特許第6663771号(P6663771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663771
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】自動操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20200302BHJP
【FI】
   B62D6/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-66033(P2016-66033)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-177943(P2017-177943A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】秋山 哲
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−234111(JP,A)
【文献】 特開2013−112188(JP,A)
【文献】 特開2004−256076(JP,A)
【文献】 特開2002−046640(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0255727(US,A1)
【文献】 特開2015−020604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によるステアリングホイールへの入力トルクを検出するトルクセンサ、
電動パワーステアリング装置、
車両が走行中の道路の形状を認識し、当該道路の形状に沿って前記車両が走行するために必要な舵角の情報である指示舵角を算出して出力する自動操舵指示装置、および
前記指示舵角に応じて前記電動パワーステアリング装置が備えるモータに舵角制御電流を出力し、実舵角を前記指示舵角に追従させるフィードバック制御を実行する操舵制御部、
を備える自動操舵装置であって、
前記操舵制御部は、前記フィードバック制御の実行時において、前記入力トルクが所定の第1閾値以上となったことを検出した後であって、前記入力トルクが所定の第1閾値よりも低い所定の第2閾値未満となったことを検出するまでの期間中において、前記フィードバック制御の実行を一時的に停止し、かつ前記舵角制御電流を前記入力トルクが所定の第1閾値以上となったことを検出した時点の値に固定する
ことを特徴とする自動操舵装置。
【請求項2】
前記フィードバック制御はPID制御であって、
前記操舵制御部は、前記フィードバック制御の実行時において、前記入力トルクが前記第1閾値よりも低い所定の第3閾値以上となったことを検出した場合に、前記PID制御における積分ゲインの値を、前記入力トルクが前記第3閾値以上となったことを検出した時点の値よりも低い所定の値に固定する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動操舵装置。
【請求項3】
前記操舵制御部は、前記フィードバック制御の実行時において、前記入力トルクが前記第1閾値以上となったことを検出した場合に、前記電動パワーステアリング装置によるパワーアシスト動作のゲインを大きくする
ことを特徴とする請求項1または2に記載の自動操舵装置。
【請求項4】
前記操舵制御部は、前記フィードバック制御の実行時において、前記入力トルクが前記第3閾値以上となったことを検出した場合に、前記電動パワーステアリング装置によるパワーアシスト動作のゲインを大きくする
ことを特徴とする請求項2に記載の自動操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の自動操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2005−343184号公報に開示されているように、車両が走行中の道路形状等を認識して車両の操舵を自動的に行う自動操舵装置が知られている。また、車両の自動操舵装置において、特開2005−343184号公報に開示されているように、自動操舵の実行中における運転者によるステアリングホイールの操作(オーバーライド操作)の有無を判定し、オーバーライド操作が行われたと判定した場合には、自動操舵を停止して運転者の操作を優先する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−343184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動操舵装置による自動操舵の実行中に運転者がオーバーライド操作を行う場合、運転者は、自動操舵装置がオーバーライド操作の入力を判定するまでの間、一時的に自動操舵に反した操作力をステアリングホイールに入力する必要がある。そして、自動操舵装置がオーバーライド操作の入力を判定した後は、自動操舵が停止するため、運転者にとっては、ステアリングホイールの操作に対して感じていた反発力が突然消失し、それまで重く感じていたステアリングホイールの操作が急に軽くなったという違和感を受ける。
【0005】
本発明は前述した問題を解決するものであり、オーバーライド操作の実行時において運転者が受ける違和感を低減することのできる自動操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の自動操舵装置は、運転者によるステアリングホイールへの入力トルクを検出するトルクセンサ、電動パワーステアリング装置、車両が走行中の道路の形状を認識し、当該道路の形状に沿って前記車両が走行するために必要な舵角の情報である指示舵角を算出して前記電動パワーステアリング装置に出力する自動操舵指示装置、および前記指示舵角に応じて前記電動パワーステアリング装置が備えるモータに舵角制御電流を出力し、実舵角を前記指示舵角に追従させるフィードバック制御を実行する操舵制御部、を備える自動操舵装置であって、前記操舵制御部は、前記フィードバック制御の実行時において、前記入力トルクが所定の第1閾値以上となったことを検出した後であって、前記入力トルクが所定の第1閾値よりも低い所定の第2閾値未満となったことを検出するまでの期間中において、前記フィードバック制御の実行を一時的に停止し、かつ前記舵角制御電流を前記入力トルクが所定の第1閾値以上となったことを検出した時点の値に固定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、オーバーライド操作の実行時において運転者が受ける違和感を低減することのできる自動操舵装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】自動操舵装置の構成を示すブロック図である。
図2】電動パワーステアリング装置の制御を説明するためのブロック図である。
図3】電動パワーステアリング装置の制御を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0010】
図1に示す本実施形態の自動操舵装置1は、車両の自動運転動作時において操舵を行う装置である。自動操舵装置1は、車両の舵角を変更する機構を備える電動パワーステアリング装置(以下ではEPSと称する)10と、自動運転動作時においてEPS10に操舵の指示を与える自動操舵指示装置2と、を備える。
【0011】
車両の運転者の入力によるステアリングホイール9の回動は、EPS10が備える転舵機構部15を介して転舵輪20の転舵方向への回動に変換される。本実施形態では一例として、転舵機構部15は、ラック&ピニオン機構を有している。転舵機構部15のラック&ピニオン機構のピニオンギヤが設けられたピニオン軸15aは、ステアリングホイール9にユニバーサルジョイント等を介して連結されており、ピニオン軸15aはステアリングホイール9と共に回動する。
【0012】
EPS10は、電動アクチュエータであるモータ14を備え、運転者によるステアリングホイール9への入力に応じて、モータ14が出力するトルクをピニオン軸15aに加えることにより運転者がステアリングホイール9に加える操作力を軽減する、いわゆるパワーアシスト動作を行う。また、EPS10は、車両の自動運転動作時において、運転者によるステアリングホイール9への入力とは独立して、自動操舵指示装置2から出力される指示に応じて、モータ14によりピニオン軸15aを回動させて転舵輪20を転舵方向に回動させる。EPS10の機械的な構成については公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0013】
自動操舵指示装置2は、車両の周囲の外部環境を認識する外部環境認識装置3、車両が走行中の道路の形状を認識するナビゲーション装置4、および車両の走行速度、前後方向加速度、ヨーレート等の車両の挙動を検知する車両挙動検知装置5を備える。
【0014】
外部環境認識装置3は、車両の外部環境を認識するセンサーからの情報に基づいて車両前方の走行路の形状や、走行路上および走行路の周囲に存在する物体の存在を認識する。外部環境認識装置3は、例えば車両前方を視野内に収めるステレオカメラを備え、ステレオカメラによって撮像された画像に既知の画像処理等を施すことによって、車両前方の道路の形状や、進行方向に存在する物体の位置や動きを認識する。
【0015】
ナビゲーション装置4は、衛星測位システム、慣性航法装置および路車間通信の少なくとも一つを用いて車両の現在位置(緯度、経度)を検出する測位装置と、地図情報を記憶する地図情報記憶部と、を備える。地図情報には、道路の曲率、縦断面勾配、他の道路との交差の様子等の道路の形状を示す情報が含まれる。ナビゲーション装置4は、測位装置により検出された車両の現在位置と、地図情報記憶部が記憶している地図情報と、に基づいて、車両前方の道路の形状を認識する。
【0016】
自動操舵指示装置2は、外部環境認識装置3およびナビゲーション装置4により認識される道路の形状等の情報と、車両の現在の挙動の情報と、車両の運動モデルの情報と、に基づいて、車両を現在走行中である道路に沿って走行させるために必要となるピニオン軸8aの角度である指示舵角θcを算出し、EPS10に出力する。ステレオカメラ等の外部環境認識装置を用いた自動操舵指示装置は公知であるため、詳細な構成の説明を省略する。
【0017】
EPS10は、転舵機構部15、操舵制御部11、入力トルクセンサ12、ピニオン軸角度センサ13、およびモータ14を備える。転舵機構部15は、ピニオン軸15aを回動させる力を、転舵輪20を転舵方向に回動させる力に変換する機構を有する。本実施形態のようなラック&ピニオン機構を用いた転舵機構部は公知の技術である。
【0018】
操舵制御部11は、CPU、ROM、RAM、入出力装置等がバスに接続されたコンピュータより構成されており、EPS10の動作を所定のプログラムに基づいて制御する。
【0019】
入力トルクセンサ12は、運転者によりステアリングホイール9を介してピニオン軸15aに入力されたトルクである入力トルクTmを検出する。ピニオン軸角度センサ13は、ピニオン軸15aの回動の角度θを検出する。
【0020】
モータ14は、ピニオン軸15aを軸周りに回動するトルクであるモータ出力トルクToを出力する電動モータである。すなわち、ピニオン軸15aには、運転者からステアリングホイール9を介して入力される入力トルクTmと、モータ14から入力されるモータトルクToが入力される。
【0021】
図2は、EPS10の自動運転動作時における操舵制御のブロック図である。図2に示すように、EPS10には、自動操舵指示装置2により算出された指示舵角θcの情報が入力される。
【0022】
車両の自動運転動作時において、EPS10の操舵制御部11は、指示舵角θcを目標値として、モータ14に与える舵角制御電流Isを変化させることにより、制御量であるピニオン軸15aの角度θを指示舵角θcに追従させるフィードバック制御を実行する。
【0023】
本実施形態の操舵制御部11は、図3に示すように、フィードバック制御の方法として一般的なPID制御を用いて、舵角制御電流Isを算出するPID制御部11aを有する。PID制御部11aは、舵角制御および舵角速度制御について、それぞれの比例ゲインKp、微分ゲインKd、および積分ゲインKiの値を変化させることができる。
【0024】
また、EPS10の操舵制御部11は、入力トルクTmとピニオン軸角度θとが所定の関係となるように、モータ14に与えるアシスト電流Iaを算出し、運転者によるステアリングホイール9への入力を補助するパワーアシスト動作を実行する。操舵制御部11は、入力トルクTmからアシスト電流値Iaを算出する際のゲインであるパワーアシストゲインの値を変化させることができる。
【0025】
以上に説明したように、自動運転動作時において、モータ14に入力される指令電流Icは、舵角制御電流Isにアシスト電流Iaを加えた値となる。モータ14は、指令電流Icに応じたモータトルクToを出力する。
【0026】
運転者がステアリングホイール9に力を加えていない場合であれば、PID制御部11aが出力する舵角制御電流Isと、モータ14に入力される指令電流Icとは等しい。また、自動運転動作時において、運転者がステアリングホイール9に入力トルクTmを加えた場合、入力トルクTmおよびアシスト電流Iaは外乱としてEPS10に作用する。また、ピニオン軸15aには、路面に対する転舵輪20の移動に伴い発生する路面反力トルクTrも入力される。
【0027】
次に、以上に説明した構成を有する自動操舵装置1の自動運転動作時におけるオーバーライド判定処理の動作について説明する。
【0028】
オーバーライドとは、車両の自動運転動作中に、運転者がステアリングホイール9を操作することである。オーバーライドは、例えば運転者が自動運転動作の走行経路とは異なる経路で車両を走行させようとした場合に行われる。オーバーライド判定処理は、運転者によるステアリングホイール9の操作を検出した場合に、一時的に自動運転動作を停止して運転者による手動運転に切り替える処理である。
【0029】
概略的には、本実施形態の自動操舵装置1の操舵制御部11は、入力トルクセンサ12により検出する入力トルクTmが、所定の値である第1閾値Tth1以上となった場合に、運転者によるオーバーライド操作が行われたと判定する。また、操舵制御部11は、運転者によるオーバーライド操作が行われたと判定した後に、入力トルクセンサ12により検出する入力トルクTmが、第1の閾値Tth1よりも低い所定の値である第2閾値Tth2未満となった場合に、運転者によるオーバーライド操作が終了したと判定する。
【0030】
操舵制御部11は、運転者によるオーバーライド操作が行われていると判定している期間中は、自動操舵装置1による操舵のフィードバック制御を一時的に停止する。
【0031】
より詳細にオーバーライド判定処理では、操舵制御部11は、入力トルクTmが、第1閾値Tth1よりも低い第3閾値Tth3以上となった場合に、PID制御部11aにおける、舵角制御の積分ゲインKiaと、舵角速度制御の積分ゲインKivの値を、現在まで行ってきた自動運転動作において用いてきた値よりも低い所定の値に固定する。入力トルクTmが、第1閾値Tth1よりも低い第3閾値Tth3以上となった場合とは、運転者がオーバーライド操作を開始した直後の時点である。
【0032】
自動運転動作時に運転者が入力トルクTmを入力した場合、当該入力トルクTmが第1閾値Tth1以上となりオーバーライドが行われたと操舵制御部11が判定するまでは、入力トルクTmは自動操舵装置1による操舵のフィードバック制御に対する外乱となる。
【0033】
したがって、運転者がオーバーライド操作を開始した直後の、入力トルクTmが第3閾値Tth3以上かつ第1閾値Tth1未満である期間中は、操舵制御部11は、入力トルクTmを打ち消すトルクをモータ14に発生させるために、舵角制御電流Isの値を増加させる。
【0034】
本実施形態では、入力トルクTmが第1閾値Tth1未満ではあるが第3閾値Tth3以上となり増加し始めていることを検出した時点において、舵角制御の積分ゲインKiaと、舵角速度制御の積分ゲインKivの値を、それまで自動運転動作に用いてきた値よりも低い値に固定することにより、操舵制御部11が入力トルクTmの増加に応答して増加させる舵角制御電流の増加量を低減する。
【0035】
したがって、本実施形態の自動操舵装置1では、運転者がオーバーライド操作を開始した後であって、かつ入力トルクTmが第1閾値Tth1に到達するまでの期間において、運転者がステアリングホイール9から受ける反発力の増加速度を低減することができる。このため、本実施形態の自動操舵装置1では、オーバーライド操作時において運転者がステアリングホイール9から受ける反発力に起因する違和感を低減することができる。
【0036】
また、操舵制御部11は、入力トルクTmが、第1閾値Tth1以上となった場合に、舵角制御電流Isをその時点の値に固定し、自動操舵装置1による操舵のフィードバック制御を一時的に停止する。
【0037】
自動操舵装置1による操舵のフィードバック制御が一時的に停止されることにより、車両の操舵は運転者によるステアリングホイール9の操作のみに追従する。そしてこのとき、舵角制御電流Isは、入力トルクTmが第1閾値Tth1以上となったことを検出した時点の値に固定されている。
【0038】
前述のように、運転者がオーバーライド操作を行うために入力トルクTmを入力した場合、操舵制御部11は入力トルクTmを打ち消すトルクをモータ14に発生させるために、舵角制御電流Isの値を増加させる。本実施形態の自動操舵装置1は、このオーバーライド操作の入力トルクTmを打ち消すために増加させた舵角制御電流Isを、オーバーライド操作が入力されたと判定した後も維持する。
【0039】
このように、本実施形態の自動操舵装置1では、運転者によるオーバーライド操作が行われて操舵のフィードバック制御を停止した後も、オーバーライド操作に反発するトルクの発生を停止せずに維持する。したがって、本実施形態の自動操舵装置1では、オーバーライド操作時において、自動操舵装置1による操舵のフィードバック制御が停止することによって、運転者がステアリングホイール9から受ける反発力が瞬時に消失することに起因する違和感を低減することができる。
【0040】
前述のように操舵制御部11は、自動操舵装置1による操舵のフィードバック制御を一時的な停止を、入力トルクTmが所定の第2閾値Tth2未満となったことを検出するまで継続する。
【0041】
すなわち、操舵制御部11は、運転者によるオーバーライド操作が行われたと判定した後に、入力トルクTmが所定の第2閾値Tth2未満となった場合に、運転者によるオーバーライド操作が終了したと判定し、自動操舵装置1による操舵のフィードバック制御を再開する。
【0042】
自動操舵装置1による操舵のフィードバック制御の再開時には、操舵制御部11は、舵角制御電流Isの値と、舵角制御の積分ゲインKiaおよび舵角速度制御の積分ゲインKivの値の固定を解除する。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態の自動操舵装置1は、自動操舵のフィードバック制御の実行時において、入力トルクTmが所定の第1閾値Tth1以上となったことを検出した後であって、かつ入力トルクTmが所定の第1閾値Tth1よりも低い所定の第2閾値Tth2未満となったことを検出するまでの期間中において、フィードバック制御の実行を一時的に停止し、かつモータ14に出力する舵角制御電流Isを入力トルクTmが所定の第1閾値以上となったことを検出した時点の値に固定する。
【0044】
このような構成を有する本実施形態の自動操舵装置1によれば、運転者がオーバーライド操作を行った場合において、ステアリングホイール9の操作に対して感じていた反発力が突然消失し、それまで重く感じていたステアリングホイール9の操作が急に軽くなったという違和感を低減することができる。
【0045】
また、本実施形態の自動操舵装置1は、PID制御を用いて舵角の制御を行い、入力トルクTmが第1閾値Tth1よりも低い所定の第3閾値Tth以上となったことを検出した場合に、PID制御における積分ゲインの値を、入力トルクTmが第3閾値Tth3以上となったことを検出した時点の値よりも低い所定の値に固定する。
【0046】
このような構成を有する本実施形態の自動操舵装置1によれば、運転者がオーバーライド操作を行った場合において、ステアリングホイール9の操作に対して感じる反発力の増加量を低減することができる。
【0047】
なお、以上に説明した構成に加えて、本実施形態の操舵制御部11は、自動操舵装置1による操舵のフィードバック制御の実行時において、入力トルクTmが第1閾値Tth1以上または第3閾値Tth3以上となったことを検出した場合に、EPS10によるパワーアシスト動作のアシスト電流値Iaを算出するためのパワーアシストゲインを大きくする構成を有していてもよい。
【0048】
このように、自動操舵装置1において、運転者がオーバーライド操作を開始したことを検出した時点(Tm≧Tth3を検出した時点)で、パワーアシストゲインを、通常走行時の値より大きくすることにより、オーバーライド操作を行う場合に、ステアリングホイール9の動き始めに感じるカベ感の低減と、舵角制御電流Isが固定されることによる操作力の増加量の低減を実現することができる。
【0049】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う自動操舵装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 自動操舵装置、
2 自動操舵指示装置、
3 外部環境認識装置、
4 ナビゲーション装置、
5 車両挙動検知装置、
9 ステアリングホイール、
10 電動パワーステアリング装置(EPS)
11 操舵制御部、
11a PID制御部、
12 入力トルクセンサ、
13 ピニオン軸角度センサ、
14 モータ、
15 転舵機構部、
15a ピニオン軸、
20 転舵輪。
図1
図2
図3