(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663842
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体、およびこれを用いた排ガス浄化用触媒、並びに排ガス浄化用触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20200302BHJP
B01J 29/69 20060101ALI20200302BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20200302BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20200302BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20200302BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20200302BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
B01J35/04 311A
B01J29/69 AZAB
B01J37/02 301C
B01D53/86 222
B01D53/94 222
F01N3/28 301P
F01N3/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-510550(P2016-510550)
(86)(22)【出願日】2015年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2015059606
(87)【国際公開番号】WO2015147257
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年12月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-65986(P2014-65986)
(32)【優先日】2014年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】日数谷 進
(72)【発明者】
【氏名】庄野 恵美
(72)【発明者】
【氏名】清水 香奈
【審査官】
安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−064745(JP,A)
【文献】
特開平04−215854(JP,A)
【文献】
特開平08−011251(JP,A)
【文献】
特開2013−226545(JP,A)
【文献】
特開平08−266866(JP,A)
【文献】
特表2005−516877(JP,A)
【文献】
特開平07−124475(JP,A)
【文献】
特開平11−290693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86;53/94
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維シートに、無機バインダーおよびゼオライトが担持された平板状無機繊維シートと、同無機バインダーおよびゼオライトが担持された波板状無機繊維シートとが交互に組合せられてなるハニカム構造体であって、
前記無機バインダーが、ジルコニアまたはアルミナよりなるものであり、
前記ゼオライトの粒子径(中心粒子径、D50)が、0.5〜10.0μmであり、
前記ゼオライトに、脱硝触媒成分としてビスマスが担持されていることを特徴とする、ハニカム構造体を用いた排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
無機繊維シートが、ガラス繊維シートであることを特徴とする、請求項1に記載のハニカム構造体を用いた排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
請求項1に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法であって、
ビスマス(Bi)をゼオライトに担持する工程を含み、
当該工程においてビスマス(Bi)は溶媒に溶解され、該溶媒として、ヒドロキシ基を2つ以上含む化合物を用いる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃焼排ガスから窒素酸化物(NOx)を除去する浄化方法に使用されるハニカム構造体、およびこれを用いた排ガス浄化用触媒、並びに排ガス浄化用触媒の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば船舶用機関から排出される排ガスは、燃料がC重油であるため、排ガス中の硫黄酸化物(SOx)濃度、および窒素酸化物(NOx)濃度が高く、脱硝触媒の還元剤として使用するアンモニア(NH
3)等が硫黄酸化物(SOx)と反応をして硫安を生成する。一方、船舶用排ガス温度は300℃以下、通常250℃程度であるため、この条件では硫安が排ガス中に析出し、安定した触媒性能を維持することができない。
【0003】
下記の特許文献1には、硫黄酸化物を含む排ガスにおいても窒素酸化物(NOx)を除去する脱硝性能を有する触媒を用いた排ガス浄化方法が開示されており、脱硝触媒として鉄、コバルト、銀、モリブデンまたはタングステンを担持させたβゼオライトを用い、還元剤としてのエタノールおよび/またはイソプロピルアルコールの存在下に、酸素過剰の排ガスを接触させることにより、排ガス中の窒素酸化物NOxを還元除去する排ガス浄化方法が記載されている。
【0004】
下記の特許文献2には、触媒としてプロトン型βゼオライトを用い、還元剤としてのエタノールおよび/またはイソプロピルアルコールの存在下に、酸素過剰の排ガスを接触させて、排ガス中の窒素酸化物NOxを還元除去する排ガス浄化方法が記載されている。
【0005】
下記の特許文献3には、触媒担体としてSiO
2/Al
2O
3比が27以上100以下のNa−ZSM−5型ゼオライトまたはH−ZSM−5型ゼオライトを用いて、前記触媒担体をコバルト塩水溶液(コバルトの硝酸塩、酢酸塩、塩化物等)に浸し、の触媒担体のNa(またはH)部分とCoとを、イオン交換率40〜100%でイオン交換して、コバルトを担持したZSM−5型ゼオライトを脱硝触媒として用い、還元剤には、プロパン、ブタンを組成にもつ液化石油ガスを用いる排ガス浄化方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、これらの特許文献1〜3に記載の脱硝触媒を用いた還元除去法による排ガスの浄化方法でも、排ガス浄化の反応温度が300℃〜500℃程度で、やはり船舶用排ガス温度よりも高いものであるという問題があった。
【0007】
そこで、本出願人は、下記の特許文献4において、高濃度の窒素酸化物(NOx)、および硫黄酸化物(SOx)が存在し、しかも排ガス温度が300℃以下と低い、例えば船舶用機関から排出される燃焼排ガスから、窒素酸化物を効果的に低減することができる燃焼排ガスの浄化方法を提案した。
【0008】
特許文献4に開示されている燃焼排ガスの浄化方法では、まず、ガラス繊維シートに、ゼオライトと水とシリカゾルとからなるスラリーを塗布する工程を実施して、ハニカム構造体を作製するための基材を作製し、つぎに、上記のナトリウム型ゼオライト担持基材を波形に加工して波板状ガラス繊維シート状基材を得る工程と、上記の基材を平板状ガラス繊維シートに加工して平板状ガラス繊維シート状基材を得る工程と、該波板状ガラス繊維シート状基材と該平板状ガラス繊維シート状基材と交互に積層する工程を実施して、ハニカム構造体を作製した。そして、上記の方法により作製されたゼオライト担持ハニカム構造体に対して触媒金属をイオン交換させる工程を実施して、ハニカム型脱硝触媒を作製するというものであった。
【特許文献1】特開2004−358454号公報
【特許文献2】特開2004−261754号公報
【特許文献3】特開平11−188238号公報
【特許文献4】特開2013−226545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献4に記載の従来法においては、ガラス繊維シートにゼオライト含有スラリーを塗布して、ハニカム構造体を作製する際、固まりやすいゼオライトの物性が不明であり、充分に強度の大きい、耐用性に優れたハニカム構造体を作製することができないという問題があった。
【0010】
また、硫黄酸化物(SOx)に対する耐久性に優れた脱硝触媒を作製することができないという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、充分に強度が大きく、耐用性に優れたハニカム構造体、およびこれを用いた硫黄酸化物(SOx)に対する耐久性に優れた排ガス浄化用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ゼオライト含有スラリーを無機繊維シートに塗布して、ハニカム構造体を作製する際、粒子径が大きいゼオライトは凝集せず、これによって強度の大きいハニカム構造体を作製することが困難であり、ハニカム構造体を作製する際のゼオライト物性(粒子径)について、所定の粒子径を持つゼオライトを用いることで、充分な強度をもったハニカム構造体を作製できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
上記の目的を達成するために、請求項1のハニカム構造体の発明は、無機繊維シートに、無機バインダーおよびゼオライトが担持された平板状無機繊維シートと、同無機バインダーおよびゼオライトが担持された波板状無機繊維シートとが交互に組合せられてなるハニカム構造体であって、前記ゼオライトの粒子径(中心粒子径、D50)が、0.5〜10.0μmであることを特徴としている。
【0014】
ここで、ゼオライトの粒子径は、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒径(中心粒径、D50)を意味する。測定は、試料を水中分散後に行う。この時、水中に十分分散させた状態にするため、予め、超音波ホモジナイザーにて分散処理し、粒径分布の結果に変化が出ないことを確認して、測定結果を記録する。
【0015】
上記のハニカム構造体において、無機繊維シートが、ガラス繊維シートであることが好ましい。
【0016】
また、上記のハニカム構造体において、無機バインダーが、ジルコニア、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、チタニアよりなるものであることが好ましく、特に、無機バインダーが、ジルコニアまたはアルミナであることが好ましい。
【0017】
請求項3の発明は、上記のハニカム構造体のゼオライトに、脱硝触媒成分が担持されていることを特徴とする、ハニカム構造体を用いた排ガス浄化用触媒である。
【0018】
また、上記のハニカム構造体を用いた排ガス浄化用触媒においては、前記無機バインダーが、ジルコニアまたはアルミナよりなるものであることが好ましい。
【0019】
上記のハニカム構造体を用いた排ガス浄化用触媒において、前記無機バインダーが、ジルコニアまたはアルミナよりなるものであることが好ましい。
【0020】
上記の排ガス浄化用触媒において、前記脱硝触媒成分は、ビスマスであることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、上記の脱硝触媒成分をビスマスとする排ガス浄化用触媒の製造方法であって、ビスマス(Bi)をゼオライトに担持する工程を含み、当該工程においてビスマス(Bi)は溶媒に溶解され、該溶媒として、1分子当たりアルコキシ基1つ以上とヒドロキシ基1つ以上とを含む化合物、あるいはヒドロキシ基を2つ以上含む化合物、あるいは酸を用いる、方法である。
【0022】
また、本発明の排ガス浄化用触媒は、無機バインダーおよびゼオライトが担持された無機繊維シートを用いた排ガス浄化用触媒の製造方法であって、脱硝触媒成分であるビスマス(Bi)を前記ゼオライトに担持する工程を含み、当該工程においてビスマス(Bi)は溶媒に溶解され、該溶媒として、1分子当たりアルコキシ基1つ以上とヒドロキシ基1つ以上とを含む化合物、あるいはヒドロキシ基を2つ以上含む化合物、あるいは酸を用いる、排ガス浄化用触媒の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記の所定の粒子径を持つゼオライトを用いることで、充分に強度が大きく、振動等の外的要因に対しても耐用性が高い状態での使用が確保される、耐用性に優れたハニカム構造体を得ることができるという効果を奏する。
【0024】
また、充分に強度が大きく、振動等の外的要因に対しても耐用性が高い状態での使用が確保される、耐用性に優れたハニカム構造体を用いることにより、ひいては排ガス浄化用触媒の耐用性を向上することができるという効果を奏する。
【0025】
さらに、溶媒中にイオンの形態のビスマスが増えることによって、ゼオライトとイオン交換される量が増え、ビスマスがゼオライトに均一に担持される。その結果、SOxと結合して形成される化合物が生成しにくくなり、SOx耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例において触媒性能試験に用いられる脱硝率測定装置の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
つぎに、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
本発明によるハニカム構造体は、無機繊維シートに、無機バインダーおよびゼオライトが担持された平板状無機繊維シートと、同無機バインダーおよびゼオライトが担持された波板状無機繊維シートとが交互に組合せられてなるハニカム構造体であって、前記ゼオライトの粒子径(中心粒子径、D50)が、0.5〜10.0μm、好ましくは3.0〜7.0μmであることを特徴としている。
【0029】
ここで、ゼオライトの粒子径は、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒径(中心粒径、D50)を意味する。
【0030】
本発明において、ハニカム構造体の強度を持たせるため、粒子径(D50)が0.5〜10.0μmのゼオライト粒子を使用する。ここで、ゼオライト粒子が、上記の範囲を超える大粒子径であると、ゼオライト粒子と無機バインダーの接点が減少し、成型保持が困難となる。また、上記の範囲未満の小さい粒子径を有するゼオライト粒子は、工業的に製造するには手間がかかり現実的でない。上記の範囲の粒子径を有するゼオライト粒子を用いることで、無機バインダーとの接点を増加させ、成型保持に適した強度を確保できるようになる。
【0031】
そして、無機繊維シートに、無機バインダーおよびゼオライトが担持された平板状無機繊維シートと、同無機バインダーおよびゼオライトが担持された波板状無機繊維シートとが交互に組合せられてなるハニカム構造体を作製することができる。
【0032】
なお、ゼオライトを所定の粒子径(中心粒子径、D50)にするために、市販のゼオライトを粉砕して用いてもよい。
【0033】
本発明において、ハニカム(蜂の巣)構造体とは、隔壁により区画されかつ排ガスが流通可能な複数の貫通孔(セル)と当該隔壁とからなる一体形の構造体をいい、上記貫通孔の断面形状(セルの断面形状)は特に限定されず、例えば円形、円弧形、正方形、長方形、六角形が挙げられる。
【0034】
上記のハニカム構造体において、無機繊維シートが、ガラス繊維シートまたはセラミック繊維シートであることが好ましい。
【0035】
また、上記のハニカム構造体において、無機バインダー、ジルコニア、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、チタニアよりなるものであることが好ましく、特に、無機バインダーは、ジルコニア、またはアルミナであることが好ましい。
【0036】
なお、本発明における他の脱硝触媒は、ハニカム構造体の基材の小片(平板状基材または波板状基材のみからなる)、ペレット状からなる排ガス浄化用触媒(脱硝触媒)であっても良い。
【0037】
ハニカム構造体の基材の小片は、凹溝が1回以上繰り返す波板状を有するとした場合に、その凹溝1つ当たりの幅寸法(Aで示す)、幅方向の繰り返し回数(nで示す)、高さ寸法(Bで示す)および奥行き(Cで示す)のいずれも小さい値を有している。
【0038】
ハニカム構造体の基材の小片は、幅寸法(A)は、2.0mm以上であり、好ましくは3.0mm以上、より好ましくは4.0mm以上である。また、幅寸法(A)は、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下であり更に好ましくは25mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
【0039】
高さ寸法(B)は、1.0mm以上であり、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上である。また、高さ寸法(B)は、好ましくは50mm以下、より好ましくは25mm以下、更に好ましくは10mm以下である。また、幅方向の繰り返し回数(n)は、1〜100回、好ましくは1〜10回、更に好ましくは1〜5回、更に好ましくは2〜4回である。
【0040】
また、奥行き寸法(C)は、3.0mm以上であり、好ましくは4.0mm以上、より好ましくは5.0mm以上である。また、奥行き寸法(C)は、好ましくは200mm以下、より好ましくは100mm以下であり、更に好ましくは50.0mm以下、更に好ましくは20.0mm以下、更に好ましくは15.0mm以下、更に好ましくは10.0mm以下である。
【0041】
(ハニカム構造体の調製)
(基材の調製)
上記の特定の粒子径を有するゼオライト、溶媒および無機バインダーを混合してスラリーを作製する。このスラリーを無機繊維シートであるガラス繊維ペーパーに塗布する。
【0042】
ここで、ゼオライトは、MFI型ゼオライト、またはFER型ゼオライトであることが好ましいが、ゼオライトとしては、その他、MOR型ゼオライト、またはBEA型ゼオライト等を使用することができる。
【0043】
無機バインダーとしては、シリカ、チタニア、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア等を用いることができる。
【0044】
例えば無機バインダーがシリカである場合には、シリカゾルとしては、シリカを20重量%程度含む酸性タイプ(中性、塩基性タイプでも使用可能)のものを用いることができる。また、ゼオライト、水、および無機バインダーとしてのシリカゾルの重量比は、例えば100:75:46に調整する。
【0045】
つぎに、上記のスラリーをガラス繊維シートに塗布する。塗布する際には、従来公知の任意の方法を用いてよいが、例えば、いわゆるどぶ漬け方法、刷毛塗り方法、スプレー塗り方法、滴下塗布方法などが挙げられる。
【0046】
(基材の成形加工)
つぎに、スラリー塗布ガラス繊維シートを波形付与金型と押さえ治具により形付けし、形付けされた波板状のスラリー塗布ガラス繊維シートを100〜200℃で1〜2時間の条件下で乾燥し、金型から剥離し、一方、形付けしていない平板状のスラリー塗布ガラス繊維シートを100〜200℃で1〜2時間の条件下で乾燥する。ここで、スラリーに加えられるシリカゾル等の無機バインダーが、ガラス繊維シートとゼオライトとのバインダーの役割を果たすことになり、ガラス繊維シートの成形後に波形を保持することが可能になる。
【0047】
ついで、波板状のスラリー塗布ガラス繊維シートと、平板状の触媒スラリー塗布ガラス繊維シートとを300〜550℃で1〜4時間の条件下で焼成する。
【0048】
こうして得られた波板状ガラス繊維シート状基材と平板状ガラス繊維シート状基材とを交互に積層することによりハニカム構造体を得る。
【0049】
本発明によるハニカム構造体は、無機繊維シートに、無機バインダーおよびゼオライトが担持された平板状ガラス繊維シートと、同無機バインダーおよびゼオライトが担持された波板状ガラス繊維シートとが交互に組み合わせられてなるハニカム構造体であって、前記ゼオライトの粒子径(中心粒子径、D50)が、0.5〜10.0μmであることを特徴とするもので、本発明によれば、上記の所定の粒子径を持つゼオライトを用いることで、充分に強度が大きく、振動等の外的要因に対しても耐用性が高い状態での使用が確保される、耐用性に優れたハニカム構造体を得ることができるものである。
【0050】
また、本発明による排ガス浄化用触媒は、上記のハニカム構造体のゼオライトに、脱硝触媒成分が担持されていることを特徴としている。
【0051】
ここで、上記のハニカム構造体を用いた排ガス浄化用触媒においては、無機バインダーが、ジルコニアまたはアルミナであることが好ましい。
【0052】
脱硝触媒成分として、ゼオライトにビスマス(Bi)よりなる金属元素を担持することが好ましい。
【0053】
担持する金属元素の前駆体化合物としては、無機酸塩(例えば硝酸塩、塩化物など)や有機酸塩(例えば酢酸塩など)を用いることができる。触媒金属の担持方法は、脱硝性能が発揮できればよく、イオン交換法や含浸担持法などが挙げられる。例えばイオン交換法としては、ビスマス(Bi)の前駆体化合物を含む水溶液に、ゼオライトを懸濁させ、イオン交換により触媒金属が結合したゼオライトを水溶液から取り出して乾燥した後、焼成する方法がある。
【0054】
また、脱硝触媒成分として、ゼオライトにビスマス(Bi)よりなる金属元素を担持する場合には、担持する金属元素の前駆体化合物としては、無機酸塩(たとえば、硝酸塩、塩化物など)や有機酸塩(たとえば酢酸塩など)や酸化物を用いることができる。触媒金属の担持方法は、脱硝性能が発揮できればよく、イオン交換法や含浸担持法などが挙げられる。たとえば、イオン交換により触媒金属が結合したゼオライトを溶媒から取り出して乾燥した後、焼成する方法がある。
【0055】
ここで、上記のビスマスの前駆体化合物を溶解させるための溶媒としては、1分子当たりアルコキシ基1つ以上とヒドロキシ基1つ以上とを含む化合物、あるいはヒドロキシ基を2つ以上含む化合物、あるいは酸からなるものが挙げられる。
【0056】
1分子あたりアルコキシ基1つ以上とヒドロキシ基1つ以上とを含む化合物としては、2−メトキシエタノールを用いることが好ましい。ヒドロキシ基を2つ以上含む化合物としては、エチレングリコールを用いることが好ましい。また、酸としては、硝酸、あるいは酢酸を用いることが好ましい。
【0057】
本発明による脱硝触媒は、1分子当たりアルコキシ基1つ以上とヒドロキシ基1つ以上とを含む化合物、あるいはヒドロキシ基を2つ以上含む化合物、例えば、ジオール化合物、あるいは酸からなるものを溶媒として用いることにより、触媒スラリー中でビスマスがイオンとして存在していることを特徴とするもので、本発明によれば、ビスマスがゼオライトに均一に担持される。
【0058】
本発明のハニカム構造体を用いた排ガス浄化用触媒によれば、上記の所定の粒子径を持つゼオライトを用いることで、充分に強度が大きく、振動等の外的要因に対しても耐用性が高い状態での使用が確保される、耐用性に優れたハニカム構造体を用いた排ガス浄化用触媒を得ることができる。
【0059】
また、特に、無機バインダーが、ジルコニアまたはアルミナである本発明の排ガス浄化用触媒によれば、高濃度の窒素酸化物(NOx)および硫黄酸化物(SOx)が存在し、しかも排ガス温度が300℃以下と低い、例えば船舶用機関すなわち船舶用大型ディーゼルエンジン、工場や発電所、地域冷暖房などの大規模ボイラー等から排出される燃焼排ガスから、窒素酸化物を効果的に低減することができる。
【0060】
上記のビスマス化合物をゼオライトに担持させようとした場合、ガラスペーパーからハニカム構造体を製造した後に、別工程として担持させる工程を行ってもよいが、ガラスペーパーからハニカム構造体に至る途中の段階で担持させる工程を行ってもよく、あるいは、ゼオライト、溶媒および無機バインダーからなるスラリーに上記のビスマス溶液を混合し、ハニカム構造体の基材を調製する工程と同時に行うようにしてもよい。
【0061】
なお、本発明による燃焼排ガス浄化用触媒において、還元剤は、燃焼排ガスの還元処理時の温度において還元力を有するものであれば特に制限されるものではないが、炭素数の少ないアルコールであるメタノール、エタノールを用いることが好ましい。
【実施例】
【0062】
つぎに、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
粒子径(D50)が7.0μmのFER型ゼオライト(商品名:CP914C、ゼオリスト社製)を用いて、該ゼオライト25g、イオン交換水18.75g、無機バインダーとしてのシリカゾルの水溶液(固形分濃度22.0重量%)11.5gを混合し、スラリーとした。このスラリーのうち、18gを100mm×150mmのガラスペーパーに塗布して、平板状のスラリー塗布ガラスペーパーとした後、この平板状のスラリー塗布ガラスペーパーを110℃で1時間乾燥した。一方、上記のスラリーのうち、27.6gを100mm×230mmのガラスペーパーに塗布し、スラリー塗布ガラスペーパーを波形付与金型と押さえ治具により形付けし、形付けされた波板状のスラリー塗布ガラスペーパーを110℃で1時間乾燥し、金型から剥離した。その後、平板状のスラリー塗布ガラスペーパーおよび波板状のスラリー塗布ガラスペーパーを、温度500℃で、3時間焼成した。こうして得られたシリカゾル・ゼオライト担持平板状ガラスペーパー2枚と、シリカゾル・ゼオライト担持波板状ガラスペーパー1枚とを交互に組み合わせて、ハニカム構造体を作製した。
【0064】
ここで、ゼオライトの粒子径は、レーザー回折法により測定される体積基準の累積百分率50%相当粒径(中心粒径、D50)であり、このゼオライトの粒子径(D50)を、レーザー回折・散乱式粒度分析計(商品名:マイクロトラックMT3300EXII、日機装株式会社製)により測定した。
【0065】
(実施例2)
上記実施例1の場合と同様にして、本発明によるハニカム構造体を作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、粒子径(D50)が3.0μmのFER型ゼオライトを用いた点にある。
【0066】
(実施例3)
上記実施例1の場合と同様にして、本発明によるハニカム構造体を作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、粒子径(D50)が6.0μmのMFI型ゼオライトを用いた点にある。
【0067】
(比較例1)
比較のために、上記実施例1の場合と同様にして、ハニカム構造体を作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、粒子径(D50)が36.0μmのFER型ゼオライトを用いた点にある。
【0068】
(比較例2)
比較のために、上記実施例1の場合と同様にして、ハニカム構造体を作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、粒子径(D50)が14.0μmのFER型ゼオライトを用いた点にある。
【0069】
(強度評価)
つぎに、本発明による実施例1〜3、および比較例1と2で得られたハニカム構造体について、各ハニカム構造体の強度を目視により観察し、得られた結果を、下記の表1に示した。評価基準は、以下の通りである。
【0070】
(ハニカム構造体の強度の観察)
○:シリカゾル・ゼオライト担持ガラスペーパーの波形成形が可能であり、シリカゾル・ゼオライト担持波板状ガラスペーパーと、同平板状ガラスペーパーとを交互に組み合わせてハニカム構造体を作製する際、シリカゾル・ゼオライト担持波板状ガラスペーパーの波形状が崩れず、強度を保つ
△:シリカゾル・ゼオライト担持ガラスペーパーの波形成形は可能であるが、シリカゾル・ゼオライト担持波板状ガラスペーパーと、同平板状ガラスペーパーとを交互に組み合わせる際、シリカゾル・ゼオライト担持波板状ガラスペーパーの波形状を保持することができず、ハニカム構造体が崩れる
×:シリカゾル・ゼオライト担持ガラスペーパーの波形成形ができず、ハニカム構造体を作製することができない
【0071】
【表1】
【0072】
上記表1の結果から明らかなように、本発明による実施例1〜3のハニカム構造体によれば、所定の粒子径を持つゼオライトを用いることで、充分に強度が大きく、振動等の外的要因に対しても耐用性が高い状態での使用が確保される、耐用性に優れたハニカム構造体を得ることができる。これに対し、比較例1と2においては、ゼオライトの粒子径(D50)が0.5〜10.0μmの範囲を超える大粒子径であるため、ゼオライト粒子と無機バインダーの接点が減少し、シリカゾル・ゼオライト担持波板状ガラスペーパーと、同持平板状ガラスペーパーとを交互に組み合わせて、ハニカム構造体を作製する際、シリカゾル・ゼオライト担持波板状ガラスペーパーの形状が保持されず、ハニカム構造体が崩れたり、あるいはまた、シリカゾル・ゼオライト担持ガラスペーパーの波形成形ができず、ハニカム構造体を作製することができなかったりすることが分かる。
【0073】
(実施例4)
本発明によるハニカム構造体を用いた排ガス浄化用の脱硝触媒を、つぎのようにして製造した。
【0074】
粒子径(D50)が7.0μmのFER型ゼオライト(商品名:CP914C、ゼオリスト社製)を用いて、該ゼオライト20g、無機バインダーとしてのジルコニアゾル(商品名:ジルコゾール20A、第一稀元素社製)9.2g、硝酸ビスマス(商品名:硝酸ビスマス(III)・5水和物、キシダ化学社製)2.65g、イオン交換水20gを混合し、室温で一時間撹拌することで、固形分濃度46.8重量%のスラリーを得た。このスラリーを、100mm×150mmのガラスペーパーに塗布して、平板状のスラリー塗布ガラスペーパーとした後、この平板状のスラリー塗布ガラスペーパーを110℃で1時間乾燥した。一方、上記のスラリーを、100mm×230mmのガラスペーパーに塗布し、スラリー塗布ガラスペーパーを波形付与金型と押さえ治具により形付けし、形付けされた波板状のスラリー塗布ガラスペーパーを110℃で1時間乾燥し、金型から剥離した。その後、平板状のスラリー塗布ガラスペーパーおよび波板状のスラリー塗布ガラスペーパーを、温度500℃で、3時間焼成することで、ゼオライトと、脱硝触媒金属としてのビスマス(Bi)と、形状維持バインダーとしてのジルコニウム化合物とが担持した平板状ガラスペーパーと、同波板状ガラスペーパーとを得た。こうして得られた触媒担持平板状ガラスペーパー2枚と、触媒担持波板状ガラスペーパー1枚とを交互に組み合わせて、ハニカム構造体を用いた燃焼排ガス浄化用の脱硝触媒を作製した。
【0075】
(実施例5)
上記実施例4の場合と同様にして、本発明によるハニカム構造体を用いた燃焼排ガス浄化用の脱硝触媒を作製するが、上記実施例4の場合と異なる点は、無機バインダーとしてのジルコニアゾル(ジルコゾール20A)の代わりに、無機バインダーとしてのアルミナゾルを含む水溶液(商品名:アルミナゾル520、日産化学社製)を用いた点にある。
【0076】
(参考例1)
上記実施例4の場合と同様にして、本発明によるハニカム構造体を用いた燃焼排ガス浄化用の脱硝触媒を作製するが、上記実施例4の場合と異なる点は、無機バインダーとしてのジルコニアゾル(ジルコゾール20A)の代わりに、無機バインダーとしてのシリカゾルを含む水溶液(商品名:シリカドール20A、日本化学工業社製)を用いた点にある。
【0077】
(参考例2)
上記実施例4の場合と同様にして、本発明によるハニカム構造体を用いた燃焼排ガス浄化用の脱硝触媒を作製するが、上記実施例4の場合と異なる点は、無機バインダーとしてのジルコニアゾル(ジルコゾール20A)の代わりに、無機バインダーとしてのチタニアゾルを含む水溶液(商品名:チタニアゾルS−300A、ミレニアム製)を用いた点にある。
【0078】
(強度評価)
つぎに、本発明による実施例4と5、および参考例1と2で得られたハニカム構造体について、各ハニカム構造体の強度を、上記の評価基準により目視によって観察し、得られた結果を、下記の表4に示した。
【0079】
(脱硝性能評価)
つぎに、本発明による実施例4と5、および参考例1と2で得られたハニカム構造体を用いた燃焼排ガス浄化用の脱硝触媒について、性能評価試験を実施した。
図1に脱硝触媒の性能評価試験装置のフロー図を示す。
【0080】
まず、
図1の試験装置において、ステンレス製反応管よりなる脱硝反応器に、ハニカム構造体を用いた燃焼排ガス浄化用の脱硝触媒を充填し、還元剤としてメタノールを濃度1800ppmで用いて、NO濃度が1000ppmの排ガスについて、下記の表2に示す試験条件で、性能評価試験を行った。
【0081】
【表2】
【0082】
なお、脱硝反応器出口のガス分析は、窒素酸化物(NOx)計を用いて、出口NOx濃度を測定した。NOx計での測定値から、下記の数式(1)によって触媒のNOx除去性能である脱硝率を算出した。
【0083】
脱硝率(%)=(NOxin−NOxout)/NOxin×100 …(1)
得られた脱硝触媒性能の評価試験の結果を、下記の表4にあわせて示した。
【0084】
(SOx耐久性評価)
本発明による実施例4と5、および参考例1と2で得られたハニカム構造体を用いた燃焼排ガス浄化用の脱硝触媒が、高濃度の硫黄酸化物(SOx)の存在下においても、窒素酸化物を効果的に低減できることを確認するために、各脱硝触媒について、硫黄酸化物三酸化硫黄(SOx)に対する耐性をテストした。
【0085】
本発明による実施例4と5、および参考例1と2で得られたハニカム構造体を用いた燃焼排ガス浄化用の脱硝触媒を、下記の表3に示す条件で、6時間、硫黄酸化物(SO
2およびSO
3)を含むガスに脱硝触媒を晒す耐性試験を実施した。なお、硫黄酸化物(SO
2およびSO
3)は、定量送液ポンプを用いて蒸発器に送り、蒸発器内でガス化してから、反応管に流入した。
【0086】
【表3】
【0087】
ついで、この硫黄酸化物(SO
2およびSO
3)晒し後の脱硝触媒を用いて、上記の場合と同様に、燃焼排ガスの浄化方法に対応する性能評価試験を実施した。得られた脱硝触媒性能の評価試験の結果を、下記の表4にあわせて示した。
【0088】
(強度評価)
つぎに、本発明による実施例4と5、および参考例1と2で得られたハニカム構造体を用いた燃焼排ガス浄化用の脱硝触媒について、脱硝触媒性能評価試験後の各ハニカム構造体を用いた燃焼排ガス浄化用の脱硝触媒を目視によって観察し、得られた結果を、下記の表4に示した。
【0089】
(ハニカム構造体を用いた燃焼排ガス浄化用の脱硝触媒の強度の観察)
○:性能評価試験後の各ハニカム構造体が正常な波形状が保持されている
△:性能評価試験後の各ハニカム構造体の波形状が少し崩れている
【0090】
【表4】
【0091】
上記表4の結果から明らかなように、本発明による実施例4と5で得られたハニカム構造体を用いた脱硝触媒では、硫黄酸化物(SO
2およびSO
3)晒し後においても、硫黄酸化物(SO
2およびSO
3)晒し前の脱硝性能の80%以上の性能を維持しており、本発明によるハニカム構造体を用いた脱硝触媒が、硫黄酸化物(SOx)耐久性に効果があることが確認された。また特に、硫黄酸化物(SOx)耐久性、および触媒強度の向上に、ジルコニウム化合物、および酸化アルミニウムの添加が有効であることが確認された。
【0092】
このように、本発明のハニカム構造体を用いた排ガス浄化用触媒によれば、高濃度の窒素酸化物(NOx)および硫黄酸化物(SOx)が存在し、しかも排ガス温度が300℃以下と低い、例えば船舶用機関すなわち船舶用大型ディーゼルエンジン、工場や発電所、地域冷暖房などの大規模ボイラー等から排出される燃焼排ガスから、窒素酸化物を効果的に低減することができるものである。
【0093】
(実施例6)
硝酸ビスマス(商品名:硝酸ビスマス(III)・5水和物、キシダ化学製)をエチレングリコール(商品名:エチレングリコール、キシダ化学製)に溶かし、そこに粒子径(D50)が7.0μmのFER型ゼオライト(商品名:CP914C、ゼオリスト社製)を加え、スラリーとした。このスラリーを60℃で3時間撹拌し、室温に冷ました後、無機バインダーとしてジルコニアゾル(商品名:ジルコゾールAC−20、第一稀元素社製)を加えた。この触媒スラリー18gを100mm×150mmに切り出したガラス繊維ペーパーに塗布して、平板状のスラリー塗布ガラスペーパーとした後、この平板状のスラリー塗布ガラスペーパーを110℃で1時間乾燥した。一方、上記のスラリーのうち、27.6gを100mm×230mmのガラスペーパーに塗布し、スラリー塗布ガラスペーパーを波形付与金型と押さえ治具により形付けし、形付けされた波板状のスラリー塗布ガラスペーパーを110℃で1時間乾燥し、金型から剥離した。その後、平板状のスラリー塗布ガラスペーパーおよび波板状のスラリー塗布ガラスペーパーを、500℃で3時間焼成した。こうして得られた平板状ガラスペーパーと波板状ガラスペーパーとを交互に組み合わせて、ハニカム構造体を作製した。
【0094】
(参考例3)
実施例6の場合と同様にして、本発明によるハニカム構造体を用いた燃焼排ガス浄化用の脱硝触媒を作製するが、上記実施例1の場合と異なる点は、エチレングリコールの代わりにイオン交換水を用いた点にある。
【0095】
(分散度評価)
つぎに、本発明による実施例6、および参考例3で得られたハニカム構造体の平板状ガラス繊維シートの両表面のビスマスの担持量を蛍光X線分析装置で測定し、得られた結果を、下記の表5に示した。
【0096】
【表5】
【0097】
上記表5の結果から明らかなように、本発明による実施例6で得られたハニカム構造体を用いた脱硝触媒では、表側及び裏側ともに脱硝触媒成分であるビスマスの量が均一に担持しているハニカム構造体の基材を得ることができる。
【0098】
また、上記の表5に示されるように、表側および裏側の双方において実施例6が参考例3よりも表面ビスマス量が多くなることが実証された。
【0099】
(SOx耐久性評価)
つぎに、本発明による実施例6、および参考例3で得られたハニカム構造体を用いた燃焼排ガス浄化用の脱硝触媒について、表6に示す条件で脱硝性能評価試験を実施し、さらに表7に示す条件で250時間の硫黄酸化物(SOx)に対する耐性をテストした。その後、硫黄酸化物(SO
2およびSO
3)晒し後の脱硝触媒を用いて表6に示す条件で再び脱硝性能評価試験を実施した。
【0100】
【表6】
【0101】
【表7】
【0102】
【表8】
【0103】
上記表5および表8の結果から明らかなように、硝酸ビスマスは、水にほとんど溶けないため、イオン交換率が低い。水溶液にビスマスを溶解させた場合、ビスマスはゼオライトに比べ重いためイオン交換されなかったビスマスは、触媒調整時に裏側表面に溜まり、そのまま触媒化される。そのため、水溶液にビスマスを溶解させて作製した脱硝触媒は、SOxと反応しやすく耐久性が低くなる。そのため、初期脱硝率は、同等であるが、耐久試験後脱硝率および脱硝性能維持率において、顕著な差が示されている。実施例6のように、ビスマス溶解のための溶媒としてエチレングリコールを用いれば、耐久性に優れたものなることが実証された。