(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
隣接する光ファイバを連結する連結部が間欠的に配置された間欠固定型光ファイバテープを捻ることによって、前記間欠固定型光ファイバテープを構成する複数の光ファイバを束ねる工程と、
溶融したチューブ材料の内部空間に、捻られた状態の前記間欠固定型光ファイバテープと充填材とを導入することによって、複数の光ファイバと前記充填材をチューブに収容したルースチューブを押出成形する工程と
を有するルースチューブの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0013】
複数の光ファイバと、前記複数の光ファイバを充填材とともに収容するチューブとを備えたルースチューブであって、前記複数の光ファイバは、隣接する前記光ファイバを連結する連結部が間欠的に配置された間欠固定型光ファイバテープから構成されており、前記間欠固定型光ファイバテープを構成する前記複数の光ファイバが束ねられた状態で、前記間欠固定型光ファイバテープが前記チューブ内に配置されていることを特徴とするルースチューブが明らかとなる。これにより、光ファイバテープを有するルースチューブの細径化を実現することができる。
【0014】
前記間欠固定型光ファイバテープが捻られることによって、前記間欠固定型光ファイバテープを構成する前記複数の光ファイバが束ねられていることが望ましい。これにより、複数の光ファイバ11が束ねられた状態が崩れずに安定する。
【0015】
一方向に前記間欠固定型光ファイバテープが捻られることによって、前記間欠固定型光ファイバテープを構成する前記複数の光ファイバが束ねられていることが望ましい。これにより、複数の光ファイバ11が束ねられた状態が更に崩れずに安定する。
【0016】
前記間欠固定型光ファイバテープの捻回ピッチは、50mm以上であることが望ましい。これにより、連結部の破壊を抑制できる。
【0017】
前記間欠固定型光ファイバテープは、8心以上の光ファイバから構成されていることが望ましい。これにより、連結部の破壊の抑制と、光ファイバの伝送損失の増加の抑制とを両立することが可能になる。
【0018】
前記間欠固定型光ファイバテープは、8心の光ファイバから構成されているとともに、前記間欠固定型光ファイバテープの捻回ピッチは、400mm以下であることが望ましい。これにより、連結部の破壊を抑制しつつ、光ファイバの伝送損失の増加を抑制できる。
【0019】
前記間欠固定型光ファイバテープは、12心又は24心の光ファイバから構成されているとともに、前記間欠固定型光ファイバテープの捻回ピッチは、500mm以下であることが望ましい。これにより、連結部の破壊を抑制しつつ、光ファイバの伝送損失の増加を抑制できる。
【0020】
前記チューブ内には、複数の前記間欠固定型光ファイバテープが撚り合わされて配置されていることが望ましい。これにより、ルースチューブ内に配置される複数の光ファイバの束の径(層心径)を小さくできる。
【0021】
前記光ファイバと前記連結部とのピール強度は、13.2N/m以下であることが望ましい。これにより、間欠固定型光ファイバテープに付着した充填材を清掃用シートで拭き取る際に、連結部を清掃用シートで破壊して、間欠固定型光ファイバテープを構成する複数の光ファイバを単心分離することができる。
【0022】
前記ピール強度は、3.9N/m以上であることが望ましい。これにより、熱負荷を受けたときの連結部の破壊を抑制できる。
【0023】
テンションメンバと、ルースチューブと、外被とを有するルースチューブ型光ファイバケーブルであって、前記ルースチューブは、複数の光ファイバと、前記複数の光ファイバを充填材とともに収容するチューブとを備え、前記複数の光ファイバは、隣接する前記光ファイバを連結する連結部が間欠的に配置された間欠固定型光ファイバテープから構成されており、前記間欠固定型光ファイバテープを構成する前記複数の光ファイバが束ねられた状態で、前記間欠固定型光ファイバテープが前記チューブ内に配置されていることを特徴とするルースチューブ型光ファイバケーブルが明らかとなる。これにより、光ファイバテープを有するルースチューブの細径化を実現することができるため、ルースチューブ型光ファイバケーブルの細径化を実現することができる。
【0024】
隣接する光ファイバを連結する連結部が間欠的に配置された間欠固定型光ファイバテープをルースチューブから取り出す工程と、前記間欠固定型光ファイバテープに付着した充填材を清掃用シートで拭き取る際に、前記清掃用シートで前記連結部を破壊することによって、前記間欠固定型光ファイバテープを構成する複数の光ファイバをそれぞれ単心に分離する工程とを有することを特徴とする光ファイバの単心分離方法が明らかとなる。これにより、単心分離作業が容易になる。
【0025】
隣接する光ファイバを連結する連結部が間欠的に配置された間欠固定型光ファイバテープを捻ることによって、前記間欠固定型光ファイバテープを構成する複数の光ファイバを束ねる工程と、溶融したチューブ材料の内部空間に、捻られた状態の前記間欠固定型光ファイバテープと充填材とを導入することによって、複数の光ファイバと前記充填材をチューブに収容したルースチューブを押出成形する工程とを有するルースチューブの製造方法が明らかとなる。これにより、溶融したチューブ材料と間欠固定型光ファイバテープとの接触を避けつつ、光ファイバテープを有するルースチューブの細径化を実現することができる。
【0026】
隣接する光ファイバを連結する連結部が間欠的に配置された間欠固定型光ファイバテープを用意する工程と、前記間欠固定型光ファイバテープを捻ることによって、前記間欠固定型光ファイバテープを構成する複数の光ファイバを集線する工程と、を有する光ファイバ集線方法が明らかとなる。これにより、複数の光ファイバの束の径(層心径)を小さくできる。
【0027】
===実施形態===
<ルースチューブ型光ファイバケーブル1の構造>
図1Aは、ルースチューブ型光ファイバケーブル1の断面図である。ルースチューブ型光ファイバケーブル1は、
図1Aに示すように、テンションメンバ2(抗張力体)と、複数のルースチューブ3と、外被8とを有する。テンションメンバ2の周囲に複数(ここでは6本)のルースチューブ3が集合されている。複数のルースチューブ3は、一方向の螺旋状に、若しくは周期的に螺旋方向を反転させたSZ状に、テンションメンバ2の周囲で撚り合わせて(巻き付けて)集合されている。テンションメンバ2の周囲に集合された複数のルースチューブ3の外周を押え巻きテープ7で覆い、押え巻きテープ7の外周にシース材を押出成形することによって外被8が形成され、ルースチューブ型光ファイバケーブル1が製造される。
図1Bは、ルースチューブ3の断面図である。ルースチューブ3は、
図1Bに示すように、複数の光ファイバ11と、ジェリー4と、チューブ5とを有する。例えば、ルースチューブ3は24本の光ファイバ11を有しており、24本の光ファイバ11は、2枚の12心間欠固定型光ファイバテープ10から構成されている。
【0028】
図2は、別のルースチューブ型光ファイバケーブル1の断面図である。このルースチューブ型光ファイバケーブル1は、
図2に示すように、2本のテンションメンバ2と、ルースチューブ3と、外被8とを有する。
図2に示すルースチューブ型光ファイバケーブル1は、センタールースチューブ型ケーブルなどと称されることもある。2本のテンションメンバ2に挟まれるように、ルースチューブ3が外被8内に配置されている。
図2のルースチューブ型光ファイバケーブル1においても、ルースチューブ3は、複数の光ファイバ11と、ジェリー4と、チューブ5とを有する。ルースチューブ3にテンションメンバ2を縦添えしつつ、テンションメンバ2及びルースチューブ3の周囲にシース材を押出成形することによって外被8が形成され、
図2に示すルースチューブ型光ファイバケーブル1が製造される。例えば、ルースチューブ3は96本の光ファイバ11を有しており、96本の光ファイバ11は、例えば8枚の12心間欠固定型光ファイバテープ10から構成されている。
【0029】
なお、ルースチューブ型光ファイバケーブル1は、ルースチューブ3を備えた構造であれば良く、
図1Aや
図2に示す構造に限られるものではない。例えば、複数のルースチューブ3の配置を異ならせても良いし、ルースチューブ3の数を増減させても良いし、ルースチューブ型光ファイバケーブル1を構成する構成要素を適宜変更しても良い。但し、本実施形態のルースチューブ3(
図1B及び
図2参照)の複数の光ファイバ11は、間欠固定型光ファイバテープ10から構成されている。
【0030】
図3Aは、12心の間欠固定型光ファイバテープ10の説明図である。
間欠固定型光ファイバテープ10は、複数(ここでは12本)の光ファイバ11を並列させて間欠的に連結した光ファイバテープである。隣接する2心の光ファイバ11は、連結部12によって連結されている。隣接する2心の光ファイバ11間には、複数の連結部12が長手方向に間欠的に配置されている。また、間欠固定型光ファイバテープ10の複数の連結部12は、長手方向及びテープ幅方向に2次元的に間欠的に配置されている。隣接する2心の光ファイバ11間の連結部12以外の領域は、非連結部13になっている。非連結部13では、隣接する2心の光ファイバ11同士は拘束されていない。これにより、間欠固定型光ファイバテープ10を丸めて筒状(束状)にしたり、折り畳んだりすることが可能になり、多数の光ファイバ11を高密度に束ねることが可能になる。
【0031】
なお、間欠固定型光ファイバテープ10は、
図3Aに示すものに限られるものではない。例えば、連結部12の配置を変更しても良い。また、間欠固定型光ファイバテープ10を構成する光ファイバ11の数を変更しても良い。但し、間欠固定型光ファイバテープ10を構成する光ファイバ11の本数は、後述するように8心以上であることが望ましい。これにより、連結部12の破壊を抑制しつつ、光ファイバ11の伝送損失の増加を抑制できる(後述)。
【0032】
図3Bは、間欠固定型光ファイバテープ10の隣接する2心の光ファイバ11の連結部12における断面図である。
光ファイバ11は、石英ガラスファイバ11Aと、樹脂被覆層11Bと、着色層11Cとを有する。着色層11Cは、12本の光ファイバ11を色分けするための着色剤の層である。識別マーク14が形成されている部位では、識別マーク14の塗料で構成されるマーキング層11Dが、樹脂被覆層11Bと着色層11Cとの間に形成される。ここでは、マーキング層11Dが光ファイバ11の全周に形成されているが、光ファイバ11の一部の周囲に形成されていても良い。
【0033】
連結部12は、例えば紫外線硬化型樹脂又は熱可塑性樹脂によって、隣接する2心の光ファイバ11間を連結する。光ファイバ11の着色層11Cの外側に例えば紫外線硬化型樹脂を塗布した後に、紫外線を照射して樹脂を硬化させることによって、連結部12が形成される。連結部12を構成する樹脂は、ここでは光ファイバ11の全周に塗布されている。但し、連結部12を構成する樹脂は、光ファイバ11の一部の周囲に塗布されていても良い。なお、連結部12を構成する樹脂は、隣接する2心の光ファイバ11の全区間を長手方向に沿って一旦塗布して硬化させた後、非連結部13に相当する区間をスリットする(硬化した樹脂を除去する)ことによって形成しても良い。
【0034】
本実施形態では、複数の光ファイバ11を束状に集線できるという間欠固定型光ファイバテープ10の特徴を利用して、
図1Bや
図2に示すように、間欠固定型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11を束ねた状態でルースチューブ3内に配置している。これにより、ルースチューブ3内に配置される複数の光ファイバ11の束の径(層心径)を小さくすることができ、ルースチューブ3内に多数の光ファイバ11を高密度に実装することができ、ルースチューブ3の細径化を実現できる。なお、仮に一般的な光ファイバテープ(横一列に配置された複数の光ファイバを樹脂で一括被覆した光ファイバテープ)をルースチューブ3内に配置する場合、光ファイバテープを丸めることができないため、層心径が大きくなってしまう結果、ルースチューブ3の押出成形の際に溶融したチューブ材料と幅広の光ファイバテープとが接触しやすくなり、また、溶融したチューブ材料と光ファイバテープとの接触を避けるために互いを離間させると、ルースチューブ3の径が大型化してしまう。
【0035】
更に、本実施形態では、間欠固定型光ファイバテープ10を捻る(捻回する)ことによって、間欠固定型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11を束ねている。この点について、説明する。
【0036】
図4A及び
図4Bは、間欠固定型光ファイバテープ10を捻回したときの説明図である。
図4Aは、4心の間欠固定型光ファイバテープ10を捻回したときの説明図である。
図4Bは、12心の間欠固定型光ファイバテープ10を捻回したときの説明図である。
【0037】
間欠固定型光ファイバテープ10を捻回すると、外側の光ファイバ11(テープ幅方向の端部に位置する光ファイバ11)と内側の光ファイバ11(テープ幅方向の中央部に位置する光ファイバ11)との間に張力差が生じる。捻回時の外側の光ファイバ11にかかる張力は、内側の光ファイバ11にかかる張力よりも大きくなる。なお、間欠固定型光ファイバテープ10の捻回ピッチが小さくなるほど、外側と内側の光ファイバ11の張力差が大きくなる。「捻回ピッチ」とは、
図4Aに示すように、間欠固定型光ファイバテープ10が1回捻られるまでの長手方向の長さ(mm)である。
間欠固定型光ファイバテープ10の心数が少ない場合(
図4A参照)、間欠固定型光ファイバテープ10を捻回しても、外側と内側の光ファイバ11の張力差が小さい。このため、捻回ピッチが小さくなければ、複数の光ファイバ11はテープ状のまま捻られることになる。この状態では、間欠固定型光ファイバテープ10の断面において、複数の光ファイバ11が横一列に並んでおり、間欠固定型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11は束ねられていない。
【0038】
一方、間欠固定型光ファイバテープ10の心数が多い場合(
図4B参照)、間欠固定型光ファイバテープ10を捻回すると、外側と内側の光ファイバ11の張力差が大きくなり、張力のかかる外側の光ファイバ11が最短距離を通るように変形しようとする。本実施形態で用いられている間欠固定型光ファイバテープ10(
図3A参照)には、光ファイバ11間に光ファイバ11同士を拘束しない非連結部13があるため、捻回時に外側の光ファイバ11が最短距離を通るように変形しようとすると、
図4Bに示すように、間欠固定型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11が束状に集線されることになる。これにより、複数の光ファイバ11の束の径(層心径)を小さくすることができる。
【0039】
間欠固定型光ファイバテープ10を捻回せずに間欠固定型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11を束ねた場合と比べると、間欠固定型光ファイバテープ10を捻回して間欠固定型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11を束ねた方が、ルースチューブ3内で複数の光ファイバ11が束ねられた状態が崩れずに安定する。また、ルースチューブ3内で複数の光ファイバ11が束ねられた状態を安定させるためには、間欠固定型光ファイバテープ10を一方向に捻る(捻回する)方が望ましい。仮に、周期的に捻回方向を反転させて間欠固定型光ファイバテープ10を捻回した場合(SZ状に捻回した場合)には、捻回方向が反転する部位において、複数の光ファイバ11が束ねられた状態が崩れやすくなってしまう。このため、本実施形態では、
図4Bに示すように、間欠固定型光ファイバテープ10は一方向に捻回されている。
【0040】
後述するように、間欠固定型光ファイバテープ10の捻回ピッチは、50mm以上であることが望ましい。仮に捻回ピッチが50mm未満の場合、捻回ピッチが小さ過ぎるために、間欠固定型光ファイバテープ10の連結部12が破壊されてしまうおそれがあるためである。また、8心の間欠固定型光ファイバテープ10の場合には捻回ピッチが400mm以下であることが望ましく、12心の間欠固定型光ファイバテープ10の場合には捻回ピッチが500mm以下であることが望ましい。これにより、間欠固定型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11が束状に変形し、ルースチューブ3内に配置される複数の光ファイバ11の束の径(層心径)が小さくなるため、ルースチューブ3の製造時に溶融したチューブ材料5と光ファイバ11が接触しにくくなり(
図9B参照)、光ファイバ11の伝送損失の増加を抑制できる。
【0041】
ここでは、12心間欠固定型光ファイバテープ10がそれぞれ捻られることによって各間欠固定型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11が束ねられた上で、捻回された2本の間欠固定型光ファイバテープ10がSZ状に撚り合わされることによって、24本の光ファイバ11の束が構成されている(SZ集合)。なお、捻回された2本の間欠固定型光ファイバテープ10をSZ状に集合するのではなく、一方向に螺旋状に撚り合わせても良いし(一方向集合)、捻回された2本の間欠固定型光ファイバテープ10を撚らずに集合させても良い(ストレート集合)。但し、後述するように、それぞれ捻回された複数本の間欠固定型光ファイバテープ10は、SZ集合又は一方向集合によって、撚り合わされていることが望ましい。これにより、ストレート集合した場合と比べて、ルースチューブ3内に配置される複数の光ファイバ11の束の径(層心径)を小さくできる(後述)。
【0042】
ジェリー4は、チューブ5と複数の光ファイバ11との間に充填される充填材(樹脂充填材)である(
図1B又は
図2参照)。半固形状又は流動状のジェリー4がチューブ5の内部に充填されることによって、光ファイバ11が外部衝撃から保護されると共に、チューブ5内が止水される。このため、ジェリー4は、緩衝材料や止水材料としての機能を有する。また、ルースチューブ3を押出成形する際に(
図9B参照)、溶融したチューブ材料5と間欠固定型光ファイバテープ10との間にジェリー4が介在することによって、溶融したチューブ材料5と光ファイバ11との接触が抑制される。これにより、チューブ5に光ファイバ11が付着してしまうことを抑制できる。
【0043】
チューブ5は、複数の光ファイバ11とジェリー4を収容する円管形状の樹脂である。チューブ5は、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)等を押出成形することによって形成される。チューブ5の押出成形については、後述する。
【0044】
<光ファイバ11の単心分離方法>
図5Bは、参考例の単心分離方法の説明図である。参考例の分離方法では、間欠固定型光ファイバテープ10の連結部12(
図3A及び
図3B参照)を引き裂いて、連結されていた光ファイバ11を単心に分離している。この参考例の方法では、例えば間欠固定型光ファイバテープ10の複数の光ファイバ11をそれぞれ単心にバラバラに分離する際に、連結部12を引き裂く作業を繰り返して行う必要があるため、分離作業に時間がかかってしまう。また、間欠固定型光ファイバテープ10の連結部12を引き裂く際に、光ファイバ11に曲げ力がかかるため、光ファイバ11を損傷させるおそれがある。また、分離後の光ファイバ11には、破壊された連結部12が残存してしまう。
【0045】
図5Aは、本実施形態の単心分離方法の説明図である。本実施形態では、ルースチューブ3から間欠固定型光ファイバテープ10を取り出した後、間欠固定型光ファイバテープ10に付着したジェリー4を清掃用シート(例えばワイプ紙)で拭き取る際に、清掃用シートで連結部12(
図3A及び
図3B参照)を破壊することによって、間欠固定型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11が単心分離される。
【0046】
まず、作業者は、ルースチューブ3を口出しして、間欠固定型光ファイバテープ10を取り出す。本実施形態では、ルースチューブ3内に複数枚の間欠固定型光ファイバテープ10が収容されているため、作業者は、間欠固定型光ファイバテープ10に形成されている識別マーク14に基づいて、分離作業の対象となる間欠固定型光ファイバテープ10を特定することになる。単心の光ファイバ11の識別マーク14の視認と比べると、間欠固定型光ファイバテープ10の識別マーク14は、複数の光ファイバ11に共通に形成されているため(
図3A参照)、識別マーク14の視認は容易である。
【0047】
分離作業の対象となる間欠固定型光ファイバテープ10をルースチューブ3から取り出した後、作業者は、間欠固定型光ファイバテープ10の周囲に付着したジェリー4を清掃用シートで拭き取る。このとき、作業者は、まず、シート状の清掃用シートを折り畳む。必要であれば、作業者は、クリーナー等の液体(アルコールなど)を清掃用シートにしみ込ませても良い。次に、作業者は、折り畳んだ清掃用シートの間に、間欠固定型光ファイバテープ10を挟み込む。図中では、間欠固定型の光ファイバ11を構成する複数の光ファイバ11が、横一列に配置された状態で清掃用シートの間に挟み込まれているが、このような挟み方に限られるものではなく、複数の光ファイバ11が束状になっていても良い。そして、作業者は、間欠固定型光ファイバテープ10を厚み方向から清掃用シートと介して親指と人差し指で摘まみ込み、指で厚み方向に力をかけながら清掃用シートを間欠固定型光ファイバテープ10の長手方向にスライドさせるようにして、清掃用シートでジェリー4を拭き取る。このとき、ジェリー4の拭き取りと同時に、清掃用シートで間欠固定型光ファイバテープ10の連結部12が破壊され、間欠固定型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11がそれぞれ単心に分離される。なお、清掃用シートでジェリー4を拭く回数は1回でも複数回でも良い。複数回拭く場合には、清掃用シートでジェリー4を拭く角度を変更しても良い。拭く角度を変更すると、単心分離しやすくなる。
【0048】
本実施形態の単心分離方法によれば、ジェリー4の拭き取り作業を兼ねることができるため、作業工程を削減できる。また、本実施形態の光ファイバ11の分離方法によれば、間欠固定型光ファイバテープ10の複数の光ファイバ11を一括の分離作業でそれぞれ単心分離できるため、分離作業の短縮化を図ることができる。また、清掃用シートで連結部12を破壊しているため、破壊された連結部12が清掃用シートで除去されやすく、破壊された連結部が光ファイバ11に残存しにくいという利点もある。
【0049】
ところで、連結部12は、
図3Bに示すように、光ファイバ11の着色層11Cの外側に形成されている。本実施形態の単心分離方法では、接着剤である連結部12と着色層11Cとの界面が破壊されることになる(界面破壊モード)。これに対し、
図5Bに示す参考例の分離方法によって
図3Bに示す連結部12が破壊されるときには、接着剤である連結部12自身が破壊されることになる(凝集破壊モード)。
【0050】
連結部12と着色層11Cとの界面破壊に対する強度(以下、ピール強度)は、次のようにして測定する。
図6Aに示すように、着色層11Cを構成する着色剤でアクリル板21上に厚さ0.01〜0.02mmの着色層22を施し、更にその上に、連結部12を構成する紫外線硬化型樹脂を厚さ0.05mmで塗布し、紫外線を照度300mJで照射して紫外線硬化型樹脂を固化させて接着層23を形成し、試験体20を作成する。次に、
図6Bに示すように、試験体20に2.5cm幅で切り込みを入れると共に、2.5cm幅の切り込みの端部の接着層23(連結部12に相当)に紙テープ24を取り付ける。そして、
図6Cに示すように、紙テープ24を引っ張り上げて、着色層22から接着層23をゆっくり剥がす。引っ張り速度は50mm/minとし、引っ張り方向を90°とし、紙テープ24を3cmほど引っ張り、このとき測定された引っ張り力(N)と紫外線硬化型樹脂の幅(2.5cm)とに基づいてピール強度(N/m)が算出される。なお、ピール強度は、連結部12(接着層23)と着色層11C(着色層22)との界面での破壊(界面破壊)に対する強度を示すため、
図5Bに示すような連結部12の破壊(凝集破壊)に対する強度とは異なる指標となる。
【0051】
図7は、ピール強度、連結ピッチ及び単心分離性の関係を示した表である。ピール強度は、
図6ACにより測定されたピール強度(N/m)を示している。連結ピッチは、
図3Aに示すように、或る2心の隣接する光ファイバ11間に形成される連結部12の長手方向のピッチ(mm)である。単心分離性とは、ジェリー4の拭き取り作業時における光ファイバ11の単心分離の容易さである。単心分離性の評価では、
図1Aに示すルースチューブ型光ファイバケーブル1の末端の1mを口出しして間欠固定型光ファイバテープ10を取り出し、取り出された間欠固定型光ファイバテープ10の700mmに対してアルコールをしみ込ませたキムワイプ(登録商標)で20回ほど長手方向にスライドさせてジェリー4を拭き取ったときに、間欠固定型光ファイバテープ10の光ファイバ11が単心分離された場合の評価を○(良)とし、光ファイバ11が単心分離されなかった場合の評価を×(不可)としている。
【0052】
図7の単心分離性の評価結果に示す通り、連結ピッチが25mm〜500mmの範囲では、ピール強度が13.2N/m以下であれば、間欠固定型光ファイバテープ10に付着したジェリー4を清掃用シートで拭き取る際に、連結部12を清掃用シートで破壊して、間欠固定型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11を単心分離することができる。このため、連結部12の連結ピッチが25mm〜500mmの範囲では、ピール強度は13.2N/m以下であることが望ましい。なお、ピール強度が15.3N/mの場合、連結ピッチが長くなると単心分離性が悪くなることが確認された。
【0053】
また、
図7には、ルースチューブ型光ファイバケーブル1に熱負荷をかけたときの光ファイバ11の伝送特性の評価結果も示されている。ここでは、ルースチューブ型光ファイバケーブル1に対して−30℃と+70℃のヒートサイクルを2サイクル繰り返しかけた後、初期常温時の伝送損失と比べた光ファイバ11の伝送損失が0.2dB/km以上増加した場合の評価を×(不可)とし、0.2dB/km未満の場合の評価を○(良)としている。
【0054】
伝送特性の評価結果に示す通り、ピール強度が1.0N/m以下の場合、伝送特性が悪化した。これは、ピール強度が1.0N/m以下だと連結部12の連結力が弱すぎるため、熱負荷(ヒートサイクル)を受けたときに着色層と連結層間の界面破壊(剥離)が起きて連結部12が破壊され、これにより光ファイバ11が内部(空隙)で蛇行して伝送損失が増加したためだと考えられる。一方、ピール強度が3.9N/m以上の場合、伝送特性の悪化は生じなかった。このため、ピール強度は、3.9N/m以上であることが望ましい。
【0055】
<捻回テープ10の製造方法>
本実施形態では、まず間欠固定型光ファイバテープ10を捻回しながらボビン34に巻き付けることによって、捻回された間欠固定型光ファイバテープ10(捻回テープ10)を製造する。
図8は、捻回テープ製造装置30の説明図である。捻回テープ製造装置30は、送出リール31と、送出装置32と、回転アーム33と、ボビン34とを有する。
【0056】
送出リール31は、間欠固定型光ファイバテープ10を巻き回して収容した収容体である。送出リール31に巻き回された光ファイバテープ10は、未だ捻回されていない状態である。送出リール31は、送出モーター(不図示)によって回転する。送出リール31が回転することによって、光ファイバテープ10が送出装置32に供給される。送出リール31の回転速度を制御することによって、送出装置32に供給される光ファイバテープの線速が制御される。本実施形態では、12心の間欠固定型光ファイバテープ10が送出リール31から供給される。
【0057】
送出装置32は、回転アーム33に間欠固定型光ファイバテープ10を送り出す装置である。送出装置32には、線速測定部321と、張力測定部322と、張力調整部323とを有する。線速測定部321は、光ファイバテープ10の線速を測定する測定部である。線速測定部321の測定結果に基づいて、送出リール31の回転を制御する送出モーターの出力が制御されることにより、光ファイバテープ10の線速が制御される。張力測定部322は、光ファイバテープ10の張力を測定する測定部である。張力測定部322は、例えば光ファイバテープ10をS字状に巻き付けた2つのプーリー322Aが光ファイバテープ10から受ける力を測定することによって、光ファイバテープ10の張力を測定する。なお、送出装置32の下流側に配置された2つのプーリー322Aは、回転アーム33によって形成された光ファイバテープ10の捻れが上流側に移動することを防止する機能を有する。張力調整部323は、光ファイバテープ10の張力を調整する調整部である。張力調整部323は、例えばダンサロール323Aを有する。張力測定部322の測定結果に基づいて、張力調整部323のダンサロール323Aを制御することによって、光ファイバテープ10の張力が制御される。
【0058】
回転アーム33は、間欠固定型光ファイバテープ10に捻れを形成する回転体である。回転アーム33は、基端部331とアーム部332とを有する。基端部331は、上流側に配置され回転アーム33の回転軸に沿った軸状の部位であり、回転しながら光ファイバテープ10をアーム部332に送り出す部位である。アーム部332は、基端部331よりも下流側に配置され、回転軸から径方向に離れた部位であり、ボビン34の外周を旋回しながらボビン34に光ファイバテープ10を送り出す部位である。回転アーム33には、第1プーリー333A及び第2プーリー333Bが設けられている。第1プーリー333Aは、回転軸に沿って送られてくる光ファイバテープ10の経路を径方向に変換して、光ファイバテープ10を第2プーリー333Bに送り出す部材である。第2プーリー333Bは、第1プーリー333Aから送られてくる光ファイバテープ10を、ボビン34の外周を旋回する回転アーム33の下流端に送り出す部材である。なお、回転アーム33の下流端には第3プーリー333Cが設けられている。第3プーリー333Cは、ボビン34の外周を旋回する部材である。但し、第3プーリー333Cは、無くても良い。
【0059】
第2プーリー333Bと回転アーム33の下流端(第3プーリー333C)との間には、弛み防止管334が配置されている。回転アーム33の回転速度が高くなると光ファイバテープ10が遠心力によって外側に弛む(膨らむ)ため、光ファイバテープ10を弛み防止管334に通すことによって、遠心力による光ファイバテープ10の弛みを抑えている。
【0060】
第1プーリー333A及び第2プーリー333Bは、前述の送出装置32の下流側の2つのプーリー322Aとは異なり、間欠固定型光ファイバテープ10の捻れが下流側に移動することを許容している。このため、回転アーム33が回転し、送出装置32の下流側の2つのプーリー322Aよりも下流側に光ファイバテープ10の捻れが所定量蓄積された後には、回転アーム33が1回転する毎に光ファイバテープ10に捻れが1つ形成されて、捻られた光ファイバテープ10がボビン34に供給されることになる。なお、光ファイバテープ10の捻れが下流側に移動しやすくするために、第1プーリー333A及び第2プーリー333Bに接する間欠固定型光ファイバテープ10は、折り畳まれた状態若しくは丸められた状態(筒状に束ねられた状態)であることが望ましい。これに対し、送出装置32の下流側の2つのプーリー322Aに接する間欠固定型光ファイバテープ10は、横一列に複数の光ファイバ11が並んだ状態であることが望ましい。
【0061】
ボビン34は、捻回された間欠固定型光ファイバテープ10(捻回テープ10)を巻き回す部材である。ボビン34は、光ファイバテープ10を巻き回すための円筒面を有し、この円筒面の中心軸を中心にして回転可能である。円筒面の中心軸は、回転アーム33の回転軸と同軸上に配置されている。ボビン34は、巻取モーター34Aによって、回転アーム33とは独立して回転可能である。
【0062】
また、ボビン34は、回転軸に平行な方向に往復移動可能である。ボビン34が往復移動しながら回転することによって、捻回テープ10がボビン34の円筒面にトラバース巻きされることになる。巻取モーター34Aがボビン34を回転させると、ボビン34の回転量に合わせてボビン34が回転軸と平行な方向に移動する。但し、ボビン34の回転を制御するモーターと、ボビン34の往復移動を制御するモーターを別々に設けても良い。
【0063】
ボビン34に供給された捻回テープ10は、回転アーム33の角速度とボビン34の角速度との差(角速度差)に相当する角速度でボビン34の円筒面に巻き付けられることになる。一方、回転アーム33が1回転する毎に間欠固定型光ファイバテープ10に捻れが1つ形成されて、捻られた光ファイバテープ10がボビン34に供給されることになる。なお、ボビン34に巻き付けられる捻回テープ10の線速V(m/sec)は、ボビン34に捻回テープ10を巻き付ける径D(m)と、回転アーム33とボビン34との角速度差(rad/sec)との積に相当し、送出リール31から供給される光ファイバテープ10の線速にほぼ相当する。回転アーム33の角速度と、回転アーム33とボビン34との角速度差を調整することによって、光ファイバテープ10の捻回ピッチ(
図4A参照)を調整できる。
【0064】
既に説明したように、所定の張力をかけながら間欠固定型光ファイバテープ10を捻る(捻回する)と、間欠固定型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11が束状に集線される(
図4B参照)。このため、ボビン34には、複数の光ファイバ11が束状に集線された状態の間欠固定型光ファイバテープ10(捻回テープ10)が巻き回されることになる。言い換えると、上記の捻回テープ製造装置30により、複数(ここでは12心)の光ファイバ11が束状に集線されるように捻回された間欠固定型光ファイバテープ10が製造される。
【0065】
<ルースチューブ3の製造方法>
図9Aは、ルースチューブ3を製造するルースチューブ製造装置40の説明図である。
ルースチューブ製造装置40は、ボビン34と、押出成形装置41と、冷却装置42と、引き取り機43と、ドラム44とを備えている。
【0066】
ボビン34には捻回テープ10(捻回された間欠固定型光ファイバテープ10)がトラバース巻きされており、ボビン34から押出成形装置41に捻回テープ10が供給される。例えば
図1Bに示す24本の光ファイバ11を備えたルースチューブ3を製造する場合、12心の捻回テープ10を供給するボビン34が2つ設けられることになる。仮に複数の光ファイバ11をそれぞれ単心光ファイバとしたルースチューブを製造する場合には、単心光ファイバを供給するボビンが24個も必要になり、この結果、製造設備が大型化するとともに、単心光ファイバの線速等をそれぞれ制御する必要があるため制御が複雑化する。これに対し、本実施形態では、12心の捻回テープ10を供給するボビン34が2つだけなので、製造設備が簡易になるとともに、2枚の捻回テープ10の線速を制御するだけで済むため制御が容易になる。
【0067】
2つのボビン34から供給される2つの捻回テープは、周期的に螺旋方向を反転させられてSZ状に撚り合わされて集線され(SZ集合)、24本の光ファイバ11の束が押出成形装置41に供給される。なお、2本の捻回テープ10は、SZ状に撚り合わせるのではなく、一方向に螺旋状に撚り合わせても良いし(一方向集合)、撚り合わせずに単に束ねて集合させても良い(ストレート集合)。
【0068】
押出成形装置41は、ルースチューブ3を押出成形する装置である。
図9Bは、押出成形装置41の押出ヘッドの説明図である。押出ヘッドには、ダイス411と、ニップル412とを有する。ニップル412から24本の光ファイバ11の束とジェリー4が送り出されるとともに、溶融したチューブ材料5がダイス411のダイス孔から押し出され、これにより、溶融したチューブ材料5の内部空間に複数の光ファイバ11とジェリー4とを導入され、複数の光ファイバ11とジェリー4を収容したルースチューブ3が成形される。なお、
図9Bには、ジェリー4の充填された部位に泡が描かれているが、これは、ジェリー充填部を図示するためのものであり、実際には、ジェリー4に泡が混入しないことが好ましい。
【0069】
本実施形態では、間欠固定型光ファイバテープ10を構成する複数の光ファイバ11が束ねられた状態で、溶融したチューブ材料5の内部空間に導入される。これにより、多数の光ファイバ11を高密度に集線されて、複数の光ファイバ11の束の径を細径化できるため、溶融したチューブ材料5と間欠固定型光ファイバテープ10との接触を避けることができる。また、本実施形態では、多数の光ファイバ11を高密度に集線されて、複数の光ファイバ11の束の径(層心径)を細径化できるため、ルースチューブ3の細径化を図ることができる。
【0070】
押出成形されたルースチューブ3は、引き取り機43によって引き取られつつ冷却装置42によって冷却された後、ドラム44に巻き取られることになる。言い換えると、上記のルースチューブ製造装置40により、捻回された間欠固定型光ファイバテープ10を有するルースチューブ3(
図1B又は
図2参照)が製造される。その後、ケーブル製造装置において、ドラム44からルースチューブ3が供給され、ルースチューブ型光ファイバケーブル1(
図1A又は
図2参照)が製造されることになる。
【0071】
上記のルースチューブ製造装置40は、ボビン34に一旦巻き取った捻回テープ10を押出成形装置41に供給している。但し、未捻回の間欠固定型光ファイバテープ10を捻回しつつ、捻回された間欠固定型光ファイバテープ10を巻き取らずに押出成形装置41に直接供給しても良い。
【0072】
<実施例>
図2に示す構造のルースチューブ型光ファイバケーブルを製造した。ここでは、心数の異なる間欠固定型の光ファイバテープを用いて96心のルースチューブ型光ファイバケーブルを製造した(24枚の4心間欠固定型光ファイバテープで構成した96心ルースチューブ型光ファイバケーブル、12枚の8心間欠固定型光ファイバテープで構成した96心ルースチューブ型光ファイバケーブル、8枚の12心間欠固定型光ファイバテープで構成した96心ルースチューブ型光ファイバケーブル、及び、4枚の24心間欠固定型光ファイバテープで構成した96心ルースチューブ型光ファイバケーブル)。
それぞれの間欠固定型光ファイバテープの捻回ピッチは、30mm〜800mmの範囲でそれぞれ変更した。なお、捻回ピッチは、間欠固定型の光ファイバテープが1回捻られるまでの長手方向の長さである(
図3A参照)。
また、複数枚の捻回テープ(捻回された間欠固定型の光ファイバテープ)をSZ状に撚り合わせたもの(SZ集合)、一方向に螺旋状に撚り合わせたもの(一方向集合)、撚り合わせずに集合させたもの(ストレート集合)の3種類を製造した。なお、いずれのルースチューブ型光ファイバケーブルにおいても、ケーブル外径は8mm、ルースチューブの外径は5mm、ルースチューブの内径は4mmとした。
【0073】
製造されたルースチューブ型光ファイバケーブルをそれぞれ10m長に切断し、光ファイバの余長率を測定した。光ファイバの余長率とは、光ファイバの自然長をL1とし、ケーブルの自然長をL2としたとき、((L1−L2)/L2)×100で定義される値(%)である。
また、−30℃にしたときにおける初期常温時の伝送損失と比べた光ファイバの伝送損失の増加を測定した。伝送損失は、波長1.55μmでのOTDR法によって測定した。−30℃での伝送損失については、ルースチューブ型光ファイバケーブルを低温槽に入れ、その状態を12時間保持した後に測定した。−30℃での伝送損失が0.24dB/km以上増加した場合の評価を×(不可)とし、0.24dB/km未満の場合の評価を○(良)とした。
【0074】
また、捻回テープ(捻回された間欠固定型の光ファイバテープ)の連結部の破壊の有無も評価した。ここでは、捻回テープをケーブルから5mほど引き出し、連結部が破壊されて隣接する2心の光ファイバが分離していた場合の評価を×(不可)とし、連結部の破壊が無い場合の評価を○(良)として、光ファイバの分離の有無の評価を行った。
【0075】
次の表1〜表4は、捻回ピッチ、余長率、伝送損失及び連結部の破壊の関係を示した表である。なお、各表の伝送損失の数値は、−30℃にしたときにおける初期常温時の伝送損失と比べた光ファイバの伝送損失の増加分を示している。表1は、4心間欠固定型光ファイバテープで96心ルースチューブ型光ファイバケーブルを構成した場合の表である。表2〜表4は、それぞれ、8心、12心、24心の間欠固定型光ファイバテープで96心ルースチューブ型光ファイバケーブルを構成した場合の表である。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0076】
表1〜表4の光ファイバの分離の有無の評価結果に示す通り、いずれのルースチューブ型光ファイバケーブルにおいても、捻回ピッチが30mmの場合、破壊された連結部があり、隣接する2心の光ファイバが分離することが確認された。一方、捻回ピッチが50mm以上の場合、連結部の破壊は確認されなかった。このように、捻回ピッチを小さくし過ぎると、製造中にパスラインを通過したり撚られたりするときに連結部が破壊されるため、捻回ピッチは50mm以上が望ましいことが確認された。
【0077】
表1〜表4に示す通り、伝送損失の評価結果が悪い場合には、光ファイバの余長率が大きい。これは、ルースチューブの製造時に溶融したチューブ材料と光ファイバが接触し、光ファイバと接触した状態でチューブ材料が冷却時に収縮し、これにより光ファイバの余長率が増えて蛇行することによって、その光ファイバの伝送損失が増加するためだと考えられる。
【0078】
また、表2に示すように、8心の間欠固定型の光ファイバテープを用いた場合、捻回ピッチが500mm以上のときに、光ファイバの伝送損失が悪化した。これは、捻回ピッチが大きすぎたため、ルースチューブ内に配置される複数の光ファイバの束の径(層心径)が十分に小さくならず、ルースチューブの製造時に溶融したチューブ材料と光ファイバが接触し、この結果、伝送損失が増加したためだと考えられる。一方、8心の間欠固定型の光ファイバテープを用いた場合、捻回ピッチが400mm以下のときには、光ファイバの伝送損失は良好であった。このため、8心の間欠固定型の光ファイバテープを用いた場合には、捻回ピッチが400mm以下が望ましいことが確認された。
【0079】
同様に、表3及び表4に示すように、12心又は24心の間欠固定型の光ファイバテープを用いた場合、捻回ピッチが600mm以上のときに、光ファイバの伝送損失が悪化した。一方、12心又は24心の間欠固定型の光ファイバテープを用いた場合、捻回ピッチが500mm以下のときには、光ファイバの伝送損失は良好であった。このため、12心又は24心の間欠固定型の光ファイバテープを用いた場合には、捻回ピッチが500mm以下が望ましいことが確認された。
【0080】
なお、4心の間欠固定型の光ファイバテープを用いた場合には、表1の光ファイバの分離の有無の評価結果に示す通り、捻回ピッチ30mm以下であれば、光ファイバの伝送損失は良好であった。但し、この捻回ピッチでは、捻回による連結部の破壊が生じてしまう。このため、捻回した間欠固定型の光ファイバテープを用いてルースチューブを製造する場合には、8心以上の間欠固定型の光ファイバテープを用いることが望ましい。これにより、連結部の破壊を抑制しつつ、光ファイバの伝送損失の増加を抑制できる。
【0081】
表1〜表4の伝送損失の数値の示す通り、複数の間欠固定型の光ファイバテープをSZ状又は一方向に螺旋状に撚り合わせた場合には(SZ集合又は一方向集合)、撚り合わせずに集合させたもの(ストレート集合)と比べて、伝送損失の増加を抑制できることが確認された。これは、複数の間欠固定型の光ファイバテープを撚り合わせることによって、ルースチューブ内に配置される複数の光ファイバの束の径(層心径)を小さくできるため、ルースチューブの製造時に溶融したチューブ材料と光ファイバとが接触し難くなるためだと考えられる。このため、ルースチューブ内の複数の間欠固定型の光ファイバテープは、撚り合わされていることが望ましい。
【0082】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。