特許第6664868号(P6664868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6664868
(24)【登録日】2020年2月21日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】トルク伝達を改善したカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20200302BHJP
【FI】
   A61M25/00 600
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-234759(P2013-234759)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2014-97390(P2014-97390A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2016年11月7日
【審判番号】不服2018-9602(P2018-9602/J1)
【審判請求日】2018年7月12日
(31)【優先権主張番号】13/677,228
(32)【優先日】2012年11月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ブイ・セルキー
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 林 茂樹
【審判官】 沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0165461(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0181855(US,A1)
【文献】 特開2012−50855(JP,A)
【文献】 特表平7−505554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
細長いカテーテル本体であって、第1の中央管腔、遠位端、及び近位端を有する第1の管状構造を備え、前記第1の管状構造が熱可塑性材料の層を有する、細長いカテーテル本体と、
偏向可能区域であって、第2の中央管腔、及び前記第1の管状構造の前記遠位端の遠位である近位端を有する、第2の管状構造を有し、前記第2の管状構造が熱可塑性材料の層を有する、偏向可能区域と、
前記第1の管状構造の前記遠位端と前記第2の管状構造の前記近位端との間の継ぎ手であって、前記継ぎ手が、2つの第1の縁をともなう第1のブラケット、及び2つの第2の縁をともなう第2のブラケットを含み、それぞれのブラケットが、少なくとも1つの受容形成物を有する、継ぎ手と、
対向する第1及び第2の面をともなう、概して矩形断面を有する梁であって、前記梁の少なくとも一部分が、前記継ぎ手を通って延在する、梁と、
第1の主セグメント、第2の主セグメント、及びそれらの間のU字型屈曲部セグメントを有する、引っ張りワイヤーであって、前記第1および第2の主セグメントはそれぞれ前記カテーテル本体の近位端で制御ハンドルに固定された端部を有し、前記U字型屈曲部セグメントが前記梁の遠位端に形成された穴もしくはスリットに通さている、引っ張りワイヤーと、を備え、
前記第1及び第2のブラケットが前記梁の前記一部分を取り囲む中空体を形成するように、前記2つの第1の縁は、前記梁の前記第1の表面に付着し、前記2つの第2の縁は、前記梁の前記第2の表面に付着し、前記中空体の遠位部分が、前記第2の管状構造の前記熱可塑性材料の層によって被覆され、前記中空体の近位部分が、前記第1の管状構造の前記熱可塑性材料の層によって被覆され、前記第1及び第2の管状構造の前記熱可塑性材料の層がそれぞれ、前記受容形成物内に延在する少なくとも1つの瘤を有する、カテーテル。
【請求項2】
それぞれの前記ブラケットの外面が、前記第1及び第2の管状構造の前記熱可塑性材料の層と固着するように適合された接着剤でコーティングされる、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
それぞれの前記受容形成物が円形断面を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記ブラケットそれぞれ前記受容形成物が所定のずれたパターンで配設される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記第1のブラケットの前記第1の縁が、前記梁の前記第1の表面の外縁に付着し、前記第2のブラケットの前記第2の縁が、前記梁の前記第2の表面の外縁に付着する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記熱可塑性材料の層のそれぞれ、編組したメッシュで被覆される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記編組したメッシュのそれぞれの層が、エラストマー材料によって被覆される、請求項6に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記梁が前記中空体を長手方向に分割する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
それぞれの前記ブラケットが、高強度バネ材料で作成される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記高強度バネ材料が、ステンレス鋼、ニチノール、及びリン青銅から成る群から選択される、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記梁が、第1の管腔半分及び第2の管腔半分を形成するように、前記中空体を二分し、前記引っ張りワイヤーの前記第1の主セグメントが、前記第1の管腔半分を通って、前記カテーテル本体の前記第1の中央管腔を通って延在し、前記引っ張りワイヤーの前記第2の主セグメントが、前記第2の管腔半分を通って、前記カテーテル本体の前記第1の中央管腔を通って延在する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記カテーテル本体の近位において、又はその近くに近位端を有し、かつ前記継ぎ手の遠位に遠位端を有する第1の圧縮コイルを更に備え、前記第1の圧縮コイルが、コイル管腔を有し、前記引っ張りワイヤーの前記第1の主セグメントの一部分が前記コイル管腔を通って延在する、請求項11に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記第1の圧縮コイルが、前記カテーテル本体の前記第1の中央管腔を通って、かつ前記第1の管腔半分を通って延在する、請求項12に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記第1の圧縮コイルの遠位端を受容するように構成されたボアを有する停止部を更に備え、前記停止部内の前記引っ張りワイヤーの前記第1の主セグメントが前記ボアを通って延在し、前記停止部が、前記第1の圧縮コイルを前記梁の前記第1の表面に付着するように構成された、請求項12に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記梁の少なくとも1つの表面上で軸方向に延在する、少なくとも1つのスペーサーを更に備え、前記スペーサーが、前記引っ張りワイヤーの前記第1または第2の主セグメントと前記梁の前記少なくとも1つの表面との間に所定の分離距離を提供するように構成された、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項16】
前記スペーサー及び前記引っ張りワイヤーの前記第1または第2の主セグメントを前記梁に拘束する、少なくとも1つの熱収縮管を更に備える、請求項15に記載のカテーテル。
【請求項17】
前記少なくとも1つのスペーサーが、押し出し加工品を含む、請求項15に記載のカテーテル。
【請求項18】
前記少なくとも1つのスペーサーが、接着層及び配管を備える、請求項15に記載のカテーテル。
【請求項19】
前記第1の圧縮コイルを取り囲む熱収縮管を更に備える、請求項12に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波(RF)又は他のエネルギー源を使用した組織をマッピング及び/又は組織の除去などのように、患者を診断又は治療する目的で患者の血管内で使用する医療用装置に関する。より具体的には、本発明は、平面上の2方向の偏向のために平坦梁を有する、トルク伝達を改善したより長い偏向可能なカテーテル、及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電極カテーテルは、長年にわたり医療行為で一般的に用いられている。電極カテーテルは心臓内の電気的活動を刺激及びマッピングし、異常な電気的活動が見られる部位を除去するために用いられる。心房細動は、一般的な持続性心不整脈であり、脳卒中の主な原因である。この病状は、異常な心房組織基質内で伝播するリエントラント型ウェーブレットによって恒久される。ウェーブレットを遮断するために、様々な方法が開発されており、外科的又はカテーテル媒介心房切開が含まれる。病状を治療する前に、まず、ウェーブレットの位置を判定しなければならない。そのような判定を行うために、様々な技術が提案されており、構造の内周周囲の肺静脈、環状静脈洞、又は他の管状構造内の活性を測定するように適合されたマッピングアセンブリを備えるカテーテルの使用が含まれる。そのようなマッピングアセンブリの1つとして、カテーテル本体に対して概して横断方向、かつその遠位側に位置し、所定の外周を有する概して円形の主領域と、主領域の遠位側に位置する概してまっすぐな遠位領域とからなる管状構造を有するものがある。この管状構造は、少なくともマッピングアセンブリの主要領域を覆う非導電性カバーを備える。形状記憶を有する支持部材は、少なくともマッピングアセンブリの主要領域内に配置される。複数の電極対(それぞれ2つの環電極を含む)は、マッピングアセンブリの概して円形の主要領域によって保持される。
【0003】
使用中、電極カテーテルは、主要静脈又は動脈、例えば、大腿動脈に位置付けられている誘導シース内に挿入され、かつ心室内に誘導される。心室内で、カテーテルは、誘導シースの遠位端を通過して延在し、マッピングアセンブリを暴露させる。カテーテルは、カテーテルの遠位区域の偏向などの動作を介して操作され、これによりマッピングアセンブリは心室の管状領域に配置される。カテーテルの正確な位置及び配向、並びにマッピングアセンブリの構成を制御する能力は、非常に重要であり、カテーテルの有用性が主にこれにより決まる。
【0004】
可動型カテーテルは、一般的に公知である。例えば、米国特許第Re 34,502号は、その遠位端にピストンチャンバを有するハウジングを備える、制御ハンドルを有するカテーテルについて記述している。ピストンは、ピストンチャンバ内に載置され、長さ方向移動が与えられる。細長いカテーテル本体の近位端は、ピストンに付着される。引っ張りワイヤーがハウジングに取り付けられ、ピストンを通り、カテーテル本体を通ってカテーテル本体の遠位端の先端区域内へと延在する。引っ張りワイヤーの遠位端は、カテーテルの先端区域内に固定される。この配置では、ハウジングに対するピストンの長さ方向動作は、カテーテルの先端区域の偏向をもたらす。
【0005】
米国再発行特許第RE 34,502号に記述されている設計は、1本の引っ張りワイヤーを有するカテーテルに一般的に限定される。2方向の偏向が望ましい場合には、1本よりも多い引っ張りワイヤーが必要となる。平面上の2方向の偏向に対して適合されたカテーテルも知られている。平坦梁は、通常平面内の梁の両側に偏向することができるように提供される。しかしながら、偏向下で張力がかかっている引っ張りワイヤーは、しばしば梁のもう一方の側に反転し、又は引っ張りワイヤーが梁の近くに位置する場合、梁を偏向するために大きい曲げモーメントが必要になり、引っ張りワイヤーに著しい応力を課す。更に、梁に近く、かつ梁に緊密に拘束する引っ張りワイヤーについては、接着の破損又は拘束の破断はリスクを引き起こす。
【0006】
2方向の偏向を実現するための一対の引っ張りワイヤーの採用は、空間の制約があるカテーテル内で空間を占めるいくつかの構成部品もまた必要とする。構成部品がより多いことは、構成部品の故障のリスクもまた増加する。Tバー及び/又はクリンプの使用は、引っ張りワイヤーに、過度の疲労を与え、かつカテーテルの長手方向軸に対して引っ張りワイヤーの軸のアラインメントが、たとえわずかな程度であっても、歪む、又はずれる結果としてもたらされる、剪断応力を付与する可能性がある。2方向の偏向は疑いなく1方向偏向を超える改善であるが、2方向の偏向は、一般的に左右対象である一方で、心臓の多くの領域は対称性を欠いている。したがって、より多くの偏向の多様性及び選択肢をともなうカテーテルを提供するのが望ましいことになる。
【0007】
先端操舵機構の部分として平坦な偏向梁を利用する長い偏向可能な先端設計(例えば、90〜180mm以上)を有するカテーテルでは、患者内で先端偏向を正確に設置しかつ制御する能力を提供するために、制御ハンドルから先端に高い忠実度及び低いヒステリシスでねじり力を伝える、カテーテルシャフトと偏向可能な先端との間の遷移を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、引っ張りワイヤー上の著しい引張応力又は剪断応力なしに容易に偏向することができ、かつカテーテル本体と制御ハンドルから偏向可能な先端へとトルクを伝達することができる偏向可能な先端との間に遷移を提供する、平坦な偏向梁を採用して予測できる平面上の2方向の偏向(対称及び非対称)の能力を有する、偏向可能な梁を使用する長い偏向可能な先端設計をともなうカテーテルに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、カテーテルの寸法を小さくするために偏向構成部品を減らした2方向の偏向を実現するための、機能性を妥協することなしに、多数の電極及びリード線などのマッピング及び/又は切除構成部品を搬送、収容、及び支持する能力を含む、偏向梁及び単一の連続的な引っ張りワイヤーを有するカテーテルを目的とする。一実施形態では、カテーテルは、カテーテル本体及び平坦な偏向梁をともなう遠位区域と、制御ハンドルからカテーテル本体及び梁の片側に沿って本体上方へ延在する単一の連続的な引っ張りワイヤーと、平坦梁の遠位端の周りを周るU字型屈曲部と、を有する。次いで、引っ張りワイヤーは、平坦梁のもう一方の側に沿って下がって戻り、カテーテル本体まで下がり、そして制御ハンドルに戻るように延びる。カテーテルは、有利にも、カテーテル本体と遠位区域との間に、制御ハンドルからカテーテル本体及び遠位区域にトルクを伝達するのに特に効果的である、継ぎ手を提供する。カテーテル本体及び遠位区域のそれぞれは、中央管腔をともなう管状構造を有する。それぞれの管状構造は、少なくとも熱可塑性材料の内層を有する。継ぎ手は、そのそれぞれが他方に向かい、かつ閉じた形状の継ぎ手において梁に橋を架けかつ周囲方向に取り囲む中空体を形成するように、平坦な偏向梁のそれぞれの側に付着し、同時に、構成部品が継ぎ手を中断されることなく通過するのを可能にする、2つの開いた形状のブラケットを含む。カテーテル本体の遠位端は、中空体の近位端上に滑動して被さり、かつ偏向可能区域の近位端は、中空体の遠位端上に滑動して被さる。それぞれのブラケットは、熱及び圧力をかけることによって連結を形成するように、それぞれの管状構造の熱可塑性材料が、例えば、2部品の熱融合ダイを利用することによって、その中に溶融し、かつ移動することができる陥凹部又は貫通穴を有する。熱融合の間、熱収縮管が継ぎ手の外側に設置され、冷却後に除去されてもよい。
【0010】
より詳細な実施形態では、それぞれのブラケットは、その長さ方向及び2つの長手方向側縁に沿って、「C字型」断面をともなう半円筒形状を有する。側縁に沿って平坦梁の反対側に付着する一対のブラケットは、継ぎ手において、梁の周囲に中空な円筒本体を形成する。ブラケットは、硬質の冷間加工ステンレス合金鋼(304又は316硬質状態)、ニッケル/チタン合金(ニチノール)又はリン青銅合金を含む、任意の適切な材料で構築される。これらは、管状構造の熱可塑性材料とのより良好な固着のために、接着剤でコーティングされてもよい。
【0011】
別のより詳細な実施形態では、それぞれの管状構造は、熱可塑性材料の上に編組したメッシュの層及びエラストマー材の外層も有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明のこれらの特徴及び利点並びに他の特徴及び利点は、添付図面と合わせて考慮し、以下の詳細な説明を参照することによってより充分な理解がなされるであろう。選択した構造及び特徴は、残りの構造及び特徴を見やすくするために、図面によっては示されていない点を理解されたい。
図1】本発明の一実施形態によるカテーテルの上面平面図である。
図2】本発明の一実施形態による、図1のカテーテル本体とカテーテルの偏向可能区域との間の、遷移区域の側面断面図である。
図2A】直線A−−Aに沿って取られた、図2の遷移区域の端部断面図である。
図3A】偏向梁の片側を含む、偏向可能区域の内部の斜視図である。
図3B】偏向梁のもう一方の側を含む、図3Aの偏向可能区域の内部の斜視図である。
図4】本発明の実施形態による、偏向梁の遠位端を含む、偏向可能区域の一部の側面断面図である。
図4A】直線A−−Aに沿って取られた、図4の偏向可能区域の端部断面図である。
図4B】直線B−−Bに沿って取られた、図4の偏向可能区域の端面断面図である。
図4C】直線C−−Cに沿って取られた、図4の偏向可能区域の端部断面図である。
図4D】直線D−−Dに沿って取られた、図4の偏向可能区域の端部断面図である。
図5A】本発明の一実施形態による偏向梁の遠位端の上面平面図である。
図5B図5Aの偏向梁の遠位端の底面平面図である。
図5C】本発明の一実施形態による、図5Aの偏向の遠位端の、遠位アセンブリの支持部材と組み立てられた、一部分を除去した上面平面図である。
図6A】本発明の一実施形態による、それぞれの側にスペーサーをともなう、偏向梁の端部断面図である。
図6B】本発明の別の実施形態による、それぞれの側にスペーサーをともなう、偏向梁の端部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、カテーテルシャフトを有し、偏向可能な遠位区域が、リード線、引っ張りワイヤー、ケーブル、配管、及び任意の他の支持部材を含む先進的な遠位のくぼみ設計のための構成部品のためのカテーテル内の空間を最大限にしながら2方向の偏向を実現する伸長された平坦梁、すなわち「ブレード」を有する、カテーテルを目的とする。図1を参照すると、本発明の実施形態によるカテーテル10は、カテーテルシャフト12と、カテーテルシャフト遠位の偏向可能な遠位区域14と、カテーテルシャフトの近位の制御ハンドル16と、を含む。偏向可能区域14は、例えば、偏向可能区域14の遠位端から延在し、かつ横方向に配向される概して円形の主部をともなう、投げ縄状の設計を有する先端アセンブリ15を有する。有利にも、先端アセンブリ15を支持する偏向可能区域14は、カテーテルの片側に1つの曲率又は偏向DAで、そしてもう一方の側に別の曲率又は偏向DBでの、非対称な2方向の偏向で構成される。偏向は、カテーテルに沿って、制御ハンドル16から、カテーテル本体を通って、遠位区域14内に延在する引っ張りワイヤーを移動する、制御ハンドル16に提供される作動装置13のユーザーの操作によって実現する。
【0014】
図2及び図2Aを参照すると、カテーテル本体12は、単一の、中央の、又は軸方向の管腔18を備える、細長い管状構造を含む。カテーテル本体12は、可撓性すなわち折り曲げ可能であるが、その長さに沿っては実質的に非圧縮性である。カテーテル本体12は、任意の適切な構造であってもよく、任意の適切な材料で作製されてもよい。一実施形態では、カテーテル本体12は、少なくとも内側コーティング又は内側層20と、制御ハンドル16を回転するとき、カテーテル10の偏向可能区域が、対応する様式で回転するように、カテーテル本体12のねじり剛性を上昇するために埋め込まれたステンレス鋼等の編組したメッシュ21をともなう外側コーティング又は外側層22とを備える、多層である。カテーテル本体12の外径はさほど重要ではないが、好ましくは約2.6mm(8フレンチ)以下である。同様に、層20及び層22の厚さは、重要ではない。
【0015】
偏向可能区域14は、柔軟性がより大きいことを除いて、カテーテル本体12の管状構造と類似の構築を有するより短い管状構造である。図2及び図2Aの実施形態では、偏向可能区域14は、少なくとも内側コーティング又は内側層24、及び埋め込まれたステンレス鋼等の編組したメッシュ25をともなう外側コーティング又は外側層26を備える中央管腔19及び多層構築物を有する。偏向可能区域14の外径は、好ましくは、約2.6mm(8フレンチ)未満でカテーテル本体12と類似である。内層20及び外層24のために適切な材料としては、熱偏向温度が高い、したがって患者の体温によって偏向特性が変わらない材料が挙げられる。
【0016】
カテーテル本体12及び偏向可能区域14の層のために適切な材料としては、適度な熱偏向温度を有し、温度変動に起因するその患者の身体内への導入によって、偏向部分14の剛性及びひいては偏向特性が変わらない材料が挙げられる。カテーテル本体12の内層20及び外層22のために適切な材料としては、Pebax及びPellethaneが挙げられる。内層20及び外層22の両方のために特に適切な材料としては、ショア硬度が25〜55Dのより低い範囲のプラスチックが挙げられる。
【0017】
偏向可能区域14の内層24及び外層26のための適切な材料としては、ポリウレタン又はPEBAXが挙げられる。一実施形態では、偏向可能区域14の管状構造17は、自然「粘着性」の2533−SA−01 PEBAXの約0.051mm(0.002インチ)〜0.076mm(0.003インチ)の範囲の間の厚さを有する内層24、次いで直径0.0406mm(0.0016インチ)に編組した、PEN編組(19.7〜31.5ピック/cm(50〜80ピック/インチ))、そして放射線不透過性のために約25%硫酸バリウムを添加した、押出成形したPEBAX 5533−SA−01又は4033−SA−01 PEBAXを含む外層26、の押出成形した編組した構造を含む。
【0018】
図2Aに示すようにより大きい幅W及びより小さい厚さTを有する、矩形断面Rの平坦梁すなわち「ブレード」30(「梁」及び「ブレード」は本明細書では互換的使用される)として構成され、平坦又は平滑な2つの対向する矩形面FA及びFB(又は側面、本明細書では互換的に使用される)FA及びFB、並びに例えば、梁30の長手方向の縁に沿って出っ張り及び/又は凹みの形態を提供するように、平らでない、粗い、凹凸のある、又は鋸歯状の、摩擦を引き起こす2つの対向する縁表面E1及びE2を画定する、細長い支持構造が、偏向可能区域14の長さを通して延在する。梁30は、力を加えると、その本来の形状から離れて伸張させるか又は屈曲させることが可能であり、かつ力を取り除くと、実質的に本来の形状に戻る能力がある、任意の適切な降伏強さの高い材料で構築されてもよい。支持梁30のための適切な材料としては、硬質、冷間加工ステンレス合金鋼(304又は316硬質状態)、ニッケル/チタン合金(ニチノール)又はリン青銅合金が挙げられる。ニチノール合金は、典型的には約55%ニッケル及び45%チタンからなるが、約54%〜約57%のニッケル及び残部がチタンからなってもよい。適切なニッケル/チタン合金は、延性、強度、耐食性、及び温度安定性とともに、優れた形状記憶性を有する、ニチノールである。梁30は、偏向可能区域14の中央管腔19を、2つの半分の空間19A及び19Bへと効果的に分割又は二分する。リード線、ケーブル、及び配管などの構成部品は、著しい中断又は障害なしにいずれの空間も通過することができる。
【0019】
本発明の特性によると、カテーテル10は、カテーテルシャフト12と偏向可能区域14との間で、図3A及び図3Bに示すように、継ぎ手又は遷移区域65によって提供される例外的なトルク伝達能力を有する。遷移区域65は、ユーザーに患者内で遠位アセンブリ15を正確に設置しかつ制御するための手段を提供するために、高い忠実度でかつ低いヒステリシスで、ねじり力を制御ハンドル16から遠位アセンブリ15へと伝える。遷移区域65は、それぞれが「開いた」構成を有し、相互に面するように梁の対向する表面に付着するとき、継ぎ手において、梁を周囲方向に取り囲む、「閉じた」構成の中空体を形成する、一対の細長いブラケット66A、66Bを含む。ブラケット及び形成された本体は、カテーテル本体12の管状構造の当接する端部と偏向可能区域14の当接する端部とに、それによって橋を架ける。打抜き又は酸エッチングによって形成することができるブラケットは、所定のパターンで配置された、陥凹部、又は貫通穴(例えば、円形の穿孔又はパンチングした貫通穴68)を含む受容形成物を提供する。一実施形態では、模様は、ずれた隣接する列をともなう、複数の横の列を含むが、他の代替的な、又はずれたパターンも同様に適切になりうることが理解される。図示した実施形態では、隣接する列はおおよそ直径又は穿孔の幅に等しい距離だけずれる、それぞれ2つの貫通穴を有する横の列R1、R3、R5及びR7、並びに1つの貫通穴を有する列R2、R4及びR6の11の貫通穴がある。ブラケット66A、66Bは、ブレード30と同一の材料で構築することができ、以下に更に記載されるように、熱融合の間に、より高い固着強度のために接着剤でプレコーティングされてもよい。
【0020】
図示する実施形態では、それぞれのブラケットは、その長さ方向に沿って均一の半円状の、すなわち「C」字型の断面の、半円筒本体を有し、その2つの外側の側縁69に沿って、相互に面し、かつ遷移区域において概してブレード30を取り囲む全円筒本体66(ブラケット66A、66Bと互換的に使用される)を一緒に形成するように、例えば、抵抗スポット溶接、ブレージング、又はレーザー溶接によって、ブレード30のそれぞれの側に付着する。本体66は、カテーテル本体12及び偏向可能区域14の当接端部に重なる。カテーテル本体12の管状構造11の遠位端は、本体66の近位端の上に載置され、又は滑動して覆い、かつ偏向可能な本体14の管状構造17の近位端は、本体の遠位端の上に載置され、又は滑動して覆う。その際、本体66がその上に付着するブレード30は、カテーテル本体12の遠位端内へ短い距離だけ延在する近位端を有する。図2Aに最も良好に示されるように、本体66は、ブレード30によって2つの空洞67A及び67Bに分割又は二分される、リード線、ケーブル等などの構成部品がそこを通過することができる、中央管腔67を画定する。本体66の長さは、約5mm〜12mmの範囲であり、好ましくは、6.5mm〜10mmの範囲である。
【0021】
図2を参照すると、遷移区域65の組み立ての際に、カテーテルシャフト12の遠位端12Dは、滑動して円筒本体66の近位端上に被さり、ブレード30の近位端30Pは、中央管腔18内に短い距離だけ延在する。偏向可能区域14の近位端14Pは、円筒本体66の遠位端上に滑動して被さり、ブレードは(及びその偏向構成部品)、区域14の遠位端に向かって、中央管腔19を通って延在する。したがって、偏向可能区域14の遠位端14D及びカテーテルシャフト12の近位端12Pは、反対側の方向から本体66上に延在し、これによりこれらは、本体66の長さ方向に沿った中央位置の近傍で相互に当接する。次いで、外側コーティング22及び26も同様であるかもしれないが、内側コーティング20及び24は、十分な熱及び圧力を掛けることによって、本体66に融合され、穿孔68内に連結20N及び24Nを形成するように、溶融、移動、及び/又は流動する。この融合は、カテーテルシャフト12と偏向可能区域14との間に大変強い連結固着を生成する。は、継ぎ手に対する軸方向負荷容量を増加する。事実、結果として得られるトルク伝達固着継ぎ手は、ねじり力及び引っ張り力の負荷に対して、それに固着された編組したカテーテルシャフト12及び偏向可能区域14より強い可能性がある。
【0022】
遷移区域65に熱及び圧力をかけるのを容易にするために、管アセンブリを形成するように、保護熱収縮管70、例えば、フッ化エチレンプロピレン(FEP)又はポリエチレンテレフタレート(PET)が遷移区域の上に設置され、そして遷移区域の上に収縮させ(「回復させ」)(例えば、ヒートガン又は炉によって)、本体66に対して内向きに圧力をかける。次いで、管アセンブリは、連結20N及び24Nを形成するように、カテーテル本体12及び偏向可能区域14の管状構造11及び17の内層20及び24の溶融(「リフロー」)のために、2部分からなる熱融合ダイヘッド(図示せず)内に設置される。次いで、管アセンブリは、冷却される。熱収縮管70は、溶融した層が加熱されたダイに接触するのを防ぎ、かつカテーテル本体12と偏向可能区域14との嵌合する管状本体の間に均一な遷移を生成するための加工補助材として使用することができる。したがって、収縮管70は、融合プロセスの後、遷移区域65から除去される。
【0023】
熱融合ダイヘッドは、加熱/融合プロセスの間、融合ダイヘッドの動きを感知するために、精度の高い融合ダイ高さ測定表示器(LVDT)を利用する。シャフト12及び偏向可能区域14のコーティングの構築材料は、材料ロット間の熱履歴(±12.5℃(±25°F))の範囲が広い、押出成形した未加工の熱可塑性ポリマーを含んでもよいので、ポリマーの軟化と結果として生じるダイヘッドの移動との監視は、加熱/融合プロセスの間のポリマー熱履歴の影響を減少する一方で、プロセス制御を達成するための温度測定値とは別の手段である。更に、遷移区域は、迅速なサイクルタイムを提供するための水冷の熱融合機械を使用して、最小限の時間(例えば、約60秒未満)の間に生成することができる。遷移区域は、有利にも、均質かつ継ぎ目がない。遷移区域の構造は、一旦熱圧力融合操作が完了すると、変化が少ない。
【0024】
本発明の特徴によると、カテーテル10は、ユーザーによる、有利にもより少ない作動力しか必要としない単一の持続的な引っ張りワイヤー28による、引っ張りワイヤー上により少ない剪断応力しかかからない、2方向の偏向を提供する。一対の引っ張りワイヤーを使用する、その近位端が制御ハンドル内に固定される従来の2方向のカテーテルと同様に、単一の連続的な引っ張りワイヤー28の近位端は、制御ハンドル16に固定される。しかしながら、引っ張りワイヤー28は、U字型屈曲部がカテーテル内の引っ張りワイヤーの最遠位部分となるように、その長さに沿った中点において、またはその近傍で、U字型屈曲部(約180°)をともなう一部分28Mを形成するようにそれ自体の上で曲がる。図4に示されるように、U字型屈曲部の中央部分28Mは、引っ張りワイヤーを概して等しい長さの、それぞれが制御ハンドル16に固定される近位端をともなう、2つの主たる近位セグメント28A及び28Bに分割する。図5A図5B、及び図5Cを参照すると、カテーテル上の遠位の配置にU字型屈曲部28Mを固定するために、ブレード30の遠位端は、それぞれの長い一部分28A及び28Bがブレード30の表面FA、FBのそれぞれに沿って中央を延在するように、例えば、中央部分28Mをしっかりと受容する軸上のスリット32S又は軸上の貫通穴32Hのいずれかなどの受容形成物32を有する。この配設は、引っ張りワイヤーをブレード30に付着させるための手段として、有利にも、従来のTバー、捲縮型の接続、はんだ付け、又は溶接の使用を避ける。引っ張りワイヤーは、ブレード30にしっかりと付着しないので、この配設は、平滑な2方向の操舵を提供する。
【0025】
図5A及び図5Bに図示するように、ブレード30の遠位端は、カテーテルの組み込み及び引っ張りワイヤー28の付着の前の、遠位端31及び近位端33の細長い長手方向に閉じたスリット32Sを含む、元の構成を有する。スリット32Sは、ブレード30の遠位端部分30Dのすぐ近位に配置される。貫通穴32Hは、遠位端部分30Dに配置される。引っ張りワイヤーのU字型屈曲部の中央部分28Mは、穴32Hを通し、かつ引っかけて、又は代替的にはその近位端33におけるスリット32S内に挿入されてもよい。後者については、スリット32Sは、ブレードの遠位端部分30Dがユーザーにより、ブレード30の面FA上に穴32Hの近位に提供された、横断方向の「プレカットされた」溝52(図5A)に沿って曲げ又は切断することによって取り外されたとき、U字型屈曲部中央部分28Mを受容するために、閉じた構成から開いた構成に適合される。例示する実施形態では、第1の横断溝52aは、スロット32の遠位端31と整列し、かつ第2の(半幅)横断溝52bは、スロット32Sの長さに沿った中点又はその付近に沿って整列する。したがって、遠位端部分30Dは、溝52aに沿ってブレードから容易に破壊して取り去る、又は他の方法で取り外すことができる。開いたスリット32Sへのより容易なアクセスのために、図5Cに示すように、ブレード30から溝52bに沿って別の一部分30Aを取り外すことができる。
【0026】
図5Cに示すように、スリット32Sは、スリットが並んだ2つの概して等しい細長い区域又は半割部54a、54bにブレードを分割するように、概してブレード30の長手方向軸の中心にあり、かつ軸上にある。選択された区域54a上では、中空管又はフェルール60(例えば、ステンレス鋼製の)は、区域54aの面FAにレーザー溶接される。遠位アセンブリ15を支持する支持部材72の近位端は、ブレードから遠位アセンブリへと、トルク及び引っ張り/圧縮力を伝達するために、管と支持部材との間に締まりばめを生成するように、管60内に挿入され、かつ、例えば、捲縮によって、固定される。機械的な捲縮プロセスは、緩み、又は遠位アセンブリ15を回すのに失敗する可能性がある、問題となる接着剤固着を除去する。精密な力制御がついたサーボプロセスは、引っ張りワイヤー28を損傷することなしに支持部材72と管60との間の容認できる干渉が生成されるように、画定された力勾配を検出するように訴えられる。
【0027】
その長手方向軸に沿って、偏向ブレード30が、両方の面に等しい剛性を有する場合、ブレードのいずれかの側の偏向は、同様の偏向開始位置(又は曲がり発生位置)を有し、かつカテーテルは、対称な2方向の偏向を提供する。しかしながら、本発明の特性により、ブレード30は、それぞれの側に異なる偏向開始位置を有し、これにより、非対称な2方向の偏向を提供する。図1を参照すると、ブレード30は、片側の偏向がもう一方の側の偏向に影響又は関係しないように、それぞれの側上に、異なり、かつ「独立」の偏向を有する。図1の実施形態では、ブレード30のFA側は、管腔付きの補強材50Aによって提供されるように、遠位位置に、例えば、ブレードの片側に付着した予め負荷をかけた圧縮コイルなどの偏向開始位置Aを有する。圧縮コイル50Aは、伸長に対しては可撓性であるが、圧縮には抵抗し、したがって偏向開始位置Aをその遠位端又はその近くに提供する。圧縮コイルは、概してカテーテルシャフト12の近位端と隣接する近位端を有する。これは、カテーテルシャフト12の中央管腔18を通して延在する。図3A及び図4に示すように、偏向可能区域14では、圧縮コイル50Aは、ブレードの中央長手方向軸に沿ってブレード30のFA側上にある。カテーテルシャフト12及び偏向可能区域14を通して、引っ張りワイヤーセグメント28Aは、圧縮コイル50Aの中央管腔を通して延在する(図2A)。したがって、ブレード30がFA側に向かって偏向するとき、コイル50Aは圧縮状態にあり、特に、例えば、薄壁のPETなどの熱収縮管カバー53によって、更に拘束されるとき、剛性カラムとして作用する。したがって、FA側上の偏向が圧縮コイル50Aの遠位で、圧縮コイルの遠位端において、又はその近くで偏向開始位置Aによって開始し発生する。
【0028】
対照的に、ブレード30が、圧縮コイル50Aと反対側のFB側に向かって偏向する時、圧縮コイルには張力がかかっていて、ブレード30とともに、FB側に向かって、ブレード30の長さ方向に沿って偏向する。この場合、引っ張りワイヤーセグメント50Bのために第2の圧縮コイルが提供される(図2)。カテーテルシャフト12を通して、引っ張りワイヤーセグメント28Bは圧縮コイル50Bの中央管腔を通って延在する。圧縮コイル50Bは、カテーテルシャフト12の近位端及び遠位端と概して隣接する近位端及び遠位端をそれぞれ有する。例示する実施形態では、遠位端は、梁30の近位端の短い距離だけ近位にある。したがって、FB側上の偏向が開始し、かつ偏向開始位置Bをともなう圧縮コイル50Bの遠位に、カテーテルシャフト12の遠位端において、またはその近くで偏向が生じる。
【0029】
この構成では、ブレードのそれぞれの側は、異なる偏向可能な作業長を有し、かつ単一の連続的な引っ張りワイヤーを使用して、2つの別個の曲率を偏向可能区域14に生成することができる。図示するように、圧縮コイル50をともなうブレード30のFA側は、より大きい画定された半径及びより近位の偏向開始位置Bをともなう、より緩やかで、より大きく、かつよりやさしい曲率を有する、反対側であるブレード30のFB側と比較して、より小さい画定された半径を有する、よりきつい、又はより鋭い曲率、及びより遠位の偏向開始位置Aを有する。したがって、FA側の偏向可能な作業長は、FB側の偏向可能な作業長よりも短い。
【0030】
図3A及び図4に示されるように、例えば、停止管62の形態の停止部は、圧縮コイル50の遠位端をブレード30に付着するために提供される。停止管62は、停止管の長さに沿って概して均一の外径、及びその近位端において、圧縮コイル50の遠位端を受容する内側ボア63を有する。内側ボア63は、圧縮コイル50を収容するためのより大きい近位内径、及び引っ張りワイヤー28Aがそこを通過するより小さい遠位内径を有する。
【0031】
一実施形態では、より大きい近位内径は、圧縮コイル直径よりも約0.025〜0.076mm(0.001〜0.003インチ)大きい。より小さい遠位内径は、圧縮コイル直径よりも約0.076〜0.152mm(0.003〜0.006インチ)小さい。停止管62が長さLを有する場合、より大きい近位内径ボアの長さ又は長手方向範囲は、約0.6L〜0.8Lの範囲であり、かつより小さい遠位内径の長さ又は長手方向範囲は、約0.2〜0.4Lの範囲である。
【0032】
停止管62は、設置及び整列が容易なように、FA面上でスロット又は陥凹部64が形成される位置に、例えば、抵抗溶接によってブレード30に付着してもよい。陥凹部64は、酸エッチングされてもよい。
【0033】
一部分28A及び28Bの近位端は、制御ハンドル16に固定され、ユーザーによって操作される作動装置13に対応する制御ハンドル16内の偏向機構は、カテーテルをその片側上で別個の曲率で偏向するために、引っ張りワイヤーの選択された近位端上で、ブレード30の片側に沿って引くように構成される。引っ張りワイヤー28は、偏向機構によって一部分が遠隔で引かれたときに、長い一部分28A及び28Bが、保護管36A、36Bの内側で円滑に滑動できるように、PTFE又はTeflonでコーティングされていてもよい。
【0034】
当業者に理解されるように、ブレード30を所望の方向に偏向するために、曲げモーメントを生成するように引っ張りワイヤー28には張力がかかっている。平坦なブレードをともなう従来のカテーテルは、接着破損を防止するために、ブレードに溶接されかつ緊密に拘束される矩形断面の引っ張りワイヤーを使用する場合がある。ある特定の点については、この設計は、単純でコンパクトである場合があるが、引っ張りワイヤーは、偏向の間に、純粋に、曲げが相当な曲げモーメント応力を必要とする、そのブレードへの近接性の理由で著しい力を受ける。対照的に、本発明のカテーテルは、曲げモーメントを含む引っ張りワイヤー上の力を下げるように、引っ張りワイヤー28とブレード30の中立の曲げ軸NAとを所定の距離だけ分離するための、所定の厚さのスペーサー90を提供するように構成される。更に、カテーテル10は、断面2次モーメントモーメントを減少するための、丸い(又は少なくとも矩形でない)断面の引っ張りワイヤーを含み、そうでなければ中立軸から同等のスペーサーによって分離された矩形の同一の断面積の引っ張りワイヤーが、カテーテルの寸法/直径、及び断面2次モーメントを過度に大きくすることになり、結果的に許容できないほど硬いカテーテルをもたらす。
【0035】
一実施形態では、図6Aに示すように、ブレード30のそれぞれの側上のスペーサー90A及び90Bは、第1の内側接着層34A、34B及び管腔のあるエラストマーの引っ張りワイヤー管36A、36Bの壁を含む。接着層は、モデル100HTの名称で3Mによって販売されている、超高音接着伝達テープ34A及び34Bであってもよい。ポリイミドで構築されてもよい管36A、36Bは、接着層34A、34Bのそれぞれに付着し、かつ引っ張りワイヤーの近位部分28A及び28Bのそれぞれは、その管腔37を通って延在する。引っ張りワイヤーを取り囲む管36の内部表面は、引っ張りワイヤーとの摩擦を低減するために、PTFE、例えばTEFLONで、コーティングされてもよい。FA側上では、スペーサー90Aは、受容形成物32及びU字型屈曲部28Mの近くから停止管62の遠位端の近くまで、長手方向に延びる。ブレード30のFB側上では、スペーサー90Bは、概してブレード30の全長に延びる。したがって、偏向可能区域14内で、かつブレード30に沿って、引っ張りワイヤーは、U字型屈曲部28M内及び圧縮コイル50を通してスペーサー90を有しない。代替的には、図6Bに示すように、スペーサー90は、引っ張りワイヤーを取り囲む押し出し加工品92A及び92Bを含んでもよい。PEEKでできていてもよい押し出し加工品92は、主たる丸い、又は円形の一部分(丸い引っ張りワイヤーに調和し、かつこれを取り囲む)と、表面FA及びFBと界面を接する丸みのある角部をともなう薄く幅広い細長い基部とを有する断面形状を有する。丸みのある角部は、有利にも、偏向の間材料応力集中を低減する。
【0036】
丸い引っ張りワイヤー28は、約0.178mm(0.007インチ)〜0.229mm(0.009インチ)の範囲の、そして好ましくは、約0.203mm(0.008インチ)の直径Dを有する。ブレード30は、約0.102mm(0.004インチ)及び0.178mm(0.007インチ)の、そして好ましくは、約0.127mm(0.005インチ)〜0.152mm(0.006インチ)の厚さTを有する。引っ張りワイヤーと中立軸とは、約0.203mm(0.008インチ)〜0.635mm(0.025インチ)の範囲の、そして好ましくは、約2.54mm(0.10インチ)〜0.381mm(0.015インチの)の距離dだけ離れている。
【0037】
図6A及び図6Bの実施形態では、直径Dは0.203mm(0.008インチ)、ブレード厚さは0.127mm(0.005インチ)、そして距離dは、0.267mm(0.0105インチ)であり、引っ張りワイヤーと隣接するブレードの表面(及びスペーサー厚さ)との間に0.102mm(0.004インチ)の分離dが残る。同一の断面積(例えば、0.254mm(0.010インチ)×0.127mm(0.005インチ))の矩形の引っ張りワイヤーと比較すると、ブレードを偏向するための同一の曲げモーメントを生成するための引っ張りワイヤー力は、少なくとも半分に低減することができる。引っ張りワイヤー上の応力も、半分以下にすることができる。
【0038】
引っ張りワイヤー28をブレード30上に拘束し、かつ固定し、接着破損及び脱離を防止する追加的な手段として、少なくとも第1の内側熱収縮管38がブレード30上に設置され、スペーサーを(スペーサーを通して引かれた引っ張りワイヤー部分28A、28Bで)ブレードの両側で被覆し、かつ取り囲む。図6A及び図6Bの例示する実施形態では、第1の内側熱収縮管38の後に、アセンブリの上に設置されて、構成部品及び第1の熱収縮管38を取り囲み、かつシールする第2の外側熱収縮管40が続く。第1の熱収縮管38は、高温耐性ポリエステル(PET)又はFEPから構築されてもよい。第2の熱収縮管40は、押出成形したナチュラルPEBAX又はナチュラルPellethaneから構築されてもよい。ブレード30のでこぼこした長手方向縁E1及びE2は、第1の熱収縮管及び第2の熱収縮管が、偏向の間に移動又は活動しないように、把持し、かつ固定するのを助ける。
【0039】
図1の例示する実施形態では、遠位アセンブリ15は、概して真っ直ぐな近位領域及び約360°旋回する少なくとも1つのループ、そうでない場合は、約720°旋回する2つのループを有する、概して円形の主領域を備える。近位領域98は偏向可能区域14に取り付けられ、主領域99は、マッピング及び/又はアブレーションのために複数の電極を保持する。図4図5を参照すると、遠位アセンブリ15は、形状記憶支持部材72と、遠位アセンブリ15上に保持される電極のためのリード線140と、遠位アセンブリの長さ延在するカバーと、を含む。リード線140は、遠位アセンブリから偏向可能区域14の管腔半分の19Bを通って延在する、非導電性のシース41を通って、遷移区域65の空洞半分の67Bを通って、カテーテルシャフト12の管腔18を通って、かつ制御ハンドル16内に延在する遠位アセンブリ15上の電極に付着される。
【0040】
電磁位置センサ(図示せず)は、遠位アセンブリ15内又はその近く、例えば、偏向可能区域14の遠位端内に取り付けられる。センサケーブル136は、センサから、偏向可能区域14の管腔半分の19A内、遷移区域65の空洞半分の67B、カテーテル本体12の中央管腔18、及び制御ハンドル16内へと延在し、ここで適切なコネクタ(図示せず)内で終端する。
【0041】
遠位アセンブリ15において、又はその近くで潅注を所望する場合、流体源(図示せず)からカテーテルに沿って流体を通すための潅注チューブ100が提供される。例示する実施形態では、潅注チューブ100は、制御ハンドル16、カテーテル本体12の中央管腔18、及び偏向可能区域14の空間半分の19Bを通って延在する。
【0042】
使用時には、適切なガイドシースをその遠位端が所望の場所に位置された状態で患者の体内に挿入する。本発明とともに使用するための適切なガイドシースの一例としては、Biosense Webster,Inc.(Diamond Bar,Calif.)から市販されるPreface(商標)Braiding Guiding Sheathが挙げられる。シースの遠位端は、例えば、心房などの心室のうちの1つの内部に導かれる。本発明の一実施形態に基づくカテーテルは、その遠位端がガイドシースの遠位端から延在して出るまでガイドシースを通して送られる。カテーテルがガイドシースを通じて送られると、遠位アセンブリ15はシースを通して適合するようにまっすぐにされる。一旦カテーテルの遠位端が望ましい位置に位置付けられると、ガイドシースは、近位に引っ張られ、偏向可能な部分14及び遠位アセンブリ15が、シースの外側に延在することが可能になり、遠位アセンブリ17は、形状記憶により、その本来の形状に戻る。
【0043】
作動装置13を制御ハンドル16上で操作するユーザーは、選択された引っ張りワイヤーの近位部分28A又は28B上を引くために、制御ハンドルの内側の偏向機構を作動させる。遠位区域28Aが選択された場合、偏向梁30の反対側上の偏向曲率DBとは別個の曲率のために、偏向梁30の片側の偏向曲率DAは、圧縮コイルAの遠位端において、又はその近くで開始する。引っ張りワイヤー38上の力及び応力は、偏向梁の中立の屈曲軸からの所定の分離距離によって、平坦な偏向梁及び引っ張りワイヤー(丸い断面の)を梁へと緊密に拘束する引っ張りワイヤーアセンブリによって最小限とされる。次いで、ユーザーは、トルクをカテーテル本体12及び偏向可能区域14に、カテーテル本体12の管状構造及び偏向可能区域14が、熱融合の下で、部材66A及び66B内の穿孔68内に溶融して入る連結の手段により、それに対して固着される半分の円筒状の部材66A及び66Bの手段によって、それらの間の遷移区域65を通して伝える、制御ハンドル16を回転することによって、概して円形の遠位アセンブリ15の主領域99を回転してもよい。
【0044】
上記の説明文は、現時点における本発明の好ましい実施形態に基づいて示したものである。当業者であれば、本発明の原理、趣旨及び範囲を大きく逸脱することなく、本願に述べた構造の改変及び変更を実施することが可能であることは認識されるところであろう。例えば、第3の引っ張りワイヤーがガイドワイヤー又は針などの別の構成部品を前進及び後退させるようにカテーテルを構成することができる。当業者に理解されるように、図面は必ずしも一定の縮尺ではない。したがって、上記の説明文は、本願に述べられ、以下の添付図面に示される厳密な構造のみに関係したものとして読み取るべきではなく、むしろ、以下の最も完全で公正な範囲を有するとされる「特許請求の範囲」と符合し、かつそれらを補助するものとして読み取るべきである。
【0045】
〔実施の態様〕
(1) カテーテルであって、
細長いカテーテル本体であって、第1の中央管腔を有する第1の管状構造、遠位端、及び近位端を備え、前記第1の管状構造が熱可塑性材料の層を有する、細長いカテーテル本体と、
偏向可能区域であって、第2の中央管腔を有する第2の管状構造、及び前記カテーテル本体の前記近位端の遠位である近位端を有し、前記第2の管状構造が熱可塑性材料の層を有する、偏向可能区域と、
前記第1の管状構造の前記遠位端と前記第2の管状構造の前記近位端との間の継ぎ手であって、前記継ぎ手が、2つの第1の縁をともなう第1のブラケット、及び2つの第2の縁をともなう第2のブラケットを含み、それぞれのブラケットが、少なくとも1つの受容形成物を有する、継ぎ手と、
第1及び第2の対向する表面をともなう、概して矩形断面を有する梁であって、前記梁の少なくとも一部分が、前記継ぎ手を通って延在する、梁とを備え、
前記第1及び第2のブラケットが前記平坦梁の前記一部分を取り囲む中空体を形成するように、前記2つの第1の縁は、前記平坦梁の前記第1の表面に付着し、前記2つの第2の縁は、前記梁の前記第2の表面に付着し、前記本体の遠位部分が、前記第2の管状構造の前記熱可塑性材料の層によって被覆され、前記本体の近位部分が、前記第1の管状構造の前記熱可塑性材料の層によって被覆され、前記第1及び第2の管状構造の前記熱可塑性材料の層がそれぞれ、前記受容形成物内に延在する少なくとも1つのを有する、カテーテル。
(2) それぞれのブラケットの外面が、前記熱可塑性材料の層と固着するように適合された接着剤でコーティングされる、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) それぞれの受容形成物が円形断面を有する、実施態様1に記載のカテーテル。
(4) それぞれのブラケットの受容形成物が所定のずれたパターンで配設される、実施態様1に記載のカテーテル。
(5) 前記第1のブラケットの前記第1の縁が、前記梁の前記第1の表面の外縁に付着し、また前記第2のブラケットの前記第2の縁が、前記梁の前記第2の表面の外縁に付着する、実施態様1に記載のカテーテル。
【0046】
(6) 熱可塑性材料のそれぞれの層が、編組したメッシュで被覆される、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) 編組したメッシュのそれぞれの層が、エラストマー材料によって被覆される、実施態様6に記載のカテーテル。
(8) 前記梁が前記本体を長手方向に分割する、実施態様1に記載のカテーテル。
(9) それぞれのブラケットが、高強度バネ材料で作成される、実施態様1に記載のカテーテル。
(10) 前記高強度バネ材料が、ステンレス鋼、ニチノール、及びリン青銅から成る群から選択される、実施態様9に記載のカテーテル。
【0047】
(11) 第1の主セグメント区域、第2の主セグメント区域、及びそれらの間のU字型屈曲部セグメントを有する、引っ張りワイヤーを更に備え、前記U字型屈曲部区域が前記梁の遠位端に固定される、実施態様1に記載のカテーテル。
(12) 前記梁が、第1の管腔半分及び第2の管腔半分を形成するように、前記本体を二分し、前記第1の引っ張りワイヤーセグメントが、前記第1の管腔半分を通って、前記カテーテル本体の前記第1の中央管腔を通って延在し、前記第2の引っ張りワイヤーセグメントが、前記第2の管腔半分を通って、前記カテーテル本体の前記第1の中央管腔を通って延在する、実施態様11に記載のカテーテル。
(13) 前記カテーテル本体の近位において、又はその近くに近位端を有し、かつ前記継ぎ手の遠位に遠位端を有する第1の圧縮コイルを更に備え、前記第1の圧縮コイルが、コイル管腔を有し、前記第1の引っ張りワイヤーセグメントの一部分が前記コイル管腔を通って延在する、実施態様11に記載のカテーテル。
(14) 前記第1の圧縮コイルが、前記カテーテル本体の前記第1の中央管腔を通って、かつ前記第1の管腔半分を通って延在する、実施態様13に記載のカテーテル。
(15) 前記第1の圧縮コイルの遠位端を受容するように構成されたボアを有する停止部を更に備え、前記停止部内の前記第1の引っ張りワイヤーセグメントが前記ボアを通って延在し、前記停止部が、前記第1の圧縮コイルを前記平坦梁の前記第1の表面に付着するように構成された、実施態様13に記載のカテーテル。
【0048】
(16) 前記梁の少なくとも1つの表面上で軸方向に延在する、少なくとも1つのスペーサーを更に備え、前記少なくとも1つのスペーサーが、前記それぞれの引っ張りワイヤーセグメントと前記梁の前記少なくとも1つの表面との間に所定の分離距離を提供するように構成された、実施態様11に記載のカテーテル。
(17) 前記スペーサー及びその引っ張りワイヤーセグメントを前記梁に拘束する、少なくとも1つの熱収縮管を更に備える、実施態様16に記載のカテーテル。
(18) 前記少なくとも1つのスペーサーが、押し出し加工品を含む、実施態様16に記載のカテーテル。
(19) 前記少なくとも1つのスペーサーが、接着層及び配管を備える、実施態様16に記載のカテーテル。
(20) 前記第1の圧縮コイルを取り囲む熱収縮管を更に備える、実施態様13に記載のカテーテル。
図1
図2
図2A
図3A
図3B
図4
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B