【実施例】
【0056】
(1)実施例1:豆乳由来バター様食品
原料として、成分無調整豆乳5kg(50質量%)と、融点33℃のパーム油加工油脂5kg(50質量%)とを用いた。
【0057】
まず、成分無調整豆乳を品温60℃に加熱した(植物ミルク加熱工程S1)。一方、パーム油加工油脂を60℃で加熱溶解した(油脂加熱工程S2)。そして、加熱した成分無調整豆乳に、加熱溶解したパーム油加工油脂を撹拌しながら添加し、O/W型エマルジョンに予備乳化した(乳化工程S3)。
【0058】
次いで、この予備乳化物をコロイドミルに通して均質化した後、緩く撹拌しながら品温が15℃になるまで冷却し(冷却工程S4)、そのまま冷所に15時間置いてエージングを施した(エージング工程S5)。
【0059】
次にこのエージング後の乳化物を、ホイッパーを装着した製菓・製パン用の縦型ミキサー(30クォート、愛工舎)に移して最高速で撹拌し、キャビテーションを生じさせて乳化を破壊し、水相と油相固形分とを分離させた(キャビテーション工程、S6)。
【0060】
そして、水相を濾過布にて分離除去した油相固形分を再度、今度はビーターを装着した上記縦型ミキサーにて、均一に練り上げ(均一化工程、S7)、適宜の容器に移して豆乳由来バター様食品が得られた。この得られた豆乳由来バター様食品は、W/O型エマルジョンではなく、油相中に気泡粒、水相、蛋白質、炭水化物等が分散する、コロイド状の組成物となっていた。
【0061】
上記にて得られた豆乳由来バター様食品を成分分析に供した。その結果は、下記表1の通りであった。
【0062】
【表1】
【0063】
なお、大豆レシチンはリン脂質であるため、脂質に包含される。また、イソフラボンは配糖体として存在しているため、炭水化物に含有される。よって、上記表1では、大豆レシチン及びイソフラボンはそれぞれ脂質及び炭水化物の下に括弧付きで表示している。
【0064】
上記表1に示すとおり、大豆レシチン0.262質量%及びイソフラボン0.008質量%を合計した0.270質量%が、大豆由来の微量成分の割合であった。このような大豆由来の微量成分が検出されることで、得られたバター様食品が豆乳由来であることが確認された。
【0065】
(2)実施例2:豆乳由来バター様食品
実施例2では、キャビテーション工程(S6)までは上記実施例1と同様に実施した。そして、水槽を濾過布にて分離除去した油相固形分100質量部に対し、5質量部のおから粉(LGIパウダー 500メッシュ、OKM)を添加した上で、ビーターを装着した上記縦型ミキサーにて、均一に練り上げ(均一化工程、S7)、適宜の容器に移して豆乳由来バター様食品が得られた。この得られた豆乳由来バター様食品は、W/O型エマルジョンではなく、油相中に気泡粒、水相、蛋白質、炭水化物等が分散する、コロイド状の組成物となっていた。
【0066】
上記にて得られた豆乳由来バター様食品を成分分析に供した。その結果は、下記表2の通りであった。
【0067】
【表2】
【0068】
なお、大豆レシチン及びイソフラボンの数値が括弧付きになっていることについては、上記実施例1と同様である。
【0069】
上記表2に示すとおり、大豆レシチン0.311質量%及びイソフラボン0.011質量%を合計した0.322質量%が、大豆由来の微量成分の割合であった。このような大豆由来の微量成分が検出されることで、得られたバター様食品が豆乳由来であることが確認された。
【0070】
(3)実施例3:豆乳由来バター様食品
なお、以下のようにしても豆乳由来バター様食品を得ることができる。
原料として、成分無調整豆乳2kg(20質量%)と、下記組成の混合油脂8kg(80質量%)とを用いる。
エステル交換による菜種油加工油脂(融点36℃):80質量%
大豆白絞油:20質量%
【0071】
上記混合油脂の計算融点は33.8℃である。なお、この計算融点は、大豆白絞油の融点を25℃と仮定し、下記計算式のように、それぞれの融点を配合比で按分して算出されたものである。
【0072】
36(℃)×0.8+25(℃)×0.2=33.8(℃)
【0073】
まず、成分無調整豆乳を品温60℃に加熱する(植物ミルク加熱工程S1)。一方、混合油脂を60℃で加熱溶解した(油脂加熱工程S2)。そして、加熱した成分無調整豆乳と、加熱溶解した混合油脂とをTKホモミキサー(特殊機化工業)でO/W型エマルジョンに乳化する(乳化工程S3)。
【0074】
次いで、この乳化物を10℃以上15℃以下の冷所で18時間保管して冷却及びエージングを施す(冷却工程S4、エージング工程S5)。
【0075】
次にこのエージング後の乳化物を、上記TKホモミキサーの転流板を界面付近まで上げた状態で高速撹拌させ、キャビテーションを生じさせて乳化を破壊し、水相と油相固形分とを分離させる(キャビテーション工程、S6)。
【0076】
そして、水相を濾過布にて分離除去した油相固形分をパン生地捏ね器(日本ニーダー)にて均一に練り上げ(均一化工程、S7)、適宜の容器に移して豆乳由来バター様食品が得られる。この得られた豆乳由来バター様食品は、W/O型エマルジョンではなく、油相中に気泡粒、水相、蛋白質、炭水化物等が分散する、コロイド状の組成物となる。
【0077】
なお、油相固形分を均一化工程に供する前に、上記実施例2と同様に、油相固形分100質量部に対して5質量部以上10質量部以下のおから粉を添加してもよい。
【0078】
(4)実施例4:ライスミルク由来バター様食品
原料として、ライスミルク(キッコーマン)4kg(40質量%)と、融点33℃のパーム油加工油脂6kg(60質量%)を用いた。
【0079】
まず、ライスミルクを品温55℃に加熱した(植物ミルク加熱工程S1)。一方、パーム油加工油脂を60℃で加熱溶解した(油脂加熱工程S2)。そして、加熱したライスミルクに、加熱したパーム油加工油脂をTKホモミキサーで撹拌しながら添加し、O/W型エマルジョンに予備乳化した(乳化工程S3)。
【0080】
次いで、この予備乳化物をコロイドミルに通して均質化した後、緩く撹拌しながら品温が10℃になるまで冷却し(冷却工程S4)、そのまま冷所に15時間置いてエージングを施した(エージング工程S5)。
【0081】
次にこのエージング後の乳化物を、製菓・製パン用の縦型ミキサー(30クォート、愛工舎)に移しホイッパーで最高速のスピードで7〜8分間撹拌、気泡させ続け、乳化を破壊し、水相と油相固形分に分離させた(キャビテーション工程、S6)。
【0082】
そして、水相を濾過布にて分離除去した油相固形分を再度、今度はビーターを装着した上記縦型ミキサーにて、均一に練り上げ(均一化工程、S7)、適宜の容器に移してライスミルク由来バター様食品が得られた。この得られたライスミルク由来バター様食品は、W/O型エマルジョンではなく、油相中に気泡粒、水相、蛋白質、炭水化物等が分散する、コロイド状の組成物となっていた。
【0083】
上記にて得られたライスミルク由来バター様食品を成分分析に供した。その結果は、下記表3の通りであった。なお、下記表3中で「―」で示した項目は含有量が検出限界未満であったことを示す。また、有効数字の関係上、下記数値の合計は100%にはなっていない。ただし、トランス脂肪酸は脂質に含有される成分である。
【0084】
【表3】
【0085】
上記表3に示すように、トランス脂肪酸は0.35質量%と、通常のバターにおけるトランス脂肪酸は、「食品安全委員会 「食品に含まれるトランス脂肪酸の評価基礎資料調査報告書」(2007)」によれば平均値で1.951g/100g(=1.951質量%)であるのと比べ、大幅に低くなっている。また、通常のバターにおけるコレステロールは、日本食品標準成分表2015年版(七訂)(以下、「食品成分表」とする。)によれば210mg/100g(=0.21質量%)であるところ、上記表3では検出限界未満であった。さらに、通常のバターにおけるα−トコフェロールは食品成分表によれば1.5mg/100g(=0.0015質量%)であるところ、上記表3ではその約10倍の値であった。また、通常のバターにおける蛋白質は食品成分表によれば0.6g/100g(=0.6質量%)であるところ、上記表3では検出限界未満であった。以上より、ライスミルク由来バター様食品は、分析値によって通常のバターとは十分に区別可能である。一方、通常のバターにおける炭水化物は食品成分表によれば0.2g/100g(=0.2質量%)であるところ、上記表3ではこの10倍以上の3.2質量%であり、この点がライスミルクを原料としていることに起因する、ライスミルク由来バター様食品の特徴の1つであると考えられる。
【0086】
(5)実施例5:ココナツミルク由来バター様食品
原料として、ココナツミルク4kg(40質量%)と、融点33℃のパーム油加工油脂6kg(60質量%)を用いた以外は上記実施例3に準じた製法によって、ココナツミルク由来バター様食品を得た。この得られたココナツミルク由来バター様食品は、W/O型エマルジョンではなく、油相中に気泡粒、水相、蛋白質、炭水化物等が分散する、コロイド状の組成物となっていた。
【0087】
上記にて得られたココナツミルク由来バター様食品を成分分析に供した。その結果は、下記表4の通りであった。なお、下記表4中で「―」で示した項目は含有量が検出限界未満であったことを示す。また、有効数字の関係上、下記数値の合計は100%にはなっていない。ただし、トランス脂肪酸及びラウリン酸は脂質に含有される成分である。
【0088】
【表4】
【0089】
上記表4に示すように、トランス脂肪酸は0.24質量%と、前記したバターにおける平均値より大幅に低くなっている。さらには、コレステロールが検出限界未満と前記したバターでの値より大幅に低い一方、α−トコフェロールが0.0057質量%と大幅に高いことから、ココナツミルク由来バター様食品は分析値によって通常のバターとは十分に区別可能である。一方、ラウリン酸は9.5質量%であり、アメリカ合衆国農務省(USDA)「National Nutrient Database」による有塩バターのラウリン酸(12:0脂肪酸)の含有量である2.587g/100g(=2.587質量%)の約4倍と大幅に上回り、この点はココナツミルク由来バター様食品の特徴と思われた。
【0090】
(6)実施例6:アーモンドミルク由来バター様食品
原料として、アーモンドミルク4kg(40質量%)と、融点33℃のパーム油加工油脂6kg(60質量%)を用いた以外は上記実施例3に準じた製法によって、アーモンドミルク由来バター様食品を得た。この得られたアーモンドミルク由来バター様食品は、W/O型エマルジョンではなく、油相中に気泡粒、水相、蛋白質、炭水化物等が分散する、コロイド状の組成物となっていた。
【0091】
上記にて得られたアーモンドミルク由来バター様食品を成分分析に供した。その結果は、下記表5の通りであった。なお、下記表5中で「―」で示した項目は含有量が検出限界未満であったことを示す。また、有効数字の関係上、下記数値の合計は100%にはなっていない。ただし、トランス脂肪酸は脂質に含有される成分である。
【0092】
【表5】
【0093】
上記表5に示すように、トランス脂肪酸は0.38質量%と、前記したバターにおける標準的な値より大幅に低くなっている。さらには、コレステロールが検出限界未満と前記したバターでの値より大幅に低い一方、α−トコフェロールが0.0105質量%と大幅に高いことから、ココナツミルク由来バター様食品は分析値によって通常のバターとは十分に区別可能である。また、炭水化物が検出限界未満と、食品成分表によるバターの炭水化物含有量である0.2gを大幅に下回り、この点は炭水化物含有量が少ないココナツミルクを原料とするココナツミルク由来バター様食品の特徴の1つと思われた。
【0094】
(7)可塑性評価
上記した、実施例1の豆乳由来バター様食品、実施例4のライスミルク由来バター様食品、実施例5のココナツミルク由来バター様食品及び実施例6のアーモンドミルク由来バター様食品の可塑性を以下のようにして評価した。なお、比較例として通常のバターを使用した。
【0095】
具体的には、それぞれの実施例及び比較例のサンプルを約3cm角に切り出し、これを5℃、10℃、15℃及び20℃で12時間保管した。
【0096】
各サンプルについて、レオメーター(RTC2005D−D、レオテック)にて、変形に要する応力を測定した。具体的には、先端に直径5mmの円盤が設けられたプランジャーをサンプルに接触させた状態から、進入速度2cm/分にて、15mm進入させたとこに最大応力(N/cm
2)をレオメーターにて測定した。その結果を下記表6に示す。
【0097】
【表6】
【0098】
上記表6より、いずれのサンプルについても、温度の上昇に伴う最大応力の低下が認められた。特に、実施例4のココナツミルク由来バター様食品及び実施例5のアーモンドミルク由来バター様食品では、いずれの温度においても実施例1及び実施例3並びに比較例に比べ最大応力が低く、応力に対する変形が容易であることが認められた。
【0099】
ただし、いずれの実施例及び比較例についても、5℃、10℃及び15℃では測定中にサンプルが割れてしまったため、これらの温度では可塑性は有していないと考えられる。一方、20℃では、いずれの実施例及び比較例についても、プランジャーによる変形が維持され、可塑性を有していることが認められた。特に、実施例1の豆乳由来バター様食品及び実施例3のライスミルク由来バター様食品では、可塑性に関しては比較例としてのバターとほぼ同様の挙動を示すことが認められた。