特許第6663946号(P6663946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6663946薬剤揮散器及びこれを備えた薬剤揮散装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6663946
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】薬剤揮散器及びこれを備えた薬剤揮散装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20200302BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   A61L9/12
   A01M1/20 D
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-43241(P2018-43241)
(22)【出願日】2018年3月9日
(65)【公開番号】特開2018-149287(P2018-149287A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年5月7日
(31)【優先権主張番号】特願2017-46184(P2017-46184)
(32)【優先日】2017年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前原 邦一
(72)【発明者】
【氏名】木村 友香
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−329794(JP,A)
【文献】 特開2004−067689(JP,A)
【文献】 特開2011−056144(JP,A)
【文献】 特表2008−545591(JP,A)
【文献】 特開2013−078401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00− 9/22
A01M 1/00−99/00
B65D 85/00−85/28
B65D 85/575
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体組成物と前記液体組成物を収容する容器を備え、
前記液体組成物が、揮散性薬剤と溶剤染料を含有し、
前記容器の少なくとも一部が、前記揮散性薬剤を前記容器の外部に揮散させる揮散性薬剤透過性の樹脂フィルムからなり、
前記液体組成物が前記樹脂フィルムに接しており、
前記樹脂フィルムが前記溶剤染料により着色され、着色後の前記樹脂フィルムの色差ΔEabが10以上であることを特徴とする薬剤揮散器。
【請求項2】
前記樹脂フィルムが、ポリオレフィン系樹脂により形成されることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散器。
【請求項3】
前記揮散性薬剤が、香料、溶剤、消臭剤、殺菌剤、除菌剤、抗菌剤、防カビ剤、害虫忌避剤及び害虫防除剤からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤揮散器。
【請求項4】
前記揮散性薬剤の揮散開始時と揮散終了時に、外観の変化がないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤揮散器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬剤揮散器を備えた薬剤揮散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤揮散器及びこれを備えた薬剤揮散装置に関し、更に詳しくは、揮散性薬剤を含有する液体組成物が収容されてなる薬剤揮散器及びこれを備えた薬剤揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
居室やトイレ等の室内で使用される設置型の芳香剤や消臭剤としては、例えば、揮散性薬剤を設置用容器に収容し、室内に揮散性薬剤を揮散させることで所期の目的を達成する製品が知られている。
【0003】
このような揮散性薬剤を揮散させるシステムとしては、例えば、揮散性薬剤を含有する液体組成物を保持体に保持させ、揮散性薬剤を保持体から徐々に揮散させる方法や、揮散性薬剤を含有する液体組成物を、揮散性薬剤透過性の樹脂フィルムが設けられた容器に収容し、この樹脂フィルムを通して揮散性薬剤を揮散させる方法等がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、気化する薬剤を有する板状の被収容体と、被収容体を収容する本体とを備え、被収容体を本体に収容した状態で薬剤を本体から放散させるように構成された薬剤放散器において、本体には、被収容体を、被収容体の側面の延びる方向に移動させることによって本体に挿入するための挿入口が形成され、被収容体は、挿入口の周縁部に係合するように形成されている薬剤放散器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−143929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術において、揮散性薬剤を含有する液体組成物には製品の美観を高めるために、色素等の着色剤が含有され着色されたものが用いられる場合がある。
特に、揮散性薬剤透過性の樹脂フィルムを通して揮散性薬剤を揮散させるシステムでは、フィルム部は透明であるため、内部の液体組成物が視認可能となる。そのため、使用により液体組成物が減少すると使用前と使用後とで製品の外観が変わってしまい、製品の美観が損なわれる。液体組成物の減少による使用前と使用後の製品の外観の変化を視認されず、美観が損なわれないようにするため、例えば、着色された揮散性薬剤透過性の樹脂フィルムを使用することが考えられる。しかしながら、色による製品のラインナップを考慮すると、色ごとに着色された揮散性薬剤透過性の樹脂フィルムを準備しなければならず、製造費が高くなるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、揮散性薬剤を揮散性薬剤透過性の樹脂フィルムが設けられた容器に収容して構成される薬剤揮散器において、使用時間の経過による製品の外観の変化を防止し、美観を損なうことのない薬剤揮散器、及び薬剤揮散器を備えた薬剤揮散装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、揮散性薬剤を含有する液体組成物を収容する容器の少なくとも一部を液体組成物中の着色剤で着色すること、そして、着色剤として特定の染料が揮散性薬剤の揮散を妨げることなく揮散性薬剤の効果を発揮させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(6)を特徴とする。
(1)液体組成物と前記液体組成物を収容する容器を備え、前記液体組成物が、揮散性薬剤と溶剤染料を含有し、前記容器の少なくとも一部が、前記揮散性薬剤を前記容器の外部に揮散させる揮散性薬剤透過性の樹脂フィルムからなり、前記樹脂フィルムが前記溶剤染料により着色されることを特徴とする薬剤揮散器。
(2)着色後の前記樹脂フィルムの色差ΔEabが10以上であることを特徴とする前記(1)に記載の薬剤揮散器。
(3)前記樹脂フィルムが、ポリオレフィン系樹脂により形成されることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の薬剤揮散器。
(4)前記揮散性薬剤が、香料、溶剤、消臭剤、殺菌剤、除菌剤、抗菌剤、防カビ剤、害虫忌避剤及び害虫防除剤からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の薬剤揮散器。
(5)前記揮散性薬剤の揮散開始時と揮散終了時に、外観の変化がないことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の薬剤揮散器。
(6)前記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の薬剤揮散器を備えた薬剤揮散装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の薬剤揮散器によれば、溶剤染料が特異的に揮散性薬剤透過性の樹脂フィルムの表面に沈着する。よって、揮散性薬剤透過性の樹脂フィルムに液体組成物の色が移行し、これにより、使用時間の経過に伴う外観の変化(具体的に、色調の変化)が防止される。また、揮散性薬剤(有効成分)の良好な揮散も確保することができる。そして、液体組成物中の溶剤染料の色を変えるだけで見た目の異なる様々な製品を製造とすることができるので、製造費を抑えることができる。
また本発明の薬剤揮散装置は、本発明の薬剤揮散器を備えてなるものであるので、使用時間の経過による製品の外観の変化が防止され、美観を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の薬剤揮散器の一実施形態を説明するための斜視図である。
図2】試験例5における薬剤揮散装置の外観の写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について更に説明する。
なお、「外観の変化」とは、目視により確認ができる変化を意味し、本明細書においては、具体的に、色調の変化のことをいう。
【0013】
図1は、本発明の薬剤揮散器の一実施形態を説明するための斜視図である。本発明の薬剤揮散器10は、容器3内に揮散性薬剤と溶剤染料を含有する液体組成物1を収容して構成されている。
【0014】
(容器)
液体組成物1を収容する容器3は、その少なくとも一部が、揮散性薬剤を容器の外部に揮散させる揮散性薬剤透過性の樹脂フィルムからなり、図1に示す実施形態においては、容器3は液体収容部4と揮散性薬剤透過性の樹脂フィルム5とで液密に構成されている。なお、本明細書において、「揮散性薬剤透過性の樹脂フィルム」を単に「樹脂フィルム」ともいう。
【0015】
液体収容部4は、液体組成物1を収容するとともに液体組成物1を透過させない公知の材料から形成することができる。液体収容部4を形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。また、必要に応じ、2種以上の材料を組み合わせて用いることができ、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等の揮散性薬剤を吸着や透過する材料であっても、揮散性薬剤を透過させない公知の材料と組み合わせることで用いることができる、あるいは実質的に揮散性薬剤を透過させない厚みを有することで用いることができる。
【0016】
液体収容部のサイズは、用途や設置場所を考慮して適宜決定すればよい。また、図1では液体収容部は略矩形状を示しているが、本発明はこれに制限されず、様々な形状を採用することができる。また、液体収容部は可撓性を有するものであることもできる。
【0017】
揮散性薬剤透過性の樹脂フィルム5は、液体組成物1中の揮散性薬剤を容器3の外部に揮散させることができる樹脂により形成される。本発明において使用できる樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜20のα−オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独重合体又は共重合体、あるいはこれらのオレフィンの単独重合体又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したもの等が挙げられる。そのなかでも直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
【0019】
樹脂フィルムの厚みは、揮散性薬剤の透過性、溶剤染料の着色性、耐衝撃性、揮散性薬剤以外の液体組成物成分をフィルム外へ透過させない等の観点から、10〜200μmであることが好ましく、25〜150μmがより好ましく、50〜100μmが更に好ましい。樹脂フィルムの厚みが200μmを超えると、樹脂フィルムの材料によっては、揮散性薬剤の透過性が悪くなるものもある。
【0020】
樹脂フィルムは透明でも、半透明でもよいが、着色されていないものを用いるのが好ましい。特に、容器の中に収容される液体組成物の色を視認できるため、透明樹脂フィルムを用いることがより好ましい。
【0021】
なお、図1に示す実施形態では、容器が1つの面が開口した略矩形状の液体収容部とこの開口部を密閉する樹脂フィルムとで構成された形態を示したが、本発明においては容器の少なくとも一部が樹脂フィルムで構成されていればよい。樹脂フィルムは容器の1箇所に設けるにとどまらず容器の任意の箇所に複数設けてもよく、また任意の設置面積でもって設けることができる。また、容器を樹脂フィルムのみで構成する、例えば、樹脂フィルムからなる袋状の容器とすることも可能である。
【0022】
(液体組成物)
液体組成物1は、少なくとも揮散性薬剤と溶剤染料を含有する。
【0023】
揮散性薬剤は、本発明の薬剤揮散器の用途に応じて所望の薬剤を用いればよく、特に限定されない。
揮散性薬剤としては、例えば、香料、溶剤、消臭剤、殺菌剤、除菌剤、抗菌剤、防カビ剤、害虫忌避剤、害虫防除剤等が挙げられ、これらの群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0024】
香料としては、様々な植物や動物から抽出された天然香料や、化学的に合成される合成香料、さらにはこれらの香料成分を多数混合して作られる調合香料等が挙げられる。
香料は様々な文献、例えば、「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1960)、「香りの百科」,日本香料協会編,朝倉書店(1989)、「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Pajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)、「Perfume and Flavor Chemicals(aroma chemicals)」,Vols.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)、「香料と調香の基礎知識」, 中島基貴編著,産業図書(1995)、「合成香料 化学と商品知識」,印藤元一著,化学工業日報社(1996)、「香りの百科事典」,谷田貝光克編,丸善(2005)に記載の香料が使用できる。それぞれを引用することにより本明細書の開示の一部とされる。以下に香料の代表例を具体的に挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
天然香料としては、例えば、オレンジ油、レモン油、ラベンダー油、ラバンジン油、ベルガモット油、パチュリ油、シダーウッド油、ペパーミント油等の天然精油等が挙げられる。
合成香料としては、例えば、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、p−シメン、テルピノレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、α−フェランドレン、ミルセン、カンフェン、オシメン等の炭化水素テルペン;ヘプタナール、オクタナール、デカナール、ベンズアルデヒド、サリシリックアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シトロネラール、ハイドロキシシトロネラール、ハイドロトロピックアルデヒド、リグストラール、シトラール、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、リリアール、シクラメンアルデヒド、リラール、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン等のアルデヒド類;エチルフォーメート、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルプロピオネート、メチルイソブチレート、エチルイソブチレート、エチルブチレート、プロピルブチレート、イソブチルアセテート、イソブチルイソブチレート、イソブチルブチレート、イソブチルイソバレレート、エチル−2−メチルバレレート、イソアミルアセテート、テルピニルアセテート、イソアミルプロピオネート、アミルプロピオネート、アミルイソブチレート、アミルブチレート、アミルイソバレレート、アリルヘキサノエート、エチルアセトアセテート、エチルヘプチレート、ヘプチルアセテート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、エチルオクチレート、スチラリルアセテート、ベンジルアセテート、ノニルアセテート、ボルニルアセテート、リナリルアセテート、オルト−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、安息香酸リナリル、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、エチルシンナメート、メチルサリシレート、ヘキシルサリシレート、ヘキシルアセテート、ヘキシルブチレート、メンチルアセテート、ターピニルアセテート、アニシルアセテート、フェニルエチルイソブチレート、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、エチレンブラシレート、γ−ウンデカラクトン、γ−ノニルラクトン、シクロペンタデカノライド、クマリン等のエステル・ラクトン類;アニソール、p−クレジルメチルエーテル、ジメチルハイドロキノン、メチルオイゲノール、β−ナフトールメチルエーテル、β−ナフトールエチルエーテル、アネトール、ジフェニルオキサイド、ローズオキサイド、ガラクソリド、アンブロックス等のエーテル類;イソプロピルアルコール、cis−3−ヘキセノール、ヘプタノール、2−オクタノール、ジメトール、ジヒドロミルセノール、リナロール、ベンジルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、ターピネオール、テトラハイドロゲラニオール、l−メントール、セドロール、サンタロール、チモール、アニスアルコール、フェニルエチルアルコール、ヘキサノール等のアルコール類;ジアセチル、メントン、イソメントン、チオメントン、アセトフェノン、α−又はβ−ダマスコン、α−又はβ−ダマセノン、α−、β−又はγ−ヨノン、α−、β−又はγ−メチルヨノン、メチル−β−ナフチルケトン、ベンゾフェノン、テンタローム、アセチルセドレン、α−又はβ−イソメチルヨノン、α−、β−又はγ−イロン、マルトール、エチルマルトール、cis−ジャスモン、ジヒドロジャスモン、l−カルボン、ジヒドロカルボン、メチルアミルケトン等のケトン類、カンファー、1,8−シネオール、アリルアミルグリコレート、イソプレゴール、リグストラル、アリルカプロエートなどが挙げられる。
これらの香料は、1種単独で使用されても、また2種以上を任意に組み合わせて、調合香料として使用することもできる。さらに、香料は香料成分、溶剤、香料安定化剤などを含有する混合物(香料組成物)として使用することもできる。
【0026】
溶剤としては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(ジプロピレングリコールメチルエーテル)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のグリコールエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ジエチルフタレート、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル類、流動パラフィン、n−パラフィン、イソパラフィン等のパラフィン類、その他、ヘキサン、ケロシン、石油ベンジン等の脂肪族炭化水素類、尿素化合物等が挙げられる。
【0027】
消臭剤としては、例えば、植物抽出エキス(例えば、ツバキ、バラ、キク、マツ、スギ、オオバコ等から得られるエキス)、植物精油(例えば、茶抽出物、カテキン、植物ポリフェノール、リナロール、メントール、ボルネオール)等が挙げられ、公知の消臭剤が使用できる。
【0028】
殺菌剤、除菌剤、抗菌剤、防カビ剤としては、例えば、グルタルアルデヒド、フェノール、クレゾール、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、チモール、o−フェニルフェノール(OPP)、4−クロロ−3,5−ジメチルフェノール(PCMX)、チアベンダゾール(TBZ)、クロロタロニル(TPN)、トリクロサン等が挙げられ、公知の殺菌剤、抗菌剤、除菌剤、防カビ剤が使用できる。
【0029】
害虫忌避剤としては、例えば、ディート、ジ−n−ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、エチル−ブチルアセチルアミノプロピオネート、イカリジン(ピカリジン)、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p−メンタン−3,8−ジオール等が挙げられ、公知の害虫忌避剤が使用できる。
【0030】
害虫防除剤としては、例えば、ピレトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、イミプロトリン、フェノトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、ペルメトリン、エムペントリン、シフェノトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、モンフルオロトリン、ジメフルトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系化合物、カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系化合物、メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト等の殺虫性化合物、その他アリルイソチオシアネート、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、ショウノウ等が挙げられ、公知の害虫防除剤が使用できる。
【0031】
これらの薬剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、異なる作用の薬剤、例えば、香料と溶剤を組合せて含有する等、薬剤の組み合わせも任意である。
【0032】
なお、本実施形態では、液体組成物として、少なくとも揮散性薬剤と溶剤染料を含有し、本発明の効果が得られるものであれば、揮散しない薬剤や固形の薬剤なども含有することもできる。
【0033】
本発明では、着色剤として溶剤染料を用いることを特徴とする。溶剤染料は油溶染料とも言い、COLOUR INDEXにおいて「SOLVENT DYES」に分類されるものを指す。
溶剤染料の樹脂フィルムに対する作用は定かではないが、本発明者らの検討により、溶剤染料が樹脂フィルムに特異的に吸着し、樹脂フィルムの表面に沈着することがわかった。樹脂フィルムの表面に溶剤染料が沈着することにより、揮散性薬剤の揮散による薬剤揮散器の経時的な外観変化を抑制することができる。
【0034】
溶剤染料としては特に制限されず、例えば、公知のアントラキノン系、アゾ系、キノリン系の染料等が挙げられる。具体的には、ソルベントイエロー4、ソルベントイエロー14、ソルベントイエロー15、ソルベントイエロー16、ソルベントイエロー23、ソルベントイエロー24、ソルベントイエロー33、ソルベントイエロー38、ソルベントイエロー62、ソルベントイエロー63、ソルベントイエロー68、ソルベントイエロー82、ソルベントイエロー94、ソルベントイエロー98、ソルベントイエロー99、ソルベントイエロー162;ソルベントレッド18、ソルベントレッド23(赤色225号)、ソルベントレッド45、ソルベントレッド49、ソルベントレッド125、ソルベントレッド130;ソルベントオレンジ2、ソルベントオレンジ7、ソルベントオレンジ11、ソルベントオレンジ15、ソルベントオレンジ26、ソルベントオレンジ56;ソルベントブルー35、ソルベントブルー37、ソルベントブルー59、ソルベントブルー67;ソルベントグリーン1、ソルベントグリーン3、ソルベントグリーン4、ソルベントグリーン5、ソルベントグリーン7、ソルベントグリーン28、ソルベントグリーン29、ソルベントグリーン32、ソルベントグリーン33、ソルベントグリーン34、ソルベントグリーン35;ソルベントバイオレット13(紫色201号)等が挙げられる。
【0035】
溶剤染料の含有量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、液体組成物中、0.03質量%以上含有させることが好ましい。液体組成物中の溶剤染料の含有量が0.03質量%以上であれば、視認できる程度に樹脂フィルムを着色させることができ、薬剤揮散器の使用前、使用後における外観の変化を防止することができる。溶剤染料の種類により少ない含有量で着色が濃いものもあれば、薄いものも存在する。そのため、溶剤染料の種類により薬剤揮散器の外観は異なるが、含有量が多いと黒色に近付き外観を損なうため、溶剤染料の種類に合わせて適宜含有量は調整できる。目安としての溶剤染料の含有量は、液体組成物中、0.03〜1.0質量%がより好ましく、0.05〜0.7質量%がさらに好ましく、0.1〜0.5質量%が特に好ましい。
【0036】
本発明において、溶剤染料の退色を防止するために紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、オキザニリド、サリシレート系化合物、ホルムアミジン系化合物等が挙げられる。中でも、耐光性や耐熱性に優れるトリアジン系化合物を用いるのが好ましい。
【0037】
トリアジン系化合物としては、例えば、5,5’−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)−2,2’−[6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル]ジフェノール、2−[4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(ヘキシル)オキシ−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)−フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0038】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス−(1,1−ジメチルエチル)−フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1−ジメチルエチル)−フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール等が挙げられる。
【0039】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−プロペン酸2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルエステル、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシ−ベンゾフェノン、ポリ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ビス−(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−フェニル)−メタン、[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フェニル−メタノン等が挙げられる。
【0040】
また、液体組成物には必要に応じて、界面活性剤等を添加することもできる。界面活性剤は、液体組成物中の各成分の相溶性を高めると共に、消臭成分としての機能を発揮することができる。
界面活性剤としては、例えば、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、両性系界面活性剤等が挙げられる。
【0041】
非イオン系界面活性剤としては、例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン、ラノリンアルコール、ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール、水素添加ステロール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が挙げられる。
陽イオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、脂肪酸アミドアミン及びその塩、カチオン変性シリコーン等が挙げられる。
陰イオン系界面活性剤としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。
両性系界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0042】
本発明の液体組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、所望によりその他の成分を含有することができる。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、その他の染料等が挙げられる。
【0043】
本発明の液体組成物は、揮散性薬剤と溶剤染料、並びに所望の成分を混合することにより調製できる。
【0044】
本発明の薬剤揮散器は、容器に上記した液体組成物を収容して構成されるが、容器を構成する樹脂フィルムが溶剤染料により着色され、樹脂フィルム自体が色を呈することを特徴とする。これにより、薬剤揮散器の使用前と使用後、すなわち揮散性薬剤の揮散開始時と揮散終了時において液体組成物の減少等に伴う外観の変化を抑制することができるため、薬剤揮散器を備えた製品の美観が損なわれることを防止できる。
【0045】
なお、本発明において、着色される前の樹脂フィルムと着色された樹脂フィルムのL表色系における色差ΔEabは10以上であることが好ましい。色差ΔEabが10以上であれば、樹脂フィルムが十分に着色されていると評価でき、本発明の所望の効果を奏することができる。色差ΔEabの上限は特に限定されないが、100以下が好ましい。
なお、色差ΔEabは、以下の式(1)で定義される。
ΔEab=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2 ・・・(1)
ここで、ΔL、Δa、Δbは、L表色系における2色の色度差であり、本発明では、樹脂フィルム自体の色度と、樹脂フィルムの着色後の色度の差を表す。
【0046】
着色後の樹脂フィルムの色差ΔEabを10以上とするためには、樹脂フィルムの材質と揮散性薬剤との組み合わせを選択したり、溶剤染料の種類や含有量を調整したりすることにより、適宜調整することができる。
本発明においては、樹脂フィルムへの色の沈着性、揮散性薬剤の揮散性、溶剤染料との相溶性等の観点から、樹脂フィルムを直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で構成し、揮散性薬剤としてグリコールエーテル類を用いることが好ましい。
【0047】
本発明の薬剤揮散器は、使用前は、例えば、液体組成物に含まれる揮散性薬剤を外部に透過させない公知の薬剤非透過性材料により密閉され、使用時は非透過性材料を開裂することにより、揮散性薬剤の揮散が開始される。液体組成物が樹脂フィルムに接している間に、溶剤染料が樹脂フィルムの表面に沈着するので、使用時間の経過による製品の外観の変化が防止され、美観を損なうことがない。また、揮散性薬剤の良好な揮散も確保することができる。
【0048】
本発明の薬剤揮散器は、薬剤揮散装置の内部や外部に設置して使用することができる。
薬剤揮散装置は、例えば、本発明の薬剤揮散器を収容可能な別容器を備え、別容器には別容器内外に貫通する貫通孔を有している。本発明の薬剤揮散器を別容器内に収容すると、薬剤揮散器から揮散した有効成分は、別容器に設けられた貫通孔から外部に放出される。
なお、別容器の貫通孔に樹脂フィルムが対向するようにして薬剤揮散器を設置することで、効率的に揮散性薬剤を揮散させることができると共に、薬剤揮散器の色が薬剤揮散装置の外部から視認できるようになるため、製品の外観に優れる。また、液体組成物の減少によって使用前と使用後とで製品の外観が変わることがないため、製品の美観が損なわれることがない。
【0049】
続いて、本発明に係る薬剤揮散器に用いる液体組成物の処方例を示す。
【0050】
処方例
香料 0〜99.97質量%
溶剤(グリコールエーテル類) 0〜99.97質量%
溶剤染料 0.03〜1.0質量%
紫外線吸収剤 0〜1.0質量%
上記処方例において、合計が100質量%となるように配合する。また、香料及び溶剤のいずれかは含有されるものとし、香料と溶剤が共に0質量%となることはない。また、上記処方例以外にも所望の成分を含有することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を具体的な試験例に基づき更に説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0052】
<試験例1>
表1に示す各染料を、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(ダウ・ケミカル株式会社製「プログライドDMM」(商品名))に0.25質量%の割合で溶解させ、検体1〜10の液体組成物を作製した。
【0053】
得られた検体を、容積1mlのPET/LDPE製の上方開口のトレーに0.8ml充填し、開口部に厚さ85μmのLLDPE製フィルムを付着させ、それにより検体が漏れないように密閉して薬剤揮散器を作製した。これを40℃の環境下で12日間静置して、検体を揮散させた。揮散後、薬剤揮散器からLLDPE製フィルムのみを回収し、フィルムの色を確認した。
フィルムに着色が見られたものを「着色あり」、フィルムが透明であったものを「着色なし」として評価した。結果を表1に示す。
【0054】
続いて、LLDPE製フィルムを1cm×1cmの大きさに切り取り、コニカミノルタ株式会社製の色彩色差計「CR−321」(商品名)を用い、試験前のフィルムと試験後のフィルムの色度を測定し、下記式(1)により色差ΔEabを求めた。なお、ΔEabは10以上であれば、フィルムが着色されたことを示している。結果を表1に示す。
ΔEab=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2 ・・・(1)
(式(1)中、ΔL、Δa、Δbは、L表色系における2色の色度差であり、LLDPE製フィルム自体の色度と、試験後のLLDPE製フィルムの色度の差を表す。)
【0055】
【表1】
【0056】
表1の結果から、各溶剤染料(検体1〜6)は、LLDPE製フィルム表面に沈着し、良好な着色が確認された。これに対し、各酸性染料(検体7〜10)はLLDPE製フィルム表面に沈着せず、着色が確認されなかった。これらの結果より、溶剤染料が樹脂フィルムに対して特異的に沈着することがわかった。
【0057】
<試験例2>
表2の処方に従い、ソルベントブルー35、赤色225号及び紫色401号の各染料の含有量を0.05質量%、0.10質量%、0.25質量%又は1.25質量%の割合でそれぞれジプロピレングリコールジメチルエーテル(ダウ・ケミカル株式会社製「プログライドDMM」(商品名))に溶解させ、検体11〜18の液体組成物を作製した。
試験例1と同様にして薬剤揮散器を作製し、フィルムの着色の有無とフィルムの色差ΔEabの測定を行った。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2の結果から、溶剤染料であるソルベントブルー35と赤色225号(検体11〜16)は、いずれの濃度においてもLLDPE製フィルム表面に沈着し、良好な着色が確認されたが、酸性染料である紫色401号(検体17〜18)は、すべての濃度でLLDPE製フィルム表面に沈着せず、着色が確認されなかった。
【0060】
<試験例3>
表3の処方に従い、各揮散性薬剤にソルベントブルー35又は紫色201号の各染料を0.25質量%の割合で溶解させ、検体19〜26の液体組成物を作製した。なお、検体19に用いたミント・ハーブ調調合香料の組成は表4に示したものである。
試験例1と同様にして薬剤揮散器を作製し、フィルムの着色の有無とフィルムの色差ΔEabの測定を行った。結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
表3の結果から、各揮散性薬剤に溶解させた溶剤染料(検体19〜26)はいずれも、LLDPE製フィルム表面に沈着し、良好な着色が確認された。
【0064】
<試験例4>
表5に示す処方に従い、各成分を混合溶解し、検体27、28の液体組成物を作製した。
【0065】
得られた検体を、容積3.5mlのPET/LDPE製の上方開口のトレーに1.9ml充填し、開口部に厚さ85μmのLLDPE製フィルムを付着させ、それにより検体が漏れないように密閉して薬剤揮散器を作製した。これを、実際の使用を想定して、25℃の環境下で60日間静置して、検体を揮散させた。揮散後、薬剤揮散器からLLDPE製フィルムのみを回収し、フィルムの色を確認した。
フィルムに着色が見られたものを「着色あり」、フィルムが透明であったものを「着色なし」として評価した。結果を表5に示す。
【0066】
続いて、LLDPE製フィルムを1cm×1cmの大きさに切り取った試験片を用いて、試験例1と同様にして色差ΔEabを求めた。結果を表5に示す。
【0067】
【表5】
【0068】
表5の結果から、実際の使用を想定して試験を行った場合においても、溶剤染料を含有した検体27、28の液体組成物は、溶剤染料がLLDPE製フィルム表面に沈着し、良好な着色が確認された。
【0069】
<試験例5>
表6に示す処方に従い、各成分を混合溶解し、検体29、30の液体組成物を作製した。なお、検体29、30に用いたミント・ハーブ調調合香料は試験例3で用いたものと同じである。
【0070】
得られた検体を、容積3.5mlのPET/LDPE製の上方開口のトレーに1.9ml充填し、開口部に厚さ85μmのLLDPE製フィルムを付着させ、それにより検体が漏れないように密閉して薬剤揮散器を作製した。
次に、薬剤揮散器をポリプロピレン製の別容器に入れ、薬剤揮散装置を作製した。なお、別容器にはこの別容器内外に貫通する貫通孔が設けられており、薬剤揮散器は、LLDPE製フィルムが別容器の貫通孔と相対するようにして設置した。
薬剤揮散装置を40℃の環境下で14日間静置して、検体を揮散させた。試験開始前の装置外観及び試験終了時の装置外観を比較し、外観の変化の有無について判定した。
結果を表6及び図2に示す。
【0071】
【表6】
【0072】
表6及び図2の結果から、溶剤染料を含む検体29を収容した薬剤揮散器は、LLDPE製フィルム表面に沈着し、経時的な外観変化がなく薬剤揮散装置を通して良好な着色が確認できることがわかった。一方、酸性染料を含む検体30は、LLDPE製フィルム表面への色の沈着がなく、試験終了時、すなわち検体が揮散した後は外観の変化が見られた。
【符号の説明】
【0073】
1 液体組成物
3 容器
4 液体収容部
5 揮散性薬剤透過性の樹脂フィルム
10 薬剤揮散器
図1
図2