特許第6664440号(P6664440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6664440
(24)【登録日】2020年2月20日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】イオン性化合物を含むフォトレジスト
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20200302BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20200302BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20200302BHJP
   C07C 307/02 20060101ALN20200302BHJP
   C07C 309/04 20060101ALN20200302BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/039 601
   G03F7/20 501
   G03F7/20 521
   !C07C307/02
   !C07C309/04
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-130126(P2018-130126)
(22)【出願日】2018年7月9日
(62)【分割の表示】特願2013-221920(P2013-221920)の分割
【原出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2018-185531(P2018-185531A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2018年7月9日
(31)【優先権主張番号】13/665,232
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド・ポーラース
(72)【発明者】
【氏名】コン・リュー
(72)【発明者】
【氏名】チェン−バイ・スー
(72)【発明者】
【氏名】チュンイ・ウー
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−207886(JP,A)
【文献】 特開2003−005376(JP,A)
【文献】 特開2008−158339(JP,A)
【文献】 特開2012−168518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1種以上の樹脂と、
(b)1種以上の酸発生剤と、
(c)下記式(I)および/または式(II)の構造を含む化合物
を含むフォトレジスト
【化1】
(式(I)中、
、RおよびRは、同じであるかまたは異なっている、1〜8個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアルキルまたはヘテロアルキルであり、
は、8個以上の炭素原子を有する、置換されていてもよいアルキルもしくはヘテロアルキルであるか、またはR、R、RおよびRの2以上は一緒になって前記式に表される窒素カチオンを含有する複素環式環または芳香族複素環を形成しており;
Yは、対アニオンである)、
【化2】
(式(II)中、
Aは、アニオン部分であり、
Rは、少なくとも8個の炭素原子を含む、置換されていてもよいアルキルまたはヘテロアルキルであり、
Xは、第四級アンモニウムカチオンであり、並びに
式(I)中のYまたは式(II)中のA−Rが、スルファマート部分を含む)。
【請求項2】
が8〜30個の炭素原子を有する、請求項に記載のフォトレジスト。
【請求項3】
、RおよびRの1以上が、同じであるかまたは異なっている、1〜4個の炭素原子を含む、置換されていてもよいアルキルである、請求項1または2に記載のフォトレジスト。
【請求項4】
、RおよびRの少なくとも1つが1〜2個の炭素原子を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載のフォトレジスト。
【請求項5】
フォトレジストレリーフ像を形成する方法であって、
(a)請求項1〜のいずれか一項に記載のフォトレジスト組成物の塗膜層を基体上に適用する工程と、
(b)前記フォトレジスト塗膜層をパターン形成された活性化放射線に露光し、露光されたフォトレジスト層を現像してレリーフ像を提供する工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上の長鎖炭素基などの疎水性構成部分を有するイオン性化合物を含むフォトレジスト組成物に関する。本発明の好ましいフォトレジストは、光酸不安定基を含む樹脂;光酸発生剤および、フォトレジスト塗膜層の未露光領域からの望まれない光生成酸の拡散を減少させる働きをすることのできる、本明細書に開示されるイオン性窒素含有成分を含み得る。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは、像を基体に転写するための感光性の膜である。それらはネガまたはポジの像を形成する。フォトレジストを基体の上にコーティングした後、パターン形成されたフォトマスクを通して塗膜を紫外光などの活性化エネルギー源に露光して、フォトレジスト塗膜に潜像を形成する。フォトマスクは、活性化放射線に対して不透明な領域と透明な領域を有し、下にある基体に転写したい像を画定する。
【0003】
既知のフォトレジストは、多くの既存の商業的用途に十分な解像度および大きさを有するフィーチャを提供することができる。しかし、多くのその他の用途に関して、四分の一ミクロン未満(<0.25μm)の寸法の高解像度の像を提供することのできる新しいフォトレジストが必要とされている。
【0004】
機能特性の性能を改良するために、フォトレジスト組成物の構成を変える様々な試みがなされてきた。数ある中で、フォトレジスト組成物で用いるための多様な塩基性化合物がこれまでに報告されている。米国特許第7,479,361号;同第7,534,554号;および同第7,592,126号を参照されたい。また、米国特許出願公開第2011/0223535号および同第2012/0077120号も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,479,361号明細書
【特許文献2】米国特許第7,534,554号明細書
【特許文献3】米国特許第7,592,126号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0223535号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2012/0077120号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明は、樹脂、光酸発生剤化合物(光酸発生剤または「PAG」)、および、1またはそれより多い長鎖炭素基を含むイオン性成分もしくは化合物を含むフォトレジスト組成物を提供する。好ましくは、そのようなイオン性化合物は、フォトレジスト組成物に配合された場合に、放射線非感受性である、すなわち、該イオン性化合物は、イオン性化合物を含有するフォトレジストを活性化させる放射線(例えば、193nm)に露光している間ならびに露光後の熱処理の間も共有結合切断を受けない。
【0007】
好ましいイオン性化合物は、フォトレジスト組成物塗膜層のリソグラフィ処理の間に光酸拡散制御剤として機能することができる。そのような拡散の制御は、イオン成分を含有しないその他の点で同等のレジストのレリーフ像と比較して、塩基性イオン成分を含むレジストの現像されたレリーフ像の解像度が改善されていることから評価して、適切である可能性がある。
【0008】
好ましいイオン性化合物は、少なくとも1つの伸長した炭素含有部分、例えば、8個以上の炭素原子、好ましくは10個以上の炭素原子、さらにより好ましくは12個以上の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝鎖基または環式基を含む。多くの態様では、イオン性化合物は、たとえその線状鎖がさらなる炭素もしくはヘテロ原子を含有する1以上の環式もしくは非環式の分枝または置換基を有するとしても、少なくとも8個の炭素もしくはヘテロ(N、OまたはS)原子を線状鎖で有する少なくとも1つの置換基を含むことが好ましい。
【0009】
特定の態様では、イオン性化合物は、比較的短い長さの1以上の置換基、例えば、1個以上8個以下の炭素原子、特に1個以上6個以下の炭素原子、または1個以上4個以下の炭素原子またはさらに1、2または3個の炭素原子を有する1以上の部分を含み得る。
【0010】
本発明のフォトレジストは、ポジ型かまたはネガ型のどちらであってもよい。好ましい態様では、本発明のフォトレジストは、短波長像形成用途、例えば193nmでの像形成に使用される。
【0011】
本発明の特に好ましいフォトレジストは、液浸リソグラフィ用途で使用することができる。
【0012】
本発明のイオン性化合物をフォトレジスト組成物(化学増幅型フォトレジスト組成物を含む)中で使用することにより、レジストのレリーフ像(例えば、微細ライン)の解像度を大幅に高めることができることを本発明者らは見出した。特に、本明細書に開示されるイオン性化合物は、同等のフォトレジスト(非イオン性化合物ならびに伸長した炭素鎖置換基を含有しないイオン性化合物を含む、異なる塩基性添加剤を代わりに含有するフォトレジストとそれ以外は同一である)の結果と比較して、大幅に向上したリソグラフィ結果を与え得ることを本発明者らは見出した。例として、以下の比較データを参照されたい。
【0013】
また、本発明のフォトレジスト組成物のレリーフ像(50nm未満または20nm未満の寸法のパターン形成されたラインを含む)を形成するための方法も提供される。本発明のフォトレジスト組成物をその上に被覆したマイクロエレクトロニクスウエハなどの基体も提供される。その他の態様は下に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
理論に縛られるものではないが、本発明の好ましいイオン性化合物は、リソグラフィ処理の間にレジストの光酸発生剤成分から生成した酸の界面活性クエンチャーとして機能することができると考えられる。特に、好ましい態様では、リソグラフィ処理の間に、イオン性化合物はレジスト−空気界面に移動することができ、そこでイオン性化合物は像形成されたレジスト塗膜層のそのような上部領域の光生成酸を効果的に中和することができ、それによって上面の浸食を少なくする。それは次に、現像されたレジストレリーフ像のラインエッジラフネスを低下させることができる。
【0015】
また、本明細書に開示される好ましいイオン性化合物が、同等の分子量の非イオン性塩基性化合物と比較して揮発性の低下を示すことができることを本発明者らは見出した。このことは有利であり、リソグラフィ処理、特に露光後のベーク段階の間にレジスト塗膜層からのイオン性物質の蒸発を最小化することができる。
【0016】
好ましい態様では、(a)1種以上の樹脂;(b)1種以上の酸発生剤および(c)次式(I)および/または(II):の1種以上の化合物を含むフォトレジスト組成物が提供される。
【0017】
【化1】

式(I)中で:
、RおよびRは、同じであるかまたは異なる非水素置換基、例えば1〜8個の炭素原子を有する置換されていてもよいアルキルまたは1〜8個の炭素原子を有する置換されていてもよいヘテロアルキルなどであり、かつ、好ましくはR、RおよびRの1以上は、1、2、3または4個の炭素原子を有してよく;
は、置換されていてもよい、1〜18個、8〜18個または12〜18個またはそれより多い炭素原子を有するアルキルまたは1〜18個またはそれより多い炭素原子を有するヘテロアルキルであり;
あるいは、R、R、RおよびRの2以上は一緒になって、前記式に表される窒素原子(N)を含有する複素環式環または芳香族複素環を形成し、好ましくはかかる複素環式環または芳香族複素環(所望によりO、N、またはSから選択される1または2個のさらなる環ヘテロ原子を含むことができる)は、置換されていてもよい、1〜18個またはそれより多い炭素原子(例えば、12〜18個の炭素原子)を有するアルキルまたは1〜18個またはそれより多い炭素原子(例えば、8〜18個もしくは12〜18個の炭素原子)を有するヘテロアルキルの環置換基を含み;
Yは、有機もしくは無機アニオンであり;
【化2】

式(II)中で、
Aは、SOなどのアニオン部分であり;
Rは、少なくとも8個(例えば、8〜18個)またはそれより多い炭素原子を含む置換されていてもよいアルキル(直鎖、分枝鎖、環式、または架橋アルキルを含む)あるいは、少なくとも8個(例えば、8〜18個)またはそれより多い炭素原子を含む置換されていてもよいヘテロアルキルであり;かつ
Xは、第四級アンモニウムカチオンなどのカチオンである。
【0018】
式(I)中の置換基Rおよび式(II)中のRは、8〜30個またはそれより多い炭素を適宜有することができる。特定の好ましい態様では、式(I)中の置換基Rおよび式(II)中のRは、10個以上の炭素原子、または12個以上の炭素原子、例えば、8〜18個または12〜18個の炭素原子を適宜含有することができる。多くのレジストに関して、式(I)中の置換基Rおよび式(II)中のRは、30個以下の炭素原子を適宜有することができる。
【0019】
上の式(I)において、R、R、RおよびRの2以上が一緒になって、前記式に表される窒素原子(N)を含有する複素環式環または芳香族複素環を形成する場合、形成された環構造は、1〜3個の縮合環かあるいは共有結合環を適宜含むことができるが、単一の環を含有する複素環式環または芳香族複素環構造が好ましい場合が多い。R、R、RおよびRの2以上が一緒になって、前記式に表される窒素原子(N)を含有する複素環式環または芳香族複素環を形成する場合、適切には、かかる複素環式環または芳香族複素環構造は、5〜24個の環原子、より一般に5〜8個、10、12、16または18個の環原子、および前記式に表される窒素原子(N)に加えて1、2または3個のヘテロ(N、Oおよび/またはS)環原子を、より好ましくは前記式に表される窒素原子(N)に加えて1または2個のヘテロ(N、Oおよび/またはS)環原子を、特定の態様では、さらにより好ましくは前記式に表される窒素原子(N)に加えて1個のヘテロ(N、Oおよび/またはS、特にN)環原子)を含むことができる。
【0020】
式(I)において、アニオンYは、適切には、有機であっても無機であってもよい。特定の態様では、スルファマート部分またはスルホネート部分を含む基などの有機対アニオンが好ましい。式(I)のある種の実施形態では、Yは、C−C18アルキル基(直鎖、分枝鎖、環式、または架橋アルキルを含む)、またはC12−C18アルキル基を含む。ある種の実施形態では、式(II)の化合物において、部分A−Rは、スルファマート部分またはスルホネート部分を含む。ある種の実施形態では、(式(I)の)アニオン性部分Yまたは(式(II)の)A−Rは、−2〜5の間のpKaを有する。
【0021】
述べたように、式(I)において、R、R、RおよびRの2以上は、一緒になって前記式に表される窒素原子(N)を含有する脂環式環または芳香環を形成することができる。適した環構造は、5、6個またはそれより多い環員を適宜含むことができ、好ましくはそのような脂環式環または芳香環は、置換されていてもよい8個以上の炭素原子を有するアルキルまたは8個以上の炭素原子を有するヘテロアルキルの環置換基を含む。例として、かかる環構造を含む式(I)の化合物としては、次の式(III)または(IV)に相当する化合物が挙げられる。
【0022】
【化3】

【化4】

式(III)において、Rおよび各々のRは、各々独立に、非水素置換基、例えば置換されていてもよい、1〜30個またはそれより多い炭素原子を有するアルキルまたは1〜30個またはそれより多い炭素原子を有するヘテロアルキルなどであり、Rおよび各々のRの少なくとも1つは、置換されていてもよい、1〜18個またはそれより多い炭素原子(または8〜18個もしくは12〜18個の炭素原子)を有するアルキルまたは1〜18個またはそれより多い炭素原子(または8〜18個もしくは12〜18個の炭素原子)を有するヘテロアルキルであり;かつ
mは、0(この場合R基は存在しない)〜5の整数であり、mは、一般に、0、1、2、3または4であり;かつ
式(IV)において、R、Rおよび各々のRは、各々独立に、置換されていてもよい、1〜30個またはそれより多い炭素原子(または8〜18個もしくは12〜18個の炭素原子)を有するアルキルまたは1〜30個またはそれより多い炭素原子(または8〜18個もしくは12〜18個の炭素原子)を有するヘテロアルキルであり、R、Rおよび各々のRの少なくとも1つは、置換されていてもよい、1〜18個またはそれより多い炭素原子(または8〜18個もしくは12〜18個の炭素原子)を有するアルキルまたは1〜18個またはそれより多い炭素原子(または8〜18個もしくは12〜18個の炭素原子)を有するヘテロアルキルであり;かつ
nは、0(この場合R基は存在しない)〜8の整数であり、nは、一般に、0、1、2、3または4である。
【0023】
上に述べたように、上記式の様々な置換基(すなわち、式(I)のR、R、RおよびR;式(II)のR;式(III)のRおよびR;ならびに式(IV)のR、RおよびR)は、ヘテロアルキルであってよい。適したヘテロアルキル基としては、アルコキシ基、例えば1以上の酸素結合および1〜8個またはそれより多い炭素原子を有する部分など;アルキルチオ基、例えば1以上のチオエーテル結合および1〜8個またはそれより多い炭素原子を有する部分など;アルキルスルフィニル基、例えば、1以上のスルホキシド(SO)基および1〜8個またはそれより多い炭素原子を有する部分など;アルキルスルホニル基、例えば1〜8個またはそれより多い炭素原子を有する部分など;ならびにアミノアルキル基、例えば1またはそれより多い第一級、第二級および/または第三級アミン基、および1〜8個またはそれより多い炭素原子を有する部分などが挙げられる。第二級および第三級アミン基は、通常、第一級アミン部分よりも好ましい。
【0024】
述べたように、上記式の様々な置換基(すなわち、式(I)のR、R、RおよびR;式(II)のR;式(III)のRおよびR;ならびに式(IV)のR、RおよびR)は、場合によって置換されている部分であってよい。置換されている部分は、1またはそれより多い利用可能な部分で、例えば、カルボキシル(−COH)、カルボキシ(C−C30)アルキル、(C−C30)アルコキシ、スルホニル、スルホン酸、スルホン酸エステル、シアノ、ハロ、およびケトによって適切に置換されている。好ましい置換基は、カルボキシル、カルボキシ(C−C10)アルキル、(C−C10)アルコキシ、スルホニル、スルホン酸、スルホン酸エステル、シアノ、ハロ、およびケト;より好ましくは、カルボキシル、カルボキシ(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシ、スルホニル、スルホン酸、スルホン酸エステル、シアノ、ハロ、およびケトである。好ましいエステル基(カルボキシアルキル)は、カルボキシ(C−C)アルキルである。好ましいアルコキシ基は、(C−C)アルコキシ、より好ましくは(C−C)アルコキシである。「置換されている」とは、例えば、イオン性化合物の炭素原子上の1以上の水素が、上記置換基の1以上で置き換えられていることを意味する。そのような置換基の混合を用いてもよい。そのような置換基が存在することにより、所望の溶解度をイオン性化合物にもたらすことができる、あるいはそのような置換基を用いてイオン性化合物のクエンチング能を適合させることができる。
【0025】
また、好ましいイオン性化合物は、その他の部分、例えばハロ(F、Cl、Br、および/またはI、特にF);ヒドロキシル;シアノ、カルボキシル(−COOH)、エステル(例えばRがC1−12アルキルである−COOR)なども含むことができる。特定の態様では、極性官能基は、イオン性化合物上に比較的少量で、例えば、イオン性化合物の総分子量の20、15、10または5パーセント未満で存在し、それは、シアノ、ヒドロキシル、カルボキシ、および/またはエステルの極性官能基によって構成されるであろう。
【0026】
ある種の実施形態では、イオン性化合物(例えば、式(I)または式(II)の化合物)は、以下の群からなる群から選択されるカチオン性部分:
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

および
【化9】

上式で、nは、12〜18である;
並びに、以下から選択されるアニオン性部分:
【化10】

【化11】

および
【化12】

上式で、
10は、線状C−C18アルキル基(例えば、C−C18アルキルまたはC12−C18アルキル)であるか、あるいはシクロヘキシル、アダマンチル、ノルボルニル、またはカンホリル基であり;
11およびR12は、各々独立に、線状C−C18アルキル基(例えば、C−C18アルキルまたはC12−C18アルキル)であるか、あるいはシクロヘキシル、アダマンチル、ノルボルニル、またはカンホリル基であり;かつ
13は、線状C−C18アルキル基(例えば、C−C18アルキルまたはC12−C18アルキル)であるか、あるいはシクロヘキシル、アダマンチル、ノルボルニル、またはカンホリル基である;
を有する化合物である。
【0027】
フォトレジストでの使用に好ましい本発明のイオン性化合物は、ポリマー系または非ポリマー系であってよく、非ポリマー系イオン性化合物は多くの用途に好ましい。好ましいイオン性化合物は、比較的低分子量、例えば、3000以下、より好ましくは≦2500、≦2000、≦1500、≦1000、≦800またはさらにより好ましくは≦500の分子量を有する。
【0028】
本明細書に開示されるフォトレジスト組成物で使用するために特に好ましいイオン性化合物としては、以下が挙げられる:
ヘキサデシル(トリ(C1−8アルキル)アンモニウム塩;
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムシクロヘキシルスルファマート(HDTMA−CHSFAM);
テトラブチルアンモニウムシクロヘキシルスルファマート(TBA−CHSFAM)
(テトラC1−8アルキル)アンモニウム(C8−30アルキル)スルホネート;
テトラブチルアンモニウム10−カンファースルホネート(TBA−CSA);および
テトラブチルアンモニウム1−ヘキサデシルスルホネート(TBA−HDSA)。
【0029】
本発明で有用なイオン性化合物は、通常市販されているか、または容易に合成することができる。
【0030】
好ましくは、本発明のイオン性化合物は、ポジ型またはネガ型化学増幅型フォトレジスト、すなわち、光酸促進架橋反応を受けてレジストの塗膜層の露光領域を未露光領域よりも現像液への可溶性を低くするネガ型レジスト組成物、および、1またはそれより多い組成物成分の酸不安定基の光酸促進脱保護反応を受けてレジストの塗膜層の露光領域を未露光領域よりも水性現像液への可溶性を高くするポジ型レジスト組成物中で使用される。エステルのカルボキシル酸素に共有結合した第三級非環式アルキル炭素または第三級脂環式炭素を含有するエステル基が、通常、本発明のフォトレジストに用いられる樹脂の好ましい光酸不安定基である。アセタール基も適した光酸不安定基である。
【0031】
本発明のフォトレジストは、一般に、樹脂結合剤(ポリマー)、光活性成分、例えば1種以上の光酸発生剤など、および本明細書に開示されるイオン性化合物を含む。好ましくは、樹脂結合剤は、アルカリ性水性現像性をフォトレジスト組成物に付与する官能基を有する。例えば、好ましいものは、極性官能基、例えばヒドロキシルまたはカルボキシレートを含む樹脂結合剤である。好ましくは、樹脂結合剤は、レジストをアルカリ水溶液で現像可能にするのに十分な量でレジスト組成物中に使用される。
【0032】
本発明のフォトレジストの好ましいイメージング波長としては、300nm未満の波長、例えば248nm、より好ましくは200nm未満の波長、例えば193nmおよびEUVが挙げられる。
【0033】
特に本発明の好ましいフォトレジストは、液浸リソグラフィ用途で使用することができる。例えば、好ましい液浸リソグラフィフォトレジストおよび方法についてのローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズに対する米国特許第7968268号を参照されたい。液浸適用における使用に好ましいフォトレジストは、光酸不安定基を有する主たる樹脂とは離れていて(共有結合していない)かつ異なる樹脂(フッ素化されていてもよく、かつ/または光酸不安定基を有していてもよい)を含むことができる。従って、本発明には、好ましい態様において、以下を含むフォトレジストが含まれる:1)光酸不安定基を含む第1の樹脂;2)1種以上の光酸発生剤化合物;3)第1の樹脂とは離れていてかつ異なる第2の樹脂(第2の樹脂はフッ素化されていてもよく、かつ/または光酸−酸性基を有していてもよい);および4)本明細書に開示される1種以上のイオン性化合物。
【0034】
本発明の特に好ましいフォトレジストは、像形成有効量の1種以上のPAGおよび本明細書に開示される1種以上のイオン性化合物、ならびに以下の群から選択される樹脂を含有する。
【0035】
1)248nmでの像形成に特に適した化学増幅ポジ型レジストを提供することのできる酸不安定基を含有するフェノール樹脂。この種の特に好ましい樹脂としては、i)ビニルフェノールおよび(メタ)アクリル酸アルキルの重合単位を含有するポリマー(ここで、重合(メタ)アクリル酸アルキル単位は光酸の存在下でデブロッキング反応を受け得る)が挙げられる。光酸誘起デブロッキング反応を受け得る例となる(メタ)アクリル酸アルキルとしては、例えば、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル、および光酸誘起反応を受け得るその他の非環式アルキルおよび脂環式(メタ)アクリレート、例えば参照により本明細書に援用される米国特許第6,042,997号および同第5,492,793号中のポリマーなどが挙げられる;ii)ビニルフェノール、置換されていてもよいビニルフェニル(例えば、スチレン)(ヒドロキシまたはカルボキシ環置換基を含有しない)と、(メタ)アクリル酸アルキル、例えば上記ポリマーi)で記載されるそれらのデブロッキング基などとの重合単位を含有するポリマー、例えば参照により本明細書に援用される米国特許第6,042,997号に記載のポリマーなど;ならびにiii)光酸と反応するアセタールまたはケタール部分を含む繰り返し単位、および所望によりフェニルまたはフェノール性基などの芳香族繰り返し単位を含有するポリマー;
【0036】
2)200nm未満の波長、例えば193nmでの像形成に特に適した化学増幅ポジ型レジストを提供することのできるフェニル基を実質的にまたは完全に含まない樹脂。この種の特に好ましい樹脂としては、i)非芳香族環式オレフィン(環内二重結合)例えば置換されていてもよいノルボルネンなどの重合単位を含有するポリマー、例えば米国特許第5,843,624号に記載されるポリマーなど;ii)(メタ)アクリル酸アルキル単位、例えば、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル、およびその他の非環式アルキルおよび脂環式(メタ)アクリレートなどを含有するポリマー;かかるポリマーは米国特許第6,057,083号に記載されている。この種類のポリマーは、好ましい態様では、ヒドロキシナフチルなどの特定の芳香族基を番有することができる。
【0037】
200nm未満、例えば193nmで像形成されるフォトレジストで使用するために好ましい樹脂は、以下の一般式(I)、(II)および(III)のうちの2種以上の単位を含む。
【0038】
【化13】

【化14】

【化15】

上式で:R、RおよびRは、各々置換されていてもよい(C−C30)アルキル基であり;R、RおよびRは、連結して環を形成していてもよく;Rは、(C−C)アルキレン基であり;Lは、ラクトン基であり;かつ、R、RおよびRは、各々、水素、フッ素、(C−C)アルキルおよび(C−C)フルオロアルキルである。
【0039】
一般式(I)の単位には、活性化放射線および熱処理に曝露されると光酸促進脱保護反応を受ける酸不安定基が含まれる。このことは、マトリックスポリマーの極性を切り替え、ポリマーおよびフォトレジスト組成物の有機現像液中の溶解度の変化をもたらすことを可能にする。式(I)の単位を形成するのに適したモノマーとしては、例えば、以下が挙げられる。
【0040】
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】
【0041】
一般式(II)の単位には、マトリックスポリマーおよびフォトレジスト組成物の溶解速度を制御するために有効なラクトン部分が含まれる。一般式(II)の単位を形成するのに適したモノマーとしては、例えば、以下が挙げられる。
【0042】
【化20】

【化21】
【0043】
式(III)の単位は、極性基を提供する。極性基は樹脂およびフォトレジスト組成物のエッチング耐性を高め、樹脂およびフォトレジスト組成物の溶解速度を制御するさらなる手段を提供する。式(III)の単位を形成するためのモノマーとしてはメタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(HAMA)および好ましくはアクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(HADA)が挙げられる。
【0044】
樹脂は、最初の単位とは異なる、一般式(I)、(II)および/または(III)の1種以上のさらなる単位を含むことができる。さらなるかかる単位が樹脂に存在する場合、それは、好ましくは、式(I)のさらなる脱離基含有単位および/または式(II)のラクトン含有単位が含まれる。
【0045】
上記の重合単位に加えて、樹脂は、一般式(I)、(II)または(III)のものではない1種以上のさらなる単位を含むことができる。例えば、特に適したラクトン基含有単位は、次の一般式(IV)のものである:
【化22】

上式で:Lは、ラクトン基であり;一般式(IV)の単位は一般式(II)の単位とは異なる。以下の例となるモノマーは、一般式(IV)のさらなるラクトン単位を形成する際に使用するのに適している。
【化23】

【化24】
【0046】
好ましくは、一般式(II)の単位中のLおよび一般式(IV)の単位中のLは、独立に、以下のラクトン基から選択される:
【化25】
【0047】
一般に、樹脂のさらなる単位には、一般式(I)、(II)または(III)の単位を形成するために使用されたモノマーに用いられたものと同じまたは類似する重合性基が含まれるが、それには、同じポリマー主鎖中に、その他の異なる重合可能な基、例えばビニルの重合単位または非芳香族環式オレフィン(環内二重結合)を含有する基、例えば置換されていてもよいノルボルネンなど、が含まれてよい。200nm未満の波長、例えば193nmなどでの像形成に関して、樹脂は一般にフェニル、ベンジルまたはその他の芳香族基(そこでかかる基は放射線を高度に吸収する)を実質的に(つまり15モル%未満しか)含まない。ポリマーに適したさらなるモノマー単位としては、例えば、以下の1以上が挙げられる:エーテル、ラクトンまたはエステルを含有するモノマー単位、例えば2−メチル−アクリル酸テトラヒドロ−フラン−3−イルエステル、2−メチル−アクリル酸2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルエステル、2−メチル−アクリル酸5−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イルエステル、2−メチル−アクリル酸3−オキソ−4,10−ジオキサ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルエステル、2−メチル−アクリル酸3−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルエステル、2−メチル−アクリル酸5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノン−2−イルオキシカルボニルメチルエステル、アクリル酸3−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−イルエステル、2−メチル−アクリル酸5−オキソ−4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノン−2−イルエステル、および2−メチル−アクリル酸テトラヒドロ−フラン−3−イルエステルなど;アルコールおよびフッ素化アルコールなどの極性基を有するモノマー単位、例えば2−メチル−アクリル酸3−ヒドロキシ−アダマンタン−1−イルエステル、2−メチル−アクリル酸2−ヒドロキシ−エチルエステル、6−ビニル−ナフタレン−2−オール、2−メチル−アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−アダマンタン−1−イルエステル、2−メチル−アクリル酸6−(3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−トリフルオロメチル−プロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−イル、および2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イルメチル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−プロパン−2−オールなど;酸不安定部分を有するモノマー単位、例えば、ポリマーのエステルのカルボキシル酸素に共有結合している、t−ブチルなどの第三級非環式アルキル炭素、またはメチルアダマンチルまたはエチルフェンキルなどの第三級脂環式炭素を含有するエステル基、2−メチル−アクリル酸2−(1−エトキシ−エトキシ)−エチルエステル、2−メチル−アクリル酸2−エトキシメトキシ−エチルエステル、2−メチル−アクリル酸2−メトキシメトキシ−エチルエステル、2−(1−エトキシ−エトキシ)−6−ビニル−ナフタレン、2−エトキシメトキシ−6−ビニル−ナフタレン、および2−メトキシメトキシ−6−ビニル−ナフタレン。さらなる単位を用いる場合は、それは一般に10〜30モル%の量でポリマー中に存在する。
【0048】
例となる好ましい樹脂としては、例えば、以下が挙げられる:
【化26】

(式中、0.3<a<0.7;0.3<b<0.6;かつ0.1<c<0.3);
【化27】

(式中:0.3<a<0.7;0.1<b<0.4;0.1<c<0.4、かつ0.1<d<0.3)。
【0049】
2種以上の樹脂のブレンドを本発明の組成物に使用することができる。樹脂は、レジスト組成物中に所望の厚さの均一な塗膜を得るのに十分な量で存在する。一般に、樹脂は、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて70〜95重量%の量で組成物中に存在する。有機現像液中の樹脂の溶解特性が改善されたために、樹脂に有用な分子量は低い値に限定されず、非常に広い範囲を網羅する。例えば、ポリマーの重量平均分子量Mは、一般に100,000未満、例えば、5000〜50,000、より一般に6000〜30,000または7,000〜25,000である。
【0050】
樹脂を形成する際に使用される、適したモノマーは、市販され、かつ/または公知の方法を用いて合成することができる。樹脂は、公知の方法およびその他の市販の出発物質を用いて、該モノマーを使用して当業者が容易に合成することができる。
【0051】
また、本発明のフォトレジストは、単一のPAGまたは異なるPAGの混合物、一般に、2または3種の異なるPAGの混合物、より一般に、合計2種の異なるPAGからなる混合物を含むことができる。フォトレジスト組成物は、活性化放射線への露光の際に組成物の塗膜層の中に潜像を形成するのに十分な量で用いられる光酸発生剤(PAG)を含む。例えば、光酸発生剤は、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて、1〜20重量%の量で適切に存在する。一般に、非化学増幅型材料と比較して、より少量のPAGが化学増幅レジストに適している。
【0052】
適したPAGは、化学増幅型フォトレジストの分野で公知であり、それには、例えば:オニウム塩、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホナート;ニトロベンジル誘導体、例えば、2−ニトロベンジル−p−トルエンスルホナート、2,6−ジニトロベンジル−p−トルエンスルホナート、および2,4−ジニトロベンジル−p−トルエンスルホナート;スルホン酸エステル、例えば、1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、および1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン;ジアゾメタン誘導体、例えば、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン;グリオキシム誘導体、例えば、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、およびビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム;N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル;ならびにハロゲン含有トリアジン化合物、例えば、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、および2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンが挙げられる。
【0053】
本発明のフォトレジストは、本明細書に開示される1種以上のイオン性化合物を、広範囲の量で、例えば、PAGの重量に基づいて0.005〜15重量%など、好ましくは0.01〜15重量%、さらにより好ましくは0.01〜10重量%で含む。添加されるイオン性化合物は、PAGに対して0.01、0.05、0.1、0.02、0.3、0.4、0.5または1から10または15重量%までの量で、さらにより一般に、0.01、0.05、0.1、0.02、0.3、0.4、0.5または1から5、6、7、8、9または10重量パーセントまでの量で適切に使用される。
【0054】
本発明のフォトレジスト組成物は、一般に溶剤を含む。適した溶剤としては、例えば:グリコールエーテル、例えば2−メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;乳酸エステル、例えば乳酸メチルおよび乳酸エチル;プロピオン酸エステル、例えばプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、エチルエトキシプロピオネートおよびメチル−2−ヒドロキシイソブチラート;セロソルブエステル、例えばメチルセロソルブアセテート;芳香族炭化水素、例えばトルエンおよびキシレン;ならびにケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよび2−ヘプタノンが挙げられる。溶剤のブレンド、例えば上記の溶剤の2、3またはそれより多い種類のブレンドも適している。溶剤は、一般に、組成物中に、フォトレジスト組成物の総重量に基づいて90〜99重量%、より一般に95〜98重量%の量で存在する。
【0055】
フォトレジスト組成物には、その他の随意の材料を含めることもできる。例えば、組成物には、1種以上の化学線色素および造影剤、ストリエーション防止剤、可塑剤、速度向上剤、増感剤および同類のものが含まれてよい。そのような随意の添加剤は、使用する場合、一般に、フォトレジスト組成物の全固形分に基づいて0.1〜10重量%などの少量で組成物中に存在する。
【0056】
本発明のフォトレジストは、通常、公知の手順に従って調製される。例えば、本発明のフォトレジスト組成物は、フォトレジストの成分を適した溶剤に溶解することによって調製することができる。本発明のフォトレジストレジストの樹脂結合剤成分は、一般に、レジストの露光された塗膜層をアルカリ水溶液などで現像可能にするのに十分な量でレジスト組成物中に使用される。とりわけ、樹脂結合剤は、レジストの全固形分の50〜90重量パーセントを構成する。光活性成分は、レジストの塗膜層中の潜像の形成を可能にするのに十分な量で存在すべきである。とりわけ、光活性成分は、フォトレジストの全固形分の1〜40重量%の量で適切に存在する。一般に、より少ない量の光活性成分が化学増幅レジストに適していることになる。
【0057】
本発明のフォトレジスト組成物の所望の全固形分量は、組成物中の特定のポリマー、最終層の厚さおよび露光波長などの要因によって決まる。一般に、フォトレジストの固形分量は、フォトレジスト組成物の総重量に基づいて、1〜10重量%、より一般に2〜5重量%で変動する。
【0058】
本発明の好ましいネガ型組成物は、酸に触れると硬化、架橋または固化する材料、および本発明の光活性成分の混合物を含む。特に好ましいネガ型組成物は、フェノール樹脂などの樹脂結合剤、架橋剤成分および本発明の光活性成分を含む。かかる組成物およびその使用は、欧州特許出願公開第0164248号および同第0232972号に、さらにサッカレーらに対する米国特許第5,128,232号に開示されている。樹脂結合剤成分として使用するのに好ましいフェノール樹脂としては、上に考察されるものなどのノボラックおよびポリ(ビニルフェノール)が挙げられる。好ましい架橋剤としては、アミン系材料が挙げられ、それにはメラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミン系材料および尿素系材料がある。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂は、通常、最も好ましい。かかる架橋剤は、市販されており、例えば、メラミン樹脂がアメリカン・サイナアミッド社よりCymel300、301および303の商標名で販売されている。グリコールウリル樹脂は、アメリカン・サイナアミッド社よりCymel1170、1171、1172の商標名で販売されており、尿素系樹脂は、Beetle60、65および80の商標名で販売されており、ベンゾグアナミン樹脂は、Cymel1123および1125の商標名で販売されている。
【0059】
本発明のフォトレジストは、公知の手順に従って使用することができる。本発明のフォトレジストはドライフィルムとして適用されるが、好ましくはそれらを基体に液状コーティング組成物として塗布し、加熱により乾燥させて好ましくは塗膜層がタックフリーとなるまで溶剤を除去し、フォトマスクを通して活性化放射線に露光させ、所望により露光後ベークを行ってレジスト塗膜層の露光領域と非露光領域との間の溶解度差を作り出すかまたは増強し、その後好ましくは水性アルカリ現像液で現像してレリーフ像を形成する。本発明のレジストを適用して適切に加工する基体は、フォトレジストを含むプロセスにおいて使用されるいずれの基体、例えばマイクロエレクトロニクスウエハなどであってよい。例えば、基体は、シリコン、二酸化シリコンまたはアルミニウム−酸化アルミニウムマイクロエレクトロニクスウエハであってよい。ガリウムヒ素、セラミック、石英または銅基体も用いてよい。液晶ディスプレイおよびその他のフラットパネルディスプレイ用途に使用される基体、例えば、ガラス基体、酸化インジウムスズ被覆基体および同類のものも適切に用いられる。液状コーティングレジスト組成物は、任意の標準的な手段、例えばスピニング、浸漬被覆またはローラー塗装などによって塗布することができる。
【0060】
露光エネルギーは、放射線感受性の系の光活性成分を効果的に活性化して、レジスト塗膜層にパターン形成された像を作り出すのに十分であるべきである。適した露光エネルギーは、一般に1〜300mJ/cmの範囲である。上述のように、好ましい露光波長は、200nm未満、例えば193nmなどが含まれる。
【0061】
フォトレジスト層(存在する場合、上塗りされたバリア組成物層を含む)は、好ましくは液浸リソグラフィシステム、すなわち、露光ツール(特に投影レンズ)とフォトレジスト被覆基体との間の空間が浸漬液、例えば水、または屈折率の向上した流体を提供し得る硫酸セシウムなどの1もしくはそれより多い添加剤と混合した水などで占有されているシステムにおいて露光される。好ましくは、浸漬液(例えば、水)は気泡を避けるために処理されている、例えばナノバブルを回避するために水が脱気され得る。
【0062】
本明細書において「液浸露光」またはその他の同様の用語は、露光ツールと被覆されたフォトレジスト組成物層との間に挿入された流体層(例えば、水、または水と添加剤)を用いて露光が行われることを示す。
【0063】
露光後、熱処理が一般に化学増幅型フォトレジストに用いられる。適した露光後ベーク温度は、約50℃以上、より具体的には50〜140℃である。酸で硬化するネガ型レジストには、所望の場合には、現像後ベークを100〜150℃の温度で数分間またはそれより多い間用いて現像の際に形成されたレリーフ像をさらに硬化させることができる。現像および何らかの現像後硬化の後、現像により露出した基体表面を次に選択的に加工することができる、例えば当技術分野で公知の手順に従ってフォトレジストを除いて露出した基体領域を化学的エッチングまたはめっきすることができる。適したエッチング剤としては、フッ化水素酸エッチング液、および酸素プラズマエッチングなどのブラズマガスエッチング液が挙げられる。
【0064】
また、本発明は、四分の一μm未満の寸法、例えば0.2μmまたは0.1μm以下の寸法などの、高解像度のパターン形成されたフォトレジスト像(例えば、本質的に垂直な側壁を有するパターン形成されたライン)を形成する方法を含む、本発明のフォトレジストのレリーフ像を形成するための方法を提供する。
【0065】
本発明はさらに、本発明のフォトレジストおよびレリーフ像がその上に被覆されたマイクロエレクトロニクスウエハまたはフラットパネルディスプレイ基体などの基体を含む製造品を提供する。
また本発明には以下の態様[1]〜[8]が含まれる。
[1]
(a)1種以上の樹脂と、
(b)1種以上の酸発生剤と、
(c)下記式(I)および/または式(II)の構造を含む化合物
を含むフォトレジスト
【化27-1】
(式(I)中、
、RおよびRは、同じであるかまたは異なっている、1〜8個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアルキルまたはヘテロアルキルであり、
は、8個以上の炭素原子を有する、置換されていてもよいアルキルもしくはヘテロアルキルであるか、またはR、R、RおよびRの2以上は一緒になって前記式に表される窒素カチオンを含有する複素環式環または芳香族複素環を形成しており;
Yは、対アニオンである)、
【化27-2】
(式(II)中、
Aは、アニオン部分であり、
Rは、少なくとも8個の炭素原子を含む、置換されていてもよいアルキルまたはヘテロアルキルであり、
Xは、第四級アンモニウムカチオンであり、並びに
式(I)中のYまたは式(II)中のA−Rが、スルファマート部分を含む)。
[2]
(a)1種以上の樹脂と、
(b)1種以上の酸発生剤と、
(c)下記式(I)の構造を含む化合物
を含むフォトレジスト
【化27-3】
(式(I)中、
、RおよびRは、同じであるかまたは異なっている、1〜8個の炭素原子を有する、置換されていてもよいアルキルまたはヘテロアルキルであり、
は、8個以上の炭素原子を有する、置換されていてもよいアルキルもしくはヘテロアルキルであるか、またはR、R、RおよびRの2以上は一緒になって前記式に表される窒素カチオンを含有する複素環式環または芳香族複素環を形成しており;
Yは、C12−C18アルキル基を含む対スルホネートアニオンである)、
[3]
が8〜30個の炭素原子を有する、前記[1]または[2]に記載のフォトレジスト。
[4]
、RおよびRの1以上が、同じであるかまたは異なっている、1〜4個の炭素原子を含む、置換されていてもよいアルキルである、前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のフォトレジスト。
[5]
、RおよびRの少なくとも1つが1〜2個の炭素原子を含む、前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載のフォトレジスト。
[6]
(a)1種以上の樹脂と、
(b)1種以上の酸発生剤と、
(c)下記式(II)の構造を含む化合物
を含むフォトレジスト
【化27-4】
(式(II)中、
Aは、スルホネート部分であり、
Rは、少なくとも12個の炭素原子を含む、置換されていてもよいアルキルまたはヘテロアルキルであり、並びに
Xは、第四級アンモニウムカチオンである)。
[7]
(a)1種以上の樹脂と、
(b)1種以上の酸発生剤と、
(c)以下から選択されるカチオン性部分
【化27-5】
【化27-6】
【化27-7】
【化27-8】
および
【化27-9】
(式中、nは12〜18である)、並びに
以下から選択されるアニオン性部分
【化27-10】
【化27-11】
および
【化27-12】
(式中、
10は、線状C−C18アルキル基であるか、またはシクロヘキシル、アダマンチル、ノルボルニル、もしくはカンホリル基であり、
11およびR12は、各々独立に、線状C−C18アルキル基であるか、またはシクロヘキシル、アダマンチル、ノルボルニル、もしくはカンホリル基であり、並びに
13は、線状C10−C18アルキル基であるか、またはアダマンチル、もしくはノルボルニル基である)
を含むイオン性化合物と
を含む、フォトレジスト。
[8]
フォトレジストレリーフ像を形成する方法であって、
(a)前記[1]〜[7]のいずれか一項に記載のフォトレジスト組成物の塗膜層を基体上に適用する工程と、
(b)前記フォトレジスト塗膜層をパターン形成された活性化放射線に露光し、露光されたフォトレジスト層を現像してレリーフ像を提供する工程と
を含む方法。
【実施例】
【0066】
実施例1〜5:フォトレジスト組成物の調製
【0067】
実施例1:フォトレジスト組成物(レジストA)の調製
ポジ型化学増幅型フォトレジスト組成物(以降、レジストAと呼ぶ)は、2.148gのポリマーA(ポリマーAは、Mw=6Kであり、直下に表されるモノマーM1、M2およびM3の、M1/M2/M3=4/4/2のモル供給比での反応を用いることにより調製された)、
【化28】

【化29】

【化30】

0.364gの光酸発生剤、トリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(((1r,3s,5R,7S)−3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)メトキシ)−2−オキソエタンスルホネート(TPS−ADOH−CDFMS)、0.08gの界面活性イオン性クエンチャー、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムシクロヘキシルスルファマート(HDTMA−CHSFAM)、0.108gの第2のポリマーB(ポリマーBは、直下のモノマーM1およびM2の、M1/M2=6/94のモル供給比での反応を用いることにより調製された)、
【化31】

【化32】

19.46gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、63.245gのメチル−2−ヒドロキシ−イソ−ブチラート並びに14.595gのシクロヘキサノンとを一緒にすることにより調製した。
【0068】
実施例2:フォトレジスト組成物の調製(レジストB(比較用))
ポジ型化学増幅型フォトレジスト組成物(以降、レジストB(比較用レジスト)と呼ぶ)を、2.156gのポリマーA(上の実施例1に記載されるポリマーA、モル比M1/M2/M3=4/4/2、Mw=6K)、0.364gの光酸発生剤、トリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(((1r,3s,5R,7S)−3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)メトキシ)−2−オキソエタンスルホネート(TPS−ADOH−CDFMS)、0.072gのイオン性クエンチャー、テトラブチルアンモニウムシクロヘキシルスルファマート(TBA−CHSFAM)、0.108gのポリマーB(上の実施例1に記載されるポリマーB、モル比M1/M2=6/94)、19.46gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、63.245gのメチル−2−ヒドロキシ−イソ−ブチラートおよび14.595gのシクロヘキサノンを一緒にすることにより調製した。
【0069】
実施例3:フォトレジスト組成物の調製(レジストC)
ポジ型化学増幅型フォトレジスト組成物(以降、レジストCと呼ぶ)を、2.134gのポリマーA(上の実施例1に記載されるポリマーA、モル比M1/M2/M3=4/4/2、Mw=6K)、0.364gの光酸発生剤、トリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(((1r,3s,5R,7S)−3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)メトキシ)−2−オキソエタンスルホネート(TPS−ADOH−CDFMS)、0.094gの界面活性イオン性クエンチャー、テトラブチルアンモニウム1−ヘキサデシルスルホネート(TBA−HDSA)、0.108gのポリマーB(上の実施例1に記載されるポリマーB、モル比M1/M2=6/94)、19.46gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、63.245gのメチル−2−ヒドロキシ−イソ−ブチラートおよび14.595gのシクロヘキサノンを一緒にすることにより調製した。
【0070】
実施例4:フォトレジスト組成物の調製(レジストD(比較用))
ポジ型化学増幅型フォトレジスト組成物(以降、レジストD(比較用レジスト)と呼ぶ)を、2.146gのポリマーA(上の実施例1に記載されるポリマーA、モル比M1/M2/M3=4/4/2、Mw=6K)、0.364gの光酸発生剤、トリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(((1r,3s,5R,7S)−3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)メトキシ)−2−オキソエタンスルホネート(TPS−ADOH−CDFMS)、0.082gのイオン性クエンチャー、テトラブチルアンモニウム10−カンファースルホネート(TBA−CSA)、0.108gのポリマーB(上の実施例1に記載されるポリマーB、モル比M1/M2=6/94)、19.46gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、63.245gのメチル−2−ヒドロキシ−イソ−ブチラートおよび14.595gのシクロヘキサノンを一緒にすることにより調製した。
【0071】
実施例5:フォトレジスト組成物の調製(対照)
ポジ型化学増幅型フォトレジスト組成物(以降、対照フォトレジストと呼ぶ)を、2.19gのポリマーA(上の実施例1に記載されるポリマーA、モル比M1/M2/M3=4/4/2、Mw=6K)、0.364gの光酸発生剤、トリフェニルスルホニウム1,1−ジフルオロ−2−(((1r,3s,5R,7S)−3−ヒドロキシアダマンタン−1−イル)メトキシ)−2−オキソエタンスルホネート(TPS−ADOH−CDFMS)、0.038gのクエンチャー、トリヒドロキシメチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル、0.108gのポリマーB(上の実施例1に記載されるポリマーB、モル比M1/M2=6/94)、19.46gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、63.245gのメチル−2−ヒドロキシ−イソ−ブチラートおよび14.595gのシクロヘキサノンを一緒にすることにより調製した。
【0072】
実施例6:フォトレジストのリソグラフィ処理
上の実施例1〜5のフォトレジストの各々を、12インチのシリコンウエハの上の有機底面反射防止膜(BARC AR104 40nm/AR40A 80nm)上に個別にスピンコートし、ソフトベークした。被覆されたウエハをASML ArF 1900iで、NA=1.35、x偏光のDipole 35Y照明(0.988/0.896シグマ)で露光し、次に露光後ベークする(PEB)。次に、被覆されたウエハを0.26N(規定)水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で処理して像形成されたレジスト層を現像する。
【0073】
Esizeは、90nmのラインアンドスペースパターンの上部および下部で1:1の解像度を得るために必要な露光線量によって求めた(90nm L:SでのEsize)。
【0074】
露光寛容度(EL)は、サイジングエネルギーによって正規化される目標直径の+/−10%を印刷するための露光エネルギーの差として定義した。
【0075】
ライン幅ラフネス(LWR)は、800ボルト(V)の加速電圧、8.0ピコアンペア(pA)のプローブ電流で操作、200Kx倍率を用いて、日立9380CD−SEMを用いて、トップダウン走査型電子顕微鏡観察(SEM)によって捕捉された像を加工することによって求めた。LWRは、2μmのライン長さにわたって40nmずつ測定し、測定領域の平均として報告した。
【0076】
LWR CDは、LWR測定に使用されたCDを示す。
【0077】
Z95は、95%信頼区間である。
【0078】
結果を下の表1に示す。
【0079】
【表1】