特許第6663668号(P6663668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663668
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】表示装置および表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/26 20060101AFI20200302BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20200302BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20200302BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20200302BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20200302BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   H05B33/26 Z
   H05B33/12 B
   H05B33/14 A
   H05B33/28
   H05B33/10
   G09F9/30 338
   G09F9/30 365
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-178480(P2015-178480)
(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公開番号】特開2017-54718(P2017-54718A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】會田 政勝
(72)【発明者】
【氏名】觀田 康克
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕久
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−103424(JP,A)
【文献】 特表2005−513808(JP,A)
【文献】 特開2007−101622(JP,A)
【文献】 特開2013−020778(JP,A)
【文献】 特開2005−316399(JP,A)
【文献】 特開2004−140319(JP,A)
【文献】 特開2015−069861(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0242401(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L27/32;H05B33/00−33/28;
H01L51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素がマトリクス状に配置された表示領域を備える表示装置であって、
MoまたはMo合金からなる第1導電層、当該第1導電層上に配置されAgまたはAg合金からなる第2導電層、および当該第2導電層上に配置され導電性の金属酸化物からなる第3導電層を含み、前記画素のそれぞれに対応して配置された第1電極と、
前記第3導電層の上方に配置され電流の供給によって光を発生する発光層と、
前記発光層の上方に配置され前記発光層からの光の少なくとも一部を透過する第2電極と、
を含み
前記第1導電層の膜厚は、10nm以上50nm以下であり、
前記第2導電層の膜厚は、100nm以上200nm以下であり、
前記第3導電層の膜厚は、前記第1導電層の膜厚よりも薄いことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1導電層および前記第2導電層の端部は、前記第3導電層の端部よりも前記画素の中心側に位置することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第3導電層は、前記発光層からの光の少なくとも一部を透過することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第3導電層は、ITOであることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
複数の画素がマトリクス状に配置された表示領域を備え、前記画素のそれぞれに対応して配置された第1電極、当該第1電極上に配置され電流の供給によって光を発生する発光層、および当該発光層上に配置され当該発光層からの光の少なくとも一部を透過する第2電極を含む表示装置の製造方法であって、
絶縁表面を含む領域に、MoまたはMo合金からなる第1導電層を、10nm以上50nm以下の膜厚となるように形成し、
前記第1導電層上にAgまたはAg合金からなる第2導電層を、100nm以上200nm以下の膜厚となるように形成し、
前記第2導電層上に導電性の金属酸化物からなる第3導電層を、前記第1導電層の膜厚よりも薄く形成し、
前記第3導電層上に前記画素のそれぞれに対応したパターンのレジストを形成し、
前記レジストをマスクにして、前記第3導電層をエッチングし、
前記レジストおよび前記第3導電層をマスクにして、リン酸、硝酸および酢酸を含む混合酸を含むエッチング液を用いて、前記第2導電層および前記第1導電層をエッチングし、
前記レジストを除去すること
を含むプロセスによって、前記第1電極を形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記第3導電層は、前記発光層からの光の少なくとも一部を透過することを特徴とする請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記第3導電層は、ITOであることを特徴とする請求項6に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第3導電層をエッチングすることは、前記混合酸を含むエッチング液を用いることを特徴とする請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記第3導電層をエッチングすることは、シュウ酸を含むエッチング液を用いることを特徴とする請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および表示装置の製造方法に関する。特に、表示装置の画素電極の構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型ディスプレイなどの表示装置は、画素のそれぞれに電極(画素電極)が設けられている。例えば、OLED(Organic Light Emitting Diode)等の電流駆動型の素子を用いた表示装置においては、それぞれの画素電極を介して、OLEDに電流が供給される。OLEDの発光状態は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等の駆動素子を含む画素回路によって制御される。薄膜トランジスタが配置された側とは反対側の基板側から、OLEDの発光が放出される、いわゆるトップエミッション方式がある。トップエミッション方式である場合は、画素回路に接続された画素電極は、OLEDからの光を透過する必要性が無いため、反射率の高い材料を用いることが望ましい。透明電極の下層(OLEDとは反対側の層)にAgなどの反射率の高い材料で形成された反射層を用いた画素電極が開示されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−69861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、画素電極は絶縁表面に形成される。一方、反射層の反射率を高めようとすると、反射層として用いる材料、または、その形成条件によっては絶縁表面との密着性が悪くなる場合がある。密着性を改善するためには、例えば、反射層の形成条件を制御することが考えられるが、その結果として反射率の低下を招く場合がある。
【0005】
本発明の目的一つは、画素電極の反射率の低下を抑えつつ、画素電極の形成を良好に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、複数の画素がマトリクス状に配置された表示領域を備える表示装置であって、MoまたはMo合金からなる第1導電層、当該第1導電層上に配置されAgまたはAg合金からなる第2導電層、および当該第2導電層上に配置され導電性の金属酸化物からなる第3導電層を含み、前記画素のそれぞれに対応して配置された第1電極と、前記第3導電層の上方に配置され電流の供給によって光を発生する発光層と、前記発光層の上方に配置され前記発光層からの光の少なくとも一部を透過する第2電極と、を含むことを特徴とする表示装置を提供する。
【0007】
また、本発明の一態様は、複数の画素がマトリクス状に配置された表示領域を備え、前記画素のそれぞれに対応して配置された第1電極、当該第1電極上に配置され電流の供給によって光を発生する発光層、および当該発光層上に配置され当該発光層からの光の少なくとも一部を透過する第2電極を含む表示装置の製造方法であって、絶縁表面を含む領域に、MoまたはMo合金からなる第1導電層を形成し、前記第1導電層上にAgまたはAg合金からなる第2導電層を形成し、前記第2導電層上に導電性の金属酸化物からなる第3導電層を形成し、前記第3導電層上に前記画素のそれぞれに対応したパターンのレジストを形成し、前記レジストをマスクにして、前記第3導電層をエッチングし、前記レジストおよび前記第3導電層をマスクにして、リン酸、硝酸および酢酸を含む混合酸を含むエッチング液を用いて、前記第2導電層および前記第1導電層をエッチングし、前記レジストを除去することを含むプロセスによって、前記第1電極を形成することを特徴とする表示装置の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態における表示装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態における表示装置の表示領域における断面構成を示す模式図である。
図3】本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法のうち、薄膜トランジスタを形成する工程を説明する図である。
図4】本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法の図3に続く工程を説明する図である。
図5】本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法の図4に続く工程を説明する図である。
図6】本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法の図5に続く工程を、画素電極の端部を拡大して説明する図である。
図7】本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法の図6に続く工程を説明する図である。
図8】本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法の図7に続く工程を、説明する図である。
図9】本発明の第2実施形態における表示装置の製造方法において、図6に対応する工程を説明する図である。
図10】比較例となる表示装置の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
<第1実施形態>
[概略構成]
本発明の一実施形態における表示装置は、OLEDを用いた有機EL(Electro−Luminescence)表示装置である。この例での有機EL表示装置は、白色光を放出するOLEDを用いる。このOLEDからの白色光を、カラーフィルタに通過させてカラー表示を得る。
【0011】
表示装置は第1基板と第2基板とが貼り合わせ材によって貼り合わされた構成になっている。第1基板には、OLEDの発光状態を制御するための薄膜トランジスタ等の駆動素子が配置されている。第2基板には、カラーフィルタ等が形成されている。
【0012】
第1基板に配置されたOLEDからの光は、第1基板側とは反対側に放出され、第2基板に配置されたカラーフィルタを通してユーザに視認されるトップエミッション方式が用いられている。
【0013】
本発明の一実施形態における表示装置では、以下に説明するとおり、トップエミッション方式に用いられる画素電極を、容易に形成することができる。このとき、画素電極に含まれる反射層の反射率の低下を抑えつつ、絶縁表面に対する密着性を向上させることができる。また、このような構成において、画素電極を容易に形成することも可能である。
【0014】
[表示装置1000の外観構成]
図1は、本発明の一実施形態における表示装置の概略構成を示す図である。表示装置1000は、表示領域D1および走査線駆動回路103が配置された第1基板1と、表示領域D1および走査線駆動回路103を覆うように配置された第2基板2とを備えている。また、表示装置1000は、第1基板1に取り付けられたドライバIC104およびFPC(Flexible printed circuits)106を備える。第2基板2には、カラーフィルタ等が配置されている。
【0015】
表示領域D1には、走査線101、および走査線101と垂直に交わるデータ信号線102が配置されている。走査線101とデータ信号線102との交差部に対応する位置には、画素105が配置されている。画素105は、マトリクス状に配置されている。なお、図1においては、1つの画素105につき、走査線101またはデータ信号線102に沿った方向に延びる信号線が1本であるが、複数であってもよい。また、表示領域D1には電源線等の所定の電圧を供給する配線が配置されてもよい。
【0016】
走査線駆動回路103は、走査線101に制御信号を供給する。ドライバIC104はデータ信号線102にデータ電圧を供給し、また、走査線駆動回路103を制御する。なお、表示領域D1の周囲に、その他の駆動回路がさらに設けられていてもよい。
【0017】
各画素105には、制御信号およびデータ電圧に基づいて発光を制御するための画素回路と、画素回路によって発光が制御される発光素子(OLED)とを含む表示素子が配置されている。画素回路は、例えば、薄膜トランジスタおよびコンデンサを含み、制御信号およびデータ電圧によって薄膜トランジスタを駆動して、発光素子の発光を制御する。この発光の制御によって、表示領域D1に画像が表示される。
【0018】
[表示装置1000の断面構成]
続いて、表示装置1000の断面構成について説明する。表示領域D1における画素回路等の断面構造を説明する。
【0019】
図2は、本発明の第1実施形態における表示装置の表示領域における断面構成を示す模式図である。以下に説明する断面構成は、いずれにおいても端面図として表している。第1基板1における第1支持基板10および第2基板2における第2支持基板20は、ガラス基板である。なお、第1支持基板10および第2支持基板20の一方または双方が、フレキシブル性を有する有機樹脂基板であってもよい。
【0020】
第1基板1の構成について説明する。第1支持基板10上に、薄膜トランジスタ110が配置されている。薄膜トランジスタ110を覆うように、絶縁表面を有する層間絶縁層200が配置されている。層間絶縁層200上には画素電極300が配置されている。層間絶縁層200は、例えば、感光性のアクリル樹脂を塗布し、露光、現像、および焼成を経て、所望のパターンが形成された層である。なお、図2において、層間絶縁層200は、単層で表されているが、複数の絶縁膜の積層であってもよい。この場合、複数の絶縁膜の間に配線が設けられていてもよい。この例では、層間絶縁層200は、アクリル樹脂だけでなく、その表面側、すなわち画素電極300と接する面側に、窒化シリコン膜(SiN)を含む積層構造である。
【0021】
画素電極300は、画素105のそれぞれに対応して配置され、層間絶縁層200に設けられたコンタクトホール250を介して薄膜トランジスタ110の導電層115に接続されている。導電層115は、例えば、アルミニウム(Al)をチタン(Ti)で挟んだ積層膜で形成される。画素電極300は、OLEDのアノード電極として用いられる。ここで、表示装置1000は、トップエミッション方式で画像を表示するため、画素電極300は光透過性を有しなくてもよい。この例では、画素電極300は、OLEDが放出した光を反射する層を含んでいる。画素電極300は、層間絶縁層200側から、第1導電層310、第2導電層320および第3導電層330の積層構造を有している(図6参照)。
【0022】
第1導電層310は、層間絶縁層200と接触するため、層間絶縁層200との密着性の良さ、また、第2導電層320との密着性の良さが求められる。この例では、第1導電層310は、モリブデン(Mo)である。なお、第1導電層310は、モリブデン合金(Mo合金)であってもよい。また、コンタクトホール250を介して接続される下層の導電層(この例では、導電層115)との接続が良好であること(オーミックコンタクトの実現等)なども求められる。これらの要求を満たす材料は様々であるが、第1導電層310においてMoまたはMo合金を用いることで、後述するように画素電極300の形成を容易にすることができる。
【0023】
また、第2導電層320は、可視光領域に高い反射率を有することが求められる。この例では、第2導電層320は、銀(Ag)である。なお、第2導電層320は、銀合金(Ag合金)であってもよい。
【0024】
第3導電層330は、導電性金属酸化物であればよく、光透過性を有していることが望ましい。第3導電層330は、OLEDと接触するため、OLEDとの関係で有利な仕事関数を有することが求められる。このような材料として、導電性金属酸化物が望ましい。この例では、第3導電層330は、ITO(Indium Tin Oxide)である。さらに、光の反射を妨げるべきではないため、できるだけ高い透過率が求められる。さらには、膜厚を所定の値に制御することによって、良好な干渉効果によってOLEDからの光を効率的に外部に放出させることもできる。
【0025】
バンク層400は、画素電極300の端部および隣接する画素間を覆い、画素電極300の一部を露出する開口部を備えている。また、この例では、バンク層400は、アクリル樹脂等の有機絶縁材料で形成されている。
【0026】
発光層500は、OLEDであり、画素電極300とバンク層400とを覆って、これらの構成と接触する。光透過性電極600は、発光層500を覆い、OLEDのカソード電極(画素電極300に対する対向電極)を形成する。光透過性電極600は、OLEDからの光を透過する電極であり、例えば、ITO、IZOなどの金属酸化物、または光が透過する程度に薄い金属層等が適用される。封止層700は、発光層500への水分、ガス等の発光層500を劣化させる成分の到達を抑制するための層であり、光透過性電極600を覆う窒化シリコン等の無機絶縁層である。
【0027】
画素電極300(第1電極)と光透過性電極600(第2電極)とを介して発光層500に電流が供給されると、発光層500において光が発生し、この光が画像を表示させる光として光透過性電極600を通して放出される。そのため、バンク層400によって露出された画素電極300に対応する領域が発光領域となる。図2における領域Aを拡大した図が、後述する図6に示す図の位置に対応する。以上が第1基板1についての説明である。
【0028】
続いて、第2基板2の構成について説明する。第2支持基板20には、遮光層950および赤(R)、緑(G)、青(B)、白(W)に対応するカラーフィルタ900R、900G、900B、900Wが配置されている。図2においては、カラーフィルタ900B、900Wは省略されている。遮光層950は、金属等の遮光性のある材料で形成されている。また、遮光層950は、この例では、色が異なる画素の境界部分および表示領域D1の外側の領域に配置されている。
【0029】
カラーフィルタ900R、900G、900B、900Wは、各画素の発光領域に対応して配置されている。カラーフィルタ900R、900G、900B、900Wは、各色を呈する顔料を含む感光性の樹脂を塗布し、露光、現像、および焼成を経て、所望のパターンが形成された層である。カラーフィルタ900Wは、顔料を含んでいない樹脂で形成されてもよい。印刷方式、インクジェット方式を用いて形成されてもよい。
【0030】
貼り合わせ材800は、第1基板1と第2基板2との間に充填されて、これらを貼り合わせる材料であり、例えば、アクリル樹脂である。貼り合わせ材800が表示領域D1に配置されている場合には、光透過性を有する必要がある。
【0031】
[表示装置1000の製造方法]
続いて、上記の表示装置1000の製造方法について、図3から図8を用いて説明する。
【0032】
図3は、本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法のうち、薄膜トランジスタを形成する工程を説明する図である。図4は、本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法の図3に続く工程を説明する図である。図5は、本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法の図4に続く工程を説明する図である。まず、第1支持基板10に薄膜トランジスタ110を形成する(図3)。ここでは、薄膜トランジスタ110は、ソース、ドレイン、ゲートを有し、に接続されたコンタクトホール114を備えた層間絶縁層112によって被覆され、コンタクトホール114を介してソース、ドレインに接続された導電層115を備えている。第1支持基板10と薄膜トランジスタ110との間には、酸化シリコン、窒化シリコン等の絶縁層が形成されてもよい。この絶縁層によって、水分、ガス等の内部への侵入を抑制してもよい。
【0033】
薄膜トランジスタ110を覆うように、コンタクトホール250を備えた層間絶縁層200を形成する(図4)。続いて、層間絶縁層200を覆うように、画素電極300に相当する積層導電層を形成する(図5)。この例では、後述するように、層間絶縁層200上に第1導電層310が形成され、第1導電層310上に第2導電層320が形成され、第2導電層320上に第3導電層330が形成される。この後に、積層導電層をエッチングして、画素電極300のパターンを形成する。この工程について、図5に示す領域A(画素電極300の端部近傍)を拡大して説明する。
【0034】
図6は、本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法の図5に続く工程を、画素電極の端部を拡大して説明する図である。図6(a)は、図5の領域Aを拡大した図である。層間絶縁層200上には、第1導電層310、第2導電層320および第3導電層330が順に形成されている。
【0035】
この例では、第1導電層310はMo膜であり、その膜厚が30nm(10nm以上50nm以下であることが望ましい)である。第2導電層320はAg膜であり、その膜厚が150nm(100nm以上200nm以下であることが望ましい)である。第3導電層330はITO膜であり、その膜厚が10nm(5nm以上15nm以下であることが望ましい)である。これらの各導電層は、例えば、スパッタにより形成される。
【0036】
この状態において、第3導電層330の表面にレジストRを形成する(図6(b))。このレジストのパターンは、画素電極300のパターンに対応する。続いて、レジストRをマスクにして、第3導電層330をエッチングする(図6(c))。この例では、ITOのエッチング液によるウエットエッチングを用いて、第3導電層330をエッチングする。ITOのエッチング液は、例えば、シュウ酸が用いられる。なお、第2導電層320は、ITOのエッチング液では、ほとんどエッチングされない。
【0037】
続いて、レジストRおよび第3導電層330をマスクにして、第2導電層320および第1導電層310をエッチングする(図6(d))。この例では、Agのエッチング液によるウエットエッチングを用いて、第2導電層320および第1導電層310をエッチングする。Agのエッチング液は、例えば、リン酸、硝酸および酢酸を含む混合酸が用いられる。このような混合酸は、例えば、リン酸が30〜70vol%、硝酸が0.5〜10vol%、酢酸が20〜50vol%の範囲で調整され、さらに水を含んでいる。この混合酸を含むエッチング液によれば、第2導電層320(Ag膜)だけなく、第1導電層310(Mo膜)もエッチングすることができる。この混合酸に対する第1導電層310のエッチングレートは、第2導電層320のエッチングレートに対し、0.2倍以上5倍以下であればよく、0.5倍以上2倍以下であることが望ましく、0.8倍以上1.25倍以下であることがさらに望ましい。なお、この混合酸に対する第2導電層320のエッチングレートは、第3導電層330のエッチングレートに対し、数十倍〜100倍程度となる。そのため、第2導電層320の端部が、第3導電層330の端部よりも画素電極300の中心側に位置することになる。
【0038】
なお、第2導電層320のエッチングレートが第1導電層310のエッチングレートよりも大きい場合、第2導電層320の端部が、第1導電層310の端部よりも画素電極300の中心側に位置する。逆に、第2導電層320のエッチングレートが第1導電層310のエッチングレートよりも小さい場合、第1導電層310の端部が、第2導電層320の端部よりも画素電極300の中心側に位置する。
【0039】
そして、画素電極300からレジストRを除去する(図6(e))。これによって、画素電極300が形成される。画素電極300は、光の反射層として第2導電層320が形成されている。第2導電層320の反射率を上げるためには、Agの成膜温度を低くする必要がある。第2導電層320が層間絶縁層200に接触して形成されている場合には、Agの成膜温度を低くすると、第2導電層320と層間絶縁層200との密着性が低下する。
【0040】
一方、この例のように、第2導電層320と層間絶縁層200との間に、第1導電層310(Mo膜)が存在することによって、Agの成膜温度が低くても、第1導電層310が存在しない例に比べて、密着性の低下が抑制できる。また、第2導電層320と第1導電層310とは、上記の混合酸に対するエッチングレートが近い。したがって、第2導電層320と第1導電層310とをエッチング液を変更せずに、すなわち同一工程でエッチングすることができる。
【0041】
ここで、比較例として、Mo膜の第1導電層310に代えて、ITO膜の第1導電層310Zを用いた場合について、図10を用いて簡単に説明する。なお、Mo膜の第1導電層310である場合と同様に、第2導電層320と層間絶縁層200との密着性の低下を抑制することができる膜として、第1導電層310(Mo膜)を第1導電層310Z(ITO膜)に置換した例を選択した。
【0042】
図10は、比較例となる表示装置の製造方法の例を説明する図である。図10(a)は、図6(c)に対応する図である。比較例では、図10(a)の状態において、レジストRおよび第3導電層330をマスクにして、第2導電層320をエッチングする(図10(b))。この例では、Agのエッチング液(上記の混合酸)によるウエットエッチングを用いて、第2導電層320をエッチングする。この混合酸によれば、第2導電層320(Ag膜)をエッチングすることができるが、第1導電層310Z(ITO膜)は、エッチングレートが1/数十〜1/100程度となって、ほとんどエッチングされない。なお、エッチング時間を掛ければ、第1導電層310Zをエッチングすることは可能であるが、第2導電層320の側面において、エッチングが大きく進んでしまうため、所望の形状を作成することが困難になってしまう。
【0043】
続いて、レジストRおよび第3導電層330および第2導電層320をマスクにして、第1導電層310Zをエッチングする(図10(c))。この例では、ITOのエッチング液(シュウ酸)によるウエットエッチングを用いて、第1導電層310Zをエッチングする。そして、画素電極300からレジストRを除去する(図10(d))。これによって、画素電極300が形成される。このようにしても、反射層を有し、層間絶縁層200との密着性が確保された画素電極300を形成することができる。一方、比較例ではウエットエッチング液の切り替えを2度行う必要がある。したがって、第1実施形態におけるウエットエッチング液の切り替えを1度行う製造方法がより容易に画素電極300を形成することができる。
【0044】
図7は、本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法の図6に続く工程を説明する図である。図8は、本発明の第1実施形態における表示装置の製造方法の図7に続く工程を、説明する図である。図7は、図6(e)の状態において、バンク層400となる材料(この例では感光性のアクリル樹脂)を塗布した状態を示している。この後に、塗布された感光性アクリル樹脂に対して、露光、現像、焼成をすることによって、所望のパターンのバンク層400が形成される。バンク層400は、画素電極300(第3導電層330)の表面の一部を露出するように形成される(図8)。
【0045】
この後に、バンク層400を覆うように、発光層500、光透過性電極600および封止層700を形成すると、図2に示す第1基板1の構成が実現される。
【0046】
<第2実施形態>
第1実施形態においては、第3導電層330は、第1導電層310および第2導電層320とは別のエッチング液を用いてエッチングされていたが、第2実施形態では、同じエッチング液を用いてエッチングする場合について説明する。
【0047】
図9は、本発明の第2実施形態における表示装置の製造方法において、図6に対応する工程を説明する図である。第1導電層310、第2導電層320および第3導電層330を積層する(図9(a))。画素電極300のパターンに対応するレジストRを、第3導電層330上に形成する(図9(b))。この工程までは、第1実施形態と同じである。
【0048】
第2実施形態では、この後に、リン酸、硝酸および酢酸を含む混合酸を用いて、第3導電層330についてもエッチングする。この混合酸を含むエッチング液によれば、第1導電層310および第2導電層320をエッチングすることができる。一方、第3導電層330については、第1導電層310および第2導電層320に対してエッチングレートが1/数十〜1/100程度である。ただし、第3導電層330は、第1導電層310および第2導電層320に対して、非常に薄い。第3導電層330の膜厚は、例えば、第1導電層310の膜厚および第2導電層320の膜厚の合計に対して、1/数〜1/10程度である。そのため、第3導電層330のエッチング時間は、第1導電層310および第2導電層320のエッチング時間の数倍〜10倍程度で済む。
【0049】
図9(c)は、第3導電層330のエッチングが終了した後の状況を示している。第3導電層330のエッチングにおいて、上記の混合酸を含むエッチング液を用いているため、第3導電層330のエッチングが終了した後にすぐに第2導電層320のエッチングも開始される。そして、そのままエッチングを続けると、第1実施形態と同様に、第2導電層320および第1導電層310についてもエッチングされる(図9(d))。画素電極300からレジストRを除去する(図9(e))ことによって、画素電極300が形成される。
【0050】
画素電極300を形成する際に、上記の比較例ではウエットエッチング液の切り替えを2度行い、第1実施形態ではウエットエッチング液の切り替えを1度行っていた。一方、第2実施形態では、第3導電層330のエッチングの時間が第1実施形態に比べて長くなるが、ウエットエッチング液の切替を行わなくても画素電極300を形成することができる。
【0051】
<その他の実施形態>
上記の第1導電層310は、Mo以外にMo合金によって形成されてもよいことを述べた。Mo合金は、例えば、MoWであればよい。この際、Wの含有量は、15at%未満であることが望ましく、10at%未満であることがさらに望ましい。Wの含有量が多くなると、混合酸のみではMoWをエッチングすることができず、フッ酸を用いたエッチングをする必要がある。なお、混合酸のみでエッチング可能なMo合金であれば、W以外の金属を含有してもよい。
【0052】
上記の第2導電層320は、Ag以外にAg合金によって形成されてもよいことを述べた。Ag合金は、例えば、AgPaCuであればよい。この際、Agの含有量は、90at%以上であることが望ましく、95at%であることがさらに望ましい。Agの含有量が少なくなると、耐熱性などが向上するものの、反射率が低下するためである。
【0053】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1…第1基板、2…第2基板、10…第1支持基板、20…第2支持基板、101…走査線、102…データ信号線、103…走査線駆動回路、104…ドライバIC、105…画素、106…FPC、110…薄膜トランジスタ、200…層間絶縁層、250…コンタクトホール、300…画素電極、310…第1導電層、320…第2導電層、330…第3導電層、400…バンク層、500…発光層、600…光透過性電極、700…封止層、800…貼り合わせ材、900R,900G,900B,900W…カラーフィルタ、950…遮光層、1000…表示装置
図1
図2
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図7
図8
図9
図10