(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6663965
(24)【登録日】2020年2月19日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】電子部品の実装構造を生産する方法、電子部品の実装構造、電子部品実装用モジュール及び電子部品実装用配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/32 20060101AFI20200302BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20200302BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
H05K3/32 Z
H05K1/14 A
H01L21/60 311Q
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-188844(P2018-188844)
(22)【出願日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】三井 亮介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隼也
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦史
(72)【発明者】
【氏名】松尾 幸祐
【審査官】
黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第09814142(US,B1)
【文献】
特開2005−252134(JP,A)
【文献】
特開2008−122523(JP,A)
【文献】
特許第6293938(JP,B2)
【文献】
特開2010−251706(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/043480(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/32
H01L 21/60
H05K 1/14
H05K 3/20
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上に導体パターンが形成された配線板に電子部品が実装されてなる電子部品の実装構造を生産する方法であって、
実装用基材の上に弾性変形する絶縁性の粘着剤層が配され、前記粘着剤層の上に実装用導体パターンが形成された実装用配線板と、前記電子部品とを備え、前記電子部品の端子が前記実装用導体パターンに対接され、前記電子部品の前記端子が形成されていない表面の一部と、前記粘着剤層の前記実装用導体パターンが形成されていない表面の一部とが相互に貼り付けられて機械的に結合されている電子部品実装用モジュールを用意し、
前記配線板の前記導体パターンが形成されている側に、前記電子部品実装用モジュールの前記電子部品が位置する側を対向させて、前記電子部品実装用モジュールを前記配線板に押し付けることで、前記実装用導体パターンが前記導体パターンに対接され、前記粘着剤層の前記実装用導体パターンが形成されておらず前記電子部品が貼り付けられていない表面の少なくとも一部と、前記導体パターンの表面と前記基材の前記導体パターンが形成されていない表面とのうちの一部とが相互に貼り付けられて機械的に結合された状態を生成することを特徴とする電子部品の実装構造を生産する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品の実装構造を生産する方法において、
前記基材と前記実装用基材の少なくとも一方が可撓性を有するフィルム基材であることを特徴とする電子部品の実装構造を生産する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子部品の実装構造を生産する方法において、
前記実装用導体パターンは複数本の配線を含み、前記複数本の配線の配列間隔をピッチ変換するパターンを含んでいることを特徴とする電子部品の実装構造を生産する方法。
【請求項4】
基材の上に導体パターンが形成された配線板に電子部品が実装されてなる電子部品の実装構造であって、
実装用基材の上に弾性変形する絶縁性の粘着剤層が配され前記粘着剤層の上に実装用導体パターンが形成された実装用配線板と、相互に逆側となる底面と上面とを有し前記底面に端子を備える前記電子部品と、を備えてなり、前記電子部品の前記端子が前記実装用導体パターンに直接にあい対して接触し、前記底面の前記端子が形成されていない部分と前記粘着剤層の前記実装用導体パターンが形成されていない表面の一部とが相互に貼り付けられて機械的に結合され、前記粘着剤層の弾性変形による弾性復元力が前記端子と前記実装用導体パターンとの接触を促進する圧力を加える方向の荷重として作用している電子部品実装用モジュールを具備し、
前記電子部品の前記上面が前記配線板の前記基材に突き当たった状態で、前記実装用導体パターンが前記導体パターンに直接にあい対して接触し、前記粘着剤層の前記実装用導体パターンが形成されておらず前記電子部品が貼り付けられていない表面の少なくとも一部と前記導体パターンの表面及び前記基材の前記導体パターンが形成されていない表面のうちの一部とが相互に貼り付けられて機械的に結合され、前記粘着剤層の弾性変形による弾性復元力が前記実装用導体パターンと前記導体パターンとの接触を促進する圧力を加える方向の荷重として作用していることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項5】
請求項4に記載の電子部品の実装構造において、
前記基材と前記実装用基材の少なくとも一方が可撓性を有するフィルム基材であることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の電子部品の実装構造において、
前記実装用導体パターンは複数本の配線を含み、前記複数本の配線の配列間隔をピッチ変換するパターンを含んでいることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項7】
基材の上に導体パターンが形成された配線板に電子部品を実装するために用いる電子部品実装用モジュールであって、
実装用基材の上に弾性変形する絶縁性の粘着剤層が配され前記粘着剤層の上に実装用導体パターンが形成された実装用基板と、相互に逆側となる底面と上面とを有し前記底面に端子を備える前記電子部品と、を備え、
前記電子部品の前記端子が前記実装用導体パターンに直接にあい対して接触し、前記底面の前記端子が形成されていない部分と前記粘着剤層の前記実装用導体パターンが形成されていない表面の一部とが相互に貼り付けられて機械的に結合され、前記粘着剤層の弾性変形による弾性復元力が前記端子と前記実装用導体パターンとの接触を促進する圧力を加える方向の荷重として作用していることを特徴とする電子部品実装用モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の電子部品実装用モジュールにおいて、
前記実装用基材は可撓性を有するフィルム基材であることを特徴とする電子部品実装用モジュール。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の電子部品実装用モジュールにおいて、
前記実装用導体パターンは複数本の配線を含み、前記複数本の配線の配列間隔をピッチ変換するパターンを含んでいることを特徴とする電子部品実装用モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は配線板に対する電子部品の実装に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を半田レス、熱レスで配線板に実装する方法の1つとして粘着剤を用いる方法があり、特許文献1にはそのような粘着剤を用いる実装構造が記載されている。
【0003】
図11は特許文献1に記載されている実装構造を示したものであり、この例では配線板(特許文献1では配線付き基材と称している)10に電子部品としてマイクロホン20が実装された構成となっている。マイクロホン20はMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて製造されるMEMSマイクロホンとされている。
【0004】
配線板10はフィルム11の一面11a上に絶縁性の粘着剤層12が設けられ、さらに粘着剤層12上に導体パターン13が形成された構成となっている。粘着剤層12はフィルム11の一面11aに全面に渡って設けられている。導体パターン13はこの例では4本配列されて形成されており、4本の導体パターン13の各一端及び各他端にはランド13a及び13bがそれぞれ形成されている。
【0005】
マイクロホン20は端子21が導体パターン13のランド13aにそれぞれ位置合わせされて押圧され、粘着剤層12に押し付けられることによって実装されている。マイクロホン20の底面20aの、端子21が形成されていない部分は粘着剤層12に粘着され、これによりマイクロホン20と粘着剤層12は機械的に結合されている。粘着剤層12は押圧により弾性変形して粘着し、その弾性復元力がマイクロホン20の端子21とランド13aとを圧接させる方向の荷重として寄与するため、端子21とランド13aとの良好な電気的接続状態が得られるものとなっている。
【0006】
なお、この例では配線板10の導体パターン13が形成されている側の面は、マイクロホン20が位置する部位及び4つのランド13bが位置する部位を除いて、カバーフィルム30によって覆われた構成となっている。
図11中、31及び32はそれぞれカバーフィルム30に形成されている窓及び切欠きを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6293938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、特許文献1に記載されているような粘着剤を用いる電子部品の実装構造によれば、粘着剤層に電子部品を押し付けて貼り付けるだけで簡易に電子部品を配線板に実装することができる。
【0009】
しかるに、特許文献1に記載されている構成では、配線板は全面に渡って粘着剤層を有するものとなっており、その粘着剤層上に導体パターンが形成された構成となっている。導体パターンは例えば印刷によって形成することが特許文献1に記載されているが、粘着剤層上への導体パターンの形成は容易とは言えず、その点で配線板の形成は面倒でコストがかかるものとなっており、所要の回路を構成すべく、粘着剤層上に多くの導体パターンを形成する必要がある場合にはこの問題はさらに顕著となる。
【0010】
この発明の目的はこの問題に鑑み、配線板への電子部品の実装において、粘着剤を用いる簡易な実装を可能としつつ、配線板の低コスト化を図れるようにした電子部品の実装構造及びその生産方法を提供することにあり、さらに電子部品実装用モジュール及び電子部品実装用配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明によれば、基材の上に導体パターンが形成された配線板に電子部品が実装されてなる電子部品の実装構造を生産する方法は、実装用基材の上に弾性変形する絶縁性の粘着剤層が配され、粘着剤層の上に実装用導体パターンが形成された実装用配線板と電子部品とを備え、電子部品の端子が実装用導体パターンに対接され、電子部品の端子が形成されていない表面の一部と、粘着剤層の実装用導体パターンが形成されていない表面の一部とが相互に貼り付けられて機械的に結合されている電子部品実装用モジュールを用意し、配線板の導体パターンが形成されている側に、電子部品実装用モジュールの電子部品が位置する側を対向させて、電子部品実装用モジュールを配線板に押し付けることで、実装用導体パターンが導体パターンに対接され、粘着剤層の実装用導体パターンが形成されておらず電子部品が貼り付けられていない表面の少なくとも一部と、導体パターンの表面と基材の導体パターンが形成されていない表面とのうちの一部とが相互に貼り付けられて機械的に結合された状態を生成する。
【0012】
請求項2の発明では請求項1の発明において、基材と実装用基材の少なくとも一方が可撓性を有するフィルム基材とされる。
【0013】
請求項3の発明では請求項1又は2の発明において、実装用導体パターンは複数本の配線を含み、複数本の配線の配列間隔をピッチ変換するパターンを含んでいるものとされる。
【0014】
請求項4の発明によれば、基材の上に導体パターンが形成された配線板に電子部品が実装されてなる電子部品の実装構造は、実装用基材の上に弾性変形する絶縁性の粘着剤層が配さ
れ粘着剤層の上に実装用導体パターンが形成された実装用配線板と
、相互に逆側となる底面と上面とを有し前記底面に端子を備える電子部品とを備え
てなり、電子部品の端子が実装用導体パターンに
直接にあい対して接触し、
前記底面の端子が形成されていない
部分と粘着剤層の実装用導体パターンが形成されていない表面の一部とが相互に貼り付けられて機械的に結合され
、粘着剤層の弾性変形による弾性復元力が端子と実装用導体パターンとの接触を促進する圧力を加える方向の荷重として作用している電子部品実装用モジュールを具備し、
電子部品の前記上面が配線板の基材に突き当たった状態で、実装用導体パターンが導体パターンに
直接にあい対して接触し、粘着剤層の実装用導体パターンが形成されておらず電子部品が貼り付けられていない表面の少なくとも一部
と導体パターンの表面
及び基材の導体パターンが形成されていない表
面のうちの一部とが相互に貼り付けられて機械的に結合され
、粘着剤層の弾性変形による弾性復元力が実装用導体パターンと導体パターンとの接触を促進する圧力を加える方向の荷重として作用しているものとされる。
【0015】
請求項5の発明では請求項4の発明において、基材と実装用基材の少なくとも一方が可撓性を有するフィルム基材とされる。
【0016】
請求項6の発明では請求項4又は5の発明において、実装用導体パターンは複数本の配線を含み、複数本の配線の配列間隔をピッチ変換するパターンを含んでいるものとされる。
【0017】
請求項7の発明によれば、基材の上に導体パターンが形成された配線板に電子部品を実装するために用いる電子部品実装用モジュー
ルは、実装用基材の上に弾性変形する絶縁性の粘着剤層が配さ
れ粘着剤層の上に実装用導体パターンが形成された実装用基板と
、相互に逆側となる底面と上面とを有し前記底面に端子を備える電子部品とを備え、電子部品の端子が実装用導体パターンに
直接にあい対して接触し、
前記底面の端子が形成されていない
部分と粘着剤層の実装用導体パターンが形成されていない表面の一部とが相互に貼り付けられて機械的に結合され
、粘着剤層の弾性変形による弾性復元力が端子と実装用導体パターンとの接触を促進する圧力を加える方向の荷重として作用しているものとされる。
【0018】
請求項8の発明では請求項7の発明において、実装用基材は可撓性を有するフィルム基材とされる。
【0019】
請求項9の発明では請求項7又は8の発明において、実装用導体パターンは複数本の配線を含み、複数本の配線の配列間隔をピッチ変換するパターンを含んでいるものとされる。
【発明の効果】
【0022】
この発明による電子部品の実装構造及びその生産方法によれば、粘着剤を用いることによって配線板への電子部品の実装を簡易に行えるものとなっているものの、粘着剤層と実装用導体パターンとを備えて電子部品が貼り付けられた電子部品実装用モジュールを作製し、その電子部品実装用モジュールを配線板に局所的に貼り付けるものとなっている。
【0023】
よって、従来のように電子部品が実装される配線板に粘着剤層を全面に設けるといったことは不要となり、つまり配線板は基材上に導体パターンが形成された通常の配線板でよいものとなり、その点で配線板の低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】Aはこの発明による電子部品の実装構造の第1の実施例を示す平面図、Bはその断面図。
【
図2】Aは
図1における電子部品の正面図、Bはその底面図。
【
図3】Aは
図1における実装用配線板の平面図、Bはその断面図。
【
図4】Aは
図1における電子部品実装用モジュールの平面図、Bはその断面図。
【
図5】この発明による電子部品の実装構造の第2の実施例を示す平面図。
【
図6】Aは
図5における電子部品の正面図、Bはその底面図。
【
図7】Aは
図5における実装用配線板の平面図、Bはその正面図。
【
図8】
図5における電子部品実装用モジュールの平面図。
【
図10】この発明による電子部品の実装構造の第3の実施例を示す断面図。
【
図11】Aは電子部品の実装構造の従来例を示す平面図、Bはその正面図、Cはその部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0026】
図1はこの発明による電子部品の実装構造の第1の実施例を示したものであり、この例では電子部品の実装に粘着剤を用いるものとなっているものの、電子部品実装用モジュールをまず作製し、この電子部品実装用モジュールを配線板に実装する構造となっている。
図1中、40は配線板を示し、50は電子部品実装用モジュールを示す。
【0027】
電子部品実装用モジュール50は電子部品実装用配線板(以下、簡略化して実装用配線板と言う)60と電子部品70とよりなる。電子部品70はこの例では
図2に示したような形状を有し、底面70aには4つの端子71を備えるものとなっている。
【0028】
実装用配線板60は
図3に示したように実装用基材61の一面61a上に弾性変形する絶縁性の粘着剤層62が配され、さらに粘着剤層62の上に実装用導体パターン63が形成された構成を有する。粘着剤層62は実装用基材61の一面61aに全面に渡って設けられている。
【0029】
実装用導体パターン63はこの例では
図3Aに示したように長方形形状をなす実装用配線板60の右半部及び左半部にそれぞれ2本ずつ位置するように配された4本の配線63aよりなる。4本の配線63aは内端が電子部品70の4つの端子71の位置に対応する位置に位置され、実装用配線板60の長辺と平行方向に延伸されている。各配線63aの外端は実装用配線板60の短辺に至る手前で止められ、短辺と所定距離、離隔されている。
【0030】
上記のような構成を有する実装用配線板60において、実装用基材61は可撓性を有するフィルム基材とされる。フィルム基材の材料としては例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)等を用いることができる。
【0031】
粘着剤層62を構成する粘着剤としては、例えばポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系、エポキシ系、フェノール系、シリコーン系、ポリオレフィン系、ポリイミド系、ビニル系、天然高分子系のポリマーなどが挙げられる。上記ポリマーは単独で用いられても、併用して用いられてもよい。
【0032】
また、粘着性や機械的特性を向上させるために、上記ポリマーに、例えばポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系、エポキシ系、フェノール系、シリコーン系、ポリオレフィン系、ポリイミド系、ビニル系のモノマー、オリゴマーを混合して用いてもよい。
【0033】
実装用導体パターン63は例えば銀ペースト(銀インク)を用い、印刷によって形成される。なお、めっきによって実装用導体パターン63を形成することもできる。
【0034】
図4は実装用配線板60に電子部品70が取り付けられて電子部品実装用モジュール50が作製された状態を示したものである。電子部品70は4つの端子71が実装用配線板60の実装用導体パターン63の4本の配線63aの内端部分にそれぞれ位置合わせされて押圧され、粘着剤層62に押し付けられることによって取り付けられる。
【0035】
電子部品70の端子71は
図4Bに示したように実装用導体パターン63に直接、対接されて電気的に接続され、電子部品70の底面70aの、端子71が形成されていない部分は粘着剤層62に粘着されて機械的に結合される。即ち、実装用導体パターン63が形成された粘着剤層62と電子部品70との機械的結合は、電子部品70の端子71が形成されていない表面の一部と、粘着剤層62の実装用導体パターン63が形成されていない表面の一部とが相互に貼り付けられることによって行われる。
【0036】
粘着剤層62は押圧により弾性変形して粘着し、その弾性復元力が電子部品70の端子71と実装用導体パターン63とを圧接させる方向の荷重として作用するため、端子71と実装用導体パターン63とは良好に電気的に接続される。
【0037】
この例ではこのように電子部品実装用モジュール50を作製して用意し、この電子部品実装用モジュール50を配線板40に取り付けることによって
図1に示したような配線板40に電子部品70が実装されてなる電子部品の実装構造を生産する。
【0038】
配線板40は基材41の上に導体パターンが形成された一般的な配線板であって、この例ではフレキシブルプリント配線板(FPC)とされ、基材41はフィルム基材よりなる。なお、
図1では配線板40は全体の形状、構成の図示を省略し、電子部品70が実装される部分のみを示している。この電子部品70が実装される部分には電子部品実装用モジュール50の実装用導体パターン63の4本の配線63aと対接、接続される4本の配線42aよりなる導体パターン42が設けられている。
【0039】
配線板40に対する電子部品実装用モジュール50の取り付けは以下のように行われる。
【0040】
配線板40の導体パターン42が形成されている側に、電子部品実装用モジュール50の電子部品70が位置する側を対向させ、実装用導体パターン63の4本の配線63aをそれぞれ配線板40の導体パターン42の4本の配線42aの位置に合わせ、電子部品実装用モジュール50全体を押圧して配線板40に押し付ける。これにより、電子部品実装用モジュール50の実装用配線板60は
図1Bに示したように電子部品70の周りに位置する部分が変形し、実装用導体パターン63の4本の配線63aの外端側部分はそれぞれ配線板40の導体パターン42の配線42aに直接、対接して電気的に接続される。電子部品70は上面70bが配線板40の基材41に突き当たった状態となる。
【0041】
実装用配線板60の変形により配線板40の板面に接触した粘着剤層62は配線板40に粘着し、機械的に結合される。即ち、粘着剤層62と配線板40との機械的結合は、粘着剤層62の実装用導体パターン63が形成されておらず電子部品70が貼り付けられていない表面の少なくとも一部と、配線板40における導体パターン42の表面と基材41の導体パターン42が形成されていない表面とのうちの一部とが相互に貼り付けられることによって行われる。粘着剤層62の粘着による粘着剤層62と配線板40との機械的結合部分は電子部品70の周りを囲んで位置する。
【0042】
粘着剤層62は押圧により弾性変形して粘着し、その弾性復元力が実装用導体パターン63と配線板40の導体パターン42とを圧接させる方向の荷重として作用するため、実装用導体パターン63と導体パターン42とは良好に電気的に接続される。
【0043】
以上、この発明による電子部品の実装構造の第1の実施例をその生産方法と共に説明したが、上述した例によれば、下記のような効果を得ることができる。
【0044】
(1)粘着剤を用いた電子部品の配線板への簡易な実装が可能となっているものの、この例では粘着剤層62を備えた実装用配線板60に電子部品70を粘着して取り付けて電子部品実装用モジュール50を作製し、この電子部品実装用モジュール50を配線板40の実装部位に局所的に粘着して取り付けるものとなっている。これにより、従来例のように配線板の全面に粘着剤層を設けるといったことは不要となり、つまり配線板を粘着剤層のない一般的な配線板とすることができるため、その分、配線板の低コスト化を図ることができる。
【0045】
(2)電子部品を装着した電子部品実装用モジュールは、例えば各種の配線板に対して共通して又は汎用的に使用可能なものとして作製することができ、そのように電子部品実装用モジュールを作製すれば、生産効率の向上を図ることができる。
【0046】
(3)電子部品は配線板と電子部品実装用モジュールの実装用配線板とによって覆われた構造となって外部に露出しないため、防水性が担保される。
【0047】
(4)
図11に示した従来の実装構造では電子部品20と粘着剤層12の粘着面積が少なく、電子部品実装面が外側となるように配線板10に曲げが加わると、電子部品20の端子21が導体パターン13から乖離したり、電子部品20が脱落したりする不具合が生じる可能性があったが、この例では電子部品70は実装用配線板60と配線板40とによって挟み込まれ、かつ実装用配線板60の粘着剤層62と配線板40の粘着面積も大幅に増大するため、そのような不具合の発生を防止することができ、よって曲げに強く、信頼性の高い実装構造を得ることができる。
【0048】
次に、この発明による電子部品の実装構造の第2の実施例について説明する。
【0049】
電子部品実装用モジュールに形成される実装用導体パターンは電子部品の端子と配線板の導体パターンとを中継接続するもので、第1の実施例では
図3Aにおいて左右各2本位置している実装用導体パターン63の配線63aはそれぞれ一定の配列間隔で平行に延伸されているが、第2の実施例では複数本の配線を含む実装用導体パターンが複数本の配線の配列間隔をピッチ変換するパターンを含んでいるものとする。
【0050】
図5はこのように電子部品実装用モジュールの実装用導体パターンがピッチ変換するパターンを含んでいる場合の電子部品の実装構造を示したものであり、
図6〜9は
図5に示した電子部品の実装構造における電子部品80、実装用配線板90、電子部品実装用モジュール100及び配線板110をそれぞれ示したものである。なお、
図5及び8はそれぞれ透視図として示しており、また配線板110は電子部品80が実装される部分のみを示している。
【0051】
電子部品80はこの例では表面実装用のマイクロコンピュータチップであり、
図6に示したように方形状をなす底面80aの4辺にはそれぞれ端子81が12個ずつ配列形成されている。
【0052】
実装用配線板90は第1の実施例における実装用配線板60と同様、
図7に示したように実装用基材91の一面91a上に粘着剤層92が全面に渡って配され、粘着剤層92の上に実装用導体パターン93が形成された構成を有する。なお、実装用導体パターン93は実装用基材91や粘着剤層92に比べて非常に薄いため、
図7B(正面図)においてはその図示を省略している。実装用導体パターン93は48本の配線93aよりなり、方形状をなす実装用配線板90の4辺からそれぞれ12本ずつ実装用配線板90の中央に向かって延伸されている。48本の配線93aの内端は電子部品80の48個の端子81の位置に対応する位置に位置され、外端は実装用配線板90の端縁と所定距離、離隔されている。実装用基材91及び粘着剤層92の構成材料には第1の実施例における実装用基材61及び粘着剤層62と同様の構成材料が用いられる。
【0053】
実装用導体パターン93は
図7Aに示したように配線93aの配列間隔をピッチ変換するパターンを含んでおり、
図7Aにおいて実装用配線板90の上辺及び下辺に至る配線93aは配線93aの配列間隔が内端側に対して外端側が大となるようにピッチ変換されており、実装用配線板90の右辺及び左辺に至る配線93aは配線93aの配列間隔が内端側に対して外端側が小となるようにピッチ変換されている。実装用配線板90の実装用導体パターン93は必要に応じてこのようにピッチ変換するパターンとしてもよい。
【0054】
実装用配線板90に電子部品80が取り付けられることによって
図8に示した電子部品実装用モジュール100が作製される。
【0055】
配線板110はこの例では第1の実施例における配線板40と同様、フレキシブルプリント配線板とされ、基材111の上には所要の導体パターン112が形成されている。導体パターン112は48本の配線112aよりなり、実装用導体パターン93の48本の配線93aと対接、接続されるように配置されている。
【0056】
配線板110に電子部品実装用モジュール100を取り付けることによって
図5に示したように配線板110に電子部品80が実装されてなる電子部品の実装構造が生産される。粘着剤層92と電子部品80との機械的結合及び粘着剤層92と配線板110との機械的結合は第1の実施例と同様にして行われる。
【0057】
上述した第1の実施例及び第2の実施例では配線板40及び110はいずれもフレキシブルプリント配線板とされ、基材41及び111は可撓性を有するフィルム基材としているが、基材41及び111は可撓性のないリジッドな基材であってもよい。
【0058】
また、粘着剤層の厚み等の条件が十分であって、貼り付きによる機械的結合が達成されるのであれば、配線板の基材と電子部品実装用モジュールの実装用基材の何れか又は両方にリジッドな基材を用いてもよい。
【0059】
図10はこの発明の第3の実施例として配線板120の基材121及び電子部品実装用モジュール130の実装用配線板140の実装用基材141がいずれもリジッドな基材であっても機械的結合が良好に行われている電子部品150の実装構造を示したものである。
【0060】
電子部品150は極めて小さく、厚みが薄い例えばチップ抵抗であり、このような電子部品150に対して粘着剤層142の厚みを相対的に厚くすれば基材121及び実装用基材141がリジッドな基材であっても
図10に示したような電子部品の実装構造が可能となる。なお、
図10中、143は実装用配線板140の実装用導体パターンを示し、122は配線板120の導体パターンを示す。また、151は電子部品150の端子を示す。
【0061】
さらに、この発明の第4の実施例として、図示を省略するが、電子部品150のように、その実装用基材141に向く側の底面のみならず配線板120に向く側の面にも及んで延びる端子151が備えられている場合には、配線板120の導体パターン122を、実装用導体パターン143と対接するのみならず端子151の配線板120に向く部分にも直接に対接するように延長して設けてもよい。すなわち、表裏両面に及ぶ端子を備えるタイプの電子部品を実装する場合には、配線板の導体パターンと実装用配線板の実装用導体パターンとによって電子部品の端子を両側から挟むように接続する実装構造も可能である。そして、そのような実装構造が、配線板の基材や実装用配線板の実装用基材の可撓性の有無にかかわらず可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
10 配線板 11 フィルム
11a 一面 12 粘着剤層
13 導体パターン 13a,13b ランド
20 マイクロホン 20a 底面
21 端子 30 カバーフィルム
31 窓 32 切欠き
40 配線板 41 基材
42 導体パターン 42a 配線
50 電子部品実装用モジュール 60 実装用配線板
61 実装用基材 61a 一面
62 粘着剤層 63 実装用導体パターン
63a 配線 70 電子部品
70a 底面 70b 上面
71 端子 80 電子部品
80a 底面 81 端子
90 実装用配線板 91 実装用基材
91a 一面 92 粘着剤層
93 実装用導体パターン 93a 配線
100 電子部品実装用モジュール 110 配線板
111 基材 112 導体パターン
112a 配線 120 配線板
121 基材 122 導体パターン
130 電子部品実装用モジュール 140 実装用配線板
141 実装用基材 142 粘着剤層
143 実装用導体パターン 150 電子部品
151 端子
【要約】
【課題】粘着剤を用いることによって電子部品の配線板への簡易な実装を可能としつつ、配線板の低コスト化を可能とする。
【解決手段】実装用基材61の上に弾性変形する絶縁性の粘着剤層62が配され、粘着剤層62の上に実装用導体パターン63が形成された実装用配線板60と電子部品70とを備え、電子部品70の端子71が実装用導体パターン63に対接され、電子部品70が粘着剤層62に貼り付けられて機械的に結合されている電子部品実装用モジュール50を用意し、配線板40の導体パターン42が形成されている側に電子部品70が位置する側を対向させて電子部品実装用モジュール50を配線板40に押し付けることで、実装用導体パターン63が導体パターン42に対接され、粘着剤層62によって貼り付けられて機械的に結合された電子部品の実装構造を生成する。
【選択図】
図1