(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載されたように、ブリッジと船との間に梯子が設けられていると、作業員は外洋構造物から船に乗り込む際には、梯子を後向き(船に背中を向ける)姿勢で下りることになる。後向きの姿勢では船や波が見づらいため、船にアクセスすることが非常に困難であるという問題点がある。また、船への安全なアクセスを確保するためには、後向き姿勢で船への乗り込みが可能な波高限界値は低くなるため、波高によっては、外洋構造物から船への乗り込みが非常に難しくなる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、作業員が安全にアクセスできる外洋構造物へのアクセス構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る外洋構造物へのアクセス構造物は、外洋構造物の外周に設けられ、隣り合って配置される複数のプラットフォーム
と、前記複数のプラットフォームの下方に設けられた接舷板部と、を備え、前記複数のプラットフォームの高さは互いに異なることを特徴とする。
【0007】
このように構成された外洋構造物へのアクセス構造物では、外洋構造物の外周に設けられ、隣り合って配置される複数のプラットフォームは、互いに高さが異なっている。よって、変化する潮位に応じて、適切な高さのプラットフォームを選択して、プラットフォームに船を接舷する。船から外洋構造物に移る際には作業員は外洋構造物側を向く(前向き)姿勢でアクセスすることができるとともに、外洋構造物から船に乗り込む際には作業員は船側を向く(前向き)姿勢でアクセスすることができるため、安全にアクセスすることができる。
また、プラットフォームの下方には接舷板部が設けられているため、船の舳先を接舷板部に接舷でき、船を安定して接舷することができる。
【0012】
また、本発明に係る外洋構造物へのアクセス構造物では、前記接舷板部は、複数の接舷板が梯子状に配置されて構成されていてもよい。
【0013】
このように構成された外洋構造物へのアクセス構造物では、接舷板部は複数の接舷板が梯子状に配置されて構成されているため、船からプラットフォームへは接舷板を上ってアクセスすることもできる。
【0014】
また、本発明に係る外洋構造物へのアクセス構造物は、
外洋構造物の外周に設けられ、隣り合って配置される複数のプラットフォームと、前記複数のプラットフォームの幅方向の両端部側をそれぞれ支持する防舷柱
と、備え、前記複数のプラットフォームの高さは互いに異なり、前記防舷柱どうしの間隔は所定の間隔とされていてもよい。
【0015】
このように構成された外洋構造物へのアクセス構造物では、外洋構造物の外周に設けられ、隣り合って配置される複数のプラットフォームは、互いに高さが異なっている。よって、変化する潮位に応じて、適切な高さのプラットフォームを選択して、プラットフォームに船を接舷する。船から外洋構造物に移る際には作業員は外洋構造物側を向く(前向き)姿勢でアクセスすることができるとともに、外洋構造物から船に乗り込む際には作業員は船側を向く(前向き)姿勢でアクセスすることができるため、安全にアクセスすることができる。
防舷柱どうしの所定の間隔は、最大値としては船の舳先が防舷柱の間に入り込まないような間隔とされている。船の舳先には、通常、緩衝用にゴムタイヤが備えられ、そのゴムタイヤの直径は、通常、50cm以上あるので、例えば、防舷柱の間隔を50cm以下とすることができる。また、この防舷柱どうしの所定の間隔は、最小値としては、防舷柱の間を作業員が通ることができる間隔とする必要がある。例えば、防舷柱の間隔を30cm以上とすることができる。
以上から、前記防舷柱どうしの所定の間隔は、例えば、0.3m〜0.5mとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る外洋構造物へのアクセス構造物によれば、船とプラットフォームとの間を、作業員が安全にアクセスすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る外洋構造物へのアクセス構造物について、図面を用いて説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る外洋構造物へのアクセス構造物の構成を示す模式的な正面図である。
外洋構造物へのアクセス構造物(以下、単に「アクセス構造物」と称する)は、船と洋上風車や外洋建築物等の外洋構造物との間のアクセスを可能にするように構成されている。本実施形態では、外洋構造物として洋上風車を例に挙げて説明する。
【0022】
アクセス構造物100は、洋上風車Aの円柱状の基礎タワーA1に設けられている。基礎タワーA1は、円柱状に限られず、トラス構造等適宜選択可能である。基礎タワーA1の上部に、図示しないナセル及び風車ブレードが設けられている。
【0023】
アクセス構造物100は、基礎タワーA1に固定された複数の防舷柱1と、防舷柱1間に設置されたプラットフォーム2と、プラットフォーム2の下方に設けられた接舷板部3と、所定のプラットフォーム2から上方に延びる梯子4と、を備えている。
【0024】
各防舷柱1は、鉛直方向に延びる鉛直部11と、鉛直部11の上下端からそれぞれ湾曲して先端が基礎タワーA1に固定された湾曲部12と、を有している。鉛直部11は、基礎タワーA1の外周面から離間して配置されている。湾曲部12は、数時間に一波程度やってくる有義波高の数倍の波に船が煽られたとしても、防舷柱1の上に乗り上げたり、防舷柱1の下に潜り込んだりしても、船側に大きな損害を与えることを防止するためである。なお、後段(段落0027)にあるように鉛直部11が十分な長さを有している場合は、湾曲する必要はない。
【0025】
防舷柱1は、基礎タワーA1の外周面に設けられ、周方向に沿って互いに離間して複数配置されている。本実施形態では、24本の防舷柱1が設置されている。
【0026】
隣り合う防舷柱1の間隔(内内の距離)は、30cm〜50cmが好ましく、本実施形態では約40cmとされている。
防舷柱1の間隔を約40cmとしているのは、前述したように、船の舳先が防舷柱1の間をすり抜け、プラットフォーム2にいる作業員に衝突することを防止し、かつ、作業員が防舷柱1の間を通過して、船にアクセスできるようにするためである。
【0027】
また、防舷柱1の基礎タワーA1に沿う方向(鉛直方向)の長さは約10mである。
防舷柱1の長さは約10mとしているのは、数時間に一波程度やってくる有義波高の数倍の波に船が煽られたとしても、防舷柱1の上に乗り上げたり、防舷柱1の下に潜り込んだりすることを防ぎ、船に大きな損害を与えることを防止するためである。
【0028】
梯子4は、上段のプラットフォーム23から上方に延び、基礎タワーA1の外周面に沿って配置されている。
【0029】
接舷板部3は、プラットフォーム2の下方に配置されている。接舷板部3は、鉛直方向に離間して、梯子状に配置された複数の接舷板31により構成されている。本実施形態では、接舷板31はH鋼等の鋼材により構成されている。
【0030】
本実施形態では、各接舷板31は鉛直方向に約15cmの間隔を有して配置されていて、接舷板31間に足先を入れることが可能である。
【0031】
また、プラットフォーム2の上面から最下段の接舷板31までの高さは、例えば、約3mに設定することができる。
このような高さに大きな幅を持たせることにより、高波浪時においても、確実に船の舳先を接舷板31に接触させることができるように、プラットフォーム2及び接舷板31が構成されている。これにより、船の舳先が基礎タワーA1に直接衝突することを防止することができる。
【0032】
プラットフォーム2は、基礎タワーA1の周方向にわたって、複数配置されている。本実施形態では、3枚のプラットフォーム2、すなわち、下段のプラットフォーム21、中段のプラットフォーム22、上段のプラットフォーム23が1ユニットとして構成されている。つまり下段のプラットフォーム21の隣りに中段のプラットフォーム22が配置され(
図1の正面視左側)、中段のプラットフォーム22の隣に上段のプラットフォーム23が配置されている(
図1の正面視左側)。この1ユニットが、基礎タワーA1の外周に4セット配置されている。
また、隣り合うプラットフォーム2では、設置される高さが異なっている。つまり中段のプラットフォーム22は、下段のプラットフォーム21の最上部よりも鉛直方向において上方に配置され、上段のプラットフォーム23は、中段のプラットフォーム22の最上部よりも鉛直方向において上方に配置されている。また、下段のプラットフォーム21、中段のプラットフォーム22、上段のプラットフォーム23は、それらの配列方向に重なっており、作業員が、隣接するプラットフォーム2間を移動可能となるように構成されている。
本実施形態では、下段のプラットフォーム21、中段のプラットフォーム22、上段のプラットフォーム23には、作業員がプラットフォーム2間を上下移動できる程度の段差(高さの違い)を設けている。例えば、各プラットフォーム2の段差(隣接するプラットフォーム21,22,23の最上部間の段差)を約0.5〜1.3mとしてもよい。
【0033】
このような配置とすることにより、潮位が変動しても、下段のプラットフォーム21から上段のプラットフォーム23までのいずれかのプラットフォーム2を使用することができる。
【0034】
図2は、アクセス構造物100の構成を示す模式的な平面図である。
アクセス構造物100は、防舷柱1と、プラットフォーム2と、梯子4と、基礎タワーA1に設けられた複数のボルト穴A2(図中省略)とを有している。
【0035】
プラットフォーム2は、基礎タワーA1の外周全体に設置され、12か所設置されているが、12か所に限定されない。
このように、基礎タワーA1の外周に複数個所設けることにより、波向きを考慮し、最も波の影響を受けない方向から基礎タワーA1アクセスすることができる。
【0036】
プラットフォーム2は、隣り合う3本の防舷柱1間にまたがって設置されているが、3本に限定されない。プラットフォーム2は、内周側が基礎タワーA1に固定されるとともに、外周側が防舷柱1に固定されている。本実施形態では、プラットフォーム2は、基礎タワーA1に設けられた複数のボルト穴A2(
図4参照)のうち、所定の高さのボルト穴A2にボルト止めされている。
なお、プラットフォーム2の固定はボルト固定に限らず、溶接やコンクリートへの埋め込みなどでもよく、固定方法は適宜選択可能である 。
【0037】
各プラットフォーム2が配置される隣り合う3本の防舷柱1間にわたって、それぞれ同一高さの接舷板31が配置されている。また、各プラットフォーム2から基礎柱A1までの幅は、作業員がプラットフォーム上を移動可能なよう、例えば、50〜100cm程度の幅を有する。
【0038】
図3は、アクセス構造物100の構成を示す模式的な部分正面図である。
アクセス構造物100は、防舷柱1と、プラットフォーム2と、接舷板31とを有する。
【0039】
接舷板31は、プラットフォーム2より下に配置されている。船の舳先が、プラットフォーム2より下に接舷したときは、接舷板31及び防舷柱1に接触し、接舷の衝撃を吸収する。
潮位が異なるときは、潮位に応じてプラットフォーム21からプラットフォーム23の中から、適当な高さのプラットフォームを選択することができる。
【0040】
図4は、アクセス構造物100の構成を示す図であり、
図3と直交する方向から見た模式的な部分側面図である。
アクセス構造物100は、防舷柱1と、接舷板31と、接舷板支持鋼32と、ボルト穴A2とを有する。
【0041】
接舷板31は、接舷板支持鋼32に接続されている。接舷板支持鋼32の基礎タワーA1(A)側は、基礎タワーA1に設けられたボルト穴A2に接続されている。船の舳先が防舷柱1、又は接舷板31に衝突したときは、その衝撃は接舷板支持鋼32を介して、基礎タワーA1に伝達され、吸収される。
【0042】
また、接舷板支持鋼32は基礎タワーA1に設けられたボルト穴A2に接続されていることにより、接舷板部3を固定している。
【0043】
図5は、アクセス構造物100の構成を示す模式的な部分平面図である。
アクセス構造物100は、防舷柱1と、接舷板31と、接舷板支持鋼32と、ボルト穴A2(図中省略)とを有する。
【0044】
接舷板31は、隣り合う2本の防舷柱1間に架設されている。
【0045】
基礎タワーA1の外周面には、接舷板支持鋼32が固定されている。接舷板支持鋼32は、基礎タワーA1の外周面から法線方向外側に延びている。接舷板31は、接舷板支持鋼32に支持されている。本実施形態では、接舷板支持鋼32はH鋼等の鋼材により構成されている。本実施形態では、接舷板支持鋼32は、基礎タワーA1に設けられた複数のボルト穴A2(
図4参照)のうち、所定のボルト穴A2にボルト止めされている。
【0046】
次に、アクセス構造物100の使用方法について説明する。
作業員が船から洋上風車Aにアクセスする際には、洋上風車Aに船を近づける。この際に、基礎タワーA1の周方向に沿って配置された複数のプラットフォーム2のうち、波陰に位置するプラットフォーム2を選択する。さらに、高さの異なるプラットフォーム2のうち、作業員が洋上風車Aのプラットフォーム2に移るのに適切な高さのプラットフォーム2を潮位に応じて選択し、プラットフォーム2に船を近づける。
【0047】
船の舳先を、プラットフォーム2の下方に設けられた接舷板31に接舷させる。ここで、防舷柱1の間隔は約40cmであるため、隣り合う防舷柱1間に船の舳先が深く入り込まない。さらに、プラットフォーム2の上面から最下段の接舷板31までの高さが約3mであるため、高波浪時があっても、船の舳先を接舷板部3のいずれかの位置に確実に接舷させることができる。
【0048】
作業員は、洋上風車A側を向く(前向き)姿勢で、船の舳先からプラットフォーム2に移ることできる。接舷板31の間隔は約15cmであるため、船が少し低い位置に接舷した際には、作業員は舳先から接舷板31に移って、梯子状の接舷板31を上りプラットフォーム2に到達することができる。
【0049】
到達したプラットフォーム2が下段の場合には、中段のプラットフォーム22、上段のプラットフォーム23へと上っていく。中段の場合も同様に、上段のプラットフォーム23まで上る。
【0050】
作業員は、上段のプラットフォーム23に到達したら、梯子4を上って所望の箇所に到達することができる。
【0051】
一方、作業員が洋上風車Aから船に乗り込む際には、梯子4を下りて、上段のプラットフォーム23に到着する。そして、船が接舷されたプラットフォーム2が下段の場合には、中段のプラットフォーム22、下段のプラットフォーム21へと下りていく。中段のプラットフォーム22に接舷された場合も同様に、下段のプラットフォーム21まで下りる。
そして、船側を向く(前向き)姿勢で、プラットフォーム2から船の舳先に乗り込む。
【0052】
このように構成されたアクセス構造物100では、洋上風車Aの外周に設けられ、隣り合って配置される複数のプラットフォーム2は、互いに高さが異なっている。よって、変化する潮位に応じて、適切な高さのプラットフォーム2を選択して、プラットフォーム2に船を接舷する。洋上風車Aから船に乗り込む際には作業員は船側を向く(前向き)姿勢でアクセスできるとともに、船から洋上風車Aに移る際には作業員は洋上風車A側を向く(前向き)姿勢でアクセスすることができるため、安全にアクセスすることができる。
【0053】
また、プラットフォーム2は洋上風車Aの周方向にわたって設けられているため、洋上風車Aと船との間で全方位からアクセスすることができる。
従って、波向が変化して、洋上風車Aによる波影が移動しても、全方位からアクセスすることができることにより、必ず波影のプラットフォームから安全にアクセスすることができる。
【0054】
また、プラットフォーム2の下方には接舷板部3が設けられているため、船の舳先を接舷板部3に接舷でき、船を安定して接舷することができる。
【0055】
また、接舷板部3は複数の接舷板31が梯子状に配置されて構成されているため、船からプラットフォーム2へは接舷板31を上ってアクセスすることもできる。
【0056】
また、プラットフォーム2の幅方向の両端部側をそれぞれ支持する防舷柱1どうしの間隔は約40cmとされている。よって、防舷柱1の間に船の舳先が入り込まないとともに、防舷柱1の間を作業員は通ることができる。
【0057】
また、上段のプラットフォーム23には上方に延びる梯子4が設けられているため、作業員は上段のプラットフォーム23から梯子4を上って所望の箇所にアクセスすることができる。
【0058】
また、プラットフォーム2及び接舷板支持鋼32は洋上風車Aの基礎タワーA1に設けられた複数のボルト穴A2のうち所定のボルト穴A2にボルト止めされている。よって、プラットフォーム2及び接舷板支持鋼32を所定の高さに位置変更して、固定することができる。
【0059】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0060】
例えば、本実施形態では、プラットフォーム2は外洋構造物の周方向にわたって設けられているが、本発明はこれに限られない。高さの異なるプラットフォーム2が複数設けられていればよい。また、上記に示す実施形態では、高さの異なるプラットフォーム2が3段設けられているが、本発明はこれに限られない。高さの異なるプラットフォーム2は複数設けられていればよく、2段でも4段以上でもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態及びその変形例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の請求の範囲によってのみ限定される。