特許第6663929号(P6663929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6663929有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物及びグラビア印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663929
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物及びグラビア印刷方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/102 20140101AFI20200302BHJP
   C09D 11/033 20140101ALI20200302BHJP
【FI】
   C09D11/102
   C09D11/033
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-554758(P2017-554758)
(86)(22)【出願日】2015年12月11日
(86)【国際出願番号】JP2015084830
(87)【国際公開番号】WO2017098660
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 徹
(72)【発明者】
【氏名】原田 淳一
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−231122(JP,A)
【文献】 特開2014−005414(JP,A)
【文献】 特開2015−199933(JP,A)
【文献】 特開2015−160950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/102
C09D 11/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、バインダー樹脂及び有機溶剤を主成分とする有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物であって、
粘度が10〜1000mPa・s/25℃であり、グラビア印刷時の粘度がザーンカップ3号の流出秒数で12〜23秒/25℃であり、
前記顔料は、機顔料であり、
前記バインダー樹脂は、末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂を含有し、
前記ポリウレタン樹脂は、当該ポリウレタン樹脂30質量部を前記有機溶剤70質量部に溶解した時のポリウレタン樹脂溶液の粘度が100〜900mPa・s/25℃となるものであり、
前記顔料及び前記バインダー樹脂は、下記条件を満足する
ことを特徴とする有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物
条件2:
機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の前記無機顔料の含有量が5〜70質量%、前記ポリウレタン樹脂の含有量が3〜20質量%、前記無機顔料100質量部に対する前記ポリウレタン樹脂の含有量が5〜60質量部である
【請求項2】
末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂は、高分子ジオール、及び、ポリイソシアネートを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物とを反応させて得られる末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂である請求項1記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
【請求項3】
末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂は、両末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物である反応停止剤を用いて得られる請求項2記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物
【請求項4】
ポリウレタン樹脂は、末端に第1級アミノ基を有するポリウレタン樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
【請求項5】
有機溶剤は、エステル系有機溶剤、及び、アルコール系有機溶剤の混合溶剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
【請求項6】
グラビア印刷時に、更に有機溶剤を添加して希釈された有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物とされ、該有機溶剤は、エステル系有機溶剤、及び、アルコール系有機溶剤の混合溶剤であり、
該有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物中の前記エステル系溶剤と前記アルコール系有機溶剤との使用割合が、エステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤=50/50〜95/5の範囲である請求項5記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
【請求項7】
有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物中にエステル系溶剤として、酢酸プロピルを5質量%以上含有する請求項6記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を用いたグラビア印刷方法であって、
前記有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物に有機溶剤を添加して希釈した有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物を調製し、
前記有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物を用いて、浅版化したグラビア版を用いてグラビア印刷方式にて印刷する
ことを特徴とするグラビア印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物及びグラビア印刷方法に関し、より詳しくは、浅版化された印刷刷版を使用してグラビア印刷しても、良好な印刷濃度、印刷適性、及び、ラミネート適性を有する有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物、及び、該有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を用いたグラビア印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、環境問題への対応は社会的責任として、全産業・全業種をあげて取り組むべきビジネステーマであり、もちろんプラスチックフィルム印刷の分野も同様である。
ところが、プラスチックフィルムに対する印刷には、印刷適性上の制約から、一般に有機溶剤を多く含むインキが利用されているため環境に与える負荷は大きい。そこで、インキや印刷物を製造するメーカーでは、有機溶剤の排出量の削減や簡便な処理方法の開発等により環境問題の解決に取り組んでいる。
【0003】
このような取り組みの一つに、インキメーカーにおいては、インキ中に含まれる有機溶剤の中でより環境負荷の高いものを削減しようという試みを行っている。例えば、従来、インキ中に含まれていた芳香族系やケトン系等の環境負荷の高い有機溶剤について含有量を減量するといった段階を経て、更に近年、置き換える有機溶剤の種類や組成比率はもとより、バインダー樹脂、添加剤等のインキに使用する材料全体についても見直しが行われている。その結果、芳香族系やケトン系溶剤をほとんど又は全く含まない、エステル−アルコール系インキが実用化されている。
【0004】
一方、印刷会社においては、上記のような環境問題の解決方法として、印刷時にインキ中の有機溶剤をなるべく大気中に排出しないという試みを行っており、その一例としてグラビア印刷版深度(セルの深さ)を浅くして(浅版化)印刷することによって、印刷時のインキ使用量を減らし、大気中への有機溶剤を削減しようという試みを行っている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、グラビア印刷版の浅版化に伴ってセル容積は減少し、印刷時のインキ組成物の転移量は少なくなる。従って、インキ組成物中の有機溶剤量は抑えられるが、インキ転移量が少ない分、インキ被膜の着色剤量も少なくなると充分な印刷(色)濃度が得られないという問題があった。そこで、通常、印刷時に薄膜及び高顔料濃度化の被膜を形成するために、高顔料濃度のインキ組成物を用いて印刷を行っていた。
【0005】
しかし、インキ組成物の高顔料濃度化は、インキ粘度を高くする要因であり、相対的に版かぶりやドクター切れの低下につながりやすい。
このようなインキ組成物の高粘度化を防ぐために、他の固形分の量を少なくする方法が知られているが、このような方法は、インキ組成物中のバインダー樹脂の減量につながることになる。そうすると、顔料に対するバインダー樹脂の比率が低下し、インキ被膜の凝集力も低下することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/088733号
【特許文献2】特開2013−231122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この様に、グラビア印刷版を浅版化する印刷方法では、インキ組成物中の顔料濃度を高くする必要があることから、それに合わせてインキ組成物の被膜凝集力を低下させない量のバインダー樹脂を含有させるとインキ粘度が高粘度となり、印刷物が汚れやすいという問題があった。一方、低粘度化のためにバインダー樹脂量を少なくすると、インキ被膜の凝集力の低下から、耐摩擦性やラミネート加工される場合にラミネート適性が低下するという問題が生じていた。
従って、本発明の目的は、浅版化された版胴を用いてグラビア印刷しても、良好な印刷濃度、印刷適性、及び、ラミネート適性を有する有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、顔料として有機顔料及び/又は無機顔料、バインダー樹脂として末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂、特に末端に第1級アミノ基を有するポリウレタン樹脂をある特定の組成比率で用いることにより、インキ使用量及びインキ中の揮発分を減らし、大気中への有機溶剤を削減が大幅に可能となるとともに、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、顔料、バインダー樹脂及び有機溶剤を主成分とする有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物であって、粘度が10〜1000mPa・s/25℃であり、グラビア印刷時の粘度がザーンカップ3号の流出秒数で12〜23秒/25℃であり、上記顔料は、機顔料であり、上記バインダー樹脂は、末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂を含有し、上記ポリウレタン樹脂は、当該ポリウレタン樹脂30質量部を上記有機溶剤70質量部に溶解した時のポリウレタン樹脂溶液の粘度が100〜900mPa・s/25℃となるものであり、上記顔料及び上記バインダー樹脂は、下記条件を満足することを特徴とする有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物である
条件2:
機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の上記無機顔料の含有量が5〜70質量%、上記ポリウレタン樹脂の含有量が3〜20質量%、上記無機顔料100質量部に対する上記ポリウレタン樹脂の含有量が5〜60質量部である
【0010】
また、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂が、高分子ジオール、及び、ポリイソシアネートを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物とを反応させて得られる末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂であることが好ましい。
また、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂が、両末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物である反応停止剤を用いて得られることが好ましい
【0011】
また、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、ポリウレタン樹脂が、末端に第1級アミノ基を有するポリウレタン樹脂であることが好ましい。
また、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、上記有機溶剤は、エステル系有機溶剤、及び、アルコール系有機溶剤の混合溶剤であることが好ましい。
また、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、上記グラビア印刷時に、更に有機溶剤を添加して希釈された有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物とされ、該有機溶剤は、エステル系有機溶剤、及び、アルコール系有機溶剤の混合溶剤であり、該有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物中の上記エステル系溶剤と上記アルコール系有機溶剤との使用割合が、エステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤=50/50〜95/5の範囲であることが好ましい。
また、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物中に上記エステル系溶剤として、酢酸プロピルを5質量%以上含有することが好ましい。
【0012】
また、本発明は、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を用いたグラビア印刷方法であって、上記有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物に有機溶剤を添加して希釈した有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物を調製し、該有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物を用いて、浅版化したグラビア版を用いてグラビア印刷方式にて印刷することを特徴とするグラビア印刷方法でもある。
【0013】
なお、本明細書において、「有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物」とは、印刷に際して、有機溶剤やインキ用メジュームの希釈により、設定された色濃度と粘度に調整が可能な程度にハイソリッドされたインキ組成物を意味し、「有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物」とは、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を、グラビア印刷時に所定の色濃度や粘度となるように、有機溶剤やインキ用メジュームで希釈したインキ組成物を意味する。
また、本明細書において、「末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂」とは、ポリウレタン樹脂の主鎖及び側鎖の全て又は一部の末端に、上記第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有することを意味する。
また、本明細書において、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物の粘度は、B型粘度計(東京計器社製)を用いて測定したときの数値である。
以下、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物についてより詳しく説明する。
【0014】
<顔料>
上記顔料としては、印刷インキで一般的に用いられている各種無機顔料、有機顔料等が使用できる。
上記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料、アクリル樹脂で表面処理したアルミニウム粒子を含有するアルミペースト、表面に酸化チタンと酸化スズと酸化ジルコニウムとがコーティングされたマイカ等のパール顔料を挙げることができる。
上記有機顔料としては、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。
【0015】
本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物における上記顔料の含有量は、上記有機顔料である場合は5〜20質量%、好ましくは6〜15質量%、上記無機顔料である場合は5〜70質量%、好ましくは5〜60質量%である。
また、上記有機顔料と無機顔料との混合である場合は、上記有機顔料として5〜20質量%、上記無機顔料に対する上記有機顔料の質量比{無機顔料(質量)/有機顔料(質量)}が、0<無機顔料(質量)/有機顔料(質量)<7.0となる量が好適であり、主に上記有機顔料と上記無機体質顔料との組み合わせが利用されることが知られている。
なお、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物中の上記顔料の含有量が上記の範囲より少なくなると、インキ組成物としたときの着色力が低下し、グラビア印刷版の浅版化に対応が困難となる傾向がある。一方、上記の範囲より多くなると、粘度が高くなり、グラビア印刷時に印刷物が汚れやすいという問題がある。
【0016】
<バインダー樹脂>
上記バインダー樹脂としては、末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂を含有する。
上記ポリウレタン樹脂としては、高分子ジオール、及び、ポリイソシアネートを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物とを反応させて得られる末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂が好適に使用できる。
上記末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂は、一般のインキ組成物に用いられるバインダー樹脂と比較して顔料分散効果が非常に高く、インキ組成物中の顔料濃度を高くしても、インキ組成物の被膜凝集力を低下させることがないので、上記末端に第1級アミン基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂を含有させた有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、浅版化された印刷刷版を使用してグラビア印刷しても、良好な印刷濃度、印刷適性、及び、ラミネート適性を有するものとなる。
上記ポリウレタン樹脂としては、末端に第1級アミノ基を有するポリウレタン樹脂であることが好ましい。
【0017】
上記末端に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂は、下記(1)〜(4)の方法から得られることが好ましい。
(1)高分子ジオール、及び、ポリイソシアネートを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、鎖伸長剤を加え、鎖伸長を行い末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た後、両末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物以外の反応停止剤を反応させ、次いで、両末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物である反応停止剤を反応させ、第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂を得る方法。
(2)高分子ジオール、及び、ポリイソシアネートを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、鎖伸長剤を加え、鎖伸長を行い末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た後、反応停止剤として、両末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物以外の反応停止剤と、両末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物である反応停止剤を同時に加えて反応させ、第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂を得る方法。
(3)高分子ジオール、及び、ポリイソシアネートを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、鎖伸長剤を加え、鎖伸長を行い末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た後、反応停止剤として、両末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物を反応させ、鎖伸長と反応停止を同時に行い、第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂を得る方法。
(4)高分子ジオール、及び、ポリイソシアネートを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、両末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物を反応させ、鎖伸長と反応停止を同時に行い、第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有するポリウレタン樹脂を得る方法。
【0018】
上記ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、及び、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物を、単独又は2種以上混合して得られたものを使用できる。なかでも、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び芳香脂肪族ジイソシアネートを、単独又は2種以上混合して得られたものを使用することが好ましい。
【0019】
上記高分子ジオール化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等アルキレンオキサイド付加物等のポリエーテルジオール化合物、アジピン酸、セバシン酸、無水フタール酸等の二塩基酸の1種又は2種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のグリコール類の1種又は2種以上とを縮合反応させて得られるポリエステルジオール類、ポリカプロラクトンジオール類等のポリエステルジオール化合物等の各種高分子ジオール化合物を単独又は2種以上混合して使用できる。
更に、上記高分子ジオール化合物に加えて、1,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール等のアルカンジオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の低分子ジオール化合物を単独又は2種以上混合して併用することができる。
なお、後述する有機溶剤がエステル系溶剤とアルコール系溶剤との混合溶剤系ではある場合、上記高分子ジオール化合物としてポリエーテルジオール化合物を利用する方が、得られるポリウレタン樹脂の溶解性が高くなる傾向があり、必要性能に合わせて幅広くインキの設計が可能となる点で好ましい。
【0020】
また、上記ポリイソシアネートと高分子ジオール化合物の使用比率は、イソシアネート基:水酸基の当量比(イソシアネートインデックス)が、好ましくは1.2:1〜3.0:1、より好ましくは1.3:1〜2.0:1となる範囲である。上記のイソシアネートインデックスが1.2より小さくなると、柔軟なポリウレタン樹脂となる傾向があり、インキ組成物として印刷した時に耐ブロッキング性等が低い時等は、他の硬質の樹脂と併用することが好ましい場合がある。
【0021】
上記(1)〜(3)の方法で使用する鎖伸長剤としては、インキ用バインダーとしてのポリウレタン樹脂で利用される既知の鎖伸長剤が利用可能であり、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’−ジ(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のジオール化合物を例示することができる。
【0022】
上記(1)、(2)の方法で使用する反応停止剤としては、両末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物、モノアミン化合物及び/又はモノアルコール化合物等の反応停止剤が例示できる。
上記(3)の方法で使用する反応停止剤としては、両末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物が例示できる。
上記(4)の方法で使用する鎖伸長と反応停止を同時に行う化合物としては、上記鎖伸長剤だけでもよいし、鎖伸長剤と反応停止剤を併用してもよい。
上記ポリウレタン樹脂は、保存安定性及び顔料分散剤の点から、鎖伸長後の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのイソシアネート基の10〜100%が、両末端が第1級アミノ基であるポリアミン化合物である反応停止剤で反応停止されていることが好ましい。
上記両末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環式ジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラトリアミン等のポリアミン類、トルイレンジアミン等の芳香族ジアミン類、キシレンジアミン等の芳香脂肪族ジアミン類、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類等が例示される。
上記両末端が第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基であるポリアミン化合物と併用することができる反応停止剤としては、インキ用バインダーとしてのポリウレタン樹脂で利用される既知の反応停止剤であるモノアミン化合物、モノアルコール化合物等が利用可能であり、具体的には、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン等のモノアルキルアミン類、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジェタノールアミン等のアルカノールアミン類、エタノール等のモノアルコール類等を例示することができる。
【0023】
本発明では、上記材料を用いて、公知のポリウレタン樹脂の製造方法がそのまま使用できる。また、それぞれの成分の分子量や化学構造、また当量比が異なると、得られるポリウレタン樹脂の硬さも異なることから、これら成分を適宜組み合わせることによって、印刷適性やラミネート適性を調節することが可能である。
【0024】
本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物における上記ポリウレタン樹脂は、数平均分子量が10000〜70000であることが好ましく、10000〜50000であることがより好ましい。
【0025】
本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物における上記ポリウレタン樹脂の含有量は、使用する顔料及びその含有量に応じて適宜選択されるが、下記条件1〜3のいずれかを満足するものである。下記条件1〜3のいずれかを満足することで、本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物に有機溶剤を添加して希釈した有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物を、浅版化された版胴を用いてグラビア印刷しても、従来の溶剤性グラビア印刷用インキ組成物と同様な、良好な印刷濃度、印刷適性及びラミネート適性を有するものとすることができる。
【0026】
条件1:
上記顔料が有機顔料である場合、上記有機顔料の含有量が5〜20質量%、上記ポリウレタン樹脂の含有量が3〜20質量%、好ましくは5〜15質量%、上記有機顔料100質量部に対するポリウレタン樹脂の含有量が70〜200質量部、好ましくは70〜150質量部である。
条件2:
上記顔料が無機顔料である場合は、上記無機顔料の含有量が5〜70質量%、上記ポリウレタン樹脂の含有量が3〜20質量%、好ましくは5〜15質量%、上記無機顔料100質量部に対するポリウレタン樹脂の含有量が5〜60質量部、好ましくは5〜40質量部である。
条件3:
上記顔料として有機顔料及び無機顔料の両方を含む場合は、上記有機顔料の含有量が5〜20質量%、上記無機顔料に対する上記有機顔料の質量比{無機顔料(質量)/有機顔料(質量)}が、0<無機顔料(質量)/有機顔料(質量)<7.0、上記ポリウレタン樹脂の含有量が6〜20質量%、全顔料100質量部に対する上記ポリウレタン樹脂の含有量が20〜200質量部、好ましくは20〜150質量部である。
【0027】
また、上記ポリウレタン樹脂を合成するときの材料とその比率、及び、後記する有機溶剤の組成によって、上記ポリウレタン樹脂を有機溶剤に溶解したときの粘度は異なる。
そこで、本発明では、上記ポリウレタン樹脂30質量部を後記する有機溶剤70質量部に溶解してポリウレタン樹脂溶液としたときの粘度が100〜900mPa・s/25℃である。
上記ポリウレタン樹脂溶液の粘度が100mPa・s/25℃未満であると、インキ被膜における凝集力が低下する傾向となり、900mPa・s/25℃を超えると、印刷物の印刷濃度が劣ることとなる。
上記ポリウレタン樹脂溶液の粘度は、100〜500mPa・s/25℃が好ましい。
ここで、上記ポリウレタン樹脂の粘度は、B型粘度計(東京計器社製)を用いて測定したときの数値である。
【0028】
更に、本発明では、その他のバインダー樹脂として、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂や粘着性樹脂等を補助的に添加することができる。
【0029】
<有機溶剤>
上記有機溶剤としては、例えば、トルエン、ケトン系有機溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル系有機溶剤(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチルなど)、アルコール系有機溶剤(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、炭化水素系溶剤(トルエン、メチルシクロヘキサンなど)が利用できる。
【0030】
本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、グラビア印刷時に、更に有機溶剤を添加して希釈した有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物とされるが、最近の環境問題への対応と、インキの印刷適性や乾燥性などを考慮して、上記更に添加する有機溶剤は、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との混合溶剤であり、上記エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との使用割合が、エステル系有機溶剤/アルコール系有機溶剤=50/50〜95/5の範囲となるように使用することが好ましい。更に、インキの印刷適性の点から、上記エステル系溶剤として、酢酸プロピルを5質量%以上含有させることが好ましい。
また、印刷適性を向上させるために、有機溶剤中に0.1〜10質量%の水を含有させておくことが好ましい。
【0031】
<添加剤>
本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、更に粘着付与剤、架橋剤、滑剤、耐ブロッキング剤、帯電防止剤、界面活性剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0032】
<本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物の製造方法>
本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物は、上述の各種材料を従来一般的に使用されている各種の分散・混練装置を使用して製造することができる。
そして、各固形分材料の含有量や、ポリウレタン樹脂と有機溶剤との組み合わせなどを調整することにより、粘度を10〜1000mPa・sとする。粘度が低い場合、顔料等の分散安定性が低下する可能性があり、一方、粘度が高いと印刷に適した粘度とするために多量の希釈が必要となり、印刷版の浅版化への対応が困難になる可能性がある。
【0033】
<グラビア印刷時の有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物の製造方法>
本発明の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を、グラビア印刷時に使用する場合は、印刷時の雰囲気温度において、印刷条件に応じて適切な粘度となるように、具体的にはザーンカップ3号の流出秒数が12〜23秒/25℃、高速印刷では14〜16秒/25℃程度となるまで有機溶剤で希釈することが好ましい。
【0034】
次に、上記有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物を使用したグラビア印刷方法について述べる。
上記有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物を印刷する方法としては、一般的なグラビア印刷方式が利用できる。また、印刷用基材としては特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等のポリエステルフィルム、ナイロン、ビニロンといった各種印刷用プラスチックフィルムを対象とするものである。もちろん、本発明の主旨からして、通常のフィルムであっても、熱収縮フィルムであってもよく、印刷後にラミネートや収縮処理等の後加工を行うこともできる。
【0035】
また、使用する印刷版としては、従来の版胴(通常のグラビア製版方式によって作られる凹版で、その製版方式は、彫刻グラビア等が例示できる)より浅いセルを形成(浅版化)したものを用いる。
【0036】
また、上記グラビア印刷方法においては、上記有機溶剤性グラビア印刷用インキ組成物を、上記の浅版化した印刷版を用いて印刷することにより、さらに、上記の方法で得られた印刷物を、各種ラミネート加工法によりラミネート加工を施して、包装袋、ラミネート缶等に利用することができる。上記包装袋でのラミネート加工法としては、印刷物の表面にアンカーコート剤を塗工した後、溶融ポリマーを積層させる押し出しラミネート法、印刷物の表面に接着剤を塗工した後、フィルム上ポリマーを貼合させるドライラミネート法が利用できる。
【0037】
上記押し出しラミネート法は、印刷物の表面に必要に応じて、チタン系、ウレタン系、イミン系、ポリブタジエン等のアンカーコート剤を塗工した後、既知の押し出しラミネート機によって、溶融ポリマーを積層させる方法であり、更に溶融樹脂を中間層として、他の材料とサンドイッチ状に積層する事もできる。
上記押し出しラミネート法で使用する溶融樹脂としては、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等、従来使用されていた樹脂が使用できる。その中でも溶融の際に酸化されてカルボニル基の発生し易い低密度ポリエチレンとの構成において本発明の効果が高くなる。
【0038】
また、上記ドライラミネート法は、印刷物の表面にウレタン系、イソシアネート系等の接着剤を塗工した後、既知のドライラミネート機によってフィルム状のポリマーを貼合する方法である。ドライラミネート法で使用するフィルム状のポリマーとしては、ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン等が使用でき、特にレトルト用途で使用される包装材料では、基材と貼合されるプラスチックフィルムの間にアルミ箔をはさんでラミネートする事もできる。このようなラミネート加工物は、製袋して内容物を詰めた後、ボイル・レトルト用途に利用することもできる。
【0039】
上記ラミネート缶用途でのラミネート加工法としては、印刷物表面に接着剤を塗工した後、金属板と貼り合わせる方法が利用できる。
具体的には、印刷物の表面に、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング等の公知の塗装手段にて接着剤を塗布し、150〜200℃の温度で乾燥させ、得られた印刷インキ層、接着剤層を有する印刷用基材を金属板と貼り合わせ、約100〜250℃の温度で短時間加熱ラミネートすることによって、印刷物を金属板と貼り合わせることができる。
上記接着剤としては、例えば、1液型又は2液型のポリエステル樹脂系接着剤、ポリウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤等が挙げられる。
上記金属板としては、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、鉄−亜鉛合金メッキ鋼板、亜鉛−アルミニウム合金メッキ鋼板、ニッケル−亜鉛合金メッキ鋼板、ニッケル−錫合金メッキ鋼板、ブリキ、クロムメッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、ターンメッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板等の各種メッキ鋼板、ステンレススチール、ティンフリースチール、アルミニウム板、鋼板、チタン板等の金属素材や、必要に応じて、これらの金属素材に、例えば、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化膜処理等の化成処置を行ったもの等を用いることができる。
本発明で得られたラミネート缶は、レトルト処理後の印刷物の接着性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0040】
浅版化された印刷版を使用してグラビア印刷しても、良好な印刷濃度、印刷適性、及び、ラミネート適性を有する有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0042】
(溶剤性グラビア印刷用インキ組成物の製造)
<ポリウレタン樹脂ワニスAの製造例>
攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル517質量部、イソプロピルアルコール91質量部を加えた後、イソホロンジアミン15.6質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミン0.70質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミン1.09質量部、加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスA(固形分30質量%、粘度240mPa・s/25℃)を得た。
【0043】
<ポリウレタン樹脂ワニスBの製造例>
攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル520質量部、イソプロピルアルコール92質量部を加えた後、イソホロンジアミン15.6質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミン0.50質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミン1.82質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスB(固形分30質量%、粘度240mPa・s/25℃)を得た。
【0044】
<ポリウレタン樹脂ワニスCの製造例>
攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル521質量部、イソプロピルアルコール92質量部を加えた後、イソホロンジアミン15.6質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミン0.31質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミン2.18質量部、ジエチレントリアミン0.17質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスC(固形分30質量%、粘度250mPa・s/25℃)を得た。
【0045】
<ポリウレタン樹脂ワニスDの製造例>
攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル522質量部、イソプロピルアルコール92質量部を加えた後、イソホロンジアミン15.6質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミン0.10質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミン2.91質量部、ジエチレントリアミン0.17質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスD(固形分30質量%、粘度260mPa・s/25℃)を得た。
【0046】
<ポリウレタン樹脂ワニスEの製造例>
攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル523質量部、イソプロピルアルコール92質量部を加えた後、イソホロンジアミン13.6質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミン0.49質量部を加え反応させ、その後、イソホロンジアミン4.76質量部、ジエチレントリアミン0.41質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスE(固形分30質量%、粘度200mPa・s/25℃)を得た。
【0047】
<ポリウレタン樹脂ワニスFの製造例>
攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジペートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル517質量部、イソプロピルアルコール91質量部を加えた後、イソホロンジアミン13.6質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミン2.44質量部を加えて反応停止させてポリウレタン樹脂ワニスF(固形分30質量%、粘度200mPa・s/25℃)を得た。
【0048】
<ポリウレタン樹脂ワニスGの製造例>
攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに平均分子量2000の3−メチル−1,5−ペンチレンアジベートジオール100質量部、平均分子量2000のポリプロピレングリコール100質量部、及びイソホロンジイソシアネート44.4質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら100〜105℃で6時間反応させた。室温近くまで放冷し、酢酸エチル517質量部、イソプロピルアルコール91質量部を加えた後、イソホロンジアミン16.3質量部を加えて鎖伸長させ、更にモノエタノールアミン0.5質量部を加えて反応停止させ、ポリウレタン樹脂ワニスG(固形分30質量%、粘度1200mPa・s/25℃)を得た。
【0049】
<有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド藍インキ組成物の製造例>
顔料(フタロシアニンブルーC.I.15:4)の20質量部とポリウレタン樹脂ワニスA〜Gの30質量部、混合溶剤A〜Cの50質量部の混合物を、ペイントコンデショナーを用いて混練した混合物の50質量部、更に表1の配合にしたがって残余のポリウレタン樹脂ワニスA〜G及び混合溶剤A〜Cを添加混合し、参考例1〜7、比較例1〜4の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド藍インキ組成物を調製した。
【0050】
<有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド白インキ組成物の製造例>
顔料(酸化チタン)の35質量部とポリウレタン樹脂ワニスA〜Gの30質量部、混合溶剤A又はBの10質量部を、ペイントコンデショナーを用いて混練し、更に表2の配合にしたがって残余の混合溶剤A又はBを添加混合し、実施例8〜12、比較例5〜7の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド白インキ組成物を調製した。
【0051】
(評価)
上記で得られた参考例1〜7、比較例1〜4の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド藍インキ組成物、実施例8〜12、比較例5〜7の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド白インキ組成物の性能評価を下記方法にて行い、評価結果を表1及び表2に示す。
【0052】
<インキ組成物の性能評価>
(インキの粘度)
参考例1〜7、比較例1〜4の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド藍インキ組成物、実施例8〜12、比較例5〜7の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド白インキ組成物の各々をガラス瓶に採取し、液温が25℃の時の粘度をB型粘度計(東京計器社製)の2号ローターを用いて、30rpmで測定した。
【0053】
(インキの保存安定性)
参考例1〜7、比較例1〜4の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド藍インキ組成物、実施例8〜12、比較例5〜7の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド白インキ組成物の各々をガラス瓶に採取し、60℃の雰囲気温度で14日間保存した時の顔料の沈降の有無から、インキの保存安定性を評価した。
A:沈降が見られず、インキの保存安定性は良好である。
B:沈降が見られ、インキの保存安定性は不良である。
【0054】
(濃度及び印刷適性)
参考例1〜7、比較例1〜3の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド藍インキ組成物、実施例8〜12、比較例5及び6の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド白インキ組成物の各々100質量部に対し、更に表1及び表2の配合にしたがって混合溶剤A〜Cで希釈し、粘度を株式会社離合社製ザーンカップ3号で15秒に調整した後、彫刻版(印刷刷板、ヘリオ200線/inch)を備えたグラビア印刷機(東谷製作所社製)にて、片面にコロナ放電処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、E−5101、厚さ12μm、以後PETフィルムと記載)の処理面に印刷速度100m/分で印刷を行った。以後、PETフィルム印刷物ともいう。
なお、比較例1、比較例5の有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド藍インキ組成物又は有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド白インキ組成物を用いて彫刻版のみ変更した(ヘリオ175線)以外は同じ条件で印刷を行ったものを、比較例4、7とした。
【0055】
(印刷濃度)
印刷時の濃度については、藍色の印刷物の反射濃度を濃度計(RD−918/マクベス社製)にて測定を行った。また、白色の印刷物の透過濃度を濃度計(TR−931/マクベス社製)にて測定を行った。
【0056】
(印刷適性)
印刷適性については、印刷終了時の印刷部分における、版にインキが詰まったことに起因するカスレの面積の割合から印刷適性を評価した。
A:カスレが全くみられない。
B:カスレが少しみられる。
C:カスレが多くみられる。
【0057】
(ラミネート適性)
ラミネート適性については、各PETフィルム印刷物のボイル適性及びレトルト適性から、ラミネート適性を評価した。
【0058】
(ボイル適性)
印刷後1日経過した各PETフィルム印刷物に、イソシアネート系アンカーコート剤(タケラックA−3072/タケネートA−3210、三井化学ポリウレタン社製)を塗布し、押出しラミネート機にて345℃で溶融させたポリエチレン(スミカセンL705、住友化学工業社製)を25μmの膜厚で積層し、40℃で1日間放置して、押出しラミネート物を得た。この押出しラミネート物を製袋し、中に水90重量%、サラダ油10重量%の混合物を詰めて溶封後、90℃の熱水中に60分間浸漬し、ラミ浮きの有無からボイル適性を評価した。
A:全くラミ浮きが見られないもの。
B:ピンホール状もしくは一部に細くて短いラミ浮きがみられるもの。
C:長い筋状のラミ浮きが全面にみられるもの。
【0059】
(レトルト適性)
印刷後1日経過した各PETフィルム印刷物に、固形分で2.0g/mとなる量のウレタン系接着剤(タケラックA−616/タケネートA−65、三井化学ポリウレタン社製)を塗布した後、ドライラミネート機で無延伸ポリプロピレンフィルム(RXC−3、厚さ60μm、三井化学東セロ社製)を貼り合わせ、40℃で3日放置してドライラミネート物を得た。このドライラミネート物を製袋し、中に水90重量%、サラダ油10重量%の混合物を詰めて溶封後、120℃の加圧熱水中に60分間浸漬した時のラミ浮きの有無からレトルト適性を評価した。なお、評価の基準はボイル適性と同じとした。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表1及び表2に示したように、参考例に係る有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド藍インキ組成物又は実施例に係る有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド白インキ組成物は、浅版化された版胴を用いてグラビア印刷しても、良好な印刷濃度、印刷適性及びラミネート適性を有するものであった。また、希釈溶剤として、酢酸プロピルを含有する参考例1、2、4〜7、実施例8〜12は、酢酸プロピルを含有しない参考例3よりも印刷適性に優れていた。
一方、比較例に係る有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド藍インキ組成物、及び、有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッド白インキ組成物では、印刷濃度、印刷適性及びラミネート適性の全てにおいて優れたものは得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、浅版化された版胴を使用してグラビア印刷しても、良好な印刷濃度、印刷適性及びラミネート適性を有する有機溶剤性グラビア印刷用ハイソリッドインキ組成物を提供することができる。