特許第6663786号(P6663786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663786
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】トッピングシートの形成方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/46 20060101AFI20200302BHJP
【FI】
   B29D30/46
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-89785(P2016-89785)
(22)【出願日】2016年4月27日
(65)【公開番号】特開2017-196809(P2017-196809A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雅也
(72)【発明者】
【氏名】小林 和浩
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−070869(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/010599(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/069335(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D30/00−30/72
B26D1/00−1/62
5/00−11/00
D06B1/00−23/30
D06C3/00−29/00
D06G1/00−5/00
D06H1/00−7/24
D06J1/00−1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に引き揃えられたタイヤコードが横糸により簾織りされてなるテキスタイル原反を円筒状に巻回して原反ロールとし、該原反ロールに所定の巻き掛け角度範囲で巻き掛けられたワイヤによって所定幅方向位置で前記横糸を切断して幅狭テキスタイル原反に分断する分断工程と、
前記幅狭テキスタイル原反の少なくとも一方の面に未加硫ゴムをトッピングするトッピング工程と、
を実行することを特徴とするトッピングシートの形成方法。
【請求項2】
前記分断工程では、前記原反ロールの外径寸法に応じて前記ワイヤの巻き掛け角度を維持するように、前記ワイヤの両端部が昇降することを特徴とする請求項1に記載のトッピングシートの形成方法。
【請求項3】
前記分断工程では、前記ワイヤの一端部に取り付けた錘によって発生する張力に基づいて前記テキスタイル原反を切断することを特徴とする請求項に記載のトッピングシートの形成方法。
【請求項4】
前記分断工程では、前記ワイヤによる横糸の切断位置は、前記原反ロールの幅方向において、繰り出される幅狭テキスタイル原反の内側とすることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のトッピングシートの形成方法。
【請求項5】
前記分断工程は、さらに分断した幅狭テキスタイル原反を前記トッピング工程へと繰り出す繰出工程を含む繰出・分断工程であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のトッピングシートの形成方法。
【請求項6】
前記分断工程で得られた幅狭テキスタイル原反を巻き取る巻き取り工程を備え、
前記トッピング工程では、前記巻き取り工程で得られた幅狭テキスタイル原反を繰り出して未加硫ゴムをトッピングすることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のトッピングシートの形成方法。
【請求項7】
前記テキスタイル原反の繰り出しは、
繰り出される前記テキスタイル原反の幅方向の位置ずれを検出し、
検出された前記位置ずれを解消するように、前記テキスタイル原反を幅方向に移動させることを特徴とする請求項に記載のトッピングシートの形成方法。
【請求項8】
長手方向に引き揃えられたタイヤコードが横糸により簾織りされてなるテキスタイル原反を円筒状に巻回して原反ロールとし、該原反ロールに所定の巻き掛け角度範囲で巻き掛けられたワイヤによって所定幅方向位置で前記横糸を切断して幅狭テキスタイル原反に分断する分断部と、
前記幅狭テキスタイル原反の少なくとも一方の面に未加硫ゴムをトッピングするトッピング部と、
を備えたことを特徴とするトッピングシートの形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トッピングシートの形成方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの骨格部分をなすカーカスプライを形成するには、まず、長手方向に引き揃えられたタイヤコードが横糸で簾織りしてなるテキスタイル原反を用意し、これに未加硫ゴムをトッピングしてトッピングシートを形成する。次いで、トッピングシートをカーカスプライの幅に対応する長さに裁断して短冊状のプライ片を形成し、さらに、このプライ片を非切断側の端部同士で順次連結することによって長尺のプライ原反を形成する。そして、プライ原反を、成形ドラムに巻回して外径へ膨出させつつタイヤ加硫金型内で加硫成形することで、カーカスプライを形成する。
【0003】
ところで、カーカスプライは、空気入りタイヤのサイズ、仕様に応じた異なる幅を有しており、プライ原反はカーカスプライ毎に形成されている。そして、プライ原反は中間成形品(中間仕掛かり品)として一旦、巻回状態で保管された後、対応する空気入りタイヤの成形時に払い出されて供給するようにしている。このため、プライ原反の生産管理が煩雑となる。そこで、プライ原反の生産管理を容易にするため、プライ原反を中間成形品として保管することなく、成形工程に直接供給することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
プライ原反を成形工程に直接供給するには、設備の配置スペースの制約から、プライ原反を形成する装置をコンパクトに構成する必要がある。このため、トッピングシートを例えば0.5m程度の幅狭に構成することが従来から行われている。
【0005】
しかしながら、一般にトッピングシートは、幅が1.4mから1.5m程度の幅広テキスタイル原反から形成されている。すなわち、幅狭のトッピングシートを形成するには、まず、幅広テキスタイル原反に未加硫ゴムをトッピングして幅広のトッピングシートを形成し、これを幅方向に分断することによって行われている。また、別の方法として、多数のコードボビンからタイヤコードを供給して幅狭コード原反を形成し、これに未加硫ゴムをトッピングすることで幅狭のトッピングシートを形成する方法も提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2007/007405号
【特許文献2】特開2012−161969号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前者の方法では、幅広のトッピングシートが未加硫ゴムによってトッピングされているので、これを幅方向に分断するのは容易ではない。また、未加硫ゴムをトッピングするカレンダラインは、幅広テキスタイル原反に対応して、幅方向に大型化してしまう。一方、後者の方法では、カレンダ装置を小型化できるものの、多数のコードボビンのセットに手間を要する。要するに、従来、幅狭のトッピングシートを効率的に形成することはできていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、幅狭のトッピングシートを効率的に形成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
長手方向に引き揃えられたタイヤコードが横糸により簾織りされてなるテキスタイル原反を円筒状に巻回して原反ロールとし、該原反ロールに所定の巻き掛け角度範囲で巻き掛けられたワイヤによって所定幅方向位置で前記横糸を切断して幅狭テキスタイル原反に分断する分断工程と、
前記幅狭テキスタイル原反の少なくとも一方の面に未加硫ゴムをトッピングするトッピング工程と、
を実行することを特徴とするトッピングシートの形成方法を提供する。
【0010】
これによれば、ワイヤを、隣接するタイヤコードの間であって、これらタイヤコードに沿わせて配置することができる。したがって、ワイヤによって横糸のみを確実に切断することができる。
【0011】
前記分断工程では、前記原反ロールの外径寸法に応じて前記ワイヤの巻き掛け角度を維持するように、前記ワイヤの両端部が昇降するのが好ましい。
【0012】
これによれば、常に一定の張力のワイヤを横糸に作用させることができ、安定した切断状態を維持することが可能となる。
【0014】
前記分断工程では、前記ワイヤの一端部に取り付けた錘によって発生する張力に基づいて前記テキスタイル原反を切断するのが好ましい。
【0015】
これによれば、簡単な方法であるにも拘わらず、ワイヤの張力を自動調整することができる。
【0016】
前記分断工程では、前記ワイヤによる横糸の切断位置は、前記原反ロールの幅方向において、繰り出される幅狭テキスタイル原反の内側とするのが好ましい。
【0017】
これによれば、ワイヤによる切断によって残されたテキスタイル原反側に横糸がはみ出すことになり、タイヤコードが繰り出したテキスタイル原反の下側に、残されたテキスタイル原反側のタイヤコードが位置することを防止することができる。
【0018】
前記分断工程は、さらに分断した幅狭テキスタイル原反を前記トッピング工程へと繰り出す繰出工程を含む繰出・分断工程であるのが好ましい。
【0019】
これによれば、テキスタイル原反の繰り出しと同時に分断を行うことができるので、幅狭テキスタイル原反を準備しておくコード原反準備工程が不要となり、テキスタイル原反から直接、幅狭テキスタイル原反を供給して未加硫ゴムをトッピングすることができる。これにより、コード原反準備工程のための設備が不要となり省スペース化を実現できると共に、生産コストを削減しつつ、幅狭のトッピングシートを効率的に形成することが可能となる。
【0020】
前記分断工程で得られた幅狭テキスタイル原反を巻き取る巻き取り工程を備え、
前記トッピング工程では、前記巻き取り工程で得られた幅狭テキスタイル原反を繰り出して未加硫ゴムをトッピングするようにしてもよい。
【0021】
前記テキスタイル原反の繰り出しは、
繰り出される前記テキスタイル原反の幅方向の位置ずれを検出し、
検出された前記位置ずれを解消するように、前記テキスタイル原反を幅方向に移動させるのが好ましい。
【0022】
これによれば、テキスタイル原反を幅方向への位置ずれを抑制しながら繰り出すことができ、その後のトッピング工程等を適切に行うことが可能となる。
【0023】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
長手方向に引き揃えられたタイヤコードが横糸により簾織りされてなるテキスタイル原反を円筒状に巻回して原反ロールとし、該原反ロールに所定の巻き掛け角度範囲で巻き掛けられたワイヤによって所定幅方向位置で前記横糸を切断して幅狭テキスタイル原反に分断する分断部と、
前記幅狭テキスタイル原反の少なくとも一方の面に未加硫ゴムをトッピングするトッピング部と、
を備えたことを特徴とするトッピングシートの形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、テキスタイル原反の分断にワイヤを使用するので、このワイヤを、隣接するタイヤコードの間であって、これらタイヤコードに沿わせて配置することができる。したがって、ワイヤによって横糸のみを確実に切断することができる。この結果、得られた幅狭テキスタイル原反によってその後のトッピングシートを効率的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】スリッター装置の概略を示す斜視図。
図2図1の要部側面図。
図3】テキスタイル原反を概略的に示す斜視図。
図4】原反ロールからワイヤにより切断して幅狭のテキスタイル原反を繰り出しながら分断している状態を示す概略斜視図。
図5図1のスリッター装置で分断された幅狭テキスタイル原反の原反巻き取り部を示す要部側面図。
図6】カレンダラインの概略を示す図。
図7A図1のスリッター装置を概略的に示す平面図。
図7B図7Aの幅狭テキスタイル原反の位置ずれ状態の例を示す平面図。
図7C図7Bの幅狭テキスタイル原反の位置ずれ修正後の状態を示す平面図。
図8】プライ原反形成工程を概略的に示す図。
図9】他の実施形態に係るスリッター装置の要部側面図。
図10】他の実施形態に係るスリッター装置の概略を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0027】
本発明の一実施形態に係るカーカスプライの形成工程は、コード原反準備工程、カレンダ工程、プライ原反形成工程及び成形工程で行う。コード原反準備工程では、幅広テキスタイル原反100Lを幅方向に分断して幅狭テキスタイル原反100Sを形成する。カレンダ工程では、幅狭テキスタイル原反100Sの少なくとも一方の面に未加硫ゴムをトッピングしてトッピングシートを作成する。プライ原反形成工程では、トッピングシートをカーカスプライの幅に対応する長さに裁断して短冊状のプライ片を形成し、この非切断側の端部同士で順次連結することよって長尺のプライ原反を形成する。成形工程では、プライ原反を、成形ドラムに巻回して外径へ膨出させつつタイヤ加硫金型内で加硫成形することによりカーカスプライを形成する。
【0028】
本発明では、コード原反準備工程において、幅広テキスタイル原反100Lを幅方向に分断する方法に特徴を有する。以下、コード原反準備工程について詳述し、カレンダ工程及びプライ原反形成工程について説明を簡略化し、成形工程については説明を省略する。
【0029】
(コード原反準備工程)
図1及び図2は、コード原反準備工程を実施するための分断部の一例であるスリッター装置50を示す。このスリッター装置50は、テキスタイル原反100が円筒状に巻回された原反ロール100Rを保持する台車51を備える。図4に示すように、テキスタイル原反100は、長手方向に引き揃えられた複数のタイヤコード101を経糸に用い、この長手方向の所要間隔毎に緯糸としての横糸102を配して簾織りされた簾状織物として構成されている。ここでは、テキスタイル原反100には、一般に1.4m〜1.5m程度の幅を有するように幅広に形成されるものが使用されている。
【0030】
台車51の一端側(前記繰り出し方向とは反対側)には昇降装置72が設けられている。昇降装置72は、第1支持体72aに対して昇降可能に移動体72bを設け、この移動体72bを図示しない駆動手段によって昇降動作可能としたものである。台車51の他端側(前記繰り出し方向側)には第2支持体72cが設けられている。第2支持体72cにはレール72dが設けられ、そこには錘73が昇降可能に取り付けられている。移動体72bと錘73とはワイヤ71で連結されている。ワイヤ71は、原反ロール100Rに所定の巻き掛け角度範囲Dで巻き掛けられている。ワイヤ71は、原反ロール100Rのタイヤコード101と平行に配置され、隣接するタイヤコード101の間に位置している。
【0031】
また台車51には、原反ロール100Rの外径を検出する外径検出装置74が設けられ、その検出信号が制御装置75(図2参照)に入力されるようになっている。制御装置75は入力された検出信号に基づいて昇降装置72を駆動制御する。すなわち、制御装置75は、外径検出装置74によって検出された原反ロール100Rの外径に基づいて、ワイヤ71の所定の巻き掛け角度範囲Dを維持するように昇降装置72を駆動制御する。
【0032】
具体的に、図2中、二点鎖線で示すように、テキスタイル原反100の繰り出しに伴って原反ロール100Rの外径が縮小すれば、昇降装置72の移動体72bを降下させ、ワイヤ71の所定の巻き掛け角度Dが維持されるようにしている。しかも、錘73によってワイヤ71に一定の張力がかかった状態に維持される。これにより、原反ロール100Rの外径寸法が徐々に小さくなったとしても、ワイヤ71を原反ロール100Rの外周に柔軟に追随させることが可能となる。
【0033】
ところで、前記巻き掛け角度範囲Dは、幅広テキスタイル原反100Lが原反ロール100Rから繰り出される繰り出し部100aを含むように設定されている。所定巻き掛け角度範囲Dは、好ましくは45度以上60度以下の巻角度範囲に巻き掛け角度が設定されており、より好ましくは繰り出し部100aを略中心値とする角度範囲に設定されている。ここでは、繰り出し部100aは上端部に位置しており、ワイヤ71の巻き掛け角度範囲Dは、図2中、側面視で原反ロール100Rの上端部を中心として左右に均等な範囲に設定されている。
【0034】
すなわち、原反ロール100Rから繰り出される幅広テキスタイル原反100Lは、繰り出し部100aにおいて、ワイヤ71によって横糸102が切断されて幅狭テキスタイル原反100Sに分断される。なお、タイヤコード101が幅方向における位置ずれしている場合であっても、ワイヤ71であれば確実に隣接するタイヤコード101間に配置することができるので、タイヤコード101を損傷することがない。すなわち、ワイヤ71によれば、タイヤコード101を損傷することなく、幅広テキスタイル原反100Lを幅狭テキスタイル原反100Sに分断することができる。ここでは、幅狭テキスタイル原反100Sは0.45mから0.5m程度の幅寸法に形成されている。
【0035】
図4に示すように、ワイヤ71による横糸102の切断位置は、幅狭テキスタイル原反100Sの幅寸法よりも内側としている。これにより、切断されて繰り出された残りの部分には、タイヤコード101に対して側方に横糸102がはみ出した状態とすることができる。これにより、タイヤコード101が側方に位置ずれして、内径側に巻回された巻回層へ落ち込んだり、あるいは、付着したりすることを抑制することが可能となる。
【0036】
なお、前記外径検出装置74に代えて、原反ロール100Rからの繰り出し量に基づいて、原反ロール100Rの外径変化を推定してもよい。例えば、原反ロール100Rの重量(台車51を含めてもよい)の変化を計測することによって、原反ロール100Rからの幅広テキスタイル原反100Lの繰り出し量を算出し、これによって原反ロール100Rの外径を推定するようにしてもよい。
【0037】
図5に示すように、分断された幅狭テキスタイル原反100Sは幅狭原反巻き取り部53で巻き取られる。幅狭原反巻き取り部53は、台車54(前記台車51であってもよい。)上に、幅狭テキスタイル原反100Sを巻き取るためのロール54aと、フィルム供給装置55とを備える。フィルム供給装置55は、幅狭テキスタイル原反100Sの巻き取りに併せて、フィルム部材103を供給する。これにより、幅狭テキスタイル原反100Sがフィルム部材103と共にロール54aに巻回される。フィルム部材103は、幅が幅狭テキスタイル原反100Sに対して同等若しくは幅広に構成されている。このため、幅狭テキスタイル原反100Sが巻回状態で、内径側の巻回層へ落ち込んだり付着したりすることが抑制される。
【0038】
(カレンダ工程)
図6は、カレンダ工程を実施するためのカレンダライン10の概略構成を示している。
【0039】
カレンダライン10では、搬送方向上流側(図中左側)から順に、幅狭テキスタイル原反100Sの供給部11、カレンダ装置20及びトッピングシート巻き取り装置24が設けられている。
【0040】
供給部11は、幅狭テキスタイル原反100Sを下流側(図中右側)へと繰り出す。カレンダ装置20は、繰り出された幅狭テキスタイル原反100Sの少なくとも一方の面に未加硫ゴムをトッピングする。トッピングシート巻き取り装置24は、未加硫ゴムをトッピングされた幅狭テキスタイル原反100Sを巻き取り台車25に円筒状に巻き取る。
【0041】
供給部11では、2台の台車12,12がテキスタイル原反100の繰り出し方向に並設されている。各台車12,12のロール12a,12aには、幅狭テキスタイル原反100Sが円筒状に巻回された状態で保持されている。また各台車12,12には、フィルム巻き取り装置15がそれぞれ設けられている。フィルム巻き取り装置15は、幅狭テキスタイル原反100Sと共に巻回されているフィルム部材103をテキスタイル原反100の繰り出し時に巻き取る。
【0042】
各台車12,12の下流側には繰り出し装置13が配置されている。繰り出し装置13は、各台車12,12のいずれか一方の幅狭テキスタイル原反100Sを繰り出す。
【0043】
図7Aに示すように、供給部11はさらに、台車12から繰り出す幅狭テキスタイル原反100Sの正規位置からの位置ずれを修正するために、台車12を幅方向に移動させる台車移動装置62と、台車12から繰り出される幅狭テキスタイル原反100Sの幅方向の端部の位置を検出する検出装置63と、検出装置63の検出結果に基づいて台車移動装置62を作動させる制御装置64とを備えている。
【0044】
台車移動装置62は、例えばボールネジを回転駆動することによって、台車12を幅狭テキスタイル原反100Sの幅方向の所望の位置に移動させることができるように構成されている。
【0045】
検出装置63は、例えば端部近傍に幅方向に並設された複数の光電管63aによって構成されている。本実施形態では、幅方向の両端部近傍それぞれに、4個の光電管63aが幅方向に並設されている。
【0046】
制御装置64は、検出装置63の検出結果に基づいて幅狭テキスタイル原反100Sの端部の幅方向の位置ずれ量Z(図7A参照)を検出する位置ずれ検出部と、台車移動装置62を駆動制御する駆動制御部と、を備えている。位置ずれ検出部は、検出装置63の検出結果、すなわち複数の光電管63aの検出結果に基づいて幅狭テキスタイル原反100Sの端部の幅方向の位置ずれ量Zを検出する。駆動制御部は、位置ずれ検出部によって検出された幅狭テキスタイル原反100Sの幅方向の位置ずれ量Zに基づいて、この位置ずれを解消するように、台車移動装置62を駆動制御して台車12を幅方向に移動させる。
【0047】
例えば、図7Bに示すように、複数の光電管63aのうち、図中ハッチングを付して示すように、左側の光電管63aのうち幅方向内側の3個が幅狭テキスタイル原反100Sを検出し、右側の光電管63aのうち幅方向内側の1個が幅狭テキスタイル原反100Sを検出している場合、位置ずれ検出部は、台車12から繰り出される幅狭テキスタイル原反100Sが位置ずれ量Zで幅方向に偏った位置(図中左側)に繰り出されていることを検出する。なお、図7Bにおいて、幅方向中央に繰り出されている幅狭テキスタイル原反100Sに対する、位置ずれ量をZで示している。
【0048】
この場合、駆動制御部642は、繰り出される幅狭テキスタイル原反100Sの幅方向における位置ずれを解消するように台車移動装置62を駆動制御する。すなわち、駆動制御部は、台車移動装置62を駆動制御して、台車12を幅狭テキスタイル原反100Sの位置ずれを解消するように、位置ずれの方向(図中左側)とは反対方向(図中右側)に、位置ずれ量Zだけ移動させる。これによって、図7Cに示すように、台車12は位置ずれ量Zだけ右側へ移動されるので、台車12から繰り出される幅狭テキスタイル原反100Sは、幅方向における位置ずれが解消されてセンタリングされる。
【0049】
このように、幅狭テキスタイル原反100Sは幅方向における位置ずれを抑制されながら繰り出され、幅方向に分断されながらカレンダライン10を下流側へと搬送される。したがって、幅方向におけるバラツキが抑制された幅狭テキスタイル原反100Sに対して適切にトッピングを施すことができる。
【0050】
図6に示すように、供給部11の下流側には繰り出し装置13が設けられている。繰り出し装置13は、供給部11から供給される第1幅狭テキスタイル原反100Sをカレンダライン10の下流側へと繰り出す。また、供給部11と繰り出し装置13との間には、接合装置14が設けられている。接合装置14は、台車12から繰り出される幅狭テキスタイル原反100Sが終端する際に、この終端部にいずれかの原反巻き取り部41に巻き取った幅狭テキスタイル原反100Sの始端部を接合する。これにより、幅狭テキスタイル原反100Sを連続的に繰り出すことができる。
【0051】
繰り出し装置13の下流側には、第1フェスツーン装置16が設けられている。第1フェスツーン装置16は、上下に配置された複数のローラ16aを有し、複数のローラ16aは上下のピッチP1が可変に構成されている。テキスタイル原反100は、複数のローラ16a間を上下交互に巻き掛けられている。すなわち、第1フェスツーン装置16は、ピッチP1を拡大することによって搬送経路を長くして所要量の幅狭テキスタイル原反100Sをバッファとして蓄積でき、ピッチP1を短縮することによって搬送経路を短くして幅狭テキスタイル原反100Sを前記バッファから下流側へ供給できる。
【0052】
すなわち、供給部11において、幅狭テキスタイル原反100Sの繰り出しを一時的に停止させるときにも、第1フェスツーン装置16によってバッファとして蓄積された幅狭テキスタイル原反100Sが、下流側へ供給される。すなわち、カレンダライン10を停止しないようにして稼働率の低下を抑制することができる。
【0053】
第1フェスツーン装置16の下流側には、センタリング装置17、横糸除去装置18、及び第1ダンサー装置19が順に設けられている。センタリング装置17は、幅狭テキスタイル原反100Sの幅方向位置を中央に調整するものである。横糸除去装置18は、幅狭テキスタイル原反100Sの横糸102を分断してタイヤコード101から除去するものである。第1ダンサー装置19は、横糸を除去された幅狭テキスタイル原反100Sの経路長を調整するものである。
【0054】
第1ダンサー装置19の下流側には、カレンダ装置20が設けられている。カレンダ装置20は、一対のカレンダロール20a,20a間に複数のタイヤコード101を通過させ、タイヤコード101の少なくとも一方の面から未加硫ゴムをトッピングする。
【0055】
カレンダ装置20の下流側には、第2ダンサー装置21及びクーリング装置22が順に設けられている。カレンダ装置20で未加硫ゴムがトッピングされてなるトッピングシート110は、第2ダンサー装置21を経由した後、クーリング装置22で冷却される。
【0056】
クーリング装置22の下流側には、第2フェスツーン装置23とトッピングシート巻き取り装置24とが順に設けられている。トッピングシート巻き取り装置24には、2台の巻き取り台車25,25が配置されており、第2フェスツーン装置23を経由して搬送されるトッピングシート110を、2台の台車25に、交互に巻き取れるようになっている。なお、第2フェスツーン装置23は、台車25の切り換え時におけるバッファを確保しており、カレンダライン10の停止を抑制している。
【0057】
(プライ原反形成工程)
図8は、プライ原反形成工程が実施されるプライ原反形成ライン30を概略的に示している。
【0058】
プライ原反形成ライン30の前半部には、円筒状に巻回されたトッピングシート110を所定長さ繰り出す第1搬送コンベヤ31及び第2搬送コンベヤ32と、これらの間を幅方向に移動する第1裁断装置33とが設けられている。また、プライ原反形成ライン30の後半部には、第3搬送コンベヤ34及び第4搬送コンベヤ35と、これらの間に位置する連結台36と、連結台36上を幅方向に移動可能な押圧装置37とが設けられている。
【0059】
すなわち、トッピングシート110は、プライ原反形成ライン30の前半部において、第1及び第2搬送コンベヤ31及び32によって所定長さ繰り出された後、第1裁断装置33によって短冊状のプライ片120に裁断される。ここで、前記所定長さは、カーカスプライの幅Wに対応する長さに設定される。また、本実施形態では、タイヤコード101に対して略直交する角度で裁断されるようになっているが、空気入りラジアルタイヤ用のカーカスプライを形成するには、タイヤコード101に対して約75°〜90°の角度で裁断すればよい。
【0060】
次いで、短冊状のプライ片120は、プライ原反形成ライン30の後半部に移載されて、第1裁断装置33による裁断方向に平行な方向(すなわち前半部の搬送方向とは直交する方向)へ、第3及び第4搬送コンベヤ34,35によって搬送される。このとき、先行するプライ片120の搬送方向後側の縁部と、後続するプライ片120の搬送方向前側の縁部とが連結台36上で突き合わされるように、第3及び第4搬送コンベヤ34,35が作動する。連結台36上で順次搬送されるプライ片120の互いに対向する縁部同士が突き合わされた状態で、押圧装置37が幅方向に移動することによって、これらのプライ片120が順次連結される。
【0061】
すなわち、トッピングシート110から、短冊状のプライ片120が裁断され、該プライ片120が順次連結されることによって、長尺のプライ原反130が形成されるようになっている。また、プライ原反130は、円筒状に巻き取られることなく、タイヤ成形工程に直接に供給されて、成形ドラム38上に巻回される。成形ドラム38上に巻回されたプライ原反130は、タイヤ周長に対応する長さに第2裁断装置39によって切断される。
【0062】
(他の実施形態)
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0063】
図9は、他の実施形態に係るスリッター装置80を示している。このスリッター装置80では、ワイヤ81の一端部が原反ロール100Rの上方における支点84に固定されると共に他端部に錘83が連結されており、原反ロール100Rの側方に巻き掛けられつつ上下方向に延びている。これにより、スリッター装置50のような昇降装置72、外径検出装置74、及び制御装置75が不要となっている。
【0064】
また、原反ロール100Rの繰り出し部100aは、ワイヤ81の巻き掛け角度範囲Dの略中央位置に位置するように、設定されている。これによって、昇降装置72、外径検出装置74、制御装置75を必要とすることなく、ワイヤ81を原反ロール100Rの繰り出し位置の側方に巻き掛けることができ、原反ロール100Rの外径変化の影響を受けることがない。すなわち、簡単な構成により、タイヤコード101を損傷することなく、原反ロール100Rの外径変化によらず、幅広テキスタイル原反100Lを幅狭テキスタイル原反100Sに安定して分断できる。
【0065】
前記実施形態では、スリッター装置50,80により幅広のテキスタイル原反100Lから1列ずつ幅狭テキスタイル原反100Sを分断するようにしたが、複数列同時に分断するようにしてもよい。
【0066】
例えば、図10に示すように、分断された幅狭テキスタイル原反100Sを複数の幅狭原反巻き取り部53で巻き取るように構成することができる。この場合、図10には図示しないが、台車54は、複数に分断された幅狭テキスタイル原反100Sの分断数に応じて設けられる。この例では、5個の幅狭テキスタイル原反100Sに分断しているので、5台の台車54を設け、それぞれ幅狭テキスタイル原反100Sの繰り出し方向に位置をずらせて配置されている。
【符号の説明】
【0067】
10 カレンダライン
11 供給部
12 台車
13 繰り出し装置
14 接合装置
20 カレンダ装置
21 第2ダンサー装置
22 クーリング装置
23 第2フェスツーン装置
24 トッピングシート巻き取り装置
25 台車
30 プライ原反形成ライン
40 カッター
41 原反巻き取り部
42 台車
43 巻き取りローラ
44 フィルム供給ローラ
50 スリッター装置
100 テキスタイル原反
100a 繰り出し部
100S 幅狭テキスタイル原反
101 タイヤコード
102 横糸
103 フィルム部材
110 トッピングシート
120 プライ片
130 プライ原反
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10