(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
容器を密栓するキャップは有底筒状に設けられ、天面部と、その天面部の周縁から略垂下してなる筒状の円筒部とによりカップ状に形成されている。また、キャップの円筒部は、ブリッジを介して筒上部と筒下部とが連結された構成とされており、筒上部には、ボトル缶の口金部に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が形成される雌ねじ形成予定部と、雌ねじ形成予定部の天面部側に形成されるナール部とが設けられている。また、筒下部には、ボトル缶の口金部の膨出部にピルファープルーフ部として係止されることになるフレアが形成されている。
【0003】
そして、上記のように形成されたキャップは、ボトル缶の口金部にキャップを被せた状態でキャッピング装置(キャッパ)によりキャッピング加工が施されることにより、口金部に装着される。ここで、キャップの雌ねじ形成予定部には、ROロール(ロールオンロール)により口金部の雄ねじ部に対応する雌ねじ部が形成され、キャップのフレアがPPロール(ピルファープルーフロール)により口金部の膨出部に巻き込まれることで、キャップがボトル缶の口金部に装着され、キャップ付ボトル缶が得られる。
【0004】
このようなキャップ付ボトル缶を開栓する際には、キャップを、その雌ねじ部がボトル缶の雄ねじ部に対して緩まる方向に缶軸回りに相対的に回転させることにより、キャップをボトル缶の口金部に対して缶軸方向上方へ移動させる。この際、キャップのフレアは、ボトル缶の膨出部に巻き込まれているので、キャップの筒下部は缶軸方向上方への移動が阻止され、キャップの移動の初期段階でブリッジが破断され、そのブリッジよりも上側のキャップの筒上部及び天面部が、口金部から取り外され、ブリッジよりも下側の筒下部のみが口金部に残される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなキャップにおいては、使用者によるキャップ開栓性を向上させるために、キャップの開栓時の開栓トルクを低減することが課題とされてきた。しかし、開栓トルクが低くなり過ぎることで、使用者がキャップ付ボトル缶が一度開栓されたものと勘違いするおそれがある。そこで、PPロールのトルク(荷重)を高くして、フレアの巻き込みを深くすることにより開栓トルクを向上させることも考えられるが、このようにキャッピング時にボトル缶やキャップに加えられるトルクを大きくした場合には、ボトル缶の口金部及びキャップに変形が生じるおそれがある。また、開栓トルクが高くなり過ぎることで、開栓不良を生じることも懸念される。
【0007】
また、キャップのフレアが膨出部に適正に巻締められていない場合には、特許文献1にも記載されているように、キャップの開栓時に、フレア(開放端部)が口金部の膨出部に沿って拡径されることで、ブリッジが破断されずに、キャップの筒下部が筒上部とともに、缶軸方向に移動されてキャップのすっぽ抜けが生じるおそれがあった。また、ブリッジが容易に破断されずにキャップが口金部で空転することにより、開栓角度が大きくなり開栓し難くなるおそれがあった。この点、特許文献1には、キャップのフレアの硬度を高くしておくことで、キャップのフレアを膨出部に強固に係止させ、キャップのすっぽ抜けを防止することが記載されている。しかし、フレアの硬度を高くした場合には、キャッピング時のPPロールのトルクも高くすることが必要となり、口金部に変形が生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、開栓トルクと開栓角度とを適正な範囲で制御可能なキャップ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のキャップは、天面部と、該天面部の周縁から略垂下してなる筒状の円筒部とを備える金属製のキャップであって、前記円筒部の下端縁は
、前記円筒部の垂下方向の高さが周方向で異なり、高さの高い高ハイト部と高さの低い低ハイト部とを有しており、前記高ハイト部の最も高い部分と前記低ハイト部の最も低い部分との差分が
0.22mm以上0.30mm以下とされていることを特徴とする。
【0010】
このキャップでは、円筒部の下端縁の高さを円周上に異ならせて不均一に設けているので、下端縁を均一に設けたキャップよりもフレアを縮径して内周側に巻き込みやすく、裾巻きのためのPPロール(ピルファープルーフロール)のトルクを低く抑えることができる。このため、座屈強度が低い容器であっても、容器に変形を生じることなく、膨出部に沿ってフレアを深く巻き込むことができる。さらに、不均一に設けた下端縁(フレア)の高ハイト部を容器の膨出部に沿って膨出部に強固に係止させることができるので、キャップのすっぽ抜けを防止できるとともに、開栓トルクを向上させることができる。また、キャップの空転を抑制できるので、開栓角度も小さくできる。
【0011】
本発明のキャップにおいて、前記高ハイト部が、前記円周上において対向する対角位置に設けられているとよい。
高ハイト部を円周上の対角位置において膨出部に沿って深く巻き込むことができるので、容器の口金部にキャップを安定して装着できる。
【0012】
本発明のキャップの製造方法は、前記キャップを製造する方法であって、アルミニウム又はアルミニウム合金の圧延材からブランク材を打ち抜くブランク打ち抜き工程と、前記ブランク材を有底筒状のカップ状に成形するキャップシェル成形工程とを有し、前記ブランク材は、前記圧延材の圧延方向に沿って対角に短径部を有する非円形に打ち抜かれることを特徴とする。
【0013】
従来のキャップの製造方法では、
図10に示すように、絞りダイ91上に配置したブランク材の外周縁部を、絞りダイ91とドローダイ82との間で保持した状態とし、ブランク材の中央部を絞りパンチ81によりダイ孔93内に押し込んで絞り加工を施すことにより有底筒状のカップ形状部を形成した後、外周縁部に形成されたフランジ部(耳)33をトリムカッター87によりトリミングすることで、円筒部12aの下端縁の高さが円周上で均一に切り揃えられる。
一方、本発明のキャップの製造方法においては、圧延材の伸びを考慮して、対角に対称形状を有する非円形のブランク材を用いることで、キャップの下端縁の高さの高低差が0.5mm以下の不均一な形状を有するキャップを成形できる。また、従来の製造方法のように、外周縁部のトリミングを行わないため、円筒部の下端縁を薄く形成できる。また、低ハイト部よりも背の高い高ハイト部を、低ハイト部の厚みよりも薄く形成できる。
【0014】
本発明のキャップの製造方法において、前記キャップシェル成形工程は、ドローダイの内周部に絞りダイ上の前記ブランク材に当接しない逃がし部を形成しておき、前記天面部の成形を行う工程の前半においては、前記ブランク材の外周縁部を前記絞りダイと前記ドローダイとで挟持した状態で、該ブランク材の中央部分を絞りパンチにより前記絞りダイのダイ孔内に押し出して絞り加工を施し、前記円筒部の下端縁の成形を行う工程の最後においては、前記外周縁部を前記ドローダイの前記逃がし部に通過させながら前記ダイ孔内に引き込み、前記絞りダイに沿って前記外周縁部を前記絞りパンチと前記絞りダイとの間に案内するとよい。
【0015】
ドローダイの内周部に逃がし部を形成しておくことで、キャップシェル成形工程の最後において、ブランク材の外周縁部が絞りダイとドローダイとで挟持されないので、円筒部の下端縁の厚みを所定の厚みに保持しやすくなる。そして、キャップシェル成形工程の最後において、ブランク材の外周縁部を挟持しないことで、いたずらに高ハイト部が高く成形されたり、ちぎれたりすることを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、キャッピング時にボトル缶やキャップに加えられるトルクを変更することなく、キャッピング時の開栓トルクと開栓角度とを適正に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態のキャップを用いたライナ付キャップのボトル缶への巻締め前の状態の半断面図である。
【
図2】ボトル缶とライナ付キャップの半断面図である。
【
図3】本発明の実施形態のキャップの製造方法を説明する図であり、プレス用金型の上型と下型とを開いた状態の要部断面図を示す。
【
図4】ブランク打ち抜き工程を説明するプレス用金型の要部断面図であり、
図3の状態から上型を下降させて、ブランク材を打ち抜いた状態を示す。
【
図5】キャップシェル成形工程を説明するプレス用金型の要部断面図であり、
図4の状態から上型を下降させて、キャップシェルの天面部を成形した状態を示す。
【
図6】キャップシェル成形工程を説明するプレス用金型の要部断面図であり、
図5の状態から上型を下降させて、ブランク材の外周縁部を逃がし部に通過させた状態を示す。
【
図7】キャップシェル成形工程を説明するプレス用金型の要部断面図であり、
図6の状態から上型を下降させて、キャップシェルの成形を完了した状態を示す。
【
図9】キャッピング装置のキャッピングヘッド部分の断面図である。
【
図10】従来のキャップの製造方法に用いるプレス用金型の要部断面図であり、外周縁部に形成されたフランジ部をトリミングしてキャップシェルの成形を完了した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るキャップ及びその製造方法の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
本実施形態のキャップ1は、
図2に示すように、ボトル缶2(本発明でいう、容器)の口金部21に装着されて、ボトル缶2を密栓するものである。
【0019】
ボトル缶2は、アルミニウム又はアルミニウム合金製(金属製)とされ、
図2に示すように、有底筒状の胴部22と、胴部22の上端から上方に向けて漸次縮径するテーパ状の肩部23と、この肩部23の上端から上方に延びる筒状小径の首部24と、この首部24よりも上方部分に形成される口金部21とを有するボトル状に形成されている。また、キャップ1が装着されるボトル缶2の口金部21は、
図2に示すように、その下端部に半径方向外方に突出する膨出部27が形成され、その上方に雄ねじ部26、雄ねじ部26の上方に開口端部を丸めてなるカール部25が形成されている。
【0020】
キャップ1は、アルミニウム又はアルミニウム合金製(金属製)のブランク材を有底筒状(カップ状)に成形してなるもので、
図1に示すように、円形の天面部11と、その天面部11の周縁から略垂下されてなる筒状の円筒部12とを備えている。
また、キャップ1の円筒部12は、周方向に断続的に形成されたスリット35の間に形成された複数のブリッジ36を介して筒上部37と筒下部38とが連結された構成とされている。筒上部37には、ボトル缶2の口金部21に形成された雄ねじ部26に螺合する雌ねじ部19が形成される雌ねじ形成予定部39と、雌ねじ形成予定部39の天面部11側に設けられるナール部13、フック部14及びグルーブ部15と、雌ねじ形成予定部39のブリッジ36側に設けられるビード部16とが設けられている。また、筒下部38には、ボトル缶2の口金部21の膨出部27にピルファープルーフ部として係止されることになるフレア17が設けられている。
【0021】
そして、筒下部38の下端縁、すなわち円筒部12の下端縁は、
図1に示すように、円周上で高さの高い高ハイト部18aと、高さの低い低ハイト部18bとを有しており、そのうち高ハイト部18aの最も高い部分と低ハイト部18bの最も低い部分との差分Rが0.5mm以下に設けられている。また、高ハイト部18aは、円筒部12の下端縁の円周上において対向する対角位置に設けられている。
【0022】
このように構成されるキャップ1の天面部11の内側には、シール材であるライナ4が設けられ、ライナ付キャップ5とされる。そして、
図9に示すように、ボトル缶2の口金部21にライナ付キャップ5を被せた状態で、キャッピング装置(キャッパ)60によりキャップ1にキャッピング加工を施すことにより、ライナ付キャップ5がボトル缶2の口金部21に装着される。ここで、キャッピング装置60のプレッシャーブロック61により、缶軸方向にライナ付キャップ5を口金部21に押し付けた状態を維持するとともに、天面部11の外周部に絞り成形を施し、段差部34を形成する。また、キャップ1の雌ねじ形成予定部39には、キャッピング装置60のROロール(ロールオンロール)62により内方(半径方向)に押圧されることで口金部21の雄ねじ部26に対応する雌ねじ部19が形成される。また、キャップ1のフレア17は、PPロール(ピルファープルーフロール)63により内方(半径方向)に押圧されることで、口金部21の膨出部27の下面に巻き込まれて係止される。これにより、ライナ4がカール部25に圧接された状態でライナ付キャップ5が口金部21に螺着状態に固定され、密栓されたキャップ付ボトル缶9が得られる。
【0023】
なお、キャップ1に挿入されるライナ4としては、例えば
図1に示すように、エラストマー樹脂等で形成されてシール機能を有する密封層41と、その密封層41よりも高い硬度を有し、ポリプロピレン等で円板状に形成されて、キャップ1の天面部11の内面と摺動する摺動層42とが積層されたものを用いることができる。この場合、密封層41は、摺動層42よりも外径が小さく設けられ、密封層41よりも外径が大きく設けられた摺動層42がフック部14により支持されることで、ライナ4がキャップ1に取り付けられている。
【0024】
上述したように、本実施系形態のキャップ1では、円筒部12の下端縁の高さを円周上に異ならせて不均一に設けているので、下端縁を均一に設けたキャップよりもフレア17を縮径して内周側に巻き込みやすく、PPロール63のトルクを低く抑えることができる。このため、座屈強度が低いボトル缶(容器)2であっても、ボトル缶2に変形を生じることなく、膨出部27に沿ってフレア17を深く巻き込むことができる。また、高ハイト部18aを対角位置に設けているので、ボトル缶2の口金部21にキャップ1を安定して装着できる。さらに、不均一に設けた下端縁(フレア17)の高ハイト部18aをボトル缶2の膨出部27に沿って膨出部27に強固に係止させることができるので、キャップ1のすっぽ抜けを防止できるとともに、開栓トルクを向上させることができる。また、キャップ1の空転を抑制できるので、開栓角度も小さくできる。
【0025】
次に、本実施形態のキャップ1の製造方法を、
図3〜
図8を参照して説明する。
キャップ1の製造方法においては、例えば
図3〜
図7に示すプレス用金型70を用いる。プレス用金型70は、天面部11aと円筒部12aとを備えるカップ状のキャップシェル10を成形するためのものであり、成形されたキャップシェル10は、円筒部12aにナール部13、フック部14、スリット35等の成形を行うナーラー成形が施されることにより、キャップ1として完成する。
【0026】
なお、プレス用金型70は、
図3に示すように、上型71と下型72との間に圧延材30を配置し、圧延材30からブランク材31を打ち抜きながらキャップシェル10を成形するものである。上型71には、中央に配置され、キャップシェル10の天面部11aを絞る柱状の絞りパンチ81と、この絞りパンチ81を囲む環状のドローダイ82と、ドローダイ82を囲む環状の板押さえ83とが設けられている。また、下型には、ドローダイ82に対向する環状の絞りダイ91と、絞りダイ91を囲んでドローダイ82との間で圧延材30を打ち抜く環状のカットエッジダイ92とが設けられている。そして、絞りパンチ81は、絞りダイ91のダイ孔93内に上下移動可能に保持され、ダイ孔93は、成形後のキャップシェル10の天面部11aと略同形状の開口に設けられている。また、ドローダイ82の内周部には、絞りダイ91上のブランク材31に当接しない逃がし部85が設けられている。
【0027】
以上のように構成されたプレス用金型70によりキャップシェル10を成形し、キャップ1を製造する方法について説明する。
(ブランク打ち抜き工程)
アルミニウム又はアルミニウム合金の圧延材30を、
図3に示すように、プレス用金型70の上型71と下型72との間に配置する。そして、
図4に示すように、上型71と下型72とを閉じるように上型71を下降させ、圧延材30をカットエッジダイ92と板押さえ83との間に挟持するとともに、カットエッジダイ92とドローダイ82との間で圧延材30を打ち抜く。この際、ブランク材31を、
図8に示すように、圧延材30の圧延方向(0°及び180°を通る方向)に沿って対角に短径部を有する非円形に打ち抜く。
【0028】
(キャップシェル成形工程)
さらに上型71を下降させ、
図4に示すように、絞りダイ91とドローダイ82との間にブランク材31の外周縁部32を環状に挟持する。その挟持状態でさらに
図5に示すように絞りパンチ81を下降させることで、ブランク材31の中央部分を絞りパンチ81により絞りダイ91のダイ孔93内に押し出して絞り加工を行う。
この際、キャップシェル10の天面部11aの成形を行う工程の前半においては、
図5に示すように、ブランク材31の外周縁部32を絞りダイ91とドローダイ82とで挟持しながら絞り加工を行うが、キャップシェル10の円筒部12aの下端縁の成形を行う工程の最後においては、
図6に示すように、ブランク材31の外周縁部32をドローダイ82の逃がし部85に通過させながらダイ孔93に引き込み、絞りダイ91に沿ってブランク材31の外周縁部32を絞りパンチ81と絞りダイ91との間に案内することで、円筒部12aの成形を完了する。
【0029】
このようにしてキャップシェル10の成形が終了した後、絞りパンチ81及びドローダイ82を上昇させて、これらをキャップシェル10から離間する。成形されたキャップシェル10は、円筒部12aの下端縁が周方向で異なる高さを有する不均一な形状に形成されており、その下端縁の最も高い高ハイト部と最も低い低ハイト部との差分は0.5mm以下に設けられる。また、円周上の複数の高ハイト部は、円筒部12aの下端縁の円周上において対向する対角位置に対となって設けられる。なお、円筒部12aの下端縁の厚みは、円筒部12aの下端縁以外の部分の厚みよりも若干厚く形成され、高ハイト部の厚みは低ハイト部の厚みよりも薄く形成される。
【0030】
(ナーラー成形工程)
最後に、図示は省略するが、カップ状に成形されたキャップシェル10の円筒部12aに、ナール部13、フック部14、スリット35等の加工を行うことにより、キャップ1が得られる。そして、このようにして得られたキャップ1においても、加工前のキャップシェル10と同様に、円筒部12の下端縁の最も高い高ハイト部18aと最も低い低ハイト部18bとの差分が0.5mm以下に維持される。
【0031】
なお、図示は省略するが、キャップシェル成形工程からナーラー成形工程へのキャップシェル10の搬送は、エアーフローコンベアで行われる。エアーフローコンベアは、ボトムガイドとトップガイドとの間にキャップシェル10の天面部11を下に向けて配置し、エアーをキャップシェル10に吹き付けることにより搬送する。このエアーフローコンベアによるキャップシェル10の搬送時において、キャップシェル10の円筒部12の下端縁がトップガイドに接触することがあるが、キャップシェル10の下端縁を周方向で異なる高さに設けているので、キャップシェルとトップガイドとの接触面を少なくできる。したがって、キャップシェル搬送時の接触抵抗を小さくでき、キャップシェル10を円滑に搬送することができる。また、キャップシェル搬送時の接触抵抗を小さくできるので、エアーフローコンベアのエアー圧を低減させることも可能となる。
【0032】
このように、本実施形態のキャップの製造方法においては、圧延材30の伸びを考慮して、対角に対称形状を有する非円形のブランク材31を用いる。これにより、キャップ1の下端縁の高さの高低差が0.5mm以下の不均一な形状を有するキャップ1を成形できる。また、従来の製造方法のように、外周縁部のトリミングを行わないため、円筒部12の下端縁は、ブランク材31を打ち抜いた端面が成形されたものであり、バリが出た場合であってもキャップ1の半径方向内側にバリが出るため、キャップ表面の塗装膜を傷つけることを防止できる。なお、従来の製造方法では、外周縁部のトリミングを行う際に、キャップの半径方向外側にバリが出やすく、キャップに施された塗装膜を傷つけるおそれがある。
【0033】
また、ドローダイ82の内周部に逃がし部85を形成しておくことで、キャップシェル成形工程の最後において、ブランク材31の外周縁部32が絞りダイ91とドローダイ82とで挟持されないので、円筒部12の下端縁の厚みを所定の厚みに保持しやすくなる。そして、このようにキャップシェル成形工程の最後において、ブランク材31の外周縁部32を挟持しないことで、いたずらに高ハイト部18aが高く成形されたり、ちぎれたりすることを抑制できる。
【実施例】
【0034】
次に、本実施形態のキャップ及びキャップの製造方法について、その効果を確認するために実験を行った。
本実施形態のキャップの製造方法により、アルミニウム合金の厚み0.250mmの圧延材から非円形のブランク材を打ち抜き、公称キャップ外径38mmのキャップシェル及びキャップを成形した。また、ブランク材は、圧延材の伸びを考慮して、対角に対称形状を有する非円形のブランク材を形成し、耳が出やすい圧延材の圧延方向(0°及び180°を通る方向)に沿って対角に短径部(62.2mm)を形成するとともに、90°及び270°を通る方向に沿って対角に長径部(63.8mm)を形成した。
【0035】
(キャップハイト評価)
ブランク材の圧延方向を基準(0°及び180°)とし、本実施形態のキャップの製造方法において成形したキャップシェルのハイト(円筒部の高さ)を16等配(16箇所)で測定し、16箇所の測定値から、最大値(max)、最小値(min)、最大値から最小値を減じた差分R、16箇所の平均値(ave)を求めた。各5個のキャップの測定を実施した。
表1に結果を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
いずれのキャップにおいても、ハイトの差分Rを0.3mm以下に設けることができた。また、各キャップのハイトの最大値(max)は290°±30°の範囲にあり、その反対側の円周上において対向する対角位置の110°±30°の範囲にも、平均値(ave)よりも高い高ハイト部が形成できた。一方、ハイトの最小値(min)は180°±30°の範囲にあり、その反対側の円周上において対向する対角位置の0°±30°の範囲にも、平均値(ave)よりも低い低ハイト部を形成できた。
【0038】
(開栓評価)
円筒部の下端縁の高さが円周上で均一に切り揃えられた従来例のキャップと、本実施形態の方法により作製した実施例のキャップとを用意した。なお、実施例のキャップは、キャップハイト評価と同様のキャップシャルを成形後、ナーラー成形工程によりキャップシェルの円筒部に、ナール部、フック部、ブリッジ等の加工を行うことにより成形した。また、従来例のキャップと実施例のキャップのそれぞれにライナを設け、ライナ付キャップを作製した。ライナは、TPS(スチレン系エラストマー)製の軟質層とPP(ポリプロピレン)製の硬質層とからなる二層シートを用いた。
【0039】
そして、ボトル缶に水を75ml(85℃)充填し、ヘッドスペース部分に液体窒素を滴下して空気を置換してキャッピング行い、初期内圧が20℃で100±20kPa相当となるように設定されたキャップ付ボトル缶を作製した。
キャッピングに用いるプレッシャーブロックは、絞り径を直径35.8mm、絞り深さを1.8mmに設定したものを使用した。キャッピング時のボトル缶の缶軸方向の押圧荷重(トッププレッシャー:TP)は1000Nに設定し、ROロールのROトルクは4.0N・m(押付荷重123N)に設定し、PPロールのPPトルクは3.2N・m(押圧荷重92N)に設定した。なお、各キャップ付ボトル缶のキャッピングは、いずれもROロール及びPPロールを半径方向に押し付ける動作を二度繰り返して行う二度加工により行った。
【0040】
そして、このようにして作製した各キャップ付ボトル缶について、124.5℃×5分のレトルト処理を施した後に、さらに20℃で1週間保存した後、キャップ付ボトル缶の開栓を行い、開栓トルクの測定を行った。開栓トルクは、日本電産シンポ株式会社製のデジタルトルクメータ(TNP‐5)により測定した。また、従来例のキャップを用いたキャップ付ボトル缶と、実施例のキャップを用いたキャップ付ボトル缶とについて、それぞれ10缶ずつの開栓トルクを測定した。
【0041】
表2に結果を示す。なお、表2の「1stトルク」は、開栓始めにおいてライナ付キャップを僅かに動かすのに要した開栓トルクの値であり、「2ndトルク」は、開栓中に1本目のブリッジが破断するまでに要した開栓トルクの値である。また、「ロック角度(BBA)」は、ライナ付キャップの1本目のブリッジが最初に破断するまでに要したキャップ回転角度であり、「開栓角度(BBFA)」は、全てのブリッジが破断されるまでのキャップの回転角度である。なお、「品温」は、開栓トルク測定時のキャップ付ボトル缶の温度である。
【0042】
【表2】
【0043】
表2の結果からわかるように、実施例のキャップ付ボトル缶は、従来例のキャップ付ボトル缶に比べて、1stトルクの平均値(Ave)を高くでき、さらに1stトルクのバラツキ(σ
n−1)も小さくできることから、開栓者に適度な開栓性を認識させることができる。
また、実施例のキャップ付ボトル缶では、キャップ付ボトル缶のロック角度(BBA)の平均値(Ave)と開栓角度(BBFA)の平均値(Ave)を、従来例よりも小さくでき、バラツキ(σ
n−1)も小さくできることから、開栓動作を円滑に行えるようになり、開栓性を向上できる。
【0044】
(PPトルク評価)
次に、開栓評価で用いた従来例と実施例のライナ付キャップ、ボトル缶を用いて、PPロールのPPトルク及び押圧荷重を表1に示す条件に変更して、ボトル缶にライナ付キャップをキャッピングして、初期内圧が20℃で100±20kPa相当となるように設定されたキャップ付ボトル缶を作製した。
【0045】
なお、キャッピングに用いるプレッシャーブロックは、開栓評価と同様に、絞り径を直径35.8mm、絞り深さを1.8mmに設定したものを使用し、キャッピング時のボトル缶の缶軸方向の押圧荷重(TP)は1000Nに設定し、ROロールのROトルクは4.0N・m(押付荷重123N)に設定し、各キャップ付ボトル缶のキャッピングは、いずれもROロール及びPPロールを半径方向に押し付ける動作を二度繰り返して行う二度加工により行った。
【0046】
そして、このようにして作製した各キャップ付ボトル缶について、124.5℃×5分のレトルト処理を施した後、20℃で1週間保存した後、キャップ付ボトル缶の開栓を行い、開栓トルクの測定を行うとともに、ライナ付キャップのすっぽ抜けが生じるかを確認した。開栓トルクは、開栓評価と同様に、日本電産シンポ株式会社製のデジタルトルクメータ(TNP‐5)により測定した。また、従来例のキャップを用いたキャップ付ボトル缶と、実施例のキャップを用いたキャップ付ボトル缶とについて、それぞれ10缶ずつの開栓トルクを測定した。なお、すっぽ抜けとは、ライナ付キャップの開栓時に、フレア(ピルファープルーフ部)がボトル缶の膨出部から外れて、膨出部を乗り上げてしまうことをいう。
結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
表3の結果からわかるように、実施例のキャップ付ボトル缶では、PPトルクを低くした場合でも、開栓角度が僅かに大きくなるだけで大きな変化はなく、いずれのPPトルクの場合でも、良好にフレアを膨出部に係止させることができ、良好な開缶角度を維持できた。また、ライナ付キャップのすっぽ抜けも生じなかった。さらに、実施例のキャップ付ボトル缶は、従来例のキャップ付ボトル缶よりも開缶角度が小さく、開栓動作を円滑に行えることがわかった。
一方、従来例のキャップ付ボトル缶では、PPトルクをトルクを低くすると、開栓角度が大幅に大きくなり、開栓角度も大きくなった。また、ライナ付キャップのすっぽ抜けが生じ、PPトルクを低くすることで、すっぽ抜けの発生リスクが高くなった。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることができる。