(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の熱利用部において冷房負荷と暖房負荷とが混在して冷房負荷が暖房負荷よりも大きい場合には、冷却用設定温度に熱源水を冷却するように前記熱源部を冷却作動させ、前記複数の熱利用部において冷房負荷と暖房負荷とが混在して暖房負荷が冷房負荷よりも大きい場合には、加熱用設定温度に熱源水を加熱するように前記熱源部を加熱作動させる温度制御部が備えられている請求項1〜5の何れか1項に記載の熱利用システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のシステムでは、高温系統と低温系統とを繋ぐバイパス配管を備え、高温系統と低温系統との間でバイパス配管を通して熱源水が流通可能となっている。
【0007】
複数の熱利用部において冷房負荷よりも暖房負荷が大きい場合には、高温系統の熱源水が多く利用されるので、低温系統からバイパス配管を通して高温系統に熱源水が流通する。そして、バイパス配管における熱源水の温度が低下して低下側所定温度に達すると、暖房負荷を賄うために、熱源部にて低温系統側の熱源水を加熱して高温系統側に供給する加熱作動を行う。
【0008】
逆に、複数の熱利用部において暖房負荷よりも冷房負荷が大きい場合には、低温系統の熱源水が多く利用されるので、高温系統からバイパス配管を通して低温系統に熱源水が流通する。そして、バイパス配管における熱源水の温度が上昇して上昇側所定温度に達すると、冷房負荷を賄うために、熱源部にて高温系統側の熱源水を冷却して低温系統側に供給する冷却作動を行う。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載のシステムでは、バイパス配管における熱源水の温度を検出するために、最低流量の熱源水をバイパス配管を通して流通させており、この熱源水の流通によって、常時、高温系統の熱源水と低温系統の熱源水とが混合する。この混合によって、高温系統の熱源水は温度低下してしまい、逆に、低温系統の熱源水は温度上昇してしまい、エネルギーロスを生じる。
【0010】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、高温系統と低温系統との間での熱源水の混合を抑制して、エネルギーロスを低減し、更なる省エネルギー化を図ることができる熱利用システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発
明は、複数の熱利用部を備えた熱利用システムにおいて、
前記複数の熱利用部の夫々に高温の熱源水を供給自在な高温系統と、
前記複数の熱利用部の夫々に低温の熱源水を供給自在な低温系統とが備えられ、
前記複数の熱利用部の夫々は、前記高温系統の熱源水を利用して、利用後の熱源水を前記低温系統に供給する高温利用状態と、前記低温系統の熱源水を利用して、利用後の熱源水を前記高温系統に供給する低温利用状態とに切換自在に構成され、
前記高温系統側から流入する熱源水を前記低温系統側に還水し、前記低温系統側から流入する熱源水を前記高温系統側に還水する還水系統と、
前記還水系統にて前記低温系統側に還水される熱源水を冷却する冷却作動、及び、前記還水系統にて前記高温系統側に還水される熱源水を加熱する加熱作動を実行可能な熱源部とが備えられている
と好適である。
【0012】
本構成によれば、高温利用状態の熱利用部と低温利用状態の熱利用部とが混在する場合には、高温利用状態の熱利用部にて利用された利用後の熱源水を、低温利用状態の熱利用部にて利用することができるとともに、低温利用状態の熱利用部にて利用された利用後の熱源水を、高温利用状態の熱利用部にて利用することができる。
【0013】
そして、例えば、高温利用状態の熱利用部が低温利用状態の熱利用部よりも多くなり、暖房負荷が冷房負荷よりも大きくなると、低温系統の熱源水の量が増加して、高温系統の熱源水の量が減少する。このときには、低温系統から還水系統に熱源水が流入し、その流入した熱源水は熱源部にて加熱される状態で還水系統にて高温系統に還水される。逆に、低温利用状態の熱利用部が高温利用状態の熱利用部よりも多くなり、冷房負荷が暖房負荷よりも大きくなると、高温系統の熱源水の量が増加して、低温系統の熱源水の量が減少し、高温系統から還水系統に熱源水が流入し、その流入した熱源水は熱源部にて冷却される状態で還水系統にて低温系統に還水される。また、高温利用状態の熱利用部と低温利用状態の熱利用部とが同数であり、暖房負荷と冷房負荷とが同じ又は略同じであると、高温系統及び低温系統の両系統から還水系統に熱源水が流入しない状態となる。このように、複数の熱利用部における熱の利用状況によって、還水系統への熱源水の流入状態が変化するが、いずれの場合でも、高温系統の熱源水と低温系統の熱源水とが混合することはない。
【0014】
以上のことから、高温系統の熱源水と低温系統の熱源水とが混合することなく、エネルギーロスを抑制しながら、高温利用状態の熱利用部と低温利用状態の熱利用部との両方で熱源水を利用することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0015】
本発
明は、前記高温系統から前記還水系統への熱源水の流入状態、及び、前記低温系統から前記還水系統への熱源水の流入状態を検出する熱源水流入状態検出部と、その熱源水流入状態検出部の検出情報に基づいて、前記熱源部の作動状態を制御する制御部とが備えられている
と好適である。
【0016】
上述の如く、複数の熱利用部における熱の利用状況によって、高温系統又は低温系統から還水系統への熱源水の流入状態が変化する。そこで、本構成によれば、熱源水流入状態検出部にて高温系統又は低温系統から還水系統への熱源水の流入状態を検出することで、複数の熱利用部における熱の利用状況を把握することができ、その熱の利用状況に応じて、熱源部を適切に作動させることができる。例えば、暖房負荷と冷房負荷とが同じ又は略同じであると、熱源部を作動停止させることができ、無駄に熱源部を作動させることなく、省エネルギー化を図ることができる。
【0017】
本発
明は、前記熱源部における熱源として、未利用エネルギーを用いる未利用エネルギー熱源と補助熱源とが備えられ、前記還水系統にて還水される熱源水の温度を検出する熱源水温度検出部が備えられ、前記制御部は、前記熱源水温度検出部の検出情報に基づいて、前記未利用エネルギー熱源を前記補助熱源よりも優先して利用する形態で、前記熱源部の作動状態を制御する
と好適である。
【0018】
本構成によれば、未利用エネルギー熱源と補助熱源とを備えて、未利用エネルギー熱源を補助熱源よりも優先して利用するので、できるだけ未利用エネルギー熱源を利用して、省エネルギー化を図りながら、例えば、熱負荷が大きな場合であっても、補助熱源を利用してその熱負荷を十分に賄うことができる。
【0019】
本発
明は、前記熱利用部での熱負荷の大きさに応じて、前記熱利用部に供給する熱源水の流量を調整する流量調整部が備えられている
と好適である。
【0020】
本構成によれば、熱負荷の大きな熱利用部には多量の熱源水が供給され、熱負荷の小さな熱利用部には少量の熱源水が供給される。これにより、複数の熱利用部における暖房負荷と冷房負荷との間に大小の差が生じると、その熱負荷の差が高温系統と低温系統との間での熱源水の量の差として生じ、高温系統又は低温系統から還水系統への熱源水の流入として現出される。よって、高温系統又は低温系統から還水系統への熱源水の流入状態を検出するようにするだけで、複数の熱利用部における熱の利用状況を適切に把握できる。
【0021】
本発
明は、前記熱源部は、熱源から循環供給される熱搬送体と熱源水とを熱交換させる熱源用熱交換部を備えている
と好適である。
【0022】
本構成によれば、高温系統及び低温系統の熱源水が流通する系統側と、熱搬送体が流通する熱源部側とに分離することができる。これにより、熱搬送体の流量の変化等、熱搬送体の流通状態の変化に伴って、熱源部側にて圧力変化が生じても、その影響が系統側に及ぶことが無い。よって、系統側では、熱源部側の熱搬送体の流通状態とは無関係に、熱源水が流通されるので、複数の熱利用部における熱の利用状況に応じて還水系統への熱源水の流入状態が適切に変化することになり、複数の熱利用部における熱の利用状況をより一層適切に把握できる。
【0023】
本発
明は、前記複数の熱利用部において冷房負荷と暖房負荷とが混在して冷房負荷が暖房負荷よりも大きい場合には、冷却用設定温度に熱源水を冷却するように前記熱源部を冷却作動させ、前記複数の熱利用部において冷房負荷と暖房負荷とが混在して暖房負荷が冷房負荷よりも大きい場合には、加熱用設定温度に熱源水を加熱するように前記熱源部を加熱作動させる温度制御部が備えられている
と好適である。
【0024】
本構成によれば、複数の熱利用部において冷房負荷と暖房負荷とが混在して冷房負荷が暖房負荷よりも大きい場合には、冷却用設定温度に熱源水を冷却することで、低温利用状態の熱利用部には冷却用設定温度の熱源水を安定して供給できる。そして、冷房負荷が暖房負荷よりも大きいので、例えば、複数の熱利用部のうちの多くが低温利用状態であるので、多くの熱利用部にて効率の向上を図りながら熱利用を行うことができ、システム全体として効率の向上を効果的に図ることができる。
【0025】
また、複数の熱利用部において冷房負荷と暖房負荷とが混在して暖房負荷が冷房負荷よりも大きい場合にも、加熱用設定温度に熱源水を加熱することで、高温利用状態の熱利用部には冷却用設定温度の熱源水を安定して供給できる。そして、暖房負荷が冷房負荷よりも大きいので、例えば、複数の熱利用部のうちの多くが高温利用状態であるので、多くの熱利用部にて効率の向上を図りながら熱利用を行うことができ、システム全体として効率の向上を効果的に図ることができる。
【0026】
本発
明は、前記還水系統から前記高温系統への熱源水の逆流を防止する高温側逆流防止部と、前記還水系統から前記低温系統への熱源水の逆流を防止する低温側逆流防止部とが備えられている
と好適である。
【0027】
本構成によれば、高温側逆流防止部と低温側逆流防止部とによって、還水系統から高温系統又は低温系統への熱源水の逆流を適切に防止できる。よって、複数の熱利用部における熱の利用状況に応じて、高温系統又は低温系統から還水系統への熱源水の流入が適切に現出される。
本発明の第1特徴構成は、複数の熱利用部を備えた熱利用システムにおいて、
前記複数の熱利用部の夫々に高温の熱源水を供給自在な高温系統と、
前記複数の熱利用部の夫々に低温の熱源水を供給自在な低温系統とが備えられ、
前記複数の熱利用部の夫々は、前記高温系統の熱源水を利用して、利用後の熱源水を前記低温系統に供給する高温利用状態と、前記低温系統の熱源水を利用して、利用後の熱源水を前記高温系統に供給する低温利用状態とに切換自在に構成され、
前記高温系統側から流入する熱源水を前記低温系統側に還水し、前記低温系統側から流入する熱源水を前記高温系統側に還水する還水系統と、
前記還水系統にて前記低温系統側に還水される熱源水を冷却する冷却作動、及び、前記還水系統にて前記高温系統側に還水される熱源水を加熱する加熱作動を実行可能な熱源部とが備えられ、
前記還水系統の熱源水の流通方向の上流側部位には、前記高温系統の一端側部位と前記低温系統の一端側部位とが合流する状態で接続され、前記高温系統又は前記低温系統から熱源水が還水系統に流入するように構成され、
前記還水系統の熱源水の流通方向の下流側部位は、前記高温系統の他端側部位と前記低温系統の他端側部位とに分岐する状態で接続され、前記還水系統から熱源水が前記低温系統又は前記高温系統に流入するように構成され、
前記高温系統の一端側部位には、前記還水系統から前記高温系統への熱源水の逆流を防止する高温側第1逆止弁が備えられ、前記高温系統の他端側部位には、前記高温系統から前記還水系統及び前記低温系統への熱源水の逆流を防止する高温側第2逆止弁が備えられ、
前記低温系統の一端側部位には、前記還水系統から前記低温系統への熱源水の逆流を防止する低温側第1逆止弁が備えられ、前記低温系統の他端側部位には、前記低温系統から前記還水系統及び前記高温系統への熱源水の逆流を防止する低温側第2逆止弁が備えられている点にある。
本発明の第2特徴構成は、前記複数の熱利用部の夫々には、前記高温系統又は前記低温系統から熱利用部に供給する熱源水の流量を調整する流量調整ポンプが備えられ、
前記還水系統の下流側部位には、前記還水系統にて熱源水を流通させるとともに、前記還水系統を流通した熱源水を前記高温系統又は前記低温系統に供給する熱源水ポンプが備えられている点にある。
本発明の第3特徴構成は、前記高温系統から前記還水系統への熱源水の流入状態、及び、前記低温系統から前記還水系統への熱源水の流入状態を検出する熱源水流入状態検出部と、その熱源水流入状態検出部の検出情報に基づいて、前記熱源部の作動状態を制御する制御部とが備えられ、
前記熱源水流入状態検出部として、前記高温系統の一端側部位において前記高温側第1逆止弁の下流側に配設されて、前記高温系統から前記還水系統への熱源水の流入状態を検出する高温側流入状態検出部と、前記低温系統の一端側部位において前記低温側第1逆止弁の下流側に配設されて、前記低温系統から前記還水系統への熱源水の流入状態を検出する低温側流入状態検出部とが備えられている点にある。
本発明の第4特徴構成は、前記熱源部における熱源として、未利用エネルギーを用いる未利用エネルギー熱源と補助熱源とが備えられ、前記還水系統にて還水される熱源水の温度を検出する熱源水温度検出部が備えられ、前記制御部は、前記熱源水温度検出部の検出情報に基づいて、前記未利用エネルギー熱源を前記補助熱源よりも優先して利用する形態で、前記熱源部の作動状態を制御する点にある。
本発明の第5特徴構成は、前記熱源部は、熱源から循環供給される熱搬送体と熱源水とを熱交換させる熱源用熱交換部を備え、前記還水系統を流通した熱源水を前記高温系統又は前記低温系統に供給する熱源水ポンプが備えられ、前記還水系統の下流側部位には、熱源水の流通方向で、前記熱源用熱交換部、前記熱源水ポンプの順に備えられている点にある。
本発明の第6特徴構成は、前記複数の熱利用部において冷房負荷と暖房負荷とが混在して冷房負荷が暖房負荷よりも大きい場合には、冷却用設定温度に熱源水を冷却するように前記熱源部を冷却作動させ、前記複数の熱利用部において冷房負荷と暖房負荷とが混在して暖房負荷が冷房負荷よりも大きい場合には、加熱用設定温度に熱源水を加熱するように前記熱源部を加熱作動させる温度制御部が備えられている点にある。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る熱利用システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図5は、熱利用システムの全体概略構成を示しており、熱源水や熱搬送体が流通する部位が異なるだけである。
【0030】
まずは、
図1に基づいて熱利用システムの全体構成を説明する。
この熱利用システムは、複数の熱利用部3と、複数の熱利用部3の夫々に高温の熱源水(加熱用設定温度の熱源水)を供給自在な高温系統1と、複数の熱利用部3の夫々に低温の熱源水(冷却用設定温度の熱源水)を供給自在な低温系統2と、高温系統1及び低温系統2の一方側から流入する熱源水を他方側に還水する還水系統4と、高温系統1及び低温系統2の熱源水を温調自在な熱源部5とを備えている。
【0031】
熱利用部3は、例えば、建物に設置される空調装置にて構成されており、1つの空調装置を熱利用部3として構成したり、建物全体又はある領域における複数の空調装置を熱利用部3として構成することができる。高温系統1には、複数の熱利用部3が並列的に接続され、高温系統1の熱源水を全ての熱利用部3に対して供給自在に構成されている。同様に、低温系統2には、複数の熱利用部3が並列的に接続され、低温系統2の熱源水を全ての熱利用部3に対して供給自在に構成されている。
【0032】
複数の熱利用部3の夫々は、高温系統1の熱源水を高温系統1から取り込んで熱利用し、利用後の熱源水を低温系統2に供給する高温利用状態と、低温系統2の熱源水を低温系統2から取り込んで熱利用し、利用後の熱源水を高温系統1に供給する低温利用状態とに切換自在に構成されている。例えば、熱利用部3は、高温利用状態において、高温系統1の熱源水を温熱源として利用する暖房運転を行い、低温利用状態において、低温系統2の熱源水を冷熱源として利用する冷房運転を行う。
【0033】
複数の熱利用部3の夫々において、高温系統1及び低温系統2の系統からの熱源水を熱利用部3に供給する往路31と、熱利用部3にて熱利用後の熱源水を高温系統1及び低温系統2の系統に戻す復路32と、高温系統1及び低温系統2の系統に対する往路31及び復路32の接続状態を切り換える熱利用側切換弁33と、熱利用部3に供給する熱源水の流量を調整する流量調整ポンプ34(流量調整部に相当する)とが備えられている。
【0034】
熱利用側切換弁33は、往路31を高温系統1に接続し且つ復路32を低温系統2に接続する高温供給状態と、往路31を低温系統2に接続し且つ復路32を高温系統1に接続する低温供給状態とに切換自在に構成されている。そして、熱利用部3を高温利用状態に切り換える場合には、熱利用側切換弁33を高温供給状態に切り換え、熱利用部3を低温利用状態に切り換える場合には、熱利用側切換弁33を低温供給状態に切り換えている。
【0035】
流量調整ポンプ34は、その出力を調整することで、熱利用部3に供給する熱源水の流量を調整自在に構成されている。そして、流量調整ポンプ34は、熱利用部3での熱負荷の大きさに応じて、熱利用部3に供給する熱源水の流量を調整するように構成されている。流量調整ポンプ34は、熱利用部3の熱負荷が大きい程、熱利用部3に供給する熱源水の流量を増大させている。
【0036】
還水系統4は、高温系統1側から流入する熱源水を低温系統2側に還水し、低温系統2側から流入する熱源水を高温系統1側に還水するように構成されている。還水系統4の熱源水の流通方向の上流側部位4aには、高温系統1の一端側部位1aと低温系統2の一端側部位2aとが合流する状態で接続され、高温系統1又は低温系統2から熱源水が還水系統4に流入するように構成されている。還水系統4の熱源水の流通方向の下流側部位4bは、高温系統1の他端側部位1bと低温系統2の他端側部位2bとに分岐する状態で接続され、還水系統4から熱源水が低温系統2又は高温系統1に流入するように構成されている。
【0037】
熱源部5は、還水系統4にて低温系統2側に還水される熱源水を冷却する冷却作動、及び、還水系統4にて高温系統1側に還水される熱源水を加熱する加熱作動を実行可能に構成されている。
【0038】
熱源部5は、熱源として、未利用エネルギーを用いる未利用エネルギー熱源51と補助熱源52とが備えられている。未利用エネルギーは、例えば、地中熱、河川水熱、下水熱、温度の低い外気から冷却塔等により生成される冷熱等、これまで使用されていなかった各種の熱を適用することができる。ちなみに、未利用エネルギー熱源51として、複数の熱源が存在する場合には、複数の熱源のうち、どの熱源を利用するかを選択自在に構成されており、例えば、熱搬送体をどのような温度に加熱又は冷却させるかによって、どの熱源を利用するかを選択できる。
【0039】
熱源部5は、熱源51、52から循環供給される熱搬送体と熱源水とを熱交換させる熱源用熱交換部53と、未利用エネルギー熱源51から熱源用熱交換部53に熱搬送体を循環供給させる未利用側循環供給路54と、補助熱源52から熱源用熱交換部53に熱搬送体を循環供給させる補助側循環供給路55とを備えている。
【0040】
未利用エネルギー熱源51及び補助熱源52は、冷却作動において、低温の熱搬送体にて冷熱を熱源用熱交換部53に供給する冷熱供給状態に切り換えられ、加熱作動において、高温の熱搬送体にて温熱を熱源用熱交換部53に供給する温熱供給状態に切り換えられる。
【0041】
熱源用熱交換部53は、還水系統4における下流側部位4bに備えられ、熱源51、52から循環供給される熱搬送体と還水系統4を流通する熱源水とを熱交換させるように構成されている。
【0042】
未利用側循環供給路54には、未利用エネルギー熱源51から熱源用熱交換部53に循環供給する熱搬送体の流量を調整する未利用側流量調整ポンプ58(熱搬送体流量調整部に相当する)が備えられている。補助側循環供給路55には、補助熱源52から熱源用熱交換部53に循環供給する熱搬送体の流量を調整する補助側流量調整ポンプ59(熱搬送体流量調整部に相当する)が備えられている。
【0043】
未利用側循環供給路54と補助側循環供給路55とは、熱源用熱交換部53に接続される流路部位が兼用の接続流路部位54a、55aにて構成されている。そして、兼用の接続流路部位54a、55aの端部には、第1三方弁56、第2三方弁57が備えられている。この第1三方弁56及び第2三方弁57によって、未利用側循環供給路54にて未利用エネルギー熱源51から熱源用熱交換部53に熱搬送体を循環供給させる未利用側供給状態と、補助側循環供給路55にて補助熱源52から熱源用熱交換部53に熱搬送体を循環供給させる補助側供給状態と、未利用側循環供給路54にて未利用エネルギー熱源51から熱源用熱交換部53に熱搬送体を循環供給させるとともに、補助側循環供給路55にて補助熱源52から熱源用熱交換部53に熱搬送体を循環供給させる併用利用状態とに切換自在に構成されている。
【0044】
高温系統1の一端側部位1a(熱源水が流通するときの下流側部位)には、熱源水の流通方向の順に、高温側第1逆止弁9(高温側逆流防止部に相当する)、高温側フロースイッチ7(熱源水流入状態検出部に相当する)が備えられている。高温側第1逆止弁9は、高温系統1の一端側部位1aにおいて、還水系統4から高温系統1への熱源水の逆流を防止するように構成されている。高温側フロースイッチ7は、高温系統1の一端側部位1aにおいて還水系統4への熱源水の流通があるか否かを検出することで、高温系統1から還水系統4への熱源水の流入状態を検出するように構成されている。
【0045】
低温系統2の一端側部位2a(熱源水が流通するときの下流側部位)にも、熱源水の流通方向の順に、低温側第1逆止弁10(低温側逆流防止部に相当する)、低温側フロースイッチ8(熱源水流入状態検出部に相当する)が備えられている。低温側第1逆止弁10は、低温系統2の一端側部位2aにおいて、還水系統4から低温系統2への熱源水の逆流を防止するように構成されている。低温側フロースイッチ8は、低温系統2の一端側部位2aにおいて還水系統4への熱源水の流通があるか否かを検出することで、低温系統2から還水系統4への熱源水の流入状態を検出するように構成されている。
【0046】
高温系統1の他端側部位1b(熱源水が流通するときの上流側部位)には、高温側第2逆止弁11が備えられ、低温系統2の他端側部位2b(熱源水が流通するときの上流側部位)には、低温側第2逆止弁12が備えられている。高温側第2逆止弁11は、高温系統1の他端側部位1bにおいて、高温系統1から還水系統4や低温系統2への熱源水の逆流を防止するように構成されている。低温側第2逆止弁12は、低温系統2の他端側部位2bにおいて、低温系統2から還水系統4や高温系統1への熱源水の逆流を防止するように構成されている。
【0047】
還水系統4の下流側部位4bには、熱源水の流通方向の順に、熱源水温度検出部13、熱源用熱交換部53、熱源水ポンプ6が備えられている。熱源水温度検出部13は、還水系統4にて熱源部5の熱源用熱交換部53に供給する熱源水の温度を検出するように構成されている。熱源水ポンプ6は、その作動により、還水系統4にて熱源水を流通させるとともに、還水系統4を流通した熱源水を高温系統1又は低温系統2に供給するように構成されている。これにより、還水系統4における熱源水の流通、及び、還水系統4から高温系統1又は低温系統2への熱源水の供給について、その圧力損失(搬送能力)を熱源水ポンプ6が負担することができる。よって、流量調整ポンプ34は、高温系統1又は低温系統2から熱利用部3まで熱源水を取り込み、熱利用部3から低温系統2又は高温系統1に戻すだけの圧力損失(搬送能力)を負担すればよく、比較的小型のポンプを用いることができる。
【0048】
以下、熱利用システムの運転形態について説明する。
熱利用システムには、熱源部5等の作動状態を制御する制御部14が備えられているとともに、熱源部5を加熱作動及び冷却作動させる際の熱源水の温調温度を調整自在な温度制御部15が備えられている。
【0049】
複数の熱利用部3の夫々は、暖房要求があると高温利用状態に切り換えて暖房負荷を賄うように運転し、冷房要求があると低温利用状態に切り換えて冷房負荷を賄うように運転している。制御部14は、複数の熱利用部3において暖房負荷と冷房負荷のどちらが大きいかやその熱負荷の大きさ等、複数の熱利用部3の全体での熱の利用状況がどのような状況となっているかを把握して、熱源部5の作動状態を制御している。熱の利用状況が異なる
図1〜
図5に基づいて説明する。
【0050】
夏期及び冬期を除く、中間期等では、ある箇所では暖房要求があり、別の箇所では冷房要求があるように、暖房要求と冷房要求とが混在している場合がある。まずは、暖房要求と冷房要求とが混在している場合について、
図1〜
図3に基づいて説明する。
【0051】
高温利用状態の熱利用部3では、流量調整ポンプ34を作動させて、熱利用側切換弁33を高温供給状態に切り換え、高温系統1の熱源水を取り込んで熱利用し、利用後の熱源水を低温系統2に供給する。このとき、流量調整ポンプ34は、その熱利用部3の熱負荷が大きい程、その熱利用部3に供給する熱源水の流量を増大させる形態で、熱利用部3での熱負荷の大きさに応じて、熱利用部3に供給する熱源水の流量を調整している。
【0052】
逆に、低温利用状態の熱利用部3では、流量調整ポンプ34を作動させて、熱利用側切換弁33を低温供給状態に切り換え、低温系統2の熱源水を取り込んで熱利用し、利用後の熱源水を高温系統1に供給する。このとき、流量調整ポンプ34は、その熱利用部3の熱負荷が大きい程、その熱利用部3に供給する熱源水の流量を増大させる形態で、熱利用部3での熱負荷の大きさに応じて、熱利用部3に供給する熱源水の流量を調整している。
【0053】
図1では、低温利用状態の熱利用部3(図中一番上方側に位置する熱利用部3と下方側に位置する2つの熱利用部3との合計3つの熱利用部3)と高温利用状態の熱利用部3(図中上方側から2番目に位置する1つの熱利用部3)とが混在して、冷房負荷が暖房負荷よりも大きい場合を示している。
【0054】
この場合には、冷房負荷が暖房負荷よりも大きいので、低温系統2から低温利用状態の熱利用部3に取り込まれて高温系統1に供給される熱源水の量が、高温系統1から高温利用状態の熱利用部3に取り込まれて低温系統2に供給される熱源水の量よりも多くなる。これにより、高温系統1の熱源水の量が増加し、低温系統2の熱源水の量が減少するので、高温系統1から還水系統4に熱源水が流入し、その流入した熱源水が還水系統4を流通した後、低温系統2に流入する。そこで、高温側フロースイッチ7が、高温系統1から還水系統4への熱源水の流入を検出すると、制御部14は、熱源51、52を冷熱供給状態に切り換えて、熱源部5を冷却作動させる。
【0055】
制御部14は、熱源部5を冷却作動させるに当たり、熱源水温度検出部13にて検出する熱源水の温度に基づいて、未利用エネルギー熱源51を補助熱源52よりも優先して利用する形態で、熱源部5の作動状態を制御する。
図1では、未利用エネルギー熱源51を利用して、熱源部5を冷却作動させた場合を示している。
【0056】
未利用エネルギー熱源51では、各種の条件によって、その熱源の温度がどのような温度となっているかが変化する場合があることから、温度検出部等を用いて、熱源の温度等の熱情報が管理されている。そこで、制御部14は、未利用エネルギー熱源51の熱情報を取得し、その熱情報と熱源水温度検出部13にて検出する熱源水の温度とを比較して、未利用エネルギー熱源51を利用できるか否かを判別している。
【0057】
制御部14は、例えば、未利用エネルギー熱源51の温度が熱源水温度検出部13にて検出する熱源水の温度未満であれば、未利用エネルギー熱源51を利用できると判別して、第1三方弁56及び第2三方弁57により未利用側供給状態に切り換える。この未利用側供給状態では、未利用側流量調整ポンプ58を作動させ、未利用側循環供給路54にて未利用エネルギー熱源51から熱源用熱交換部53に熱搬送体を循環供給させて、熱源用熱交換部53において未利用エネルギー熱源51の冷熱を有する熱搬送体にて熱源水を冷却する。
【0058】
また、制御部14は、例えば、未利用エネルギー熱源51の温度が熱源水温度検出部13にて検出する熱源水の温度以上であれば、未利用エネルギー熱源51を利用できないと判別して、第1三方弁56及び第2三方弁57により補助側供給状態に切り換える。この補助側供給状態では、補助側流量調整ポンプ59を作動させ、補助側循環供給路55にて補助熱源52から熱源用熱交換部53に熱搬送体を循環供給させて、熱源用熱交換部53において補助熱源52の冷熱を有する熱搬送体にて熱源水を冷却する。
【0059】
制御部14は、高温側フロースイッチ7にて高温系統1から還水系統4への熱源水の流入を検出した当初だけでなく、その後、設定周期が経過するごとに、未利用エネルギー熱源51の熱情報と熱源水温度検出部13にて検出する熱源水の温度とを比較して、未利用エネルギー熱源51を利用できるか否かを判別する処理を繰り返し行うこともできる。この繰り返しによって、補助熱源52を利用している状態のときに、未利用エネルギー熱源51を利用できる状態に変化すると、その状態変化に応じて、未利用エネルギー熱源51を利用する状態に切り換えることができる。
【0060】
上述の如く、未利用エネルギー熱源51のみを利用する単独利用状態と補助熱源52のみを利用する単独利用状態とに切り換えるものに限らず、例えば、未利用エネルギー熱源51を利用できる場合に、未利用エネルギー熱源51と補助熱源52との両者を利用する併用利用状態とすることもできる。この場合には、制御部14が、未利用側流量調整ポンプ58及び補助側流量調整ポンプ59を制御して、未利用エネルギー熱源51から熱源用熱交換部53に循環供給する熱搬送体の流量を、補助熱源52から熱源用熱交換部53に循環供給する熱搬送体の流量よりも多くすることで、未利用エネルギー熱源51を補助熱源52よりも優先して利用できる。
【0061】
ここで、図示は省略するが、還水系統4における熱源水の流量を検出する熱源水流量検出部を備えることで、制御部14は、熱源部5を冷却作動させるに当たり、熱源水流量検出部にて検出する熱源水の流量に基づいて、熱源51、52から熱源用熱交換部53に循環供給する熱搬送体の流量を調整するように未利用側流量調整ポンプ49及び補助側流量調整ポンプ50を制御することができる。
【0062】
熱源水流量検出部にて検出する熱源水の流量が多くなる程、熱源用熱交換部53に流通する熱源水も多くなるので、未利用エネルギー熱源51を利用している場合には、制御部14が、未利用側流量調整ポンプ58の出力を増大させて、未利用エネルギー熱源51から熱源用熱交換部53に循環供給する熱搬送体の流量を増加させる。補助熱源52を利用している場合には、制御部14が、補助側流量調整ポンプ59の出力を増大させて、補助熱源52から熱源用熱交換部53に循環供給する熱搬送体の流量を増加させる。このように、熱源用熱交換部53には、流通する熱源水の流量に対して、熱交換するのに十分な流量の熱搬送体を過不足なく供給でき、熱源水と熱搬送体との熱交換を適切に行える。
【0063】
また、温度制御部15が、冷却用設定温度に熱源水を冷却するように熱源部5を冷却作動させる。このとき、冷却用設定温度は、熱利用部3にて冷熱を熱利用するに当たり、効率の向上を図れる温度に設定することができる。温度制御部15は、例えば、未利用エネルギー熱源51及び補助熱源52において熱搬送体に与える冷熱量等を調整して、未利用エネルギー熱源51及び補助熱源52から熱源用熱交換部53に循環供給する熱搬送体の温度を冷却用設定温度以下とすることで、熱源用熱交換部53において熱源水を冷却用設定温度に冷却している。
【0064】
図2では、高温利用状態の熱利用部3(図中一番上方側に位置する熱利用部3と下方側に位置する2つの熱利用部3との合計3つの熱利用部3)と低温利用状態の熱利用部3(図中上から2番目に位置する1つの熱利用部3)とが混在して、暖房負荷が冷房負荷よりも大きい場合を示している。このときの熱利用部3の動作については上述の動作と同様である。
【0065】
この場合には、暖房負荷が冷房負荷よりも大きいので、高温系統1から高温利用状態の熱利用部3に取り込まれて低温系統2に供給される熱源水の量が、低温系統2から低温利用状態の熱利用部3に取り込まれて高温系統1に供給される熱源水の量よりも多くなる。これにより、低温系統2の熱源水の量が増加し、高温系統1の熱源水の量が減少するので、低温系統2から還水系統4に熱源水が流入し、その流入した熱源水が還水系統4を流通した後、高温系統1に流入する。そこで、低温側フロースイッチ8が、低温系統2から還水系統4への熱源水の流入を検出すると、制御部14は、熱源51、52を温熱供給状態に切り換えて、熱源部5を加熱作動させる。
【0066】
制御部14は、冷却作動と同様に、熱源部5を加熱作動させるに当たり、熱源水温度検出部13にて検出する熱源水の温度に基づいて、未利用エネルギー熱源51を補助熱源52よりも優先して利用する形態で、熱源部5の作動状態を制御するとともに、熱源水流量検出部にて検出する熱源水の流量に基づいて、熱源51、52から熱源用熱交換部53に循環供給する熱搬送体の流量を調整するように未利用側流量調整ポンプ58及び補助側流量調整ポンプ59を制御している。
図2では、未利用エネルギー熱源51を利用して、熱源部5を加熱作動させた場合を示している。
【0067】
また、温度制御部15は、加熱用設定温度に熱源水を加熱するように熱源部5を加熱作動させる。このとき、加熱用設定温度は、熱利用部3にて温熱を熱利用するに当たり、効率の向上を図れる温度に設定することができる。温度制御部15は、例えば、未利用エネルギー熱源51及び補助熱源52において熱搬送体に与える温熱量等を調整して、未利用エネルギー熱源51及び補助熱源52から熱源用熱交換部53に循環供給する熱搬送体の温度を加熱用設定温度以上とすることで、熱源用熱交換部53において熱源水を加熱用設定温度に加熱している。
【0068】
図3では、高温利用状態の熱利用部3(図中上方側から2番目と一番下方側に位置する2つの熱利用部3)と低温利用状態の熱利用部3(図中一番上方側と上方側から3番目に位置する2つの熱利用部3)とが混在して、冷房負荷と暖房負荷とが同じ又は略同じ場合を示している。このときの熱利用部3の動作については上述の動作と同様である。
【0069】
この場合には、冷房負荷と暖房負荷とが同じ又は略同じであるので、低温系統2から低温利用状態の熱利用部3に取り込まれて高温系統1に供給される熱源水の量と、高温系統1から高温利用状態の熱利用部3に取り込まれて低温系統2に供給される熱源水の量とが同じ又は略同じになる。これにより、高温系統1及び低温系統2の両系統とも熱源水の量が変化しないので、高温系統1及び低温系統2のどちらの系統からも還水系統4に熱源水が流入することが無い状態となる。そこで、高温側フロースイッチ7及び低温側フロースイッチ8の両方により、高温系統1及び低温系統2のどちらの系統からも還水系統4への熱源水の流入が無い状態を検出すると、制御部14は、熱源部5を作動停止させたままとする。よって、熱源部5を作動させないことから、消費エネルギーの低減を図ることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0070】
この場合には、熱源水の流れとして、高温系統1から高温利用状態の熱利用部3に熱源水が取り込まれ、利用後の熱源水が低温系統2に供給され、その利用後の熱源水が低温系統2から低温利用状態の熱利用部3に取り込まれるだけの流れとなる。つまり、熱源水は、還水系統4に流入することなく、高温系統1、高温利用状態の熱利用部3、低温系統2、低温利用状態の熱利用部3、高温系統1の順に循環される。
【0071】
例えば、夏期には、空調要求としては冷房要求だけとなる。
図4では、高温利用状態の熱利用部3が無く、低温利用状態の熱利用部3のみが存在する場合を示している。このときの低温利用状態の熱利用部3の動作については上述の動作と同様である。
【0072】
この場合には、低温利用状態の熱利用部3と高温利用状態の熱利用部3とが混在して冷房負荷が暖房負荷よりも大きい場合を示す
図1と同様に、高温系統1から還水系統4に熱源水が流入し、その流入した熱源水が還水系統4を流通した後、低温系統2に流入する。そこで、高温側フロースイッチ7が、高温系統1から還水系統4への熱源水の流入を検出すると、制御部14は、熱源51、52を冷熱供給状態に切り換えて、熱源部5を冷却作動させる。熱源部5の冷却作動については、
図1における動作と同様である。
【0073】
例えば、冬期には、空調要求としては暖房要求だけとなる場合がある。
図5では、低温利用状態の熱利用部3が無く、高温利用状態の熱利用部3のみが存在する場合を示している。このときの高温利用状態の熱利用部3の動作については上述の動作と同様である。
【0074】
この場合には、低温利用状態の熱利用部3と高温利用状態の熱利用部3とが混在して暖房負荷が冷房負荷よりも大きい場合を示す
図2と同様に、低温系統2から還水系統4に熱源水が流入し、その流入した熱源水が還水系統4を流通した後、高温系統1に流入する。そこで、低温側フロースイッチ8が、低温系統2から還水系統4への熱源水の流入を検出すると、制御部14は、熱源51、52を温熱供給状態に切り換えて、熱源部5を加熱作動させる。熱源部5の加熱作動については、
図2における動作と同様である。
【0075】
図1〜
図5に示すように、複数の熱利用部3の全体において、暖房負荷と冷房負荷とのどちらかが大きい場合には、高温系統1及び低温系統2の一方側のみから還水系統4への熱源水の流入が生じ、暖房負荷と冷房負荷とが同じ又は略同じ場合には、高温系統1及び低温系統2のいずれからも還水系統4へ熱源水が流入しない。よって、高温系統1の熱源水と低温系統2の熱源水が混合することなく、高温系統1の熱源水と低温系統2の熱源水とが混合して温度が変化するミキシングロスを抑制でき、省エネルギー化を図ることができる。しかも、高温側フロースイッチ7及び低温側フロースイッチ8を備えるという簡易な構成により、複数の熱利用部3における暖房負荷と冷房負荷との負荷状況を把握でき、無駄に熱源部5を作動させることもなく、省エネルギー化を図りながら、熱源部5の作動状態を適切に制御できる。
【0076】
また、熱源部5を冷却作動させる場合に、温度制御部15が、熱源水が冷却用設定温度になるように熱源部5の作動状態を制御する。熱源部5を加熱作動させる場合に、温度制御部15が、熱源水が加熱用設定温度になるように熱源部5の作動状態を制御する。これにより、熱源部5の冷却作動によって、熱源水を冷却用設定温度に冷却させると、低温系統2の熱源水の温度を冷却用設定温度に調整することができ、熱源部5の加熱作動によって、熱源水を加熱用設定温度に加熱させると、高温系統1の熱源水の温度を加熱用設定温度に調整することができる。
【0077】
図1に示すように、暖房負荷と冷房負荷とが混合して冷房負荷が暖房負荷よりも大きい場合には、多数の低温利用状態の熱利用部3に対して冷却用設定温度の熱源水を供給することができる。よって、多数の低温利用状態の熱利用部3において効率が向上するので、システムの全体としても、効率の向上を図ることができる。また、
図4に示すように、全ての熱利用部3が低温利用状態となる場合は、全ての熱利用部3において効率が向上するので、システムの全体として、効率の向上を図ることができる。
【0078】
図2に示すように、暖房負荷と冷房負荷とが混合して暖房負荷が冷房負荷よりも大きい場合には、多数の高温利用状態の熱利用部3に対して加熱用設定温度の熱源水を供給することができる。よって、多数の高温利用状態の熱利用部3において効率が向上するので、システムの全体としても、効率の向上を図ることができる。また、
図5に示すように、全ての熱利用部3が高温利用状態となる場合は、全ての熱利用部3において効率が向上するので、システムの全体として、効率の向上を図ることができる。
【0079】
そして、加熱用設定温度及び冷却用設定温度をどのような温度に設定するかは適宜変更が可能である。そして、加熱用設定温度及び冷却用設定温度は、常時、一定の温度に設定しておく必要はない。例えば、中間期には、加熱用設定温度を第1温度、冷却用設定温度を第2温度に設定し、冬期には、加熱用設定温度を第1温度よりも高温の温度に設定し、夏期には、冷却用設定温度を第2温度よりも低温の温度に設定することができる。このように、季節や複数の熱利用部3の全体における熱の利用状況等に応じて、変更設定することもできる。
【0080】
また、例えば、未利用エネルギー熱源51を利用するときの加熱用設定温度を第3温度とし、補助熱源52を利用するときの加熱用設定温度を第3温度よりも高温の温度に設定することもできる。このように、未利用エネルギー熱源51を利用するときの加熱用設定温度と、補助熱源52を利用するときの加熱用設定温度とを異なる温度に設定することもできる。そして、未利用エネルギー熱源51を利用するときの冷却用設定温度と補助熱源52を利用するときの冷却用設定温度とについても、加熱用設定温度と同様に、必ずしも同じ温度に設定する必要はなく、未利用エネルギー熱源51を利用するときよりも補助熱源52を利用するときの方が低温の温度になるように設定する等、異なる温度を設定することもできる。
【0081】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、熱源部5を冷却作動及び加熱作動させる場合に、常時、未利用エネルギー熱源51を利用する状態と補助熱源52を利用する状態とに切り換えているが、例えば、夏季や冬季には、補助熱源52のみを利用する状態とする等、季節や複数の熱利用部3における熱の利用状況等によって、未利用エネルギー熱源51を利用する状態と補助熱源52を利用する状態とに切り換えるときと、補助熱源52のみを利用するときとに場合分けすることもできる。
【0082】
(2)上記実施形態において、熱利用部3の数については、4つに限るものではなく、適宜変更が可能である。
【0083】
(3)上記実施形態では、熱源用熱交換部53を備えた例を示したが、この熱源用熱交換部53を備えずに、例えば、未利用エネルギー熱源51や補助熱源52にて熱源水を直接加熱又は冷却することもできる。
【0084】
(4)上記実施形態では、熱源水ポンプ6を備えた例を示したが、熱源水ポンプ6を備えずに実施することもできる。この場合には、流量調整ポンプ34にて、還水系統4における熱源水の流通、及び、還水系統4から高温系統1又は低温系統2への熱源水の供給における圧力損失(搬送能力)を負担することができる。