(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663884
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】反対回転防止機構及びこれを備えた一方向クラッチ
(51)【国際特許分類】
F16D 43/02 20060101AFI20200302BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20200302BHJP
F16D 41/02 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
F16D43/02
F16H1/06
F16D41/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-95629(P2017-95629)
(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公開番号】特開2018-194035(P2018-194035A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2018年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】飯山 俊男
【審査官】
倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第10350934(DE,A1)
【文献】
特公昭40−027568(JP,B1)
【文献】
特開昭52−048763(JP,A)
【文献】
米国特許第04911032(US,A)
【文献】
特開昭63−259270(JP,A)
【文献】
実公昭56−032674(JP,Y2)
【文献】
実開昭52−155877(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D41/00−47/06
F16H19/00−39/16,49/00
F16H51/00−55/30
F16H 1/00− 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に噛み合う作動歯車及び補助歯車を備え、前記作動歯車の一方向のみの回転が可能な反対回転防止機構であって、
前記作動歯車及び前記補助歯車には、それぞれの歯車ごとに、同一形状の複数の歯が周方向に同一間隔をおいて配置され、
前記補助歯車の歯は、標準インボリュート歯車の歯形形状に形成され、
前記作動歯車の歯の一方の側面には円弧状凹部及び円弧状凸部が形成され、前記円弧状凹部は歯の基端から歯先部まで延在し、前記円弧状凸部は前記歯先部に配置され、前記円弧状凸部の径方向内側端は前記円弧状凹部の径方向外側端に接続され、前記作動歯車の歯の他方の側面は、標準インボリュート歯車の歯形形状に形成されており、
前記作動歯車が回転可能な一方向に回転したときは、前記一方の側面が前記補助歯車の歯に当接して前記補助歯車を回転させ、反対方向に回転したときは、前記他方の側面が前記補助歯車の歯先に当接して前記補助歯車にその回転中心に向けた力を作用させ、前記作動歯車及び前記補助歯車の回転が阻止され、さらに、回転が阻止された後に前記作動歯車及び前記補助歯車が再び回転可能な一方向に回転するときは、前記作動歯車の円弧状凸部が始めに前記補助歯車の歯に当接することを特徴とする反対回転防止機構。
【請求項2】
前記作動歯車の歯数は7であり、前記補助歯車の歯数は6である、請求項1に記載の反対回転防止機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の反対方向回転防止機構を備え、かつ、共通の回転軸の周りに回転可能な入力軸と出力軸とを備える一方向クラッチであって、
前記入力軸には前記作動歯車が固着されるとともに、前記出力軸には、前記共通の回転軸から偏心した位置に偏心軸が固着され、かつ、前記補助歯車が前記偏心軸に嵌め合わされて、前記作動歯車と噛み合いながら回転可能であるよう設置されており、
前記入力軸が前記補助歯車の回転可能な方向に回転したときは、前記補助歯車が自転して前記入力軸から前記出力軸に回転が伝達されず、前記入力軸が反対方向に回転したときは、前記補助歯車の回転が阻止されて前記出力軸に回転が伝達されることを特徴とする一方向クラッチ。
【請求項4】
2個の前記補助歯車が、前記作動歯車を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている請求項3に記載の一方向クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に噛み合う作動歯車及び補助歯車を備え、作動歯車は一方向のみに回転することが可能な反対回転防止機構及びこの反対回転防止機構を備えた一方向クラッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時では、例えば遊園地のような施設において、出口から施設内への不正な入場を阻止すべく、施設内から施設外への退場は許容するが施設外から施設内への入場は規制する一方通行の退場ゲートを施設の出口に設置することがある。このような退場ゲートの一例として、下記の特許文献1に示す回転可能な複数のアームを備えたゲート装置が知られており、これについて
図8を参照して説明する。
【0003】
図8に示すゲート装置GDは、本体Bとこの本体Bと対向して設置されるガイドGとを備えており、本体BとガイドGとの間に退場者が通行する退場路Xが規定される。本体Bには、退場路Xに向かって直角且つ下方に傾斜して延びる回転軸を中心として回転可能なヘッドHが配設されている。このヘッドHには退場路Xに向けて突出するように3本の棒状のアームAが放射状に付設されている。3本のアームAは、ヘッドHの回転に応じて3本のうちのいずれか1本が地面と平行であって且つ退場路Xに対して直角になりこれを塞ぐようにして、ヘッドHに付設されている。このようなゲート装置を施設の出口に設置する際には、アームAが施設内から施設外の方向にのみ回転可能であって、その反対方向には回転不能になるようヘッドHに適宜の反対回転防止機構が設けられる。
【0004】
反対回転防止機構としては、ローラーの噛み込みを利用する形式のもの、ラチェット機構を利用する形式のもの等、種々の形式のものがある。反対回転防止機構を利用した装置が反対回転防止装置であり、ローラーの噛み込みを利用する形式のものの一例として、本出願人の創案に係る特許文献2に記載されたものがあり、これについて
図9を参照して説明する。
【0005】
図9に示す反対回転防止装置OCは、回転体であるシャフトS、シャフトSが挿通される円環形状のハウジングHを備えている。ハウジングH内には周方向に間隔をおいて複数のローラー収容空間RSが設けられており、夫々のローラー収容空間RS内には金属製のローラーRが収容されている。夫々のローラー収容空間RSは、
図9において周方向右側の径方向幅が周方向左側の径方向幅よりも大きい楔形形状である。ローラー収容空間RSの径方向内側面にはローラーRの一部が露出する開口Oが形成されており、ローラーRは開口Oを通してシャフトSの外周面と接する。
【0006】
このような反対回転防止装置OCにおいてシャフトSが
図9において周方向右側に回転した場合には、シャフトSの外周面と開口Oを通して接するローラーRもローラー収容空間RS内を
図9において周方向右側に移動する。この際には、ローラーRは楔形形状の広い側へ移動することとなるため、ハウジングHとシャフトSとの間で噛み込みを生じることはなく、シャフトSの回転が規制されることはない。一方、シャフトSが
図9において周方向左側に回転した場合には、ローラーRもローラー収容空間RS内を
図9において周方向左側に移動する。この際には、ローラーRは楔形形状の狭い側へ移動することとなり、ハウジングHとシャフトSとの間で噛み込みを生じ、シャフトSの回転が規制される。つまり、シャフトSは周方向右側には回転することができるが、周方向左側には回転することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−54565号公報
【特許文献2】特許第3501352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の反対回転防止装置OCにおいては、部品点数が多く組み立てが容易ではないため、製造コストが増大する。また、通常、ローラーRは金属製であるため、少なくともハウジングHのローラー収容空間RSの外周面は金属製としなくてはならない。そのため、上述した反対回転防止装置OC全体を樹脂のような軽量且つ安価な材料で製造することはできない。
【0009】
そこで、本発明は、構造が簡易であると共に部品の材質によらない反対回転防止機構を考案すること、及びかかる反対回転防止機構を備えた一方向クラッチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題に鑑み、本願の第一発明は、両側面が周方向において対称な
歯形形状に形成された歯を有する補助歯車と、一方の側面には歯元部に円弧状凹部が形成され、他方の側面には補助歯車の歯先に当接する部位が形成された歯を有する作動歯車とを備え、作動歯車の一方向への回転は許容されるが、他方向への回転は補助歯車との干渉により規制されるようにしたものである。即ち、本願の第一発明は、
「相互に噛み合う作動歯車及び補助歯車を備え、前記作動歯車の一方向のみの回転が可能な反対回転防止機構であって、
前記作動歯車及び前記補助歯車には、それぞれの歯車ごとに、同一形状の複数の歯が周方向に同一間隔をおいて配置され、
前記補助歯車の歯は、
標準インボリュート歯車の歯形形状に形成され、
前記作動歯車の歯
の一方の側面には
円弧状凹部及び円弧状凸部が形成され、前記円弧状凹部は歯の基端から歯先部まで延在し、前記円弧状凸部は前記歯先部に配置され、前記円弧状凸部の径方向内側端は前記円弧状凹部の径方向外側端に接続され、前記作動歯車の歯の他方の側面は、標準インボリュート歯車の歯形形状に形成されており、
前記作動歯車が回転可能な一方向に回転したときは、前記一方の側面が前記補助歯車の歯に当接して前記補助歯車を回転させ、反対方向に回転したときは、前記他方の側面が前記補助歯車の歯先に当接して前記補助歯車にその回転中心に向けた力を作用させ、前記作動歯車及び前記補助歯車の回転が阻止され
、さらに、回転が阻止された後に前記作動歯車及び前記補助歯車が再び回転可能な一方向に回転するときは、前記作動歯車の円弧状凸部が始めに前記補助歯車の歯に当接する」
ことを特徴とする反対回転防止機構となっている。
【0011】
前記作動歯車の歯数は7であり、前記補助歯車の歯数は6であるのが好ましい
。
【0012】
また、本願の第二発明は、本願の第一発明にかかる反対回転防止機構を備えた一方向クラッチである。即ち、本願の第二発明は、
「請求項1
又は2に記載の反対方向回転防止機構を備え、かつ、共通の回転軸の周りに回転可能な入力軸と出力軸とを備える一方向クラッチであって、
前記入力軸には前記作動歯車が固着されるとともに、前記出力軸には、前記共通の回転軸から偏心した位置に偏心軸が固着され、かつ、前記補助歯車が前記偏心軸に嵌め合わされて、前記作動歯車と噛み合いながら回転可能であるよう設置されており、
前記入力軸が前記補助歯車の回転可能な方向に回転したときは、前記補助歯車が自転して前記入力軸から前記出力軸に回転が伝達されず、前記入力軸が反対方向に回転したときは、前記補助歯車の回転が阻止されて前記出力軸に回転が伝達される」
ことを特徴とする一方向クラッチとなっている。
【0013】
2個の前記補助歯車が、前記作動歯車を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本願の第一発明にかかる反対回転防止機構では、相互に噛み合う作動歯車及び補助歯車には、それぞれの歯車ごとに、同一形状の複数の歯が周方向に同一間隔をおいて配置される。補助歯車の歯は、
標準インボリュート歯車の歯形形状に形成されるが、作動歯車の歯は、周方向の両側面が非対称な
歯形形状に形成される。即ち、作動歯車の歯
の一方の側面には
円弧状凹部及び円弧状凸部が形成され、円弧状凹部は歯の基端から歯先部まで延在し、円弧状凸部は歯先部に配置され、円弧状凸部の径方向内側端は円弧状凹部の径方向外側端に接続されているが、作動歯車の歯の他方の側面は、標準インボリュート歯車の歯形形状に形成される。作動歯車が一方向に回転したときは、作動歯車の歯の一方の側面が補助歯車の歯の一方の側面に当接してこれを一方向に押し補助歯車を他方向に回転させる。一方、作動歯車が他方向(反対方向)に回転したときは、作動歯車の歯と補助歯車の歯とが干渉、即ち、後に言及する
図3(b)に示すとおり、作動歯車の歯の他方の側面が所定の部位にて補助歯車の歯先面と当接する。このとき、作動歯車の他方の側面は補助歯車の回転中心に向けて力を作用させるため、補助歯車と共に作動歯車の回転が阻止される。つまり、作動歯車の一方向への回転は許容されるが、他方向への回転は規制される。
【0015】
従って、本願の第一発明にかかる反対回転防止機構においては、部品点数の少ない簡易な構造で、作動歯車の一方向への回転は許容されるが他方向への回転は規制されるようにすることができる。また、作動歯車と補助歯車との干渉により両歯車の回転が規制されるため、ローラー等の金属製部品は不要である。そのため、本願の第一発明にかかる反対回転防止機構を構成する各部品については、材質の制限を受けない。
【0016】
一方、本願の第二発明である、上記本願の第一発明にかかる反対回転防止機構を備えた一方向クラッチにおいては、入力軸及び出力軸は共通の回転軸を有し、入力軸は作動歯車に固着されると共に出力軸は補助歯車に接続される。出力軸には上記共通の回転軸に対して偏心した偏心軸が固着されており、補助歯車は偏心軸に嵌め合わされて、作動歯車と噛み合いながら回転可能であるように設置される。そして、入力軸が一方向に回転したときは、入力軸に固着された作動歯車と噛み合う補助歯車が偏心軸の周りで他方向に自転し、入力軸から出力軸に回転が伝達されない。一方、入力軸が他方向に回転したときは、作動歯車と補助歯車とが干渉して補助歯車の自転が阻止される。ここで、補助歯車は共通の回転軸に対して偏心した偏心軸によって回転可能に支持されており、偏心軸を備える出力軸は共通の回転軸に対して回転可能である。そのため、補助歯車は、作動歯車により自転が阻止されるものの作動歯車と一体となって共通の回転軸の周りを公転する。つまり、入力軸の一方向への回転は入力軸が空転して出力軸に伝達されないが、入力軸の他方向への回転は出力軸に伝達される。
【0017】
従って、本願の第二発明である一方向クラッチにおいては、部品点数の削減及び組み立て容易性の観点から製造コスト及び重量を低減することが可能となる。また、ローラー等の金属製部品は不要であるため、各構成部品を樹脂で製造することも可能である。各構成部品を樹脂で製造した場合には、製造コスト及び重量をより一層低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の反対回転防止機構の構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す反対回転防止機構において、作動歯車が一方向に回転する状態を示す図である。
【
図3】
図1に示す反対回転防止機構において、作動歯車が反対方向に回転する状態を示す図である。
【
図4】
図1に示す反対回転防止機構を備えた反対回転防止装置を示す図である。
【
図5】
図1に示す反対回転防止機構を備えた一方向クラッチを示す図である。
【
図6】
図5に示す一方向クラッチにおいて、入力軸を一方向に回転させたときの状態を示す図である。
【
図7】
図5に示す一方向クラッチにおいて、入力軸を反対方向に回転させたときの状態を示す図である。
【
図8】反対回転防止機構が利用された装置の一例であるゲート装置を示す図である。
【
図9】反対回転防止機構の一例として、従来からあるローラータイプの反対回転防止装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の反対回転防止機構及びこれを備える一方向クラッチについて説明する。
図1には、本願の第一発明である反対回転防止機構の構成を示す。以下においては、一方向とは各図における反時計方向を、他方向及び反対方向とは各図における時計方向を夫々示すものとする。
【0020】
図1に示すように、本願の第一発明の反対回転防止機構は、相互に噛み合う作動歯車2及び補助歯車4を備えている。作動歯車2には、同一形状の複数(図示の実施例においては7個)の歯6が周方向に同一間隔をおいて配置されている。歯6は一方の側面8と、他方の側面10と、これら両側面8及び10を接続する平坦な歯先面12とを備えている。一方の側面8には、歯元部に円弧状凹部14が形成されている。円弧状凹部14は比較的小さな曲率を有し、歯6の基端から歯先
部まで延在している。また、歯先部には円弧状凸部16が形成されている。円弧状凸部16は比較的大きい曲率であって且つ断面が略半円形であり、径方向内側端は円弧状凹部14の径方向外側端に、径方向外側端は歯先面12の一方端に夫々接続されている。他方の側面10は一方の側面8とは非対称であり、
補助歯車4と同様の標準インボリュート歯車の
歯形形状に形成されてい
る。他方の側面10には、後述するとおり作動歯車2が反対方向に回転した際に、補助歯車4の歯先に当接する部位が形成されている。かかる部位については番号18を付し、後に言及する。
補助歯車4にも、同一形状の複数(図示の実施例においては6個)の歯20が周方向に同一間隔をおいて配置されている。歯20は一方の側面22と、他方の側面24と、両側面22及び24を接続する平坦な歯先面26とを備え、周方向の両側面22及び24は対称である。
歯20は標準インボリュート歯車の
歯形形状に形成されている。
【0021】
続いて、本願の第一発明の反対回転防止機構の作動について
図2及び
図3を参照して説明する。
図2には、作動歯車2が一方向に回転した際の作動を示し、
図3には、作動歯車2が反対方向に回転した際の作動を示す。
【0022】
作動歯車2が反時計方向に回転した際の作動について、
図2(a)に示す状態を始点として説明する。
図2(a)に示す状態においては、作動歯車2の歯6の一方の側面8に設けられた円弧状凸部16が補助歯車4の歯20の一方の側面22に当接している(当接する部位をPで示す)。かかる状態から作動歯車2が反時計方向に回転すると、作動歯車2の円弧状凸部16が補助歯車4の歯20の一方の側面22を押して補助歯車4を時計方向に回転させ、
図2(b)に示す状態になるまで作動歯車2及び補助歯車4は夫々回転する。
図2(b)に示す状態から作動歯車2が反時計方向に更に回転すると、
図2(c)に示すとおり、作動歯車2の円弧状凸部16が補助歯車4の歯20の一方の側面22から離隔すると共に、作動歯車2の歯6の時計方向側においてこれと隣接して位置する歯6´の円弧状凹部14´の基端部が、補助歯車4の歯20の反時計方向側においてこれと隣接して位置する歯20´の一方の側面22´の歯先端部に当接してこれを反時計方向に押し、補助歯車4を時計方向に更に回転させる。
図2(c)に示す状態から作動歯車2が反時計方向に更に回転すると、
図2(d)及び(e)に示すとおり、作動歯車2の円弧状凹部14´と補助歯車4の歯20´の一方の側面22´との当接点Pが補助歯車4の回転中心に向かって漸次移動しながら作動歯車2の歯6´が補助歯車4の歯20´を反時計方向に押して補助歯車4を更に時計方向に回転させる。
そして、
図2(e)に示す状態から作動歯車2が反時計方向に更に回転すると、作動歯車2の円弧状凹部14´と補助歯車4の歯20´の一方の側面22´とが離隔すると共に、作動歯車2の円弧状凸部16´が補助歯車4の歯20´の一方の側面22´と当接し、再び
図2(a)に示す状態となる。この際には、作動歯車2に形成された凸部16´によって、作動歯車2の側面14´は補助歯車4の側面20´を容易に押すことができ、作動歯車2は円滑に回転することが可能となる。
以下同様にして、作動歯車2は反時計方向に、補助歯車4は時計方向に夫々連続して回転する。
【0023】
次に、作動歯車2が時計方向に回転した際の作動について、
図3(a)に示す状態を始点として説明する。
まず、
図3(a)に示す状態においては、作動歯車2の歯6の他方の側面10が補助歯車4の歯20の他方の側面24と当接している(当接する部位をPで示す)。かかる状態から作動歯車2が時計方向に回転すると、作動歯車2の歯6の他方の側面10が補助歯車4の歯20の他方の面24を時計方向に押して補助歯車4を反時計方向に回転させる。作動歯車2及び補助歯車4が夫々所定程度回転すると、作動歯車2の歯6の反時計方向側においてこれと隣接して位置する歯6´と、補助歯車4の歯20の時計方向側においてこれと隣接して位置する歯20´とが相互に接近し、そして、
図3(b)に示すとおり、作動歯車2の歯6´の他方の側面10´、更に詳しくは部位18´が補助歯車4の歯先に当接する。このとき、作動歯車2の歯6´の他方の側面10´は、部位18´において、補助歯車4´の歯先面26´に対し、補助歯車4の回転中心に向けて力を作用させるため(その作用ベクトルを矢印で示す)、補助歯車4と共に作動歯車2の回転が阻止される。
【0024】
従って、本願の第一発明にかかる反対回転防止機構においては、部品点数の少ない簡易な構造で、作動歯車の一方向への回転は許容されるが他方向への回転は規制されるようにすることができる。また、作動歯車と補助歯車との干渉により両歯車の回転が規制されるため、ローラー等の金属製部品は不要である。そのため、本願の第一発明にかかる反対回転防止機構を構成する各部品については、材質の制限を受けない。
【0025】
続いて、
図4を参照して、上述した反対回転防止機構を備えた反対回転防止装置について説明する。
図4に示す反対回転防止装置は、上述した本願の第一発明にかかる反対回転防止機構即ち作動歯車2及び補助歯車4と、各々の歯車に固着された作動軸28及び補助軸30と、これらを収容するハウジング32とを備えている。ハウジング32は、上面のみが開放された略中空直方体形状の収容部34を有する。収容部34の一部を構成し且つ相互に対向する一対の壁面34a及び34bの上端部には、作動軸28及び補助軸30を回転可能に支持するための軸受36が夫々形成されている。軸受36はU字孔であり、壁面34a及び34bの上端は開放されている。作動歯車2及び補助歯車4は相互に噛み合った状態で作動軸28及び補助軸30が軸受36に回転可能な状態で軸支される。作動軸28は比較的長く、その一部が例えば
図8のゲート装置のヘッドなどに接続される。
【0026】
上述した反対回転防止装置の作動は、上述した本願の第一発明である反対回転防止機構と同一である。つまり、作動歯車2の一方向(即ち
図4における反時計方向)への回転は、補助歯車4の他方向(即ち
図4における時計方向)への回転と共に可能であるが、作動歯車2の他方向への回転は作動歯車2の歯6と補助歯車4の歯20とが相互に干渉して阻止される。即ち、作動歯車2に固着された作動軸28は、一方向のみの回転が許容され、他方向への回転はロックして規制される。
【0027】
次に、
図5を参照して、上述した本願の第一発明である反対回転防止機構を備えた一方向クラッチ(本願の第二発明)について説明する。
図5に示す一方向クラッチは、上述した本願の第一発明にかかる反対回転防止機構即ち作動歯車2及び補助歯車4と、共通の回転軸oの周りに回転可能な入力軸38及び出力軸40と、これらを収容するハウジング42とを備えている。ハウジング42は、上面のみが開放された略中空直方体形状の収容部44を有する。収容部44の一部を構成し且つ相互に対向する一対の壁面44a及び44bの上端部には、入力軸38及び出力軸40を回転可能に支持するための軸受46が夫々形成されている。軸受46はU字孔であり、壁面44a及び44bの上端は開放されている。入力軸38は、断面円形の棒状である入力軸部48と、入力軸部48の先端に固着された入力フランジ部50とを有する(
図5乃至
図7の下図においては何れも入力フランジ部50を省略して示している)。入力フランジ部50において、入力軸部48が固着された側とは反対側の面には作動歯車2が固着されている。作動歯車2において、入力フランジ部50が固着された側とは反対側の面には断面円形の凸部52が固着されている。出力軸40は、断面円形の棒状である出力軸部54と、出力軸部54の先端に固着された棒状の梁部56とを有する。梁部56は出力軸部54に対して直角であり、出力軸部54は梁部56の長手方向の中心に固着されている。梁部56において、出力軸部54が固着された側とは反対側の面には円形の凹部58が設けられている。梁部56の長手方向両端部には断面円形の偏心軸60が固着されている。各々の偏心軸60は、共通の回転軸oから偏心した位置において共通の回転軸oと平行に入力軸38側に延びている。
【0028】
入力軸38及び出力軸40は、入力軸部48及び出力軸部54がハウジング42の軸受46によって夫々回転可能に軸支されると共に、作動歯車2の凸部52と梁部56の凹部58とが回転可能に嵌め合わされることで、共通の回転軸oの周りで回転可能となる。また、補助歯車4は偏心軸60に嵌め合わされ、作動歯車2及び補助歯車4は相互に噛み合い回転可能な状態でハウジング42の収容部44内に設置される。図示の実施例においては、2個の補助歯車4が、作動歯車2を挟んで対向する位置にそれぞれ配置される。
【0029】
図5に示す一方向クラッチの作動について
図6及び
図7を参照して説明する。
図6に示すとおり、入力軸38が一方向(
図6の下図において反時計方向)に回転したときは、入力軸38の入力フランジ部50に固着された作動歯車2と噛み合う2個の補助歯車4は共に偏心軸60の周りで他方向(
図6の下図において時計方向)に自転するのみで、補助歯車4を公転させることはない。そのため、補助歯車4が嵌め合わされた偏心軸60を備える出力軸40が回転することはない。一方、
図7に示すとおり、入力軸38が他方向に回転したときは、作動歯車2の歯6と補助歯車4の歯20とが相互に干渉するため補助歯車4の自転は阻止される。ここで、補助歯車4は共通の回転軸oに対して偏心した偏心軸60によって回転可能に支持されており、偏心軸60を備える出力軸40は共通の回転軸oに対して回転可能である。そのため、補助歯車4は、作動歯車2により自転が阻止されるものの作動歯車2と一体となって共通の回転軸oの周りを公転することとなる。図示の実施例においては、2個の補助歯車4が作動歯車2を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されているため、作動歯車2と補助歯車4とが一体となって回転する際のバランスが良好である。以上のことから、
図5に示す一方向クラッチにおいては、入力軸38の一方向への回転は入力軸38が空転して出力軸40に伝達されないが、入力軸38の他方向への回転は出力軸40に伝達される。
【0030】
以上のことから、本願の第一発明の実施例である反対回転防止装置及び本願の第二発明である一方向クラッチにおいては、部品点数の削減及び組み立て容易性の観点から製造コスト及び重量を低減することが可能である。また、ローラー等の金属製部品は不要であるため、各構成部品を樹脂で製造することも可能である。各構成部品を樹脂で製造した場合には、製造コスト及び重量をより一層低減させることが可能となる。
【0031】
以上、本発明の反対回転防止機構及びこれを用いた一方向トルクリミッタの好適実施形態について詳述した。上記実施例においては、1個の作動歯車に対して1個又は2個の補助歯車が相互に噛み合わされていたが、補助歯車の個数は3個以上であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
2:作動歯車
4:補助歯車
6:(作動歯車の)歯
8:(作動歯車の)一方の側面
10:(作動歯車の)他方の側面
12:(作動歯車の)歯先面
14:円弧状凹部
16:円弧状凸部
18:(補助歯車の歯先に当接する)部位
20:(補助歯車の)歯
22:(補助歯車の)一方の側面
24:(補助歯車の)他方の側面
26:(補助歯車の)歯先面