【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記目的は、請求項1に記載の流体接触トレイ、すなわち、分留塔用流体接触トレイ、特に海上分留塔での使用に適した気液接触トレイを提供することにより達成される。このトレイは、
流体が通る1つ以上の開口部を有し、密度が異なる2つの流体を接触させるのに適した活性物質移動面と、前記活性物質移動面の周辺部に配置され、この物質移動面を少なくとも部分的に取り囲み、流体の回収に適した底部を有する環状流路とを備えたトレイデッキであって、上記活性物質移動面には、この活性物質移動面を少なくとも2つの部分に分ける少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも2つの分離壁及び/又は少なくとも1つの分離堰が配置されるトレイデッキ、
鉛直方向に下方へと液体を分配するのに適した底部に開口を有する中空体の形状を有し、上記環状流路から流体の回収と排出を行い、上記流体接触トレイに回転不可能に固定されることが好ましい中央下降管、及び
上記環状流路に回収された流体を環状流路から中央下降管へと移動させる少なくとも1つの通流手段
を備える。
【0011】
上記解決手段は、活性物質移動面に配置された少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも2つの分離壁及び/又は少なくとも1つの分離堰を設け、活性物質移動面の周辺部に配置され、この物質移動面を少なくとも部分的に取り囲み、流体の回収に適した底部を有する環状流路を設け、鉛直方向に下方へと液体を分配するのに適した底部に開口を有する中空体の形状を有し、環状流路から流体の回収と排出を行い、流体接触トレイに回転不可能に固定されることが好ましい中央下降管を流体接触トレイに設け、環状流路に回収された流体を環状流路から中央下降管へと移動させる通流手段を少なくとも1つ設けることにより、動きが生じた場合でも分離効率を維持した海上分留塔での使用に大変よく適したものとなるよう、その動作時に、動的傾斜、すなわち、不規則に変化する角度を有する傾斜等の動きが生じた場合でも、相特に液相が少なくともより均一に分布する分留塔用流体接触トレイが得られるという驚くべき知見に基づくものである。中央下降管によって、流体接触トレイを備える分留塔に与える動きの影響が、動きの方向に関係なく同じになる。また、中央下降管によって、液体の回収と混合が単一の下降管において行われ、それにより、通流手段を介して環状流路から中央下降管へと移動する液体の密度勾配を均一にすることができる。また、中央下降管を底部に開口を有する形状、すなわち、中空体、好ましくは、中空円筒とすることにより、隣接する流体接触トレイのトレイデッキの上側へ鉛直方向に下方へと液体を分配することが可能になる。これにより、動きが生じた場合でも、流体接触トレイのトレイデッキの活性物質移動面の表面に液体を均一に分配することができる。さらに、トレイデッキの活性物質移動面に配置された分離壁及び/又は1つ以上の分離堰によってトレイデッキの活性物質移動面がいくつかの部分に分けられることで、流体接触トレイが傾斜した場合でも、不均衡分布の結果として分離効率の大きな低下につながるトレイデッキの一部のみに流体が回収されることが回避される。これは、液体が1つ以上の分離壁及び/又は1つ以上の分離堰によってトレイデッキの各部分に流され、トレイデッキと活性物質移動面を少なくともほぼ均一に覆うためである。
【0012】
また、底部に開口を有する中央下降管を設け、活性物質移動面の周辺部に配置され、この物質移動面を少なくとも部分的に取り囲み、流体の回収に適した底部を有する環状流路を設け、環状流路に回収された流体を環状流路から中央下降管へと移動させる通流手段を設けることにより、分留塔の各流体接触トレイにおいて並行の流れが生じる、すなわち、液体が各流体接触トレイのトレイデッキをその中央部から周辺部へと流れ(すなわち、液体が各流体接触トレイの活性物質移動面をその活性物質移動面の径方向内側端から周辺部へと流れ)、その後、液体は各流体接触トレイの、すなわち、その周辺部の環状流路から中央下降管、すなわち、その中央部へと移動する。このような液体の流れの配置を、一般的に、直交流トレイの対語として並流トレイと呼ぶ。並流は、直交流に比べて分離効率が向上する(ルイスケース2対ルイスケース3)。本発明に係る流体接触トレイの中央部から周辺部への並流とは対照的に、スリットトレイ型AM(Sulzer社の登録商標)と呼ばれる従来技術のトレイは、反対の方向の並流を有するものとして知られている。このAMトレイでは、液体は、移動された地点から分配アームを介して周辺部へと中央下降管に直接流れ込み、隣接する流体接触トレイの活性物質移動面上に放出される。このようなAMトレイは、トレイの動きに対して、特に、塔軸(column axis)の垂直配向からのずれに対してさらに敏感である。
【0013】
また、活性物質移動面の周辺部に配置され、この物質移動面を少なくとも部分的に取り囲み、流体の回収に適した底部を有する環状流路を設けることで、活性物質移動面の周辺部から環状流路へと流れる混合物の液体と蒸気とを効率的かつ完全に分離させ、ほぼ液体だけを中央下降管へと移動させることができる。
【0014】
概して、本発明に係る分留塔用流体接触トレイは、特に分留塔が動きにさらされても、トレイデッキにおける蒸気と液体の不均衡分布並びにトレイからトレイへと中央下降管を介して移動する液体の密度偏差を確実に防ぐため、特に分留塔が海上に配置されることによる傾斜等の動きにさらされても、分離効率が大幅に向上することを特徴とする。
【0015】
これにより、トレイの代わりに、所定の流体処理量で同じ分離効率を得るための充填物を備える各塔と比べて、分留塔の寸法が大幅に、すなわち、35%以上小さくなることもある。そのため、本発明に係る分留塔用流体接触トレイは、海上分留塔での使用に大変よく適したものとなる。
【0016】
本発明に係る中央下降管とは、上記トレイを備えた分留塔の縦軸と少なくともほぼ同軸に配置される、すなわち、トレイデッキの少なくともほぼ中心に配置される下降管を意味する。
【0017】
また、本発明に係る活性物質移動面は、2つの異なる密度の流体、すなわち、上昇する蒸気と下降する液体を接触させるトレイデッキのほぼ水平の面の一部、すなわち、流体を通す開口部を有するトレイデッキのほぼ水平の面の一部と定義される。言い換えれば、流体を通す開口部を有さないトレイデッキのほぼ水平の面の一部は、活性物質移動面の一部ではない。
【0018】
本明細書及び請求項に記載の数値の範囲はすべて近似範囲として理解すべきである。例えば、直径が1.0〜10.0mmと特定される場合は、約1.0〜10.0mmと理解されるべきであり、ここで、約とは、上記数値の最大でも25%、好ましくは最大でも10%、より好ましくは最大でも5%の偏差を意味する。
【0019】
また、本明細書及び請求項に用いられる「ほぼ(substantially)」という用語は、各部品の通常の製造上の公差を含むものと理解されるべきである。そのため、ほぼ円形のトレイデッキとは、一般的な製造上の公差を考慮した上で円形であるトレイデッキのことである。
【0020】
本発明の特に好適な実施例によれば、流体接触トレイの活性物質移動面を備えるトレイデッキは、上面視で円形又はほぼ円形の形状を有し、流体接触トレイの活性物質移動面は、上面視で円環形状又はほぼ円環形状を有することが好ましく、その円環の内側の開口部又はトレイデッキの中央部はそれぞれ、開口部を有さない小型の板によって覆われている。すなわち、トレイデッキは円形状であることが好ましく、その円形の外側の円環が開口部を含むことにより活性物質移動面として構成される一方、中央部には全く開口部が含まれないか、含まれたとしても少ないことが好ましい。しかしながら、中央部には開口部が上記円形の外側の円環と同じ密度で開口部が含まれることも可能である。ここで説明したトレイ上の分留塔に位置するトレイの中央下降管は、円形の中央の同心部の上に位置している。本実施例において、流体接触トレイは少なくともほぼ対称的に形成され、活性物質移動面と少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも2つの分離壁及び/又は少なくとも1つの分離堰を備えるトレイデッキは、トレイデッキに対して垂直なトレイの中心を通って延在する軸に対して、すなわち、上記トレイを備える分留塔の縦軸に対してほぼ回転対称であることが好ましい。この対称性のため、動きが生じる方向とは無関係に、動きの影響が同じである。
【0021】
トレイデッキは、1〜10m、好ましくは1〜5m、より好ましくは2〜3mの直径を有してもよい。
【0022】
上記に示したように、本発明に係る流体接触トレイの設計により、分留塔の各流体接触トレイには並流が生じる、すなわち、動作中では、液体が活性物質移動面の径方向内側の端部にわたるトレイデッキの中心から活性物質移動面の周辺部へと流れ、その後、環状流路へと流れ込んで回収された後、トレイデッキの周辺部における環状流路から流体接触トレイの中心に位置する中央下降管へと移動する。そして、液体は、中央下降管からその底部にある1つ以上の分配開口部を介して隣接する流体接触トレイの活性物質移動面へと流れていく。このような液体の流れにより、上記トレイを備える分留塔に動きが生じた場合でも、かなり高い分離効率が得られる。
【0023】
特に、トレイデッキが円形状又は少なくともほぼ円形状で、活性物質移動面が、上面視で、トレイデッキの外側の円環又は少なくともほぼ円環状の形状を形成する実施例では、開口部により得られるトレイデッキの単位面積当たりの開口領域の和は、トレイデッキの活性物質移動面の径方向内側の端部から周辺部にかけて変化してもよく、少なくともほぼ漸次的に変化することが好ましい。従って、開口部により得られるトレイデッキの単位面積当たりの開口領域の開口部分の和は、トレイデッキの径方向に沿って増減してもよい。ここで、開口部分とは、開口部により得られる開口領域の和をトレイデッキの各部分の断面で割った商である。液体が開口部を通って塔を流れないようにするために、バルブ、すなわち、固定バルブ又はフロートバルブをトレイデッキの各開口部の上に配置してもよい。
【0024】
本発明による概念をさらに発展させると、流体接触トレイの活性物質移動面の開口部分、すなわち、開口部の総面積が、トレイデッキの活性物質移動面の総面積の5〜20%、好ましくは6〜18%、より好ましくは8〜13%であることが提案されている。
【0025】
上記に示したように、トレイデッキの活性物質移動面に配置された分離壁によってトレイデッキの活性物質移動面がいくつかの部分に分けられることで、流体接触トレイに傾斜や加速が生じた場合でも、不均衡分布の結果として分離効率の大きな低下につながるトレイデッキの一部のみに流体が回収されることが回避される。これは、液体が分離壁によってトレイデッキの各部分に流され、トレイデッキと活性物質移動面を少なくともほぼ均一に覆うためである。特に、少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも2つの分離壁がほぼ垂直に延在する場合に良好な結果が得られる。
【0026】
上記分離壁は穴が開けられていなくてもよいが、穴を開けることも可能である。最後に述べた場合では、穿孔が高さ又は流路に沿って徐々に変化してもよい。
【0027】
分離壁の厚さは使用する材料によって決まり、例えば、ステンレス製の分離壁の場合は0.1〜3mmでもよい。トレイデッキ自体は、1mm〜6mmの厚さを有することが好ましく、2mm〜3mmの厚さを有することがより好ましい。
【0028】
傾向として、トレイがその動作時にさらされる(動的及び静的な)傾斜や加速が高いほど、分離壁が多くなるべきである。特に、2〜8個、より好ましくは2〜6個、さらに好ましくは3〜4個の少なくとも部分的に径方向に延在する分離壁が流体接触トレイのトレイデッキの活性物質移動面に配置される場合に良好な結果が得られる。
【0029】
すべての分離壁は、活性物質移動面が分離壁によってほぼ同じ大きさの部分に分けられるよう、活性物質移動面に互いにほぼ等間隔に配置されていることが望ましい。
【0030】
分離壁は、動きが生じた場合に、トレイデッキの中心よりも周辺部で重要となる。その結果、本発明による概念をさらに発展させると、少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも2つの分離壁が活性物質移動面の外周縁からトレイデッキの中心までの距離の少なくとも50%にわたって活性物質移動面の径方向外側の外周縁から延在することが提案されている。
【0031】
しかしながら、少なくとも2つの分離壁は、トレイデッキの全幅(すなわち、径方向の長さ)にわたって径方向に延在する必要はない。これにより、少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも2つの分離壁が、活性物質移動面の外周縁からトレイデッキの中心までの距離の90%までか70%までしか延在しなくてもよい。こうすることで、材料の節約と流体接触トレイの軽量化が可能となる。このため、少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも2つの分離壁は、活性物質移動面の外周縁からトレイデッキの中心までの距離の50%超〜100%未満、好ましくは60〜90%、より好ましくは60〜75%にわたって活性物質移動面の径方向外側の外周縁から延在することが望ましい。
【0032】
しかしながら、また、少なくとも2つの分離壁は、トレイデッキの全幅(すなわち、径方向の長さ)にわたって径方向に延在することも可能である。
【0033】
本発明のさらに好適な実施例では、少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも2つの分離壁が、流体接触トレイの高さの50〜90%に相当する、及び/又はトレイ間隔の50〜90%に相当する高さを有する。これにより、塔が動いている時に、液体がトレイデッキのある部分から他の部分へと流れることを確実かつ完全に防ぐことができる。トレイ間隔とは、1つのトレイデッキの上側とその上に位置する隣接するトレイデッキの下側の間隔である。このトレイ間隔は、好ましくは100mm〜1,000mm、より好ましくは250mm〜800mm、さらに好ましくは400mm〜700mmである。
【0034】
あるいは、すなわち、分離壁の代わりに、もしくは、加えて、すなわち、分離壁に加えて、少なくとも1つの分離堰が、好ましくはトレイデッキの中間半径に設けられてもよい。本実施例では、少なくとも1つの方位角に延在する分離堰が中間半径に設けられることが好ましく、この少なくとも1つの分離堰は穴が開けられていなくても開けられていてもよい。
【0035】
特に、上記少なくとも1つの分離堰は、円形状を有していてもよい。
【0036】
活性物質移動面には、1〜8個、好ましくは2〜6個、より好ましくは3〜4個の分離堰、特に好ましくは円形の分離堰を配置することができる。
【0037】
特に、少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも1つの分離堰がほぼ垂直に延在する場合に良好な結果が得られる。
【0038】
この少なくとも1つの分離堰の厚さは、特にステンレス製の場合には、0.1〜3mmであればよい。
【0039】
また、少なくとも1つの分離堰は、流体接触トレイの高さの5〜90%、より好ましくは5〜60%に相当する、及び/又は、トレイ間隔の5〜60%、より好ましくは10〜40%に相当する高さを有することが望ましい。
【0040】
活性物質移動面の径方向外側の端部には、すなわち、環状流路のまさに径方向上流側には、少なくとも1つの分離堰、より好ましくは2〜6個の分離堰が配置されることが好ましい。本実施例の分離堰は、トレイ間隔の5〜60%、好ましくは10〜40%に相当する高さを有することが好ましく、堰高さに対応する一定の液位を越えた場合に、液体が環状流路にしか排出されないようにする出口堰となる。この機能を果たすために、本実施例の少なくとも1つの分離堰は円形を有し、すべての分離堰によって活性物質移動面の周辺部の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは全周辺部が覆われる。
【0041】
また、液体が活性物質移動面の径方向外側の端部では縁を超えて環状流路に排出されるよう、活性物質移動面の径方向外側の端部には上記1つ以上の堰が存在しない。
【0042】
本発明の特に好適な実施例によれば、流体接触トレイの環状流路の底部及び/又は上部には、少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも1つの隔壁が配置されることが提案されている。この隔壁は、少なくとも環状流路の高さの一部にわたり延在する。隔壁は環状流路の底部に接続する方が望ましいとしても、必須ではない。そのため、隔壁の下端と環状流路の底面との間には小さめ又は大きめのスリットが設けられてもよい。
【0043】
このように、トレイデッキに動きが生じた場合に、環状流路でも液体の不均衡分布が確実に防げるよう、流体接触トレイの環状流路も活性物質移動面と同様に2つ以上の部分に分けられる。これは、動きや塔軸の垂直からのずれが原因で、液体が環状流路の一方に流れることができないためである。上記少なくとも1つの隔壁は、上記少なくとも2つの分離壁と同じ材料、例えば、ステンレス鋼で同じ厚さに形成されてもよいが、穴が開けられたり、少なくとも部分的に伝導可能とされたりしてもよい。
【0044】
また、隔壁や分離壁は、同一の壁の一部であってもよい。すなわち、分離壁と隔壁とが、活性物質移動面の周辺端部までトレイデッキにわたって延在し、環状流路にわたって延在する1つの壁によって形成されてもよい。この場合、上述の意味では、トレイデッキ上の部分が分離壁で、環状流路を延在する部分が隔壁といったように、活性物質移動面の周辺端部までトレイデッキには1つの壁しか配置されなかったとしても、その後やはりその壁の両部分はそれぞれ別々に分離壁と隔壁と呼ばれる。
【0045】
上記少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも1つの隔壁は、ほぼ鉛直方向に延在することが好ましい。
【0046】
傾向として、トレイがその動作時にさらされる塔の(動的又は静的な)傾斜や加速が高いほど、隔壁が多くなることが好ましい。特に、1〜8個、より好ましくは2〜6個、さらに好ましくは3〜4個の少なくとも部分的に径方向に延在する隔壁が環状流路の底部及び/又は上部に配置される場合に良好な結果が得られる。
【0047】
流体接触トレイの活性物質移動面を分割することによって、活性物質移動面に液体が確実に均一に分布し、動きが生じた場合にも液体と蒸気の良好な接触が確実に得られるため、トレイの分離効率に関して、流体接触トレイの活性物質移動面に配置された分離壁の影響は、環状流路の底部及び/又は上部に配置された隔壁の影響よりも大きいので、環状流路の底部及び/又は上部に配置された隔壁の数は、活性物質移動面に配置された分離壁の数よりも少なくてもよい。これにより、材料の節約と流体接触トレイの軽量化が図られる。また、環状流路の各部分は通流手段に接続されることが好ましいので、必要な通流手段数も軽減され、材料の大幅な節約とトレイの大幅な軽量化につながる。ここで言う液体と蒸気との良好な接触とは、蒸気と液体とがほぼ均一な比率で互いに出くわす、すなわち、液体の質量を気体の質量で割った比が活性物質移動面の全体にわたって同じであることを意味する。この状況は分離壁を用いればもっと容易に達成される。
【0048】
しかしながら、環状流路の底部及び/又は上部に配置された隔壁の数が、活性物質移動面に配置された分離壁の数と同じであることも可能である。しかし、上記に示した理由により、環状流路の底部及び/又は上部に配置された隔壁の数が、活性物質移動面に配置された分離壁の数より大きいことは望ましくない。
【0049】
流体接触トレイが2つ以上の少なくとも部分的に径方向に延在する隔壁を備えた場合、すべての隔壁は、環状流路が隔壁によってほぼ同じ大きさに分けられるよう、環状流路の底部及び/又は上部に互いにほぼ等間隔に配置されていることが望ましい。
【0050】
流体接触トレイの活性物質移動面の周辺端部までトレイデッキの径方向全長にわたって延在してはならない上記少なくとも2つの分離壁とは異なり、少なくとも1つの隔壁は、環状流路の全幅(すなわち、径方向の長さ)にわたって径方向に延在することが望ましい。少なくとも1つの隔壁は、その一部に穴が開けられてもよい。これにより、塔がより長時間ある一定の位置にとどまった場合に、液位の調整が可能となる。このような穿孔処理は、動作が中断した際、塔を完全に排水するのに特に有利である。
【0051】
本発明による概念をさらに発展させると、環状流路の底部は、トレイの高さ軸において、活性物質移動面の周辺部の下方に位置し、環状流路の深さを流体接触トレイの深さの好ましくは30〜70%、より好ましくは40〜60%とする、及び/又は、環状流路の深さをトレイ間隔の好ましくは30〜70%、より好ましくは40〜60%とすることが提案されている。環状流路の深さとは、環状流路の底部の表面の最下点から、環状流路の底部の表面の最下点の上方で垂直な活性物質移動面の外周縁の点までの距離を意味する。
【0052】
環状流路の幅(すなわち、径方向の長さ)については特に限定されないが、流路の幅は、液体荷重によって決まり、表面下降速度が一定の値より高くならないよう、すなわち、一般的に、表面下降速度が0.06〜0.14m/sとなるよう設定されることが好ましい。特に、本発明に係る流体接触トレイの環状流路の幅が50〜500mm、より好ましくは100〜400mm、さらに好ましくは200〜350mmである場合に良好な結果が得られる。環状流路の幅は、通常、堰負荷を最大表面下降管速度で割った比によって決まる。
【0053】
流体接触トレイの環状流路の少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも1つの隔壁は、環状流路の深さの50〜90%に相当する高さを有することが好ましい。また、流体接触トレイの環状流路の少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも1つの隔壁は、その上側端部が少なくとも2つの分離壁と同じ高さとなるような高さを有していてもよい。後者の場合、少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも1つの隔壁は、流体接触トレイの高さの50〜90%に相当する高さを有する。上記実施例によれば、塔が動いている時に、液体が環状流路の一部分から他の部分へと流れることを確実かつ少なくとも部分的に防ぐことができ、動作中に環状流路の一部分が空になることを防ぐことができる。
【0054】
環状流路が、流体、特に、トレイデッキの活性物質移動面の周辺端部から環状流路へと流れる流体を完全かつ確実に回収するのに十分に大きな容量であるものの、流体接触トレイを不要に大型化させてしまうほど大きくならないようにするため、環状流路の径方向の長さは、流体接触トレイの半径の5〜40%、より好ましくは10〜30%であることが提案されている。
【0055】
原則として、環状流路の形状については、環状流路が完全かつ確実に流体を回収し、低密度(低比重)相を高密度(高比重)相から分離し(脱ガス)、特にトレイデッキの活性物質移動面の周辺端部から環状流路へと流れる液体を回収し、その液体を完全かつ確実に通流手段へと移送する機能を果たすことができれば、特に限定されない。特に、環状流路の底部が、トレイの高さ軸に対してほぼv字状の形状を有する場合に良好な結果が得られる。これにより、環状流路の各部分の底部が各部分の中央部に向かって傾斜し、通流手段が各部分の中央部で開放された場合、環状流路内の液位が低かったとしても、通流手段によって液体をすべて環状流路から下降管へと完全に移送することができる。
【0056】
これにより、液体が環状流路の底部の最深点から通流手段へと流れるよう通流手段の開口部が配置される場合に、完全な液体の回収を行うことができる。
【0057】
しかしながら、より単純な構造を採用することにより工事費を節約するため、環状流路の底部が、トレイの高さ軸に対して水平な平面形状を有することがさらに望ましい。この場合、たとえ塔が動きにさらされていても、環状流路内の液位が十分な高さに維持されていれば、液体の回収と移送を確実に行うことができる。
【0058】
本発明のさらに特に好適な実施例によれば、流体接触トレイのトレイデッキを、例えば、トレイデッキの中心から活性物質移動面の周辺へ、もしくは、活性物質移動面の径方向内側の端部から活性物質移動面の周辺へと、水平面に対して負の角度(径方向で測定)で下方に傾斜させることが提案されている。これにより、液体の流路への動きの影響、特に、トレイデッキの活性物質移動面にわたる液体の流れの影響を軽減することができる。この角度は、予想される流体接触トレイの作動中の動きの振幅によって決まる。特に、トレイデッキの水平面に対する負の角度が、2〜10°、より好ましくは3〜8°、さらに好ましくは4〜7°、例えば、約5°等の場合に良好な結果が得られる。
【0059】
本発明の好適な実施例では、環状流路の底部が、流体接触トレイの高さ方向から見て、以下の
図2Bに示すように、互いに隣接するいくつかのv字状の形状を有する規則的なパターン形状を有する。
【0060】
本発明による概念をさらに発展させると、上記少なくとも1つの通流手段は、一方の開口が環状流路の下部へと開き、他方の開口が中央下降管へと開くパイプであることが提案されている。それによって、少なくとも大部分が脱ガスが行われる環状流路内に残留する蒸気から分離され、パイプを環状流路から中央下降管へと移動する液体が、移動中に、上昇する蒸気で汚染されないことが保証される。環状流路内の液位が低い場合でも液体を完全に取り除くためには、パイプが環状流路の最下部へと開くことが好ましい。このパイプの直径は、例えば約50mm等、10〜200mm、好ましくは15〜100mm、より好ましくは20〜80mmの範囲であればよい。
【0061】
また、上記少なくとも1つの通流手段は、断面が長方形の流路等の流路であってもよい。この流路は、一方が環状流路へと開き、他方が下降管へと開く2つの開口部と上部を除き、それぞれの壁部によって完全に閉じられている。しかしながら、この実施例は、環状流路から中央下降管へと通流手段を移動する液体が上昇する蒸気で汚染されるため、それほど好ましいものではない。さらに、環状流路の出口には、通流手段をあふれさせずに環状流路を一定の液位とし、蒸気が環状流路を通って迂回することを防ぐために、抵抗を設ける必要がある。
【0062】
通流手段の数は、環状流路の各部分に少なくとも1つの通流手段が関連付けられるよう、環状流路の部分の数と同じかそれ以上であることが望ましい。そのため、環状流路を隔壁の数に対応する数の部分に分ける、少なくとも部分的に径方向に延在する少なくとも1つの隔壁が環状流路の底部に配置される場合、流体接触トレイは、その部分の数以上の通流手段が備えていることが望ましい。
【0063】
特に、各通流手段が、一方の開口が別の環状流路の下部へと開き、他方の開口が中央下降管へと開くパイプである場合に良好な結果が得られる。
【0064】
また、トレイは、通流手段として、1〜8個、より好ましくは2〜6個、さらに好ましくは3〜4個のパイプが含まれることが望ましい。
【0065】
通流手段の液体を環状流路から中央下降管へと移動する駆動力は、環状流路内で調整される液位から生じるため、通流手段は環状流路から下降管へと傾斜する必要はない。そのため、本発明の一変形例によれば、上記少なくとも1つの通流手段は、環状流路から中央下降管へとほぼ水平に延在する。
【0066】
しかしながら、本発明の別の変形例によれば、上記少なくとも1つの通流手段は、環状流路の下部へと開口する端部から中央下降管へと開口する端部へと、水平面に対して1〜10°、好ましくは2〜6°の負の角度で傾斜してもよい。
【0067】
本発明によれば、流体接触トレイの中央下降管は、中空体の形状、好ましくは、少なくともほぼ中空円筒の形状を有し、流体接触トレイの下方に配置されると考えられる後続の内部へと、すなわち、分留塔に使用された場合には後続の流体接触トレイへと液体を分配するのに適した開口部を一つその底部に有する。つまり、流体接触トレイの中央下降管の底部に開口部を有することで、隣接する流体接触トレイのトレイデッキの上側へと液体を鉛直方向に下方へ分配することができ、それによって、動きが生じた場合でも流体接触トレイのトレイデッキの活性物質移動面の表面にわたって液体を均一に分配することができる。また、中央下降管は、トレイデッキの中央部の底側に固定される等、好ましくは回転不可能に流体接触トレイに固定されている。
【0068】
中央下降管の直径は、トレイの動きによって生じる液位の偏差も小さく、トレイに動きが生じた場合に液体の不均衡分布が軽減されるよう、同等に小さくなければならない。その結果、中央下降管から後続のトレイデッキへと液体が均一に流れることになる。これを考慮して、中央下降管の直径は、下降するクリアな液体の表面速度が0.5m/sより低く、好ましくは0.3m/sより低くなるように設定されることが望ましい。従って、中央下降管の直径は、流体接触トレイの直径の5%〜40%、より好ましくは10%〜30%の範囲となる。
【0069】
また、中央下降管の高さは、トレイ間隔、すなわち、分留塔の隣接する受入下降管同士の距離の30〜100%であってもよい。下降管の高さは、トレイ間隔の50〜100%、より好ましくは75〜100%、さらに好ましくは90〜100%であることが好ましい。
【0070】
中央下降管内の液体の脱ガスを可能にする、すなわち、液体に含まれ得る残留蒸気を取り除くために、本発明による概念をさらに発展させて、中央下降管に少なくとも1つの通気孔を備えることが提案されている。この通気孔は、好ましくは中央下降管の外壁に、さらに好ましくは、中央下降管の上記少なくとも1つの通流手段が開口する部分の上方に形成される。その代わりに、中央下降管を形成する中空体が、次の上位のトレイデッキの下側に一定の距離を置いて終端してもよい。これにより、この中空体の上方の隙間を介して気体の除去を行うことができる。
【0071】
また、本発明は、
筐体と、
少なくとも1つの上記流体接触トレイと
を備えた分留塔に関する。
【0072】
分留塔は、一方の流体接触トレイの下降管の開口から、隣接する流体接触トレイのトレイデッキの上側へと液体を鉛直方向に下方へ分配できるよう配置された少なくとも2つの流体接触トレイを備えることが好ましい。
【0073】
分留塔は、隣接する流体接触トレイ間のトレイ間隔が、100mm〜1,000mm、好ましくは250mm〜800mm、より好ましくは400mm〜700mmである少なくとも2つの上記流体接触トレイを備えることが好ましい。
【0074】
本発明の別の好適な実施例によれば、分留塔のすべての流体接触トレイの接続管はそれぞれ中空管である。
【0075】
本発明の別の要旨は、好ましくは蒸留、精留、ストリッピング、直接熱交換、吸収、又は、抽出等により流体混合物をそれぞれの成分に分類する分離処理での上記分留塔の使用である。
【0076】
分留塔は、海上、好ましくは、FLNG船舶やFPSO船舶等、海上の移動型プラットフォームや船舶に設置されることが好ましい。
【0077】
本発明の別の好適な実施例によれば、上記使用には、
少なくとも6バールの圧力で行われることが好ましい分留塔での高圧蒸留と、
結果として生じる留分の一つが液化される前に、炭化水素混合物から、好ましくは天然ガスからの分留塔における重質留分の除去と、
脱メタン化、脱エタン化、脱プロパン化、及び/又は、脱ブタン化等による、炭化水素混合物からの分留塔における軽質留分の除去と
のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0078】
分留塔は、液体が各流体接触トレイの活性物質移動面をその径方向内側の端部から周辺部へと流れ、各流体接触トレイの環状流路から中央下降管へと移動するように動作することが好ましい。
【0079】
本発明による概念をさらに発展させると、分留塔の動作中は、各流体接触トレイの通流手段内の流体の流速が、最大でも2.0m/s、好ましくは0.2〜2.0又は0.5〜1.0m/sであることが提案されている。
【0080】
次に、本発明に係る具体的な実施例について添付の図面を参照しながら例を挙げて説明する。