特許第6663824号(P6663824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6663824ナビゲーションシステム及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663824
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】ナビゲーションシステム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20200302BHJP
   G06F 9/445 20180101ALI20200302BHJP
   G06F 9/54 20060101ALI20200302BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALN20200302BHJP
   G09B 29/00 20060101ALN20200302BHJP
   G09B 29/10 20060101ALN20200302BHJP
【FI】
   G01C21/26 A
   G06F9/445
   G06F9/54
   !G08G1/0969
   !G09B29/00 A
   !G09B29/10 A
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-161480(P2016-161480)
(22)【出願日】2016年8月19日
(65)【公開番号】特開2018-28518(P2018-28518A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2018年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】504050275
【氏名又は名称】株式会社 ミックウェア
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】牧野 裕征
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】今井田 健太
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−197311(JP,A)
【文献】 特開2006−023887(JP,A)
【文献】 特開2010−097431(JP,A)
【文献】 特開2007−226793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26 − 21/36
G06F 9/445
G06F 9/54
G08G 1/00 − 1/16
G09B 29/00 − 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナビゲーションに関して異なる機能ごとに機能別に分割され、各々与えられた指示に対し前記機能に応じた処理を行なっ結果を返す複数の機能実行部と、
数の前記機能実行部へ指示を与え、与えた指示に対して返された処理の結果を受け取る1つの指示部とを備える機器を2つ以上含み、
記指示部は、遂行する目的に対して予め、複数の前記機能実行部から、1又は複数の使用する前記機能実行部を選択し、ナビゲーションに関して遂行する目的に応じた手順により複数の前記機能実行部のいずれか1つ又は複数へ指示を与え、与えた指示に対して返された処理の結果に基づいてナビゲーションに関する情報を出力し、
2つ以上の前記機器のうち、任意の少なくとも2つの前記機器は同一の前記機能に係る前記機能実行部を少なくとも1つ備え、
2つの前記機器のうち、一方の前記機器の前記指示部が一方の前記機器の前記機能実行部を使用するとして選択し、他方の前記機器の前記指示部が他方の前記機器の前記機能実行部を不使用として未選択とすることを、互いの前記機器の前記指示部が共通に認識するナビゲーションシステム。
【請求項2】
2つ以上の前記機器は、種類が異なっており、前記指示部は、異なる前記機器ごとに前記機能実行部を異なる組み合わせで使用しナビゲーションに関する情報を出力する請求項1に記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】
前記機能実行部それぞれは、相互に依存の関係を持っておらず、
前記指示部は、休止する前記機器の前記指示部から休止状態への移行が通知される請求項1または請求項2に記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】
2つ以上の前記機器それぞれ前記指示部は、選択された自機の前記機能実行部へ指示を与えるか、または、選択された他機の前記機能実行部へ通信媒体を介して指示を与える請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のナビゲーションシステム。
【請求項5】
前記機器は動作中に、複数の前記機能実行部からの選択を任意のタイミングで実行する請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のナビゲーションシステム。
【請求項6】
前記機能実行部及び前記指示部は、前記指示及び処理の結果をコマンドまたはメッセージによって入出力する請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のナビゲーションシステム。
【請求項7】
コンピュータを、ナビゲーションに関して異なる機能ごとに機能別に分割され、与えられた指示に対して前記機能に応じた処理を行なっ結果を返す複数の機能実行部それぞれとして働かせる複数の機能モジュールと、
前記コンピュータに、複数の前記機能実行部として働かせる場合に前記機能実行部へ指示を与え、与えた指示に対して返された処理の結果を受け取る指示部として働かせる1つの指示モジュールとを含み、
前記指示モジュールは、
前記指示部として働く前記コンピュータに、
ナビゲーションに関して遂行する目的に応じた手順によって複数の前記機能実行部のいずれか1つまたは複数へ指示を与えるステップと、
与えた指示に対して返された処理の結果に基づいてナビゲーションに関する情報を出力するステップとを更に実行させ
前記指示モジュールは、前記コンピュータとは異なる別コンピュータで実行された前記指示モジュールと、互いに共通に前記機能モジュールの使用の選択と不使用の未選択とを認識するコンピュータプログラム。
【請求項8】
ナビゲーションプログラムが記憶された記憶部と、該記憶部に記憶されたナビゲーションプログラムに基づく動作を実現する制御部と、を有する機器を2つ以上備えたナビゲーションシステムであって、
2つ以上の前記機器それぞれは、共通の前記ナビゲーションプログラムが前記記憶部に記憶されており、
前記制御部は、前記ナビゲーションプログラムに基づいて、
与えられた指示に対し機能に応じた処理を行なった結果を返す機能モジュールと、
前記機能モジュールへ指示を与え、与えた指示に対して返された処理の結果を受け取る1つの指示モジュールと、して働き、
前記機能モジュールは、複数設けられており、複数の前記機能モジュールそれぞれは、ナビゲーションに関して異なる前記機能ごとに機能別に複数に分割され、
前記指示モジュールは、ナビゲーションに関して遂行する目的に応じた手順により複数の前記機能モジュールのいずれか1つまたは複数へ指示を与え、与えた指示に対して返された処理の結果に基づいてナビゲーションに関する情報を出力し、
複数の前記機器それぞれは、前記指示モジュールが前記機器に関する情報を相互に交換することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項9】
ナビゲーションに関して異なる機能ごとに機能別に分割され、各々与えられた指示に対し前記機能に応じた処理を行なった結果を返す複数の機能実行部と、
複数の前記機能実行部へ指示を与え、与えた指示に対して返された処理の結果を受け取る1つの指示部と、を備える機器を2つ以上含み、
前記機器は、それぞれに共通のナビゲーションプログラムに基づき前記機能実行部と前記指示部の処理を実行させており、
前記指示部は、ナビゲーションに関して遂行する目的に応じた手順により複数の前記機能実行部のいずれか1つまたは複数へ指示を与え、与えた指示に対して返された処理の結果に基づいてナビゲーションに関する情報を出力し、
2つ以上の前記機器は、相互に、性能または状況に合わせて、前記指示部が前記機能実行部を選択的に使用して処理を行い、相互に補完しあうナビゲーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地への経路及び経路に関連する情報を提示するナビゲーションシステム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
所謂スマートフォンと呼ばれる携帯型の通信装置の普及率は非常に高く、ユーザは携帯通信装置を常時的に携帯し、何れの場所においても携帯通信装置により、他の携帯通信装置又はデータセンタのサーバコンピュータから集めた情報を得ることができる。そして昨今の携帯通信装置の大半は自位置を特定する機能を有しており、これによりユーザは携帯通信装置を用いて、通話、メッセージの送受信等の機能のみならず、地図上に自身の位置を表示させるナビゲーションサービスを受けることができる。ユーザは携帯通信装置を車輌内に持ち込むことにより、車輌にナビゲーション装置が搭載されていない場合であっても、運転中のナビゲーションサービスを受けることができる。
【0003】
一方、車載用のナビゲーション装置における技術も進歩しており、地図上の経路探索機能、及び経路上の誘導機能のみならず、周辺の施設等の利用に関する情報の検索機能、また、音楽の再生機能との融合などの様々な機能統合が進んでいる。
【0004】
携帯通信装置又は車載用のナビゲーション装置によらず、これらのナビゲーションサービスはコンピュータプログラムに基づき実現されているが、多様な機能追加によりコンピュータプログラムのサイズは増大の傾向にある。この場合、1つの機能を追加したり、改良したりした場合であっても、各機能は相互に依存するために全体を更新する必要があった。これに対し特許文献1には、車載のナビゲーション装置におけるコンピュータプログラムに関し、追加機能に係るモジュールを基本機能とは別に設け、相互にインタフェースを内蔵してやり取りを行なうことで機能追加を容易とし、開発工数を削減させることができるプログラム構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−318702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
携帯通信装置及び車載用のナビゲーション装置は夫々、異なるサービスを念頭に開発が進められてきた装置である。しかしながら上述したように、いずれも移動体に携帯又は搭載される装置であって自位置を特定することができ、地図情報を用いて地図及び地図上の自位置を描画することができる。それに加えていずれの装置も、通信機能を有して外部のサービスとの連携が可能となって多様なサービスに適用することができるようになっている。つまり、携帯通信装置とナビゲーション装置とでは、ハードウェア構成も性能も異なるが、重複する機能が増加してきている。ユーザは大抵の場合、携帯通信装置にて実現されるナビゲーションサービスと、車載用のナビゲーション装置とを好みによって使い分けているが、携帯通信装置と車載用のナビゲーション装置とが連携することができれば、ユーザにとって利便性の向上が大幅に期待される。
【0007】
携帯通信装置と車載用のナビゲーション装置との連携のために、特許文献1を参照すれば、車載用のナビゲーション装置に基本機能用の機能モジュールを配置し、携帯通信装置に拡張モジュールを配置し、相互に対話ができるようにインタフェースを内蔵しておく方法が考えられる。これにより、夫々別途開発が可能となって工数を削減することも可能になる。しかしながらこの場合、例えば、車載用のナビゲーション装置が基本機能、携帯通信装置が拡張機能と機能が固定されることになる。夫々の性能及び通信環境の変化等の状況変化への対応が困難である。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ナビゲーションを実現する機器の役割を性能又は状況に応じて変えることができ、各々役割を適切に分散させた複数の機器で連携して1つのナビゲーションを実現することを可能とするナビゲーションシステム及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係るナビゲーションシステムは、ナビゲーションに関して異なる機能別に分割され、各々与えられた指示に対し前記機能に応じた処理を行なって結果を返す複数の機能実行部と、該複数の機能実行部へ指示を与え、前記指示に対して返された処理の結果を受け取る1つの指示部とを備える機器を少なくとも1つ含み、前記機器の指示部は、ナビゲーションに関して遂行する目的に応じた手順により前記複数の機能実行部のいずれか1つ又は複数へ指示を与え、該指示に対して返された処理の結果に基づいてナビゲーションに関する情報を出力する。
【0010】
本発明の一実施形態に係るナビゲーションシステムは、前記指示部は、前記遂行する目的に対して予め、使用する機能実行部を前記複数の機能実行部から、1又は複数を選択する。
【0011】
本発明の一実施形態に係るナビゲーションシステムは、前記機器を2つ以上含み、複数の機器の内、任意の少なくとも2つの機器は同一の機能に係る機能実行部を少なくとも1つ備え、前記2つの機器の内の一方の機器の指示部は前記機能実行部を使用するとして選択し、他方の機器の指示部は、前記機能実行部を不使用として未選択とする。
【0012】
本発明の一実施形態に係るナビゲーションシステムは、前記複数の機器夫々の指示部は、選択された自機の前記機能実行部へ指示を与えるか、又は、選択された他機の前記機能実行部へ通信媒体を介して指示を与える。
【0013】
本発明の一実施形態に係るナビゲーションシステムは、前記機器は動作中に、前記複数の機能実行部からの選択を任意のタイミングで実行する。
【0014】
本発明の一実施形態に係るナビゲーションシステムは、前記機能実行部及び前記指示部は、前記指示及び処理の結果をコマンド又はメッセージによって入出力する。
【0015】
本発明の一実施形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータを、ナビゲーションに関して異なる機能別に分割され、与えられた指示に対して前記機能に応じた処理を行なって該処理の結果を返す複数の機能実行部として夫々機能させる複数の機能モジュールと、前記コンピュータに、該複数の機能実行部として機能する場合に該機能実行部へ指示を与え、前記指示に対して返された処理の結果を受け取る指示部として機能させる1つの指示モジュールとを含み、前記指示モジュールは、前記指示部として機能する前記コンピュータに、ナビゲーションに関して遂行する目的に応じた手順によって前記複数の機能実行部のいずれか1つ又は複数へ指示を与えるステップと、該指示に対して返された処理の結果に基づいてナビゲーションに関する情報を出力するステップとを更に実行させる。
【0016】
本発明の一実施形態では、指示部が与える指示に基づいて各々異なる機能を発揮する複数の機能実行部を備える少なくとも1つの機器で構成される。機能実行部は夫々、唯一機能実行部へ指示を与えることができる指示部から与えられた指示に対して処理結果を出力し、その結果は指示部が受け取ってこれに基づきナビゲーションに関する情報を出力する。つまり、機能実行部は指示部からの指示のみに応じた処理を行ない、他の機能実行部へ処理要求を行なうなどの相互依存の関係を持たない。指示部が各々異なる機能を発揮する機能実行部を適宜組み合わせて処理を行なわせ、1つの目的を遂行する。
【0017】
本発明の一実施形態では、目的に応じて使用する機能実行部が選択され、機器毎にその役割が動的に変化する。
【0018】
本発明の一実施形態では、複数の機器で構成される場合に、いずれか任意の機器どうしで同一の機能に対応する機能実行部を備えていてよく、この場合、いずれか1つの機器における機能実行部が使用され、同一の機能を発揮する他の機能実行部は使用されない。
【0019】
本発明の一実施形態では、複数の機器で重複する機能実行部が動作可能であっていずれか1つが選択された場合、選択された機能実行部が動作している機器以外の機器からも該機能実行部を使用できる。このとき、通信媒体を介して指示が与えられ、その結果が通信媒体を介して返される。
【0020】
本発明の一実施形態では、各機器は、選択される機能実行部は固定されず、遂行すべき目的が発生する都度、任意のタイミングで異なる機能実行部を選択して使用することができる。
【0021】
本発明の一実施形態では、機能実行部と指示部との間のやり取りは、コマンド、メッセージ等により実現される。関数(API等)の呼び出しとしないことで、機能実行部、指示部間の独立性を高め、更に異なる機器の機能実行部及び指示部間のやり取りと同一機器内の機能実行部及び指示部間のやり取りとを同等とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る実施形態によれば、機能実行部間は相互依存の関係を持たないから、機能実行部に対応する機能モジュールの入れ替え、バージョンアップ等がシステム全体に影響せず、システムの改善の工数を減少させることができる。機器は夫々、指示部により、必要な機能実行部を選択的に使用して処理を行なうことができる。そして機能実行部及び指示部は、種類が異なる機器にて同様に動作可能とすることにより、異なる機器毎に機能実行部を異なる組み合わせで使用することで、機器の役割を変えることが可能であり、予め機器毎に機能を固定しておく必要がない。つまり機器の役割は1つに固定されることがなく各自の性能及び状況に応じて各々リアルタイムに変化することができる。機器は連携して各自の性能及び状況に応じた役割を発揮し、ナビゲーションに係る1つの目的、例えば経路探索、情報検索等を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るナビゲーションシステムの概要を示す説明図である。
図2】本実施の形態のナビゲーションシステムに含まれる機器のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】制御部が指示モジュールとして機能する際の基本的処理の一例を示すフローチャートである。
図4】本実施の形態のナビゲーションシステムの基本構成を示す説明図である。
図5】ナビゲーションシステムの他の構成を示す説明図である。
図6】ナビゲーションシステムの他の構成を示す説明図である。
図7】他の状況におけるナビゲーションシステムの動作を説明する説明図である。
図8】他の状況におけるナビゲーションシステムの動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であって、本発明は以下の構成に限られないことは勿論である。
【0025】
図1は、本発明に係るナビゲーションシステム100の概要を示す説明図である。ナビゲーションシステム100は、少なくとも機器1Aを含み、図示するように更に、機器1Aと通信することが可能な機器1B,1Cを含む。図1に示す例において機器1Aは所謂スマートフォンと呼ばれる携帯通信装置であり、機器1Bはデータセンタを構成する1つのサーバコンピュータであり、機器1Cは車輌Vに搭載されているナビゲーション装置である。ナビゲーションシステム100は、機器1A,1B,1C夫々に、共通のナビゲーションプログラム1Pに基づく処理を実行させることで実現される。
【0026】
ナビゲーションプログラム1Pは、独立に動作して各々の機能を発揮する機能モジュール21〜29と、機能モジュール21〜29夫々に対して動作を指示する指示モジュール20とを含むプログラムモジュールにて構成されている。なお「モジュール」という用語は、ナビゲーションプログラム1Pに含まれるプログラム部品としての意味と、コンピュータ(プロセッサ)が各プログラム部品を実行することで実働するオブジェクトとしての意味との両方に用いる。機能モジュール21〜29は地図情報モジュール21、ロケモジュール22、探索モジュール23、検索モジュール24、地図描画モジュール25、VICS(Vehicle Information and Communication System:登録商標)モジュール26、誘導モジュール27、安全運転支援モジュール28、及び連携モジュール29を含む。機能モジュール21〜29は指示モジュール20との間でのみやり取りが可能に構成されている。機能モジュール21〜29は直接的に、他の機能モジュール21〜29に依存しない。また機能モジュール21〜29と指示モジュール20との間のやり取りは、相互に各モジュールに対応する関数を呼び出す方法ではなく、コマンド、メッセージ等による指示及びそれに対する返答という方法で行なわれる。
【0027】
独立性が高い機能モジュール21〜29を含むナビゲーションプログラム1Pのプログラム構成により、まず第1に、各機能モジュール21〜29の入れ替え、バージョンアップ等がシステム全体に影響せず、システムの改善の工数を減少させることができる。第2に、ナビゲーションプログラム1Pを実行する機器1Aは、指示モジュール20により、動作中に機能モジュール21〜29の内、必要な機能を選択的に使用して処理を行なうことができる。機器1Aはシステム内における自身の機能を固定される必要がなく、機能モジュール21〜29を自身の性能又は状況に合わせて選択的に使用することができる。更に、ナビゲーションプログラム1Pは、種類が異なる機器1A,1B,1Cにて同様に実行されるようにしてあり、プログラムを異なる機器毎に区別して作成する必要が無い。例えばサーバ用プログラム及びクライアント用プログラムとして区別する必要がない。
【0028】
したがって複数の機器1A,1B,1Cは、同一のナビゲーションプログラム1Pに基づき処理が可能であるから、自身の機能は固定されず、夫々、性能又は状況に合わせて選択的に使用することができる。機器1A,1B,1Cの指示モジュール20同士が通信によってコマンド、メッセージ等を送受信し合うことが可能な状況であれば、機器1A,1B,1Cは相互に、性能又は状況に合わせて機能モジュール21〜29を選択的に使用して処理を行ない、相互に補完し合うことができる。なおこのとき、機能モジュール21〜29の独立性の高さにより、機器1A,1B,1C間で通信接続が可能であれば、機器1A,1B,1Cの内のいずれの指示モジュール20から指示されたかによらず、その指示に対する機能モジュール21〜29に基づく処理が実行される物理的な場所も限定されない。機能モジュール21〜29夫々の機能については後述にて詳細に説明するがつまり、機器1Aの指示モジュール20が経路を探索する探索モジュール23に指示を行なった場合、機器1Aではなく機器1Bの探索モジュール23が探索を実行することが可能である。
【0029】
このように本実施の形態のナビゲーションシステム100では、ナビゲーションプログラム1Pに基づいて最小単位として機器1Aが単独で動作することができることに加え、機器1Aが機器1B、更に機器1Cとの間で実行する機能を動的に分散させて連係動作を実現することができる。以下、ナビゲーションシステム100の構成及び動作についてより具体的に説明する。
【0030】
図2は、本実施の形態のナビゲーションシステム100に含まれる機器1A,1B,1Cのハードウェア構成を示すブロック図である。本実施の形態のナビゲーションシステム100に含まれる機器1A,1B,1Cは、図2に示すように少なくとも、制御部10、一時記憶部11、記憶部12、及び通信部13を備える。機器1A,1B,1C毎に、各構成部の種類及びその詳細構造は異なってよく、図2においては各構成部に対し、共通の構成部の符号に各々の所属を区別するアルファベットA,B,Cを付して示している。
【0031】
制御部10は、記憶部12に記憶されているナビゲーションプログラム1Pに基づく動作を実現する。例えば携帯通信装置である機器1Aの制御部10AのCPU、及びサーバコンピュータである機器1Bの制御部10のCPUは、並行処理能力が高いマルチコアCPUを用い、車載機である機器1Cの制御部10Cは、マイクロコンピュータ内蔵のコンパクトなCPUであるなどと種類の差異は問わない。いずれにおいてもナビゲーションプログラム1Pに基づく処理を実行することが可能なハードウェア資源であることを必要とする。
【0032】
一時記憶部11は揮発性メモリを用い、制御部10の処理により生成される情報を一時的に記憶する。なお一時記憶部11は制御部10が内蔵している構成としてもよい。
【0033】
記憶部12は不揮発性メモリを用いたストレージであり、ナビゲーションプログラム1Pが記憶されるほか、制御部10が参照する種々のデータ、及び制御部10の処理結果のデータが記憶される。例えば記憶部12には、各機器1A,1B,1Cの性能を示す情報、各機能モジュール21〜29のバージョン情報が記憶されている。そして記憶部12についても、機器1A及び機器1Cの記憶部12A,12Cはフラッシュメモリを用い、機器1Bの記憶部12Bは、ハードディスクを用いるなど差異があってよい。
【0034】
通信部13は、機器間の通信を実現できれば種類は問わない。例えば携帯通信装置である機器1Aの通信部13Aは、通信事業者が提供する基地局等との無線通信、及びWi−Fi、 Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信に各対応する複数の通信モジュールを含む。サーバコンピュータである機器1Bの通信部13Bは光ネットワークに対応する。車載機である機器1Cの通信部13Cは、基地局との無線通信、Wi−Fi、 Bluetooth等の近距離通信、及びVICS用の受信部等に各対応する複数の通信モジュールを含む。なお通信部13は少なくとも、TCP/IP又はUDP/IPに基づく共通のプロトコルデータの送受信を可能とするとよい。
【0035】
そして、機器1A,1B,1Cの内の少なくとも1つが、ユーザが操作するための入力用インタフェースを有し、同様に少なくとも1つが、ナビゲーションに係る地図画像及び経路の表示、並びに案内音声を出力するための出力用インタフェースを有しているとよい。図2に示す例では、携帯通信装置である機器1Aと、車載用のナビゲーション装置である機器1Cとが、入力用インタフェースとして操作部14(14A,14C)を備え、また、出力用インタフェースとして表示部15(15A,15C)及び音声出力部16(16A,16C)を備える。操作部14は、表示部15として機能するディスプレイに内蔵されるタッチパネルを用いてディスプレイに表示されるアイコン等を含む操作画面上のタップ等を検知して操作入力を受け付ける。表示部15は、上述のタッチパネル内蔵ディスプレイを用い、ナビゲーションに係る操作画面、並びに、描画された地図、経路、及び誘導画面等を表示する。音声出力部16はスピーカを用い、ナビゲーションに係る案内音声を出力する。
【0036】
図3は、制御部10が指示モジュール20として機能する際の基本的処理の一例を示すフローチャートである。制御部10は、自機又は他機で使用する機能モジュール21〜29を1又は複数選択する(ステップS1)。使用する機能モジュール21〜29は起動し、指示モジュール20からの指示を待つ。なおステップS1において制御部10は、自機の性能、及び自機の使用状況に基づいて逐次、動作中における変化に応じて適宜選択する。このときの選択の基準は、後述の具体例で説明するように機器1の動作中に時々刻々と変化する状況(位置、角度、起動中の他のプログラム、他機の存在の有無等を含む多様な条件)と、ナビゲーションプログラム1Pとしてその状況において何をすべきか(探索、検索、誘導等)の目的によって変化し得る。なおその時の目的は、連動する複数の機器1A,1B,1Cが全体として達成すべき目的(目的地への到達及び現地の情報提供等ナビゲーションに関する機能全般)であるとよい。したがって制御部10は、他の機器において指示モジュール20として機能する制御部10と通信することにより、他機の存在(起動)の有無、性能等を参照して相互に選択するとよい。性能に基づいて機能モジュール21〜29を選択する場合、ハードウェア的に元々使用できない機能がある。制御部10はそれらの使用できない機能については選択対象から外しておくなどしてもよい。なお選択の基準はこれに限られない。
【0037】
制御部10は、選択して起動している機能モジュール21〜29へ、その時点における必要に応じて指示を与える(ステップS2)。指示の対象は自機の機能モジュール21〜29であるか、他機の機能モジュール21〜29であるかは区別されない。またその時点における必要とは、上述したように連動する複数の機器1A,1B,1Cが全体として(又は機器1A,1B,1Cが単独で)達成すべき目的に応じて必要となる処理である。
【0038】
制御部10は、指示に対して機能モジュール21〜29から返された結果に基づき、ナビゲーションに関する情報を他へ出力する(ステップS3)。ここでいう「他」とは例えば、ナビゲーションプログラム1Pに基づく次の手順であってもよいし、自機又は他機の出力用インタフェースであってもよい。またナビゲーションプログラム1Pと連携する他のアプリケーションプログラムであってもよいし、システム外の他の装置であってもよい。
【0039】
このように構成されるナビゲーションシステム100にて、機器1A,1B,1C間で、機能モジュール21〜29が性能又は状況に合わせて選択的に機能することについて、具体例を挙げて説明する。
【0040】
図4は、本実施の形態のナビゲーションシステム100の基本構成を示す説明図である。ナビゲーションシステム100は最小単位として、1台の機器1Aのみで動作することが可能である。図4に示すナビゲーションシステム100の使用シーンとしては、ユーザが車輌Vに乗車する前段階として目的地及びその経路について検討している状況である。機器1Aから通信接続が実行されるまでは機器1Bはナビゲーションシステム100に含まれず、車輌Vのナビゲーション装置である機器1Cは作動していない。
【0041】
図4に示す状況において機器1Aの制御部10Aは、ナビゲーションプログラム1Pに含まれる指示モジュール20に基づき、指示モジュール20Aとして動作する。更に制御部10Aは、機能モジュール21〜29に基づき、機器1Aの制御部10Aは地図情報モジュール21A、ロケモジュール22A、探索モジュール23A、検索モジュール24A、地図描画モジュール25A、VICSモジュール26A、誘導モジュール27A、安全運転支援モジュール28A、及び連携モジュール29Aとしても夫々動作する。
【0042】
地図情報モジュール21Aは、地図情報の記憶、及び地図情報の読み出しを行なう。機器1Aの記憶容量は、例えば機器1Bと比較した場合は少ないので、地図情報モジュール21Aは直近に検索した目的地の周辺の地図か、又は、頻度の高い地図を記憶している。
【0043】
ロケモジュール22Aは現在地(自位置)を取得する。携帯通信装置である機器1Aのロケモジュール22Aは、機器1Aが内蔵するGPS受信器を用いて緯度経度情報を取得し、更に通信部13AによってWi−Fiによる基地局との通信により更に詳細な位置を取得する。
【0044】
探索モジュール23Aは、目的地までの経路を探索する。出発地及び目的地を受け付け、地図情報及び交通情報を参照して複数の経路の候補を出力する。
【0045】
検索モジュール24Aは、情報の検索を実行する。住所、名称、ジャンル等の検索キーワードを受け付けて目的地の検索処理結果を出力するほか、出発地、現在地又は経路の情報を受け付けてそれらの周辺に位置する施設に関する情報を出力する。機器1Aにおける検索モジュール24Aは基本的に、通信部13Aを介して外部検索エンジンに検索処理を依頼する。
【0046】
地図描画モジュール25Aは、地図情報、経路、及び現在地を受け付けて地図及び地図上の現在地及び経路等の描画(表示)処理を行ない、描画した画像データを出力する。
【0047】
VICSモジュール26Aは例えば定期的に、光ビーコン、ビーコン又はFM電波からVICS情報を取得する。機器1AがFM電波の受信アンテナを備えている場合、VICSモジュール26AはFM電波からVICS情報を取得することが可能である。機器1Aが受信アンテナを備えていない場合、VICSモジュール26Aは不使用とされる。
【0048】
誘導モジュール27Aは、音声及び画像を用いて現在地及び経路に基づいて進行方向の案内、左折、右折などのハンドル操作の誘導、踏切などの注意喚起を行なう。
【0049】
安全運転支援モジュール28Aは、センサ、カメラ等からの入力信号に基づき運転者へ警告するか、又は車輌の制御系へ情報を通知する等の運転支援を行なう。携帯通信装置である機器1Aでは、破線で示すように安全運転支援モジュール28Aは不使用とされる。
【0050】
連携モジュール29Aは、ナビゲーションシステム100以外のサービス、例えば、検索エンジン等との連携を行なう。例えば連携モジュール29Aは、通信部13Aを用いて外部のサービスサーバと接続し、検索キーワードに基づく情報を出力する。
【0051】
指示モジュール20Aは、各機能モジュール21A〜29Aへコマンドを与えると共に、コマンドに対する処理の結果を受け取る。例えば指示モジュール20Aはまず、表示部15Aへ操作画面を表示させておき、操作部14Aにて操作画面に対する操作を受け付ける。そして指示モジュール20Aは、受け付けた操作に応じた機能モジュール21A〜29Aへ、操作に対応する指示のコマンドを与える。そして指示モジュール20Aは、機能モジュール21A〜29Aから出力された処理の結果に基づき表示部15Aへ画像を表示させ、音声出力部16Aから音声を出力させる。
【0052】
図4に示す例における具体的な状況は、ユーザは、車輌Vで出発する前に自宅で機器1Aを使用して目的地を設定しようとしている状況である。このとき機器1Aにおいて指示モジュール20Aが、検索モジュール24Aに対して操作部14Aで受け付けた目的地の名称等の情報を与え、検索モジュール24Aから出力された検索処理結果を表示部15Aに出力させる。更に検索処理結果から選択された目的地の位置情報(緯度経度情報)と、ロケモジュール22Aから得られる現在地(機器1Aの所在地点)の位置情報とが、指示モジュール20Aにより地図情報モジュール21Aへ与えられ、周辺地図の情報が得られる。指示モジュール20Aは、目的地及び現在地の位置情報及び周辺地図の情報を探索モジュール23Aへ与える。探索モジュール23Aから探索結果が出力され、指示モジュール20Aにより出力された探索結果が表示部15Aに表示される。探索結果が複数候補出力された場合、操作部14Aにて選択が受け付けられる。図4の例では、実際に使用された機能モジュール21A,22A,23A,24A,25Aをハッチングで示している。
【0053】
このとき、指示モジュール20Aは選択された経路の情報を記憶部12Aに一旦保持しておくとよい。そして指示モジュール20Aは、操作画面に案内(誘導)開始、及び経路周辺の情報の検索の指示を受け付けるためのアイコンを含む操作画面を表示部15Aに表示させて待機するとよい。
【0054】
このようにして機器1Aのみでもナビゲーション機能を発揮するが、本実施の形態のナビゲーションシステム100の利点は、複数の機器で構成される場合により効果的に発揮される。図5は、ナビゲーションシステム100の他の構成を示す説明図である。図5に示す構成では、機器1Aが通信部13Aを介して機器1Bと通信が可能となったことで機器1Bがナビゲーションシステム100に加わる。車輌Vのナビゲーション装置である機器1Cは作動していない。
【0055】
図5に示す状況において機器1Bの制御部10Bは、指示モジュール20B、各機能モジュール21B〜29Bとして夫々動作する。指示モジュール20B、及び機能モジュール21B〜29B夫々の機能は、機器1Aにおける各モジュールの動作と基本的に同様である。ただし機器1Bの場合、記憶部12Bの記憶容量は他よりも膨大であり、また、制御部10Bの処理能力も他よりも高い。そして機器1Bにおいては、機器1Bは移動体ではなく、また入力用及び出力用のインタフェースを有さない。ロケモジュール22B、VICSモジュール26B、誘導モジュール27B、及び安全運転支援モジュール28Bは機器1Bにおけるナビゲーションプログラム1Pにも含まれる。しかしながら、機器1Bは移動体ではなく、また自位置、VICS情報等を受信するためのハードウェアを持たないので破線で示すようにいずれも不使用とされる。
【0056】
図5に示すように、指示モジュール20Bと指示モジュール20Aとが通信接続によりコマンド,メッセージ等によるやり取りが可能となった場合、機器1Aの指示モジュール20A及び指示モジュール20Bは、自機の性能に関する情報を相互に交換する。例えば指示モジュール20A,20Bは、地図情報モジュール21Bが地図情報モジュール21Aよりも詳細な地図情報を持っているので、地図情報の機能については地図情報モジュール21Bを優先して使用した方がよいと夫々判断する。指示モジュール20A,20Bは判断した結果を相互に交換し、地図情報の機能については機器1Bの地図情報モジュール21Bを用いると共通に認識する。同様に指示モジュール20A,20Bは、探索及び検索の機能についてはその処理能力の高さと、取得することが可能な情報量の多さから機器1Bの探索モジュール23B及び検索モジュール24Bを使用すると共通に認識する。
【0057】
図5に示す例における具体的な状況は、図4同様に車輌Vで出発する前に自宅で機器1Aを使用して目的地を設定しようとしている状況である。図5の状況では機器1Bと通信が可能となったために、実際に使用される機能モジュール21,22,23,24,25は、ハッチングで示すように各々機器1Aと1Bとに分散される。
【0058】
なお性能のみならず、状況に応じていずれの機器の機能モジュール21〜29を用いるかを判断してもよい。例えば指示モジュール20Aは、図4に示した状況にて、記憶部12Aに一旦保持した目的地及び経路の情報に基づいて、適切な地図情報モジュール21を選択してもよい。例えば指示モジュール20Aは、機器1Aの地図情報モジュール21Aが参照できる地図情報に対応する地域と、機器1Bの地図情報モジュール21Bが参照できる地図情報に対応する地域とを比較し、選択経路(目的地)に適した地図情報モジュール21を使用する。目的地が高頻度に使用する地域内、又は直近に使用した地域内であれば地図情報モジュール21Aが使用され、初めて訪れるような地域である場合は、情報量が多いデータセンタの機器1Bの地図情報モジュール21Bが使用される。この場合、指示モジュール20Aは、表示部15Aに表示させている操作画面中の検索に対応するアイコンの選択を操作部14Aにて受け付けたときには、検索する際のキーワードを含む検索を指示するコマンド又はメッセージを、検索モジュール24Aではなく、指示モジュール20B経由にて検索モジュール24Bへ与える。上述したように、機器1A,1Bは、同一の機能を発揮する検索モジュール24A,24Bを夫々実行でき、同様に実行結果を返す。指示モジュール20Aにとって、検索の実行結果を返すモジュールは、機器1A及び1Bのいずれのモジュールであっても変わりはなく、指示モジュール20Aは検索モジュール24Bから出力された検索結果を通信部13Aで受信し、表示部15へ表示させる。
【0059】
このようにナビゲーションシステム100では、複数の機器1A,1Bが通信可能となった場合には、機器1A,1Bの使用状況、又は各々の性能に応じて使用される機能が分散され、連携してナビゲーションが実現される。
【0060】
次に、探索された経路に基づいてユーザが車輌Vをスタートさせた場合、ナビゲーションシステム100には機器1Cが加わる。図6は、ナビゲーションシステム100の他の構成を示す説明図である。図6に示すナビゲーションシステム100の使用シーンにおいては、車輌Vのナビゲーション装置である機器1Cが作動し、機器1Cは通信部13Cにより機器1A及び機器1B、又はいずれか一方と通信接続が可能となる。
【0061】
図6に示す状況において機器1Cの制御部10Cは、指示モジュール20C、各機能モジュール21C〜29Cとして夫々動作する。指示モジュール20C、及び機能モジュール21C〜29C夫々の機能は、機器1A,1Bにおける各モジュールの動作と基本的に同様である。ただし機器1Cの場合、車輌Vに搭載されている車載機であるから、安全運転支援モジュール28Cを含む機能モジュール21C〜29Cは基本的に、いずれも使用可能である。
【0062】
図6に示すように車輌Vが走行を開始すべくエンジン又はモータが始動し、機器1Cが起動すると指示モジュール20Cが動作を開始し、機器1A,1Bの指示モジュール20A,20Bとコマンド,メッセージ等によるやり取りが可能となる。指示モジュール20A,20B,20Cは、自機の性能に関する情報を相互に交換する。
【0063】
機器1A,1Cはいずれも、操作部14、表示部15及び音声出力部16を備える。指示モジュール20A,20Cは、いずれの操作部14、表示部15及び音声出力部16を用いるかを判断する。このとき機器1Aの表示部15Aに表示されている操作画面上で、機器1Aと機器1Cのいずれの入出力インタフェースを使用するかをユーザが選択できることとする。これにより、指示モジュール20A,20Cは、機器1A及び機器1Cの入出力インタフェースのいずれを使用するか共通に認識することができる。なお機器1Aの操作部14Aと、機器1Cの表示部15Cを用いるように、またその逆を選択できるようにしてもよい。
【0064】
機器1Aを入出力インタフェースとして使用しないと判断された場合、指示モジュール20A,20Cは入出力インタフェースとして、操作部14C、表示部15C及び音声出力部16Cを用いると共通に認識する。そして例えば指示モジュール20A,20Cは、機器1Cの入出力インタフェースが用いられるという状況に合わせて、ロケ、誘導の機能は機器1Cのロケモジュール22C及び誘導モジュール27Cを用いるように共通に認識する。また、指示モジュール20A,20B,20Cは、VICS機能はビーコン電波を受信するアンテナを備える機器1CのVICSモジュール26Cを用いると認識し、それまで使用していたVICSモジュール26Aは使用しないこととする。このようにして指示モジュール20A,20B,20C間で、ユーザの選択、機器の性能、状況、実施する機能によって、いずれの機器の機能モジュール21〜29を使用するかを動的に判断し、連携して走行中の経路提示及び誘導を実現する。
【0065】
その他の機能、例えば上述したように、地図情報モジュール21については、機器1A,1B,1Cの内の適切な情報を取得することができる機器におけるモジュールが使用されればよい。また地図描画モジュール25、連携モジュール29等については必要に応じて、機器1A,1B,1Cの内の処理負荷、又は通信負荷に余裕がある機器におけるモジュールが使用されるように指示モジュール20A,20B,20C間で判断されるようにするとよい。
【0066】
図6に示す状況においては、上述したように指示モジュール20Cが動作を開始し、指示モジュール20A,20Cが機器1Cのロケモジュール22C及び誘導モジュール27Cを用いると共通に認識した。したがって指示モジュール20Aは、記憶部12Aに保持している設定(選択)済みの目的地及び経路の情報を指示モジュール20Cへ送る。これにより、ユーザは、機器1Aで一度設定した目的地及びその経路について、機器1Cのナビゲーション装置にて再度設定し直す必要が無い。なお指示モジュール20Aは、機器1Cとの通信接続を検知した時点で自動的に、目的地及びその経路の情報を機器1Cへ送信して共有されるようにしてもよい。
【0067】
このようにナビゲーションシステム100では、複数の機器1A,1B,1Cが通信可能となった場合には、機器1A,1B,1Cの性能(ハードウェア)、負荷、又はユーザの選択に応じて使用されるべき機能が分散され、連携してナビゲーションの目的を遂行する。
【0068】
図6に示した構成と同様に、ナビゲーションシステム100が機器1A,1B,1Cで構成される場合であっても、各機器1A,1B,1Cの固定的な性能以外に、ナビゲーションの目的に応じて機器1A,1B,1Cで使用される機能モジュール21〜29はリアルタイムに変化する。図7は、他の状況におけるナビゲーションシステム100の動作を説明する説明図である。図7に示す例における具体的な状況は、運転者又は他の乗員であるユーザが目的地付近の情報を検索、又は他の経路の探索を指示する操作を操作部14C(なおマイクロフォンであってもよい)にて行なった場合の状況を示す。
【0069】
操作を受け付けた機器1Cの指示モジュール20Cは、自身の探索モジュール23Cを使用するか、他の指示モジュール20A,20Bを使用するか、その時点における通信環境(接続状態の良好/不良)、制御部10の負荷等を考慮して判断する。指示モジュール20Cは、他の指示モジュール20A,20Bの判断結果をも鑑みて、いずれの機器の探索モジュール23を使用するかを選択し、共通に認識する。例えば図7に示す状況では、現在地が目的地に近く、目的地周辺の地図情報は機器1Bによる参照が最も容易で情報量が多く、処理負荷も低いとの根拠から、機器1Bの探索モジュール23Bが選択される。なおこのとき指示モジュール20Cは、直接的に機器1Bと通信接続することは不安定であると判断して、機器1Aの指示モジュール20A経由で機器1Bと通信する、即ち探索指示のコマンドは、指示モジュール20Cから指示モジュール20A経由で指示モジュール20Bへ与えられる。
【0070】
これにより図7に示すように、図6に示した機能モジュール21〜29と比較して、使用されている機器1Bの探索モジュール23B及び地図情報モジュール21Bがハッチングにより表示され、地図モジュール23A,Cは使用されない。このように本実施の形態のナビゲーションシステム100では、ユーザの操作、即ち操作によって生じた目的に応じて動的に、機器1A,1B,1Cの役割の変化が可能である。
【0071】
なお、指示モジュール20A,20B,20Cは、機器1Cの操作部14Cにより経路の探索の指示を受け付けたときに、機器1A又は機器1B、更には図示しない第4の機器(自宅パーソナルコンピュータ)に保存されている探索の履歴を参照することが可能であってもよい。なお連携モジュール29C又は29Aにより、探索経路の履歴を外部のクラウドサーバへユーザの識別情報と対応付けて保存しておき、該クラウドサーバから経路の履歴を参照するようにしてもよい。
【0072】
図8は、他の状況におけるナビゲーションシステム100の動作を説明する説明図である。図8に示す状況では、ユーザは車輌Vを駐車場に駐車させ、機器1Aを用いて目的地まで徒歩で向かっている状況である。図8に示す状況では、図示するように車輌Vが駐車されているために機器1Cは休止しており、ナビゲーションシステム100に含まれていない。これにより、入出力インタフェースは機器1Cから機器1Aのものが用いられるようになる。機器1Cの指示モジュール20Cから休止状態への移行が指示モジュール20Aへ通知されることで、指示モジュール20Aは自機の入出力インタフェースを用いると判断することができる。そしてこのとき、図8に示すように経路を案内するという目的に応じて、機器1Aの誘導モジュール27Aが選択されて使用される。そして、目的地周辺の地図であるから情報量が豊富な機器1Bの地図情報モジュール21Bとそれに基づく地図描画モジュール25Bが選択されて使用される。
【0073】
このようにナビゲーションシステム100は、ユーザの操作のみならず、システム100を構成する機器1A,1B,1Cの状況、案内中の経路上の現在地の位置関係、通信環境の変化、VICSモジュール26Cにて受信した交通情報等の各種状況に応じても動的に機器1A,1B,1Cの役割の変化が可能である。しかも、状況の変化に応じて使用される機能モジュール21〜29が機器1A,1B,1C間で変化したとしても、ユーザが認識することはない。また、目的地への案内という1つの目的達成のために、入出力インタフェースを有する機器1Aと機器1Cとをシームレスに使用することができ、ユーザの利便性が格段に向上する。
【0074】
なお本実施の形態におけるナビゲーションプログラム1Pを実行する機器であれば、機器1A,1B,1C以外であってもナビゲーションシステム100に参加可能である。例えば、図4図8に示した例においては、同一ユーザ、又は車輌Vに関する機器1A,1Cと、データセンタのサーバコンピュータである機器1Bとのみが連携する構成とした。しかしながら、車輌Vに対して対向車線を走行する他の車輌、また同一方向へ向かう他の車輌のナビゲーション装置もナビゲーションシステム100内に取り込んで連携するようにしてもよい。例えば、他の車輌のナビゲーション装置にて動作する指示モジュール20にて保持している経路情報(同一方向へ向かう車輌の多さに基づく混雑予測)、交通情報(行き先の混雑状況)等を用い、より効率的な経路の探索等を実現することも可能である。更に、目的地周辺に存在している他の車輌のナビゲーション装置、又は携帯通信装置をも含めて連携してもよい。例えば、目的地に存在している機器の指示モジュール20が取得することが可能な情報に基づき、目的地の駐車場及び周辺の駐車場の混雑状況等を予測するなど、より適切な経路探索、誘導、リアルタイム性が高くより正確な検索を実現してナビゲーションサービスの満足度をより向上させることも可能になる。
【0075】
その他、ナビゲーション装置、携帯通信装置に限らず、移動しない機器、例えば店舗に設置されているパーソナルコンピュータ等をも含む多様な機器にて夫々、本実施の形態におけるナビゲーションプログラム1Pに基づく処理を実行し、ナビゲーションシステム100を構成してもよい。多様な機器の指示モジュール20間のやり取りにより、交通情報、燃費設定等に基づき適切な経路を自動的に選択する等、ナビゲーションサービスの向上を図ることが可能である。
【0076】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
1A,1B,1C 機器
10,10A,10B,10C 制御部
1P ナビゲーションプログラム(コンピュータプログラム)
12,12A,12B,12C 記憶部
13,13A,13B,13C 通信部
20,20A,20B,20C 指示モジュール(指示部)
21,22,23,24,25,26,27,28,29 機能モジュール(機能実行部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8