アルミニウム率が15%以上である。
【0049】
本発明に用いられる銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、ゼオライト骨格中のシリカ対アルミナ比が10以上50以下である。銅イオン交換する前の原料となるZSM−5型ゼオライトは、市販の材料を使用することができる。シリカ対アルミナ比が50を越えると銅イオン交換量が少なくなり、微量不純物の吸着量が減少する。一方、シリカ対アルミナ比が5未満のZSM−5型ゼオライトは入手困難である。
【0050】
銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト10における銅イオン交換率は、それぞれのゼオライトのイオン交換可能な量の少なくとも40%以上であるあることが好ましい。これは、イオン交換された銅イオンが窒素及び一酸化炭素の特異的吸着の要因となるからである。銅イオン交換率が少なすぎると特異的吸着性能が発現しなくなる。
【0051】
ZSM−5型ゼオライト中に含まれるナトリウムを銅にイオン交換する方法は、特に限定されるものではなく、従来から行われている周知の方法を採用することができる。例えば、銅の可溶性塩(硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩酸塩等)の水溶液にZSM−5型ゼオライトを浸漬することによってナトリウムを銅にイオン交換することができる。この場合、銅塩の濃度、浸漬時間、浸漬温度、浸漬回数等を選択することによって銅イオン交換量を所望の量に調節することができる。
【0052】
イオン交換した後は、水を用いて洗浄し、乾燥後に適当な温度で焼成することによって使用可能な状態となる。このときの乾燥温度は100℃程度が適当であり、焼成温度は、窒素ガス雰囲気下で350℃以上、特に、500〜800℃が適当である。この吸着材の特異的吸着性能は、1価の銅イオンの存在によって発現すると考えられるので、500℃未満の焼成温度では2価から1価への変化が不十分で、十分な吸着性能を発現させることが困難であり、逆に800℃以上の温度では、ゼオライトの構造自体が破壊される可能性がある。
【0053】
銅イオン交換したゼオライト中に含まれる銅イオン含有量は、3.0wt%以上6.4wt%以下の重量が望ましい。当該重量は、任意の方法で測定できるが、例えば、ICP発光分析法(誘導電荷発光分析法)により測定することができる。なお、本発明におけるイオン交換率は、1個の銅イオンが2個のナトリウムイオンと交換するという仮定から求めている。すなわち、イオン交換時点では、銅イオンは2価として存在すると仮定している。実際には、1価の銅イオンも存在するため、計算値として100%以上の交換率が得られることがあり、全ての銅イオンが1価として存在する場合が上限であり、そのときの計算上のイオン交換率は200%となる。
【0054】
このような銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト10を含むガス吸着材7を用いることにより、例えば、希ガス、酸素、水素、二酸化炭素、炭化水素、六フッ化硫黄といったガス中に微量に存在する不純物、例えば、一酸化炭素、アンモニア、三フッ化窒素、二酸化炭素、メタン、水素、酸素を効率よく吸着除去してガスを精製することができ、精製後のガス中に含まれる不純物量を1ppm以下、すなわち、純度を99.9999容量%以上にすることができる。
【0055】
本発明のガス吸着材7は、ガス吸着組成物と吸水材との焼結体である。当該焼結体を構成するガス吸着組成物には、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトが用いられ、焼結体におけるゼオライトの脱アルミニウム率は、15%以上が好ましく、17%以上が好ましい。脱アルミニウム率が高くなるほど、ガス吸着容量が向上する傾向がある。15%未満の場合、有意なガス吸着容量の向上を認めがたい。これは脱アルミニウム率が低いと、ゼオライト骨格構造が、ターゲットガスを吸着させるに十分な程度に不安定化されないためと推察される。また、所定の脱アルミニウム率を備えることに加え、シリカ対アルミナ比が10以上50以下であることも好ましい。
【0056】
なお本発明は、上記の焼結体に代えて、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトであり、ゼオライト骨格中のシリカ対アルミナ比が10以上50以下であり、前記ZSM−5型ゼオライトの脱アルミニウム率が15%以上であるガス吸着組成物を用いることも好ましい。この場合、本発明は所定のガス吸着組成物そのものであり、吸水材を含有しない。そのような態様であっても、本発明はガス吸着容量を向上できる。ただしいずれの態様においても、本発明は、不可避の不純物を含有しうる。
【0057】
本発明は、ガス吸着材は、少なくとも所定のガス吸着組成物を含有する。または所定のガス吸着組成物と吸水材とを備え、好ましくは、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトと吸水材との圧縮成型物の焼結体であることが好ましい。そのような圧縮焼結体を用いることで、吸水材11、例えば酸化カルシウム層の固体密度を上昇させ、窒素の通過性を抑制できる。すなわちガスバリア性を向上できる。本発明者らは、従来の窒素吸着粉末(真空焼結前)と比較して、10分の1以下に窒素の吸着速度を低減可能であることを実証した。
【0058】
詳しくは、ターゲットガスの吸着速度が、0.005cc/min以上0.1cc/min以下になるように前記焼結体の固体密度が調整されていることが好ましい。ターゲットガスの吸着速度が、0.005cc/min未満となると所望のガス吸着能を発揮できないことがあり、0.1cc/minを超えるとガス吸着能が早期に失活することがある。好ましくは、0.008cc/min以上0.05cc/min以下、さらに好ましくは、0.01cc/min以上0.02cc/min以下である。
【0059】
窒素の吸着速度を低減する一方、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの成型体中のアルミニウムを15%以上、真空加熱で脱アルミニウム化させることにより、真空断熱材中に残留または継続的に外装材を通過した窒素を十分に吸着できることも実証した。また本発明のガス吸着材は、所定のゼオライトの脱アルミニウム率が15%以上であるガス吸着組成物そのものが、ガス吸着容量を向上させる効果を発揮する。
【0060】
ここでいう脱アルミニウム化とは、焼成前のシリカ対アルミナ比が真空加熱により、Alが減少し、シリカ対アルミナ比が大きくなる現象のことである。ZSM−5型ゼオライトの窒素吸着には、酸素三配位の銅1価サイトが窒素吸着に寄与していることが先行文献から知られている。本発明は、焼結体を構成するゼオライトの脱アルミニウム化を脱アルミニウム率15%になるまで行うことで、窒素等のターゲットガスの吸着容量を向上できる。また本発明では、ZSM−5ゼオライトの脱Alによる構造不安定化が銅の含有量とも関連する。
【0061】
本発明の製造方法は、少なくとも所定のガス吸着組成物を焼結する工程を含む。また、ガス吸着組成物と吸水材とを含有するガス吸着材の製造方法では、少なくとも所定のガス吸着組成物と吸水材との成型物を焼結する工程を含む。その他、真空焼成等の工程を含むことも好ましい。ガス吸着組成物は、その表面、すなわちターゲットガス吸着面のガスに対する曝露領域を吸水材で完全に被覆させることが好ましく、少なくとも、ガス吸着組成物の表面積の99.9%以上を被覆させることが好ましい。被覆面積が99%未満の場合、ガス吸着組成物と水分とが接触しやすくなる。そのためガス吸着組成物に含有されるゼオライトが水分と反応し、ターゲットガスの吸着能が低減する。
【0062】
上記の成型物は、焼結工程の前に、成型物の固体密度が、1.2g/cm以上2.0g/cm以下になるように、圧縮することが好ましい。圧縮は公知の加圧方法により行える。上記の固体密度に調節することで、ターゲットガスをガス吸着組成物に十分に接触させることができ、所望のターゲットガス吸着能を得られる。なお、真空焼結後の成型物の固体密度は、焼結工程前の固体密度と同じである。
【0063】
焼結条件は、真空焼結の他、不活性ガス雰囲気での焼結であってもよい。所定の脱アルミニウム率に調節する観点からは、真空焼結が好ましい。なお、本発明において「真空焼結」とは、油拡散ポンプを利用し10−2Pa以下の圧力で550〜650℃で3時間以上の焼結処理を行うことをいう。焼結物は、室温になるまで放置する。上記の焼結条件により、所定のガス吸着組成物を含有するガス吸着材や、ガス吸着組成物と吸水材とを含有する焼結体であるガス吸着材を得られる。
【0064】
窒素をターゲットガスとする場合、本発明のガス吸着材のガス吸着能は、吸着速度として、速くても0.02cc/min以下であり、吸着容量としては、少なくとも1.0cc/g以上である。吸着容量は、ASTM:F798−97に準じて、定容量式ガス吸着方法で測定できる。具体的には、試料室に窒素吸着組成物を設置後、真空ポンプを用いて弁を介して、気体溜めおよび試料室を0.01Pa以下の真空とし、弁を閉じた後、弁を介して、窒素ガスを気体溜めに弁を開放後、所定の圧力になるように窒素ガスを供給する。ガス供給弁を閉じた後、弁を開放し、試料室に窒素ガスを導入し、窒素ガスの圧力変化を圧力測定ゲージにより測定することで吸着容量を測定することが可能である。
【0065】
また本発明は、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトであり、ゼオライト骨格中のシリカ対アルミナ比が10以上50以下であり、前記ZSM−5型ゼオライトの脱アルミニウム率が15%以上であるガス吸着組成物を備えていれば、吸水材と併用しなくても良好な窒素吸着能を発揮する。
【0066】
本発明の真空断熱材は、少なくとも本発明のガス吸着材と吸水材とを含むガス吸着材を外装材内部に収容して減圧し、真空封止する工程を含む。外装材内部には、ガス吸着材に加えて芯材も収容する。本発明は、これを載置する内部環境を減圧状態にした熱伝導領域で使用できる。本発明の断熱効果は、熱伝導率とその経時変化で評価できる。本発明は、熱伝導率の低下率が低い。
【実施例】
【0067】
<実施例1>
シリカ対アルミナ比が20.3、銅担持量3.12wt%の銅イオン交換ZSM−5型ゼオライト(東ソー製)をBET比表面積が3m/gかつ2次粒子径が100μmの水分吸着材(吸水材)の一部に局在化させ、120kgf/cmで圧縮成型して固体密度1.4g/cmの成型体を作製した。この成型体を真空焼結して実施例1のガス吸着材を得た。実施例1の窒素吸着速度を測定した結果、0.02cc/minであった。また、焼成後の脱アルミニウム率は、15.8%であった。吸着容量は、3.5cc/gであった。
【0068】
各実施例と比較例との吸着速度の測定は、ASTM F798−97の方法に従い実施した。
【0069】
<実施例2>
シリカ対アルミナ比が47.4のイオン交換ZSM−5型ゼオライト(ズードケミー製)を硝酸銅溶液でイオン交換し、銅担持量2.95wt%とした銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトを室温で真空乾燥させた。続いて、得られた銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトをBET比表面積が10m/gかつ2次粒子径が100μmの水分吸着材(吸水材)の一部に局在化させ、100kgf/cmで圧縮成型して、固体密度1.2g/cmの成型体を作製した。この成型体を真空焼結して実施例2のガス吸着材を得た。実施例2の窒素吸着速度を測定した結果、窒素の吸着速度は0.02cc/minであった。また、焼成後の脱アルミニウム率は、17.8%であった。吸着容量は、2.8cc/gであった。
【0070】
<実施例3>
シリカ対アルミナ比が11.5のイオン交換ZSM−5型ゼオライト(東ソー製)を酢酸銅溶液でイオン交換し、銅担持量5.8wt%とした銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトを室温で真空乾燥させた。続いて、得られた銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトをBET比表面積が20m/gかつ2次粒子径が10μmの水分吸着材(吸水材)の一部に局在化させ、290kgf/cmで圧縮成型して、固体密度2.0g/cmの成型体を作製した。この成型体を真空焼結して実施例3のガス吸着材を得た。実施例3の窒素吸着能を測定した結果、窒素の吸着速度は0.01cc/minであった。また、焼成後の脱アルミニウム率は、36.0%であった。吸着容量は、6.5cc/gであった。
【0071】
<実施例4>
シリカ対アルミナ比が11.5のイオン交換ZSM−5型ゼオライト(東ソー製)を酢酸銅溶液でイオン交換し、銅担持量6.4wt%とした銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトを室温で真空乾燥させた。続いてBET比表面積が20m/gかつ2次粒子径が10μmの水分吸着材(吸水材)の一部に局在化させ、140kgf/cmで圧縮成型して固体密度1.5g/cmの成型体を作製した。この成型体を真空焼結して実施例4のガス吸着材を得た。実施例4の窒素吸着能を測定した結果、窒素の吸着速度は0.02cc/minであった。また、焼成後の脱アルミニウム率は、58.6%であった。吸着容量は、7.5cc/gであった。
【0072】
<比較例1>
シリカ対アルミナ比が20.3、銅担持量3.12wt%の銅イオン交換ZSM−5型ゼオライト(東ソー製)とBET比表面積が3m/gかつ2次粒子径が100μmの水分吸着材(吸水材)とを混合し、周囲を覆って600℃で真空加熱し、比較例1を得た。比較例1の窒素吸着速度を測定した結果、0.21cc/minであった。真空加熱後の脱アルミニウム率は、11.3%であった。吸着容量は、2.8cc/gであった。
【0073】
<比較例2>
シリカ対アルミナ比が47.4のイオン交換ZSM−5型ゼオライト(ズードケミー製)を硝酸銅溶液でイオン交換し、銅担持量2.95wt%とした銅イオン交換ZSM−5を、室温で真空乾燥させた。得られた銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトとBET比表面積が20m/gかつ2次粒子径が10μmの水分吸着材(吸水材)とを混合し、周囲を覆って600℃で真空加熱して比較例2を得た。比較例2の窒素吸着速度を測定した結果、窒素の吸着速度は0.22cc/minであった。真空加熱後の脱アルミニウム率は、13.3%であった。吸着容量は、1.9cc/gであった。
【0074】
実施例1から実施例4までと比較例1および比較例2との測定結果を表1にまとめた。表1中、固体密度について「混合」と記載されている例については、固体密度を測定しなかった。表1に示されるように、ガス吸着材のうち水分吸着材(吸水材)で覆って圧縮成型させた状態で銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトを真空焼結して得た実施例1から実施例4までは、比較例1および比較例2と比較して窒素吸着速度が10分の1以下にまで低減していることがわかる。また実施例1から実施例4までの脱アルミニウム率は、いずれも15%以上である。一方、比較例1と比較例2では15%未満である。
【0075】
【表1】
【0076】
<実施例5>
シリカ対アルミナ比が20.3、銅担持量3.12wt%の銅イオン交換ZSM−5型ゼオライト(東ソー製)を、図3に示すように水分不透過な金属容器21の下部に敷き詰め、上部をBET比表面積が10m/gかつ2次粒子径が10μmの水分吸着材(吸水材)11で被覆し、120kgf/cmで圧縮成型して固体密度1.4g/cmの成型体を得た。この成型体を真空焼結してガス吸着材20を得た。このガス吸着材20とガラスファイバーとを、ガスバリア性を有する外装材内部に収容後、真空封止し、実施例5の真空断熱材を作製した。実施例5の熱伝導率を測定した結果、2.29mW/mKであった。
【0077】
<比較例3>
金属容器内で、シリカ対アルミナ比が20.3、銅担持量3.12wt%の銅イオン交換ZSM−5型ゼオライト(東ソー製)を、その周囲をBET比表面積が10m/gかつ2次粒子径が10μmの水分吸着材(吸水材)で被覆させるように配置し、圧縮せずに成型した。この成型体を真空焼結してガス吸着材を作製した。このガス吸着材とガラスファイバーとを、ガスバリア性を有する外装材内部に収容後、真空封止し、比較例3の真空断熱材を作成した。比較例3の熱伝導率を測定した結果、2.77mW/mKであった。
【0078】
<実施例6>
実施例1のガス吸着材と、ガラスファイバーとを、ガスバリア性を有する外装材内部に収容後、真空封止し、実施例6の真空断熱材とした。実施例6の熱伝導率を測定した結果、2.07mW/mKであった。その後、30度、湿度95%で1カ月環境試験を行った結果、2.22mW/mKであった。
【0079】
<比較例4>
比較例1のガス吸着材と、ガラスファイバーとを、ガスバリア性を有する外装材内部に収容後、真空封止し、比較例4の真空断熱材とした。比較例4の熱伝導率を測定した結果、2.01mW/mKであった。その後、30度、湿度95%で1カ月環境試験を行った結果、4.07mW/mKであった。
【0080】
比較例4では、圧縮成型せず周囲を水分吸着材で覆ったため、銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトの窒素の吸着能力が低減された。比較例4では、初期の熱伝導率は実施例6とほぼ同等であったが、環境試験の結果では大きな差となった。これは、実施例6が圧縮成型した状態で真空焼結させてガス吸着材の固体密度を上げることにより、ガスバリア性を向上させた効果である。
【0081】
<実施例7>
シリカ対アルミナ比が20.3、銅担持量3.12wt%の銅イオン交換ZSM−5型ゼオライト(東ソー製)粉末を真空焼成し、実施例7のガス吸着材を得た。実施例7の焼成後の脱アルミニウム率は、16.4%であった。また窒素吸着試験を行い、窒素の吸着を確認した結果、吸着容量は、3.8cc/gであった。また窒素吸着速度を測定した結果、0.25cc/minであった。
【0082】
<比較例5>
シリカ対アルミナ比が11.5のイオン交換ZSM−5(東ソー製)を酢酸銅溶液でイオン交換し、銅担持量5.8wt%の銅イオン交換ZSM−5型ゼオライト(東ソー製)を室温で真空乾燥させた。この銅イオン交換ZSM−5型ゼオライトを290kgf/cmで圧縮成型したが、成型体として保持できなかった。
【0083】
本発明のガス吸着材は、真空断熱材の中でも窒素吸着材として機能し断熱材内部に所望の真空度を維持できる。また、所定の脱アルミニウム率を備えることで、同等の銅担持量で作製されたガス吸着材と比較して、ガス吸着容量を向上でき、銅の使用量を抑制できる。
【符号の説明】
【0084】
1 真空断熱材
2 外装材
6 芯材
7 ガス吸着材
10 銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライト
11 水分吸着材(吸水材)
図1
図2
図3