(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、曲率補正機構(ミラー曲げ機構)によって反射鏡の曲率を補正すると、反射鏡の反射面が凸面状になった部分では、反射光が拡散して照度が低下し(暗くなる)、反射鏡の反射面が凹面状になった部分では、反射光が収束して照度が高まり(明るくなる)、露光面での照度分布がばらつき、露光精度に影響を及ぼす可能性がある。特許文献2に記載の露光装置は、照度分布補正フィルタの各液晶セルを制御してレチクルに照射する光の照度分布を均一にする装置であり、反射鏡の曲率補正に起因する照度分布のばらつきについて言及されていない。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ミラー曲げに起因する露光面での照度分布のばらつきを、光学フィルタにより抑制することができる露光用照明装置、露光装置及び露光方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 光源と、
p行、q列(p,qは、整数)のマトリックス状に配列された複数のレンズ素子を有し、前記光源からの光を均一にして出射するフライアイレンズと、
反射面の形状を変更可能なミラー曲げ機構を備え、前記フライアイレンズから出射された前記光を反射する反射鏡と、
を備え、
露光パターンが形成されたマスクを介して前記光源からの露光光をワーク上に照射して前記露光パターンを前記ワークに露光転写する露光用照明装置であって、
前記光源と前記フライアイレンズとの間に配置されて露光面での照度分布を変更可能な光学フィルタを更に備え、
前記光学フィルタは、p−2〜p+2行、q−2〜q+2列のマトリックス状に配列され、それぞれ光透過率分布を持った複数のセルを有し、
前記光学フィルタは、前記光の光軸に直交する方向に移動可能であることを特徴とする露光用照明装置。
(2) 前記光学フィルタは、p+2行、q+2列のマトリックス状に配列された前記複数のセルを有することを特徴とする(1)に記載の露光用照明装置。
(3) 前記光学フィルタの周囲に配置される2行の前記セルは、列方向のサイズにおいて、前記光学フィルタの内部に配置される前記セルの半分以上となるように設計され、
前記光学フィルタの周囲に配置される2列の前記セルは、行方向のサイズにおいて、前記光学フィルタの内部に配置される前記セルの半分以上となるように設計されることを特徴とする(2)に記載の露光用照明装置。
(4) 前記光学フィルタは、p+1行、q+1列のマトリックス状に配列された前記複数のセルを有することを特徴とする(1)に記載の露光用照明装置。
(5) 前記各セルは、それぞれ同一の光透過率分布を有し、
前記光学フィルタは、前記露光面での照度分布が均一となるように、前記反射鏡の反射面の形状に応じて、前記光の光軸に直交する方向に移動させることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の露光用照明装置。
(6) 前記各セルは、中心部から周辺部に向かって、次第に光透過率が高くなる光透過率分布を有することを特徴とする(5)に記載の露光用照明装置。
(7) 前記光学フィルタは、前記光の光軸に沿って移動可能であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の露光用照明装置。
(8) 複数の前記光学フィルタを前記光の光軸に沿って並べて配置することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の露光用照明装置。
(9) マスクを支持するマスク支持部と、
ワークを支持するワーク支持部と、
(1)〜(8)のいずれかに記載の露光用照明装置と、
を備え、
前記光源からの露光光を前記マスクを介して前記ワークに照射して前記マスクの露光パターンを前記ワークに露光転写することを特徴とする露光装置。
(10) (9)に記載の露光装置を使用し、前記光源からの露光光を前記マスクを介して前記ワークに照射して前記マスクの露光パターンを前記ワークに露光転写することを特徴とする露光方法。
(11) 前記光源からの露光光を前記マスクを介して前記ワークに照射している間に、前記光学フィルタを前記光の光軸に直交する方向に移動させることを特徴とする(10)に記載の露光方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の露光用照明装置によれば、光源と、p行、q列のマトリックス状に配列された複数のレンズ素子を有するフライアイレンズと、反射面の形状を変更するミラー曲げ機構を備える反射鏡と、p−2〜p+2行、q−2〜q+2列のマトリックス状に配列され、それぞれ光透過率分布を持った複数のセルを有し、光源とフライアイレンズとの間に配置されて光軸に直交する方向に移動可能な光学フィルタと、を備える。これにより、光学フィルタを光軸に直交する方向に移動させて、露光面における照度分布のばらつきを補正することができる。この結果、ミラー曲げ機構による反射面の形状変更に起因する露光面での照度分布のばらつきを、光学フィルタにより抑制することができる。
【0009】
また、本発明の露光装置及び露光方法によれば、マスク支持部で支持されるマスクと、ワーク支持部で支持されるワークと、ミラー曲げ機構による反射面の形状変更に起因する露光面での照度分布のばらつきを補正可能な光学フィルタを有する露光用照明装置と、を備え、光学フィルタで補正された光源からの露光光を、マスクを介してワークに照射して露光パターンをワークに露光転写するので、高精度な露光結果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る露光装置の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、近接露光装置PEは、被露光材としてのワークWより小さいマスクMを用い、マスクMをマスクステージ(マスク支持部)1で保持すると共に、ワークWをワークステージ(ワーク支持部)2で保持し、マスクMとワークWとを近接させて所定の露光ギャップで対向配置した状態で、照明装置3からパターン露光用の光をマスクMに向けて照射することにより、マスクMのパターンをワークW上に露光転写する。また、ワークステージ2をマスクMに対してX軸方向とY軸方向の二軸方向にステップ移動させて、ステップ毎に露光転写が行われる。
【0012】
ワークステージ2をX軸方向にステップ移動させるため、装置ベース4上には、X軸送り台5aをX軸方向にステップ移動させるX軸ステージ送り機構5が設置されている。X軸ステージ送り機構5のX軸送り台5a上には、ワークステージ2をY軸方向にステップ移動させるため、Y軸送り台6aをY軸方向にステップ移動させるY軸ステージ送り機構6が設置されている。Y軸ステージ送り機構6のY軸送り台6a上には、ワークステージ2が設置されている。ワークステージ2の上面には、ワークWがワークチャック等で真空吸引された状態で保持される。また、ワークステージ2の側部には、マスクMの下面高さを測定するための基板側変位センサ15が配設されている。従って、基板側変位センサ15は、ワークステージ2と共にX、Y軸方向に移動可能である。
【0013】
装置ベース4上には、複数(図に示す実施形態では4本)のX軸リニアガイドのガイドレール51がX軸方向に配置され、それぞれのガイドレール51には、X軸送り台5aの下面に固定されたスライダ52が跨架されている。これにより、X軸送り台5aは、X軸ステージ送り機構5の第1リニアモータ20で駆動され、ガイドレール51に沿ってX軸方向に往復移動可能である。また、X軸送り台5a上には、複数のY軸リニアガイドのガイドレール53がY軸方向に配置され、それぞれのガイドレール53には、Y軸送り台6aの下面に固定されたスライダ54が跨架されている。これにより、Y軸送り台6aは、Y軸ステージ送り機構6の第2リニアモータ21で駆動され、ガイドレール53に沿ってY軸方向に往復移動可能である。
【0014】
Y軸ステージ送り機構6とワークステージ2の間には、ワークステージ2を上下方向に移動させるため、比較的位置決め分解能は粗いが移動ストローク及び移動速度が大きな上下粗動装置7と、上下粗動装置7と比べて高分解能での位置決めが可能でワークステージ2を上下に微動させてマスクMとワークWとの対向面間のギャップを所定量に微調整する上下微動装置8が設置されている。
【0015】
上下粗動装置7は後述の微動ステージ6bに設けられた適宜の駆動機構によりワークステージ2を微動ステージ6bに対して上下動させる。ワークステージ2の底面の4箇所に固定されたステージ粗動軸14は、微動ステージ6bに固定された直動ベアリング14aに係合し、微動ステージ6bに対し上下方向に案内される。なお、上下粗動装置7は、分解能が低くても、繰り返し位置決め精度が高いことが望ましい。
【0016】
上下微動装置8は、Y軸送り台6aに固定された固定台9と、固定台9にその内端側を斜め下方に傾斜させた状態で取り付けられたリニアガイドの案内レール10とを備えており、該案内レール10に跨架されたスライダ11を介して案内レール10に沿って往復移動するスライド体12にボールねじのナット(図示せず)が連結されると共に、スライド体12の上端面は微動ステージ6bに固定されたフランジ12aに対して水平方向に摺動自在に接している。
【0017】
そして、固定台9に取り付けられたモータ17によってボールねじのねじ軸を回転駆動させると、ナット、スライダ11及びスライド体12が一体となって案内レール10に沿って斜め方向に移動し、これにより、フランジ12aが上下微動する。
なお、上下微動装置8は、モータ17とボールねじによってスライド体12を駆動する代わりに、リニアモータによってスライド体12を駆動するようにしてもよい。
【0018】
この上下微動装置8は、Z軸送り台6aのY軸方向の一端側(
図1の左端側)に1台、他端側に2台、合計3台設置されてそれぞれが独立に駆動制御されるようになっている。これにより、上下微動装置8は、ギャップセンサ27による複数箇所でのマスクMとワークWとのギャップ量の計測結果に基づき、3箇所のフランジ12aの高さを独立に微調整してワークステージ2の高さ及び傾きを微調整する。
なお、上下微動装置8によってワークステージ2の高さを十分に調整できる場合には、上下粗動装置7を省略してもよい。
【0019】
また、Y軸送り台6a上には、ワークステージ2のY方向の位置を検出するY軸レーザ干渉計18に対向するバーミラー19と、ワークステージ2のX軸方向の位置を検出するX軸レーザ干渉計に対向するバーミラー(共に図示せず)とが設置されている。Y軸レーザ干渉計18に対向するバーミラー19は、Y軸送り台6aの一側でX軸方向に沿って配置されており、X軸レーザ干渉計に対向するバーミラーは、Y軸送り台6aの一端側でY軸方向に沿って配置されている。
【0020】
Y軸レーザ干渉計18及びX軸レーザ干渉計は、それぞれ常に対応するバーミラーに対向するように配置されて装置ベース4に支持されている。なお、Y軸レーザ干渉計18は、X軸方向に離間して2台設置されている。2台のY軸レーザ干渉計18により、バーミラー19を介してY軸送り台6a、ひいてはワークステージ2のY軸方向の位置及びヨーイング誤差を検出する。また、X軸レーザ干渉計により、対向するバーミラーを介してX軸送り台5a、ひいてはワークステージ2のX軸方向の位置を検出する。
【0021】
マスクステージ1は、略長方形状の枠体からなるマスク基枠24と、該マスク基枠24の中央部開口にギャップを介して挿入されてX,Y,θ方向(X,Y平面内)に移動可能に支持されたマスクフレーム25とを備えており、マスク基枠24は装置ベース4から突設された支柱4aによってワークステージ2の上方の定位置に保持されている。
【0022】
マスクフレーム25の中央部開口の下面には、枠状のマスクホルダ26が設けられている。即ち、マスクフレーム25の下面には、図示しない真空式吸着装置に接続される複数のマスクホルダ吸着溝が設けられており、マスクホルダ26が複数のマスクホルダ吸着溝を介してマスクフレーム25に吸着保持される。
【0023】
マスクホルダ26の下面には、マスクMのマスクパターンが描かれていない周縁部を吸着するための複数のマスク吸着溝(図示せず)が開設されており、マスクMは、マスク吸着溝を介して図示しない真空式吸着装置によりマスクホルダ26の下面に着脱自在に保持される。
【0024】
図2に示すように、本実施形態の露光装置PEの照明装置3は、紫外線照射用の光源である例えば高圧水銀ランプ61、及びこの高圧水銀ランプ61から照射された光を集光するリフレクタ62をそれぞれ有する複数のランプユニット60と、光路ELの向きを変えるための平面ミラー63と、それぞれが同一の光透過率分布を有しマトリックス状に配列された複数のセル91を備える光学フィルタ90(
図3参照)と、照射光路を開閉制御する露光制御用シャッターユニット64と、露光制御用シャッターユニット64の下流側に配置され、マトリックス状に配列された複数のレンズ素子65aを備えてリフレクタ62で集光された光を照射領域においてできるだけ均一な照度分布となるようにして出射するフライアイレンズ65と、フライアイレンズ65から出射された光路ELの向きを変えるための平面ミラー66と、高圧水銀ランプ61からの光を平行光として照射するコリメーションミラー67と、該平行光をマスクMに向けて照射する平面ミラー68と、を備える。
【0025】
図3(a)に示すように、光学フィルタ90は、光路ELに直交する平面に沿った2方向、且つ、光路ELに沿った方向に移動可能である。具体的に、光学フィルタ90は、周囲に設けられたフレーム92を駆動装置93によって駆動することで、各方向に移動可能である。また、駆動装置93は、光学フィルタ90を光路ELから退避させる不使用状態の位置へ移動させることもできる。なお、光学フィルタ90は、光路ELに沿って移動させることで、露光面における照度の強さを調節することができる。例えば、光学フィルタ90をフライアイレンズ65に接近させるほど、各セル91の光透過率が低くなっている部分によって露光面における照度をさらに低下することができる。
【0026】
また、光学フィルタ90は、フライアイレンズ65に対して傾斜させることもできる。具体的に、光学フィルタ90は、光路ELに直交する方向に延びる任意の軸線CLを中心として揺動させることで、傾斜させることができる。光学フィルタ90は、フライアイレンズ65に対して傾斜させることで、フライアイレンズ65に近づいた部分による露光面における照度への影響が強くなり、フライアイレンズ65から遠ざかった部分による露光面における照度への影響が弱くなる。
さらに、光学フィルタ90を曲げることにより、露光面における照度への影響を変えるようにしてもよい。
【0027】
図3(b)に示すように、光学フィルタ90の複数のセル91はそれぞれ、中心部の光透過率が周辺部の光透過率より低い、具体的には、中心部から周辺部に向かって、次第に光透過率が高くなる同一の光透過率分布を有している。
【0028】
中心部から周辺部に向かう光透過率の変化は、線形的変化、正弦波的変化、指数関数的変化、ガウス関数的変化など、任意に設定可能である。光透過率分布は、光学フィルタ90の石英基板にクロムのドットパターンを蒸着するものや、蒸着多層膜により中心から放射状に透過率が変化する光学フィルタなどによって設けることができる。光透過率は、ドットパターンの大きさや密度を変えることで任意に設定することができる。ドットパターンの形状は、矩形、円形、楕円形など、任意に設定できる。なお、光学フィルタ90の材料は、石英基板が望ましいが、ソーダガラスであってもよい。
【0029】
光学フィルタ90のセル91は、フライアイレンズ65のレンズ素子65aの大きさと略同じ大きさとなっている。マトリックス状に配列された光学フィルタ90の複数のセル91は、マトリックス状に配列されたフライアイレンズ65の複数のレンズ素子65aより、2行、2列だけ大きくなっている。即ち、フライアイレンズ65のレンズ素子65aがp行、q列(p、qは、整数)のマトリックス状に配列されている場合、光学フィルタ90のセル91は、p+2行、q+2列のマトリックス状に配列されている。
なお、フライアイレンズ65のレンズ素子65aと光学フィルタ90のセル91とは、互いの行と列の方向がそれぞれ一致するように配置されている。
【0030】
従って、セル91が5列、5行のマトリックス状に配列された
図3(b)に示す光学フィルタ90は、レンズ素子65aが3列、3行のマトリックス状に配列されたフライアイレンズ65に対応可能である。これにより、光学フィルタ90を光路ELに直交する方向に1セル分の範囲で移動させても、フライアイレンズ65のレンズ素子65aの全面が、光学フィルタ90のセル91と対向している。
【0031】
なお、光学フィルタ90は、不図示の切換え機構により他の光透過率分布を有する光学フィルタ90に変更可能としてもよい。また、必要に応じて、不図示のノズルから冷却空気を吹き付けて光学フィルタ90を冷却することもできる。光学フィルタ90の周辺部を冷却する場合には、光学フィルタ90の周囲に設けられたフレーム92に冷却水を循環させて冷却するようにしてもよい。
【0032】
その他、照明装置3では、高圧水銀ランプ61は、単一のランプであってもよく、或いは、LEDによって構成されてもよい。また、光学フィルタ90と露光制御用シャッターユニット64の設置順は、逆であってもよい。さらに、フライアイレンズ65と露光面との間には、DUVカットフィルタ、偏光フィルタ、バンドパスフィルタが配置されてもよい。
【0033】
また、
図4に示すように、平面ミラー68は、正面視矩形状に形成されたガラス素材からなる。平面ミラー68は、平面ミラー68の裏面側に設けられた複数のミラー変形ユニット(ミラー曲げ機構)70によりミラー変形ユニット保持枠71に支持されている。
【0034】
各ミラー変形ユニット70は、平面ミラー68の裏面に接着剤で固定されるパッド72と、一端がパッド72に固定された支持部材73と、支持部材73を駆動するアクチュエータ74と、を備える。
【0035】
支持部材73には、保持枠71に対してパッド72寄りの位置に、±0・5deg以上の屈曲を許容する屈曲機構としてのボールジョイント76が設けられており、保持枠71に対して反対側となる他端には、アクチュエータ74が取り付けられている。
【0036】
さらに、マスク側のアライメントマーク(図示せず)の位置に露光光を反射する平面ミラー68の各位置の裏面には、複数の接触式センサ77が取り付けられている。
【0037】
これにより、平面ミラー68は、信号線81により各アクチュエータ74に接続されたミラー制御部80からの指令に基づいて(
図2参照)、接触式センサ77によって平面ミラー68の変位量をセンシングしながら、各ミラー変形ユニット70のアクチュエータ74を駆動して、各支持部材73の長さを変えることによって、平面ミラー68の形状を変更し、反射面の曲率を局部的に変更することで、平面ミラー68のデクリネーション角を補正することができる。
【0038】
その際、各ミラー変形ユニット70には、ボールジョイント76が設けられているので、支持部側の部分を三次元的に回動可能とすることができ、各パッド72を平面ミラー68の表面に沿って傾斜させることができる。このため、各パッド72と平面ミラー68との接着剥がれを防止するすると共に、移動量の異なる各パッド72間における平面ミラー68の応力が抑制され、平均破壊応力値が小さいガラス素材からなる場合であっても、平面ミラー68の形状を局部的に変更する際、平面ミラー68を破損することなく、10mmオーダーで平面ミラー68を曲げることができ、曲率を大きく変更することができる。
【0039】
このように構成された露光装置PEでは、照明装置3において、露光時に露光制御用シャッターユニット64が開制御されると、高圧水銀ランプ61から照射された光が、平面ミラー63で反射されてフライアイレンズ65の入射面に入射される。そして、フライアイレンズ65の出射面から発せられた光は、平面ミラー66、コリメーションミラー67、及び平面ミラー68によってその進行方向が変えられるとともに平行光に変換される。そして、この平行光は、マスクステージ1に保持されるマスクM、さらにはワークステージ2に保持されるワークWの表面に対して略垂直にパターン露光用の光として照射され、マスクMのパターンがワークW上に露光転写される。
【0040】
ここで、ワークWの露光済みのパターンに対応してワークW上に露光転写されるマスクMのパターンを補正するため、ミラー制御部80から平面ミラー68の各アクチュエータ74に対して駆動信号を伝達すると、各ミラー変形ユニット70のアクチュエータ74は、各支持部材73の長さを変えて、平面ミラー68の形状を局部的に変更して、平面ミラー68のデクリネーション角を補正する。
【0041】
このとき、平面ミラー68の局部的な形状変更により、マスクMに照射される露光光の照度も局部的に変化する。即ち、露光面における照度分布が悪化し、ワークWの露光精度に影響を及ぼす可能性がある。具体的には、アクチュエータ74によって平面ミラー68が裏面から押されて、平面ミラー68の反射面が凸面状になった部分では、反射光が拡散して照度が低下する(暗くなる)。また、アクチュエータ74によって平面ミラー68の裏面が引かれて、平面ミラー68の反射面が凹面状になった部分では、反射光が収束して照度が高まる(明るくなる)。
【0042】
一方、中心部の光透過率が周辺部のものより低い複数のセル91を備えた光学フィルタ90は、
図5(a)に示すように、光路ELに直交する方向に移動させると、各セル91の光透過率が低い部分(中央近傍)を通った光が、フライアイレンズ65の各レンズ素子65aを通って重なり合うことで露光面での照度分布が変化し、露光面での一部の照度が低下する(
図5(b))。
【0043】
このため、光学フィルタ90を光路EL上に配置し、平面ミラー68の形状変更により、露光面における照度が高い部分に対応する各レンズ素子65aの部分に、セル91の光透過率が低い中心部を対向させるように、光学フィルタ90を移動させる。これにより、露光面における照度分布のばらつきは、照度が高い部分の照度を光学フィルタ90を用いて低下させることで補正することができ、照度分布を改善することができる。
【0044】
なお、フライアイレンズ65のマトリックス配置されたレンズ素子65aの数(目の数)が多くなると平均化されて露光面での照度分布の変化も小さくなる。レンズ素子65aは、縦方向に3個以上、横方向に3個以上で並ぶように配置されるものから適宜設定されればよく、光学フィルタ90のセル91の数も、フライアイレンズ65のレンズ素子65aの数に応じて適宜設計される。
【0045】
以下、
図6〜
図12を用いて、平面ミラー68を形状変更させた場合に、光学フィルタ90を用いて照度分布を補正したシミュレーション結果について説明する。
【0046】
例えば、
図6(a)は、平面ミラー68の形状変更により照射領域が略台形となり、露光面(ワークW上)における露光光の照度分布が、露光面の左右方向では略均等であるが、上下方向では下方部分が低下している。このような照度分布の補正は、
図7に示すように、フライアイレンズ65に対して、光学フィルタ90をセル91の略3/4ピッチだけ図中下方に相対移動させて、光透過率が低くなっている各セル91の中心部を、フライアイレンズ65の各レンズ素子65aの上部に対向させる。
【0047】
これにより、露光面における照度分布は、
図6(b)に示すように、照度が高い部分の照度が低下して全体として略均等になり、露光精度が向上する。なお、必要に応じて、光学フィルタ90を光路ELに沿って移動させることで照度を落としたい場所の露光光の強度が調節可能である。
【0048】
図8(a)は、平面ミラー68の形状変更により照射領域が略たる形となり、露光面における露光光の照度分布が露光面の中央部分が低下している。このような照度分布の補正は、
図9に示すように、フライアイレンズ65に対して、光学フィルタ90を図中上下方向に略1/2ピッチ、左右方向に略1/2ピッチ相対移動させて、各セル91の光透過率が低くなっている中心部を、フライアイレンズ65の各レンズ素子65aの周辺部に対向させる。これにより、露光面における照度分布は、
図8(b)に示すように、照度が高い周辺部の照度が低下して全体として略均等になる。
【0049】
図10(a)は、平面ミラー68の形状変更により照射領域が略糸巻き形となり、露光面における露光光の照度分布が露光面の中央部分で高くなっている。このような照度分布の補正は、
図11に示すように、フライアイレンズ65の各レンズ素子65aと光学フィルタ90の各セル91の位置を一致させる。これにより、露光面における照度分布は、
図10(b)に示すように、照度が高い中央部分の照度が低下して全体として略均等になる。
【0050】
図12(a)では、平面ミラー68の形状変更により、曲率半径が小さい凹曲面状の部分によって照射された露光面の左上部分(図中、円Cで囲む部分)の照度分布が高くなっている。このような照度分布の補正は、平面ミラー68の曲率半径が小さい部分を照射するフライアイレンズ65の各レンズ素子65aの位置に、光学フィルタ90の各セル91の光透過率が低くなっている部分が一致するように光学フィルタ90を移動する。これにより、露光面における照度分布は、
図12(b)に示すように、照度が高い左上部分の照度が低下して全体として略均等になる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の照明装置3によれば、ランプユニット60と、p行、q列のマトリックス状に配列された複数のレンズ素子65aを有するフライアイレンズ65と、反射面の形状を変更するミラー変形ユニット70を備える平面ミラー68と、p+2行、q+2列のマトリックス状に配列され、それぞれ光透過率分布を持った複数のセル91を有し、ランプユニット60とフライアイレンズ65との間に配置されて光路ELに直交する方向に移動可能な光学フィルタ90と、を備える。これにより、光学フィルタ90を光路ELに直交する方向に移動させて露光面における照度を変更し、照度分布のばらつきを補正することができる。この結果、ミラー変形ユニット70による反射面の形状変更に起因する露光面での照度分布のばらつきを、光学フィルタ90により抑制することができる。
【0052】
また、各セル91は、同一の光透過率分布を有し、露光面での照度分布が均一となるように、反射面の形状に応じて、光学フィルタ90を光路ELに直交する方向に移動させるので、反射面の曲げ方向(凹凸)や曲率補正の大きさなどに係わらず、照度分布を補正してワークWを均一に露光することができる。
【0053】
また、各セル91は、中心部から周辺部に向かって、次第に光透過率が高くなる光透過率分布を有するので、反射面の形状変更により照度が高くなった部分に、各セル91の中心部を一致させ、照度が高い部分の照度を低下させて、露光面における照度分布を均一にすることができる。
【0054】
また、光学フィルタ90は、光路ELに沿って移動可能であるので、露光面における照度の強さを調節することができる。
【0055】
更に、本実施形態の露光装置PE及び露光方法によれば、マスクステージ1で支持されるマスクMと、ワークステージ2で支持されるワークWと、ミラー変形ユニット70による反射面の形状変更に起因する露光面での照度分布のばらつきを補正可能な光学フィルタ90を有する照明装置3と、を備え、ランプユニット60からの露光光を光学フィルタ90で補正し、マスクMを介してワークWに照射して露光パターンをワークWに露光転写するので、高精度な露光結果が得られる。
【0056】
なお、上記実施形態では、光学フィルタ90の各セル91は、それぞれ同じサイズに設計されている。しかしながら、本発明では、
図13に示すように、光学フィルタ90の周囲に配置される上下の2行のセル91は、列方向(上下方向)のサイズにおいて、光学フィルタ90の内部に配置されるセル91の半分以上(
図12では、半分)となるように設計されればよい。また、光学フィルタ90の周囲に配置される左右の2列のセル91は、行方向(左右方向)のサイズにおいて、光学フィルタ90の内部に配置されるセル91の半分以上(
図12では、半分)となるように設計されればよい。これにより、
図13に示す光学フィルタ90は、
図3(b)に示すものに比べて、上下方向、及び左右方向において1セル分ずつ小さくすることができる。この場合、光学フィルタ90の周囲に配置される各セル91は、内部に配置されるセル91と同一の光透過率分布を有するものを所定のサイズに切断することで与えられる。
【0057】
また、本発明では、
図14に示すように、光学フィルタ90は、p+1行、q+1列のマトリックス状に配列され、それぞれ同一の光透過率分布を持った複数のセル91を有するものであってもよい。即ち、光学フィルタ90は、フライアイレンズ65のp行のレンズ素子65aに対応するp行のセル91に対して、行方向(左右方向)のいずれか一方(
図14では、右方)に1行のセル91が配置され、且つ、フライアイレンズ65のq列のレンズ素子65aに対応するq列のセル91に対して、列方向(上下方向)のいずれか一方(
図14では、下方)に1列のセル91が配置される構成であってもよい。この場合も、上記実施形態の光学フィルタ90と同様に、フライアイレンズ65に対して、光学フィルタ90を光路ELに直交する方向に移動させることで、露光面における照度を変更することができる。
【0058】
また、本発明では、
図15(a)に示すように、光学フィルタ90は、p−2行、q−2列のマトリックス状に配列され、それぞれ同一の光透過率分布を持った複数のセル91を有するものであってもよい。この場合、光学フィルタ90のセル91は、フライアイレンズ65のp行、q列のレンズ素子65aのうち、上下2行、左右2列に位置するレンズ素子65aは、該レンズ素子65aに対応するセル91がなく、照度を低減することができない。しかしながら、中心部のレンズ素子65aに比較して、外周部のレンズ素子65aから照射される照射光の照度は暗いので実用上の影響は小さい。このため、該変形例の場合も、上記実施形態の光学フィルタ90と同様に、フライアイレンズ65に対して、光学フィルタ90を光路ELに直交する方向に移動させることで、露光面における照度を変更することができる。
【0059】
さらに、
図15(b)に示すように、光学フィルタ90は、p−1行、q−1列のマトリックス状に配列され、それぞれ同一の光透過率分布を持った複数のセル91を有するものであってもよい。この場合も、光学フィルタ90のセル91は、フライアイレンズ65のp行、q列のレンズ素子65aのうち、上下1行、左右1列に位置するレンズ素子65aは、該レンズ素子65aに対応するセル91がなく、照度を低減することができない。しかしながら、中央部のレンズ素子65aに比較して、外周部のレンズ素子65aから照射される照射光の照度は暗いので実用上の影響は小さい。このため、該変形例の場合も、上記実施形態の光学フィルタ90と同様に、フライアイレンズ65に対して、光学フィルタ90を光路ELに直交する方向に移動させることで、露光面における照度を変更することができる。
なお、光学フィルタ90のセル91は、フライアイレンズ65のレンズ素子65aと同じ、p行、q列のマトリックス状に配列されたものであってもよい。
【0060】
また、
図16に示すように、光学フィルタ90は、中央部(図では、3行×3列)に位置する各セル91Aと、外周部(図では、上下2行、左右2列)に位置するセル91Bとによって構成されてもよい。各セル91A、91Bは、中心部から周辺部に向かって、次第に光透過率が高くなる光透過率分布を有すると共に、中央部の各セル91Aの中心部よりも外周部のセル91Bの中心部のほうが光透過率が高くなるように設定する。上述したように、中央部のレンズ素子65aから照射される照射光の照度が強く、外周部のレンズ素子65aから照射される照射光の照度が弱くなるため、上記の光学フィルタ90を設けることで、各レンズ素子65aから照射される照射光による照度の影響を平均化することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、光学フィルタ90の枚数は、1枚で設計されているが、2枚以上の光学フィルタ90を光の光軸に沿って並べて配置するようにしてもよい。これにより、例えば、上記実施形態の2枚の光学フィルタ90を、光透過率が低くなっている中心部の位置をずらして配置することで、露光面における複数個所の照度分布を調節して露光面における照度分布を均一にすることができる。
なお、露光面における複数個所の照度分布の調節は、露光制御用シャッターユニット64が開いている間に、光学フィルタ90を移動させることによっても達成可能である。
【0062】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、上記実施形態の光学フィルタの光透過率分布は、中心部の光透過率が周辺部の光透過率より低いとして説明したが、これとは逆に、中心部の光透過率が周辺部の光透過率より高い光透過率分布を有する光学フィルタであってもよい。この場合も、露光面における照度が高い部分に、光学フィルタの光透過率が低い部分を対向して配置することで、露光面における照度分布を均一にすることができる。
【0063】
また、光学フィルタの位置は、フライアイレンズのランプユニット側としたが、2枚のフライアイレンズの間に配置することもできる。
さらに、光学フィルタのセルのピッチは、一定として説明したが、ランプユニットからの光が平行光ではなく、わずかに集光しながら、あるいは拡散しながら光学フィルタを通ってフライアイレンズに入射するような場合は、平行光と光路との角度に合わせて、光学フィルタの各セルのピッチをずらしてもよい。
【0064】
なお、本発明は、2015年5月26日出願の日本特許出願(特願2015−106049)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。