特許第6663776号(P6663776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6663776ヒンジ構造及びそれを備えた移動式検査機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663776
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】ヒンジ構造及びそれを備えた移動式検査機
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/04 20060101AFI20200302BHJP
   G01M 3/02 20060101ALI20200302BHJP
   F16C 11/10 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   F16C11/04 F
   G01M3/02 B
   F16C11/10 C
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-72883(P2016-72883)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-180790(P2017-180790A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】舩橋 祐一
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−291961(JP,A)
【文献】 実開昭63−152546(JP,U)
【文献】 実公昭36−004707(JP,Y1)
【文献】 実開平01−063909(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/00−11/12
G01M 3/00− 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側ヒンジ部材に可動側ヒンジ部材を起伏揺動自在に連結してあるヒンジ機構と、前記可動側ヒンジ部材を前記固定側ヒンジ部材に対して揺動範囲の一端側において水平又は略水平姿勢となる収納位置と揺動範囲の他端側において傾斜姿勢となる特定使用位置とに選択的に係止保持する係止保持機構を設けてあるヒンジ構造であって、
前記係止保持機構を構成するに、前記固定側ヒンジ部材に、収納位置にある前記可動側ヒンジ部材に揺動方向から当接して当該可動側ヒンジ部材の起立揺動を阻止する第1係止部材と、前記特定使用位置にある前記可動側ヒンジ部材に揺動方向の両側から当接して当該可動側ヒンジ部材の揺動を阻止する第2係止部材とを設けるとともに、前記両ヒンジ部材の揺動連結部には、前記可動側ヒンジ部材の揺動半径方向外方側への移動により前記第1係止部材に対する第1係止解除位置及び前記第2係止部材に対する第2係止解除位置に前記可動側ヒンジ部材を離脱させる融通が設けられ、前記第1係止部材と前記第2係止部材の各々は、前記固定側ヒンジ部材の両側板に架設されたピン部材から構成されているヒンジ構造。
【請求項2】
前記係止保持機構には、前記第1係止部材に対する第1係止位置及び前記第2係止部材に対する第2係止位置に前記可動側ヒンジ部材を移動付勢する付勢部が設けられている請求項1記載のヒンジ構造。
【請求項3】
前記可動側ヒンジ部材には、前記特定使用位置にある前記可動側ヒンジ部材を収納位置側に揺動操作したとき、揺動前方側に位置する前記第2係止部材との当接に伴って前記可動側ヒンジ部材を前記第2係止解除位置に離脱移動させる第1ガイド部が形成されているとともに、前記第1係止部材に対する前記可動側ヒンジ部材の当接位置と前記第2係止部材に対する前記可動側ヒンジ部材の当接位置との間において前記特定使用位置に連続する揺動領域が、前記可動側ヒンジ部材を任意の使用位置に操作可能なフリーゾーンに構成されている請求項2記載のヒンジ構造。
【請求項4】
前記可動側ヒンジ部材には、前記第1係止部材と前記第2係止部材との間の揺動領域のうち、前記収納位置に連続する特定揺動領域において、前記第1係止部材との揺動半径方向からの当接に伴って前記付勢部の付勢力で前記可動側ヒンジ部材を前記第1係止部材に対する第1係止位置に復帰揺動させる第2ガイド部が形成されている請求項2又は3記載のヒンジ構造。
【請求項5】
前記融通は、前記固定側ヒンジ部材の両側板に架設された揺動支点軸が貫通する状態で前記可動側ヒンジ部材の両側板に形成された揺動半径方向に沿う長孔から構成され、前記付勢部は、前記揺動支点軸と前記可動側ヒンジ部材の両側板における前記揺動支点軸よりも揺動半径方向外方側に偏倚した部位とに亘って張設されたバネから構成されている請求項2〜4のいずれか1項に記載のヒンジ構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ構造の前記固定側ヒンジ部材が地表面側の検査対象空気を検査する検査機本体に取付けられ、前記可動側ヒンジ部材が操作ハンドルに取付けられている移動式検査機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定側ヒンジ部材と可動側ヒンジ部材とを揺動自在に連結してあるヒンジ構造及びそれを備えた移動式検査機に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のヒンジ構造としては、例えば、特許文献1に示すガス漏洩検査機に装備されたヒンジ構造が存在する。このヒンジ構造では、地表面側の検査対象空気を検査する検査機本体と、検査機本体を地表面に沿って走行操作する操作ハンドルとの連結構造に適用されている。
特許文献1においては、検査機本体を構成する走行フレームに設けられる固定側ヒンジ部材と操作ハンドルに設けられる可動側ヒンジ部材は図示されていないが、固定側ヒンジ部材と可動側ヒンジ部材は、左右方向の水平軸芯周りで前後揺動自在に枢支連結されていると推測される。
また、操作ハンドルの可動側ヒンジ部材は、走行フレームの固定側ヒンジ部材に対して、前後揺動範囲の後端側において後方上方に向かう一定傾斜角度の後傾姿勢となる使用位置と、前後揺動範囲の前端側において前方上方に向かう一定傾斜角度の前傾姿勢となる非使用位置とに択一的に切り替え可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−152546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のヒンジ構造では、可動側ヒンジ部材が前後揺動範囲の後端側の使用位置にある状態では、後方上方に向かう一定傾斜角度の後傾姿勢で上方に突出し、可動側ヒンジ部材が前後揺動範囲の前端側の非使用位置にある状態では、前方上方に向かう一定傾斜角度の前傾姿勢で上方に突出するため、非使用時においても可動側ヒンジ部材が上方に大きく張り出す不都合がある。
さらに、可動側ヒンジ部材の使用姿勢も後方上方に向かう一定傾斜角度の後傾姿勢に特定されるため、使用の形態が限定される不都合がある。特に、特許文献1に示すガス漏洩検査機の操作ハンドルのヒンジ構造の場合では、背丈に応じた楽な操作姿勢をとることができない。また、地表面に沿って移動しながら地表面側の検査対象空気を検査する際、地表面に存在する凹凸によって検査機本体が上下動すると、これに伴って操作ハンドルも上下動するため、作業者の走行操作上の負担増加によって疲れ易くなる不都合がある。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、ヒンジ機構を利用した合理的な改良によって構造の簡素化と格納時のコンパクト化及び使用形態の多様化を図ることができ、しかも、一時的に中断した作業の再開に要する操作手数の削減と操作時間の短縮化を図ることのできるヒンジ構造及びそれを備えた移動式検査機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による第1の特徴構成は、固定側ヒンジ部材に可動側ヒンジ部材を起伏揺動自在に連結してあるヒンジ機構と、前記可動側ヒンジ部材を前記固定側ヒンジ部材に対して揺動範囲の一端側において水平又は略水平姿勢となる収納位置と揺動範囲の他端側において傾斜姿勢となる特定使用位置とに選択的に係止保持する係止保持機構を設けてあるヒンジ構造であって、
前記係止保持機構を構成するに、前記固定側ヒンジ部材に、収納位置にある前記可動側ヒンジ部材に揺動方向から当接して当該可動側ヒンジ部材の起立揺動を阻止する第1係止部材と、前記特定使用位置にある前記可動側ヒンジ部材に揺動方向の両側から当接して当該可動側ヒンジ部材の揺動を阻止する第2係止部材とを設けるとともに、前記両ヒンジ部材の揺動連結部には、前記可動側ヒンジ部材の揺動半径方向外方側への移動により前記第1係止部材に対する第1係止解除位置及び前記第2係止部材に対する第2係止解除位置に前記可動側ヒンジ部材を離脱させる融通が設けられ、前記第1係止部材と前記第2係止部材の各々は、前記固定側ヒンジ部材の両側板に架設されたピン部材から構成されている点にある。
【0007】
上記構成によれば、係止保持機構により、固定側ヒンジ部材に起伏揺動自在に連結された可動側ヒンジ部材を、それの揺動範囲の一端側において水平又は略水平姿勢となる収納位置のみならず、揺動範囲の他端側となる特定使用位置においても選択的に係止保持することができる。
そのため、収納時における可動側ヒンジ部材の上方への張り出し量を少なくして、ヒンジ構造をコンパクトに収納することができるとともに、可動側ヒンジ部材を特定使用位置に連続する使用可能領域中においても使用することができるので、使用形態の多様化を図ることができる。
また、使用途中で傾斜姿勢の可動側ヒンジ部材に加えられていた操作力を解除して、一時的に使用を中断する必要が生じた場合でも、可動側ヒンジ部材を特定使用位置に傾斜姿勢で係止保持することができる。それ故に、例えば、一時的な中断時に、可動側ヒンジ部材を水平又は略水平姿勢となる収納位置に戻し操作する場合に比較して、使用再開時に、特定使用位置にある可動側ヒンジ部材を、特定使用位置に連続する使用可能領域中において傾斜姿勢となる中断前の操作位置に迅速に戻し操作することができる。
【0008】
しかも、固定側ヒンジ部材に、収納位置にある可動側ヒンジ部材に揺動方向から当接して当該可動側ヒンジ部材の起立揺動を阻止する第1係止部材と、特定使用位置にある可動側ヒンジ部材に揺動方向の両側から当接して当該可動側ヒンジ部材の揺動を阻止する第2係止部材とが設けられているので、剛性を高め易く、係止保持機構の強度を充分確保しながら当該係止保持機構を構成するための設置スペース及び部材点数を削減することができる。
それでいて、可動側ヒンジ部材を特定使用位置又は収納位置に操作する場合には、両ヒンジ部材の揺動連結部に設けられている融通の融通範囲において、可動側ヒンジ部材を揺動半径方向外方側に移動操作することにより、第1係止部材に対する第1係止解除位置及び第2係止部材に対する第2係止解除位置に可動側ヒンジ部材を確実、スムーズに離脱させることができる。
【0009】
したがって、一時的に中断した作業の再開に要する操作手数の削減と時間の短縮化を図ることができ、しかも、ヒンジ機構を利用して係止保持機構を上述の如く合理的に構成することにより、係止保持機構の強度を充分確保しながらヒンジ構造の簡素化とコンパクト化及び使用形態の多様化を図ることができる。
さらに、第1係止部材と第2係止部材の各々をピン部材から構成して、当該ピン部材との当接時における可動側ヒンジ部材の動作の円滑化を図るとともに、ピン部材を固定側ヒンジ部材の両側板にわたって架設することにより、可動側ヒンジ部材との当接時に衝撃力が作用するピン部材を含めた固定側ヒンジ部材全体を頑丈に構成することができる。
【0010】
本発明による第2の特徴構成は、前記係止保持機構には、前記第1係止部材に対する第1係止位置及び前記第2係止部材に対する第2係止位置に前記可動側ヒンジ部材を移動付勢する付勢部が設けられている点にある。
【0011】
上記構成によれば、可動側ヒンジ部材が収納位置にある状態では、可動側ヒンジ部材は固定側ヒンジ部材の第1係止部材に対して揺動半径方向内方側に移動した第1係止位置に付勢部で付勢保持されている。そのため、収納位置にある可動側ヒンジ部材を特定使用位置側に揺動操作するときには、可動側ヒンジ部材を付勢部の付勢力に抗して揺動半径方向外方側に移動操作して、可動側ヒンジ部材を固定側ヒンジ部材の第1係止部材から離脱した第1係止解除位置に移行させる必要がある。
また、可動側ヒンジ部材が特定使用位置にある状態では、可動側ヒンジ部材は固定側ヒンジ部材の第2係止部材に対して揺動半径方向内方側に移動した第2係止位置に付勢部で付勢保持されている。そのため、特定使用位置にある可動側ヒンジ部材を収納位置側に揺動操作するときには、可動側ヒンジ部材を付勢部の付勢力に抗して揺動半径方向外方側に移動操作して、可動側ヒンジ部材を固定側ヒンジ部材の第2係止部材から離脱した第2係止解除位置に移行させる必要がある。
それ故に、収納位置及び特定使用位置での可動側ヒンジ部材の位置保持機能を高めながらも、可動側ヒンジ部材を揺動半径方向外方側へ移動操作したのち、引き続いて特定使用位置側又は収納位置側に揺動操作するという一連の動作により、係止保持機構を係止解除しながら可動側ヒンジ部材を特定検査使用位置側又は収納位置側にスムーズに移行させることができる。
【0012】
本発明による第3の特徴構成は、前記可動側ヒンジ部材には、前記特定使用位置にある前記可動側ヒンジ部材を収納位置側に揺動操作したとき、揺動前方側に位置する前記第2係止部材との当接に伴って前記可動側ヒンジ部材を前記第2係止解除位置に離脱移動させる第1ガイド部が形成されているとともに、前記第1係止部材に対する前記可動側ヒンジ部材の当接位置と前記第2係止部材に対する前記可動側ヒンジ部材との当接位置の間において前記特定使用位置に連続する揺動領域が、前記可動側ヒンジ部材を任意の使用位置に操作可能なフリーゾーンに構成されている点にある。
【0013】
上記構成によれば、特定使用位置において第2係止部材と係合している可動側ヒンジ部材を収納位置側に揺動操作すると、可動側ヒンジ部材に形成されている第1ガイド部が揺動前方側に位置する第2係止部材に当接する。この当接に伴って第2係止位置にある可動側ヒンジ部材が揺動半径方向外方側に移動して第2係止解除位置に離脱移動される。
それ故に、特定使用位置にある可動側ヒンジ部材を、特定使用位置に連続するフリーゾーン又は収納位置に揺動操作する場合、可動側ヒンジ部材を意識して揺動半径方向外方側に移動操作する必要がなく、可動側ヒンジ部材の揺動操作の簡便化を図ることができる。
【0014】
本発明による第4の特徴構成は、前記可動側ヒンジ部材には、前記第1係止部材と前記第2係止部材との間の揺動領域のうち、前記収納位置に連続する特定揺動領域において、前記第1係止部材との揺動半径方向からの当接に伴って前記付勢部の付勢力で前記可動側ヒンジ部材を前記第1係止部材に対する第1係止位置に復帰揺動させる第2ガイド部が形成されている点にある。
【0015】
上記構成によれば、収納位置に揺動操作される可動側ヒンジ部材が、前記第1係止部材と第2係止部材との間の揺動領域のうち、収納位置に連続する特定揺動領域に到達すると、可動側ヒンジ部材に形成されている第2ガイド部が固定側ヒンジ部材の第1係止部材に対して揺動半径方向外方から当接する。この当接状態での付勢部の付勢力によって可動側ヒンジ部材が第1係止部材を通過して第1係止位置に復帰揺動する。
それ故に、収納位置に連続する特定揺動領域においては、可動側ヒンジ部材を意識して揺動半径方向内方側に移動操作する必要がなく、可動側ヒンジ部材の揺動操作の簡便化を図ることができる。
【0016】
本発明による第5の特徴構成は、前記融通は、前記固定側ヒンジ部材の両側板に架設された揺動支点軸が貫通する状態で前記可動側ヒンジ部材の両側板に形成された揺動半径方向に沿う長孔から構成され、前記付勢部は、前記揺動支点軸と前記可動側ヒンジ部材の両側板における前記揺動支点軸よりも揺動半径方向外方側に偏倚した部位とに亘って張設されたバネから構成されている点にある。
【0017】
上記構成によれば、可動側ヒンジ部材の両側板において、固定側ヒンジ部材の両側板に架設された揺動支点軸が貫通する貫通孔を揺動半径方向に沿う長孔に形成するだけの簡単な改良で融通を構成することができる。
また、付勢部を構成するバネも、固定側ヒンジ部材の両側板に架設されている揺動支点軸をバネ掛止部材に利用した簡単な構造で張設することができる。
【0020】
本発明による第の特徴構成の移動式検査機は、上述の第1〜第の特徴構成のいずれ
か一つを備えたヒンジ構造の前記固定側ヒンジ部材が地表面側の検査対象空気を検査する
検査機本体に取付けられ、前記可動側ヒンジ部材が操作ハンドルに取付けられている点に
ある。
【0021】
上記構成によれば、係止保持機構により、検査機本体にヒンジ機構を介して起伏揺動自在に連結された操作ハンドルを、揺動範囲の下端側において水平又は略水平姿勢となる収納位置のみならず、揺動範囲の上端側となる特定使用位置においても選択的に係止保持することができる。
そのため、操作ハンドルから手を放して検査作業を一時的に中断する必要が生じた場合でも、操作ハンドルを特定使用位置に傾斜姿勢で係止保持することにより、検査作業の再開時に、特定使用位置にある操作ハンドルを、特定使用位置に連続するフリーゾーン中において傾斜姿勢となる中断前の操作位置に戻し揺動操作するだけで済む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のヒンジ構造を適用した移動式検査機の一例であるガス漏れ検査機の使用時の斜視図
図2】ガス漏れ検査機の収納時の斜視図
図3】ガス漏れ検査機の使用時の要部の縦断側面図
図4】ガス漏れ検査機の収納時の縦断側面図
図5】ヒンジ構造の前方側からの斜視図
図6】ヒンジ構造の後方側からの斜視図
図7】ヒンジ構造の要部の前方側からの拡大斜視図
図8】固定側ヒンジ部材の第1係止部材に対する可動側ヒンジ部材の第1係止位置での縦断側面図
図9】固定側ヒンジ部材の第1係止部材に対する可動側ヒンジ部材の第1係止解除位置での縦断側面図
図10】固定側ヒンジ部材の第2係止部材に対する可動側ヒンジ部材の第2係止位置での縦断側面図
図11】可動側ヒンジ部材が固定側ヒンジ部材の第1係止部材と第2係止部材との間のフリーゾーンにあるときの縦断側面図
図12】固定側ヒンジ部材の第1係止部材に対して可動側ヒンジ部材が収納位置に連続する特定揺動領域にあるときの縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態の移動式検査機Aは、図1図4に示すように、地表面側の検査対象空気を導入して検査する検査部1を備えた検査機本体Bと、検査機本体Bの作動を制御する制御部2と、検査機本体Bを地表面に沿って移動操作する操作ハンドルHとを備え、地表面下方の地中に埋設されたガス導管(図示省略)からのガス漏洩を検査するガス漏洩検査機として構成されている。
制御部2は、検査機本体Bの底面側で外部開放される空気捕集部3で捕集した検査対象空気が吸引導入されるガスセンサ4、及びスイッチ類等の出力信号に基づき各種演算処理を行い、その演算結果に基づき、表示部5やスピーカ(図示せず)を制御して、所望の情報表示や音声出力を行うように構成されている。
ガスセンサ4は、特定成分として可燃性ガス(水素、メタン、プロパン等)に感応する公知のセンサ素子を利用したものとして構成されており、導入された検査対象空気中の可燃性ガスの濃度に応じた信号を制御部2に出力する。すると、制御部2は、ガスセンサ4の出力信号から検査対象空気中の可燃性ガス濃度を求めて表示部5に表示すると共に、その可燃性ガス濃度が許容範囲を超えた場合には、それを作業者に通知するべく、表示部5に所定の警報表示を表示し、更には、スピーカが所定の警報音を発生するように構成されている。
【0024】
検査機本体Bは、左右一対の前車輪10及び操向用の後車輪11を有する走行フレーム12と、検査部1や制御部2等を内蔵する本体ボックス13とから構成されている。そのうち、本体ボックス13は、走行フレーム12の前端部にヒンジ構造Cを介して起伏揺動自在に連結されている操作ハンドルHに取付けられている。そのため、検査機本体Bの本体ボックス13は、操作ハンドルHと共に走行フレーム12に対して揺動自在に構成されている。
操作ハンドルHは、図2図4に示すように、揺動範囲の下端側において水平又は略水平姿勢となる収納位置P1と、図1図3に示すように、揺動範囲の上端側において傾斜姿勢となる特定使用位置P2との間でハンドル姿勢が順次変化する。
【0025】
操作ハンドルHとしては、従来から種々の形態が存在し、そのいずれも好適に使用可能であるが、本実施形態では、図1図2に示すように、3段式に伸縮可能な左右一対のハンドル杆20を備えた操作ハンドルHが用いられている。
この操作ハンドルHの両ハンドル杆20の各々は、相対回動不能な状態で伸縮方向に摺動自在に嵌合接続された角パイプ状の4つの第1〜第4ハンドル部材20A〜20Dから構成されている。そのうち、パイプ径の最も小さな両第4ハンドル部材20Dの先端部に亘ってグリップ部材21が取付けられ、このグリップ部材21の左右方向中央部には、両ハンドル杆20を伸展状態と収縮状態とで択一的に係止固定するロック機構(図示せず)の係合解除用のロック解除レバー22が設けられている。
また、パイプ径の最も大きな両第1ハンドル部材20Aの基端部に亘って、両前車輪10との協働により操作ハンドルHが鉛直又は略鉛直方向に向く縦向き姿勢で移動式検査機Aを自立させるための第1スタンド23が取付けられている。
【0026】
さらに、走行フレーム12の前端部には、空気捕集部3を形成するためのゴム製シート材で構成されたシール部材6を固定する板状の押え部材24が取付けられ、この押え部材24には、両前車輪10及び第1スタンド23との協働により操作ハンドルHが鉛直又は略鉛直方向に向く縦向き姿勢で移動式検査機Aをより安定的に自立させるための第2スタンド25が取付けられている。
本実施形態の移動式検査機Aにおいては、操作ハンドルHを収納位置P1で収縮状態に係止固定し、且つ、両前車輪10と第1スタンド23及び第2スタンド25とによって検査機本体Bを縦向き姿勢で安定的に自立させ、この自立状態で移動式検査機Aをコンパクトに保管したり、或いは、操作ハンドルHのグリップ部材21を鉛直方に持上げて移動式検査機Aを吊下げ状態で運搬することができる。
【0027】
次に、検査機本体Bの走行フレーム12と操作ハンドルHとの連結部に適用される本発明のヒンジ構造Cについて説明する。
このヒンジ構造Cには、図3図7に示すように、検査機本体Bの走行フレーム12に対して操作ハンドルHの両第1ハンドル部材20Aの基端部を左右方向に沿う揺動軸芯X周りで起伏揺動自在に連結するヒンジ機構30と、操作ハンドルHを揺動範囲の下端側(本実施形態では揺動範囲の最下端位置)において水平又は略水平姿勢となる収納位置P1と揺動範囲の上端側(本実施形態では揺動範囲の最上端位置)において傾斜姿勢となる特定使用位置P2とに選択的に係止保持する係止保持機構40とが設けられている。
操作ハンドルHの両第1ハンドル部材20Aは、収納位置P1において、走行フレーム12の後半部に設けた電源部としての電池ボックス7の電池蓋8の上面との当接によって水平又は略水平姿勢に載置維持される。
操作ハンドルHの特定使用位置P2は、作業者の体格等を考慮した検査時のハンドル操作可能な検査使用可能領域の最上端に設定され、この検査使用可能領域の最上端は揺動範囲の最上端でもある。
【0028】
さらに、図3図11に示すように、操作ハンドルHの揺動範囲Rのうち、収納位置P1を除き、且つ、第4操作位置P4から特定使用位置P2までの揺動範囲が、検査時にハンドル操作可能な全使用可能領域R1に設定されている。この全使用可能領域R1のうち、特定使用位置P2を除く第3操作位置P3から第4操作位置P4までの使用可能領域に、操作ハンドルHを揺動操作自在とするフリーゾーンFが構成されている。
そして、全使用可能領域R1中のフリーゾーンFの任意の操作位置に選択された操作ハンドルHを操作して、背丈に応じた楽な操作姿勢で地表面に沿って検査機本体Bを移動させながら地表面側の検査対象空気を検査することができる。このフリーゾーンFでの使用中において、地表面に存在する凹凸によって検査機本体Bが上下動しても、操作ハンドルHを作業者が選択した高さ位置に容易に維持することができるので、操作ハンドルHが検査機本体Bに係止固定されている場合に比して疲れの少ない快適な操作性を得ることができる。
また、操作ハンドルHから手を放して検査作業を一時的に中断する必要が生じた場合には、操作ハンドルHを特定使用位置P2に係止保持することにより、検査作業の再開時に、特定使用位置P2にある傾斜姿勢の操作ハンドルHを、特定使用位置P2に連続する使用可能領域R1に設けられたフリーゾーンF中おいて傾斜姿勢となる中断前の操作位置に戻し揺動操作するだけで済む。
【0029】
次に、ヒンジ機構30について説明する。
図3図4に示すように、走行フレーム12の前端部には、前車輪10の車軸15を支承する左右一対の軸受け部16間において上方に開口する平面視略矩形状のヒンジ取付け凹部12Aが形成されている。このヒンジ取付け凹部12Aの底面12aの左右両側部には、一対の鋼板製の固定側ヒンジ部材31が取付けられている。図5図7に示すように、各固定側ヒンジ部材31は、ヒンジ取付け凹部12Aの底面12aにビスやボルト等の締結具32Aで固定連結される底板31Aと、この底板31Aの左右方向の両側部位から上方に折り曲げ形成された一対の側板31Bとから構成されている。
また、操作ハンドルHの両第1ハンドル部材20Aの基端部に亘って鋼板製のブラケット33が取付けられている。このブラケット33は、両第1ハンドル部材20Aの対向面間の空間内に左右方向に沿って配置される上側連結板33Aと、この上側連結板33Aの左右方向の両側部位から下方に折り曲げ形成され、且つ、各第1ハンドル部材20Aの内側面に当接状態でビスやボルト等の締結具32Bにて固定連結される左右一対の内側連結板33Bと、各内側連結板33Bの下端部位から左右方向の外方側に折り曲げ形成され、且つ、各第1ハンドル部材20Aの下面に当接状態でビスやボルト等の締結具32Cにて固定連結される左右一対の下側連結板33Cとから構成されている。
【0030】
操作ハンドルH側のブラケット33の上側連結板33Aにおける左右両側部には、一対の鋼板製の可動側ヒンジ部材34が取付けられている。各可動側ヒンジ部材34は、平面視略矩形状の底板34Aと、当該底板34Aの左右方向の両側部位から上方に折り曲げ形成された一対の側板34Bと、両側板34Bの上端部に亘って一体形成され、且つ、ブラケット33の上側連結板33Aにビスやボルト等の締結具32Dで固定連結される上側連結板34Cとから構成されている。
各可動側ヒンジ部材34の両側板34Bにおける左右方向の外側面間幅は、各固定側ヒンジ部材31の両側板31Bにおける左右方向の内側面間幅よりも小に構成され、固定側ヒンジ部材31の両側板31B間に可動側ヒンジ部材34の両側板34Bが入込み配置可能に構成されている。
そして、各固定側ヒンジ部材31の両側板31B間にそれに対応する各可動側ヒンジ部材34の両側板34Bを入り込み配置し、各組を構成する固定側ヒンジ部材31の両側板31Bの揺動軸芯相当部位と可動側ヒンジ部材34の両側板34Bの揺動軸芯相当部位とを、これらを左右方向に沿って水平に貫通する揺動支点軸35で相対回転自在に連結することにより、可動側ヒンジ部材34は、固定側ヒンジ部材31に対して揺動支点軸35の中心である揺動軸支X周りで起伏揺動自在に構成されている。
【0031】
次に、係止保持機構40を図3図7に基づいて説明する。
各固定側ヒンジ部材31の両側板31Bには、図4に示すように、収納位置P1にある各可動側ヒンジ部材34に揺動方向から当接して当該可動側ヒンジ部材34の起立揺動を阻止する第1係止部材41と、図3に示すように、特定使用位置P2にある可動側ヒンジ部材34に揺動方向の両側から当接して当該可動側ヒンジ部材34の揺動を阻止する第2係止部材42とが設けられている。
また、固定側ヒンジ部材31と可動側ヒンジ部材34との揺動連結部には、可動側ヒンジ部材34の揺動半径方向外方側への移動により第1係止部材41に対する第1係止解除位置及び第2係止部材42に対する第2係止解除位置に可動側ヒンジ部材34を離脱させるための融通43が設けられている。
この融通43は、可動側ヒンジ部材34の両側板34Bの前端部において、固定側ヒンジ部材31の両側板31Bに架設されたピン状の揺動支点軸35が相対回転自在に貫通する状態で揺動半径方向に沿って形成された長孔43aから構成されている。
さらに、固定側ヒンジ部材31と可動側ヒンジ部材34との間には、第1係止部材41に対する第1係止位置及び第2係止部材42に対する第2係止位置に可動側ヒンジ部材34を移動付勢する付勢部44が設けられている。
この付勢部44は、図5図6に示すように、可動側ヒンジ部材34の両側板34Bにおける揺動支点軸35よりも揺動半径方向外方側に偏倚した後端部位に、揺動支点軸35と平行なピン状のバネ掛止軸36を架設し、このバネ掛止軸36と固定側ヒンジ部材31の揺動支点軸35とに亘ってバネの一例である引張コイルバネ44Aを張設することにより構成されている。
【0032】
第1係止部材41は、図4図5図8に示すように、固定側ヒンジ部材31の両側板31Bの上部側で、かつ、揺動支点軸35よりも下方側部位に、収納位置P1で水平姿勢にある可動側ヒンジ部材34の底板34Aの下面に対して揺動方向から当接可能な高さ位置で左右方向に沿って水平に架設された前後一対の第1ピン部材41A,41Bから構成されている。この前後一対の第1ピン部材41A,41Bのうち、前方側の第1ピン部材41Aは揺動支点軸35よりも前方側に配置され、後方側の第1ピン部材41Bは揺動支点軸35よりも後方側に配置されている。
【0033】
そのため、図8に示すように、収納位置P1で水平姿勢にある可動側ヒンジ部材34の底板34Aが固定側ヒンジ部材31の両第1ピン部材41A,41Bに当接している状態では、固定側ヒンジ部材31に対する可動側ヒンジ部材34の揺動支点軸35周りでの起立揺動は阻止されている。
それ故に、収納位置P1で水平姿勢にある可動側ヒンジ部材34の底板34Aが固定側ヒンジ部材31の両第1ピン部材41A,41Bに当接している状態が、第1係止部材41に対する第1係止位置となる。
また、図9に示すように、固定側ヒンジ部材31の両第1ピン部材41A,41Bに対して、収納位置P1で水平姿勢にある可動側ヒンジ部材34が融通43の融通範囲で揺動半径方向外方側(後方側)に移動操作され、可動側ヒンジ部材34の底板34Aが前方側の第1ピン部材41Aから外れて後方に離脱した状態では、固定側ヒンジ部材31に対して可動側ヒンジ部材34を揺動支点軸35周りで特定使用位置P2側に自由に揺動操作することができる。
それ故に、可動側ヒンジ部材34の底板34Aが前方側の第1ピン部材41Aから外れて後方に離脱した状態が、第1係止部材41に対する第1係止解除位置になる。
尚、本実施形態においては、後方側の第1ピン部材41Bは、特定使用位置P2で傾斜姿勢にある可動側ヒンジ部材34の底板34Aに当接して、可動側ヒンジ部材34を特定使用位置P2で傾斜姿勢に保持する第2係止部材42のピン部材として機能するように構成されている。
【0034】
第2係止部材42は、図3図6図7図10に示すように、固定側ヒンジ部材31の両側板31Bの下部側に、特定使用位置P2で傾斜姿勢にある可動側ヒンジ部材34の底板34A及び両側板34Bの先端側部位に対して揺動方向の両側から当接可能な高さ位置で左右方向に沿って水平に架設した前後一対の第2ピン部材42A,42Bから構成されている。
この前後一対の第2ピン部材42A,42Bのうち、前方側の第2ピン部材42Aは、揺動支点軸35よりも前方側で、且つ、前方側の第1ピン部材41Aよりも後方側に配置されている。後方側の第2ピン部材42Bは、揺動支点軸35の直下位置で、且つ、後方側の第1ピン部材41Bよりも後方側に配置されている。
後方側の第2ピン部材42Bは、前方側の第2ピン部材42Aよりも若干高い位置で、且つ、特定使用位置P2で傾斜姿勢にある可動側ヒンジ部材34の底板34Aに対して後方側の第1ピン部材41Bと同時に当接可能な位置に配置されている。
前後一対の第2ピン部材42A,42Bの前後間隔は、第1ピン部材41A,41Bの前後間隔よりも狭く、且つ、特定使用位置P2で傾斜姿勢にある可動側ヒンジ部材34の底板34A及び両側板34Bの先端側部位が傾斜方向から入り込み可能な前後間隔に構成されている。
【0035】
そのため、図10に示すように、可動側ヒンジ部材34が特定使用位置P2にある状態では、固定側ヒンジ部材31の第2ピン部材42A,42B間に、傾斜姿勢にある可動側ヒンジ部材34の底板34A及び両側板34Bの先端側部位が傾斜方向から入り込み係合し、且つ、操作ハンドルH側からの荷重による付勢力及び付勢部44の付勢力で係合状態に維持されている。
それ故に、特定使用位置P2にある可動側ヒンジ部材34の先端部が固定側ヒンジ部材31の第2ピン部材42A,42B間に入り込み係合した位置が、第2係止部材42に対する第2係止位置になる。
また、固定側ヒンジ部材31の第2ピン部材42A,42Bに対して、特定使用位置P2にある可動側ヒンジ部材34が融通43の融通範囲で揺動半径方向外方側(後方上方側)に移動操作され、傾斜姿勢にある可動側ヒンジ部材34の底板34A及び両側板34Bの先端側部位が固定側ヒンジ部材31の第2ピン部材42A,42B間から離脱した状態では、固定側ヒンジ部材31に対して可動側ヒンジ部材34を揺動支点軸35周りで収納位置P1側に自由に揺動操作することができる。
それ故に、特定使用位置P2にある可動側ヒンジ部材34の先端部が固定側ヒンジ部材31の第2ピン部材42A,42B間から離脱した位置が、第2係止部材42に対する第2係止解除位置になる。
【0036】
可動側ヒンジ部材34の両側板34Bの先端部には、図10図11に示すように、特定使用位置P2にある可動側ヒンジ部材34を収納位置P1側に揺動操作したとき、第2係止部材42における揺動前方側に位置する前方側の第2ピン部材42Aとの当接に伴って、可動側ヒンジ部材34を融通43の融通範囲で揺動半径方句外方側に移動させ、且つ、前方側の第2ピン部材42Aを乗り越え移動させながら第2係止解除位置に離脱移動させる傾斜面の第1ガイド部46が形成されている。
特定使用位置P2に連続する揺動範囲のうち、前方側の第2ピン部材42Aに対する可動側ヒンジ部材34の先端部との第1当接位置aと、前方側の第1ピン部材41Aに対する可動側ヒンジ部材34の先端部との第2当接位置bとの間の使用可能領域が、可動側ヒンジ部材34を任意の使用位置に操作可能なフリーゾーンFに構成されている。
詳しくは、フリーゾーンFの上端位置は、特定使用位置P2で係合保持されている操作ハンドルH側の可動側ヒンジ部材34の先端部と前方側の第2ピン部材42Aとの第1当接位置aに設定され、フリーゾーンFの下端位置は、操作ハンドルH側の可動側ヒンジ部材34の先端部が前方側の第1ピン部材41Aを通過する直前の第2当接位置bに設定されている。
尚、第1当接位置aと揺動軸芯Xとを結ぶ位置が第3操作位置P3となり、第2当接位置bと揺動軸芯Xとを結ぶ位置が第4操作位置P4となる。
【0037】
そして、特定使用位置P2において第2係止部材42と係合している可動側ヒンジ部材34を収納位置P1側に揺動操作すると、可動側ヒンジ部材34に形成されている傾斜面の第1ガイド部46が揺動前方側に位置する前方側の第2ピン部材42Aに当接する。この当接に伴って第2係止位置にある可動側ヒンジ部材34が揺動半径方向外方側に移動し、且つ、前方側の第2ピン部材42Aを乗り越え移動しながら第2係止解除位置に離脱移動される。
それ故に、特定使用位置P2にある可動側ヒンジ部材34を、特定使用位置P2に連続するフリーゾーンF又は収納位置P1に揺動操作する場合、可動側ヒンジ部材34を意識して揺動半径方向外方側に移動操作する必要がなく、可動側ヒンジ部材34の揺動操作の簡便化を図ることができる。
尚、図3図10に示すように、可動側ヒンジ部材34の傾斜面の第1ガイド部46が前方側の第2ピン部材42Aと当接している状態では、引張コイルバネ44Aの付勢力により、可動側ヒンジ部材34は特定使用位置P2に復帰揺動する。可動側ヒンジ部材34の傾斜面の第1ガイド部46が前方側の第2ピン部材42Aに当接する領域が特定使用位置P2への第1復帰領域R2になる。
【0038】
可動側ヒンジ部材34の両側板34Bの先端部には、図12に示すように、前方側の第1ピン部材41Aと前方側の第2ピン部材42Aとの間の揺動領域のうち、収納位置P1に連続する特定揺動領域において、前方側の第1ピン部材41Aとの揺動半径方向からの当接に伴って、引張コイルバネ44Aの付勢力で前方側の第1ピン部材41Aを乗り越え移動させながら可動側ヒンジ部材34を収納位置P1、換言すれば、第1係止部材41に対する第1係止位置に復帰揺動させる傾斜面の第2ガイド部47が形成されている。
図3図12に示すように、収納位置P1に連続する特定揺動領域は、可動側ヒンジ部材34の傾斜面の第2ガイド部47と固定側ヒンジ部材31の前方側の第1ピン部材41Aとが当接する揺動領域になる。この揺動領域が、収納位置P1への第2復帰領域R3になる。
そして、収納位置P1に揺動操作される可動側ヒンジ部材34が、前方側の第1ピン部材41Aと前方側の第2ピン部材42Aとの間の揺動領域のうち、収納位置P1に連続する第2復帰領域R3に到達すると、可動側ヒンジ部材34の傾斜面の第2ガイド部47が固定側ヒンジ部材31の前方側の第1ピン部材41Aに対して揺動半径方向外方から当接する。この当接状態での引張コイルバネ44Aの付勢力により、可動側ヒンジ部材34が前方側の第1ピン部材41Aを乗り越えながら通過して収納位置P1、換言すれば、第1係止部材41に対する第1係止位置に復帰揺動する。
それ故に、収納位置P1に連続する第2復帰領域R3においては、可動側ヒンジ部材34を意識して揺動半径方向内方側に移動操作する必要がなく、可動側ヒンジ部材34の揺動操作の簡便化を図ることができる。
【0039】
尚、本実施形態では、図3図4に示すように、本体ボックス13の後端部と走行フレーム12の後端部との相対向する部位には、操作ハンドルHが収納位置P1にあるとき、走行フレーム12に対する操作ハンドルHの特定使用位置P2側への揺動を阻止する第2係合保持機構50が設けられている。
この第2係合保持機構50は、操作ハンドルHが収納位置P1にある状態で走行フレーム12の後端部から後方に突設される第1係止突起50Aと、当該第1係止突起50Aの下面側に対向する状態で本体ボックス13の後端部から前方側に突設される第2係止突起50Bとから構成されている。
この第1係止突起50Aと第2係止突起50Bは、図8に示すように、収納位置P1で水平姿勢にある可動側ヒンジ部材34の底板34Aが固定側ヒンジ部材31の両第1ピン部材41A,41Bに当接して、第1係止部材41に対する第1係止位置にあるときには係合状態にある。また、図9に示すように、可動側ヒンジ部材34の底板34Aが前方側の第1ピン部材41Aから外れて後方に離脱し、第1係止部材41に対する第1係止解除位置に移行したときには係合解除状態にある。
【0040】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の実施形態では、第1係止部材41を両第1ピン部材41A,41Bから構成し、第2係止部材42を両第2ピン部材42A,42Bから構成した。しかし、この構成に限定されるものではなく、第1係止部材41及び第2係止部材42をブロック状に構成してもよい。
【0041】
(2)上述の実施形態では、特定使用位置P2で係合保持されている操作ハンドルH側の可動側ヒンジ部材34の先端部と前方側の第2ピン部材42Aとの当接位置を第1当接位置aに設定し、操作ハンドルH側の可動側ヒンジ部材34の先端部が前方側の第1ピン部材41Aを通過する直前の当接位置を第2当接位置bに設定して、この第1当接位置aと第2当接位置bとの間の揺動領域をフリーゾーンFに設定した。しかし、この構成に限定されるものではなく、前方側の第2ピン部材42Aと前方側の第1ピン部材41Aとの間をフリーゾーンFに設定してもよい。
さらに、上述の実施形態では、特定使用位置P2とフリーゾーンFとを連続形成しているが、特定使用位置P2とフリーゾーンFとを断続的に形成してもよい。
【0042】
(3)上述の実施形態では、第1係止部材41における後方側の第1ピン部材41Bを、特定使用位置P2で傾斜姿勢にある可動側ヒンジ部材34の底板34Aに当接して、第2係止部材42のピン部材として機能するように構成した。しかし、この構成に限定されるものではなく、後方側の第1ピン部材41Bを第2係止部材42のピン部材として機能しないように構成してもよい。
【0043】
(4)上述の実施形態では、本発明のヒンジ構造を、移動式検査機Aを構成する検査機本体Bの走行フレーム12と操作ハンドルHとの連結部に適用した。しかし、この構成に限定されるものではなく、本発明のヒンジ構造は、二つの部材を揺動自在に連結する広い分野において適用することができる。
【0044】
(5)上述の実施形態では、両ヒンジ部材31,34の揺動連結部に設けた融通43を、固定側ヒンジ部材31の両側板31Bに架設された揺動支点軸35が貫通する状態で可動側ヒンジ部材34の両側板34Bに形成された揺動半径方向に沿う長孔43aから構成した。しかし、この構成に限定されるものではなく、融通43としては、可動側ヒンジ部材34の揺動半径方向外方側への移動により第1係止部材41に対する第1係止解除位置及び第2係止部材42に対する第2係止解除位置に可動側ヒンジ部材を離脱させることのできるものであれば、如何なる構造に構成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
A 移動式検査機
B 検査機本体
F フリーゾーン
H 操作ハンドル
P1 収納位置
R1 使用可能領域
31 固定側ヒンジ部材
31B 側板
34 可動側ヒンジ部材
34B 側板
35 揺動支点軸
41 第1係止部材
41A 第1ピン部材
41B 第1ピン部材
42 第2係止部材
42A 第2ピン部材
42B 第2ピン部材
43 融通
43a 長孔
44 付勢部
44A バネ(引張コイルバネ)
46 第1ガイド部
47 第2ガイド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12