特許第6664224号(P6664224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6664224
(24)【登録日】2020年2月20日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】アシストスーツ
(51)【国際特許分類】
   B66F 19/00 20060101AFI20200302BHJP
   B66D 3/18 20060101ALI20200302BHJP
   B25J 11/00 20060101ALN20200302BHJP
【FI】
   B66F19/00 Z
   B66D3/18 E
   !B25J11/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-6436(P2016-6436)
(22)【出願日】2016年1月15日
(65)【公開番号】特開2017-124928(P2017-124928A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年6月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】坂野 倫祥
(72)【発明者】
【氏名】中塚 晶基
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】福岡 和樹
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−182831(JP,A)
【文献】 特開2003−070279(JP,A)
【文献】 特開平11−209081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 7/00− 7/28
B66F 13/00−19/02
B66D 1/00− 5/34
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に装着可能な本体部を備え、
前記本体部から装着状態における使用者の前方上方側へ延出された吊り上げアームと、前記吊り上げアームの先端部から導出された吊り上げ用の索状体と、前記索状体の導出側の端部に装着されて、吊り上げ対象の荷物に対して係脱可能な把持操作具と、を備えるとともに、
前記本体部には、前記索状体を巻き取り巻き戻しするウインチと、そのウインチの駆動用モータに駆動用電力を供給するバッテリと、前記ウインチの作動を制御する制御装置と、前記バッテリから前記駆動用モータに至る駆動出力系において予め設定された検出対象項目の状態変化を検出する検出センサと、が備えられ、
前記制御装置には、前記ウインチの動作を予め設定された定常状態の動作形態で制御する定常動作モードと、前記定常動作モードとは異なる動作形態で前記ウインチを作動させる警告動作モードと、を択一的に出力する動作制御手段が備えられ、
前記動作制御手段は、前記検出センサによる前記検出対象項目での状態変化の検出値が所定範囲内であるときに前記ウインチに前記定常動作モードでの制御指令を出力し、前記検出値が前記所定範囲を越えると、前記ウインチに対する出力を前記警告動作モードでの制御指令に切り換えて出力し、
前記警告動作モードでは、前記ウインチによる前記索状体の巻き上げが停止されて、前記ウインチによる前記索状体の下げ側への動作のみが許容される上げ規制作動指令を出力するものであるアシストスーツ。
【請求項2】
使用者に対して注意事項を報知するための注意喚起装置を備え、
前記警告動作モードでは、前記ウインチに対する制御指令が出力される前に、もしくは出力されると同時に、前記注意喚起装置による報知作動が行われるものである請求項1に記載のアシストスーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者に装着可能な本体部と、本体部から、装着状態における使用者の前方上方側へ延出された吊り上げアームと、吊り上げアームの先端部から導出された吊り上げ用の索状体と、索状体の導出側の端部に装着されて、吊り上げ対象の荷物に対して係脱可能な把持操作具と、本体部側で索状体を巻き取り巻き戻しするウインチと、が備えられたアシストスーツに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアシストスーツとしては、本体部から延出された吊り上げアームと、吊り上げ対象の荷物に対して係脱可能な把持操作具とが、索状体を介して連結されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013−531593号公報(図1乃至図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のアシストスーツでは、動作途中でバッテリ残量が不足して所定の動作を行えなかったり、電動モータ等が過熱して動作不良を生じるなどの虞があり、アシストスーツとして信頼性の高いものを得難いという問題があった。
このような問題を解決するために、バッテリ残量の不足や電動モータ等の過熱を、検出センサで検出できるようにして、その検出結果を何らの音声警報や、何らかの目視可能な表示装置で警告できるようにすることも考えられる。しかしながら、一般的にアシストスーツは、騒音の大きい作業環境で使用されることも多い。そのため、何らかの音声警報装置や表示装置を備えていても、音声警報に気付かなかったり、作業中に表示装置を常時目視することは行い難いので、状況変化を迅速に把握し難い点で問題がある。
【0005】
本発明は、駆動出力系において予め設定された検出対象項目の状態変化に基づいてウインチの動作状況を制御し、騒音の大きい作業環境においても、目視し続け難い状況下においても、的確に駆動出力系における非定常状態の把握を行い易くしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明におけるアシストスーツの特徴は、使用者に装着可能な本体部を備え、前記本体部から装着状態における使用者の前方上方側へ延出された吊り上げアームと、前記吊り上げアームの先端部から導出された吊り上げ用の索状体と、前記索状体の導出側の端部に装着されて、吊り上げ対象の荷物に対して係脱可能な把持操作具と、を備えるとともに、前記本体部には、前記索状体を巻き取り巻き戻しするウインチと、そのウインチの駆動用モータに駆動用電力を供給するバッテリと、前記ウインチの作動を制御する制御装置と、前記バッテリから前記駆動用モータに至る駆動出力系において予め設定された検出対象項目の状態変化を検出する検出センサと、が備えられ、前記制御装置には、前記ウインチの動作を予め設定された定常状態の動作形態で制御する定常動作モードと、前記定常動作モードとは異なるように前記ウインチの動作状況を変化させることにより使用者に警告を行う警告動作モードと、の複数の制御指令を出力可能な動作制御手段が備えられ、前記動作制御手段は、前記検出センサによる前記検出対象項目での状態変化の検出値が所定範囲内であるときに前記ウインチに前記定常動作モードでの制御指令を出力し、前記検出値が前記所定範囲を越えると、前記ウインチに対する出力を前記警告動作モードでの制御指令に切り換えて出力するものである。
【0007】
本発明によれば、駆動出力系において予め設定された検出対象項目の状態変化に基づいて、ウインチの動作状況を、定常状態の動作形態で制御する定常動作モードと、その定常動作モードとは異なる動作形態で前記ウインチを作動させる警告動作モードと、に切り換えることができる。
このように、ウインチ自体の動作状況を変化させることで、騒音の多い作業環境でも、目視による確認を頻繁に行う必要もなく、予め設定された検出対象項目の状態変化を迅速に把握し易いという利点がある。
【0008】
本発明においては、前記検出センサによる前記検出対象項目が、前記バッテリにおけるバッテリ残量であり、前記動作制御手段は、前記検出センサによるバッテリ残量の検出値が所定値以上であるときに前記ウインチに前記定常動作モードでの制御指令を出力し、前記検出センサによるバッテリ残量の検出値が所定値を下回ると、前記ウインチに対する出力を前記警告動作モードでの制御指令に切り換えるものであると好適である。
【0009】
本構成によれば、バッテリ残量の検出値が所定値以上であるときと、バッテリ残量の検出値が所定値を下回るときと、でウインチに対する制御指令を切り換えるものである。これにより、バッテリにおけるバッテリ残量の度合いに応じたウインチの動作形態から、バッテリ残量が少なくなったことを的確に把握し易いものである。
【0010】
本発明においては、前記検出センサによる前記検出対象項目が、前記バッテリから前記駆動用モータに至る駆動出力系での発熱温度であり、前記動作制御手段は、前記検出センサによる発熱温度の検出値が所定値以下であるときに前記ウインチに前記定常動作モードでの制御指令を出力し、前記検出センサによる発熱温度の検出値が所定値を越えると、前記ウインチに対する出力を前記警告動作モードでの制御指令に切り換えるものであると好適である。
【0011】
本構成によれば、駆動出力系での発熱温度の検出値が所定値以下であるときと、駆動出力系での発熱温度の検出値が所定値を越えるときと、でウインチに対する制御指令を切り換えるものである。これにより、駆動出力系での発熱温度の検出値に応じたウインチの動作形態から、駆動出力系での発熱温度の状態変化を的確に把握し易いものである。
【0012】
本発明においては、前記警告動作モードでは、前記ウインチによる前記索状体の巻き上げ速度を、前記定常動作モードでの巻き上げ速度よりも減速させる低速作動指令を出力するものであると好適である。
【0013】
本構成によれば、警告動作モードでウインチによる索状体の巻き上げ速度を、定常動作モードでの巻き上げ速度よりも減速させることで、検出対象項目における状態変化が生じたことを直感的に把握させ得るものである。
【0014】
本発明においては、前記警告動作モードでは、前記ウインチによる前記索状体の巻き上げ速度を、間欠的に緩急に変化させるインチング作動指令を出力するものであると好適である。
【0015】
本構成によれば、警告動作モードでウインチによる索状体の巻き上げ速度を、間欠的に緩急に変化させるインチング作動させることで、検出対象項目における状態変化が生じたことを明確に把握させ易いものである。
【0016】
本発明においては、使用者に装着可能な本体部を備え、前記本体部から装着状態における使用者の前方上方側へ延出された吊り上げアームと、前記吊り上げアームの先端部から導出された吊り上げ用の索状体と、前記索状体の導出側の端部に装着されて、吊り上げ対象の荷物に対して係脱可能な把持操作具と、を備えるとともに、前記本体部には、前記索状体を巻き取り巻き戻しするウインチと、そのウインチの駆動用モータに駆動用電力を供給するバッテリと、前記ウインチの作動を制御する制御装置と、前記バッテリから前記駆動用モータに至る駆動出力系において予め設定された検出対象項目の状態変化を検出する検出センサと、が備えられ、前記制御装置には、前記ウインチの動作を予め設定された定常状態の動作形態で制御する定常動作モードと、前記定常動作モードとは異なる動作形態で前記ウインチを作動させる警告動作モードと、を択一的に出力する動作制御手段が備えられ、前記動作制御手段は、前記検出センサによる前記検出対象項目での状態変化の検出値が所定範囲内であるときに前記ウインチに前記定常動作モードでの制御指令を出力し、前記検出値が前記所定範囲を越えると、前記ウインチに対する出力を前記警告動作モードでの制御指令に切り換えて出力し、前記警告動作モードでは、前記ウインチによる前記索状体の巻き上げが停止されて、前記ウインチによる前記索状体の下げ側への動作のみが許容される上げ規制作動指令を出力するものであると好適である。
【0017】
本構成によれば、警告動作モードでは、ウインチによる索状体の巻き上げが停止されて、ウインチによる索状体の下げ側への動作のみが許容されるので、ウインチの動作が途中で停止してしまうような事態が生じることを避け易い。
つまり、バッテリ残量が少なくなっている場合には、ウインチを駆動する際の消費電力が少ない下げ側への動作のみを許し、駆動出力系での発熱温度が高くなっている場合には、ウインチを駆動する際の駆動負荷が少ない下げ側への動作のみを許すことで、ウインチ動作の途中停止を回避し易い。
【0018】
本発明においては、使用者に対して注意事項を報知するための注意喚起装置を備え、前記警告動作モードでは、前記ウインチに対する制御指令が出力される前に、もしくは出力されると同時に、前記注意喚起装置による報知作動が行われるものであると好適である。
【0019】
本構成によれば、警告動作モードでの制御指令とは別に注意喚起装置による報知作動が行われることで、より一層早く、あるいは、より確実に警告動作モードでのウインチ作動状態であることを把握し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】アシストスーツの側面図である。
図2】アシストスーツの背面図である。
図3】アシストスーツの平面図である。
図4】把持操作具とワイヤとの連結箇所を示す側面図である。
図5】制御系統を示すブロック図である。
図6】ウインチの動作形態を示す図表である。
図7】別実施形態におけるウインチの動作形態を示す図表である。
図8】別実施形態におけるウインチの動作形態を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、アシストスーツSを背中に装着した使用者を起点として、使用者にとっての前方側(図3における矢印F参照)に相当する方向がアシストスーツSの「前」方向を示している。同様に、後方側(図4における矢印B参照)に相当する方向が「後」方向を示し、右方側(図3における矢印R参照)に相当する方向が「右」方向を示し、左方側(図3における矢印L参照)に相当する方向が「左」方向を示すように記載している。
また、図示はしていないが、アシストスーツSの適宜部分には、合成樹脂製や金属製のカバー部材が設けられ、可動部分や、保護の必要な部分を覆うように構成されている。
【0022】
〔全体構成〕
図1〜3は、本発明におけるアシストスーツSの一つの実施形態を示すものである。
アシストスーツSは、ベルト装着具7を用いて、使用者に背負わせた状態で装着可能な扁平形状の本体部1を備えている。
この本体部1に対して、後述する脚部操作装置2や、吊り上げアーム3が取り付けられているとともに、吊り上げアーム3に操作ワイヤ6(索状体に相当する)を介して把持操作具4が装備されている。
また、その本体部1には、操作ワイヤ6を介して装備された把持操作具4を駆動するためのウインチ5、及び脚部操作装置2やウインチ5の作動を制御する制御装置C、ならびに電力供給用のバッテリVなどが設けられている。
【0023】
〔本体部の構成〕
本体部1は、所定間隔を隔てて上下方向に沿う状態で立設された左右一対の金属パイプ製の縦フレーム10と、その縦フレーム10の上下方向の中間部同士、及び下部同士を接続する上下一対の横フレーム11,12とを備えて、矩形枠状の一体物として構成されている。左右の縦フレーム10と上下の横フレーム11,12との一体化は、溶接による連結、もしくはボルト連結等の手段を採用することができる。
本体部1の上部には、使用者の肩部を越えて前方に延出された吊り上げアーム3が設けられている。この吊り上げアーム3は、後述する把持操作具4を吊り下げ状態に装着するものであり、縦フレーム10の上部から前方斜め上方に向けて延出されている金属パイプ部分によって構成されている。
【0024】
上下両横フレーム11,12のうち、上側に配置した横フレーム11には、図1及び図2に示すように、把持操作具4を昇降駆動させるウインチ5として、リール装置50と、そのリール装置50を駆動する第一電動モータM1が取り付けられている。
リール装置50や第一電動モータM1は、それぞれの回転軸心が水平方向に沿い、かつリール装置50が第一電動モータM1の上方側に位置して横フレーム11の扁平な面に沿うように配置されている。これにより、本体部1の薄型設計が可能となり、本体部1から後方への突出寸法を可能な限り減少させてある。
【0025】
下部側の横フレーム12には、図1乃至図3に示すように、左右両側に脚部操作装置2が各別に取り付けられている。
この脚部操作装置2は、本体部1と使用者の脚部太腿部分とを連結して、各脚部操作装置2の作動によって、上半身に対して折り曲げ姿勢にある使用者の脚部を押し下げ方向に操作する。これによって、脚部を反力受け点として使用者の起立動作を補助するように構成されたものである。
【0026】
上側の横フレーム11と下側の横フレーム12との中間位置には、前記左右の縦フレーム10の間に架け渡された状態で中間取付板13が固定されている。
この中間取付板13には、ウインチ5に備えた第一電動モータM1や脚部操作装置2に備えた第二電動モータM2の作動を制御するための制御装置C、及び第一電動モータM1や第二電動モータM2に駆動用の電力を供給するバッテリVが取り付けられている。つまり、中間取付板13に対して制御装置Cが固定され、制御装置CのカバーケースC1の背面側にバッテリVが固定されている。
【0027】
上記のように本体部1では、ウインチ5のリール装置50が、ウインチ5の第一電動モータM1や、制御装置Cや、バッテリVよりも上方側に配置されているから、把持操作具4までの操作ワイヤ6の経路長さを短縮でき、ワイヤ量の削減を図れる。
また、当該アシストスーツSの中枢となる制御装置Cは、上方をウインチ5で、後方をバッテリVでそれぞれガードされているから、他物との衝突による損傷を回避し易く、正常な機器制御を維持し易い。
【0028】
バッテリVは、ウインチ5の第一電動モータM1、制御装置C、及び、脚部操作装置2における左右一対の第二電動モータM2、センサ類(図示せず)等に対する電源として用いられている。
制御装置Cは、後述する把持操作具4に備えた操作スイッチ42や、後述する検出センサからの信号を受けて、それぞれに対応する装置の駆動制御を行えるように構成されている。
【0029】
〔脚部操作装置〕
左右一対の脚部操作装置2は、次のように構成されている。
図1乃至図3に示すように、各脚部操作装置2は、平面視での形状が「L」字形状の腰部フレーム2Aと、腰部フレーム2Aの前端部に、横軸心x1周りで前後方向に揺動自在に支持された揺動アーム部2Bと、揺動アーム部2Bの先端側部分に設けられて使用者の太腿部分に当接自在な当接部2Cとを備えて構成されている。
脚部操作装置2のそれぞれは、左右の腰部フレーム2A同士の間隔を調整して、例えば、使用する使用者の腰幅や足間隔に合わせて、左右の脚部操作装置2を適切に配置することができるように、前記横フレーム12に対する取付位置を左右方向で変更して、位置調節可能に構成されている。
【0030】
脚部操作装置2の腰部フレーム2Aは、「L」字形状のうち、左右方向に沿い下部側の横フレーム12に当接した基端側部分が、横フレーム12に対してボルト連結され、前方向に突出した先端側部分に、前記揺動アーム部2Bを横軸心x1周りに揺動駆動させるギヤボックス20が内蔵されている。そして、ギヤボックス20の後方側には、揺動アーム部2Bの駆動用の第二電動モータM2が連設されている。この第二電動モータM2の回転力が、ギヤボックス20を経由することで、横軸心x1周りの回転力として変換されて揺動アーム部2Bに減速状態で伝達される。
【0031】
脚部操作装置2の駆動は、腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢を検出するポテンショメータ54,55(図5参照)や、リール装置50の回転角を検出するポテンショメータ52などのセンサによる検出信号と、後述する把持操作具4に備えた操作スイッチ42からの操作信号とに基づいて行われる。そのために、把持操作具4に備えた操作スイッチ42が操作されたことの操作信号と、その操作時点における腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢の検出信号と、リール装置50の回転角の検出信号が制御装置Cで検出可能に構成されている。
【0032】
把持操作具4に備えた操作スイッチ42が操作されていない状態では、腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢がどのような状態であっても、脚部操作装置2に対するアシスト操作は行われない。
脚部操作装置2におけるアシスト操作は、操作スイッチ42の上昇側への操作と、その操作時点におけるポテンショメータ54,55による腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢の検出結果が、所定角度以上であること、とが同時に検出された場合に行われる。
つまり、使用者が腰を落としたしゃがみ込み姿勢に相当する角度であるときに、操作スイッチ42の上昇側への操作が行われたことの検出信号が制御装置Cで検出された場合にアシスト操作が開始される。
【0033】
このアシスト操作は、リール装置50による巻き取り動作に優先して、まず腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢を変化させる。つまり、使用者のしゃがみ込み姿勢から起立姿勢への動きをアシストするように、腰部フレーム2Aに対して揺動アーム部2Bを横軸心x1周りで押し下げる方向に操作する。
そして腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢が変化して、使用者の起立姿勢に相当する状態になったことが検出されると、前記リール装置50による操作ワイヤ6(索状体に相当する)の巻き取りが行われ、起立状態からの荷物の上方側への持ち上げ動作がアシストされる。
【0034】
把持操作具4に備えた操作スイッチ42が下降側に操作されたことの操作信号と、その操作時点における腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢として、使用者が起立した姿勢であることの検出信号が制御装置Cで検出されると、前記リール装置50による操作ワイヤ6の繰り出しが行われる。この繰り出しは、使用者が把持操作具4を持ったままで手を伸ばすことが可能な範囲で行われるように、リール装置50における繰り出し限界が設定されている。
【0035】
前記リール装置50による操作ワイヤ6の繰り出しが限界に達した後も操作スイッチ42が下降側に操作されていると、使用者の起立姿勢から、しゃがみ込み姿勢への動きを許容するように、腰部フレーム2Aに対する揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢を変更する。この姿勢変更は、腰部フレーム2Aに対して揺動アーム部2Bを、横軸心x1周りで押し下げる方向とは逆方向へ緩やかに作動させて、使用者がしゃがみ込み姿勢となることを許すように、使用者の姿勢変更動作がアシストされる。
【0036】
把持操作具4に備えた操作スイッチ42の上昇側もしくは下降側への操作が解除される、あるいは操作スイッチ42が上昇側と下降側との両方が同時操作されると、リール装置50による操作ワイヤ6の巻き取り、あるいは繰り出しの操作が停止され、脚部操作装置2に対するアシスト操作は解除される。
操作スイッチ42の上昇側及び下降側への操作が共に解除されると、リール装置50を駆動する第一電動モータM1にネガティブブレーキ84(図5参照)が作用して、操作ワイヤ6の巻き取り、繰り出し方向の移動がロックされた状態となる。
【0037】
〔吊り上げアーム〕
本体部1の上部から前方に延出された吊り上げアーム3は次のように構成されている。
吊り上げアーム3は、左右一対の縦フレーム10を構成する金属パイプの上部側を前方側へ曲げ加工することによって、縦フレーム10と一体の金属パイプによって構成されている。
つまり、縦フレーム10を構成する金属パイプのうち、上下に位置する横フレーム11,12を繋いで使用者の腰部から肩部程度の上下方向長さを有した範囲のものが縦フレーム10として用いられているが、使用者の肩部を越えて縦フレーム10の上部から前方斜め上方に向けて延出されている箇所の金属パイプ部分が、吊り上げアーム3として用いられる。
この吊り上げアーム3は、側面視で使用者の頭部を迂回するように上方側に高く延出されるのではなく、側面視で使用者の頭部の側方を横切って前方上方側に延出されている。
これによって、吊り上げアーム3の上端部が、使用者の頭頂部を大きく越えない程度の比較的低い高さ位置に設定されている。
【0038】
また、図1に示すように、吊り上げアーム3は、水平方向前方を向く使用者の目線hLよりも上方側を通って前方上方へ延出されている。そして、その吊り上げアーム3の上端部の位置が、水平方向前方を向く使用者の視野に入りやすい位置に設けられている。つまり、一般的に水平方向前方を向く人の上下方向での視野角は、上方側約60度、下方側約70度(図1における破線の範囲を参照)といわれているので、吊り上げアーム3の上端部の位置を、この視野内に位置するように設定してある。
【0039】
図2及び図3に示されるように、縦フレーム10を構成する部位は、左右の金属パイプが略平行に配置してあるのに対して、吊り上げアーム3を構成する部分では、左右の金属パイプの上端側が、前方上方側ほど左右に拡がる傾斜状態に形成されている。
縦フレーム10の左右方向の間隔は、使用者の肩幅より狭く(例えば、肩幅の半分程度)設定してある。また、吊り上げアーム3の上端部における左右方向の間隔は、使用者の肩幅より広く(例えば、肩幅の2倍程度)設定してある。
平面視における吊り上げアーム3の上端部の前後方向位置は、使用者の肩の位置よりも前方に延出されていることにより、使用者の顔や胴部よりも前方側の位置(例えば、使用者のつま先の鉛直線上近く)に設定してある(図1参照)。
【0040】
このように構成された吊り上げアーム3は、その前方側へ延出された左右それぞれの上端部に、2個の滑車31,31が同一の水平方向軸心x2回りで回動するように取り付けられている。
この2個の滑車31,31には、1個の把持操作具4に一端側を取り付けられた2本の操作ワイヤ6が掛けられている。したがって、左右の吊り上げアーム3の計4個の滑車31に、計4本の操作ワイヤ6が掛けられた状態となる。
各操作ワイヤ6の他端側はリール装置50に備えた4個の巻き取りドラム51(図2参照)に個々に係止されていて、リール装置50による巻き取り、あるいは繰り出しの作動に伴って4個の巻き取りドラム51が同時に作動し、4本の操作ワイヤ6が同時に同方向に巻き取り、あるいは繰り出し操作される。
【0041】
吊り上げアーム3の上端部には、前記滑車31の上方側及び横側方を覆う端部カバー30が装着されている。この端部カバー30には、図3及び図4に示すように前記操作ワイヤ6の挿通孔32を形成したワイヤ止め部33が一体に備えられている。
操作ワイヤ6は、図4に示すように、アウターワイヤ60とインナーワイヤ61とを備えたボーデンワイヤによって構成されている。このボーデンワイヤにおいて、前記把持操作具4とリール装置50とに連結されるのは、インナーワイヤ61であり、アウターワイヤ60はインナーワイヤ61の保護及び案内を行う。アウターワイヤ60は、吊り上げアーム3の上端部に近い位置でワイヤ止め部33に一端側が固定され、他端側がリール装置50に近い位置で背部ワイヤ止め53に固定される。
【0042】
〔把持操作具〕
左右の吊り上げアーム3に掛けられた4本の操作ワイヤ6のうち、各吊り上げアーム3毎に掛けられた2本の操作ワイヤ6の端部が1個の把持操作具4に取り付けられている。
この2本の操作ワイヤ6は、それぞれが、許容吊り上げ荷重として予め設定されている荷重に単独で耐え得る強度を有している。これは、長期の使用のうちに、万一、1本の操作ワイヤ6が破断したとしても、残りの1本の操作ワイヤ6によって許容吊り上げ荷重の荷物を吊り上げ状態に維持し得るようにするためである。
【0043】
具体的には、各吊り上げアーム3から垂下された2本のインナーワイヤ61,61の下端部が、一つの把持操作具4に取付られるのであるが、その2本のインナーワイヤ61,61のうち、一方のインナーワイヤ61が他方のインナーワイヤ61よりも少しだけ長く形成されている。
つまり、リール装置50に備えられた4個の巻き取りドラム51のうち、左右方向での外側に位置する巻き取りドラム51に連結されたインナーワイヤ61に比べて、その巻き取りドラムよりも一つ内側に位置する巻き取りドラム51に連結されたインナーワイヤ61が少し長く形成されている。この2本のインナーワイヤ61,61同士の間における長さの差は、通常の使用状態で荷物の荷重が作用するところの、短い方のインナーワイヤ61が経年変化で生じると予測される伸び量と同程度、あるいはそれ以上であるのが望ましい。
上記の2本のインナーワイヤ61,61の下端部は、把持操作具4の上面側に設けた取付ブラケット43に連結固定してある。
【0044】
2本のインナーワイヤ61,61同士の間における長さに差を持たせた状態で、吊り上げアーム3に把持操作具4を連結することにより、2本のインナーワイヤ61,61のうちの、長い方には吊り上げ荷物の荷重のほとんどが作用せず、短い方にのみ集中的に作用する。したがって、2本のインナーワイヤ61,61を装備しているが、一方のインナーワイヤ61が通常使用されるインナーワイヤ61として利用され、他方のインナーワイヤ61は、通常使用されるインナーワイヤ61が破断した場合にも荷物を吊り上げ状態に維持するための補助手段として用いられる。
このように、一方のインナーワイヤ61にのみ吊り上げ荷物の荷重が作用し、他方のインナーワイヤ61には吊り上げ荷物の荷重が作用しない場合は、吊り上げ対象荷物の重量に対する荷重分担率は、前者が100%で後者が0%となる。
【0045】
左右の各把持操作具4は、図1乃至図4に示されているように、左右対称形状をしており、金属製のフック部40の外面に合成樹脂製のグリップ部41を一体的に取り付けて構成されている。
フック部40は、金属製の板材を折り曲げてチャンネル状に形成されており、平板状の上側部40aと、上側部40aの外側部から下方に延出された上下向きの平板状の横側部40bと、横側部40bの下部から内方に延出された平板状の下側部40cとを備えている。
【0046】
グリップ部41は合成樹脂製であり、水平面状の前側上面部41aと、前側上面部41aから斜め後方に下がる傾斜面状の後側上面部41bと(図1参照)とを備えて構成されている。グリップ部41の前側上面部41aには、押しボタン型式の上昇操作用(又は下降操作用)の操作スイッチ42が備えられている。
当該実施形態のアシストスーツSにおいては、右のグリップ部41の操作スイッチ42は、上昇操作用として構成され、左のグリップ部41の操作スイッチ42は、下降操作用として構成されている。
尚、操作スイッチ42は、図には示さないケーブルによって、制御装置Cに電気的に接続されており、各操作スイッチ42の操作信号を送信できるように構成されている。
フック部40の下側部40cを、例えば、荷物に引っ掛けた状態で、操作スイッチ42を操作することで、上昇(又は下降)させることができる。
【0047】
左右の吊り上げアーム3と左右の把持操作具4との間には、吊り上げアーム3に対する把持操作具4の最接近距離L1を所定範囲に保つストッパー45が設けられている。
このストッパー45は、図1及び図4に示すように、吊り上げアーム3と把持操作具4との間に位置する2本のインナーワイヤ61,61のうち、通常の使用状態で荷物の荷重が作用するところの、短い方のインナーワイヤ61に対して連結固定されている。
【0048】
したがって、把持操作具4のグリップ部41を把持して上昇操作用の操作スイッチ42を操作し続けた場合にも、ウインチ5による巻き取り作動で把持操作具4が上限位置に達した時点で、吊り上げアーム3の上端部と把持操作具4の上面部との間には十分な間隔が存在する。これによって、仮に制御系の故障等の何らかのトラブルが生じてウインチ5が停止せずに把持操作具4の巻き上げが行われたとしても、把持操作具4が最接近距離L1を越えて吊り上げアーム3に異常接近することを機械的に阻止できる。
【0049】
〔ベルト装着具〕
ベルト装着具7は、本体部1の下部側の横フレーム12に固定されて、使用者の腰部に巻き付け可能な腰ベルト70と、下部側の横フレーム12及び上部側の横フレーム11にわたって固定されて、使用者の肩部に掛けられる肩ベルト71とを備えたものである。この腰ベルト70及び肩ベルト71を介してアシストスーツSが使用者に背負われた状態に装着される(図1乃至図3参照)。
【0050】
腰ベルト70は、図3に示すように、腰部フレーム2Aを介して本体部1に取り付けられている。使用者の腰部分を取り囲む状態に装着可能に構成されている。
具体的には、腰ベルト70は、腰部分の後面部分から左右両側面部分に至る後周部70Aと、腰部分の左側面部分から全面部分に至る左周部70Bと、腰部分の右側面部分から全面部分に至る右周部70Cと、左周部70Bの前端と右周部70Cの前端とを着脱自在なバックル部70Dとを備えて構成してあり、バックル部70Dに備えたベルト長さ調整機構(図示せず)によって、使用者の腰回りに合わせてベルトの長さを調整できるように構成されている。
【0051】
また、腰ベルト70の各部(後周部70A、左周部70B、右周部70C)の内周部には、腰周り部に当接自在なパッド73が、それぞれ一体に設けられている。
そして、後周部70Aと左周部70Bとの連結部、及び、後周部70Aと右周部70Cとの連結部には、それぞれバックル方式でベルトの長さを調整できるベルト長さ調整機構74(位置変更機構の一例)が備えられている。
このベルト長さ調整機構74を設けてあることで、左周部70Bと右周部70Cとにそれぞれ設けてあるパッド73を、装着対象の使用者の体格に合わせて、使用者の両脇腹部の最適な個所に位置させることができる。
【0052】
肩ベルト71は、図1に示すように、左右にそれぞれ設けてあり、上端部は、上側の横フレーム11に取り付けてあり、下端部は、腰ベルト70の後周部70Aに取り付けてある。また、肩ベルト71は、主に本体部1が使用者の背中部から後方に離れようとする状態を止める機能を発揮する。
これら腰ベルト70と肩ベルト71によって、アシストスーツSを使用者の背中に安定した状態に装着することができる。
アシストスーツS、及び、荷物の重量は、腰ベルト70を介して主に使用者の腰部に作用し、この腰部によって安定的に支持される。
【0053】
〔制御装置〕
脚部操作装置2やウインチ5の作動を制御する制御装置Cは次のように構成されている。
図5に示されるように、制御装置Cの入力側に、右のグリップ部41に取り付けられた上昇操作用の操作スイッチ42と、左のグリップ部41に取り付けられた下降操作用の操作スイッチ42と、が接続されている。
また、制御装置Cの入力側には、リール装置50の回転角を検出するポテンショメータ52や、揺動アーム部2Bの横軸心x1周りでの相対姿勢を検出するポテンショメータ54,55が電気的に接続されている。
【0054】
リール装置50を駆動する第一電動モータM1や脚部操作装置2に備えた第二電動モータM2に駆動用の電力を供給するバッテリVには、そのバッテリVにおけるバッテリ残量を検出するための残量検出センサ56(状態変化を検出する検出センサに相当する)が備えられている。この残量検出センサ56も、制御装置Cの入力側に電気的に接続されている。
そして、バッテリVからウインチ5の駆動用モータである第一電動モータM1に至る駆動出力系には、この駆動出力系での発熱温度を検出するための熱感知センサ57(状態変化を検出する検出センサに相当する)が備えられ、この熱感知センサ57も、制御装置Cの入力側に電気的に接続されている。
【0055】
制御装置Cには、ウインチ5における第一電動モータM1の駆動を制御するためのウインチドライバ80や、右脚用の脚部操作装置2における第二電動モータM2の駆動を制御するための右用ドライバ81や、左脚用の脚部操作装置2における第二電動モータM2の駆動を制御するための左用ドライバ82が出力側に設けられている。
【0056】
ウインチドライバ80には、第一電動モータM1と、その第一電動モータM1の電流値の変化を検出するレゾルバ83と、第一電動モータM1に対する上昇側への回転指令も下降側への回転指令も出力されていないときに、第一電動モータM1を制動するネガティブブレーキ84と、が接続されている。
【0057】
右用ドライバ81には、右脚用の揺動アーム部2Bを駆動する第二電動モータM2と、その第二電動モータM2の電流値の変化を検出するレゾルバ85と、が接続されている。
左用ドライバ82には、左脚用の揺動アーム部2Bを駆動する第二電動モータM2と、その第二電動モータM2の電流値の変化を検出するレゾルバ86と、が接続されている。
【0058】
前記制御装置Cには、残量検出センサ56や熱感知センサ57で検出された検出結果に関する情報を、目視可能であるように表示する目視用表示装置87(注意喚起装置に相当する)と、音声で報知する警報装置88(注意喚起装置に相当する)とが接続されている。
目視用表示装置87は、把持操作具4の上面側に設けられた押しボタン式の操作スイッチ42の内部に組み込まれたLEDランプによって構成され、押しボタンの上部が点灯するように構成されている。
警報装置88は、本体部1の上部に配設したブザーによって構成されている。
【0059】
制御装置Cには、ウインチ5の動作を予め設定された定常状態の動作形態で制御する定常動作モードと、定常動作モードとは異なる動作形態でウインチ5を作動させる警告動作モードと、の複数の制御指令を択一的に切り換えて出力可能な動作制御手段8が備えられている。
【0060】
この動作制御手段8では、バッテリ残量を検出するための残量検出センサ56での検出結果が、予め設定された所定値以上であるときに、ウインチ5を定常動作モードで駆動するようにウインチドライバ80に対して制御指令を出力する。そして、残量検出センサ56での検出結果が前記所定値を下回ると、ウインチ5を警告動作モードで駆動するように、ウインチドライバ80に対する制御指令を切り換えて出力するものである。
また、動作制御手段8では、バッテリVからウインチ5の駆動用モータである第一電動モータM1に至る駆動出力系での発熱温度を検出するための熱感知センサ57における検出結果が、予め設定された所定値以下であるときに、ウインチ5を定常動作モードで駆動するようにウインチドライバ80に対して制御指令を出力する。そして、熱感知センサ57での検出結果が前記所定値を越えると、ウインチ5を警告動作モードで駆動するように、ウインチドライバ80に対する制御指令を切り換えて出力するものである。
上記の所定値とは、適宜に設定することができるが、一応の目安としては、バッテリ残量に関しては、少なくとも、現在把持している荷物を、ウインチ5を使用して上限位置まで持ち上げ作動させるに支障の無い程度のバッテリ残量以上の値に設定すればよい。なるべくは、数回程度荷物の上げ降ろしが可能な程度のバッテリ残量を所定値として設定するのが望ましい。
駆動出力系での発熱温度に関しては、第一電動モータM1やその制御機器等に大きな悪影響を及ぼさない程度の温度範囲であるように所定値を設定するのが望ましい。
【0061】
この場合、動作制御手段8から出力される制御指令は、警告動作モードでの制御指令が優先する。つまり、残量検出センサ56での検出結果と、熱感知センサ57での検出結果のうち、一方が定常動作モードを出力し、他方が警告動作モードでの制御指令を出力した場合、その制御指令のうち、定常動作モードでの制御指令に優先して、警告動作モードでの制御指令に従って駆動するように、ウインチドライバ80に対する制御指令を切り換えて出力するものである。
【0062】
また、制御装置Cには、注意喚起手段9が備えられている。
この注意喚起手段9では、注意喚起装置としての目視用表示装置87や、警報装置88に対して動作指令を出力するものである。この注意喚起手段9による動作指令は、動作制御手段8から出力される制御指令が警告動作モードである場合に、その制御指令が出力される前に、もしくは出力されると同時に出力される。したがって、ウインチ5が警告動作モードでの作動を開始する前に、もしくは警告動作モードでの作動を開始すると同時に、注意喚起装置としての目視用表示装置87や、警報装置88による報知作動が行われるものである。
【0063】
動作制御手段8から出力される制御指令によると、ウインチ5は、次のように作動する。
図6に示すように、ウインチ5が定常動作モードで駆動されると、ウインチ5によって操作ワイヤ6が一定速度で巻き上げられる。したがって、下限開始位置o点にある把持操作具4が、実線及び一点鎖線で示すように、上限位置のau点まで一定速度で直線的に吊り上げられる。また、下降作動時には、下降開始位置cu点に存在する把持操作具4が、破線で示すように下限位置cd点まで直線的に下降する。
そして、例えば中間位置am点で、バッテリ残量が所定値以下であると認識されたとき、あるいは、駆動出力系での発熱温度が所定値以上であると認識されたとき、ウインチ5は警告動作モードで駆動される。このとき、ウインチ5による操作ワイヤ6の巻き上げ速度は急速に低下し、中間位置am点から別の上限位置buに至る実線で示されるように、ほぼ1/2程度の緩やかな一定速度で巻き上げられる。これによって、ウインチ5が警告動作モードで駆動されていることを、ウインチ5自体の動作状況から認識することができる。
【0064】
上記のように、動作制御手段8から出力される制御指令が警告動作モードである場合には、注意喚起手段9からは、目視用表示装置87や、警報装置88に対して動作指令が出力され、目視によって、あるいは音声によっても、警告動作モードでの駆動状態であることを認識することができる。
このように警告動作モードでの注意喚起手段9による動作指令を、目視用表示装置87や、警報装置88の双方に対して同様に出力するのではなく、目視用表示装置87や、警報装置88に対して、各別に出力することもできる。
つまり、検出センサによって、バッテリ残量が所定値以下であると認識されたことによる警告動作モードでは、目視用表示装置87のみが作動して、警報装置88は作動しないようにする。あるいは、検出センサによって駆動出力系での発熱温度が所定値以上であると認識されたことによる警告動作モードでは、警報装置88のみが作動して、目視用表示装置87は作動しないようにすることもできる。
このように構成すれば、警告動作モードが、バッテリ残量の不足によるものか、駆動出力系での発熱によるものか、を判別し易くすることができる。
【0065】
〔別実施形態の1〕
上記の実施形態では、ウインチ5が定常動作モードで駆動されると、ウインチ5によって操作ワイヤ6が一定速度で巻き上げられ、警告動作モードでは、ウインチ5による操作ワイヤ6の巻き上げ速度が急速に低下した緩やかな一定速度で巻き上げられるようにした構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、図7に示すように、ウインチ5が定常動作モードで駆動されると、ウインチ5によって操作ワイヤ6が一定速度で巻き上げられる。したがって、下限開始位置o点にある把持操作具4が、実線及び一点鎖線で示すように、上限位置のau点まで一定速度で直線的に吊り上げられる。また、下降作動時には、下降開始位置cu点に存在する把持操作具4が、破線で示すように下限位置cd点まで直線的に下降する。
そして、例えば中間位置am点で、バッテリ残量が所定値以下であると認識されたとき、あるいは、駆動出力系での発熱温度が所定値以上であると認識されたとき、ウインチ5は警告動作モードで駆動される。このとき、ウインチ5による操作ワイヤ6の巻き上げは、間欠的な巻き上げ動作と巻き上げ停止動作とが交互に繰り返される、所謂インチング操作によって動作し、段階的に上昇して別の上限位置のbu点に到達する。これによって、ウインチ5が警告動作モードで駆動されていることを、ウインチ5自体の動作状況から、より明確に認識することができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0066】
〔別実施形態の2〕
上記の実施形態では、ウインチ5が定常動作モードで駆動されると、ウインチ5によって操作ワイヤ6が一定速度で巻き上げられ、警告動作モードでは、ウインチ5による操作ワイヤ6の巻き上げ速度が急速に低下した緩やかな一定速度で巻き上げられる、あるいは段階的に巻き上げられるようにした構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、図8に示すように、ウインチ5が定常動作モードで駆動されると、ウインチ5によって操作ワイヤ6が一定速度で巻き上げられる。したがって、下限開始位置o点にある把持操作具4が、実線及び一点鎖線で示すように、上限位置のau点まで一定速度で直線的に吊り上げられる。また、下降作動時には、下降開始位置cu点に存在する把持操作具4が、破線で示すように下限位置cd点まで直線的に下降する。
そして、例えば中間位置am点で、バッテリ残量が所定値以下であると認識されたとき、あるいは、駆動出力系での発熱温度が所定値以上であると認識されたとき、ウインチ5は警告動作モードで駆動される。このとき、ウインチ5による操作ワイヤ6の巻き上げは、停止され、下降動作だけが許される。これによって、ウインチ5が警告動作モードで駆動されていることを、ウインチ5自体の動作状況から、明確に認識することができる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0067】
〔別実施形態の3〕
上記の「別実施形態の2」では、警告動作モードでは、ウインチ5による操作ワイヤ6の巻き上げは停止され、下降動作だけが許されるように構成したものであるが、上記の所定値とは別に、把持操作具4による荷物の吊り上げ状態であるか否かを判別する手段を設けて、把持操作具4による荷物の吊り上げが行われていない、所謂「空荷」状態であるときには、警告動作モードによる牽制を解除して、ウインチ5によって操作ワイヤ6が一定速度で巻き上げられるようにしてもよい。
この場合、荷物の吊り上げ状態であるか否かを判別する手段としては、操作ワイヤ6の重量と把持操作具4自体の重量との合算値程度の、きわめて軽い重量を検出可能な別の検出手段を設け、その検出結果に基づいて荷物の吊り上げ状態を判別できるようにすればよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0068】
〔別実施形態の4〕
上記の実施形態では、ウインチ5が定常動作モードで駆動されると、ウインチ5によって操作ワイヤ6が一定速度で巻き上げられ、警告動作モードでは、ウインチ5による操作ワイヤ6の巻き上げ速度が急速に低下した緩やかな一定速度(ほぼ1/2程度)で巻き上げられる、あるいは段階的に巻き上げられるようにした構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、巻き上げ速度をさらに緩やかな1/3程度にしたり、1/1.5程度にしたりするなど、適宜の速度に設定すればよい。また、その設定速度を変更できるようにしてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0069】
〔別実施形態の5〕
上記の実施の形態では、2本のインナーワイヤ61,61の下端部を、把持操作具4の上面側に設けた取付ブラケット43に連結固定した構造のものを例示したが、この構造に限定されるものではない。
例えば、索状体を1本の操作ワイヤ6で構成したもの、あるいは3本以上の操作ワイヤ6,6を用いた構造のものであってもよい。また、操作ワイヤ6に限らず、帯状体などを用いてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0070】
〔別実施形態の6〕
上記の実施形態では、注意喚起装置として、目視用表示装置87と、警報装置88との双方を用いた構造のものを例示したが、この目視用表示装置87と、警報装置88とのうちの何れか一方のみを用いた構造のものであってもよいし、双方ともに省略したものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0071】
〔別実施形態の7〕
上記の実施の形態では、ベルト装着具7として、腰ベルト70と肩ベルト71との双方を備えた構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。
例えば、ベルト装着具7を肩ベルト71だけ、あるいは腰ベルト70だけ、を備えた構造のもので構成してもよい。この場合、腰ベルト70だけの場合は、本体部1側に肩ベルト71に代わる固定の肩掛け部等を形成しておくのが望ましい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0072】
〔別実施形態の8〕
上記の実施形態では、本体部1にウインチ5と脚部操作装置2の双方を備えた構造のものを例示したが、脚部操作装置2を備えずに、ウインチ5だけを備えた構造のものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、使用者が装着して使用するもので、使用者の作業(動作)を動力によって補助する各種のアシストスーツに適用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 本体部
3 吊り上げアーム
4 把持操作具
5 ウインチ
6 索状体
7 ベルト装着具
8 動作制御手段
56,57 検出センサ
87,88 注意喚起装置
C 制御装置
V バッテリ
M1 駆動用モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8