(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6664892
(24)【登録日】2020年2月21日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】歪みゲルマニウム膜を含むデバイス
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20200302BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20200302BHJP
H01L 31/02 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
H01S5/183
H01L21/20
H01L31/02 A
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-124423(P2015-124423)
(22)【出願日】2015年6月22日
(65)【公開番号】特開2016-21565(P2016-21565A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2018年5月28日
(31)【優先権主張番号】1455805
(32)【優先日】2014年6月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510094104
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ エナジーズ アルタナティブス
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100108394
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 健一
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン ギヨイ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ポーク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン カルヴォ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン レブー
【審査官】
村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公開第02501307(GB,A)
【文献】
特開平08−094398(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/018940(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0079085(US,A1)
【文献】
SUKHDEO et al.,“Mimicking Heterostructure Behavior Within a Single Material at Room Temperature Using Strain”,Optical Society of America,2014年,CLEO: Science and Innovations,SM1H.2
【文献】
NAM et al.,“Simulation for Efficient Germanium VCSEL for Optical Interconnects”,2012 Optical Interconnects Conference,2012年 5月,p.58-59
【文献】
SHAH et al.,“Tensile strained Ge membranes”,2014 15th International Conference on Ultimate Integration on Silicon (ULIS),2014年 4月,p.137-140
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸架された、ゲルマニウムを主成分とする膜(20)を備え、張力印加アーム(23)によって張力がかけられた活性領域(21)を備える光学及び/又は電子デバイスであって、幅が前記活性領域(21)からの距離とともに増加し、側辺部(32)が少なくとも三つの前記張力印加アーム(23)と前記活性領域(21)との接合部で前記活性領域(21)に対して鈍角をなす、非平行の前記側辺部(32)を備える前記張力印加アーム(23)を備えることを特徴とする、光学及び/又は電子デバイス。
【請求項2】
少なくとも一つの台形状の張力印加アーム(23)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の光学及び/又は電子デバイス。
【請求項3】
前記張力印加アーム(23)がすべて同じ形状を有し、前記活性領域(21)のまわりに規則的に分布することを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学及び/又は電子デバイス。
【請求項4】
辺(22、24)の数が張力印加アーム(23)の数の倍数である、特に正多角形を形成する、実質的に多角形の活性領域(21)を備えることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の光学及び/又は電子デバイス。
【請求項5】
二つの張力印加アーム(23)を接続する前記活性領域(21)の周辺部で丸みがつけられた連結部(22')を備えることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の光学及び/又は電子デバイス。
【請求項6】
ダイオード、トランジスタ、発光デバイス、レーザ、光検出器、又は基板であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の光学及び/又は電子デバイス。
【請求項7】
光学デバイスであること、並びに前記ゲルマニウムを主成分とする膜(20)の下に第1のミラー(41)及び/又は前記ゲルマニウムを主成分とする膜(20)の上に第2のミラー(43)を備えることを特徴とする、請求項6に記載の光学及び/又は電子デバイス。
【請求項8】
幅が活性領域(21)からの距離とともに増加し、側辺部(32)が張力印加アーム(23)と前記活性領域(21)との接合部で前記活性領域(21)に対して鈍角をなす、非平行の前記側辺部(32)を備える少なくとも一つの前記少なくとも三つの張力印加アーム(23)を形成するためにゲルマニウムを主成分とする層(3;13)をエッチングするステップと、
前記活性領域(21)及び前記少なくとも三つの張力印加アーム(23)を備える、懸架された、ゲルマニウムを主成分とする膜(20)を得るために前記ゲルマニウムを主成分とする層(3;13)の下の犠牲層(4;15)をエッチングするステップと、
を含むことを特徴とする、光学及び/又は電子デバイスを作製するためのプロセス。
【請求項9】
前記犠牲層をエッチングする前記ステップが、前記活性領域(21)のレベルで前記膜(20)の中心部から前記少なくとも三つの張力印加アーム(23)の外側エッジまで徐々に延出することを特徴とする、請求項8に記載の光学及び/又は電子デバイスを作製するためのプロセス。
【請求項10】
特にアルミニウムのミラー(41)を前記膜(20)の下に形成するために反射層を堆積させるステップ、及び/又はミラーを前記膜の上に形成するために反射層を堆積させる第2のステップを含むことを特徴とする、請求項8又は9に記載の光学及び/又は電子デバイスを作製するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張力がかけられたゲルマニウムを主成分とする膜を含む光学及び/又は電子デバイスに関する。また、本発明は、そうしたデバイスを作製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲルマニウムの結晶に歪みを印加することによって、その電子構造及び物理構造を変更できることが知られている。特に、ゲルマニウムの変形によって、ゲルマニウムのそうした結晶を直接バンドギャップ半導体に変化させること、及び変形していないゲルマニウムの1.55μmの直接バンドギャップよりも長い波長にゲルマニウムの光学放射及び感度をシフトさせることが可能である。これらの効果の適用は、アームによって張力がかけられた懸架されたゲルマニウム膜に依存して試みられてきた。しかし、既存の方法は、以下の欠点のすべて又は一部を有するため、依然として制限されている。
ゲルマニウム膜を作製するプロセス中にかけられる歪みが大きすぎ、そのため、膜の破裂を防ぐために利用可能な張力の強度が制限される。
かけられる張力が不均一で、膜に脆弱な箇所が形成され、そのため、印加可能な最大の張力の強度がやはり制限され、ある用途では不利となる不均一な挙動を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのようなわけで、本発明の一般的な目的は、したがって、既存の解決策の欠点のすべて又は一部を有さない、張力のかかったゲルマニウムを含むデバイスを形成するための解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のために、本発明は、懸架された、ゲルマニウムを主成分とする膜を備え、張力印加アームによって張力がかけられた活性領域を備える光学及び/又は電子デバイスであって、幅が活性領域からの距離とともに増加する非平行の側辺部を備える少なくとも一つの張力印加アームを備えることを特徴とする、光学及び/又は電子デバイスに基づく。側辺部は、張力印加アームと活性領域との接合部で活性領域に対して鈍角をなす。
【0005】
光学及び/又は電子デバイスは、少なくとも一つの台形状の張力印加アームを備えることができる。
【0006】
張力印加アームは、すべて同じ形状を有してもよく、活性領域のまわりに規則的に分布していてもよい。
【0007】
光学及び/又は電子デバイスは、少なくとも三つの張力印加アームを備えることができる。
【0008】
光学及び/又は電子デバイスは、辺の数が張力印加アームの数の倍数である正多角形を特に形成する、実質的に多角形の活性領域を備えることができる。
【0009】
光学及び/又は電子デバイスは、二つの張力印加アームを接続する活性領域の周辺部で丸みがつけられた連結部を備えることができる。
【0010】
光学及び/又は電子デバイスは、ダイオード、トランジスタ、発光デバイス、レーザ、光検出器、又は基板であってもよい。
【0011】
光学及び/又は電子デバイスは、ゲルマニウムを主成分とする膜の下に第1のミラー、及び/又はゲルマニウムを主成分とする膜の上に第2のミラー備える光学デバイスであってもよい。
【0012】
また、本発明は、
幅が活性領域からの距離とともに増加し、側辺部が張力印加アームと活性領域との接合部で活性領域に対して鈍角をなす、非平行の側辺部を備える少なくとも一つの張力印加アームを形成するためにゲルマニウムを主成分とする層をエッチングするステップと、
活性領域及び少なくとも一つの張力印加アームを備える、懸架された、ゲルマニウムを主成分とする膜を得るためにゲルマニウムを主成分とする層の下の犠牲層をエッチングするステップと、
を含むことを特徴とする、光学及び/又は電子デバイスを作製するためのプロセスに関する。
【0013】
犠牲層をエッチングするステップは、活性領域のレベルで、膜の中心部から張力印加アームの外側エッジまで、徐々に延出してもよい。
【0014】
光学及び/又は電子デバイスを作製するためのプロセスは、特にアルミニウムのミラーを膜の下に形成するために反射層を堆積させるステップ、及び/又はミラーを膜の上に形成するために反射層を堆積させる第2のステップを含んでもよい。
【0015】
本発明のこれらの目的、特徴、及び利点は、添付図に関して与えられる、特定の非限定的な実施形態に関する以下の説明において詳細に論じられるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1a】本発明の第1の実施形態による伸長歪みゲルマニウムを含む構造を作製するためのプロセスのステップの概略図である。
【
図1b】本発明の第1の実施形態による伸長歪みゲルマニウムを含む構造を作製するためのプロセスのステップの概略図である。
【
図1c】本発明の第1の実施形態による伸長歪みゲルマニウムを含む構造を作製するためのプロセスのステップの概略図である。
【
図1d】本発明の第1の実施形態による伸長歪みゲルマニウムを含む構造を作製するためのプロセスのステップの概略図である。
【
図2a】本発明の第2の実施形態による伸長歪みゲルマニウムを含む構造を作製するためのプロセスのステップの概略図である。
【
図2b】本発明の第2の実施形態による伸長歪みゲルマニウムを含む構造を作製するためのプロセスのステップの概略図である。
【
図2c】本発明の第2の実施形態による伸長歪みゲルマニウムを含む構造を作製するためのプロセスのステップの概略図である。
【
図2d】本発明の第2の実施形態による伸長歪みゲルマニウムを含む構造を作製するためのプロセスのステップの概略図である。
【
図3a】本発明の変形形態によるデバイスの伸長歪みゲルマニウム膜の概略上面図である。
【
図3b】本発明の変形形態によるデバイスの伸長歪みゲルマニウム膜の概略上面図である。
【
図3c】本発明の変形形態によるデバイスの伸長歪みゲルマニウム膜の概略上面図である。
【
図3d】本発明の変形形態によるデバイスの伸長歪みゲルマニウム膜の概略上面図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるデバイスの伸長歪みゲルマニウム膜の上面図である。
【
図5a】本発明の第1の例示的な実施形態による膜に対して得られた変形レベルである。
【
図5b】本発明によらない膜に対して得られた変形レベルである。
【
図6】本発明の別の例示的な実施形態による膜に対して得られた変形レベルである。
【
図7a】本発明の一実施形態によるゲルマニウム膜を組み込むレーザの作製のステップである。
【
図7b】本発明の一実施形態によるゲルマニウム膜を組み込むレーザの作製のステップである。
【
図7c】本発明の一実施形態によるゲルマニウム膜を組み込むレーザの作製のステップである。
【
図7d】本発明の一実施形態によるゲルマニウム膜を組み込むレーザの作製のステップである。
【
図7e】本発明の一実施形態によるゲルマニウム膜を組み込むレーザの作製のステップである。
【
図7f】本発明の一実施形態によるゲルマニウム膜を組み込むレーザの作製のステップである。
【
図7g】本発明の一実施形態によるゲルマニウム膜を組み込むレーザの作製のステップである。
【
図8】本発明の一実施形態によるレーザの構造である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1aは、本発明の第1の実施形態によるデバイスを作製するためのプロセスの第1段階で生成される構造の概略側部断面図である。本構造1は、約100nm〜数ミクロンの厚さのゲルマニウムから作られている層3を覆う、例えば数ナノメートル〜100nmの酸化シリコンの非常に薄い上部層2を備える。次いで、本構造は、約1μmの厚さの酸化シリコンの層4を備える。この多層は、シリコン基板5上に配置される。
【0018】
図1bは、例えばアルゴンエッチングを使用して酸化シリコンをエッチングする前に、例えばネガ型レジストを使用して上部の第1の層2をリソグラフィによってパターニングするステップである第1のステップの後に得られる結果を示す。貫通開口2'を備えるハードマスクを形成する上部層2がそれによって生じる。
【0019】
図1cは、例えば反応性イオンエッチング(RIE)技法を使用して実行されたゲルマニウムのエッチングのステップの後の構造を示す。ゲルマニウム層内に貫通開口3'を形成するために、このエッチングステップによって、ゲルマニウムの層3内に、上部層2内に形成されたパターンを再形成し、これらの開口3'に上部層2の開口2'が重畳される。
【0020】
図1dは、ゲルマニウムの下に配置された酸化シリコンの層4が、膜が解放されるまで、すなわち、エッチングが横方向に張力印加アームの基部に達するときにエッチングが停止するまで、例えばHF蒸気又は液体のHF中でエッチングされた後に得られる最終構造を示す。これによって、結果として、酸化シリコンの層4内に形成されたキャビティ44上方に懸架されたゲルマニウム膜20がシリコン基板5上方に得られる。したがって、酸化シリコンの層4は、ここでは犠牲層として働き、エッチングによる犠牲層の除去の後に、ゲルマニウム膜20は、結果として生じる構造の固有特性のおかげで自動的に張力がかけられる。
【0021】
図2aは、本発明の第2の実施形態によるデバイスを作製するためのプロセスの第1段階で生成される構造11の概略側部断面図である。この構造11は、それ自体シリコン基板15上にエピタキシャル成長されたゲルマニウムから作られている層13を覆う酸化シリコンの上部層12を同様に備える。
【0022】
図2bは、ゲルマニウムをエッチングする次のステップのためのマスクを形成するために、リソグラフィによって上部の第1の層12をパターニングするステップ、及び酸化シリコンをエッチングして貫通開口12'を含む上部層12を形成するステップである、第1の実施形態で説明したステップと同様の第1のステップの後に得られる結果を示す。
【0023】
したがって、
図2cは、ゲルマニウムをエッチングするステップの後に生じる構造を示し、このステップによって、ゲルマニウム層13内に上部層12内のパターンを再形成し、それによって、ゲルマニウム層内に貫通開口13'を形成し、これらの開口13'に上部層12の開口12'が重畳される。
【0024】
図2dは、ゲルマニウムの下に配置されるキャビティ44を形成するためにシリコンの層15がエッチングされた後に得られる最終構造を示し、このエッチングは、例えばテトラメチル水酸化アンモニウム(TMAH)中でのウェットエッチングであり、このエッチングによってゲルマニウム上のシリコンを十分な深さまで選択的にエッチングして、膜を解放する。この第2の実施形態では、したがって、シリコン層15は、犠牲層の機能を提供する。懸架された、伸長歪みゲルマニウム膜20がそれによって生じる。
【0025】
これらの二つの実施形態の上記の説明から明らかなように、使用されるプロセスは、シリコンに基づく電子部品を作製するために使用されるCMOSプロセスと同様で且つ互換性があるのが有利である。
【0026】
問題となっている本発明の実施形態に応じて、最終的に懸架されたゲルマニウム膜20を得るために、開口2'、3'、12'、13'を形成する上記の作製プロセスステップにおいて実行されるエッチングは、いくつかの特に有利な形状の一つを有する。
図3a〜3dは、例示的な実施形態によって、本発明の様々な変形形態による形状を有するゲルマニウム膜20を示す。特に、これらの図は、
図1d及び2dの側部からの断面図で示すような構造の上面図を示す。それぞれの膜20は、活性領域21又は対象とする領域と呼ばれる中央部分を有し、この中央部分に対して、活性領域21を本構造の残りの部分に接続する張力印加アーム23の影響下で、張力が集中され、この張力によって活性領域21に有利な構造的、電子的、及び光学的性質を与えることができる。
【0027】
有利な一実施形態によると、活性領域21は、回転対称を有する正多角形の形態をとる。
図3a〜3dの例示的な実施形態では、この多角形は、四つ(正方形の特定の場合)、五つ、八つ、及び十二の辺をそれぞれ備える。変形形態として、この多角形は、回転対称のままであるが、不規則であってもよく、例えば矩形であっても、又は先端を切り取られた矩形状などであってもよい。
【0028】
有利な一実施形態によると、張力印加アーム23は、活性領域21を形成する多角形の二つの辺24、22のうちの一つの辺24に接続される。変形として、張力印加アームの数の倍数であるいくつかの辺を備える活性領域に関連付けられたあるいくつかの張力印加アーム23を任意に組み合わせることを想定することができ、各張力印加アームが活性領域のまわりに規則的に及び対称に分布するのが好ましい。
【0029】
加えて、
図3a及び6でより具体的に示すように、
図3b〜3dの例の場合も同様であるが、張力印加アーム23は、活性領域21との接合部で、定義上活性領域21の一つの辺と平行な短辺24、及び短辺24と平行な反対側の長辺34を備える台形状を有するのが有利であり、前記辺が二つの側辺部32によって接続されている。各張力印加アーム23は、幅が活性領域21からの距離とともに増加する形状を有するのが有利である。張力印加アーム23の各側辺部32は、張力印加アーム23が接続される活性領域21の辺24に対して鈍角α、したがって、90度よりも大きな角度をなす。側辺部32は、活性領域21の辺24に対する垂線Pを越えて位置し、張力印加アーム23に裾広がりの形状を与える。張力印加アーム23の二つの側辺部32は、互いに平行ではない。これらの辺は、活性領域21に均一の応力をかけるために、活性領域21の辺24に関して対称に延在するのが好ましい。
【0030】
上で明示した幾何学形状の選択によって、以下の利点を実現することができる。すなわち、
活性領域21と張力印加アーム23との接合部24でのゲルマニウム膜の変形を改善し、特に、構造を非常に強くするこれらの接合部に存在する鈍角の角度のために、ゲルマニウム構造を破壊する危険を冒すことなく、増大させることができる。
幅が活性領域からの距離とともに増加する張力印加アーム23、例えば台形状の、特に裾広がりの形状であるこれらのアーム23を使用することによって、多くの、好ましくは三つ以上の張力印加アームを使用するものの、これらのアームは、サイズが小さい活性領域でオーバーラップする危険を冒すことなく活性領域に高い力をかけることができるという利点を兼ね備えることができる。
さらに、活性領域の辺24の長さに相当する張力印加アームの幅を選択するという事実によって、活性領域に連結される張力印加アームの数を増倍させることができ、特に少なくとも三つの張力印加アームを使用することができる。
また、活性領域からの距離とともに増加する幅を有する張力印加アーム23を使用することによって、張力印加アーム23にそれほど大きな力をかけずにゲルマニウムをエッチングするステップを行なうことができる。これを行なうために、そうしたステップは、活性領域を有する犠牲層レベルのエッチングから開始するのが有利であり、エッチングは、張力印加アームが完全に解放されるまで活性領域から外に向かって徐々に進行し、それによって活性領域に徐々に張力がかかる。
【0031】
当然ながら、
図3a〜3dに示す幾何学形状は、意図して概略的であり、理想的である。実際、得られる形状は、それほど規則的でなく、それほど理想的ではないが、これらの形状に近くなる。一例として、
図4は、二つの張力印加アーム23を有する膜20を実際に作製した例に対して得られた形状を示し、この膜20の形状は、
図3aの形状に近い。
【0032】
図5a及び5bは、本発明の一実施形態による膜に対して、及び本発明によらないが同一サイズの膜に対してそれぞれコンピュータを使用して得られた変形レベルを示す。二つのシミュレーションにおいて、活性領域21は、8μmの長さに対して1μmの幅を有し、張力印加アーム23は、28μmの長さを有する。
図5aに示す本発明の実施形態による二つの台形状のアームに関しては、この膜で得られる変形(したがって歪み)は、均一性が良好であるように見え、張力印加アーム23との接合部24での活性領域のコーナ25において観察される最大の変形と中心部26での変形の比率がより正確には約1.45である。
図5bに示す二つの矩形の張力印加アーム23に関するシミュレートされた比較例では、同じ比率が2.57である。結果として、
図5aに示す実施形態に関しては、ゲルマニウム膜が破壊する前に、はるかに高い最大限の変形を印加することが可能である。
【0033】
図6は、
図3bの幾何学形状と同様の実施形態において、三つの台形状の張力印加アーム23を備える膜の変形の分布の均一性を示す。また、本実施形態では、二つの張力印加アーム23間の活性領域21の辺22'を湾曲させることが有利であるように見え、正多角形の辺22がこれらの湾曲した辺22'と置き換えられていることに留意されたい。したがって、本実施形態では、活性領域21の周辺部は、隣接する張力印加アーム23間に、凹形の活性領域21を形成する、丸みがつけられた連結部を備える。この手法によってコーナを除去することができ、それによって、歪みの高い領域をさらに減らす。したがって、膜20の活性領域21が本発明による多角形形状を有すると言う場合、これもまた湾曲した辺22'を有する形状を意味すると解される。
図6による実施形態に関しては、わずかに1.13の変形比率を維持しながらも、膜の1.9%の変形を印加することができ、このことは、活性層内部の歪みの分布の均一性が高いことを示す。
【0034】
変形形態について非限定的な例によって上で示した。当然ながら、本発明の範囲から逸脱せずに、他の膜形状が選択されてもよい。特に、可能な限り均一性が最も高い幾何学形状を得ようとするために、活性領域のまわりに均一に分布した同じ形状のアームを使用することがたとえ有利であったとしても、すべての張力印加アームが同一である必要はない。また、少なくとも三つの張力印加アームを使用することが一般に好ましい。
【0035】
最後に、もし少なくとも一つの張力印加アーム23が、その長さの少なくとも一部にわたって活性領域からの距離とともに増加する幅を有すれば、本発明は、実施される。加えて、活性領域の多角形の一つの辺24に相当する幅にわたって活性領域に連結された張力印加アームについて説明した。当然ながら、活性領域は、他の形状を有することができ、張力印加アーム23と活性領域21との連結部は、多角形の一つの辺24の幅と異なってもよい。終わりに、たとえ本発明によって、すべてゲルマニウムから作られている膜を生成することができることが有利であるとしても、SiGe、SiGeSnなどゲルマニウムを主成分とする合金、又は様々なゲルマニウムを主成分とする材料から作られている層のスタックに関して本発明を実施することは当然可能である。
【0036】
本発明によるそうしたゲルマニウム膜によって、複数の異なるタイプの光学及び/又は電子デバイスを生成することができる。一例として、ダイオード、トランジスタ、レーザなどの発光デバイス、及び光検出器を挙げることができる。
【0037】
これらの例において、歪み材料は、想定される用途に対する活性材料である。しかし、この歪み材料は、別の材料を成長させるための新しい基板材料としても使用することができ、その場合、この別の材料が想定される用途に対する活性材料になる。特に、基板上の薄膜材料の結晶成長の品質は、基板と層の格子定数間の不整合に大きく依存することがよく知られている。成長欠陥を防ぐためにこれらの二つの定数ができるだけ近いことが必要である。従来、この問題は、例えば、格子定数を整合させるために、活性材料を成長させる前に中間バッファ層を堆積させることによって解決されているが、これには追加の作製ステップが必要である。本発明によって、格子定数が活性材料の格子定数に調整される、要求に応じた基板を生成することが可能である。必要なのは、成長材料の格子定数にできるだけ近い格子定数が得られるまで、基板の結晶構造を伸ばすのに必要な歪みを印加すること、次いで、成長を実行することだけある。これらの変化量は、数パーセント程度と、かなりの量である場合がある。
【0038】
図7a〜7gは、レーザ、より正確には本発明の一実施形態によるゲルマニウム膜を組み込む垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)を作製するプロセスの様々なステップを示す。
【0039】
図7a〜7dに示す第1の作製ステップは、
図1a〜1dに関する上記のステップに対応し、この作製ステップによってゲルマニウムから作られている膜を得ることができる。本実施形態では、膜20の形状は、ゲルマニウムを使用してレーザ効果を得るために、1.6%を超える活性領域の十分な変形を実現するように選択される。これを行なうために、
図3b及び6に示す膜20の形状を使用することが推奨される。
【0040】
次いで、プロセスは、
図7eによって示すように、ゲルマニウム膜20にアルミニウムを堆積させるステップである追加のステップを含む。追加のステップは、
図7fによって示すように、最終的に膜の下のアルミニウム層だけを残すために、膜20の上方及び各側部に位置するアルミニウムを除去する。これを行なうために、アルゴンビームエッチングが実施されてもよく、このエッチングに対するストップ層を形成するためにアルミナ層42をアルミニウムの下に配置する注意が払われている。アルミニウムは、このようにして第1のミラー41を形成する。
【0041】
最後に、本構造の頂部は、従来の第2のミラー43、例えば誘電体ミラー、特にブラッグミラーで覆われる。これを行なうために、
図7gによって示す膜20を得るために、低い及び高い屈折率の層を蒸着によって堆積させてもよく、この膜20が下部ミラー及び上部ミラーの二つのミラーを備える。これらの層は、歪みをあまり引き起こさないように、及び活性領域の膜20の変形に影響を与えないように設計されている。
【0042】
図8は、得られたレーザの構造を断面で示し、本構造は、二つのタイプのミラー41、43を含むキャビティ44を備える。
【0043】
効率を改善するために膜とミラーとの間に層を挿入することによって他のレーザ構成が実施されてもよい。同様に、キャビティは、基板15内に生成されてもよい。最後に、(光が膜の面内を伝播する)水平のレーザを生成するために、膜(活性領域及び/又はアーム)は、フォトニック結晶を形成するために、λ/10〜10λに含まれる寸法を有するように構造化されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 構造
2 層
2' 貫通開口
3 層
3' 開口
4 酸化シリコンの層
5 シリコン基板
12 上部層
12' 貫通開口
13 ゲルマニウム層
13' 貫通開口
15 シリコン基板
20 ゲルマニウム層
21 活性領域
22 辺
22' 辺
23 張力印加アーム
24 辺
25 コーナ
26 中心部
32 側辺部
34 長辺
41 ミラー
42 アルミナ層
43 ミラー
44 キャビティ