【実施例】
【0030】
以下、図面を参照しながら、観察装置及び表示装置の実施例について説明する。以下では、観察装置及び表示装置の実施例を採用する顕微鏡システム1を用いて説明を進める。
【0031】
(1)顕微鏡システム1の構成
図1の断面図を参照しながら、顕微鏡システム1の構成について説明する。
図1に示すように、顕微鏡システム1は、顕微鏡11と、表示ユニット12と、支持装置13とを備える。
【0032】
顕微鏡11は、被観察物体が搭載されるステージ111と、「第1光学系」の一具体例である顕微鏡光学系112とを備える。顕微鏡光学系112は、被観察物体の拡大像である顕微鏡像を第1視点EP1に導く(つまり、当該顕微鏡像を形成する光を第1視点EP1に導く)光学系である。このため、第1視点EP1(或いは、第1視点EP1付近)に瞳孔が位置する観察者は、顕微鏡像を観察することができる。顕微鏡光学系112は、被観察物体に最も近接する対物レンズ1121と、第1視点EP1に最も近接する接眼レンズ1123とを少なくとも備えている。接眼レンズ1123は、接眼レンズ1123の周囲を取り囲むレンズ縁1123aを含む筐体(言い換えれば、鏡筒)内に収容されている。
図1に示す例では、顕微鏡光学系112は、対物レンズ1121を透過した光を接眼レンズ1123に向けて反射するミラー1122を更に備えている。しかしながら、顕微鏡光学系112は、ミラー1122を備えていなくてもよい。
【0033】
表示ユニット12は、表示部121と、「第2光学系」の一具体例である表示光学系122と、「取り付け部」の一具体例である取り付け装置123とを備えている。表示部121は、所望の表示像を形成する光を出射可能である。表示部121は、ディスプレイ(例えば、フラットパネルディスプレイ)であってもよい。表示部121は、入射する光を反射可能なMEMSデバイス(例えば、デジタルミラーデバイス(DMD(登録商標):Digital Mirror Device)や、光スキャナ)であってもよい。表示光学系122は、表示部121が出射する光(つまり、当該光が形成する表示像)を、第1視点EP1に隣接する第2視点EP2に導く光学系である。このため、第2視点EP2に瞳孔が位置する観察者は、表示像を観察することができる。
図1に示す例では、表示光学系122は、凹面鏡1221を備えている。このように表示光学系122を反射光学系とすることで表示光学系122を屈折光学系とする場合よりも表示ユニット12の軽量化がはかれ、顕微鏡11への付加物として有利である。また、凹面鏡1221を半透過とすれば、観察者は、表示像を背景と重ねて観察することが可能になり、表示ユニット12をいわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)として構成することもできる。当然、表示ユニット12は、表示像を観察者に観察させることが可能な任意の表示ユニットであってもよい。取り付け装置123は、表示部121及び表示光学系122を顕微鏡11に取り付けるための取り付け部材である。例えば、取り付け装置123は、顕微鏡光学系112を収容する筐体に形成された嵌め込み部に嵌め込み可能な第1嵌め込み部と、表示部121及び表示光学系122を収容する筐体に形成された嵌め込み部に嵌め込み可能な第2嵌め込み部とを備えていてもよい。但し、取り付け部123は表示光学系122と一体化されていてもよく、この場合には、取り付け装置123は、顕微鏡光学系112を収容する筐体に形成された嵌め込み部に嵌め込み可能な第1嵌め込み部を備えていればよい。
【0034】
支持装置13は、顕微鏡11を支持する。特に、支持装置13は、ユーザが顕微鏡11を自由に移動可能なように顕微鏡11を支持する。
図1に示す例では、支持装置13は、顕微鏡11を吊り下げるように支持する。このような支持装置13が顕微鏡11を支持しているため、顕微鏡11の周囲には、相対的に大きなスペースが存在しにくい状況にある。一方で、上述したように、表示ユニット12は、表示像を実像として観察者に観察させるディスプレイを表示部121として備えることがある。この場合、表示ユニット12のサイズが相対的に大きくなる可能性が高い。このため、表示像を実像として観察者に観察させる表示ユニット12は、顕微鏡11の周囲に配置することが困難になる可能性がある。このような表示ユニット12のサイズと顕微鏡11の周囲のスペースの大きさとを考慮して、
図1に示す例では、表示像を虚像として観察者に観察させる表示装置が表示部121として用いられるがゆえにサイズが相対的に小さくなる表示ユニット12が採用されている。但し、顕微鏡11の周囲に十分なスペースがある場合には、表示像を実像として観察者に観察させる表示ユニット12が採用されてもよい。
【0035】
(2)顕微鏡光学系112及び表示光学系122の配置条件(設計条件)
続いて、
図2(a)及び
図2(b)を参照しながら、顕微鏡光学系112及び表示光学系122の配置条件(設計条件)について説明する。顕微鏡光学系112及び表示光学系122は、
図2(a)及び
図2(b)に示す配置条件が満たされるように配置される。言い換えれば、顕微鏡光学系112及び表示光学系122は、
図2(a)及び
図2(b)に示す設計条件が満たされるように設計される。尚、上述したように、表示光学系122(表示ユニット12)は、取り付け装置123によって顕微鏡光学系112(顕微鏡11)に取り付けられる。従って、取り付け装置123は、
図2(a)及び
図2(b)に示す配置条件が満たされるように、表示光学系122(表示ユニット12)を顕微鏡光学系112(顕微鏡11)に取り付ける。以下、配置条件(設計条件)について詳しく説明する。
【0036】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、第1視点EP1に瞳孔が位置する観察者(以降、“観察者(EP1)”と称する)は、顕微鏡光学系112が第1視点EP1に導く顕微鏡像を、表示領域114に表示された画像として観察する。言い換えれば、観察者(EP1)は、表示領域114に表示された顕微鏡像を観察する。
【0037】
表示領域114は、顕微鏡像がそこに表示されていると観察者が認識する実際の又は仮想的な表示領域である。
図1に示す顕微鏡システム1では、顕微鏡像は、虚像として観察者に観察される。従って、表示領域114は、顕微鏡像がそこに表示されていると観察者が認識する仮想的な表示領域(つまり、虚像が表示される表示領域)である。但し、顕微鏡光学系112が顕微鏡像を実像として観察者に観察させる光学系である場合には、表示領域114は、顕微鏡像がそこに表示されていると観察者が認識する実際の表示領域(つまり、実像が表示される表示領域)である。
【0038】
同様に、第2視点EP2に瞳孔が位置する観察者(以降、“観察者(EP2)”と称する)は、表示光学系122が第2視点EP2に導く表示像を、表示領域124に表示された画像として観察する。言い換えれば、観察者(EP2)は、表示領域124に表示された表示像を観察する。
【0039】
表示領域124は、表示像がそこに表示されていると観察者が認識する実際の又は仮想的な表示領域である。
図1に示す顕微鏡システム1では、表示像は、虚像として観察者に観察される。従って、表示領域124は、表示像がそこに表示されていると観察者が認識する仮想的な表示領域(つまり、虚像が表示される表示領域)である。但し、表示光学系122が表示像を実像として観察者に観察させる光学系である場合には、表示領域124は、表示像がそこに表示されていると観察者が認識する実際の表示領域(つまり、実像が表示される表示領域)である。
【0040】
図2(a)は、顕微鏡光学系112及び表示光学系122の配置態様を示す斜視図である。ここで、第1視点EP1、第2視点EP2、および表示領域114の中心C1が含まれる平面PL1を定義する。
図2(b)は、平面PL1が紙面と平行となる方向から観察した顕微鏡光学系112及び表示光学系122の配置態様を示す断面図である。配置条件は、観察者(EP1)により観察される表示領域114の平面PL1に沿った画角α及び、観察者(EP2)により観察される表示領域124の平面PL1に沿った画角βに関する画角条件を含む。尚、画角αは、平面PL1と表示領域114とが交差することでなす線分L1の2つの端部のうちの一方と第1視点EP1とを結ぶ線S11と、該2つの端部のうちの他方と第1視点EP1とを結ぶ線S12とがなす角度を意味する。同様に、画角βは、平面PL1と表示領域124とが交差することでなす線分L2の2つの端部のうちの一方と第2視点EP2とを結ぶ線S21と、該2つの端部のうちの他方と第2視点EP2とを結ぶ線S22とがなす角度を意味する。さらに、
図2(a)において第1視点EP1及び第2視点EP2を紙面上下方向に沿って配置した例を示しているが、左右方向に沿って配置してもよいし、任意の方向に沿って配置してもよい。
【0041】
配置条件は、θ<α/2+β/2という画角条件を含む。ここで、θは、第1視点EP1と表示領域114の中心C1(つまり、線分L1の中心C1)とを結ぶ軸(光軸AX1)と、第2視点EP2と線分L2の中心C2とを結ぶ軸(光軸AX2)とが平面PL1に沿ってなす角度である。更に、配置条件は、平面PL1に沿った1視点EP1と第2視点EP2との間の距離(物理的な距離)Lに関する視点距離条件を含む。視点距離条件は、L<50mmという条件である。
【0042】
表示領域114と表示領域124とが、観察者の視線方向(
図2(b)に示す例では、紙面横方向)に沿って部分的に重なるためには、つまり表示領域114と表示領域124とが、観察者(EP1)及び観察者(EP2)のうちの少なくとも一方の視線方向に沿って部分的に重なるためには、少なくとも上述した画角条件及び視点距離条件が満たされる必要がある。ここで具体的には、表示領域114は、観察者の視線方向に沿って表示領域124と部分的に重なる重複領域114aを含む。同様に、表示領域124は、観察者の視線方向に沿って表示領域114と部分的に重なる重複領域124aを含む。その結果、表示領域114と表示領域124とが観察者の視線方向に沿って重ならない場合と比較して、観察者が注視する画像を顕微鏡像から表示像へと又は表示像から顕微鏡像へと切り替えるために、観察者は眼球をそれほど大きく回転させなくてもよくなる。つまり、観察者は、頭部をわずかに動かすと共に眼球をわずかに回転させれば、観察者が注視する画像を顕微鏡像から表示像へと又は表示像から顕微鏡像へと切り替えることができる。従って、顕微鏡システム1は、眼球の大きな回転に起因した観察者の疲労を抑制しながら顕微鏡像及び表示像を観察者に観察させることができる。
【0043】
一方で、表示領域114と表示領域124とが観察者の視線方向に沿って部分的に重なると、場合によっては、観察者(EP1)は、顕微鏡像のみならず、顕微鏡像の一部に重畳される表示像の一部をも同時に観察することになる。つまり、観察者(EP1)は、表示像の一部と顕微鏡像の一部とが重なった状態で、顕微鏡像及び表示像の双方を観察することになる。同様に、表示領域114と表示領域124とが観察者の視線方向に沿って部分的に重なると、場合によっては、観察者(EP2)は、表示像のみならず、表示像の一部に重畳される顕微鏡像の一部をも同時に観察することになる。つまり、観察者(EP2)は、表示像の一部と顕微鏡像の一部とが重なった状態で、顕微鏡像及び表示像の双方を観察することになる。このような態様での顕微鏡像及び表示像の観察は、顕微鏡像又は表示像の視認性が劣ることになる(つまり、2種類の画像が重なった部分の認識が困難になる)がゆえに、観察者の混乱を招く可能性がある。
【0044】
このため、本実施形態では、顕微鏡光学系112及び表示光学系122のうちの少なくとも一方は、観察者(EP1)が表示像の一部と顕微鏡像の一部とが重なった状態で顕微鏡像及び表示像の双方を同時に観察することがなく且つ観察者(EP2)が表示像の一部と顕微鏡像の一部とが重なった状態で顕微鏡像及び表示像の双方を同時に観察することがないように配置される。言い換えれば、顕微鏡光学系112及び表示光学系122のうちの少なくとも一方は、顕微鏡像を排他的に第1視点EP1に導く一方で、表示像(特に、重複領域124aに表示される一部の表示像)を第1視点EP1に導かないように配置される。同様に、顕微鏡光学系112及び表示光学系122のうちの少なくとも一方は、表示像を排他的に第2視点EP2に導く一方で、顕微鏡像(特に、重複領域114aに表示される一部の顕微鏡像)を第2視点EP2に導かないように配置される。
【0045】
例えば、後述するように、顕微鏡光学系112及び表示光学系122のうちの少なくとも一方は、観察者(EP1)が表示像の一部と顕微鏡像の一部とが重なった状態で顕微鏡像及び表示像の双方を同時に観察することを防止し且つ観察者(EP2)が表示像の一部と顕微鏡像の一部とが重なった状態で顕微鏡像及び表示像の双方を同時に観察することを防止する防止部材を備えている。本実施形態では、接眼レンズ1123を収容する筐体が備えるレンズ縁1123aが、防止部材として機能するものとする。但し、レンズ縁1123aとは異なる構成要素が防止部材として機能してもよい。
【0046】
この場合、レンズ縁1123aは、重複領域124aに表示された表示像の一部の画像部分を形成する光が、第1視点EP1に導かれることを防止する。その結果、観察者(EP1)は、表示像の一部と顕微鏡像の一部とが重なった状態で顕微鏡像及び表示像の双方を同時に観察することがない。一方で、重複領域114aに表示された顕微鏡像の一部の画像部分を形成する光は、後述する光学的なケラレに起因して、観察者(EP2)の網膜に到達しない。その結果、観察者(EP2)は、表示像の一部と顕微鏡像の一部とが重なった状態で顕微鏡像及び表示像の双方を同時に観察することがない。
【0047】
配置条件は、第1視点EP1と表示領域114との間の光路長D1及び第2視点EP2と表示領域124との間の光路長D2に関する光路長条件を含んでいてもよい。光路長条件は、光路長D1と光路長D2とが同一になるという条件である。尚、ここでいう「光路長D1と光路長D2とが同一になる」という条件は、光路長D1と光路長D2とが文字通り完全に同一になる条件のみならず、光路長D1と光路長D2とが同一であるとみなすことができる程度にしか光路長D1と光路長D2との間に差異がないという条件をも意味する。光路長条件が満たされると、観察者は、観察者が注視する画像を顕微鏡像から表示像へと又は表示像から顕微鏡像へと切り替える際に、眼のピントを合わせ直さなくてもよくなる(言い換えれば、調整しなくてもよくなる)。従って、顕微鏡システム1は、眼のピントの調整に起因した観察者の疲労を抑制しながら顕微鏡像及び表示像を観察者に観察させることができる。
【0048】
配置条件を満たす画角α、画角β、角度θ、光路長D1及びD2、並びに、距離Lの好ましい例又は一例を以下に説明する。尚、好ましい例又は一例は、本願発明者等の実験やシミュレーションにより算出されている。好ましい例は、観察者の疲労の抑制という効果がより一層顕著に現れる例である。画角αは、45度以下であることが好ましい。画角βは、45度以下であることが好ましい。角度θは、45度以下であることが好ましい。角度θは、30度以下であることがより好ましい。画角αは、例えば45度である。画角βは、例えば20度(或いは、17度)である。角度θは、例えば30度(或いは、45度)である。光路長D1及びD2の夫々は、例えば、250mmである。距離Lは、例えば25mmである。
【0049】
(3)レンズ縁1123aの存在を考慮した顕微鏡像の観察者による見え方
続いて、
図3(a)から
図3(b)及び
図4(a)から
図4(b)を参照しながら、レンズ縁1123aの存在を考慮した顕微鏡像の観察者による見え方について説明する。この説明は、レンズ縁1123aが上述した防止部材として機能し得ることの説明に相当する。
【0050】
図3(a)は、第1視点EP1よりも僅かに後方(つまり、被観察物体が位置する物体面から僅かに遠ざかる方向)に瞳孔が位置する観察者(EP1)が顕微鏡像を観察する場合の光路を示す。
図3(a)に示すように、被観察物体からの光は、対物レンズ1121を介して接眼レンズ1123に導かれる。尚、
図3(a)に示す例では、被観察物体からの光は、対物レンズ1121と接眼レンズ1123との間に、実像としての顕微鏡像を形成する。その後、被観察物体からの光は、接眼レンズ1123を介して、観察者の眼球に到達する。その後、被観察物体からの光は、観察者の瞳孔を介して、観察者の網膜に到達する。その結果、観察者(EP1)は、表示領域114に表示されている顕微鏡像(つまり、虚像としての顕微鏡像)を観察する。観察者の瞳孔が第1視点EP1よりも僅かに後方にある場合は、
図4(a)に示すように観察者の虹彩によるケラレの縁は、接眼レンズ1123の外縁よりも大きい。従って、被観察物体からの光は、虹彩によって遮られない。このため、被観察物体からの光の全部が網膜に達する。従って、観察者(EP1)は、一部が欠けることなく顕微鏡像を観察する。尚、観察者の瞳孔が第1視点EP1に位置する又は第1視点EP1よりも僅かに前方(つまり、被観察物体が位置する物体面に僅かに近づく方向)に位置する場合にも同様である。
図3(a)は、あくまで一例として、観察者の瞳孔が第1視点EP1よりも僅かに後方に位置する例を示しているに過ぎない。つまり、本願発明は、観察者の瞳孔が第1視点EP1の近傍に位置する例においても適用可能である。
図3(a)の状態から
図3(b)に示すように、観察者が眼球を大きく回転させることなく、観察者が頭部をわずかに動かし且つ眼球をわずかに回転したとする。観察者が頭部をわずかに動かし且つ眼球をわずかに回転する動作は、視点を第1視点EP1から第2視点EP2へ移動させる動作に相当する。この場合、被観察物体(つまり、虚像を表示する表示領域114)からの光の一部(被観察物体の紙面上方からの光線)は、虹彩によって遮られ網膜に達しなくなる。従って、観察者(EP1)は、一部が欠けた顕微鏡像(つまり、虹彩によるケラレが生じた顕微鏡像)を観察することになる。
【0051】
図4(a)及び
図4(b)は、観察者が頭部をわずかに動かし且つ眼球をわずかに回転する前後の、眼球の位置、視線方向及び接眼レンズ1123などの位置関係を示す。
図4(a)は、顕微鏡像を観察する状態を示し、
図4(b)は、顕微鏡像を観察する状態から観察者が頭部をわずかに上方に動かし且つ視線方向をわずかに上方に動かして、顕微鏡像から視線を外した状態を示す。
図4(b)に示すように、眼球の中心位置に対して、接眼レンズ1123は、頭部(つまり眼球の中心位置)を動かした方向に応じた方向(
図4(b)に示す例では、下方向)に向かって移動する。虹彩によるケラレの縁は、観察者が眼球をわずかに回転させ視線方向を動かしたことで接眼レンズ1123よりも更に大きく移動する。一方で顕微鏡像が観察者に視認されうる位置はそれほど大きくは移動しない。このため、被観察物体からの光(つまり、顕微鏡像を形成する光)の一部は、接眼レンズ1123によるケラレ及び虹彩によるケラレに起因して観察者の網膜に達せず、観察者(EP2)が視認することができない。
【0052】
(4)顕微鏡像及び表示像の夫々の観察者による見え方
続いて、
図5及び
図6(a)から
図6(b)を参照しながら、顕微鏡像及び表示像の観察者(EP1)による具体的な見え方、並びに、顕微鏡像及び表示像の観察者(EP2)による具体的な見え方について説明する。
【0053】
図5に示すように、顕微鏡像が円形の表示領域114に表示される画像であり、表示像が矩形の表示領域124に表示される画像である例を用いて、以下の説明を進める。
【0054】
図6(a)は、観察者(EP1)による顕微鏡像及び表示像の見え方を示している。
図6(a)に示すように、観察者の瞳孔が第1視点EP1に位置する場合には、被観察物体からの光(つまり、顕微鏡像)は、接眼レンズ1123を介して、観察者の網膜に到達する(
図3(a)及び
図4(a)参照)。従って、観察者(EP1)は、顕微鏡像を適切に観察することができる。一方で、表示部121からの光(つまり、表示像であり、特に、表示像のうち重複領域124aに表示される一部の画像部分)は、第1視点EP1(つまり、瞳孔)に到達する前にレンズ縁1123aによって遮られる。従って、観察者(EP1)は、少なくとも、表示像のうち重複領域124aに表示される一部の画像部分を観察することはない。つまり、観察者(EP1)は、表示像の一部と顕微鏡像の一部とが重なった状態で顕微鏡像及び表示像の双方を同時に観察することがない。
【0055】
一方で、
図6(b)は、観察者(EP2)による顕微鏡像及び表示像の見え方を示している。観察者は、観察者が注視する画像を顕微鏡像から表示像に切り替えるために、頭部をわずかに動かし且つ眼球をわずかに回転させる。その結果、観察者の状態は、
図6(a)に示す観察態様で顕微鏡像及び表示像を観察する状態から、
図6(b)に示す観察態様で顕微鏡像及び表示像を観察する状態へと切り替わる。
図6(b)に示すように、観察者が頭部をわずかに動かし且つ眼球をわずかに回転した場合には、眼球の中心位置に対して、接眼レンズ1123は、頭部(眼球の中心位置)を動かした方向に応じた方向(
図6(b)に示す例では、下方向)に向かって移動する。その結果、観察者(EP2)の瞳孔には、表示部121からの光(つまり、表示像)が到達する。従って、観察者(EP2)は、表示像を適切に観察することができる。一方で、顕微鏡像を形成する光の一部は、接眼レンズ1123によるケラレ及び観察者の虹彩によるケラレに起因して、観察者(EP2)の瞳孔に到達することはない。従って、観察者(EP2)は、少なくとも、顕微鏡像のうち重複領域114aに表示される一部の画像部分を観察することはない。つまり、観察者(EP2)は、表示像の一部と顕微鏡像の一部とが重なった状態で顕微鏡像及び表示像の双方を同時に観察することがない。
【0056】
尚、上述の説明では、表示領域114と表示領域124とは、観察者の視線方向に沿って部分的に重なっている。しかしながら、表示領域114と表示領域124とは、観察者の視線方向に沿って部分的に重なっていなくてもよい。但し、観察者が注視する画像を切り替えるために必要な眼球の回転量(更には、頭部の移動量)をより一層小さくするという観点から見れば、表示領域114と表示領域124とは、観察者の視線方向に沿って部分的に重なっていることが好ましい。
【0057】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う観察装置及び表示装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。