特許第6664411号(P6664411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6664411セキュリティ装置、セキュリティ制御方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6664411
(24)【登録日】2020年2月20日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】セキュリティ装置、セキュリティ制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/00 20060101AFI20200302BHJP
   G08B 13/196 20060101ALI20200302BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20200302BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20200302BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   G08B21/00 U
   G08B13/196
   G08B25/00 510M
   H04Q9/00 301B
   H04M11/00 301
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-550411(P2017-550411)
(86)(22)【出願日】2016年11月11日
(86)【国際出願番号】JP2016083511
(87)【国際公開番号】WO2017082388
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2018年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-221351(P2015-221351)
(32)【優先日】2015年11月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆司
(72)【発明者】
【氏名】福田 達也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康悟
【審査官】 松原 徳久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−265288(JP,A)
【文献】 特開2006−072937(JP,A)
【文献】 特開2007−126118(JP,A)
【文献】 特開2014−048079(JP,A)
【文献】 特開2011−068347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R9/00−11/06
25/00−99/00
E05B1/00−65/44
65/46
65/462−85/28
G05D1/00−1/12
G08B13/00−15/02
19/00−31/00
H03J9/00−9/06
H04M1/00
1/24−3/00
3/16−3/20
3/38−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
99/00
H04Q9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両とユーザとの間に遮蔽が生じているかを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じて、前記車両の異常を検知するセキュリティユニットのセキュリティレベルを制御する制御手段と、
を有することを特徴とするセキュリティ装置。
【請求項2】
前記車両の位置情報を取得する車両情報取得手段と、
前記ユーザの現在位置情報を取得するユーザ情報取得手段と、
遮蔽物に関する情報を取得する遮蔽物情報取得手段と、
を更に備え、
前記判定手段は、前記車両の位置情報と前記ユーザの現在位置情報と前記遮蔽物に関する情報とに基づいて、前記遮蔽が生じているかを判定することを特徴とする請求項1に記載のセキュリティ装置。
【請求項3】
前記ユーザ情報取得手段は、前記ユーザの向いている方向を示す情報を取得し、
前記制御手段は、前記判定手段の判定結果と、前記ユーザの向いている方向とに基づいて、前記セキュリティレベルを制御することを特徴とする請求項2に記載のセキュリティ装置。
【請求項4】
前記車両の位置情報は、前記車両の存在する高度を含み、
前記ユーザの現在位置情報は、前記ユーザの存在する高度を含み、
前記制御手段は、前記判定手段の判定結果と、前記車両と前記ユーザとの高度差に基づいて、前記セキュリティレベルを制御することを特徴とする請求項2又は3に記載のセキュリティ装置。
【請求項5】
前記ユーザ情報取得手段は、前記ユーザの現在位置情報を前記ユーザの携帯する端末装置から取得することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項6】
前記ユーザ情報取得手段は、前記ユーザの現在位置情報を、前記車両に備えられた撮像手段から取得することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項7】
前記遮蔽物情報取得手段は、前記車両から一定の範囲に存在する遮蔽物に関する情報を取得することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項8】
前記遮蔽物に関する情報は、地物情報から取得される請求項2に記載のセキュリティ装置。
【請求項9】
前記ユーザは、前記車両の所有者の関係者であることを特徴とする請求項2乃至7のいずれか一項に記載のセキュリティ装置。
【請求項10】
セキュリティ装置によって実行されるセキュリティ制御方法であって、
車両とユーザとの間に遮蔽が生じているかを判定する判定工程と、
前記判定工程の判定結果に応じて、前記車両の異常を検出するセキュリティユニットのセキュリティレベルを制御する制御工程と、
を有することを特徴とするセキュリティ制御方法。
【請求項11】
コンピュータを備えるセキュリティ装置によって実行されるプログラムであって、
車両とユーザとの間に遮蔽が生じているかを判定する判定手段、
前記判定手段の判定結果に応じて、前記車両の異常を検出するセキュリティユニットのセキュリティレベルを制御する制御手段、
として前記コンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体のセキュリティレベルを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の盗難防止などのために車両に搭載されるセキュリティ装置が知られている。特許文献1には、車載機器と管理センタとにより構成される車両盗難防止システムにおいて、車両の駐車場所と使用者の所在位置との距離に基づいてセキュリティレベルを設定することが記載されている。具体的に、このシステムは、車両の駐車場所と使用者の所在位置との距離が離れていればセキュリティレベルを上げ、距離が近ければセキュリティレベルを下げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−72937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、単純に車両とユーザとの距離に応じてセキュリティレベルを変更すると、車両と使用者との距離が近い場合にはキュリティレベルを下げることになる。例えば、車両の所有者が建物の駐車場に車両を止めて建物の中にいる場合、特許文献1によれば、ユーザと車両との距離が近いため、セキュリティレベルを下げることになる。しかし、この場合、実際にはユーザには建物による遮蔽が生じていて車両を確認できないため、セキュリティレベルを下げてしまうのは問題がある。特許文献1の手法は、ユーザと車両との距離が近くてもセキュリティレベルを上げなければならない状況には対応できていない。
【0005】
本発明の解決しようとする課題としては、上記のものが一例として挙げられる。本発明は、ユーザと移動体の状況に応じて適切にセキュリティレベルを制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、セキュリティ装置であって、車両とユーザとの間に遮蔽が生じているかを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に応じて、前記車両の異常を検知するセキュリティユニットのセキュリティレベルを制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項10に記載の発明は、セキュリティ装置によって実行されるセキュリティ制御方法であって、車両とユーザとの間に遮蔽が生じているかを判定する判定工程と、前記判定工程の判定結果に応じて、前記車両の異常を検出するセキュリティユニットのセキュリティレベルを制御する制御工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項11に記載の発明は、コンピュータを備えるセキュリティ装置によって実行されるプログラムであって、車両とユーザとの間に遮蔽が生じているかを判定する判定手段、前記判定手段の判定結果に応じて、前記車両の異常を検出するセキュリティユニットのセキュリティレベルを制御する制御手段、として前記コンピュータを機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例に係るセキュリティシステムの構成を示す。
図2】第1実施例に係るセキュリティ制御を説明する図である。
図3】第1実施例に係るセキュリティ制御を説明する他の図である。
図4】第1実施例に係るセキュリティ制御のフローチャートである。
図5】第2実施例に係るセキュリティ制御を説明する図である。
図6】第2実施例に係るセキュリティ制御のフローチャートである。
図7】セキュリティシステムの他の構成例を示す。
図8】セキュリティシステムのさらに他の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の1つの好適な実施形態では、セキュリティ装置は、移動体とユーザとの間に遮蔽が生じているかを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に応じて、前記移動体のセキュリティレベルを制御する制御手段と、を有する。
【0011】
上記のセキュリティ装置は、車両などの移動体とユーザとの間に遮蔽が生じているかを判定し、その判定結果に応じてセキュリティレベルを制御する。セキュリティ装置は、例えば、移動体とユーザとの間に遮蔽が生じている場合にはセキュリティレベルを高く設定し、遮蔽が生じていない場合にはセキュリティレベルを低く設定する。これにより、状況に応じた適切なセキュリティレベルで移動体のセキュリティを管理することができる。
【0012】
上記のセキュリティ装置の一態様は、前記移動体の位置情報を取得する移動体情報取得手段と、前記ユーザの現在位置情報を取得するユーザ情報取得手段と、遮蔽物に関する情報を取得する遮蔽物情報取得手段と、を更に備え、前記判定手段は、前記移動体の位置情報と前記ユーザの現在位置情報と前記遮蔽物に関する情報とに基づいて、前記遮蔽が生じているかを判定する。この態様では、遮蔽物に関する情報に基づいて、移動体とユーザとの間に遮蔽が生じているかを判定する。
【0013】
上記のセキュリティ装置の他の一態様では、前記ユーザ情報取得手段は、前記ユーザの向いている方向を示す情報を取得し、前記制御手段は、前記判定手段の判定結果と、前記ユーザの向いている方向とに基づいて、前記セキュリティレベルを制御する。この態様では、ユーザの向いている方向を考慮してセキュリティレベルが制御される。
【0014】
上記のセキュリティ装置の他の一態様では、前記移動体の位置情報は、前記移動体の存在する高度を含み、前記ユーザの現在位置情報は、前記ユーザの存在する高度を含み、前記制御手段は、前記判定手段の判定結果と、前記移動体と前記ユーザとの高度差に基づいて、前記セキュリティレベルを制御する。この態様では、移動体とユーザの高度差を考慮してセキュリティレベルが制御される。
【0015】
上記のセキュリティ装置の好適な例では、前記ユーザ情報取得手段は、前記ユーザの現在位置情報を前記ユーザの携帯する端末装置から取得する。他の好適な例では、前記ユーザ情報取得手段は、前記ユーザの現在位置情報を、前記移動体に備えられた撮像手段から取得する。
【0016】
上記のセキュリティ装置の他の一態様では、前記遮蔽物情報取得手段は、前記移動体から一定の範囲に存在する遮蔽物に関する情報を取得する。この態様では、取得すべき遮蔽物に関する情報の量を低減することができ、迅速な処理が可能となる。
【0017】
上記のセキュリティ装置の他の一態様では、前記ユーザは、前記移動体の所有者の関係者である。この態様では、移動体の所有者のみならず、その関係者によっても移動体のセキュリティを制御することが可能となる。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態では、セキュリティ装置によって実行されるセキュリティ制御方法は、移動体とユーザとの間に遮蔽が生じているかを判定する判定工程と、前記判定工程の判定結果に応じて、前記移動体のセキュリティレベルを制御する制御工程と、を有する。この方法によっても、状況に応じた適切なセキュリティレベルで移動体のセキュリティを管理することができる。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態では、コンピュータを備えるセキュリティ装置によって実行されるプログラムは、移動体とユーザとの間に遮蔽が生じているかを判定する判定手段、前記判定手段の判定結果に応じて、前記移動体のセキュリティレベルを制御する制御手段、として前記コンピュータを機能させる。このプログラムをセキュリティ装置で実行することにより、状況に応じた適切なセキュリティレベルで移動体のセキュリティを管理することができる。上記のプログラムは、記憶媒体に記憶して取り扱うことができる。
【実施例】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
[システム構成]
図1は、実施例に係るセキュリティシステムの構成を示す。セキュリティシステムは、車載器1と、サーバ10と、端末装置20とを備える。車載器1は、車両に搭載され、ナビゲーション装置2とセキュリティユニット3とを含む。ナビゲーション装置2とセキュリティユニット3とは、例えばUSBなどにより有線接続される。サーバ10は、例えば3Gなどの無線通信により、車載器1内のセキュリティユニット3及び端末装置20と通信が可能である。また、端末装置20は、3Gなどの無線通信によりサーバ10と通信可能であり、Bluetooth(登録商標)やWiFi(登録商標)などを利用した無線通信によりセキュリティユニット3と通信が可能である。
【0021】
ナビゲーション装置2は、車両に搭載されるカーナビゲーション装置であり、車両に固定されるタイプであってもよく、着脱可能なポータブルタイプであってもよい。ナビゲーション装置2は、車両の現在位置を測位しており、車両が停止したときの車両の位置情報(以下、「車両位置情報」とも呼ぶ。)D1をセキュリティユニット3に供給する。
【0022】
また、ナビゲーション装置2は、内部のメモリに地図情報や地物情報を記憶しており、地物情報D2をセキュリティユニット3に供給する。ここで、「地物」とは、地上に存在する物体であり、建物、橋などの人工物の他、木々、森林などの自然物を含む。また、「地物情報」は、地物の位置、形状及び大きさ(即ち、地物が占める領域)を示す情報である。後述するように、本実施例では、地物情報は、ユーザと車両との間に遮蔽が生じるか否かを判定するための情報として使用されるものであり、その判定に必要なレベルの情報を有していればよい。なお、地物は本発明における「遮蔽物」の一例に相当する。
【0023】
セキュリティユニット3は、車両のセキュリティを監視する装置であり、例えばドライブレコーダなどとすることができる。セキュリティユニット3は、車両の制御装置と接続され、車両のアクセサリー(ACC)のオン/オフを示す信号を受信する。また、セキュリティユニット3は、撮影画像などに基づいて車両の周囲の状況を監視し、予め決められた条件に基づいて異常を検知した場合には、異常検知情報D3をサーバ10へ送信する。
【0024】
セキュリティユニット3は、異なるセキュリティレベルに設定されて動作する。典型的には、セキュリティユニット3をオンにした状態、即ち、セキュリティを有効とした状態はセキュリティレベルが高い状態である。また、セキュリティユニット3をオフにした状態、即ち、セキュリティを無効とした状態はセキュリティレベルが低い状態となる。
【0025】
また、セキュリティユニット3は、3段階以上の複数のセキュリティレベルが設定できるものであってもよい。例えば、セキュリティユニット3がドライブレコーダのように周囲の画像を撮影する装置の場合、撮影する画像の解像度を変更したり、画像を撮影する頻度を変更したり、画像を撮影する範囲を変更することにより、セキュリティレベルを変えることができる。具体例として、撮影する画像の解像度を3段階で変更する場合、最も高い解像度に設定したモードはセキュリティレベルが最も高い状態であり、2番目に高い解像度に設定したモードは2番目にセキュリティレベルが高い状態であり、最も低い解像度に設定したモードは解像度が低い状態となる。画像を撮影する頻度を変更する場合、画像を撮影する頻度が高いモードはセキュリティレベルが高い状態となり、画像を撮影する頻度が低いモードはセキュリティレベルが低い状態となる。また、画像を撮影する範囲を変更する場合、撮影範囲が車両の全方位であるなど、撮影範囲が広いモードはセキュリティレベルが高い状態であり、撮影範囲が車両の前方のみであるなど、撮影範囲が狭いモードはセキュリティレベルが低い状態となる。
【0026】
サーバ10は、セキュリティユニット3から異常検知情報D3を受信すると、それを端末装置20へ転送し、端末装置20のユーザに対して車両に異常が発生したことを連絡する。
【0027】
端末装置20は、例えばスマートフォン、携帯電話、ウェアラブル端末などであり、GPSなどにより現在位置情報を取得することが可能である。また、端末装置20がウェアラブル端末などである場合には、内部に搭載したセンサなどにより、ユーザが向いている方向を示す向き情報を取得することもできる。端末装置20は、自身の現在位置をユーザの現在位置情報(以下、「ユーザ位置情報」と呼ぶ。)D4としてセキュリティユニット3へ送信する。なお、上記のように端末装置20がユーザの向き情報を取得可能である場合、端末装置20はユーザの向き情報をユーザ位置情報D4に含めてセキュリティユニット3へ送信する。
【0028】
上記の構成において、セキュリティユニット3は本発明における判定手段、制御手段及び遮蔽物情報取得手段の一例であり、ナビゲーション装置2は本発明における移動体情報取得手段の一例であり、端末装置20は本発明におけるユーザ情報取得手段の一例である。
【0029】
[セキュリティ制御]
(第1実施例)
次に、セキュリティユニット3が実行するセキュリティ制御の第1実施例について説明する。第1実施例においては、セキュリティユニット3は、端末装置20を所持しているユーザが車両を目視できる範囲内にいるか否かを判定し、目視できる範囲内にいる場合にはセキュリティレベルを低く設定し、目視できる範囲内にいない場合にはセキュリティレベルを高く設定する。
【0030】
図2は、第1実施例に係るセキュリティ制御を説明する図である。図2において建物などの地物は斜線で示されている。図示のように、市街地のある位置に車両Vが停車している。ここで、端末装置20を持ったユーザが位置P1にいる場合、ユーザと車両Vとの間には建物などの地物による遮蔽が生じており、ユーザは車両Vを目視することができない。よって、セキュリティユニット3は、セキュリティレベルを高く設定する。これに対し、ユーザが位置P2にいる場合、ユーザと車両Vとの間には遮蔽が生じておらず、ユーザは車両Vを目視することができる。よって、セキュリティユニット3は、セキュリティレベルを低く設定する。
【0031】
なお、先にも述べたが、「セキュリティレベルを高く設定する」とは、セキュリティレベルを有効とすること、現在設定されているセキュリティレベルよりも高いセキュリティレベルに変更すること、3段階以上あるセキュリティレベルのうち、高い方のレベルに設定すること、などを含む。また、「セキュリティレベルを低く設定する」とは、セキュリティレベルを無効とすること、現在設定されているセキュリティレベルよりも低いセキュリティレベルに変更すること、3段階以上あるセキュリティレベルのうち、低い方のレベルに設定すること、などを含む。
【0032】
図3は、第1実施例に係るセキュリティ制御を説明する他の図である。図3においても建物などの地物は斜線で示されている。図3の例では、ユーザは車両Vを建物の近くに駐車して建物内に入り、建物内の位置P3にいる。この場合も、ユーザと車両Vとの間には建物による遮蔽が生じており、ユーザは車両Vを目視することができない。よって、セキュリティユニット3は、セキュリティレベルを高く設定する。
【0033】
なお、この場合、セキュリティユニット3は、ユーザと車両Vとの距離を考慮する必要はない。即ち、ユーザと車両Vとの距離が近くても、ユーザと車両Vとの間に遮蔽が生じていれば、セキュリティユニット3はセキュリティレベルを高く設定する。このように、第1実施例では、ユーザと車両との間に遮蔽が生じているか否か、即ち、ユーザが車両を目視できるか否かに応じて、セキュリティレベルを適切に設定することができる。
【0034】
図4は、第1実施例に係るセキュリティ制御のフローチャートである。この処理は、セキュリティユニット3により実行される。なお、この処理は、実際にはセキュリティユニット3に含まれるCPUなどのコンピュータが、予め用意されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、この処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0035】
まず、セキュリティユニット3は、車両の制御装置からの信号に基づいて、車両のアクセサリ(ACC)がオフされたか否かを判定する(ステップS11)。車両のアクセサリがオフされていない場合(ステップS11:No)、処理は終了する。
【0036】
一方、車両のアクセサリがオフされた場合(ステップS11:Yes)、セキュリティユニット3は、ナビゲーション装置2から車両の現在位置を示す車両位置情報を取得する(ステップS12)。また、セキュリティユニット3は、ナビゲーション装置2から地物情報を取得する(ステップS13)。さらに、セキュリティユニット3は、端末装置20から、端末装置20を所持したユーザの現在位置を示すユーザ位置情報を取得する(ステップS14)。
【0037】
次に、セキュリティユニット3は、ユーザ位置と車両位置との間に地物による遮蔽が生じているか否かを判定する(ステップS15)。具体的には、セキュリティユニット3は、車両位置情報と、ユーザ位置情報と、地物情報とに基づいて、ユーザと車両との間に地物があるか否かを判定する。例えば、セキュリティユニット3は、地図上でユーザの現在位置と車両の現在位置とを結ぶ直線を決定し、高さを含む地物の形状及び大きさ(地物が占める領域)を考慮した上で、この直線が地物により遮られるか否かを判定する。
【0038】
ユーザ位置と車両位置との間に遮蔽が生じていない場合(ステップS15:No)、セキュリティユニット3はセキュリティレベルを低く設定する(ステップS16)。一方、ユーザ位置と車両位置との間に遮蔽が生じている場合(ステップS15:No)、セキュリティユニット2はセキュリティレベルを高く設定する(ステップS17)。そして、処理は終了する。
【0039】
(第2実施例)
次に、セキュリティユニット3が実行するセキュリティ制御の第2実施例について説明する。第2実施例は、ユーザの端末装置20によりユーザの向きを検出できる場合に適用される。第2実施例では、第1実施例に係る制御に加えて、ユーザ位置と車両位置との間に遮蔽が生じていない場合であっても、ユーザの向きが車両の方を向いていない場合には、セキュリティレベルを高く設定する。
【0040】
図5は、第2実施例に係るセキュリティ制御を説明する図である。図5において建物などの地物は斜線で示されている。また、図中の実線の矢印70及び破線の矢印71は、ユーザの向いている方向を示しているものとする。図示のように、市街地のある位置に車両Vが停車している。ここで、端末装置20を所持しているユーザが矢印70の位置にいる場合、ユーザと車両Vとの間には遮蔽は生じていない。しかしながら、この場合、矢印70が示すように、ユーザは車両Vと反対方向を向いており、車両Vを目視することができない。よって、セキュリティユニット3は、セキュリティレベルを高く設定する。一方、破線の矢印71が示すように、ユーザが車両Vの方向を向いている場合には、ユーザは車両Vを目視することができる。よって、セキュリティユニット3はセキュリティレベルを低く設定する。このように、第2実施例では、実際のユーザの向きを考慮するので、実際の状況に応じてより適切にセキュリティレベルを設定することが可能となる。
【0041】
図6は、第2実施例に係るセキュリティ制御のフローチャートである。第2実施例に係るセキュリティ制御におけるステップS21〜S25は、図4に示す第1実施例に係るセキュリティ制御におけるステップS11〜S15と同様であるので、説明を省略する。但し、第2実施例においては、端末装置20がユーザの向きを検出しており、セキュリティユニット3はステップS24において、ユーザの向き情報を含むユーザ位置情報を端末装置20から取得する。
【0042】
ステップS25において、ユーザ位置と車両位置との間に地物による遮蔽が生じている場合(ステップS25:Yes)、セキュリティユニット3は、セキュリティレベルを高く設定し(ステップS28)、処理を終了する。一方、ユーザ位置と車両位置との間に遮蔽が生じていない場合(ステップS25:No)、セキュリティユニット3は、端末装置20から受信したユーザの向き情報に基づいて、ユーザが車両の方向を向いているか否かを判定する(ステップS26)。ユーザが車両の方向を向いている場合(ステップS26:Yes)、セキュリティユニット3はセキュリティレベルを低く設定する(ステップS27)。一方、ユーザが車両の方向を向いていない場合(ステップS26:No)、セキュリティユニット3はセキュリティレベルを高く設定する(ステップS28)。そして、処理は終了する。
【0043】
[他のシステム構成例]
図7は、セキュリティシステムの他の構成例を示す。図1と比較すると理解されるように、図7のシステム構成例は、セキュリティユニット3と端末装置20とが直接的に通信を行わない又は行えない場合に適用される。この場合、セキュリティユニット3は、サーバ10を経由してユーザ位置情報D4を取得する。即ち、端末装置20はユーザ位置情報D4をサーバ10へ送信し、サーバ10がユーザ位置情報D4をセキュリティユニット3に送信する。これ以外の点は、図1に示すシステム構成例と同様である。
【0044】
図8は、セキュリティシステムのさらに他の構成例を示す。図1と比較すると理解されるように、図8のシステム構成例は、車両にナビゲーション装置2が無い場合に適用される。この場合、車両位置情報D1は、端末装置20からセキュリティユニット3に提供される。即ち、車両が停止したとき、具体的には車両のアクセサリがオフになったときに、端末装置20が自身の現在位置情報を取得し、セキュリティユニット3に送信する。セキュリティユニット3は、このときに端末装置20から受信した現在位置情報を車両位置情報D1としてメモリなどに保存する。なお、ユーザが車両を離れた後のユーザ位置情報D4は、図1の場合と同様に、端末装置20から無線通信によりセキュリティユニット3へ送信される。
【0045】
また、地物情報D2はサーバ10に保存されており、セキュリティユニット3は、サーバ10から地物情報D2を取得する。具体的には、セキュリティユニット3は、車両が停止したときに端末装置20から取得した車両位置情報をサーバ10へ送信し、現在の車両位置周辺の一定範囲の地物情報D2をサーバ10から受信する。なお、車両位置周辺の一定範囲とは、例えば車両を中心として半径100m以内の範囲とすることができるが、この例に限定されるものではない。他の点は、図1に示すシステム構成例と同様である。
【0046】
[変形例]
以下、上記の実施例の変形例について説明する。なお、以下の変形例は、任意に組み合わせて適用することができる。
(変形例1)
上記の実施例では、予め用意され、ナビゲーション装置2やサーバ10に記憶されている地物情報を用いているが、その代わりに又はそれに加えて、以下の手法により地物情報を取得しても良い。例えば、車両に搭載されたカメラによって車両の周辺を撮影し、画像認識処理などを行うことにより、地物を特定しても良い。また、車両に搭載された3次元LiDar(Light Detection and Ranging)のセンサなどを用いて車両の周辺環境を検出して地物を特定しても良い。
【0047】
(変形例2)
図6に示す第2実施例のセキュリティ制御においては、ステップS25でユーザと車両との間に遮蔽が生じているか否かを判定した後、ステップS26でユーザが車両の方向を向いているか否かを判定しているが、ステップS26とS25の順序を入れ替えても良い。即ち、セキュリティユニット3は、ユーザが車両の方向を向いているか否かを先に判定し、車両の方向を向いていない場合には、セキュリティレベルを高く設定する。一方、ユーザが車両の方向を向いている場合には、セキュリティユニット3は、ユーザと車両との間に遮蔽が生じているか否かを判定し、遮蔽が生じている場合にはセキュリティレベルを高く設定し、遮蔽が生じていない場合はセキュリティレベルを低く設定する。
【0048】
(変形例3)
上記の実施例に加えて、車両とユーザの現在位置の高度情報を利用しても良い。具体的には、ナビゲーション装置2により車両の高度を取得するとともに、端末装置20によりユーザの高度を取得する。セキュリティユニット3は、ユーザと車両との間に地物による遮蔽が生じていない場合であっても、車両とユーザとの高度差が一定以上である場合には、ユーザが車両の状況を確認できる状態ではないと判断し、セキュリティレベルを高く設定する。典型的な例としては、ユーザが車両を駐車場に停車し、高台の展望台などに移動しているような状況が考えられる。
【0049】
(変形例4)
上記の実施例では、端末装置20を所持するユーザは車両の所有者であるとしているが、ユーザを車両の所有者ではなく、車両の所有者の関係者、例えばその親族、友人などとした場合にも実施例の制御を適用できる。この場合には、関係者の端末装置20のIDなどを予めセキュリティユニット3に登録しておき、ユーザの端末装置と同様に取り扱うこととすればよい。
【0050】
(変形例5)
図3に示す例のようにユーザが建物の内部にいても、建物の窓からユーザが車両を目視できる場合や、ユーザが建物の敷地内の中庭などにいて車両を目視できるような場合には、ユーザと車両との間に遮蔽が生じていないものとして、セキュリティレベルを低く設定してもよい。この場合の方法としては、例えば、車両に搭載されたカメラなどによりユーザの端末装置の方向を撮影し、画像認識により撮影画像中にユーザが存在すると判定できる場合に、ユーザと車両との間に遮蔽が生じていないと判定することができる。
【0051】
(変形例6)
上記の実施例では、ウェアラブル端末などの端末装置20に内蔵したセンサによりユーザの向きを検出しているが、その代わりに、車両に備えられたカメラからの撮影画像を画像認識することにより、ユーザの向きを検出することとしても良い。
【0052】
(変形例7)
上記の実施例では、建物や木々などの地物によりユーザと車両との間に遮蔽が生じているか否かを判定しているが、地物以外に、例えば人だかりができているとか、大型トラックが停車しているなど、一時的な障害物によりユーザと車両との間に遮蔽が生じている場合にセキュリティレベルを高く設定してもよい。この場合も、例えば車両に搭載されたカメラなどによりユーザの端末装置の方向を撮影し、撮影画像中におけるユーザの存在の有無に基づいて、遮蔽が生じているか否かを判定することができる。なお、上記の一時的な障害物も、本発明における「遮蔽物」の一例に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、移動体の制御装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 車載器
2 ナビゲーション装置
3 セキュリティユニット
10 サーバ
20 端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8