(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガス配管の下流側の端部に接続されて、前記成膜室内の前記ワークと対向して配置され、前記ワークと対向する対向面に形成された複数の噴出孔を有するガスシャワーを更に備え、
前記ガスシャワーは、前記ガス配管から供給される前記処理ガスを、前記噴出孔からシャワー状に前記ワークの表面に供給する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の成膜装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された成膜装置において、反応室内の残留ガス及び圧力センサが取り付けられた配管内の残留ガスは、成膜処理が終了した後、パージガスを反応室内に供給して外部に排出されている。しかしながら、圧力センサは、成膜装置のガスの排気側に設けられているので、排気された残留ガスに含まれる成膜物質が、圧力センサに付着する。
【0006】
圧力センサに成膜物質が付着することにより、圧力センサの寿命が短くなり、圧力センサを頻繁に交換する必要があった。また、圧力センサを洗浄して使用する場合には、付着した成膜物質を除去するための洗浄作業も多くなる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、圧力センサに付着する成膜物質を低減し、圧力センサの寿命を延ばすことのできる成膜装置及び成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る成膜装置は、
内部でワークに成膜処理を施す成膜室と、
前記成膜処理に使用され、成膜成分を含む原料ガスを、前記成膜室に供給する原料ガス供給部と、
前記成膜処理に使用され、前記原料ガスとは相違する処理ガスを、当該処理ガスを貯留する処理ガス貯留部から前記成膜室に供給するガス配管と、
前記ガス配管に取り付けられ、前記成膜室の内部の圧力を計測する圧力センサと、
前記原料ガス供給部から前記成膜室に前記原料ガスが供給されている間、前記処理ガスを、前記処理ガス貯留部から前記ガス配管に流して前記成膜室に供給するように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記ガス配管には、前記処理ガス貯留部から前記成膜室に供給される前記処理ガスの流量を調整する調整バルブが設けられ、
前記制御部は、前記原料ガス供給部から前記成膜室に前記原料ガスが供給されている間、前記調整バルブを開くように制御するようにしてもよい。
【0010】
前記圧力センサは、前記ガス配管の前記調整バルブより下流側に取り付けられてもよい。
【0011】
前記処理ガスは、前記原料ガスに反応する反応ガス、またはキャリアガスであってもよい。
【0012】
前記圧力センサは、ダイヤフラム圧力センサであってもよい。
【0013】
前記成膜室にパージガスを供給するパージガス供給部を更に備え、
前記圧力センサは、前記成膜室内の圧力が大気圧であることを計測する圧力センサであり、
前記制御部は、前記圧力センサが、前記成膜室内の圧力が大気圧であることを計測したときに、前記パージガス供給部から前記成膜室に供給されるパージガスの供給を停止するように制御してもよい。
【0014】
前記ガス配管の下流側の端部に接続されて、前記成膜室内の前記ワークと対向して配置され、前記ワークと対向する対向面に形成された複数の噴出孔を有するガスシャワーを更に備え、
前記ガスシャワーは、前記ガス配管から供給される前記処理ガスを、前記噴出孔からシャワー状に前記ワークの表面に供給してもよい。
【0015】
本発明の第2の観点に係る成膜方法は、
成膜成分を含む原料ガスを成膜室に供給し、ワークの表面に当該原料ガスを吸着させる原料ガス供給工程と、
パージガスを供給して前記成膜室内に残留する残留ガスをパージする第1のパージ工程と、
前記第1のパージ工程後、前記原料ガスに反応する反応ガスと、キャリアガスとを、前記成膜室内の圧力を計測する圧力センサが取り付けられたガス配管に流して前記成膜室に供給し、当該反応ガスのプラズマを生成し、前記ワークの表面に吸着された前記原料ガスと前記反応ガスのプラズマを反応させて、前記ワークの表面に薄膜を形成する薄膜形成工程と、
前記薄膜形成工程後、前記パージガスを供給して前記成膜室内に残留する残留ガスをパージする第2のパージ工程と、
を備え、
前記原料ガス供給工程で、前記反応ガスまたは前記キャリアガスを、前記ガス配管に流して前記成膜室に供給する、
ことを特徴とする。
【0016】
前記薄膜形成工程において、前記反応ガスと前記キャリアガスを、常に、前記ガス配管に流してもよい。
【0017】
前記第1のパージ工程と前記第2のパージ工程において、前記反応ガスまたは前記キャリアガスを、前記ガス配管に流して、前記パージガスとして前記成膜室に供給してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、圧力センサに付着する成膜物質を低減し、圧力センサの寿命を延ばすことのできる成膜装置及び成膜方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る成膜装置1の実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態の成膜装置1について、
図1〜6を参照して説明する。本実施の形態では、成膜装置1としてALD装置、特に有機金属ガスと酸素プラズマとを反応させて酸化膜を形成するプラズマ原子層堆積(Plasma enhanced ALD、以下「PE−ALD」という。)装置を用いて説明する。
【0022】
成膜装置1は、PE−ALD法を適用して、酸化膜を生成するPE−ALD装置である。PE−ALD法では、まず、形成しようとする膜を構成する金属を主成分とする有機金属の原料ガスを基板上に供給して、原料ガスを基板上に化学吸着(飽和吸着)させる。原料ガスは、自己制御(Self-limiting)作用により、1層のみ基板に吸着する。次に、未反応の原料ガス及び反応生成物をパージする。そして、原料ガスと反応する反応ガス、例えば、酸素ガスを成膜室10に供給し、酸素ガスを用いて酸素プラズマを生成する。生成された酸素プラズマにより、基板に吸着した原料ガスの成分を酸化させる。未反応の反応種及び反応生成物をパージする。この処理を1サイクルとして、処理を複数サイクル繰り返すことにより、設定された厚さの膜を基板上に形成する。
【0023】
本実施の形態に係る成膜装置1は、
図1に示すように、成膜室10と、ガス貯留部20と、高周波電源30と、ヒータ40と、圧力センサ50、真空ポンプ60と、コントローラ70と、を備える。
【0024】
成膜室10は、内部にワークである基板80を収容する真空チャンバーである。成膜室10内において、真空雰囲気下で基板80の表面に成膜処理が施される。
【0025】
ガス貯留部20は、原料ガス貯留部21と、反応ガス貯留部22と、キャリアガス貯留部23と、パージガス貯留部24と、から構成される。本実施の形態では、反応ガス貯留部22と、キャリアガス貯留部23が、「処理ガス貯留部」に相当する。パージガス貯留部24を、「処理ガス貯留部」として組み合わせることも可能である。
【0026】
原料ガス貯留部21は、原料ガスを貯留する容器であり、第1のガス配管21aを介して成膜室10に接続されている。本実施の形態では、原料ガスとしてトリメチルアルミニウム(TMA)ガスを用いる。第1のガス配管21aには、原料ガス貯留部21から成膜室10に供給される原料ガスの流量を調整する第1の調整バルブ21bが取り付けられている。予め設定された手順に従って、第1の調整バルブ21bの開度は調整される。
【0027】
原料ガスは、PE−ALD装置において、前駆体(プリカーサ)として使用され、液状原料を気化して、原料ガス貯留部21から成膜室10に供給される。
【0028】
反応ガス貯留部22は、原料ガスと反応する反応ガスを貯留する容器である。本実施の形態では、反応ガスとして酸素ガスを用いる。酸素ガスは、高周波電源30により印加された電圧により、酸素プラズマとなり、基板に化学吸着された原料ガスと反応する。
【0029】
キャリアガス貯留部23は、原料ガスまたは反応ガスを成膜室10内に搬送するキャリアガスを貯留する容器である。キャリアガスは、原料ガスまたは反応ガスに対して不活性であるガスを使用する。本実施の形態では、キャリアガスとしてアルゴンガスを用いる。キャリアガスは、成膜する薄膜の種類により、例えば、窒素ガス、水素ガスを使用する。
【0030】
反応ガス貯留部22とキャリアガス貯留部23とは、それぞれ個別の配管を介して第2のガス配管90に取り付けられる。第2のガス配管90の一端部は、成膜室10に接続される。反応ガス貯留部22に貯留された反応ガスと、キャリアガス貯留部23に貯留されたキャリアガスは、第2のガス配管90を介して成膜室10に供給される。
【0031】
本実施の形態では、反応ガス貯留部22とキャリアガス貯留部23とは、共通の第2のガス配管90を介して成膜室10に接続されているが、それぞれ別々のガス配管を介して、成膜室10に接続されてもよい。
【0032】
第2のガス配管90と反応ガス貯留部22とを接続する配管の途中には、反応ガス貯留部22から成膜室10に供給される反応ガスの流量を調整する、第2の調整バルブ22bが取り付けられている。また、第2のガス配管90とキャリアガス貯留部23とを接続する配管の途中には、キャリアガス貯留部23から成膜室10に供給されるキャリアガスの流量を調整する、第3の調整バルブ23bが取り付けられている。第2の調整バルブ22bと第3の調整バルブ23bとは予め設定された手順に従って、各々のバルブの開度が調整される。
【0033】
パージガス貯留部24は、パージガスを貯留する容器である。パージガス貯留部24は、第3のガス配管24aを介して成膜室10に接続されている。パージガスは、原料ガスが成膜室10に供給されて基板80と反応した後、又は反応ガスが成膜室10に供給されて原料ガスと反応した後、未反応のガスや反応生成ガスを成膜室10から排気するために供給されるガスである。本実施の形態では、パージガスとして窒素ガスを使用する。パージガスは、原料ガス、反応ガスに不活性であるガスであればよく、アルゴンガス等も使用することができる。
【0034】
第3のガス配管24aには、パージガス貯留部24から成膜室10に供給されるパージガスの流量を調整する、第4の調整バルブ24bが取り付けられている。予め設定された手順に従って、第4の調整バルブ24bの開度が調整される。
【0035】
パージガス貯留部24のパージガスは、成膜処理が終了したのちに、成膜室10を大気圧に復圧するためにも使用される。成膜処理が終了したのちに、第4の調整バルブ24bが開かれ、パージガスである窒素ガスが成膜室10に供給される。圧力センサ50により成膜室10が大気圧であるとことが計測されると、コントローラ70は、第4の調整バルブ24bを閉じるように制御する。
【0036】
第1の調整バルブ21b、第2の調整バルブ22b、第3の調整バルブ23b、第4の調整バルブ24bは、流量を可変できる可変バルブとして説明及び図示したが、開閉のみ可能なバルブであってもよい。
【0037】
本実施の形態では、原料ガス貯留部21が、第1のガス配管21aを介して成膜室10に接続され、反応ガス貯留部22とキャリアガス貯留部23が、第2のガス配管90を介して成膜室10に接続され、パージガス貯留部24が、第3のガス配管24aを介して成膜室10に接続されていると説明した。本発明は、このような配管の接続状態に限定されない。例えば、パージガス貯留部24が、第2にガス配管90に接続されてもよい。
【0038】
高周波電源30は、成膜室10内部の上方に配置された第1の電極31に接続されている。第1の電極31は、成膜室1に配置された基板80と対向して配置される。基板80の下方には、第2の電極32が配置される。高周波電源30と第2の電極32は、それぞれアースされている。高周波電源30が、所定の電力を第1の電極31に給電することで、第1電極31と第2電極32との間でプラズマが生成される。
【0039】
ヒータ40は、基板80を加熱する装置であり、成膜処理中の基板80の反応活性を高める。
【0040】
圧力センサ50は、成膜室10内の圧力を測定する計測器である。例えば、ダイヤフラム圧力センサが適用される。本実施の形態では、ステンレスダイヤフラムを用いた大気圧確認用のデジタル圧力スイッチを用いるが、圧力センサ50は適宜選択すればよい。例えば、半導体圧力センサなど他のダイヤフラム圧力センサを適用してもよい。ダイヤフラム圧力センサを用いることにより、ガス流のある配管内に配置しても正確に動作させることができる。
【0041】
圧力センサ50は、第2のガス配管90の第3の調整バルブ23bより下流側に取り付けられている。この位置に圧力センサ50を配置することにより、成膜室10に近い位置に圧力センサ50が配置されることになり、成膜室10内の圧力を正確に測定することができる。
【0042】
圧力センサ50の取付位置は、第2のガス配管90に取り付けられていればよく、上述の位置に限定されない。例えば、第2の調整バルブ22bと第3の調整バルブ23bとの間に取り付けてもよい。また、第2のガス配管90を上流側に延長して、延長した位置に圧力センサ50を取り付けることもできる。このような位置に圧力センサ50を取付ることで、成膜装置1の設計の自由度を大きくすることができる。
【0043】
圧力センサ50を、第2のガス配管90に取り付けたことにより、原料ガス貯留部21から供給される原料ガスが第2のガス配管90内に流入せず、成膜材料が、圧力センサ50に付着することがない。
【0044】
真空ポンプ60は、成膜室10内を排気配管61を介して減圧するとともに、成膜室10内に供給されたガスを排気する。真空ポンプ60としては、ターボ分子ポンプ等が使用される。
【0045】
コントローラ70は、プロセッサ、メモリ等から構成され、メモリに成膜装置1の制御プログラムを記憶している。コントローラ70は、この制御プログラムに従って、成膜装置1全体を制御する。
【0046】
具体的には、コントローラ70は、圧力センサ50により測定された圧力値に基づき、第4の調整バルブ24bの開度を調整する。コントローラ70は、パージガスを供給している間に、圧力センサ50によって測定された圧力値が所定の値より大きくなったときには、大気圧になったと判断する。そして、コントローラ70は、第4の調整バルブ24bを閉じるように調整して、パージガスの供給を停止するように制御する。
【0047】
コントローラ70は、更に、第1の調整バルブ21b、第2の調整バルブ22b、第3の調整バルブ23b、高周波電源30の電力供給のON、OFF、真空ポンプ60の運転を制御する。
【0048】
次に、このような構成を備える成膜装置1において、成膜に使用されるガスが供給されるタイミングと、電力が給電されるタイミングとを説明する。
【0049】
ガスまたは電力を供給又は停止するタイミングは、
図2に示す第1のタイムチャートに示される。第1のタイムチャートにおいて、ONは、ガスまたは電力が供給されていることを示し、OFFは、ガスまたは電力の供給が停止されていることを示す。
【0050】
本実施の形態におけるガスの供給・停止と、電力の供給・停止の1つのサイクルは、原料ガスを供給する原料ガス供給工程、原料ガスが基板に吸着したのち、成膜室1に残留している残留ガスを、パージガスを供給して排出させる第1のパージ工程、反応ガスを供給してプラズマを生成させるプラズマ工程、原料ガスと反応ガスとが反応したのち、成膜室10に残留している残留ガスを、パージガスを供給して排出させる第2のパージ工程、とから構成される。
【0051】
成膜処理が開始されると、コントローラ70は、第1の調整バルブ21b、第2の調整バルブ22b、第3の調整バルブ23bを開くように制御する。
【0052】
第1の調整バルブ21bが開かれることで、原料ガスであるTMAガスの成膜室10への供給がONになり、原料ガス供給工程が開始される。コントローラ70は、所定の期間経過後、第1の調整バルブ21bを閉じるように制御し、TMAガスの供給をOFFとする。その後、1つのサイクルが終了するまで、TMAガスは供給されない。
【0053】
第2の調整バルブ22bが開かれることで、反応ガスである酸素の成膜室10への供給がONになる。第2の調整バルブ22bは、1つのサイクルが終了するまで開かれ、1つのサイクル中は、常に酸素ガスが、第2のガス配管90を介して成膜室10に供給される。
【0054】
第3の調整バルブ23bが開かれることで、キャリアガスであるアルゴンガスの成膜室10への供給がONになる。第3の調整バルブ23bは、1つのサイクルが終了するまで開かれ、1つのサイクル中は、常にアルゴンガスが、第2のガス配管90を介して成膜室10に供給される。
【0055】
原料ガス供給工程が終了すると、第1のパージ工程が開始する。第1のパージ工程の間、酸素ガスとアルゴンガスが、パージガスとして第2のガス配管90を介して成膜室10に供給される。
【0056】
第1のパージ工程が終了すると、コントローラ70により高周波電源30がONとなり、第1の電極31に電力が給電され、プラズマ工程が開始される。所定の期間経過すると、高周波電源30から第1の電極31への電力の給電がOFFとなり、プラズマ工程が終了する。プラズマ工程の間は、酸素ガスとアルゴンガスが、第2のガス配管90を介して成膜室10に供給される。
【0057】
プラズマ工程が終了すると、第2のパージ工程が開始される。第2のパージ工程の間、酸素ガスとアルゴンガスが、パージガスとして第2のガス配管90を介して成膜室10に供給される。
【0058】
第1のタイムチャートによれば、反応ガスである酸素ガスと、キャリアガスであるアルゴンガスは、成膜処理開始から常に供給され、これらのガスが流れる第2のガス配管90には、常に、気体が流れることになる。圧力差により、成膜室10に流入したガスが、第2のガス配管90に逆流することがない。したがって、原料ガス貯留部21から供給される原料ガスが第2のガス配管90内に流入することがなく、第2のガス配管90に取り付けられた圧力センサ50に、成膜物質が付着することを抑止できる。
【0059】
図2の第1のタイムチャートでは、反応ガスである酸素と、キャリアガスであるアルゴンガスが、成膜処理中に常に、第2のガス配管90中を流れるようにしたが、本発明は、このようなタイムチャートに限定されない。例えば、
図3〜5に示すタイムチャートであれば、同様に、圧力センサ50に成膜材料が付着することがない。以下、
図3に示すタイムチャートを第2のタイムチャート、
図4に示すタイムチャートを第3のタイムチャート、
図5に示すタイムチャートを第4のタイムチャートという。
【0060】
図3に示す第2のタイムチャートは、パージガスとして窒素を導入し、反応ガスである酸素ガスとキャリアガスであるアルゴンガスを、プラズマ工程のみ供給をONにし、原料ガス供給工程で、アルゴンガスの供給をONにしたタイムチャートである。パージガスは、第1のパージ工程及び第2のパージ工程で供給される。第2のタイムチャートでは、パージガス貯留部24をガス配管90に接続するものとする。第2のガス配管90には、原料ガス供給工程ではアルゴンが、プラズマ工程では酸素ガスとアルゴンガスの双方が、第1のパージ工程及び第2のパージ工程では窒素ガスが、流れることになる。したがって、原料ガス供給工程またはプラズマ工程において第2のガス配管90に原料ガスまたはプラズマ活性種が進入することがないため、圧力センサ50に、成膜物質が堆積することを抑止できる。
【0061】
図4に示す第3のタイムチャートは、反応ガスである酸素ガスをプラズマ工程のみ供給をONにし、キャリアガスであるアルゴンガスを原料ガス供給工程からその後の第1のパージ工程、プラズマ工程、第2のパージ工程において、供給を常時ONにしたタイムチャートである。キャリアガスであるアルゴンガスをパージガスとして使用する。第2のガス配管90には、原料ガス供給工程ではアルゴンが、プラズマ工程では、酸素ガスとアルゴンガスの双方が、第1のパージ工程、第2のパージ工程では、アルゴンガスが、流れることとなる。したがって、第2のガス配管90に取り付けられた圧力センサ50に、成膜処理で生成した成膜物質が付着することを抑止できる。
【0062】
図5に示す第4のタイムチャートは、反応ガスである酸素ガスを原料ガス供給工程からその後の第1のパージ工程、プラズマ工程、第2のパージ工程において、供給を常時ONに、キャリアガスであるアルゴンガスをプラズマ工程のみ供給をONにしたタイムチャートである。第2のガス配管90には、原料ガス供給工程では酸素ガスが、プラズマ工程では、酸素ガスとアルゴンガスの双方が、第1パージ工程、第2パージ工程では、酸素ガスが、流れることとなる。したがって、第2のガス配管90に取り付けられた圧力センサ50に、成膜処理で生成した成膜物質が付着することを抑止できる。
【0063】
反応ガス、キャリアガスを流すタイミングは、上述に記載されたタイミングに限定されない。原料ガス供給工程で、反応ガスとキャリアガスの双方のガスが第2のガス配管90に流れようにタイミングを制御すればよい。
【0064】
次に、このような構成を備える成膜装置1において、成膜処理をする方法について、
図6を用いて説明する。当該成膜方法は、コントローラ70により制御されて実行される。第3のタイムチャートに示すガスの供給制御、電力の給電制御に基づいて実行される成膜方法を、例として説明する。
【0065】
まず、操作者が、スイッチ等により成膜処理を開始する指示をすると、真空ポンプ60が駆動して、成膜処理が開始する。
【0066】
成膜処理が開始すると、成膜室10内は、真空ポンプ60により減圧される(ステップS101)。成膜室10内が所定の圧力以下になると、コントローラ70は、第3の調整バルブ23bを開くように制御し、キャリアガスを成膜室10内に供給する(ステップ102)、コントローラ70は、第1の調整バルブ21bを開くように制御し、原料ガスであるTMAガスを成膜室10内に供給する(ステップ103)。
【0067】
供給されたTMAガスは、成膜室10内に配置された基板80の表面に化学吸着される。未反応のTMAガス及び反応生成物は、成膜室10内に残留ガスとして残留する。
【0068】
TMAガスを供給して、所定の時間が経過すると、コントローラ70は、第1の調整バルブ21bを閉じ、残留ガスを成膜室10から排気する第1のパージ工程を開始する(ステップS104)。第1のパージ工程の間、キャリアガスであるアルゴンガスをパージガスとしてキャリアガス貯留部23から成膜室10に供給する。
【0069】
コントローラ70が、成膜室10内の圧力値又は経過時間により第1のパージ工程が終了であることを判断すると、反応ガス貯留部22の第2の調整バルブ22bを開くように制御する。第2の調整バルブ22bが開かれると、反応ガスである酸素ガスが成膜室10に供給される(ステップS105)。
【0070】
酸素ガスが成膜室10に供給されると、コントローラ70により、高周波電源30がONにされ、高周波電源30は、第1の電極31に電力を給電し、成膜室10内で酸素ガスを用いたプラズマを生成させる(ステップS106)。酸素ガスの一部は酸素プラズマとなり、この酸素プラズマが、基板80上でラジカル状態になっているTMAの残留部分(アルミニウム)と結合して、酸化アルミニウムの薄膜を形成する(薄膜形成工程)。TMAガスの酸化によって生じる水、残留酸素プラズマ等の残留ガスが成膜室10内に残留する。
【0071】
薄膜形成工程が終了した後は、コントローラ70は、第2の調整バルブ22bを閉じ、パージガスであるキャリアガス(アルゴンガス)が成膜室10内に供給される。アルゴンガスが供給されることで、残留ガス、未反応の反応ガス、酸素ラジカル等を成膜室10から排気する第2のパージ工程が開始する(ステップS107)。
【0072】
コントローラ70が、成膜室10内の圧力値又は経過時間により第2のパージ工程が終了したと判断すると、成膜の1サイクルが終了する。コントローラ70は、堆積膜が所定の膜厚に到達したか否かを判断し、所定の膜厚以下である場合(ステップS108;NO)、第1の調整バルブ21bを開くように制御し、原料ガスであるTMAガスが成膜室10内に供給する(ステップ103)。以降、所定の膜厚に到達するまでステップ103〜ステップ107のサイクルを繰り返す。
【0073】
所定の膜厚に到達した場合(ステップS108;YES)、成膜室10の復圧を開始する(ステップ109)。コントローラ70は、第3の調整バルブ23bを閉じるように制御する。また、コントローラ70は、第4の調整バルブ24bを開くように制御し、パージガスである窒素ガスを成膜室10に供給する。圧力センサ50により成膜室10内の圧力が測定される。コントローラ70は、圧力センサ50により成膜室10内が大気圧に復圧したと判断すると、第4の調整バルブ24bを閉じるように制御する。
【0074】
第4の調整バルブ24bが閉じられると、成膜室10内は大気開放され、成膜室10内に配置された基板80は、成膜室10から取り出されて、成膜処理は終了する。
【0075】
圧力センサ50は、大気圧開放できる圧力スイッチとして機能し、成膜室10内の圧力が大気圧であることが計測されることで、成膜室10内へのバージガスの供給を停止する。このような用途として圧力センサ50を使用した場合にも、圧力センサ50に成膜室10内の成膜材料が付着することを抑止できる。
【0076】
圧力センサ50は、常時、成膜室10内部の圧力を測定していてもよいし、圧力測定が必要なときにのみ、スイッチがONになるような圧力センサを適用してもよい。
【0077】
本実施の形態によれば、成膜室10内部の圧力を測定する圧力センサ50を、成膜室10の排気側ではなく、成膜室10にガスを供給する第2のガス配管90に取り付け、原料ガス供給時に、処理ガスを第2のガス配管90に流すようにしたので、成膜室10内で生成した成膜材料が圧力センサ50に付着することを抑止できる。したがって、圧力センサ50の交換時期を遅くできる。
【0078】
本実施の形態によれば、反応ガス貯留部21とキャリアガス貯留部22とは、1つの第2のガス配管90に接続され、第2のガス配管90に圧力センサ50を取付けた。そして、第2のガス配管90内を流れるガスの流量を、第2の調整バルブ22b、第3の調整バルブ23bにより適切に制御することで、圧力センサ50に成膜材料が付着することを抑止できる。
【0079】
本実施の形態によれば、薄膜形成工程において、反応ガスとキャリアガスを常にガス配管に流すことにしたので、薄膜形成工程において生成するプラズマ中の活性種が、ガス配管に設けられた圧力センサに到達することはない。
【0080】
本実施の形態によれば、第1のパージ工程と第2のパージ工程において、反応ガスまたはキャリアガスを、ガス配管に流してパージガスとして使用するので、別途、パージガスを用意する必要がなく、装置がコンパクトになる。また、ガスの原料を節約することもできる。
【0081】
本実施の形態における第1のタイムチャートから第4のタイムチャートの説明、及び成膜処理の方法の説明では、成膜処理に使用されるガスを供給するタイミングに重点を置いて説明したが、本発明は、ガスを供給するタイミングのみを制御する成膜装置に限定されるものではない。圧力センサ50が取り付けられた第2のガス配管90に供給されるガスの流量を制御するようにしてもよい。例えば、第2のガス配管90に接続された反応ガス貯留部22の第2の調整バルブ22bと、キャリアガス貯留部23の第3の調整バルブ23bの開度を、別々に調整して、第2のガス配管90に供給されるガスの流量を制御してもよい。2つのガスで構成されるガス流のガス流量が、所定の流量以上であれば、圧力センサ50に成膜材料が付着することを抑止できる。
【0082】
(実施の形態2)
本実施の形態1では、プラズマを生成させる機構として、平行平板電極を適用したが、本発明はこのような電極に限定されない。原料ガス、反応ガス、キャリアガスを、成膜室10内の上方から供給するガスシャワーを設け、このガスシャワーに高周波電源を接続するようにしてもよい。
【0083】
図7にガスシャワーを備えた成膜装置1を示す。成膜装置1は、成膜室10と、ガス貯留部20と、高周波電源30と、ヒータ40と、圧力センサ50、真空ポンプ60と、コントローラ70と、ガスシャワー100と、を備える。成膜室10、ガス貯留部20、高周波電源30、ヒータ40、圧力センサ50、真空ポンプ60、コントローラ70の構成は、実施の形態1と同一であるので、本実施の形態では説明を省略する。
【0084】
ガスシャワー100は、成膜室10に配置された基板80に、原料ガスと処理ガスをシャワー状にして供給するガス供給部材である。ガスシャワー100は、基板80と対向する対向面101を備える板状部材であり、対向面101に複数の噴出孔102が形成されている。また、ガスシャワー100は、シリコン、炭化水素など、プラズマ処理に耐性のある部材で形成されている。
【0085】
ガスシャワー100は、高周波電源30に接続されており、高周波電源30から所定の電力がガスシャワー90に給電される。高周波電源30が給電されると、ガスシャワー100と基板80との間にプラズマが生成する。
【0086】
ガス貯留部20は、原料ガス貯留部21と、反応ガス貯留部22と、キャリアガス貯留部23と、パージガス貯留部24と、から構成されていることは、実施の形態1と同様である。しかし、実施の形態1では、反応ガス貯留部22とキャリアガス貯留部23とは、第2のガス配管90に接続され、原料ガス貯留部21は、第1のガス配管21aに接続され、パージガス貯留部24は、第3のガス配管24aに接続されていた。本実施の形態では、原料ガス貯留部21と、反応ガス貯留部22と、キャリアガス貯留部23とは、共通のガス配管である、第4のガス配管120に接続されている。そして、第4のガス配管120を介して、原料ガス、反応ガス、キャリアガスがガスシャワー100に供給され、ガスシャワー100から成膜室10内に、各ガスが供給される。
【0087】
本実施の形態においては、ガスシャワー100を介して原料ガスと処理ガス(反応ガス、キャリアガス)を供給するので、プラズマ処理において、成膜室10内で生成されたプラズマが圧力センサ50を設けた第4のガス配管120内に、侵入することを防止することができる。したがって、第4のガス配管120に設けた圧力センサ50がプラズマに暴露しないことで、圧力センサ50への膜の堆積を確実に防止する。
【0088】
第4のガス配管120内の下流側(成膜室10側)に原料ガス貯留部21を、上流側にキャリアガス貯留部23及び圧力センサ50を接続し、原料ガス供給工程において、キャリアガスと原料ガスを同時に成膜室10内に導入することにより、圧力センサ50に原料ガスが吸着することを抑止できる。または、原料ガス貯留部21を、第4のガス配管120とは別系統のガス配管に接続してもよい。
【0089】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれまで説明した実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更が加えられたものを含む。
【0090】
本実施の形態1、2において、酸化ガス(酸素)を用いて酸化膜を形成することを例にして説明したが、本発明は、このような酸化ガスに限定されない。例えば、窒化ガスを用いて窒化膜を形成する成膜装置にも適用することができる。
【0091】
本実施の形態1、2では、PE−ALD装置を用いて成膜装置を説明したが、ガス状の成膜処理をする成膜装置であれば、PE−ALD装置に限定されない。例えば、本発明の成膜装置1は、CVD装置にも適用することができる。
【0092】
本実施の形態1、2では、ワークの例として基板80を用いて説明したが、本発明の成膜装置を使用して成膜できる対象は、基板80に限定されない。例えば、燃料電池、有機EL、太陽電池、ディスプレイ、LED、圧電素子など様々なワークに使用することができる。