(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の組成物であって、前記コア−シェル耐衝撃性改良剤が、コア−シェル耐衝撃性改良剤の質量に対して、65から85質量パーセントのコアと、15から35質量パーセントのシェルとを含むことを特徴とする組成物。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物であって、更に、1から10質量パーセントのブロックポリエーテルイミド−ポリシロキサンを含むことを特徴とする組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1つの実施形態は組成物であって、この組成物は、組成物の総質量に対して、40から60質量パーセントのポリエーテルイミドと、15から50質量パーセントのブロックポリエステルカルボナートと、5から15質量パーセントのブロックポリカルボナート−ポリシロキサンと、1.5から7質量パーセントのコア−シェル耐衝撃性改良剤とを含み、ブロックポリエステルカルボナートは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含むポリエステルブロックと、
【化7】
次の構造を持つカルボナート繰り返し単位を含むポリカルボナートブロックとを含み、
【化8】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60パーセントは芳香族である)
コア−シェル耐衝撃性改良剤は、コア−シェル耐衝撃性改良剤の質量に対して、60から95質量パーセントの、ポリシロキサンを含むコアと、5から40質量パーセントの、ポリ((メタ)アクリル酸アルキル)を含むシェルとを含み、この組成物は、0から0.8質量パーセントのポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体を含む。
【0011】
本組成物はポリエーテルイミドを含む。ポリエーテルイミドは、次の構造式で示される繰り返し単位を含む。
【化9】
式中、Tは、−O−、または構造式−O−Z−O−で示される基であって、−O−または−O−Z−O−基の二価結合は、フタルイミド基の、3,3’、3,4’、4,3’、または4,4’位置にあり、Zとしては、次の構造式で示される二価基が挙げられる。
【0012】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
および
【化18】
【0013】
式中、Qは二価基であって、−O−、−S−、−C(O)−、−SO
2−、−SO−、−C
yH
2y−(式中、yは、1から8である)、または、−C
pH
qF
r−(式中、pは1から8、qは0から15、rは1から16であって、q+r=2pである)であっても良い。R
2は出現毎に独立して、6から20個の炭素を含む置換または非置換二価芳香族炭化水素基、2から20個の炭素を含む直鎖または分枝鎖アルキレン基、3から20個の炭素原子を含むシクロアルキレン基、および次の一般構造式で示される二価基から成る群より選ばれる二価基である。
【0014】
【化19】
(式中、Qは先に定義のとおりである)
【0015】
文中で使用されている“置換”とは、ハロゲン(即ち、F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシラート、アミド、ニトリル、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C
1〜C
18アルキル、C
1〜C
18アルコキシル、C
6〜C
18アリール、C
6〜C
18アリールオキシル、C
7〜C
18アルキルアリール、またはC
7〜C
18アルキルアリールオキシルなどの置換基の、少なくとも1つを含むことを意味する。このため、ヒドロカルビル残基が置換されていると述べられている場合、炭素と水素の他にヘテロ原子を含むことがある。
【0016】
一部の実施形態において、R
2は出現毎に独立して、パラ−フェニレンまたはメタ−フェニレンであり、Tは、次の構造式で示される二価基である。
【化20】
【0017】
一部の実施形態において、ポリエーテルイミドはハロゲンを含まない。ポリエーテルイミド内の繰り返し単位の数は、例えば、10から1,000または10から500となることがある。
【0018】
一部の実施形態において、ポリエーテルイミドは10から1000の繰り返し単位を含み、それぞれの繰り返し単位は独立して、次の構造を持つ。
【化21】
式中、R
2は、メタ−フェニレンまたはパラ−フェニレンである。
【0019】
多くのポリエーテルイミド製造法があるが、中でも、Heatほかによる米国特許第3,847,867号、Takekoshiほかによる米国特許第3,850,885号、Whiteによる米国特許第3,852,242号および米国特許第3,855,178号、Williamsほかによる米国特許第3,983,093号、Schmidtほかによる米国特許第4,443,591号が挙げられる。ポリエーテルイミドは、例えば、SABICより、ULTEM(商標)樹脂として市販もされている。
【0020】
一部の実施形態において、本組成物は、組成物の総質量に対して15から25質量パーセントの量のポリエーテルイミドを含む。
【0021】
一部の実施形態において、本組成物は、組成物の総質量に対して40から60質量パーセントの量のポリエーテルイミドを含む。この範囲内で、ポリエーテルイミド量は、40から55質量パーセントまたは45から55質量パーセントとなることがある。
【0022】
ポリエーテルイミドに加えて、本組成物は、ブロックポリエステルカルボナート(文中において、ポリカルボナート−エステルポリマーと呼ばれることもある)を含む。ブロックポリエステルカルボナートは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含むポリエステルブロックと、
【化22】
次の構造を持つカルボナート繰り返し単位を含むポリカルボナートブロックとを含む。
【化23】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60モルパーセントは芳香族二価基である)
【0023】
一部の実施形態において、芳香族二価基はC
6〜C
24芳香族二価基である。R
1基の全てが芳香族でない場合、残りはC
2〜C
24脂肪族二価基である。一部の実施形態において、それぞれのR
1は、次の構造式で示される基である。
【化24】
【0024】
式中、A
1およびA
2はそれぞれ独立して単環二価アリール基であり、Y
1は、A
1とA
2とを隔てる、1または2つの原子を含む橋かけ基である。一部の実施形態では、1つの原子がA
1とA
2を隔てている。このタイプの基の非制限的な実例は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)
2−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、およびアダマンチリデンである。橋かけ基Y
1は、C
1〜C
12(二価)ヒドロカルビレン基であっても良い。文中で使用されている用語“ヒドロカルビル”は、そのままで、あるいは、別の用語の接頭辞、接尾辞、または一部として使用されていても、“置換ヒドロカルビル”と特に示されていない限り、炭素と水素のみを含む残基を指す。ヒドロカルビル残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環状、分枝、飽和、または不飽和であっても良い。また、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分枝、飽和、および不飽和炭化水素基の組み合わせを含んでいても良い。ヒドロカルビル残基が置換されていると述べられている場合、炭素と水素の他にヘテロ原子を含むことがある。Y
1の例としては、メチレン(−CH
2−;メチリデンとしても知られる)、エチリデン(−CH(CH
3)−)、イソプロピリデン(−C(CH
3)
2−)、およびシクロヘキシリデンが挙げられる。
【0025】
一部の実施形態において、ポリエステルブロックは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含み、
【化25】
および
【化26】
ポリカルボナートブロックは、次の構造を持つビスフェノールAカルボナート繰り返し単位を含む。
【化27】
【0026】
一部の実施形態において、ブロックポリエステルカルボナートは、ブロックポリエステルカルボナート中の繰り返し単位の総モルに対して、5から95モルパーセントのエステル繰り返し単位と、5から95モルパーセントのカルボナート繰り返し単位を含む。この範囲内で、エステル繰り返し単位のモルパーセントは50から90となることがあり、カルボナート繰り返し単位のモルパーセントは10から50モルパーセントとなることがあり、または、エステル繰り返し単位のモルパーセントは70から90となることがあり、カルボナート繰り返し単位のモルパーセントは10から30モルパーセントとなることがある。非常に詳細な実施形態において、ブロックポリエステルカルボナートは、70から90モルパーセントのレゾルシノールイソフタラート/テレフタラート繰り返し単位と、5から15モルパーセントのレゾルシノールカルボナート繰り返し単位と、5から15モルパーセントのビスフェノールAカルボナート繰り返し単位とを含む。
【0027】
一部の実施形態において、ブロックポリエステルカルボナートは、架橋スチレン−ジビニルベンゼンカラムとポリカルボナート標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)による測定で、5,000から10万グラム/モルの質量平均分子量を持つ。この範囲内で、質量平均分子量は、1万から5万グラム/モルまたは1万から4万グラム/モルとなることがある。
【0028】
ブロックポリエステルカルボナートの製造法は知られており、Colbornほかによる米国特許第7,790,292B2号に開示のものが挙げられる。
【0029】
本組成物は、組成物の総質量に対して、15から50質量パーセントの量のブロックポリエステルカルボナートを含む。この範囲内で、ブロックポリエステルカルボナート量は、15から40質量パーセントまたは15から30質量パーセントとなることがある。
【0030】
ポリエーテルイミドおよびブロックポリエステルカルボナートに加えて、本組成物は、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサン(文中において、ポリカルボナート−シロキサンポリマーと呼ばれることもある)を含む。ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンは、少なくとも1つのポリカルボナートブロックと、少なくとも1つのポリシロキサンブロックとを含むポリカルボナート共重合体である。一部の実施形態において、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンは、多数のポリカルボナートブロックと多数のポリシロキサンブロックとを含む。ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンはその組成に応じて、透明、半透明、または不透明のことがある。
【0031】
ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンの少なくとも1つのポリカルボナートブロックは、次の構造式で示されるカルボナート繰り返し単位を含む。
【化28】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60モルパーセントは芳香族二価基である)
【0032】
一部の実施形態において、芳香族二価基はC
6〜C
24芳香族二価基である。R
1基の全てが芳香族二価基でない場合、残りはC
2〜C
24脂肪族二価基である。一部の実施形態において、それぞれのR
1は、次の構造式で示される基である。
【化29】
(式中、A
1、A
2、およびY
1は先に定義のとおりである)
【0033】
詳細な実施形態において、ポリカルボナートブロックはビスフェノールAカルボナート繰り返し単位を含む。
【0034】
一部の実施形態において、共重合体の少なくとも1つのポリシロキサンブロックのそれぞれは、次の構造式で示されるジオルガノシロキサン単位を含む。
【化30】
(式中、R
3は出現毎に独立して、C
1〜13ヒドロカルビルである)
【0035】
適当なヒドロカルビル基の例としては、C
1〜C
13アルキル(直鎖、分枝、環状、またはこれらの少なくとも2つを組み合わせたアルキル基など)、C
2〜C
13アルケニル、C
6〜C
12アリール、C
7〜C
13アリールアルキル、およびC
7〜C
13アルキルアリールが挙げられる。前述のヒドロカルビル基は必要に応じて、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせで、完全または部分的にハロゲン化されていても良い。透明なブロックポリカルボナート−ポリシロキサンが望ましいいくつかの実施形態など、一部の実施形態において、R
3はハロゲンを含まない。
【0036】
ポリシロキサンブロックは、それぞれ、2から1,000のジオルガノシロキサン単位を含んでいても良い。この範囲内で、ジオルガノシロキサン単位の数は2から500、より詳細には5から100となることがある。一部の実施形態において、それぞれのブロック中のジオルガノシロキサン繰り返し単位の数は、10から75、詳細には40から60である。
【0037】
一部の実施形態において、ポリシロキサンブロックは次の構造式を持ち、
【化31】
式中、R
3は先に定義のとおりであり、Eは、2から1,000、2から500、5から100、10から75、または40から60であり、Arは出現毎に独立して、非置換または置換C
6〜C
30アリーレン基であって、このアリーレン基の芳香族炭素原子は、それぞれの隣り合う酸素原子に直接結合している。Ar基は、C
6〜C
30ジヒドロキシアリーレン化合物、例えば、次の構造式で示されるジヒドロキシアリーレン化合物から誘導することができる。
【化32】
または
【化33】
式中、n、p、qは独立して、0、1、2、3、または4であり、R
a、R
b、R
hは出現毎に独立して、ハロゲン、あるいは非置換または置換C
1〜10ヒドロカルビルであり、X
aは、単結合、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)
2−、−C(O)−、またはC
1〜18ヒドロカルビレン(環式または非環式、芳香族または非芳香族であって良く、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、またはリンより選ばれる1つ以上のヘテロ原子を更に含んでいても良い)である。ジヒドロキシアリーレン化合物の例としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−l−メチルフェニル)プロパン,1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニルスルフィド)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパンが挙げられる。
【0038】
一部の実施形態において、ポリシロキサンブロックは次の構造式を持ち、
【化34】
式中、R
3およびEは先に定義のとおりであり、R
4は出現毎に独立して、(二価)C
1〜C
30ヒドロカルビレンである。
【0039】
詳細な実施形態において、ポリシロキサンブロックは、次の構造式を持ち、
【化35】
式中、R
3およびEは先に定義のとおりであり、R
5は出現毎に独立して、二価C
2〜C
8脂肪族基であり、Mは出現毎に独立して、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C
1〜C
8アルキル、C
1〜C
8アルコキシル、C
1〜C
8アルキルチオ、C
2〜C
8アルケニル、C
2〜C
8アルケニルオキシル基、C
6〜C
10アリール、C
6〜C
10アリールオキシル、C
7〜C
12アリールアルキル、C
7〜C
12アリールアルコキシル、C
7〜C
12アルキルアリール、またはC
7〜C
12アルキルアリールオキシルであり、vは出現毎に独立して、0、1、2、3、または4である。一部の実施形態において、vの少なくとも1つの出現はゼロでなく、それに伴って出現するMはそれぞれ独立して、クロロ、ブロモ、C
1〜C
6アルキル(メチル、エチル、n−プロピルなど)、C
1〜C
6アルコキシル(メトキシル、エトキシル、プロポキシルなど)、あるいはC
6〜C
12アリールまたはアルキルアリール(フェニル、クロロフェニル、トリルなど)であり、R
5は出現毎に独立して、C
2〜C
4アルキレン(ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレンなど)であり、R
3は、C
1〜C
8アルキル、C
1〜C
8ハロアルキル(3,3,3−トリフルオロプロピルなど)、C
1〜C
8シアノアルキル、あるいはC
6〜C
12アリールまたはアルキルアリール(フェニル、クロロフェニル、トリルなど)である。一部の実施形態において、R
3は出現毎に独立して、メチル、3,3,3−トリフルオロプロピル、またはフェニルである。一部の実施形態では、出現するR
3全体に、少なくとも1つのメチルと、少なくとも1つの3,3,3−トリフルオロプロピルが含まれる。一部の実施形態において、同じケイ素原子に結合して存在する2つのR
3は、メチルとフェニルである。一部の実施形態において、vは出現毎に1であり、Mは出現毎にメトキシルであり、R
5は二価C
1〜C
3アルキレン基であり、R
3は出現毎にメチルである。
【0040】
一部の実施形態において、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンは、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンの質量に対して、70から97質量パーセントのカルボナート単位と、3から30質量パーセントのジオルガノシロキサン単位を含む。この範囲内で、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンは、70から90質量パーセントまたは75から85質量パーセントのカルボナート単位と、10から30質量パーセントまたは15から25質量パーセントのジオルガノシロキサン単位を含むことがある。
【0041】
一部の実施形態において、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンは、架橋スチレン−ジビニルベンゼンカラムと、1ミリグラム/ミリリットルの試料濃度と、ビスフェノールAポリカルボナート標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィによる測定で、2,000から10万原子質量単位、詳細には5,000から5万原子質量単位の質量平均分子量を持つ。
【0042】
非常に詳細な実施形態において、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンは、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンの質量に対して、10から30質量パーセントのジメチルシロキサン単位と、70から90質量パーセントの、次の構造式で示されるカルボナート単位とを含む。
【化36】
【0043】
ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンは、ASTM D1238−04に準拠した、300℃、1.2キログラム負荷での測定で、3から20cm
3/10分のメルトボリュームフローレートを持つ。カルボナート単位は、単一のポリカルボナートブロック内に存在していても、複数のポリカルボナートブロック内に分布していても良い。一部の実施形態において、カルボナート単位は、少なくとも2つのポリカルボナートブロック内に分布している。
【0044】
別の非常に詳細な実施形態において、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンは次の構造式を持ち、
【化37】
式中、Ar
1は、非置換または置換C
6〜C
18アリールであり、x、y、zは、ブロック共重合体が、10から30質量パーセント、詳細には15から25質量パーセントのポリジメチルシロキサン単位を含むような値である。一部の実施形態において、xは、平均して30から60、詳細には30から56であり、yは、平均して1から5、詳細には1から3であり、zは、平均して70から130、詳細には80から100である。Tは、二価C
3〜C
30結合(linking)基、詳細には、ヒドロカルビル基であって、これは、脂肪族、芳香族、または芳香族と脂肪族との組み合わせであっても良く、また、酸素などのヘテロ原子を1つ以上含んでいても良い。多種多様の結合基とその組み合わせが使用できる。T基は、ポリシロキサン鎖上の、オイゲノールまたはアリルエンドキャッピング剤から誘導することができる。オイゲノール以外のエンドキャッピング剤としては、2−アリルフェノール、4−アリル−2−メチルフェノールなど、脂肪族基に不飽和部分を持つ一価フェノールが挙げられる。カルボナート単位は、単一のポリカルボナートブロック内に存在していても、複数のポリカルボナートブロック内に分布していても良い。一部の実施形態において、カルボナート単位は、少なくとも2つのポリカルボナートブロック内に分布している。
【0045】
別の非常に詳細な実施形態において、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンは、次の構造式を持ち、
【化38】
式中、Ar
1は先に定義のとおりであり、x、y、zは、ブロック共重合体が、10から30質量パーセントまたは15から25質量パーセントのポリジメチルシロキサン単位を含むような値である。一部の実施形態において、xは、平均して30から60または30から56であり、yは、平均して1から5または1から3であり、zは、平均して70から130または80から100である。カルボナート単位は、単一のポリカルボナートブロック内に存在していても、複数のポリカルボナートブロック内に分布していても良い。一部の実施形態において、カルボナート単位は、少なくとも2つのポリカルボナートブロック内に分布している。
【0046】
ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンおよびその製造法は知られており、例えば、Vaughnによる米国特許第3,419,634号および米国特許第3,419,635号、Merrittほかによる米国特許第3,821,325号、Merrittによる米国特許第3,832,419号、Hooverによる米国特許第6,072,011号に記載されている。
【0047】
本組成物は、組成物の総質量に対して5から15質量パーセントの量のブロックポリカルボナート−ポリシロキサンを含む。この範囲内で、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサン量は、5から12質量パーセントまたは6から12質量パーセントとなることがある。
【0048】
ポリエーテルイミド、ブロックポリエステルカルボナート、およびブロックポリカルボナート−ポリシロキサンに加えて、本組成物は、コア−シェル耐衝撃性改良剤(文中において、シロキサン−アクリル系コア−シェル耐衝撃性改良剤添加物とも呼ばれる)を含む。コア−シェル耐衝撃性改良剤は、コア−シェル耐衝撃性改良剤の質量に対して、60から95質量パーセントの、ポリシロキサンを含むコアと、5から40質量パーセントの、ポリ((メタ)アクリル酸アルキル)を含むシェルとを含む。60から95の範囲内で、コアの質量パーセントは、60から90または65から85となることがある。5から40の範囲内で、シェルの質量パーセントは、10から40または15から35となることがある。コアの量は、文中においてゴム含有量と呼ばれることもある。
【0049】
コア−シェル耐衝撃性改良剤のコアはポリシロキサンを含む。ポリシロキサンは、ジ−(C
1〜C
12)−ジヒドロカルビルシロキサン繰り返し単位の元となるものを含むモノマーの乳化共重合によって製造可能である。ジ−(C
1〜C
12)−ジヒドロカルビルシロキサン繰り返し単位の元となるものは、例えば、1,3,5,7−オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)などの環状ジアルキルシロキサン、ジメチルジメトキシシランおよび/またはメチルフェニルジメトキシシランなどの、2つの加水分解基を含むケイ素含有モノマー、あるいはこれらの組み合わせを含むことができる。一部の実施形態において、ポリシロキサンはポリジメチルシロキサンを含む。ポリシロキサンの製造に使用するモノマーは必要に応じて、架橋剤、グラフト結合剤(graftlinking agent)、またはこれらの組み合わせを含んでいても良い。架橋剤は、メチルトリエトキシシラン、テトラプロピルオキシシラン、またはこれらの組み合わせなど、3つ以上の加水分解基を含むケイ素含有モノマーを含んでいても良い。グラフト結合剤は、少なくとも1つ以上の加水分解基と、重合可能な炭素−炭素二重結合とを含むケイ素含有モノマーを含んでいても良い。グラフト結合剤の例としては、メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルフェニルメトキシメチルシラン、ビニルフェニルジメトキシシラン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
コアは、Hydeほかによる米国特許第2,891,920号、Findlayほかによる米国特許第3,294,725号、Miyatakeほかによる米国特許第6,153,694号、Saegusaほかによる米国特許出願公開第2008/0242797A1号に開示のものなど、公知の乳化重合法で製造可能である。一部の実施形態において、コアの数平均粒径は、10から1,000ナノメートル、20から500ナノメートル、または20から200ナノメートルである。
【0051】
コア−シェル耐衝撃性改良剤のシェルは、ポリ((メタ)アクリル酸アルキル)を含む。文中で使用されている用語“(メタ)アクリル酸エステル((meth)acrylate)”は、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを意味する。用語“ポリ((メタ)アクリル酸アルキル)”の文脈において、語“アルキル”はC
1〜C
6アルキルを指す。コアの存在下で形成されるシェルは、(メタ)アクリル酸C
1〜C
6アルキルを含むモノマーの重合によって製造できる。適当な(メタ)アクリル酸C
1〜C
6アルキルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、およびこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態において、(メタ)アクリル酸C
1〜C
6アルキルはメタクリル酸メチルを含み、シェルはポリ(メタクリル酸メチル)を含む。
【0052】
シェルの形成に用いられるモノマーは必要に応じて、重合可能な炭素−炭素二重結合を少なくとも2つ含むモノマーを更に含んでいても良い。このようなモノマーの例としては、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリラート、1,3−ブチレングリコールジメタクリラート、ジビニルベンゼン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
シェルの製造に使用するモノマーは必要に応じて、シェルがコアへ結合し易くなるよう、グラフト結合モノマーを更に含んでいても良い。このようなモノマーは、ケイ素原子に結合した少なくとも1つの加水分解基と、少なくとも1つの重合可能な炭素−炭素二重結合とを含んでいる。例としては、例えば、メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルフェニルメトキシメチルシラン、およびビニルフェニルジメトキシシランが挙げられる。一部の実施形態において、シェルを形成するモノマーは、グラフト結合モノマーと、少なくとも2つの重合可能な炭素−炭素二重結合を含むモノマーとを含む。
【0054】
コア−シェル耐衝撃性改良剤およびその製造法は知られており、例えば、Miyatakeほかによる米国特許第6,153,694号、Saegusaほかによる米国特許出願公開第2008/0242797A1号に記載されている。また、コア−シェル耐衝撃性改良剤は、例えば、(株)カネカから、カネエース(商標)MRシリーズ樹脂として市販もされている。
【0055】
本組成物は、組成物の総質量に対して1.5から7質量パーセントの量のコア−シェル耐衝撃性改良剤を含む。この範囲内で、コア−シェル耐衝撃性改良剤量は、2から7質量パーセントまたは2から6質量パーセントとなることがある。
【0056】
本組成物は、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体が最小限であり、またはこれを含まない。より詳細には、本組成物は0から0.8質量パーセントのポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体を含む。この範囲内で、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体の含有量は、0から0.5質量パーセントまたは0質量パーセントとなることがある。ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体は、例えば、Zhouほかによる国際特許出願公開第2016/164518A1号に記載されている。
【0057】
本組成物は必要に応じて、ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンを含んでいても良い。ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンは、少なくとも1つのポリエステルブロックと、少なくとも1つのポリカルボナートブロックと、少なくとも1つのポリシロキサンブロックとを含む共重合体である。より詳細には、ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含むポリエステルブロックと、
【化39】
次の構造を持つカルボナート繰り返し単位を含むポリカルボナートブロックと、
【化40】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60パーセントは芳香族である)
ジメチルシロキサン繰り返し単位を含むポリシロキサンブロックとを含む。一部の実施形態において、レゾルシノールエステル繰り返し単位は、レゾルシノールイソフタラート/テレフタラート単位を含み、カルボナート繰り返し単位は、レゾルシノールカルボナート単位とビスフェノールAカルボナート単位とを含む。非常に詳細な実施形態において、ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンは、カルボナートおよびエステル繰り返し単位の総モルに対して、70から90モルパーセントのレゾルシノールイソフタラート/テレフタラート繰り返し単位と、5から15モルパーセントのレゾルシノールカルボナート繰り返し単位と、5から15モルパーセントのビスフェノールAカルボナート繰り返し単位とを含み、更に、ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンの総質量に対して、0.2から4質量パーセントまたは0.4から2質量パーセントのポリジメチルシロキサンを含む。
【0058】
ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンの製造法は知られており、例えば、Colbornほかによる米国特許第7,790,292B2号に記載されている。
【0059】
ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンが存在する場合、組成物の総質量に対して5から30質量パーセントの量で使用することができる。この範囲内で、ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサン量は、10から30質量パーセントまたは15から25質量パーセントとなることがある。ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンが存在する一部の実施形態において、ブロックポリエステルカルボナートの量は、組成物の総質量に対して15から30質量パーセントである。この範囲内で、ブロックポリエステルカルボナートの量は15から25質量パーセントとなることがある。
【0060】
本組成物は必要に応じて、ブロックポリエーテルイミド−ポリシロキサンを含んでいても良い。ブロックポリエーテルイミド−ポリシロキサンは、少なくとも1つのポリエーテルイミドブロックと、少なくとも1つのポリシロキサンブロックとを含む共重合体である。ポリエーテルイミドブロックは、ポリエーテルイミドについて先に述べた構造のいずれかを持つ繰り返し単位を含むことができる。ポリシロキサンブロックは、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンのポリシロキサンブロックについて先に述べた構造のいずれかを持つ繰り返し単位を含むことができる。一部の実施形態において、ポリエーテルイミドブロックは、それぞれの繰り返し単位が独立して次の構造を持つ、繰り返し単位を含み、
【化41】
(式中、R
2は、メタ−フェニレンまたはパラ−フェニレンである)
ポリシロキサンブロックはポリジメチルシロキサン繰り返し単位を含む。
【0061】
ブロックポリエーテルイミド−ポリシロキサンの製造法は知られており、例えば、Ryangによる米国特許第4,404,350号、Cellaほかによる米国特許第4,808,686号および米国特許第4,690,997号に記載されている。
【0062】
一部の実施形態において、ブロックポリエーテルイミド−ポリシロキサンはポリエーテルイミドジメチルシロキサン共重合体である。
【0063】
ブロックポリエーテルイミド−ポリシロキサンが存在する場合、組成物の総質量に対して1から10質量パーセントの量で使用することができる。この範囲内で、ブロックポリエーテルイミド−ポリシロキサン量は1から5質量パーセントとなることがある。一部の実施形態において、本組成物はブロックポリエーテルイミド−ポリシロキサンを含まない。
【0064】
本組成物は必要に応じて、更に難燃剤を含んでいても良い。難燃剤は組成物の難燃性を高めることのできる化合物または化合物混合物である。適当な難燃剤としては、例えば、有機リン酸エステル、ジアルキルホスフィン酸金属塩、ホスファゼン、メラミン含有難燃剤、金属水酸化物、およびこれらの組み合わせが挙げられる。難燃剤が存在する場合、組成物の総質量に対して0.5から10質量パーセントの量で使用することができる。一部の実施形態において、本組成物は難燃剤を含まない。一部の実施形態において、本組成物は、1質量パーセント以下のホスファゼン難燃剤を含み、あるいはこれを含んでいない。一部の実施形態において、本組成物は、有機リン酸エステル、ジアルキルホスフィン酸金属塩、ホスファゼン、メラミン系難燃剤、および金属水酸化物を含まない。当然のことながら、用語“難燃剤”は、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサン、ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサン、またはブロックポリエーテルイミド−ポリシロキサンを含まない。
【0065】
本組成物は必要に応じて、熱可塑性プラスチック技術において知られている1つ以上の添加剤を更に含んでいても良い。例えば、本組成物は必要に応じて、安定剤、離型剤、滑剤、加工助剤、ドリップ遅延剤、核形成剤、UVブロッカー、染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、鉱油、金属不活性化剤、ブロッキング防止剤、およびこれらの組み合わせより選ばれる添加剤を更に含むことができる。このような添加剤が存在する場合、組成物の総質量に対して、一般に、10質量パーセント以下、5質量パーセント以下、または1質量パーセント以下の総量で使用する。一部の実施形態において、本組成物は、亜リン酸安定剤、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを、組成物の総質量に対して、0.025から0.5質量パーセントまたは0.05から0.2質量パーセントの量で含む。
【0066】
一部の実施形態において、本組成物は、ポリカルボナート(ポリカルボナートホモポリマー、更に、それぞれの繰り返し単位がカルボナート結合を含んでいるポリカルボナート共重合体など)、ポリエステル(ポリエステルホモポリマー、更に、それぞれの繰り返し単位がエステル結合を含んでいるポリエステル共重合体など)、二価脂肪族基を含むエステル単位を含んでいるポリエステルカルボナート、スチレン−アクリロニトリル共重合体、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマーの、1つ、または少なくとも2つ、あるいは全てを含まない。当然のことながら、これらの必要に応じて除外されるポリマーは、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサン、ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサン、およびブロックポリエーテルイミド−ポリシロキサンとは化学的に異なるものである。
【0067】
一部の実施形態において、本組成物は、最小限のハロゲンを含み、またはハロゲンを含まない。例えば、本組成物は0から1質量パーセントのハロゲンを含むことがあり、または、本組成物は0から0.1質量パーセントのハロゲンを含むことがあり、あるいは、本組成物はハロゲンを含まないことがある。
【0068】
非常に詳細な実施形態において、本組成物は、45から55質量パーセントのポリエーテルイミドと、15から30質量パーセントのブロックポリエステルカルボナートと、6から12質量パーセントのブロックポリカルボナート−ポリシロキサンと、2から6質量パーセントのコア−シェル耐衝撃性改良剤とを含み、更に、10から30質量パーセントのブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンを含み、ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含むポリエステルブロックと、
【化42】
次の構造を持つカルボナート繰り返し単位を含むポリカルボナートブロックと、
【化43】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60パーセントは芳香族である)
ジメチルシロキサン繰り返し単位を含むポリシロキサンブロックとを含む。必要に応じ、この非常に詳細な実施形態において、ポリエーテルイミドは、ポリ(2,2’−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニルプロパン)−1,3−フェニレンビスイミド)を含み、ブロックポリエステルカルボナートのポリカルボナートブロックのR
1基の総数の少なくとも90パーセントは、1,3−フェニレン(即ち、レゾルシノールの残基)または2,2−ビス(1,4−フェニレン)プロパン(即ち、ビスフェノールAの残基)であり、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンのポリカルボナートブロックのR
1基の総数の少なくとも90パーセントは、1,3−フェニレン(即ち、レゾルシノールの残基)または2,2−ビス(1,4−フェニレン)プロパン(即ち、ビスフェノールAの残基)であり、ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンのポリカルボナートブロックのR
1基の総数の少なくとも90パーセントは、1,3−フェニレン(即ち、レゾルシノールの残基)または2,2−ビス(1,4−フェニレン)プロパン(即ち、ビスフェノールAの残基)であり、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンおよびブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンのポリシロキサンブロックは、ポリジメチルシロキサンを含み、コア−シェル耐衝撃性改良剤のポリ((メタ)アクリル酸アルキル)は、ポリ(メタクリル酸メチル)を含む。
【0069】
もうひとつの実施形態は、組成物を含む物品であって、この組成物は、組成物の総質量に対して、40から60質量パーセントのポリエーテルイミドと、15から50質量パーセントのブロックポリエステルカルボナートと、5から15質量パーセントのブロックポリカルボナート−ポリシロキサンと、1.5から7質量パーセントのコア−シェル耐衝撃性改良剤とを含み、ブロックポリエステルカルボナートは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含むポリエステルブロックと、
【化44】
次の構造を持つカルボナート繰り返し単位を含むポリカルボナートブロックとを含み、
【化45】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60パーセントは芳香族である)
コア−シェル耐衝撃性改良剤は、コア−シェル耐衝撃性改良剤の質量に対して、60から95質量パーセントの、ポリシロキサンを含むコアと、5から40質量パーセントの、ポリ((メタ)アクリル酸アルキル)を含むシェルとを含み、この組成物は、0から0.8質量パーセントのポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体を含む。上記の変数を変化させた組成物も全て、本組成物を含む物品に当てはまる。
【0070】
本組成物は物品の製造に有用である。適当な物品製造法としては、単層および多層シート押出成形、射出成形、ブロー成形、フィルム押し出し、異形押し出し、引き抜き成形、圧縮成形、熱成形、加圧成形、ハイドロフォーミング、真空成形などが挙げられる。前述の物品製造法を組み合わせて使用することもできる。
【0071】
一部の実施形態において、物品は1から5ミリメートルの直径を持つフィラメントである。この範囲内で、フィラメント直径は、1から3ミリメートルまたは1から2ミリメートルとなることがある。
【0072】
一部の実施形態において、物品は、本組成物を含む、少なくとも2つの隣接する層を含む。物品は必要に応じて、少なくとも5つの隣接層または少なくとも10の隣接層を含むことができる。この段落の実施形態において、それぞれの層は同じ組成を持つ。一部の実施形態において、この段落の物品の特徴は、互いに直交する、x、y、およびzの寸法によって表され、x、y、およびzの寸法は独立して、0.5ミリメートルから2メートルである。この範囲内で、最小寸法は、1ミリメートル、2ミリメートル、5ミリメートル、または1センチメートルとなることがあり、最大寸法は、1メートルまたは50センチメートルとなることがある。
【0073】
もうひとつの実施形態は積層造形法であって、この方法は、溶融した組成物を溶融押出して、複数の隣り合う(かつ接触している)層を所定のパターンに形成する工程を含み、溶融組成物の特徴はガラス転移温度によって表され、溶融組成物は、溶融組成物のガラス転移温度よりも5から250℃高い温度を持ち、溶融組成物は、組成物の総質量に対して、40から60質量パーセントのポリエーテルイミドと、15から50質量パーセントのブロックポリエステルカルボナートと、5から15質量パーセントのブロックポリカルボナート−ポリシロキサンと、1.5から7質量パーセントのコア−シェル耐衝撃性改良剤とを含み、ブロックポリエステルカルボナートは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含むポリエステルブロックと、
【化46】
次の構造を持つカルボナート繰り返し単位を含むポリカルボナートブロックとを含み、
【化47】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60パーセントは芳香族である)
コア−シェル耐衝撃性改良剤は、コア−シェル耐衝撃性改良剤の質量に対して、60から95質量パーセントの、ポリシロキサンを含むコアと、5から40質量パーセントの、ポリ((メタ)アクリル酸アルキル)を含むシェルとを含み、この組成物は、0から0.8質量パーセントのポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体を含む。溶融組成物のガラス転移温度よりも5から250℃高い、溶融組成物温度範囲内で、下限値は、溶融組成物のガラス転移温度よりも10または20℃高くなることがある。更に、溶融組成物のガラス転移温度よりも5から250℃高い、溶融組成物温度範囲内で、上限値は、溶融組成物のガラス転移温度よりも200または150または100℃高くなることがある。上記の変数を変化させた組成物も全て、本積層造形法に当てはまる。
【0074】
本方法の一部の実施形態において、溶融押出工程は、0.2から5ミリメートル、0.2から3ミリメートル、0.2から2ミリメートル、または0.2から1ミリメートルの内径を待つノズルから、溶融組成物を溶融押出する工程を含み、この方法は更に、本組成物を含むフィラメントを、ガラス転移温度よりも少なくとも20℃低い温度から、ガラス転移温度よりも5から50℃高い温度まで加熱することによって、溶融組成物を生成する工程を含み、フィラメントは、1から5ミリメートルまたは1.5から4ミリメートルの直径を持つ。
【0075】
もうひとつの実施形態は、積層造形のための溶融押出材料としての組成物の使用法であって、この組成物は、組成物の総質量に対して、40から60質量パーセントのポリエーテルイミドと、15から50質量パーセントのブロックポリエステルカルボナートと、5から15質量パーセントのブロックポリカルボナート−ポリシロキサンと、1.5から7質量パーセントのコア−シェル耐衝撃性改良剤とを含み、ブロックポリエステルカルボナートは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含むポリエステルブロックと、
【化48】
次の構造を持つカルボナート繰り返し単位を含むポリカルボナートブロックとを含み、
【化49】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60パーセントは芳香族である)
コア−シェル耐衝撃性改良剤は、コア−シェル耐衝撃性改良剤の質量の、60から95質量パーセントの、ポリシロキサンを含むコアと、5から40質量パーセントの、ポリ((メタ)アクリル酸アルキル)を含むシェルとを含み、この組成物は、0から0.8質量パーセントのポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体を含む。溶融組成物のガラス転移温度よりも5から250℃高い、溶融組成物温度範囲内で、下限値は、溶融組成物のガラス転移温度よりも10または20℃高くなることがある。更に、溶融組成物のガラス転移温度よりも5から250℃高い、溶融組成物温度範囲内で、上限値は、溶融組成物のガラス転移温度よりも200または150または100℃高くなることがある。上記の変数を変化させた組成物も全て、積層造形のための溶融押出材料としての本組成物の使用法に当てはまる。
【0076】
積層造形のための溶融押出材料としての本組成物の使用法に関する一部の実施形態において、本組成物の特徴はガラス転移温度によって表され、この使用法は、本組成物を含むフィラメントを、ガラス転移温度よりも少なくとも20℃低い温度から、ガラス転移温度よりも5から50℃高い温度まで加熱して、溶融組成物を生成する工程と、溶融組成物を押出して、複数の隣接する層を所定のパターンに形成する工程とを含み、フィラメントは1から5ミリメートルの直径を持つ。
【0077】
本発明は、少なくとも以下の実施形態を含む。
【0078】
実施形態1:組成物であって、この組成物は、組成物の総質量に対して、40から60質量パーセントのポリエーテルイミドと、15から50質量パーセントのブロックポリエステルカルボナートと、5から15質量パーセントのブロックポリカルボナート−ポリシロキサンと、1.5から7質量パーセントのコア−シェル耐衝撃性改良剤とを含み、ブロックポリエステルカルボナートは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含むポリエステルブロックと、
【化50】
次の構造を持つカルボナート繰り返し単位を含むポリカルボナートブロックとを含み、
【化51】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60パーセントは芳香族である)
コア−シェル耐衝撃性改良剤は、コア−シェル耐衝撃性改良剤の質量に対して、60から95質量パーセントの、ポリシロキサンを含むコアと、5から40質量パーセントの、ポリ((メタ)アクリル酸アルキル)を含むシェルとを含み、この組成物は、0から0.8質量パーセントのポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体を含む。
【0079】
実施形態2:実施形態1の組成物であって、ポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサンを含む。
【0080】
実施形態3:実施形態1または2の組成物であって、ポリ((メタ)アクリル酸アルキル)は、ポリ(メタクリル酸メチル)を含む。
【0081】
実施形態4:実施形態1〜3のいずれか1つの組成物であって、コア−シェル耐衝撃性改良剤は、コア−シェル耐衝撃性改良剤の質量に対して、65から85質量パーセントのコアと、15から35質量パーセントのシェルとを含む。
【0082】
実施形態5:実施形態1〜4のいずれか1つの組成物であって、15から30質量パーセントのブロックポリエステルカルボナートを含み、更に、10から30質量パーセントのブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンを含み、ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含むポリエステルブロックと、
【化52】
次の構造を持つカルボナート繰り返し単位を含むポリカルボナートブロックと、
【化53】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60パーセントは芳香族である)
ジメチルシロキサン繰り返し単位を含むポリシロキサンブロックとを含む。
【0083】
実施形態6:実施形態1〜5のいずれか1つの組成物であって、更に、1から10質量パーセントのブロックポリエーテルイミド−ポリシロキサンを含む。
【0084】
実施形態7:実施形態1〜6のいずれか1つの組成物であって、0から1質量パーセントのホスファゼン難燃剤を含む。
【0085】
実施形態8:実施形態1〜7のいずれか1つの組成物であって、有機リン酸エステル、ジアルキルホスフィン酸金属塩、ホスファゼン、メラミン系難燃剤、および金属水酸化物を含まない。
【0086】
実施形態9:実施形態1の組成物であって、45から55質量パーセントのポリエーテルイミドと、15から30質量パーセントのブロックポリエステルカルボナートと、6から12質量パーセントのブロックポリカルボナート−ポリシロキサンと、2から6質量パーセントのコア−シェル耐衝撃性改良剤とを含み、更に、10から30質量パーセントのブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンを含み、ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含むポリエステルブロックと、
【化54】
次の構造を持つカルボナート繰り返し単位を含むポリカルボナートブロックと、
【化55】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60パーセントは芳香族である)
ジメチルシロキサン繰り返し単位を含むポリシロキサンブロックとを含む。
【0087】
実施形態10:実施形態9の組成物であって、ポリエーテルイミドは、ポリ(2,2’−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニルプロパン)−1,3−フェニレンビスイミド)を含み、ブロックポリエステルカルボナートのポリカルボナートブロックのR
1基の総数の少なくとも90パーセントは、1,3−フェニレン(即ち、レゾルシノールの残基)または2,2−ビス(1,4−フェニレン)プロパン(即ち、ビスフェノールAの残基)であり、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンのポリカルボナートブロックのR
1基の総数の少なくとも90パーセントは、1,3−フェニレン(即ち、レゾルシノールの残基)または2,2−ビス(1,4−フェニレン)プロパン(即ち、ビスフェノールAの残基)であり、ブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンのポリカルボナートブロックのR
1基の総数の少なくとも90パーセントは、1,3−フェニレン(即ち、レゾルシノールの残基)または2,2−ビス(1,4−フェニレン)プロパン(即ち、ビスフェノールAの残基)であり、ブロックポリカルボナート−ポリシロキサンおよびブロックポリエステルカルボナート−ポリシロキサンのポリシロキサンブロックはポリジメチルシロキサンを含み、コア−シェル耐衝撃性改良剤のポリ((メタ)アクリル酸アルキル)はポリ(メタクリル酸メチル)を含む。
【0088】
実施形態11:組成物を含む物品であって、この組成物は、組成物の総質量に対して、40から60質量パーセントのポリエーテルイミドと、15から50質量パーセントのブロックポリエステルカルボナートと、5から15質量パーセントのブロックポリカルボナート−ポリシロキサンと、1.5から7質量パーセントのコア−シェル耐衝撃性改良剤とを含み、ブロックポリエステルカルボナートは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含むポリエステルブロックと、
【化56】
次の構造を持つカルボナート繰り返し単位を含むポリカルボナートブロックとを含み、
【化57】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60パーセントは芳香族である)
コア−シェル耐衝撃性改良剤は、コア−シェル耐衝撃性改良剤の質量に対して、60から95質量パーセントの、ポリシロキサンを含むコアと、5から40質量パーセントの、ポリ((メタ)アクリル酸アルキル)を含むシェルとを含み、この組成物は、0から0.8質量パーセントのポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体を含む。
【0089】
実施形態12:実施形態11の物品であって、この物品は1から5ミリメートルの直径を持つフィラメントである。
【0090】
実施形態13:実施形態11の物品であって、本組成物を含む、少なくとも2つの隣接する層を含む。
【0091】
実施形態14:実施形態12または13の物品であって、この物品の特徴は、互いに直交する、x、y、およびzの寸法によって表され、x、y、およびzの寸法は独立して、0.5ミリメートルから50センチメートルである。
【0092】
実施形態15:積層造形法であって、この方法は、溶融した組成物を溶融押出して、複数の隣接する層を所定のパターンに形成する工程を含み、溶融組成物の特徴はガラス転移温度によって表され、溶融組成物は、溶融組成物のガラス転移温度よりも5から250℃高い温度を持ち、溶融組成物は、組成物の総質量に対して、40から60質量パーセントのポリエーテルイミドと、15から50質量パーセントのブロックポリエステルカルボナートと、5から15質量パーセントのブロックポリカルボナート−ポリシロキサンと、1.5から7質量パーセントのコア−シェル耐衝撃性改良剤とを含み、ブロックポリエステルカルボナートは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含むポリエステルブロックと、
【化58】
次の構造を持つカルボナート繰り返し単位を含むポリカルボナートブロックとを含み、
【化59】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60パーセントは芳香族である)
コア−シェル耐衝撃性改良剤は、コア−シェル耐衝撃性改良剤の質量に対して、60から95質量パーセントの、ポリシロキサンを含むコアと、5から40質量パーセントの、ポリ((メタ)アクリル酸アルキル)を含むシェルとを含み、この組成物は、0から0.8質量パーセントのポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体を含む。
【0093】
実施形態16:実施形態15の方法であって、溶融押出工程は、0.2から5ミリメートルの内径を持つノズルから溶融組成物を溶融押出する工程を含み、この方法は更に、組成物を含むフィラメントを、ガラス転移温度よりも少なくとも20℃低い温度から、ガラス転移温度よりも5から50℃高い温度まで加熱することによって、溶融組成物を生成する工程を含み、フィラメントは1から5ミリメートルの直径を持つ。
【0094】
実施形態17:積層造形のための溶融押出材料としての組成物の使用法であって、この組成物は、組成物の総質量に対して、40から60質量パーセントのポリエーテルイミドと、15から50質量パーセントのブロックポリエステルカルボナートと、5から15質量パーセントのブロックポリカルボナート−ポリシロキサンと、1.5から7質量パーセントのコア−シェル耐衝撃性改良剤とを含み、ブロックポリエステルカルボナートは、次の構造を持つレゾルシノールエステル繰り返し単位を含むポリエステルブロックと、
【化60】
次の構造を持つカルボナート繰り返し単位を含むポリカルボナートブロックとを含み、
【化61】
(式中、R
1基の総数の少なくとも60パーセントは芳香族である)
コア−シェル耐衝撃性改良剤は、コア−シェル耐衝撃性改良剤の質量に対して、60から95質量パーセントの、ポリシロキサンを含むコアと、5から40質量パーセントの、ポリ((メタ)アクリル酸アルキル)を含むシェルとを含み、この組成物は、0から0.8質量パーセントのポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロック共重合体を含む。
【0095】
実施形態18:実施形態17の使用法であって、組成物の特徴はガラス転移温度によって表され、この使用法は、組成物を含むフィラメントを、ガラス転移温度よりも少なくとも20℃低い温度から、ガラス転移温度よりも5から50℃高い温度まで加熱することによって、溶融組成物を生成する工程と、溶融組成物を押出して、複数の隣接する層を所定のパターンに形成する工程とを含み、フィラメントは1から5ミリメートルの直径を持つ。
【0096】
実施形態19:組成物であって、ある量の(an amount of)ポリエーテルイミドと、組成物の質量に対して1から5質量%存在する、シロキサン−アクリル系コア−シェル耐衝撃性改良剤添加物とを含み、シロキサン−アクリル系コア−シェル耐衝撃性改良剤添加物は5から100質量%のゴム含有量を持つ。
【0097】
実施形態20:実施形態19の組成物であって、この組成物は、組成物の総質量に対して、48.4質量パーセントのポリエーテルイミドと、3.0質量パーセントのシロキサン−アクリル系コア−シェル耐衝撃性改良剤添加物とを含み、更に、組成物の総質量に対して、37.8質量パーセントのポリカルボナート−エステルポリマーと、7.8質量パーセントのポリカルボナート−シロキサンポリマーと、2.9質量パーセントのポリエーテルイミドジメチルシロキサン共重合体と、0.1質量パーセントのトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトとを含む。
【0098】
文中に開示されている範囲は全て終点を含み、終点は独立して互いに結合可能である。文中に開示されているそれぞれの範囲は、開示の範囲内にある全ての点または部分的範囲の開示を成すものである。
【0099】
以下の非制限的な実施例で、本発明を更に詳しく説明する。
【実施例】
【0100】
[実施例1]
これらの実施例で使用する成分を表1にまとめる。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
組成物を表2にまとめる。表中、成分量は、組成物の総質量に対する質量パーセントで示されている。
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
長さと直径の比が33:1、型当たり面の上流に真空ポートを設けた、25ミリメートルのWerner-Pfleiderer ZAK2軸スクリュー押出機で、供給口から金型までのバレル温度を、280〜295℃/280〜295℃/285〜300℃/290〜305℃/295〜310℃/300〜315℃/305〜320℃、金型温度を305〜320℃、スループットを15〜25キログラム/時として作動させ、組成物を混合した。全ての成分を供給口で加えた。押出成形物を水浴で冷却後、ペレットとした。ペレットは使用前に、真空オーブン中135℃で少なくとも4時間乾燥させた。
【0107】
表3に、被験組成物のメルトフローレート(MFR)値とガラス転移温度(T
g)値を示す。MFR値(グラム/10分で表示)は、ASTM D1238−13に従い、295℃の温度、6.6キログラムの負荷で測定した。T
g値は、示差走査熱量測定法により、40から400℃の範囲、20℃/分の加熱速度を用いて測定した。比較例1(シロキサン−アクリル系コア−シェル耐衝撃性改良剤を含まない)と、実施例1(5質量パーセントのシロキサン−アクリル系コア−シェル耐衝撃性改良剤を含む。他の成分の量は比例して減じる)および実施例2(3質量パーセントのシロキサン−アクリル系コア−シェル耐衝撃性改良剤を含む。他の成分の量は比例して減じる)との比較から、3または5質量パーセントのシロキサン−アクリル系コア−シェル耐衝撃性改良剤を加えても、組成物のメルトフローレートとガラス転移温度にはあまり影響がなく、または何ら影響しないことが分かる。実施例1および2(リン酸エステル難燃剤を含まない)と、それに対応する実施例4および3(3質量パーセントのリン酸エステル難燃剤を含む)との比較から、3質量パーセントのリン酸エステル難燃剤を加えると、メルトフローレートが有意に増加し、ガラス転移温度が有意に低下することが分かる。実施例2と比較例5との比較から、3質量パーセントのリン酸エステル難燃剤を加えた場合の変化よりも、3質量パーセントのホスファゼン難燃剤を加えた場合の方が、メルトフローの増加が小さく、ガラス転移温度の低下も小さいことが分かる。その他の配合(実施例5〜8および比較例2〜4)は全て、比較例1と比べて、メルトフローレートとガラス転移温度にあまり影響がなく、または何ら影響しないことが分かる。リン酸エステルまたはホスファゼン難燃剤を含む、実施例3および4と比較例5だけが、MFRおよびT
g値に有意に影響する。
【0108】
【表5】
【0109】
【表6】
【0110】
組成物を用いて、引張係数と破断時の引張強さと引張伸び(それぞれ、ASTM D638−14に従って測定)、およびノッチ付きアイゾット衝撃強さ(ASTM D256−10e1に従って測定)のための試験物を射出成形した。射出成形には、Sumitomo 180トン DEMAG(商標)成形機を用い、バレル温度を300〜330℃、型温を110〜140℃、スクリュー速度を40〜70回転/分、背圧を0.3〜0.7メガパスカル、シリンダーサイズに対する射出(shot to cylinder size)を40〜60%として作動させた。その結果(表4に示す)から、実施例1〜8(コア−シェル耐衝撃性改良剤を含む)は、比較例1(コア−シェル耐衝撃性改良剤を含まない)の3倍以上大きいノッチ付きアイゾット衝撃強度を示すことが分かる。またその結果から、耐衝撃性が改良された実施例1〜8は、比較例1(耐衝撃性改良剤を含まない)と同程度またはそれより大きい引張強度を示すことが分かる。
【0111】
【表7】
【0112】
【表8】
【0113】
【表9】
【0114】
実施例1〜8および比較例2〜5の組成物について、Fiber Extrusion TechnologyのFET押出機を用いてモノフィラメントを作成した。押出条件は、樹脂組成物のガラス転移温度に基づいて最適化した。得られたフィラメントの直径は約1.79ミリメートルであった。比較例1の組成物では、対応するモノフィラメントを、Stratasysより、ULTEM9085フィラメント(“ULTEM”は、SABICの商標)として入手した。
【0115】
モデル温度を375〜385℃、オーブン温度を約185℃、チップサイズを0.406ミリメートル(0.016インチ;T16)、層厚さ(分解能)を0.254ミリメートル(0.010インチ;T16)、輪郭およびラスター幅を0.508ミリメートル(0.020インチ)、グレーター(greater)の精度を+/−0.13ミリメートル(+/−0.005インチ)または+/−0.0015ミリメートル/ミリメートル(+/−0.0015インチ/インチ)、速度を約305メートル/秒(12インチ/秒)、空隙を、−0.0254ミリメートル(−0.0010インチ)から0.0000ミリメートル(0.0000インチ)までとした、STRATASYS FORTUS(商標)900mc 3Dプリンタで、FFF法により、モノフィラメントを用いて印刷を行った。
【0116】
それぞれの組成物について、向きの異なる3つの試料として、ASTM引張およびアイゾット試験用棒状物(bars)を印刷した。これらを
図1に図解し、Z方向に対して名前を付ける。1と標記した向きは、XZの向きを持ち、“縦型(upright)”と名付け、2と標記した向きは、YZの向きを持ち、“横型(on-edge)”と名付け、3と標記した向きは、XYの向きを持ち、“平面型(flat)”と名付ける。引張特性は、ASTM D638−14に従って測定した。ノッチ付きアイゾット衝撃強さは、ASTM D256−10e1に従い、振り子エネルギーを2.71ジュール(2フィート−ポンド)とし、23℃で測定した。結果を表5に示すが、ここに示されている平均値および標準偏差は、組成物と試料の向きとの組み合わせ毎に5個の試料の試験結果を反映している。この結果から、耐衝撃性を改良した実施例1〜6および8は、比較例1に比べて、平面型および横型のノッチ付きアイゾット衝撃強さの大幅な上昇を示すことが分かる。縦型方向では、衝撃強さは改善しなかった。特定の理論にとらわれるものではないが、発明者は、この特性が材料だけでなく層間の接着性にも依存し、最も弱い層界面で破断が起こると予想されるため、このようになるのであろうと推測する。耐衝撃性改良剤の添加で予想されるように、また、射出成形した試験部品に関する、表4の結果に見られるように、実施例1〜6および8の引張強さおよび引張係数の値は、比較例1に比べて僅かに低下した。
【0117】
【表10】
【0118】
【表11】
【0119】
【表12】
【0120】
米国連邦航空規則パート25、セクション25.853のプロトコルに従い、難燃性試験を実施した。より詳しくは、米国連邦航空局通達25.853−1(“Flammability Requirements for Aircraft Seat Cushions”,1986年9月17日発行)に記載されている。この試験は、米国インディアナ州マウントバーノン、Herb Curry, Inc.,によって行われた。実施例1〜10および13〜15の組成物から作成した試験物について試験を行った。表6の結果は、組成物毎に3個の試料の試験結果から得た平均値および標準偏差である。表6中、“55/55”の“限界”は、試験に合格するために、それぞれの試料が、平均で55kW−分/m
2以下の2分積算発熱速度(Two Minute Integrated Heat Release Rate)と、平均で55kW/m
2以下の最大発熱(Peak Heat Release)を示さなければならないことを意味する。“65/65”の“限界”は、試験に合格するために、それぞれの試料が、平均で65kW−分/m
2以下の2分積算発熱速度と、平均で65kW/m
2以下の最大発熱を示さなければならないことを意味する。この結果から、比較例1および2と、実施例1、2、5、および6は、55/55および65/65限界の両方で合格できたが、リン酸エステル難燃剤を含む実施例3および4は、65/65限界のみ合格し、ホスファゼン難燃剤を含む比較例5は、55/55および65/65限界の両方において不合格であったことがわかる。
【0121】
【表13】
【0122】
【表14】
【0123】
【表15】
【0124】
図2は、フィラメントを用いる積層造形法で製造する部品の層の、フィラメント(ラスター)充填パターンの予測図である。このパターンは、どのような印刷の向きに適用しても良い。
図2中に標識した特徴(“第1層”、“第2層”、“プリントヘッドの移動方向”、“フィラメント(ラスター)幅”、“ラスター間の空隙”)は、積層造形技術の当業者には公知である。
【0125】
図2中、層厚(標識せず)は、ノズルによって堆積される層の厚さである。ラスター角(標識せず)は、応力のかかっている方向に対するラスターの方向である。ラスター間の空隙9は、同じ層内に堆積される2つの隣接するフィラメント間の距離である。外辺(輪郭)10は、部品の外縁に沿って堆積されるフィラメントの数である。フィラメント(ラスター)幅8は、ノズルによって堆積されるフィラメントの幅である。プリントヘッド4は、連続する層毎に走行の角度を変えるよう操作可能であり、例えば、連続する層毎に90度変えることができる。例えば、プリントヘッドの移動方向6は、第2層5では、第1層7を作る際に用いた角度とは90度異なる走行角(標識せず)を成している。
【0126】
次の表7は、FORTUS(商標)900mc 3Dプリンタで印刷した、前記の平面型部品と同じように、比較例1および実施例1の組成物を、MAKERBOT(商標)レプリケーター2Xデスクトッププリンターで、走行角を90度変え、ノズルおよびベッド温度を表7に示す温度とし、層分解能を100マイクロメートル(0.0039インチ)、ノズル/チップ直径を0.4ミリメートル(0.015インチ)、層厚を0.2ミリメートル、印刷速度を90ミリメートル/秒として印刷し、連続する層を作成後に試験した、ノッチ付きアイゾット衝撃強さの結果を示している。表7の結果から、実施例1の部品は、より低いノズル温度(比較例1で350℃であるのに対し、実施例1では332℃)で印刷した後でも、比較例1の部品よりも良好な衝撃強さを持つことが分かる。比較例1の部品と比較した、実施例1の部品の衝撃強さの向上は、STRATASYS FORTUS(商標)900mcで印刷した部品よりも、MAKERBOT(商標)レプリケーター2Xで印刷した部品の方が小さかった(表5参照)。特定の理論にとらわれるものではないが、発明者は、装置パラメータや熱分布の違いによってこのようになるのであろうと推測する。
【0127】
【表16】
【0128】
以上のように、所定の印刷の向き(例えば、平面型、横型)において、ポリエーテルイミドとブロックポリエステルカルボナートとコア−シェル耐衝撃性改良剤とを含む組成物は、コア−シェル耐衝撃性改良剤を含まない組成物の約2から約5倍の、ノッチ付きアイゾット衝撃強度を示すことができる。また、コア−シェル耐衝撃性改良剤の添加は、引張係数および/または破断時引張強さの改善にも関与する。