(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6664178
(24)【登録日】2020年2月20日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】カニューラの挿入検出
(51)【国際特許分類】
A61M 5/46 20060101AFI20200302BHJP
A61M 5/158 20060101ALI20200302BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
A61M5/46
A61M5/158 500Z
A61M5/168 510
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-190469(P2015-190469)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2016-67936(P2016-67936A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2018年9月28日
(31)【優先権主張番号】14/499,517
(32)【優先日】2014年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アミット リメイエ
(72)【発明者】
【氏名】キース ナップ
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック アレン
(72)【発明者】
【氏名】アマンダ マソッタ
【審査官】
増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/143815(WO,A2)
【文献】
特表2003−505159(JP,A)
【文献】
特表2014−510574(JP,A)
【文献】
特表2014−510573(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/108519(WO,A1)
【文献】
特開2010−240311(JP,A)
【文献】
特開2014−176455(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/066256(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0130207(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/46
A61M 5/24
A61M 5/142
A61M 5/158
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入モニターであって、
頂部、および、対象の皮膚の挿入部位に近接して配置されるように適合させられた基部を有するハウジング、
対象の皮膚への挿入のために適合させられたベベルを備える遠位端と、前記ハウジングに取り付けられた近位端を有する、カニューラ、カテーテルまたはプローブ、
前記カニューラ、カテーテルまたはプローブに近接する、前記ハウジングの前記基部の中央領域内の一対の電気的接点であって、前記一対の電気的接点は、前記カニューラ、カテーテルまたはプローブが、完全な貫通深さに到達したとき、前記対象の皮膚と接触する、前記一対の電気的接点、
前記一対の電気的接点を含むセンサー回路であって、前記電気的接点の一方または両方が対象の皮膚と接触し、および、接触が途絶されるとき、前記センサー回路における電気的特性の変化を検出する、前記センサー回路、
前記電気的特性の変化に対応する警報機構であって、挿入状態の報知を提供する、前記警報機構、
を含むことを特徴とする挿入モニター。
【請求項2】
請求項1の挿入モニターであって、前記電気的特性の変化は、キャパシタンスの変化であることを特徴とする挿入モニター。
【請求項3】
請求項1の挿入モニターであって、前記電気的特性の変化は、抵抗の変化であることを特徴とする挿入モニター。
【請求項4】
請求項1の挿入モニターであって、さらに、対象の皮膚にカニューラのベベルを押し進める自動カニューラ挿入機構を含むことを特徴とする挿入モニター。
【請求項5】
請求項1の挿入モニターであって、さらに、対象の皮膚に挿入されるカテーテルによってアクセスされる血液サンプルのグルコース含量を測定するように適合させられた血糖値センサーを含むことを特徴とする挿入モニター。
【請求項6】
請求項1の挿入モニターであって、さらに、対象の皮膚に直接挿入された血糖値検出プローブを含むことを特徴とする挿入モニター。
【請求項7】
請求項1の挿入モニターであって、さらに、対象に薬剤を送達するカニューラによってアクセスされる、関連づけられた薬剤供給源を含むことを特徴とする挿入モニター。
【請求項8】
請求項1の挿入モニターであって、前記警報機構は、前記センサー回路によって駆動される、一つ以上の可視光、一つ以上の可聴警報、または、感知可能な振動、または、一つ以上の可視光、可聴警報、および、感知可能な振動の組合せからなり、カニューラが正確に挿入されるとき、および、カニューラが正確に挿入されないとき、異なる報知を提供することを特徴とする挿入モニター。
【請求項9】
請求項1の挿入モニターであって、前記センサー回路は、遠隔の血糖値モニターと挿入状態を交信することを特徴とする挿入モニター。
【請求項10】
請求項1の挿入モニターであって、前記センサー回路は、遠隔の薬剤供給源と挿入状態を交信することを特徴とする挿入モニター。
【請求項11】
請求項1の挿入モニターであって、前記カニューラ、カテーテルまたはプローブの傾斜挿入は、前記一対の電気的接点の一方が対象の皮膚と接触し、前記一対の電気的接点の他方が対象の皮膚と接触しないとき、前記警報機構によって報知されることを特徴とする挿入モニター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置の分野に属する。特に、本発明は、カニューラまたはカテーテルのような経皮薬剤送達装置またはセンサーのような診断装置が、使用者の体の挿入部位に完全に挿入されているかを自動的に検出するための方法および装置に向けられる。本発明は、血糖値モニターのような血液検査装置、インシュリン注入ポンプまたはパッチのような薬剤送達装置と一緒に使用され得るが、そのような装置に限定されない。
【背景技術】
【0002】
体に装着される血液検査装置または薬剤送達装置は、操作するために、患者の体に正確に挿入される、カニューラ、カテーテルまたはプローブを有さねばならない。不完全な挿入は、使用者による不完全な挿入または使用中における体からの装置の離脱からの、皮膚の屈曲またはテンティングに起因し得る。そのような装置は、しばしば、送達装置が正確に挿入されることの確認を可能にするメカニズムを有しない。
【0003】
先行技術として知られる薬剤送達装置の一例としての、参照によって組み込まれる、特許文献1は、自動カニューラ挿入機構を有する、体に装着される薬剤送達装置を記述する。特許文献2は、体に装着される装置の一部であり得る、電気化学的血糖プローブを記述し、そのセンサー/プローブ技術の記述に対する参照によって、同様に、組み込まれる。
【0004】
経皮注射は、皮内(ID)領域、皮下(SC)領域および筋肉内(IM)領域に行われる。インシュリンを含む種々の注射可能な薬剤にとって、SC領域は、皮下領域の脂肪層を通る血流のため、注射を行うのに望ましい。例えば、非特許文献1を参照。代わりに、注射は、また、皮膚内に行われ得る。多くの薬剤送達装置は、不適切な挿入のため、SC領域への送達を確実に保証し得ない。
【0005】
カニューラ、カテーテルおよびプローブが、使用者の皮膚に対して角度をもって配向されると、装置の先端は、挿入後、所望のSCスペースへ到達し損なうかもしれない。
【0006】
血糖値などの生体内監視は、典型的には、使用者の体に装着され、挿入部位において使用者の皮膚に挿入された、カニューラ、カテーテルまたはプローブに取り付けられた、オンボディセンサ(OBS)に取り付けられたプローブを用いてなされる。挿入領域において検出するためのプローブの能力は、それを意図された場所に置くための使用者の能力によって、大いに有効にされ、また、無効にされる。所望の場所にプローブを挿入することおよび維持することは、しばしば、信頼できないことがあり、使用者は、信頼の無さに加える、異なった実践を使用することがあり得る。設置は、しばしば、両手での操作を必要とし、不快感をもたらす。同様に、カニューラが連続的な薬剤送達のために挿入されることを要求される、インシュリンパッチポンプおよび注入セットのような、自動薬剤送達のための異なる市販の利用可能なシステムは、一般的に、カニューラが不正確に挿入されるか、または、挿入ポイントに配置させられるとき、簡単な、かつ、信頼できる装置フィードバックを欠く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第8475432号明細書
【特許文献2】米国特許第8603075号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lo Prestiら「糖尿病の子供における注射部位での皮膚および皮下厚さ−超音波所見および注射時における推奨」、小児糖尿病(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術において確認された問題を考慮して、本発明の一つの目的は、カニューラ、カテーテルまたはプローブが体に装着される装置における注入深さセンサーを提供することである。本発明の他の目的は、カニューラ、カテーテルまたはプローブが、正確な挿入深さに到達することを確実にすることである。本発明のさらなる目的は、カニューラ、カテーテルまたはプローブの信頼できる挿入および検出のための簡単な機構を提供することである。さらに、本発明のさらなる目的は、カニューラ、カテーテルまたはプローブが角度をもって配向されると、使用者に警告することである。本発明のこれらの、および、他の目的は、以下に示され、説明されるような、挿入モニター、および、使用の方法で達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの態様において、本発明は、頂部、および、対象の皮膚の挿入部位に近接して配置されるように適合させられた基部を有するハウジングを含む、挿入モニターである。カニューラ、カテーテルまたはプローブは、場合によって、対象の皮膚に挿入するために適合させられたベベルを有する遠位端と、ハウジング内の近位端を有する。カニューラ、カテーテルまたはプローブに近接するハウジングの基部の中央領域における一対の電極が、カニューラ、カテーテルまたはプローブが完全に貫通深さに到達したときに、対象の皮膚と接触する。一対の電極を含むセンサー回路が、電極が対象の皮膚と接するとき、センサー回路内の電気的特性の変化を検知し、および、接触が妨げられたとき、電気的特定の変化に反応して警報機構をトリガーし、カニューラの挿入状態の報知を提供する。
【0011】
本発明の別の態様において、本発明による挿入モニターは、カニューラ、カテーテルまたはプローブの対向する側部にセンサーを備え、カニューラ、カテーテルまたはプローブが、注入部位において角度をもって配向されたかどうかを検出し、不正確な挿入を検出または防止し得る。追加のセンサー(すなわち、三つ、四つまたはもっと多くのセンサー)は、傾斜挿入が生じたかどうかを決定するために用いられ得、センサーは、挿入状態に関する決定をするために互いに対向して配置される必要はない。
【0012】
別の態様において、本発明による挿入モニターは、挿入指示機構としての一対の機械的柱状体を使用する。この態様において、本発明は、頂部および挿入部位に近接して対象の皮膚に配置されるように適合させられた基部を有するハウジングを含む。カニューラ、カテーテルまたはプローブは、基部から遠位に突出する、対象の皮膚内への挿入に適合させられたベベルを有する遠位端と、ハウジング内の近位端を有する。少なくとも一対の機械的柱状体が、カニューラ、カテーテルまたはプローブに近接する基部の中央領域において基部から遠位に突出する、それぞれの遠位端と、ハウジング内のそれぞれの近位端を有して提供される。対象の皮膚内へのカニューラの挿入に応じて、ハウジング内を近位に移動する柱状体は、カニューラ、カテーテルまたはプローブの挿入状態の報知を提供する。報知は、モニターまたは薬剤送達装置のような遠隔装置に送信される信号、または、装置ハウジングでの、可視、可聴、および/または、触知の報知であり得る。「遠隔装置」は、スマートフォン、タブレットなどを含み得る。「遠隔薬剤供給源」は、また、従来のチューブポンプ制御器およびワイアレスポンプ制御器を含むように理解される。
【0013】
他の実施形態において、一対の機械的柱状体は、カニューラ、カテーテルまたはプローブの対向する側部に設けられ、傾斜挿入の報知は、一対の機械的柱状体の一方が、一対の他方よりも、ハウジング内において、近位に、より大きな距離を移動するとき、発生させられる。
【0014】
本発明の別の態様において、本発明による挿入モニターは、装置ハウジングに受け入れられ、カニューラ、カテーテルまたはプローブを取り囲む、ばね付勢されたカラーを使用し得る。この態様において、本発明は、挿入部位に近接して対象の皮膚に配置されるように適合させられ、カニューラ、カテーテルまたはプローブを取り囲む、ばね付勢されたカラーを受け入れる凹所を有する、ハウジングを含む。カニューラ、カテーテルまたはプローブは、ベベルを備えた遠位端と近位端を有する。ばね付勢されたカラーは、カニューラ、カテーテルまたはプローブを取り囲むカラーと、ハウジング内の凹所とカラーとの間に配置されたばねを含む。センサーは、ばね付勢されたカラーが、カラーの遠位面がハウジングの遠位面と一緒の平面にある状態で、ハウジングの凹所に完全に収容されるときを検知し、挿入状態を報知する警報機構をトリガーする。
【0015】
本発明の別の態様において、一つ以上の電極が、注入部位において対象の組織の電気的特定を検出するためにカニューラ自身に配置され、注入状態を監視する。これは、カニューラの絶縁層に配置された二つの電極を含み得、電極の間の電流または他の電気的特性を検出する。代わりに、カニューラ自身が、電気的接点を提供し、別の接点は、上述の本発明の最初の態様のように、注入部位に近接したハウジングの基部に配置される。
【0016】
例えば、そして、限定としてではなく、これらの実施形態の一つによるカニューラ挿入モニターは、ベベルを備える遠位端とハウジング内に配置される近位端を有するカニューラ、カニューラ上の電気的絶縁層、絶縁層上の電気的に導電性の遠位電極、および、絶縁層上の遠位電極の近位に配置された電気的に導電性の近位電極を含む。ハウジングは、対象の皮膚に配置されるように適合させられ、遠位電極と近位電極との間の電気的特性の変化を検出するため、遠位電極と近位電極に電気的に接続されたセンサー回路を含む。検出された電気的特性の変化に対応する警報メカニズムは、挿入状態の報知を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】挿入部位での電気的接点が、カニューラが正確に挿入されたかどうかを監視するためにセンサー回路に接続される、本発明の実施形態による挿入モニターを示す図である。
【
図2A】カニューラ挿入部位に近接する一対の機械的柱状体を使用する、本発明の他の実施形態による挿入モニターを示す図である。
【
図2B】カニューラ挿入部位に近接する一対の機械的柱状体を使用する、本発明の他の実施形態による挿入モニターを示す図である。
【
図2C】カニューラ挿入部位に近接する一対の機械的柱状体を使用する、本発明のさらに他の実施形態による挿入モニターを示す図である。
【
図2D】カニューラ挿入部位に近接する一対の機械的柱状体を使用する、本発明のさらに他の実施形態による挿入モニターを示す図である。
【
図3A】カニューラを取り囲むばね付勢されたカラーを使用する、本発明の別の実施形態によるカニューラ挿入モニターを示す図である。
【
図3B】カニューラを取り囲むばね付勢されたカラーを使用する、本発明の別の実施形態によるカニューラ挿入モニターを示す図である。
【
図3C】カニューラを取り囲むばね付勢されたカラーを使用する、本発明の別の実施形態によるカニューラ挿入モニターを示す図である。
【
図4A】カニューラ上の電極、または、カテーテル自身を使用する、本発明の別の実施形態によるカニューラ挿入モニターを示す図である。
【
図4B】カニューラ上の電極、または、カテーテル自身を使用する、本発明の別の実施形態によるカニューラ挿入モニターを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図は、概略だけであり、縮尺に合わせて引かれていない。
【0019】
本発明は、挿入された、または、留置された送達装置、または、使用者によって装着されたプローブを有する、任意の薬剤送達、検知、および/または、検査適用に有用である。例えば、そして、限定としてではなく、「薬剤送達」は、チューブによってパッチに取り付けられた注入ポンプを含み、パッチは、プラスチックカテーテルを介して、使用者の体に取り付けられる。注入のためのプラスチックカテーテルは、しばしば、その中に挿入ニードルを有し、そこに鋭利なベベルが配置される。その場合、本発明は、カテーテルが正確に位置していることを保証するために使用される。代わりに、注入装置は、カテーテルを使用することなく、薬剤送達のために皮膚に直接金属カニューラを挿入し得る。同様に、血液検査のための検知装置は、プローブを収容するカテーテルを使用し得(この場合、挿入モニターがカテーテルの挿入状態を検出する。)、または、プローブは、皮膚に直接挿入され得る(この場合、挿入モニターは、プローブ自身の挿入状態を検出する。)。多くのグルコース監視センサーは、鋭利なベベルを供給する挿入ニードル(「オーバーニードル」と称される。)を有し、オーバーニードルは、最初の切開後、患者から引き抜かれる。これらの実施形態の全てにおいて、挿入検出は、使用者に、センサーまたはプローブが正確に挿入され、その機能を発揮する準備ができているとの報知を提供する。本明細書で使用されるように、「カニューラ」のための挿入検出に関する開示は、カテーテルまたはプローブに負けず劣らず適合することが理解される。
【0020】
本明細書で使用されるように、「遠位」方向は、カニューラ挿入の方向であり、「近位方向」は、反対の方向である。本発明による、ある挿入モニターは、(i)カニューラが完全に挿入され、関連づけられた装置と共に使用する準備ができている、(ii)カニューラが完全に挿入されておらず、使用するための準備ができていない、を意味する、「カニューラ挿入状態」の可視、可聴、および/または、触知の報知を提供する。実施態様に依存して、モニターは、準備完了状態(i)、準備未完状態(ii)または、(i)および(ii)の両方の報知を提供し得る。代わりに、または加えて、カニューラ挿入状態の報知は、装置内の他の構成要素に伝達され、使用者に、可視、可聴、および/または、触知の結果を提供することなく、例えば、薬剤送達または血液検査を開始し、または、停止する。「触知」の報知は、振動モードを含む。
【0021】
本発明の挿入モニターは、カニューラ、カテーテルまたはプローブがある期間皮膚内に挿入される、制限なく、血糖値モニター、インシュリン注入セット、または、オンボディ注入ポンプを含む、任意のシステムと共に使用され得る。これらのシステムは、注入部位に近接したハウジングに自動挿入機構を有し得、挿入機構を介して遠隔的に作動させられ得、または、カニューラは、使用者によって手動で挿入され得る。プローブは、当該技術分野において知られているように、血糖の電気化学的決定のための試薬および電気接点を備え得る。
【0022】
図1は、挿入モニター100の実施形態を示し、電気接点110、112は、センサー100の中央部118の周りの領域に、すなわち、ハブ109に支持されたカニューラ140に近接して設けられる。この実施形態において、ハウジングの基部114は、カニューラ140が完全に挿入されるとき、皮膚に対して同一平面に配置される。基部は、可撓性であり得、皮膚に接着させ、合わせるために、いくつかの実施形態において、接着剤を備える。電気的接点110および112は、カニューラ140が挿入されるとき、両方の接点110、112が対象の皮膚に接触し、しかし、皮膚がテント状とされたとき、接触し損なうほどに、カニューレ140に近接して配置される。皮膚のテンティングは、カニューラまたはカテーテルが、場合によって、例えば、皮膚の局所的な硬い領域または毛包に遭遇するときに生じ得るように、カニューラ140が、標的にされる皮下腔に完全に貫通することに代わって、皮膚を遠位に押すときに生じ得る。
図3Cの異なる実施形態に示されるように、テンティングは、カニューラに近接する皮膚の領域が、装置の基部と接触しないことを引き起こす。皮膚101が装置の基部114から離れて押されるとき、接点110および112は、接触不良を示すであろう。この目的のために、接点は、カニューラまたはカテーテルに実質的に近接して、場合によって、約12mmの距離までに、配置され得る。12mmよりも大きい距離は、テンティングによる不十分なカニューラの貫通深さによる、浅い注入の可能性を示し損なう。カニューラは
図1に示されるが、当業者は、注入用の多くのカテーテルが、その中に挿入ニードルを有し、この場合、挿入モニターが、カテーテルの挿入状態を提供するために、典型的には、カテーテルに対して備えられるであろうことを理解するであろう。
【0023】
両方の電気的接点110、112が皮膚と接触するとき、センサー回路は、センサー回路116における電気的特性の変化、典型的には、キャパシタンスの増加を検出する。タッチセンス装置は当該技術分野において知られており、装置の電極は、コンデンサーの荷電板として機能し、使用者の体が、電極に近接させられるとき、第二のキャパシタプレートとして機能する体と共に、仮想コンデンサーが形成される。キャパシタンスは、キャパシタンス−デジタル変換器(CDC)を用いて測定される。すでに、健康管理の面で使用されている、この技術は、センサー回路116に接続された電気的接点11、112を備えた、本発明による挿入深さセンサーと一緒の使用のために容易に適合させられ得、電気的接点が使用者の皮膚と接触するに至るときに変化する電気的特性を測定する。キャパシタンスに関して説明されたが、当業者は、皮膚が、この測定をなすために活用され得る他の電気的特性を有することを認識するであろう。したがって、抵抗、インピーダンス、または、導電率のような、他の電気的特性が、注入部位において、適切な接触が、電極110、112と皮膚との間でなされているかどうかを決定するために測定され得る。該して、電気的な特性は、皮膚が直接接触させられる、および、センシング電極が近接するが皮膚に接触しないという、二つの方法で測定され得る。キャパシタンスの変化は、皮膚接触なしに測定され得、抵抗の変化の測定は、皮膚接触を必要とする。一対の電気的接点110、112に加えて、追加の電極点センサーが、挿入領域に近接して含まれ得る。
【0024】
センサー回路116は、警報メカニズム120に送信される、電気的特性の変化に対応する信号を生成し、信号は、発光ダイオード(LED)122のような、一つ以上の可視光、一つ以上の可聴警報124、または、LEDおよび可聴警報の組合せの形であり得る。警報メカニズム120は、感受できる振動を生成し得る。代わりに、センサー回路116は、遠隔の検査または送達装置にカニューラ挿入状態の指示を提供し得る。同様に、例えば、テンティングまたは屈曲によって引き起こされる皮膚状態の変化によって、または、皮膚101からハウジング108の基部114を引き離すことによってもたらされ得る、皮膚接触の途絶は、異なった信号が、センサー回路によって送信されることをもたらし、使用者、または、装置と、カニューラ挿入が失敗状況にあることを伝える。単純な例において、赤色のLEDは、カニューラが正確に挿入されていないことを報知し、緑色のLEDは、カニューラが正確に挿入されていることを報知する。代わりに、または、加えて、カニューラ挿入状態は、血糖値モニターまたは注入ポンプのような周辺装置に送信され得る。
【0025】
カニューラ、カテーテルまたはプローブの傾斜挿入は、カニューラ、カテーテルまたはプローブの先端が、所望の皮下腔に到達し得ないので望ましくない。挿入部位の近傍に二つの接点を有する挿入モニターは、傾斜挿入の検知を可能にする。例えば、一対の電気的接点のうちの一つが、対象の皮膚と接触し、他方が接触しないとき、モニターは、警報機構をトリガーし、傾斜挿入を報知する。これは、使用者に角度を固定するようにさせ、または、周辺装置を、注入または検査を停止することのような、適切な動作に向ける。
【0026】
本発明によるさらなる実施形態が
図2Aおよび
図2Bに示され、少なくとも一対の機械的柱状体230、232が、カニューラ240の両側で、カニューラ240の近傍に配置される。柱状体は、好ましくは、カニューラから12mm未満の距離に配置され、場合によって、注入部位において、皮膚201が、ハウジング208の基部214から離れてテント状とされたとき、装置が、完全に挿入されたと意識することを防止する。
【0027】
柱状体230、232は、カニューラ240が、挿入されると、ハウジング208内を近位に移動する。カニューラ(または、場合によってカテーテル)は、挿入部位に対してハウジングを押し付けることによって、または、糖尿病治療分野において、また、行われているように、自動挿入機構を提供することによって、挿入され得る。示された例において、挿入モニター200は、基部214および頂部208を含む。カニューラ240は、ハブ209に支持され、対象の皮膚への挿入のために、基部214から遠位に突出するベベルの付いた端部を有する。柱状体230、232は、ハウジング208が所定位置に置かれたとき、ハウジング208から突出し、基部214が皮膚に対して同一平面にあるとき、柱状体は、好ましくは、柱状体230、232の遠位表面が基部214と同一平面にあるように配設される。カニューラ240が、皮膚に挿入されると、柱状体は、カニューラの挿入に対応してハウジング内を近位に移動する。この柱状体230、232の近位移動は、注入部位へのハウジング208および基部214の移動によってはもちろん、ハブ209内における、柱状体230、232の係合によっても制御される。この目的のために、柱状体230、232は、金属または成型ポリプロピレン(PP)、または、成型アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)のような剛性材料から形成され、柱状体は、基部が、皮膚に近接して配置されるに至ると、ハウジングの頂部に向って近位に移動する。基部214は、着用者の体に適合させるために可撓性にされ得るが、柱状体230、232は、ハブ209との係合の結果として、カニューラと平行な、垂直位置を維持する。
【0028】
カニューラ240が、完全な挿入深さに達すると、柱状体230、232の近位端は、ハウジングの頂部の窓224、226を通して可視となる。代わりに、または、加えて、
図2Bに模式的に示されるように、機械的柱状体230、232は、カニューラが完全な貫通深さに達するとき、ハウジング内において、それぞれの表面225、227と接触し得る。表面225、227は、センサー回路216内における一つ以上の回路を閉鎖し得る電気的接点であり得、使用者に可視または可聴で送信され、カニューラ214が完全な貫通深さにあることを報知する警報メカニズムを発生させ、または、糖モニターまたは注入ポンプのような周辺装置への電気的信号を生成する。代わりに、接点234、236は、高分子の色変化材料が可視の色変化を受けることをもたらし得、カニューラ240が、完全な貫通深さに達したことの報知を、窓224、226を通して提供する。同様に、カニューラが、注入部位に正確に位置していないとき、ハウジング内の表面と柱状体との接触が断たれ、異なる可聴または可視の報知が、使用者に警報を与えるために発生させられ得る。用途に応じて、例えば、注入を停止するために(遠隔構成要素を有するポンプまたはパッチにおいて)、または、検査を停止するために(遠隔的に配置された糖モニターまたは注入ポンプにおいて)、情報が、システムの周辺構成要素に送られ得る。
【0029】
一対の柱状体230、232の一方が、表面225、227と接触し、他方が接触しない場合、これは、傾斜した挿入状態を報知し得、LED229または可聴警報223を用いた、可視の、および/または、可聴の警報を発生するように用いられ得、また、可能性のある傾斜挿入状態を報知する、遠隔装置に送信される信号を発生するように用いられ得る。
【0030】
図2Cおよび
図2Dの実施形態において、柱状体230、232は、カニューラが完全な貫通深さに到達したとの、使用者に対する触知の報知を提供する。これは、例えば、ハウジング208が、視界から外れて、例えば、腹の背部に配置されると、有用である。この実施形態において、柱状体230、232は、窓224、226を通して、ハウジング208の頂面から突出し、使用者は、カニューラが注入部位において完全に配置されたことを確実にするために、突出する先端を感知し得る。停止部219がハブ209内で柱状体230、232と係合するように設けられ、柱状体の移動を制御し、柱状体230、232がハブ209から分離することを防止する。
【0031】
本発明の更なる別の実施形態が、
図3A、
図3Bおよび
図3Cに示され、カニューラ、カテーテルおよびプローブが、皮膚の表面に対して完全な深さに挿入されたかどうかを検知する。他の実施形態と同様、この実施形態の装置は、オンボディセンサ(OBS)(または他の装置の構成要素)における不十分に挿入されたカニューラに対して、連続式糖モニター(CGM)の使用者(または他の装置の使用者)に警告するために用いられ得る。この実施形態は、ばね負荷された、カニューラと同心円をなす、滑動カラーを含み、OBS挿入の前、それは、装置の底部の平面を超えて突出する。カニューラの正確な、完全な深さの挿入で、OBS底部の平面は、皮膚の平面と接触し、カラーをOBS基部の凹所に押し入れる。凹所が占有されたとき、電気的、磁気的、または、光学的検出装置が、凹所の占有状態を検出し、場合によって、正信号を、遠隔センサーまたは送達システムのディスプレイに、または、電気的およびソフトウエアシステムに供給する。皮膚が、ハウジング基部と完全に接触しない場合(皮膚がカニューラ貫通後平らに復帰しない、「テンティング」の状態にあるときのような)、カラーは、凹所を占有せず、何の信号も生成されない。
【0032】
図3A、3Bおよび3Cの実施形態において、ハウジング301は、カニューラ340上を滑動するカラー320を収容する、凹所302を含む。カニューラに関連して説明されるが、当業者は、システムが、カテーテルの挿入検出にも同様に適合させられることを理解するであろう。示される実施形態において、カラー320は、圧縮ばね330のバイアスで遠位に付勢される。カニューレ340は、当該技術分野において一般的に知られ、理解されるように、および、前述の実施形態に関連して説明されたように、好ましくはハブ(不図示)を用いて、ハウジング301内に支持される。
【0033】
図3Bは、カラー320が完全に凹所302内に配置され、カラー320の遠位側がハウジングの遠位側と整列させられ、使用者の皮膚303の近傍に配置された状態を示す。示された実施形態において、電気的接点312および314は、カラーが凹所に配置されるとき閉鎖され、回路310を介して、カニューラ340が完全に挿入されたという信号を送る。この方法において、糖モニターまたは注入ポンプは、操作を開始するか、再開するための信号を受け取る。代わりに、または、加えて、カニューラ挿入の「準備完了」状態は、LEDまたは可聴警報、または、それらの組合せを用いて、可聴的に、または、可視的に報知され得る。他の実施形態において、電気的接点312および314の代わりに、光学的または磁気的センサーが使用され得る。
【0034】
図3Aは、カニューラ340が注入部位に完全に挿入されないかもしれない第一の例を示す。この状態において、使用者の皮膚に対してカラーを付勢するように用いられる圧縮ばね330は、完全に伸長させられ、カラー320は、凹所302に配置されない。この状態は、接点312、314(または他のセンサーシステム)によって検知され、および、警報メカニズムが、周辺のユーザーインターフェース装置に対して、トリガーされる。
図3Cは、テンティングによってもたらされる対象の皮膚の平面の途絶が、凹所302内へ配置されるべきカニューラカラー320の欠落の結果となる、
図3Aと同様な、第二の例を示す。これらのケースにおけるカニューラ挿入の状態は、LEDまたは可聴警報を介して生成される、適切な警報によって、または、糖モニターまたは注入ポンプのような周辺装置に、カニューラの「準備未完了」状態に関する信号を送ることによって、報知される。
【0035】
図4Aおよび
図4Bの実施形態は、電気的接点がカニューラに配置され、接点によって検知される皮膚または間質性液体の導電特性の変化が、カニューラの挿入状態を決定するのに用いられることを除いて、図
1の実施形態と類似する。先の実施形態と同様、ハウジング108(糖監視オンボディセンサまたは注入セットまたはポンプの部分であり得る)は、カニューラ140が挿入される部位において、使用者の皮膚101に配置される基部114を含み、カニューレ140は、ハブ109に支持される。カニューラ140は、絶縁層115を備え、電気的に導電性の遠位電極164と近位電極162が、絶縁層115に配置される。
図4Aに見られるように、カニューラ140が対象の皮膚に完全に挿入されるとき、電極164および162は、共に、間質液の電解質の比較的な高濃度のために一般的に明確にされた導電性を有する、間室空間内にある。センサー回路116内の電流は、電極間を流れる。カニューラが、例えば、皮膚の表面が、
図4Bにおけるように、テンティングによりゆがめられるときのように、完全に挿入されないなら、近位の電極162は、間室空間105に入らないであろうし、電極162、164間の導電性は、予測される方向に影響を受けるであろう。同様に、カニューラが、最初に正確に挿入され、その後に乱されたら、導電性の急速な変化が生じるであろう。
【0036】
電極162および164の間の導電性に変化が生じるとき、センサー回路116内で検出される回路の状態は、周辺の使用者インターフェース装置に伝えられ得、例えば、使用者に、装置が皮膚内に正確に挿入されていないことを警告するために警報をトリガーする。糖モニターの場合において、例えば、電極162、164の間の十分な導電性を示す信号は、開始または再開するために、糖モニタリングの必要な条件とされ得る。装置が薬剤送達装置であるなら、挿入モニターは、薬剤送達を、トリガーし、停止し、または、中断する。代わりに、可聴警報124またはLED120のような可視報知器が、使用者にカニューラ挿入状態の報知を提供するために用いられ得る。センサー回路は、カニューラ挿入の状態についての情報を得るために、導電性以外の電気的特性を検知し、評価し得る。例えば、カニューラ140が完全に挿入されるか、完全に挿入されないとき、電極162、164間のキャパシタンスが、カニューラの挿入状態と互いに関係を有し得る。
【0037】
先の実施形態において、対象の組織に挿入されるカニューラまたはプローブは、好ましくは、ステンレス鋼である。抵抗層115および電極162、164は、化学蒸着(CVD)、プラズマ励起化学蒸着(PECVD)、プリンティング、および、類似の方法を含む、当該技術分野で知られた手段によって、カニューラに堆積させられ得る。
【0038】
ステンレス鋼カニューラ自身が電極として機能する場合において、カニューラは、抵抗性のインクをローラで付けられるか、ブラシ塗りされ、対象の体に露出されるベベルに近接した選択領域を、導電性としておく。カニューラ140は、その後、ハウジング108の他の電極と対にされ、ハウジングの電極とカニューラ140間の電気的特性は、センサー回路116によって検出され、カニューラ挿入状態と関係づけられる。
【0039】
好まれる実施形態の先の説明は、本発明を限定するものとみなされるべきでなく、本発明は、添付の特許請求の範囲によって明らかにされる。先の開示に依拠する当業者は、特許請求された本発明の範囲から逸脱することなく、説明された実施形態の変形例を実践し得る。例えば、血糖値モニタリング、および、糖尿病の処置のためのインシュリンの連続送達に関連して多く説明されたが、当業者にとって、注入ポンプは他の薬剤を送達するのに適合させられ、モニターは、他の分析物のための検査に適合させられることは明らかであろう。一実施形態または独立項に関連して説明された態様または従属項の限定は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様または独立項と一緒の使用のために適合させられる。例えば、カニューラ挿入検知は、カニューラが、使用者がハウジングを押し付けることによって、手動で挿入されるケースにおいて、有利に使用され得、カニューラが、自動注入によって使用者の組織に推進させられるケースにおいて、等しくよく使用され得る。