(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係るカラーフィルタ用着色樹脂組成物、カラーフィルタ、及び表示装置について順に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことを言う。
本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
本発明において有機基とは、炭素原子を1個以上有する基をいう。
また、本発明において固形分とは、着色樹脂組成物を構成する溶剤以外の全ての成分をいい、液状のモノマーであっても当該固形分に含まれるものとする。
【0031】
1.カラーフィルタ用着色樹脂組成物
本発明に係るカラーフィルタ用着色樹脂組成物は、レーキ色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、開始剤と、溶剤とを含有し、
前記アルカリ可溶性樹脂が、炭化水素環と、エチレン性二重結合を有し、酸価が80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の樹脂であり、
シランカップリング剤の含有割合が、着色樹脂組成物中の全固形分に対して1質量%以下であることを特徴とする。
【0032】
上記本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物は、レーキ色材と上記特定のアルカリ可溶性樹脂を選択して用い、シランカップリング剤の含有割合を着色樹脂組成物中の全固形分に対して1質量%以下とすることにより、感度の経時安定性を向上し、当該着色樹脂組成物の基板密着性に優れた着色層を形成可能であり、さらに耐熱性及び耐溶剤性に優れたカラーフィルタを形成可能である。
【0033】
上記特定の組み合わせにより、上記のような効果を発揮する作用としては、未解明な部分もあるが以下のように推定される。
本発明者らは、レーキ色材とシランカップリング剤を含有する着色樹脂組成物を調製し、保管しながら繰り返し使用したところ、保管期間が短い場合であっても、当該着色樹脂組成物を用いて形成された着色層の基板への密着性が低下してしまう場合があるとの知見を得た。このことについて検討を進めた結果、上記シランカップリング剤と、レーキ色材とを組み合わせて用いた樹脂組成物は、レーキ色材を含まない樹脂組成物と比べて、当該シランカップリング剤の経時的な変化が顕著であることが明らかとなった。
また、上記シランカップリング剤とレーキ色材とを含む着色樹脂組成物を感光性樹脂組成物として用いて、パターン状の着色層を形成した場合に、当該パターン状の着色層の線幅が前記感光性樹脂組成物の保管期間が長くなるに応じて細くなることも明らかとなった。当該線幅の変化は、感光性樹脂組成物の感度の変化によるものであり、当該感度の変化も上記シランカップリング剤の含有割合に起因するものと推定された。経時的な感度変化は、同一条件でパターン状着色層を製造した場合に、感光性樹脂組成物の保存期間によって異なる線幅のパターンが形成される原因となり、所望のパターン状着色層の形成が困難になるという問題となる。
上記の組合せにより上記シランカップリング剤が経時的に変化する理由は未解明ではあるが、レーキ色材中の塩が解離して生じたイオン成分により、前記シランカップリング剤が有するシラノール基乃至アルコキシシリル基の加水分解が促進されるためと推定される。レーキ色材から生じたイオン成分は、アルカリ可溶性樹脂等と比較して低分子量であるため、アルカリ可溶性樹脂等と比較してシランカップリング剤に接近しやすいと推定され、シラノール基乃至アルコキシシリル基の経時変化はレーキ色材から生じたイオン成分の影響が大きいものと推定される。
本発明者らは更なる検討の結果、アルカリ可溶性樹脂として炭化水素環と、エチレン性二重結合を有し、酸価が80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の樹脂を選択して用いることにより、上記シランカップリング剤を用いない場合であっても、調製直後及び長期保管後においても基板との密着性に優れているとの知見を得た。上記特定のアルカリ可溶性樹脂は、酸価が80mgKOH/g以上であるため、樹脂中に含まれる酸性基の数が比較的多く、当該酸性基が基板との密着性に寄与するものと推定される。また、上記特定のアルカリ可溶性樹脂は、側鎖に二重結合を有するため、カラーフィルタ製造時における樹脂組成物の硬化工程において、当該アルカリ可溶性樹脂同士、乃至、当該アルカリ可溶性樹脂と多官能モノマー等が架橋結合を形成し得る。その結果、着色層の硬化時の収縮が抑制されて基板との密着性に優れているものと推定される。またこのような架橋反応により、現像時のアルカリ現像液に対する耐性も向上するものと推定される。
更に、本発明者らは、炭化水素環を有するアルカリ可溶性樹脂を用いることにより、得られた着色層の耐溶剤性、特に着色層の膨潤が抑制されるとの知見を得た。作用については未解明であるが、着色層内に嵩高い炭化水素環が含まれることにより、着色層の内における分子の動きが抑制され、塗膜の強度が高くなる結果、溶剤による膨潤が抑制されるものと推定される。
これらのことから、上記シランカップリング剤の含有割合を着色組成物中の全固形分に対して1質量%以下とすることにより、経時的な密着性の変化や感度の変化を抑制することができるようになり、また、上記シランカップリング剤の含有割合を着色組成物中の全固形分に対して1質量%以下としても、基板との密着性に優れた着色樹脂組成物とすることができる。
また、本発明においては、レーキ色材と、酸価が80mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂を組み合わせて用いている、酸性基を比較的多く有するアルカリ可溶性樹脂は、前記レーキ色材の微粒子表面に存在している染料もしくはレーキ化剤が有する塩基性基と相互作用しやすく、その結果、アルカリ可溶性樹脂が前記レーキ色材の表面に吸着しやすいものと推定される。当該アルカリ可溶性樹脂は比較的酸価が高いため一旦吸着すると、高温加熱時においても解離しにくく、色材の分解などをより抑制でき、輝度の低下が抑制されて、耐熱性が格段に向上するものと推定される。
従って本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物は、レーキ色材を用いた場合であっても当該着色樹脂組成物の感度の経時安定性を向上し、当該着色樹脂組成物を長期保管後に用いても基板密着性に優れ、且つ着色性にも優れた着色層を得ることができる。
【0034】
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物は、少なくともレーキ色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、開始剤と、溶剤とを含有するものであり、上記特定の含有割合でシランカップリング剤を含有してもよく、本発明の効果が損なわれない限り、必要に応じて更に他の成分を含有してもよいものである。以下、このような本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物の各成分について順に詳細に説明する。
【0035】
[レーキ色材]
本発明のレーキ色材とは、溶剤に可溶性の色材が、カウンターイオンと塩形成して不溶化した色材をいう。レーキ色材は、通常、後述する色材と、後述するレーキ化剤とを溶剤中で混合することにより得ることができる。上記溶剤に可溶性の色材としては、カラーフィルタの高輝度化の点から、透過率の高い染料を用いることが好ましい。当該染料は、所望の色調に応じて適宜選択すればよく、アゾ系染料、アントラキノン系染料、トリアリールメタン系染料、キサンテン系染料、シアニン系染料、インジゴ系染料等、いずれの基本骨格(発色部位)を有する染料であってもよい。また、上記染料は、アニオン性置換基を有する酸性染料や、カチオン性置換基を有する塩基性染料等、いずれに分類される染料であってもよい。
青色着色層を形成する場合には、高輝度化の点から、中でも、トリアリールメタン系染料、キサンテン系染料、シアニン系染料好ましく、トリアリールメタン系染料であることがより好ましい。
【0036】
酸性染料としては、例えば、C.I.アシッドバイオレット29,31,33,34,36,36:1,39,41,42,43,47,51,63,76,103,118,126、C.I.アシッドブルー2,8,14,25,27,35,37,40,41,41:1,41:2,43,45,46,47,49,50,51,51,53,54,55,56,57,58,62,62:1,63,64,65,68,69,70,78,79,80,81,96,111,124,127,127:1,129,137,138,143,145,150,175,176,183,198,203,204,205,208,215,220,221,225,226,227,230,231,232,233,235,239,245,247,253,257,258,260,261,264,266,270,271,272,273,274,277,277:1,278,280,281,282,286,287,288,289,290,291,292,293,294,295,298,301,302,304,305,306,307,313,316,318,322,324,327,331,333,336,339,340,343,344,350、C.I.アシッドグリーン10,17,25,25:1,27,36,37,38,40,41,42,44,54,59,69,71,81,84,95,101,110,117等のアントラキノン系酸性染料;C.I.アシッドバイオレット15,16,17,19,21,23,24,25,38,49,72、C.I.アシッドブルー1、3、5、7、9、19、22、83、90、93、100、103、104、109、C.I.アシッドグリーン3,5,6,7,8,9,11,13,14,15,16,18,22,50,50:1等のトリアリールメタン系酸性染料;C.I.アシッドレッド50,51,52,87,92,94,289,388、C.I.アシッドバイオレット9,30,102、スルホローダミンG、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン640等のキサンテン系酸性染料などが挙げられる。キサンテン系酸性染料は、中でも、C.I.アシッドレッド50、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドバイオレット9、C.I.アシッドバイオレット30、C.I.アシッドブルー19等のローダミン系酸性染料であることが好ましい。
また、市販の塩基性染料としては、例えば、C.I.ベーシックバイオレット1,3,14、C.I.ベーシックブルー1,5,7,8,11,26、C.I.ベーシックグリーン1,4等のトリアリールメタン系塩基性染料;C.I.ベーシックイエロー13、C.I.ベーシックレッド14等のシアニン系塩基性染料;C.I.ベーシックレッド29等のアゾ系塩基性染料;C.I.ベーシックバイオレット11等のキサンテン系塩基性染料等が挙げられる。トリアリールメタン系塩基性染料は、中でもC.I.ベーシックブルー1,5,7,8,11,26が好ましい。また、本発明においてトリアリールメタン系塩基性染料としては、後述する一般式(I’)で表される色材のカチオンを有する染料も好適なものとして挙げられる。
これらの染料は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
レーキ色材においてカウンターイオンは、上記染料の種類に応じて異なり、酸性染料のカウンターイオンはカチオンであり、塩基性染料のカウンターイオンはアニオンである。そのため上記レーキ化剤は、上記染料に応じて適宜選択して用いられる。即ち、上記酸性染料を不溶化する場合には、レーキ化剤として当該染料のカウンターカチオンを生じる化合物が用いられ、上記塩基性染料を不溶化する場合には、レーキ化剤として当該染料のカウンターアニオンを生じる化合物が用いられる。
【0038】
酸性染料のカウンターカチオンとしては、アンモニウムカチオンの他、金属カチオンや、無機ポリマー等が挙げられる。
アンモニウムイオンを発生するレーキ化剤としては、例えば、1級アミン化合物、2級アミン化合物、3級アミン化合物等が好適なものとして挙げられ、中でも、耐熱性及び耐光性に優れる点から、2級アミン化合物又は3級アミン化合物を用いることが好ましい。
また金属カチオンを発生するレーキ化剤としては、所望の金属イオンを有する金属塩の中から適宜選択すればよい。
酸性染料のカウンターカチオンは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
酸性染料を含むレーキ色材としては、高輝度を達成可能となる点から、中でも、キサンテン系染料を含むレーキ色材であることが好ましい。
当該レーキ色材におけるキサンテン系酸性染料としては、中でも、下記一般式(VI)で表される化合物、即ち、ローダミン系酸性染料を有することが好ましい。
【0040】
【化6】
(一般式(VI)中、R
10〜R
13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、R
10とR
12、R
11とR
13が結合して環構造を形成してもよい。R
14は、酸性基、Xは、ハロゲン原子を表す。mは0〜5の整数を表す。一般式(VI)は酸性基を1個以上有するものであり、nは0以上の整数である。)
【0041】
R
10〜R
13におけるアルキル基は、特に限定されない。例えば、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖又は分岐状アルキル基等が挙げられ、中でも、炭素数が1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基が有してもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられ、置換されたアルキル基としては、ベンジル基等が挙げられ、更に置換基としてハロゲン原子や、酸性基を有していてもよい。
R
10〜R
13におけるアリール基は、特に限定されない。例えば、炭素数6〜20の置換基を有していてもよいアリール基が挙げられ、中でも、フェニル基、ナフチル基等を有する基が好ましい。R
10〜R
13におけるヘテロアリール基は、炭素数5〜20の置換基を有していてもよいヘテロアリール基が挙げられ、ヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものが好ましい。
アリール基又はヘテロアリール基が有してもよい置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、酸性基、水酸基、アルコキシ基、カルバモイル基、カルボン酸エステル基等が挙げられる。
なお、R
10〜R
13は、同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
酸性基又はその塩の具体例としては、カルボキシ基(−COOH)、カルボキシラト基(−COO
−)、カルボン酸塩基(−COOM、ここでMは金属原子を表す。)、スルホナト基(−SO
3−)、スルホ基(−SO
3H)、スルホン酸塩基(−SO
3M、ここでMは金属原子を表す。)等が挙げられ、中でも、スルホナト基(−SO
3−)、スルホ基(−SO
3H)、又はスルホン酸塩基(−SO
3M)の少なくとも1種を有することが好ましい。なお金属原子Mとしては、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられる。
【0043】
一般式(VI)で表される化合物としては、高輝度化の点から、中でも、アシッドレッド50、アシッドレッド52、アシッドレッド289、アシッドバイオレット9、アシッドバイオレット30、アシッドブルー19等が好ましい。
また、耐熱性の点からは、一般式(VI)において、m=1、且つn=0であるベタイン構造を有する化合物が好ましい。
【0044】
上記キサンテン系酸性染料の金属レーキ色材は、レーキ化剤として、金属原子を含むものが用いられる。金属原子を含むレーキ化剤を用いることにより、色材の耐熱性が高くなる。このようなレーキ化剤としては、2価以上の金属カチオンとなる金属原子を含むレーキ化剤が好ましい。
【0045】
一方、塩基性染料のカウンターアニオンとしては、有機アニオンであっても、無機アニオンであってもよい。当該有機アニオンとしては、アニオン性基を置換基として有する有機化合物が挙げられる。
【0046】
また、有機アニオンとして公知の酸性染料を用いてもよい。この場合、レーキ色材は、酸性染料と塩基性染料とがイオン対となって存在する。
これらの有機アニオンを発生するレーキ化剤としては、上記の有機アニオンのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0047】
一方、無機アニオンとしては、例えば、オキソ酸のアニオン(リン酸イオン、硫酸イオン、クロム酸イオン、タングステン酸イオン(WO
42−)、モリブデン酸イオン(MoO
42−)等)や、複数のオキソ酸が縮合したポリ酸アニオン等の無機アニオンやその混合物を挙げることができる。
上記ポリ酸としては、イソポリ酸アニオン(M
mO
n)
c−であってもヘテロポリ酸アニオン(X
lM
mO
n)
c−であってもよい。上記イオン式中、Mはポリ原子、Xはヘテロ原子、mはポリ原子の組成比、nは酸素原子の組成比を表す。ポリ原子Mとしては、例えば、Mo、W、V、Ti、Nb等が挙げられる。またヘテロ原子Xとしては、例えば、Si、P、As、S、Fe、Co等が挙げられる。
中でも、耐熱性の点から、モリブデン(Mo)及びタングステン(W)のうち少なくとも一方を含むポリ酸アニオンであることが好ましく、少なくともタングステンを含むc価のポリ酸アニオンであることがより好ましい。
【0048】
無機アニオンを発生するレーキ化剤としては、上記無機アニオンのアルカリ塩やアルカリ金属塩等が挙げられる。
レーキ色材における塩基性染料のカウンターアニオンは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においてレーキ色材は、耐熱性及び耐光性の点から、中でも塩基性染料と無機アニオンとからなるレーキ色材であることが好ましく、更に、塩基性染料とポリ酸アニオン
とからなるレーキ色材であることより好ましい。ポリ酸アニオンを含むレーキ色材の場合には、シランカップリング剤が経時で変化を受けやすいが、本発明においては、当該シランカップリング剤の含有割合が着色樹脂組成物中の全固形分に対して1質量%以下であるため、当該経時変化の影響が小さい一方、耐熱性及び耐光性が高いため、本願のレーキ色材として特に好適に用いられる。
【0049】
本発明においては、前記レーキ色材が、カラーフィルタの輝度を向上できる点から、トリアリールメタン系染料を有するレーキ色材を含むことが好ましく、中でも、トリアリールメタン系塩基性染料と、ポリ酸アニオンとを含むことが好ましい。
【0050】
本発明において、前記レーキ色材は、耐熱性及び耐光性に優れ、カラーフィルタの高輝度化を達成する点から、中でも、下記一般式(I)で表される色材、及び下記一般式(II)で表される色材より選択される1種以上であることが好ましく、下記一般式(I)で表される色材であることが、分子会合状態を形成しており、より優れた耐熱性を示す点で好ましい。
【0051】
【化7】
(一般式(I)中、Aは、Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO、S、Nが含まれていてもよい。B
c−は少なくともタングステンを含むc価のポリ酸アニオンを表す。R
i〜R
vは各々独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、R
iiとR
iii、R
ivとR
vが結合して環構造を形成してもよい。Ar
1は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。複数あるR
i〜R
v及びAr
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
a及びcは2以上の整数、b及びdは1以上の整数を表す。eは0又は1であり、eが0のとき結合は存在しない。複数あるeは同一であっても異なっていてもよい。)
【0052】
【化8】
(一般式(II)中、R
I、R
II、R
III、R
IV、R
V及びR
VIは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又はフェニル基を表し、X
−は、(SiMoW
11O
40)
4−/4及び(P
2Mo
yW
18−yO
62)
6−/6の少なくとも1つで表され、y=1、2または3の整数であるヘテロポリオキソメタレートアニオンを表す。)
【0053】
上記一般式(I)で表される色材は、
図4に示すように、2価以上のアニオン202と、2価以上のカチオン201とを含むため、当該色材の凝集体においては、アニオンとカチオンが単に1分子対1分子でイオン結合しているのではなく、イオン結合203を介して複数の分子が会合する分子会合体210を形成するものと推定される。そのため、一般式(I)で表される色材の見かけの分子量は、従来のレーキ色材の分子量に比べて格段に増大する。このような分子会合体の形成により固体状態での凝集力がより高まり、熱運動を低下させ、イオン対の解離やカチオン部の分解を抑制でき、耐熱性が向上すると推定される。
【0054】
一般式(I)におけるAは、N(窒素原子)と直接結合する炭素原子がπ結合を有しないa価の有機基であって、当該有機基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基、又は当該脂肪族炭化水素基を有する芳香族基を表し、炭素鎖中にO(酸素原子)、S(硫黄原子)、N(窒素原子)が含まれていてもよいものである。Nと直接結合する炭素原子がπ結合を有しないため、カチオン性の発色部位が有する色調や透過率等の色特性は、連結基Aや他の発色部位の影響を受けず、単量体と同様の色を保持することができる。なお、耐熱性の点からは、Aがシロキサン結合を有しないことが好ましく、Si(ケイ素原子)を有しないことがより好ましい。
Aにおいて、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基は、Nと直接結合する末端の炭素原子がπ結合を有しなければ、直鎖、分岐又は環状のいずれであってもよく、末端以外の炭素原子が不飽和結合を有していてもよく、置換基を有していてもよく、炭素鎖中に、O、S、Nが含まれていてもよい。例えば、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、アミド基等が含まれていてもよく、水素原子が更にハロゲン原子等に置換されていてもよい。
また、Aにおいて上記脂肪族炭化水素基を有する芳香族基は、少なくともNと直接結合する末端に飽和脂肪族炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基を有する、単環又は多環芳香族基が挙げられ、置換基を有していてもよく、O、S、Nが含まれる複素環であってもよい。
中でも、骨格の堅牢性の点から、Aは、環状の脂肪族炭化水素基又は芳香族基を含むことが好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基としては、中でも、有橋脂環式炭化水素基が、骨格の堅牢性の点から好ましい。有橋脂環式炭化水素基とは、脂肪族環内に橋かけ構造を有し、多環構造を有する多環状脂肪族炭化水素基をいい、例えば、ノルボルナン、ビシクロ[2,2,2]オクタン、アダマンタン等が挙げられる。有橋脂環式炭化水素基の中でも、ノルボルナンが好ましい。また、芳香族基としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環を含む基が挙げられ、中でも、ベンゼン環を含む基が好ましい。例えば、Aが2価の有機基の場合、炭素数1〜20の直鎖、分岐、又は環状のアルキレン基や、キシリレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基を2個置換した芳香族基等が挙げられる。
【0055】
一般式(I)における価数aは、カチオンを構成する発色性カチオン部位の数であり、aは2以上の整数である。本発明の色材においては、カチオンの価数aが2以上であるため、耐熱性に優れている。aの上限は特に限定されないが、製造の容易性の点から、aが4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。
【0056】
R
i〜R
vにおけるアルキル基は、特に限定されない。例えば、炭素数1〜20の直鎖又は分岐状アルキル基等が挙げられ、中でも、炭素数が1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であることが、輝度及び耐熱性の点から、より好ましい。中でも、R
i〜R
vにおけるアルキル基がエチル基又はメチル基であることが特に好ましい。アルキル基が有してもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられ、置換されたアルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。
R
i〜R
vにおけるアリール基は、特に限定されない。例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基が有してもよい置換基としては、例えばアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
中でも化学的安定性の点からR
i〜R
vとしては、各々独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、又は、R
iiとR
iii、R
ivとR
vが結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環を形成していることが好ましい。
【0057】
R
i〜R
vはそれぞれ独立に上記構造をとることができるが、中でも、色純度の点からR
iが水素原子であることが好ましく、さらに製造および原料調達の容易さの点からR
ii〜R
vがすべて同一であることがより好ましい。
【0058】
Ar
1における2価の芳香族基は特に限定されない。Ar
1における芳香族基としては、Aにおける芳香族基に挙げられたものと同様のものとすることができる。
Ar
1は炭素数が6〜20の芳香族基であることが好ましく、炭素数が10〜14の縮合多環式炭素環からなる芳香族基がより好ましい。中でも、構造が単純で原料が安価である点からフェニレン基やナフチレン基であることがより好ましい。
【0059】
1分子内に複数あるR
i〜R
v及びAr
1は、同一であっても異なっていてもよい。R
i〜R
v及びAr
1の組み合わせにより、所望の色に調整することができる。
【0060】
一般式(I)で表される色材において、アニオン部(B
c−)は、少なくともタングステンを含み、モリブデンを含んでいてもよいc価のポリ酸アニオンを表す。
【0061】
一般式(I)で表される色材におけるポリ酸アニオンは、上記のアニオンを1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができ、2種以上組み合わせて用いる場合には、ポリ酸アニオン全体におけるタングステンとモリブデンとの比が90:10〜100:0であることが耐熱性と耐光性の点から好ましい。
【0062】
一般式(I)におけるbはカチオンの数を、dは分子会合体中のアニオンの数を示し、b及びdは1以上の整数を表す。bが2以上の場合、分子会合体中に複数あるカチオンは、1種単独であっても、2種以上が組み合わされていてもよい。また、dが2以上の場合、分子会合体中に複数あるアニオンは、1種単独であっても、2種以上が組み合わされていてもよく、有機アニオンと無機アニオンを組み合わせて用いることもできる。
【0063】
一般式(I)におけるeは、0又は1の整数である。e=0はトリアリールメタン骨格を表し、e=1はキサンテン骨格を表す。複数あるeは同一であっても異なっていてもよい。すなわち、例えば、トリアリールメタン骨格のみ、又は、キサンテン骨格のみを複数有するカチオン部であってもよく、1分子内に、トリアリールメタン骨格とキサンテン骨格の両方を含むカチオン部であってもよい。色純度の点からは、同一骨格のみを有するアニオン部であることが好ましい。一方、トリアリールメタン骨格とキサンテン骨格の両方を含むカチオン部とすることにより、一般式(I)で表される色材は、所望の色に調整することができる。
【0064】
本発明においては、一般式(I)で表される色材におけるeが0、即ち、下記一般式(I’)で表される色材を用いることが、所望の色に調整しやすい点からより好ましい。
【0065】
【化9】
(一般式(I’)中の各符号は、前記一般式(I)と同様である。)
【0066】
なお、一般式(I)で表される色材がキサンテン骨格を有する場合、後述するキサンテン系染料にも含まれ得るが、一般式(I)で表される色材に該当する限り、本発明においては、一般式(I)で表される色材に該当するものとして取り扱うものとする。
【0067】
一般式(I)で表される色材の製造方法は、特に限定されない。例えば、国際公開第2012/144520号パンフレットに記載の製造方法により得ることができる。
【0068】
一方、一般式(II)で表される色材は、トリアリールメタン系染料をレーキ化した色材であるため、従来の染料と同様に、高輝度化に適している。更に、上記特定のヘテロポリオキソメタレートアニオンを用いているため、従来の色材と比較して耐熱性や耐光性に優れている。
【0069】
上記一般式(II)のR
I〜R
VIの炭素数1〜3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基などが挙げられる。
【0070】
トリアリールメタン骨格を有するカチオン部分の構造は所望の色度等によって適宜選択すればよい。中でも、高輝度及び高コントラストを達成しやすい点からは、従来公知のトリアリールメタン系染料のカチオン部分と同様の構造を有することが好ましい。具体例としては、例えば、一般式(II)において、R
I〜R
Vがエチル基で、R
VIが水素原子であるベーシックブルー7、R
I〜R
IVがメチル基、R
Vがフェニル基、R
VIが水素原子であるベーシックブルー26、R
I〜R
IVがメチル基、R
Vがエチル基、R
VIが水素原子であるベーシックブルー11、R
I〜R
Vがメチル基、R
VIがフェニル基であるベーシックブルー8等のカチオン部分が挙げられ、高輝度及び高コントラストを達成しやすい点から、中でも、ベーシックブルー7と同様のカチオン部分の構造を有することが好ましい。
【0071】
上記一般式(II)のX
−は、(SiMoW
11O
40)
4−/4及び(P
2Mo
yW
18−yO
62)
6−/6の少なくとも1つで表され、y=1、2または3の整数であるヘテロポリオキソメタレートアニオンである。上記一般式(I)で表される色材におけるX
−としては、(SiMoW
11O
40)
4−/4、又は、P
2Mo
yW
18−yO
62)
6−/6の1種のみを用いても良いし、(SiMoW
11O
40)
4−/4及びP
2Mo
yW
18−yO
62)
6−/6の2種を混合して用いても良い。
【0072】
(SiMoW
11O
40)
4−/4で表されるヘテロポリオキソメタレートアニオンは、対応するヘテロポリ酸、又は対応するヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩として、例えば、Journal of American Chemical Society, 104(1982) p3194に記載の方法に従って得ることができる。具体的には、硝酸水溶液とモリブデン酸アルカリ金属塩水溶液を混合攪拌し、これにK
8(α型SiW
11O
39)を加え、2〜6時間攪拌することでヘテロポリ酸を得ることができる。更に、得られたヘテロポリ酸をアルカリ金属塩化物と反応させることにより、ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩とすることができる。
【0073】
また、(P
2Mo
yW
18−yO
62)
6−/6で表されるヘテロポリオキソメタレートアニオンは、対応するヘテロポリ酸、又は対応するヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩として、例えば、Inorganic Chemistry, vol47, p3679に記載の方法に従って得ることができる。具体的には、タングステン酸アルカリ金属塩とモリブデン酸アルカリ金属塩とを、水に溶解させ、これにリン酸を加え、加熱攪拌しながら5〜10時間加熱還流することでヘテロポリ酸を得ることができる。更に、得られたヘテロポリ酸をアルカリ金属塩化合物と反応させることによりヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩とすることができる。なお、上記タングステン酸アルカリ金属塩とモリブデン酸アルカリ金属塩の仕込み量を適宜調整することにより、上記ヘテロポリオキソメタレートアニオンにおけるモリブデンの数yを1〜3の範囲に調整することができる。
【0074】
また、モリブデン酸アルカリ金属塩を水に溶解させ、これに塩酸を加え、次いでK
10(α2型P
2W
17O
61)のような、α2型の欠損ドーソン型リンタングステン酸アルカリ金属塩を加えて、10〜30℃にて、30分〜2時間攪拌することで、yに分布のないP
2Mo
1W
17O
62のみを得ることもできる。
【0075】
ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩としては、例えば、K
4(SiMoW
11O
40)、K
6(P
2MoW
17O
62)、K
6(P
2Mo
2W
16O
62)、K
6(P
2Mo
3W
15O
62)などが挙げられる。
【0076】
得られたヘテロポリオキソメタレートアニオンに対応するヘテロポリ酸、又はヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩と、所望の構造を有する染料とを塩置換することにより、上記一般式(II)で表される色材を得ることができる。塩置換の反応収率が高い点から、ヘテロポリ酸よりも、ヘテロポリオキソメタレートアルカリ金属塩を用いることが好ましい。
【0077】
上記一般式(II)で表される色材は、結晶水を持つ水和物であってもよく、無水物であってもよい。また、上記一般式(II)で表される色材は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
本発明においてレーキ色材は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、中でも、一般式(I)で表されるレーキ色材と、前記キサンテン系染料を含むレーキ色材を組合わせて用いることが好ましい。
【0079】
<他の色材>
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、色調の制御を目的として、更に他の色材を含有してもよい。他の色材としては、公知の顔料及び染料が挙げられ、1種又は2種以上用いることができる。
【0080】
所望の色調を得られる点から他の色材として、ジオキサジン系色材、及び、キサンテン系色材より選択される1種以上を更に含有することが好ましい。好ましいジオキサジン顔料の具体例としては、ピグメントバイオレット23等が挙げられる。また好ましいキサンテン系色材の具体例としては、アシッドレッド51、52、87、92、94、289、388、C.I.アシッドバイオレット9、30、102、スルホローダミンG、スルホローダミンB、スルホローダミン101、スルホローダミン640等の他、特開2010−32999号公報、特開2010−211198号公報、特許第4492760号公報等に記載のキサンテン系染料等が挙げられる。
【0081】
本発明においては、キサンテン系色材の中でも、アシッドレッド289、又は、下記一般式(III)で表されるキサンテン系色材を用いることが、耐熱性及び耐光性の点から好ましい。
【0082】
【化10】
(一般式(III)中、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、アルキル基、又はアリール基であり、R
23及びR
24は、それぞれ独立に、アリール基、又はヘテロアリール基である。)
【0083】
R
21及びR
22におけるアルキル基は、特に限定されない。例えば、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖又は分岐状アルキル基等が挙げられ、中でも、炭素数が1〜8の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基が有してもよい置換基としては、特に限定されないが、例えば、アリール基、ハロゲン原子、水酸基等が挙げられ、置換されたアルキル基としては、ベンジル基等が挙げられ、更に置換基としてハロゲン原子を有していてもよい。
R
21〜R
24におけるアリール基は、特に限定されない。例えば、炭素数6〜20の置換基を有していてもよいアリール基が挙げられ、中でも、フェニル基、ナフチル基等を有する基が好ましい。R
23及びR
24におけるヘテロアリール基は、炭素数5〜20の置換基を有していてもよいヘテロアリール基が挙げられ、ヘテロ原子として、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含むものが好ましい。
アリール基又はヘテロアリール基が有してもよい置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルバモイル基、カルボン酸エステル基等が挙げられる。
なお、一般式(III)においては、耐光性の点から、R
21〜R
24は酸性基を有しないものである。
一般式(III)において、キサンテン骨格を置換するベンゼン環が有するスルホナト基(−SO
3−)の置換位置は、特に限定されないが、キサンテン骨格に対して、オルト位又はパラ位であることが好ましく、スルホナト基がキサンテン骨格に対してオルト位に置換されていることが、耐光性の点から好ましい。
【0084】
一般式(III)で表される化合物は、スルホナト基を1個有し、金属イオンやハロゲン原子を有しない。また、R
21〜R
24は、水素原子でなく、R
23及びR
24はアリール基、又はヘテロアリール基のいずれかであるという特徴を有する。
上記一般式(III)で表される化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、特開2010−211198号公報を参考に得ることができる。
【0085】
上記レーキ色材に他の色材を組み合わせて用いる場合の色材の配合割合は、所望の色調が得られるように適宜調整すればよい。耐熱性及び耐光性に優れる点からは、中でも、レーキ色材と他の色材とを合わせた色材全量100質量部に対して、前記レーキ色材が、30〜100質量部であることが好ましく、60〜99質量部であることがより好ましく、70〜98質量部であることが更により好ましい。
【0086】
[分散剤]
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物において、前記レーキ色材は、分散剤により溶剤中に分散させて用いられる。本発明において分散剤は、従来公知の分散剤の中から適宜選択して用いることができる。分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、均一に、微細に分散し得る点から、高分子分散剤が好ましい。
【0087】
高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。
【0088】
高分子分散剤としては、中でも、前記レーキ色材を好適に分散でき、分散安定性が良好である点から、主鎖又は側鎖に窒素原子を含み、アミン価を有する高分子分散剤が好ましく、中でも、3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体からなる高分子分散剤であることが、分散性が良好で塗膜形成時に異物を析出せず、溶剤への再溶解性に優れる点から好ましい。
3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体を分散剤として用いることにより、前記レーキ色材の分散性及び分散安定性が向上する。3級アミンを有する繰り返し単位は、前記レーキ色材と親和性を有する部位である。3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体からなる高分子分散剤は、通常、溶剤と親和性を有する部位となる繰り返し単位を含む。3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体としては、中でも、3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部と、溶剤親和性を有するブロック部とを有するブロック共重合体であることが、耐熱性に優れ、高輝度となる塗膜を形成可能となる点で好ましい。
【0089】
3級アミンを有する繰り返し単位は、3級アミンを有していれば良く、該3級アミンは、ブロックポリマーの側鎖に含まれていても、主鎖を構成するものであっても良い。
中でも、側鎖に3級アミンを有する繰り返し単位であることが好ましく、中でも、主鎖骨格が熱分解し難く、耐熱性が高い点から、下記一般式(IV)で表される構造であることが、より好ましい。
【0090】
【化11】
(一般式(IV)中、R
1は、水素原子又はメチル基、Qは、2価の連結基、R
2は、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R
5)−CH(R
6)−O]
x−CH(R
5)−CH(R
6)−又は−[(CH
2)
y−O]
z−(CH
2)
y−で示される2価の有機基、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、置換されていてもよい鎖状又は環状の炭化水素基を表すか、R
3及びR
4が互いに結合して環状構造を形成する。R
5及びR
6は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【0091】
上記一般式(IV)の2価の連結基Qとしては、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−基、−COO−基、炭素数1〜10のエーテル基(−R’−OR”−:R’及びR”は、各々独立にアルキレン基)及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。中でも、得られたポリマーの耐熱性や溶剤として好適に用いられるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する溶解性、また比較的安価な材料である点から、Qは、−COO−基であることが好ましい。
【0092】
上記一般式(IV)の2価の有機基R
2は、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R
5)−CH(R
6)−O]
x−CH(R
5)−CH(R
6)−又は−[(CH
2)
y−O]
z−(CH
2)
y−である。上記炭素数1〜8のアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基、各種オクチレン基などである。
R
5及びR
6は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
上記R
2としては、分散性の点から、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、中でも、R
2がメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であることが更に好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。
【0093】
上記一般式(IV)のR
3、R
4が互いに結合して形成する環状構造としては、例えば5〜7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。
【0094】
上記一般式(IV)で表される繰り返し単位としては、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルアミン、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルアミン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジエチルアミン、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチルアミン等から誘導される繰り返し単位が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
前記3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部(以下、Aブロックと記載することがある。)と溶剤親和性を有するブロック部(以下、Bブロックと記載することがある。)とを有するブロック共重合体における、溶剤親和性を有するブロック部としては、溶剤親和性を良好にし、分散性を向上する点から、前記一般式(IV)で表される構成単位を有さず、前記一般式(IV)と共重合可能な構成単位を有する溶剤親和性ブロック部を有する。本発明においてブロック共重合体の各ブロックの配置は特に限定されず、例えば、ABブロック共重合体、ABAブロック共重合体、BABブロック共重合体等とすることができる。中でも、分散性に優れる点で、ABブロック共重合体、又はABAブロック共重合体が好ましい。
前記一般式(IV)と共重合可能な構成単位としては、レーキ色材の分散性及び分散安定性を向上させながら、耐熱性も向上する点から、下記一般式(V)で表される構成単位であることが好ましい。
【0096】
【化12】
(一般式(V)中、R
7は、水素原子又はメチル基、Aは、直接結合又は2価の連結基、R
8は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
9)−CH(R
10)−O]
x−R
11又は−[(CH
2)
y−O]
z−R
11で示される1価の基である。R
9及びR
10は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
11は、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH
2CHO、又は−CH
2COOR
12で示される1価の基であり、R
12は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。mは3〜200の整数、nは10〜200の整数を示す。)
【0097】
上記一般式(V)の2価の連結基Aとしては、前記一般式(IV)におけるQと同様のものとすることができ、得られたポリマーの耐熱性や溶剤として好適に用いられるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)に対する溶解性、また比較的安価な材料である点から、Aは、−COO−基であることが好ましい。
【0098】
R
8において、上記炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。
上記炭素数2〜18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、各種ブテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基などを挙げることができる。
中でも、分散性、基板密着性の点からR
8はメチル基、各種ブチル基、各種ヘキシル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、ヒドロキシエチル基が好ましい。
【0099】
置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。
置換基を有していてもよいアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、7〜20が好ましく、更に7〜14が好ましい。
アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
【0100】
また、上記R
11は水素原子、あるいは置換基を有してもよい、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH2CHO、又は−CH2COOR
12で示される1価の基であり、R
12は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。
上記R
11で示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
上記R
11のうちの炭素数1〜18のアルキル基、及び炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基は、前記R
8で示したとおりである。
上記R
8において、x、y及びzは、前記一般式(IV)におけるR
2と同様である。
【0101】
本発明において上記ブロック共重合体の溶剤親和性のブロック部のガラス転移温度(Tg)は、適宜選択すればよい。耐熱性の点から、中でも、溶剤親和性のブロック部のガラス転移温度(Tg)が、80℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。
本発明における溶剤親和性のブロック部のガラス転移温度(Tg)は下記式で計算することができる。また同様に色材親和性ブロック部及びブロック共重合体のガラス転移温度も計算することが出来る。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、溶剤親和性のブロック部はi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。なお、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は、Polymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用することができる。
【0102】
溶剤親和性のブロック部を構成する構成単位の数は、分散剤のアミン価が70mgKOH/g以上160mgKOH/gとなる範囲で適宜調整すればよい。中でも、溶剤親和性部位と色材親和性部位が効果的に作用し、色材の分散性を向上する点から、溶剤親和性のブロック部を構成する構成単位の数は、10〜200であることが好ましく、10〜100であることがより好ましく、更に10〜70であることがより好ましい。
【0103】
溶剤親和性のブロック部は、溶剤親和性部位として機能するように選択されれば良く、溶剤親和性のブロック部を構成する繰り返し単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の繰り返し単位を含んでいてもよい。
本発明の分散剤として用いられるブロック共重合体において、一般式(IV)で表される構成単位のユニット数mと、溶剤親和性のブロック部を構成する他の構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.01〜1の範囲内であることが好ましく、0.05〜0.7の範囲内であることが、色材の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
【0104】
本発明において分散剤は、アミン価が70mgKOH/g以上160mgKOH/g以下のものを選択して用いる。アミン価が上記範囲内であることにより、粘度の経時安定性や耐熱性に優れると共に、アルカリ現像性や、溶剤再溶解性にも優れている。本発明において、分散剤のアミン価は、分散性および分散安定性の点から、中でも、アミン価が80mgKOH/g以上であることが好ましく、90mgKOH/g以上であることがより好ましい。一方、溶剤再溶解性の点から、分散剤のアミン価は、120mgKOH/g以下であることが好ましく、105mgKOH/g以下であることがより好ましい。
アミン価は、試料1g中に含まれるアミン成分を中和するのに要する過塩素酸と当量の水酸化カリウムのmg数をいい、JIS−K7237に定義された方法により測定することができる。当該方法により測定した場合には、分散剤中の有機酸化合物と塩形成しているアミノ基において、通常、当該有機酸化合物が解離するため、分散剤として用いられるブロック共重合体そのもののアミン価を測定することができる。
【0105】
本発明に用いられる分散剤の酸価は、現像残渣の抑制効果が発現される点から、下限としては、1mgKOH/g以上であることが好ましい。中でも、現像残渣の抑制効果がより優れる点から、分散剤の酸価は2mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、本発明に用いられる分散剤の酸価は、現像密着性の悪化や溶剤再溶解性の悪化を防止できる点から、上限としては、18mgKOH/g以下であることが好ましい。中でも、現像密着性、及び溶剤再溶解性が良好になる点から、分散剤の酸価は、16mgKOH/g以下であることがより好ましく、14mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。
本発明に用いられる分散剤においては、塩形成前のブロック共重合体の酸価が1mgKOH/g以上であることが好ましく、2mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。現像残渣の抑制効果が向上するからである。また、塩形成前のブロック共重合体の酸価の上限としては18mgKOH/g以下であることが好ましいが、16mgKOH/g以下であることがより好ましく、14mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。現像密着性、及び溶剤再溶解性が良好になるからである。
色材濃度を高め、分散剤含有量が増加すると、相対的にバインダー量が減少することから、着色樹脂層が現像時に下地基板から剥離し易くなる。分散剤がカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックを含み、前記特定の酸価及びガラス転移温度を有することにより、現像密着性が向上する。酸価が高すぎると、現像性に優れるものの、極性が高すぎて却って現像時に剥離が生じ易くなると推定される。
【0106】
また、本発明において、分散剤のガラス転移温度は、現像密着性が向上する点から、30℃以上であることが好ましい。すなわち、分散剤が、塩形成前ブロック共重合体であっても、塩型ブロック共重合体であっても、そのガラス転移温度は、30℃以上であることが好ましい。分散剤のガラス転移温度が低いと、特に現像液温度(通常23℃程度)に近接し、現像密着性が低下する恐れがある。これは、当該ガラス転移温度が現像液温度に近接すると、現像時に分散剤の運動が大きくなり、その結果、現像密着性が悪化するからと推定される。ガラス転移温度が30℃以上であることによって、現像時の分散剤の分子運動が抑制されることから、現像密着性の低下が抑制されると推定される。
分散剤のガラス転移温度は、現像密着性の点から中でも32℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。一方、精秤が容易など、使用時の操作性の観点から、200℃以下であることが好ましい。
本発明における分散剤のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量測定(DSC)により測定することにより求めることができる。
【0107】
また、本発明において前記分散剤は、酸価が1mgKOH/g以上18mgKOH/g以下で、ガラス転移温度が30℃以上であることが、色材分散安定性に優れ、着色樹脂組成物とした際に、現像残渣の発生が抑制されながら、溶剤再溶解性に優れ、更に、高い現像密着性を有する点から好ましい。
色材濃度を高め、分散剤含有量が増加すると、相対的にバインダー量が減少することから、着色樹脂層が現像時に下地基板から剥離し易くなる。分散剤がカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックを含み、前記特定の酸価及びガラス転移温度を有することにより、現像密着性が向上する。しかし、酸価が高すぎる場合には、現像性に優れるものの、極性が高すぎて却って現像時に剥離が生じ易くなると推定される。
【0108】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、一般式(II)で表される構成単位を有するモノマーと共重合可能で、不飽和二重結合とカルボキシ基を含有するモノマーを用いることができる。このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物基含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0109】
塩形成前のブロック共重合体中、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、ブロック共重合体の酸価が前記特定の酸価の範囲内になるように適宜設定すればよく、特に限定されないが、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、0.05〜4.5質量%であることが好ましく、0.07〜3.7質量%であることがより好ましい。
カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合が、前記下限値以上であることより、現像残渣の抑制効果が発現され、前記上限値以下であることより現像密着性の悪化や溶剤再溶解性の悪化を防止できる。
なお、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位は、上記特定の酸価となればよく、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0110】
また、本発明に用いられる分散剤のガラス転移温度を特定の値以上とし、現像密着性が向上する点から、モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が10℃以上であるモノマーを、合計でBブロック中に75質量%以上とすることが好ましく、更に85質量%以上とすることが好ましい。
【0111】
前記ブロック共重合体において、前記Aブロックの構成単位のユニット数mと、前記Bブロックの構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.05〜1.5の範囲内であることが好ましく、0.1〜1.0の範囲内であることが、色材の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
【0112】
前記ブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、色材分散性及び分散安定性を良好なものとする点から、1000〜20000であることが好ましく、2000〜15000であることがより好ましく、更に3000〜12000であることがより好ましい。
ここで、重量平均分子量は(Mw)、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求める。なお、ブロック共重合体の原料となるマクロモノマーや塩型ブロック共重合体、グラフト共重合体についても、上記条件で行う。
【0113】
上記ブロック共重合体の製造方法は、特に限定されない。公知の方法によってブロック共重合体を製造することができるが、中でもリビング重合法で製造することが好ましい。連鎖移動や失活が起こりにくく、分子量の揃った共重合体を製造することができ、分散性等を向上できるからである。リビング重合法としては、リビングラジカル重合法、グループトランスファー重合法等のリビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法等を挙げることができる。これらの方法によりモノマーを順次重合することによって共重合体を製造することができる。例えば、Aブロックを先に製造し、AブロックにBブロックを構成する構成単位を重合することにより、ブロック共重合体を製造することができる。また上記の製造方法においてAブロックとBブロックの重合の順番を逆にすることもできる。また、AブロックとBブロックを別々に製造し、その後、AブロックとBブロックをカップリングすることもできる。
【0114】
このような3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部と溶剤親和性を有するブロック部とを有するブロック共重合体の具体例としては、例えば、特許第4911253号公報に記載のブロック共重合体を好適なものとして挙げることができる。
【0115】
上記3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体を分散剤として用いて、前記レーキ色材を分散する場合には、レーキ色材100質量部に対して、当該3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体の含有量が15〜300質量部であることが好ましく、20〜250質量部であることがより好ましい。上記範囲内であれば分散性及び分散安定性に優れている。
【0116】
本発明においては、前記レーキ色材、中でも前記一般式(I)で表される色材、及び一般式(II)で表される色材の分散性や分散安定性の点から、前記3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体中のアミノ基のうちの少なくとも一部と、有機酸化合物とが塩を形成したものを分散剤として用いることがより好ましい(以下、このような重合体を、塩型重合体と称することがある)。
当該塩型重合体を用いることにより、特に、前記一般式(I)で表される色材、及び一般式(II)で表される色材の分散性及び分散安定性が向上する。中でも、3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体がブロック共重合体であって、前記有機酸化合物が酸性有機リン化合物であることが、レーキ色材、特に前記一般式(I)で表される色材、及び一般式(II)で表される色材の分散性及び分散安定性に優れる点から好ましい。
【0117】
本発明において上記有機酸化合物は、1個以上の炭素原子と、酸性基とを有する化合物であればよく特に限定されない。有機酸化合物が有する酸性基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、分散性、分散安定性、耐熱性及びアルカリ現像性の点から、スルホ基又はリン酸基であることが好ましい。また、アルカリ現像性の点からはリン酸基を有することが好ましい。
有機酸化合物1分子中に含まれる酸性基の数は特に限定されないが、分散性分散安定性、耐熱性及びアルカリ現像性の点から、1分子中の酸性基が1〜3個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましい。また、酸性基の価数は、特に限定されないが、分散安定性、耐熱性及び現像性の点から、1〜3価の酸であることが好ましく、1〜2価の酸であることがより好ましい。
本発明において、有機酸化合物は、分散剤が有するアミノ基と塩形成しやすい点から、分子量が5000以下であることが好ましく、100以上1000以下であることがより好ましく、150以上500以下が更により好ましい。
【0118】
本発明において、有機酸化合物が下記一般式(VI)、及び下記一般式(VII)よりなる群から選択される1種以上であることが、分散性、分散安定性、耐熱性及びアルカリ現像性に優れる点から好ましい。
【0119】
【化13】
(式(VI)及び式(VII)中、R
a及びR
a’はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、−[(CH
2)
t−O]
u−R
e、又は−O−R
a’’で示される1価の基であり、R
a及びR
a’のいずれかは炭素原子を含む。R
a’’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、−[(CH
2)
t−O]
u−R
eで示される1価の基である。
R
bは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、−[(CH
2)
t−O]
u−R
e、又は−O−R
b’で示される1価の基である。R
b’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、又は−[(CH
2)
t−O]
u−R
eで示される1価の基である。
R
c及びR
dは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
eは、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH
2CHO、−CO−CH=CH
2、−CO−C(CH
3)=CH
2又は−CH
2COOR
fで示される1価の基であり、R
fは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。
R
a、R
a’、及びR
bにおいて、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。
sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。)
【0120】
上記一般式(VI)において、R
a及びR
a’が芳香環を有する場合、該芳香環上に適当な置換基、例えば、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基などを有していてもよい。
上記炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記分散剤におけるR
8と同様のものとすることができる。
【0121】
R
a及び/又はR
a’が、−O−R
a”の場合、酸性リン酸エステルとなる。
尚、R
a”が芳香環を有する場合、該芳香環上に適当な置換基、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基などを有していてもよい。
【0122】
上記R
eで示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
上記R
eのうちの炭素数1〜18のアルキル基は前記のR
8で示したとおりであり、炭素数2〜18のアルケニル基は、前記のR
a及びR
a’で示したとおりである。
R
a、R
a’及びR
a”において、sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数である。sは、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、tは、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。uは、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。
【0123】
上記一般式(VII)において、R
bが芳香環を有する場合、該芳香環上に適当な置換基、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基などを有していてもよい。
R
bが、−O−R
b’の場合、酸性硫酸エステルとなる。上記R
b’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、又は−[(CH
2)
t−O]
u−R
eで示される1価の基である。
上記炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記のR
8で示したとおりであり、炭素数2〜18のアルケニル基は、前記のR
a及びR
a’で示したとおりである。尚、R
b’が芳香環を有する場合、該芳香環上に適当な置換基、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基などを有していてもよい。
上記R
c、R
d及びR
eは、前記と同じである。
上記R
b及びR
b’において、sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数である。好ましいs、t、uは、上記R
a、R
a’及びR
a”と同様である。
【0124】
上記一般式(VI)で表される有機酸化合物としては、前記一般式(VI)におけるR
a及びR
a’が、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、又は−[(CH
2)
t−O]
u−R
e、あるいは、−O−R
a’’で示される1価の基であり、R
a及びR
a’のいずれかは炭素原子を含み、且つ、R
a’’が、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、又は−[(CH
2)
t−O]
u−R
eであり、R
c及びR
dが、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であることが、色材の分散性を向上し、且つ得られた着色層のコントラストが高く、且つ、耐熱性に優れる点から好ましく、R
aが水酸基、且つ、R
a’が置換基を有していてもよいアリール基であることがより好ましい。
【0125】
また、一般式(VII)で表される有機酸化合物としては、一般式(VII)におけるR
bが、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、又は−[(CH
2)
t−O]
u−R
e、あるいは、−O−R
b’で示される1価の基であり、R
b’が、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、又は−[(CH
2)
t−O]
u−R
eであり、R
c及びR
dが、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であることが、色材の分散性を向上し、且つ得られた着色層のコントラストが高く、且つ、耐熱性に優れる点から好ましく、R
bが置換基を有していてもよいアリール基であることがより好ましい。
【0126】
中でも、上記一般式(VI)及び一般式(VII)で表される有機酸化合物は、R
a、R
a’及び/又はR
a’’、並びに/或いは、R
b及び/又はR
b’として、芳香環を有することが色材の分散性を向上し、且つ得られた着色層のコントラストが高く、且つ、耐熱性に優れる点から好ましい。R
a、R
a’及びR
a’’の少なくとも1つ、或いは、R
b又はR
b’が、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、より具体的には、ベンジル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基であることが、色材分散性の点から好ましい。前記一般式(VI)においては、R
a及びR
a’の一方が芳香環を有する場合には、R
a及びR
a’の他方は、水素原子や水酸基であるものも好適に用いられる。
【0127】
また、耐熱性や耐薬品性、特に耐アルカリ性の点からは、上記一般式(VI)及び一般式(VII)で表される有機酸化合物としては、リン(P)や硫黄(S)に炭素原子が直接結合した化合物であることが好ましく、R
a及びR
a’が、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、−[(CH
2)
t−O]
u−R
eで示される1価の基であり、R
a及びR
a’のいずれかは炭素原子を含むことが好ましい。また、R
bが、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R
c)−CH(R
d)−O]
s−R
e、−[(CH
2)
t−O]
u−R
eで示される1価の基であることが好ましい。
【0128】
本発明において有機酸化合物は、分散性、耐熱性の面から、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、メチルリン酸、ジベンジルリン酸、ジフェニルリン酸、フェニルホスホン酸などが好ましく、中でも、p−トルエンスルホン酸、フェニルホスホン酸がより好ましい。なお、有機酸化合物は、p−トルエンスルホン酸一水和物のような水和物を用いてもよい。
本発明において有機酸化合物は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0129】
塩型ブロック共重合体の調製方法としては、前記一般式(IV)で表される構成単位を有する重合体を溶解乃至分散した溶剤中に、前記一般式(VI)及び(VII)よりなる群から選択される1種以上の化合物を添加し、攪拌、更に必要により加熱する方法などが挙げられる。
なお、前記一般式(IV)で表される構成単位を有する重合体の当該一般式(IV)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と、前記一般式(VI)及び(VII)よりなる群から選択される1種以上の化合物とが塩を形成していること、及びその割合は、例えばNMR等、公知の手法により確認することができる。
【0130】
分散剤の含有量は、分散性及び分散安定性の点から、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、3〜45質量部、より好ましくは5〜35質量部の割合で配合することが好ましい。
特に色材濃度が高い塗膜乃至着色層を形成する場合には、分散剤の含有量は、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、3〜25質量部、より好ましくは5〜20質量部の割合で配合することが好ましい。
尚、本発明において固形分は、上述した溶剤以外のもの全てであり、溶剤中に溶解しているモノマー等も含まれる。
【0131】
本発明において、分散剤及び有機酸化合物の合計の含有量は、特に限定されないが、分散性及び分散安定性の点から、色材100質量部に対して、分散剤及び有機酸化合物の合計の含有量が10〜120質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましく、30〜80質量部であることが更により好ましい。
【0132】
上記塩型重合体を分散剤として用いて、前記一般式(I)で表される色材を含む色材を分散する場合、色材100質量部に対して、当該塩型重合体の含有量が10〜120質量部であることが好ましく、20〜80質量部であることがより好ましい。上記範囲内であれば分散性及び分散安定性に優れている。
【0133】
[アルカリ可溶性樹脂]
本発明においては、アルカリ可溶性樹脂として、炭化水素環と、エチレン性二重結合を有し、酸価が80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の樹脂を選択して用いる。アルカリ可溶性樹脂はバインダー樹脂として作用し、且つパターン形成する際に用いられる現像液、好ましくはアルカリ現像液に可溶性のある樹脂である。本発明においてアルカリ可溶性樹脂は、酸価が80mgKOH/g以上の樹脂であり、当該樹脂中に含まれる酸性基の数が比較的多く、当該酸性基が基板との密着性に寄与するものと推定される。また、エチレン性二重結合を有するため、カラーフィルタ製造時における樹脂組成物の硬化工程において、当該アルカリ可溶性樹脂同士、乃至、当該アルカリ可溶性樹脂と多官能モノマー等が架橋結合を形成し得る。その結果、着色層の硬化膜の膜強度が向上して、硬化膜の熱収縮が抑制されて基板との密着性に優れている。このようなアルカリ可溶性樹脂を選択して用いることにより、本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物により形成された着色層は、シランカップリング剤を用いない場合であっても基板密着性に優れるため、本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物は、長期間保管後においても基板に対する密着性が低下せず、且つ感度変化が抑制されて設計通りのパターン状着色層を得ることができる。
酸価が80mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂は、酸性基を比較的多く有する樹脂であるため、前記一般式(I)で表される色材の分子会合体表面付近に存在している染料もしくはレーキ化剤塩基性基と相互作用しやすく、その結果、アルカリ可溶性樹脂が前記分子会合体表面に吸着しやすいものと推定される。当該アルカリ可溶性樹脂は比較的酸価が高いため一旦吸着すると、高温加熱時においても解離しにくく、色材の分解などをより抑制でき、輝度の低下が抑制されて、耐熱性が格段に向上するものと推定される。
更に、本発明者らは、炭化水素環を有するアルカリ可溶性樹脂を用いることにより、得られた着色層の耐溶剤性、特に着色層の膨潤が抑制されるとの知見を得た。作用については未解明であるが、着色層内に嵩高い炭化水素環が含まれることにより、着色層内における分子の動きが抑制される結果、塗膜の強度が高くなり溶剤による膨潤が抑制されるものと推定される。
【0134】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は、少なくとも炭化水素環と、エチレン性二重結合を有し、通常、更にカルボキシル基を有するものである。具体的には、カルボキシル基及びエチレン性二重結合を有するアクリル系共重合体、カルボキシル基及びエチレン性二重結合を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシル基を有する構成単位と、側鎖に二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体である。
【0135】
カルボキシル基を有する構成単位とエチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体は、例えば、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマー、及び必要に応じて共重合可能なその他のモノマーを(共)重合して得られた(共)重合体のカルボキシル基に、分子内にエポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等を付加させ、側鎖に二重結合を導入することにより得られる。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシル基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
但し側鎖にエチレン性不飽和結合を有する構成単位を導入する方法は、上記方法に限定されず、適宜公知の方法を用いることができる。
例えば、水酸基を有する構成単位を共重合体に導入しておいて、分子内にイソシアネート基とエチレン性二重結合とを備えた化合物を付加させ、側鎖に二重結合を導入してもよい。
【0136】
本発明においてアルカリ可溶性樹脂は、着色層の密着性が優れる点から、更に炭化水素環を有する。アルカリ可溶性樹脂が嵩高い炭化水素環を有することにより硬化時の収縮が抑制されて、基板との間の剥離が緩和し、基板密着性が向上する。
このような炭化水素環としては、置換基を有していてもよい環状の脂肪族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族環、及びこれらの組み合わせが挙げられ、炭化水素環がカルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、アミド基等の置換基を有していてもよい。
炭化水素環の具体例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン(ジシクロペンタン)、アダマンタン等の脂肪族炭化水素環;ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等の芳香族環;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環や、下記化学式(A)に示されるカルド構造等が挙げられる。
【0138】
炭化水素環として、脂肪族環を含む場合には、着色層の耐熱性や密着性が向上すると共に、得られた着色層の輝度が向上する点から好ましい。
また、前記化学式(A)に示されるカルド構造を含む場合には、更に着色層の硬化性が向上し、(NMP膨潤抑制)が向上する点から特に好ましい。
【0139】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂においては、カルボキシル基を有する構成単位と、上記炭化水素環を有する構成単位を有する樹脂を用いることが、各構成単位量を調整しやすく、上記炭化水素環を有する構成単位量を増加して当該構成単位が有する機能を向上させやすい点から好ましい。
カルボキシルを有する構成単位と、上記炭化水素環とを有するアクリル系共重合体は、前述の“共重合可能なその他のモノマー”として炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーを用いることにより調製することができる。
炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0140】
カルボキシル基を有する構成単位と、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体は、更にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等、エステル基を有する構成単位等の他の構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、カラーフィルタ用着色樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分として機能するだけでなく、溶剤に対する溶解性、さらには溶剤再溶解性を向上させる成分としても機能する。
【0141】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体であることが好ましく、カルボキシル基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位と、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体であることがより好ましい。
【0142】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂としては、前記カルド構造を含むカルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(以下、カルド樹脂という)を好ましく用いることができる。
【0143】
前記カルド構造を含むカルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(以下、カルド樹脂という)は、正確なメカニズムは不明であるが、フルオレン骨格がπ共役系を含むため、ラジカルに対して高感度であると考えられる。後述するオキシムエステル系光重合開始剤とカルド樹脂を組み合わせることで、さらに、溶剤耐性、水染み、感度等の要求性能を向上することができる。
【0144】
カルド樹脂としては、例えば、特開2007−119720号公報に記載された下記一般式(B)で表される重合性化合物、及び特開2006−308698号公報に記載されたフルオレン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基酸の反応物(重縮合物)等が好ましく挙げられる。
【0145】
【化15】
(ここで、上記一般式(B)中、Xは下記一般式(D)で表される基を示し、Yはそれぞれ独立して、多価カルボン酸またはその酸無水物の残基を示し、R
iは下記一般式(C)で表される基を示し、jは0〜4の整数、kは0〜3の整数、nは1以上の整数である。)
【0146】
【化16】
(ここで、上記一般式(C)中、R
iiは水素原子またはメチル基、R
iiiはそれぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示す。)
【0147】
【化17】
(ここで、上記一般式(D)中、R
ivはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、またはハロゲン原子、R
vは−O−または−OCH
2CH
2O−を示す。)
【0148】
本発明に用いられるカルド樹脂は、例えば、フルオレンビスフェノール化合物をエポキシ化してフルオレンビスフェノール化合物のエポキシ化合物とし、これに(メタ)アクリル酸を反応させてエポキシ(メタ)アクリレートとし、このエポキシ(メタ)アクリレートに多価カルボン酸又はその酸無水物と反応させることにより得ることができる。
フルオレンビスフェノール化合物としては、上記一般式(D)において、R
vが−O−であり、この−O−が−OHとなったものが好ましく挙げられる。
フルオレンビスフェノール化合物としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等のビスフェノール化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0149】
前記のフルオレン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂の反応に使用される多価カルボン酸及びその酸無水物としては、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、グルタル酸等のジカルボン酸またはそれらの酸無水物;ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、4−(1,2−ジカルボキシエチル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸等のテトラカルボン酸またはそれらの酸二無水物;トリメリット酸またはその酸無水物等のトリカルボン酸またはそれらの酸無水物等が挙げられる。これらは単独で用いることができ、2種以上を併用することもできる。
本発明に用いられるカルド樹脂としては、好ましくはフルオレンエポキシ(メタ)アクリル酸誘導体とジカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸二無水物との付加生成物であるフルオレン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物が挙げられる。
本発明に用いることができるカルド樹脂の市販品の商品名としては、INR−16M(ナガセケムテック(株)製)、商品名V259ME、(新日鉄住金化学(株)製)等が挙げられる。
カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、それぞれ1種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0150】
カラーフィルタ用着色樹脂組成物において用いられるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量としては特に制限はないが、カラーフィルタ用着色樹脂組成物の固形分全量に対してアルカリ可溶性樹脂は好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜40質量%の範囲内である。アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記下限値よりも少ないと、充分なアルカリ現像性が得られない場合があり、また、アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記上限値よりも多いと、現像時に膜荒れやパターンの欠けが発生する場合がある。尚、本発明において固形分は、上述した溶剤以外のもの全てであり、液状の多官能モノマー等も含まれる。
【0151】
アルカリ可溶性樹脂は、各構成単位の仕込み量を適宜調整することにより、所望の性能を有するアルカリ可溶性樹脂とすることができる。
【0152】
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、良好なパターンが得られる点から、モノマー全量に対して5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。一方、現像後のパターン表面の膜荒れ等を抑制する点から、ルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が5質量%未満では、得られる塗膜のアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターン形成が困難になる。また、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が50質量%を超えると、アルカリ現像液による現像時に、形成されたパターンの基板からの脱落やパターン表面の膜荒れを来たしやすくなる傾向がある。
【0153】
また、アルカリ可溶性樹脂として好ましく用いられる、カルボキシル基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体において、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。また、当該アクリル系共重合体において、炭化水素環基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して30〜80質量%であることが好ましく、40〜75質量%であることがより好ましい。
【0154】
また、アルカリ可溶性樹脂としてより好ましく用いられる、カルボキシル基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位と、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体において、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーに分子内にエポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物を付加して、エチレン性二重結合を導入する場合には、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。当該アクリル系共重合体において、炭化水素環基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して30〜80質量%であることが好ましく、40〜75質量%であることがより好ましい。また、当該アクリル系共重合体において、エポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物はカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量に対して、10〜95質量%であることが好ましく、15〜90質量%であることがより好ましい。
アクリル系共重合体がカルボキシル基と炭化水素環とを有する構成単位を有する場合、当該構成単位は、カルボキシル基を有する構成単位、炭化水素環を有する構成単位の各々に含まれるものとする。
【0155】
前記アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点、及び基板への密着性の点から、酸価が80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のものを選択して用いる。中でも、90mgKOH/g以上280mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が100mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂は、レーキ色材と組み合わせると耐熱性を向上させ、着色層の輝度を向上する点から好ましい。また、金属レーキ色材として、酸性染料の金属レーキ色材とを組み合わせて用いる場合には、耐熱性が向上する点から、酸価が90mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂を用いることが好ましい。
酸価が上記下限値以上のアルカリ可溶性樹脂は、前記一般式(I)で表される色材の分子会合体表面付近に存在しているアニオンが有する塩基性基と相互作用しやすく、その結果、アルカリ可溶性樹脂が前記分子会合体表面に吸着しやすいものと推定される。当該アルカリ可溶性樹脂は比較的酸価が高いため一旦吸着すると、高温加熱時においても解離しにくく、色材の分解などをより抑制でき、輝度の低下が抑制されて、耐熱性が格段に向上するものと推定される。 なお、上記酸価はJIS K 0070に従って測定することができる。
【0156】
アルカリ可溶性樹脂の側鎖にエチレン性不飽和基を有する場合のエチレン性不飽和結合当量は、100〜2000の範囲であることが好ましく、特に、140〜1500の範囲であることが好ましい。該エチレン性不飽和結合当量が、2000以下であれば現像耐性や密着性に優れている。また、100以上であれば、前記カルボキシル基を有する構成単位や、炭化水素環を有する構成単位などの他の構成単位の割合を相対的に増やすことができるため、現像性や耐熱性に優れている。
ここで、エチレン性不飽和結合当量とは、上記アルカリ可溶性樹脂におけるエチレン性不飽和結合1モル当りの重量平均分子量のことであり、下記数式(1)で表される。
【0157】
【数1】
(数式(1)中、Wは、アルカリ可溶性樹脂の質量(g)を表し、Mはアルカリ可溶性
樹脂W(g)中に含まれるエチレン性不飽和結合のモル数(mol)を表す。)
【0158】
上記エチレン性不飽和結合当量は、例えば、JIS K 0070:1992に記載のよう素価の試験方法に準拠して、アルカリ可溶性樹脂1gあたりに含まれるエチレン性二重結合の数を測定することにより算出してもよい。
【0159】
(その他の樹脂)
本発明の着色樹脂組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、その他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂の具体例としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられ、中でも、耐熱性の点からポリアミド樹脂、又はポリイミド樹脂が好ましく、更に、環状構造を有するポリアミド樹脂、又は環状構造を有するポリイミド樹脂であることがより好ましい。これらの樹脂は、アルカリ可溶性を有するものであってもよく、アルカリ可溶性を有しないものであってもよい。またこれらの樹脂は、1種又は2種以上を組み合わせることができる。
【0160】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は特に限定されない。中でも好ましくは1,000〜500,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000〜200,000である。1,000未満では硬化後のバインダー機能が著しく低下し、500,000を超えるとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が困難となる場合がある。
【0161】
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物において用いられるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、着色樹脂組成物の固形分全量に対するアルカリ可溶性樹脂の含有量は特に制限はないが、5〜60質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。アルカリ可溶性樹脂の含有量が少な過ぎると、充分なアルカリ現像性が得られない場合があり、また、アルカリ可溶性樹脂の含有量が多すぎると色材の割合が相対的に低くなって、充分な着色濃度が得られない場合がある。尚、本発明において固形分は、上述した溶剤以外のもの全てであり、液状の多官能モノマー等も含まれる。
【0162】
[多官能モノマー]
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物において用いられる多官能モノマーは、後述する開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されず、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましく、更に、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0163】
多官能(メタ)アクリレートのうち、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、無水コハク酸変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カルボン酸変性ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、無水コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0164】
本発明においては、光硬化性(高感度)を向上する点で、多官能モノマーが、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、例えば3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類が好適に挙げられる。また、本発明においては、アルカリ現像性を向上する点から、多官能モノマーがカルボキシル基を有することが好ましい。カルボキシル基を有する多官能モノマーとしては、例えば、前記多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類のカルボン酸変性物等が挙げられる。
多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類の具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類のカルボン酸変性物としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物等が挙げられる。
これらの多官能モノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、カルボキシル基を有する多官能モノマーと、カルボキシル基を有しない多官能モノマーを組み合わせて用いてもよい。耐熱性及び密着性を向上する点からカルボキシル基を有しているペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物が好ましい。
このような多官能モノマーは、適宜市販品を用いてもよく、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物を含む市販品として、商品名M−520D、TO−2371(東亞合成(株)社製)等が挙げられる。
【0165】
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物において用いられる上記多官能モノマーの含有量は、特に制限はないが、着色樹脂組成物の固形分全量に対する多官能モノマーの含有量は、5〜60質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。多官能モノマーの含有量が上記範囲より少ないと十分に光硬化が進まず、露光部分が溶出する場合があり、また、多官能モノマーの含有量が上記範囲より多いとアルカリ現像性が低下するおそれがある。
【0166】
[開始剤]
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物において用いられる開始剤としては、特に制限はなく、従来知られている各種開始剤の中から、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0167】
開始剤としては、芳香族ケトン類、ベンゾインエーテル類、ハロメチルオキサジアゾール化合物、α−アミノケトン、ビイミダゾール類、N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ハロメチル−S−トリアジン系化合物、チオキサントン等を挙げることができる。開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体等のビイミダゾール類、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール化合物、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン、1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、4−ベンゾイル−メチルジフェニルサルファイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノンなどが挙げられる。
中でも、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントンが好ましく用いられる。更に2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンのようなα−アミノアセトフェノン系開始剤とジエチルチオキサントンのようなチオキサン系開始剤を組み合わせることが感度調整、水染みを抑制し、現像耐性が向上する点から好ましい。
α−アミノアセトフェノン系開始剤とチオキサン系開始剤の含有量は着色樹脂組成物の固形分全量に対して、5〜15質量%が好ましい。開始剤量が15質量%以下だと製造プロセス中の昇華物が低減するため好ましい。開始剤量が5質量%以上であると水染み等、現像耐性が向上する。
【0168】
本発明において、開始剤は、中でも、水染み発生抑制効果が高い点から、オキシムエステル系光開始剤を含むことが好ましい。なお、水染みとは、アルカリ現像後、純水でリンスした後に、水が染みたような跡が発生するこの現象をいう。このような水染みは、ポストベーク後に消えるので製品としては問題がないが、現像後にパターニング面の外観検査において、ムラ異常として検出されてしまい、正常品と異常品の区別がつかないという問題が生じる。そのため、外観検査において検査装置の検査感度を下げると、結果として最終的なカラーフィルタ製品の歩留まり低下を引き起こし、問題となる。
【0169】
当該オキシムエステル系光開始剤としては、分解物によるカラーフィルタ用着色樹脂組成物の汚染や装置の汚染を低減する点から、中でも、芳香環を有するものが好ましく、芳香環を含む縮合環を有するものがより好ましく、ベンゼン環とヘテロ環を含む縮合環を有することがさらに好ましい。
オキシムエステル系光開始剤としては、1,2−オクタジオン−1−[4−(フェニルチオ)−、2−(o−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)、特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特表2010−527339、特表2010−527338、特開2013−041153等に記載のオキシムエステル系光開始剤の中から適宜選択できる。市販品として、イルガキュアOXE−01、イルガキュアOXE−02、イルガキュアOXE−03(以上、BASF社製)、ADEKA OPT−N−1919、アデカアークルズNCI−930、アデカアークルズNCI−831(以上、ADEKA社製)、TR−PBG−304、TR−PBG−326、TR−PBG−345、TR−PBG−3057(以上、常州強力電子新材料社製)などを用いても良い。
【0170】
本発明に用いられる当該オキシムエステル系光開始剤としては、中でもアリールラジカル、特にフェニルラジカルを発生するオキシムエステル系光開始剤を用いることが好ましく、更にアルキルラジカル、特にメチルラジカルを発生するオキシムエステル系光開始剤を用いることが、耐溶剤性、現像耐性、及び水染み発生抑制効果が優れる点から好ましい。アルキルラジカルは、アリールラジカルと比べてラジカル移動が活性化し易いことが推定される。アルキルラジカルを発生するオキシムエステル系光開始剤としては、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名:イルガキュアOXE−02、BASF製)、メタノン,[8−[[(アセチルオキシ)イミノ][2−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)フェニル]メチル]−11−(2−エチルヘキシル)−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−5−イル]−,(2,4,6−トリメチルフェニル)(商品名:イルガキュアOXE−03、BASF製)、エタノン,1−[9−エチル−6−(1,3−ジオキソラン,4−(2−メトキシフェノキシ)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名ADEKA OPT−N−1919、ADEKA社製)、メタノン,(9−エチル−6−ニトロ−9H−カルバゾール−3−イル)[4−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ−2−メチルフェニル]−,o−アセチルオキシム(商品名アデカアークルズNCI−831、ADEKA社製)、1−プロパノン,3−シクロペンチル−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名TR−PBG−304、常州強力電子新材料社製)、1−プロパノン,3−シクロペンチル−1−[2−(2−ピリミジニルチオ)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名TR−PBG−314、常州強力電子新材料社製)、エタノン,2−シクロヘキシル−1−[2−(2−ピリミジニルオキシ)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名TR−PBG−326、常州強力電子新材料社製)、エタノン,2−シクロヘキシル−1−[2−(2−ピリミジニルチオ)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名TR−PBG−331、常州強力電子新材料社製)、1−オクタノン,1−[4−[3−[1−[(アセチルオキシ)イミノ]エチル]−6−[4−[(4,6−ジメチル−2−ピリミジニル)チオ]−2−メチルベンゾイル]−9H−カルバゾール−9−イル]フェニル]−,1−(o−アセチルオキシム)(商品名:EXTA−9、ユニオンケミカル製)等が挙げられる。
【0171】
また、オキシムエステル系光開始剤に、3級アミン構造を有する光開始剤を組み合わせて用いることが、水染みを抑制し、また、感度向上の点から、好ましい。3級アミン構造を有する光開始剤は、分子内に酸素クエンチャーである3級アミン構造を有するため、開始剤から発生したラジカルが酸素により失活し難く、感度を向上させることができるからである。上記3級アミン構造を有する光開始剤の市販品としては、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(例えばイルガキュア907、BASF社製)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(例えばイルガキュア369、BASF社製)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(例えば、ハイキュアABP、川口薬品製)などが挙げられる。
【0172】
本発明において開始剤は、オキシムエステル系光開始剤を用いることが好ましく、中でも、アルキルラジカル系オキシムエステル化合物を含むことが好ましい。
アルキルラジカル系オキシムエステル化合物と、α−アミノアルキルフェノン系開始剤とを組み合わせた場合には、水染み抑制効果に優れた塗膜を得ることができ、感度の調節も容易となる。
また、アルキルラジカル系オキシムエステル化合物と、アリールラジカル系オキシムエステル化合物とを組み合わせて用いた場合、少ない開始剤量で耐溶剤性と水染み抑制に特に優れた塗膜を得ることができ、感度の調節も容易となる。
アルキルラジカル系オキシムエステル化合物の量としては、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、2〜7質量%が好ましい。開始剤量が7質量未満であれば、マスク開口に対してパターンが太くなり過ぎないため好ましい。開始剤量が2質量%以上であれば耐溶剤性が良好となる。
【0173】
本発明の着色樹脂組成物において用いられる開始剤の含有量は、特に制限はないが、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、1〜40質量%が好ましく、2〜30質量%がより好まく、3〜20質量%が特に好ましい。この含有量が上記範囲より少ないと十分に重合反応を生じさせることができないため、着色層の硬度を十分なものとすることができない場合があり、一方上記範囲より多いと、着色樹脂組成物の固形分中の色材等の含有量が相対的に少なくなり、十分な着色濃度が得られない場合がある。
【0174】
[溶剤]
本発明において溶剤は、特に限定されず、レーキ色材が分散可能な溶剤の中から適宜選択して用いればよい。レーキ色材の分散性の点から、レーキ色材の23℃における溶解度が0.1(g/10ml溶剤)以下の溶剤を選択することが好ましい。色材に対してこのような実質的に溶解しない溶剤又は難溶性の溶剤を用いることにより、色材を微粒子として分散させて用いることができるため、耐熱性及び耐光性に優れた着色樹脂組成物を得ることができる。中でも、本発明において用いられる溶剤は、分散性、耐熱性に優れ、高輝度の塗膜が得られる点から、23℃におけるレーキ色材の溶解度が0.05(g/10ml溶剤)以下の溶剤であることが好ましい。
なお、本発明において、23℃におけるレーキ色材の溶解度が0.1(g/10ml溶剤)以下である溶剤は、以下の評価方法により簡易的に判定することができる。
まず、下記の方法により、レーキ色材を実質的に溶解しない溶剤であるか否かを判断することができる。
20mLサンプル管瓶に、溶解性を判断しようとする色材を0.1g投入し、溶剤Sを10mlホールピペットを用いて投入し、更にふたをした後に超音波で3分間処理する。得られた液は23℃のウォーターバスで60分間静置保管する。この上澄み液5mlをPTFE5μmメンブレンフィルターでろ過し、さらに0.25μmメンブレンフィルターでろ過し、不溶物を除く。得られたろ液の吸光スペクトルを紫外可視分光光度計(例えば、島津製作所社製 UV−2500PC)で1cmセルを用いて測定する。各色材の極大吸収波長における吸光度(abs)を求める。このとき、吸光度(abs)が測定上限値の40%未満(島津製作所社製 UV−2500PCの場合、吸光度(abs)が2未満)であれば当該溶剤は、前記色材を実質的に溶解しない溶剤であると評価できる。このとき、吸光度(abs)が測定上限値の40%以上の場合には、更に次の評価方法により、溶解度を求める。
まず、上記溶剤Sの代わりに、溶解性を判断しようとする色材の良溶剤(例えばメタノール等のアルコール)を用いて、同様にろ液を得て、色材溶液を作製し、その後10000倍〜100000倍程度に適宜希釈し、同様に色材の極大吸収波長における吸光度を測定する。上記溶剤Sの色材溶液と良溶剤の色材溶液の吸光度と希釈倍率から上記溶剤Sに対する色材の溶解度を算出する。
その結果、前記色材の溶解度が0.1(g/10ml溶剤)以下である溶剤は、本発明で用いることが可能な、色材が難溶性の溶剤であると判断される。
前記色材の溶解度が0.1(g/10ml溶剤)以下である溶剤は、色材分散液の分散安定性が向上する点から、色材分散液の全溶剤中に95質量%以上含むことが好ましく、さらに98質量%以上含むことが好ましく、100質量%含むことが最も好ましい。
【0175】
本発明の着色樹脂組成物においては、中でも、エステル系溶剤の中から適宜選択して用いることが分散安定性の点から好ましい。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。中でも、本発明に用いる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、及び、3−メトキシブチルアセテートよりなる群から選択される1種以上であることが、他の成分の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
中でも、人体への危険性が低いこと、室温付近での揮発性が低いが加熱乾燥性が良い点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いることが好ましい。この場合には、従来のPGMEAを用いた着色樹脂組成物との切り替えの際にも特別な洗浄工程を必要としないというメリットがある。
本発明で用いられる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを全溶剤中50質量%以上含むことが好ましく、更に70質量%以上含むことが好ましく、より更に90質量%以上含むことが好ましい。
これらの溶剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0176】
<任意添加成分>
本発明の着色樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じて各種添加剤を含むものであってもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
【0177】
(シランカップリング剤)
本発明においては、シランカップリング剤を着色樹脂組成物の全固形分に対して1質量%以下の範囲で用いてもよい。本発明においてシランカップリング剤とは、シラノール基及びアルコキシシリル基より選択される基を1つ以上有する化合物を表す。
本発明の着色樹脂組成物を調製後短期間のうちに使用する場合には、シランカップリング剤を用いることにより、基板との密着性が向上する。本発明においては、シランカップリング剤を、着色樹脂組成物の全固形分に対して、0.5質量%以下で用いることが好ましく、実質的に含有しないことがより好ましい。シランカップリング剤としては、例えば公知のシランカップリング剤などが挙げられ、当該技術分野で用いられているシランカップリング剤を適宜選択して用いればよい。
【0178】
シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等のシランカップリング剤が挙げられ、中でも、基板との密着性の点から、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0179】
(酸化防止剤)
本発明の着色樹脂組成物は、耐熱性及び耐光性の点から酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤は従来公知のものの中から適宜選択すればよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられ、耐熱性の、耐光性の点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0180】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:商品名:IRGANOX1010、BASF社製)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名:イルガノックス3114、BASF製)、2,4,6−トリス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジル)メシチレン(商品名:イルガノックス1330、BASF製)、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)(商品名:スミライザーMDP−S、住友化学製)、6,6’−チオビス(2−tert−ブチル−4−メチルフェノール)(商品名:イルガノックス1081、BASF製)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル(商品名:イルガモド195、BASF製)等が挙げられる。中でも、耐熱性及び耐光性の点から、ペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:商品名:IRGANOX1010、BASF社製)が好ましい。
【0181】
酸化防止剤を用いる場合、その配合量は、本発明の効果が損なわれない範囲であれば特に限定されない。酸化防止剤の配合量としては、着色樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、酸化防止剤が0.1〜5.0質量部であることが好ましく、0.5〜4.0質量部であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、耐熱性及び耐光性に優れている。一方、上記上限値以下であれば、本発明の着色樹脂組成物を高感度の感光性樹脂組成物とすることができる。
【0182】
前記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類等を挙げることができる。また、その他にもフッ素系界面活性剤も用いることができる。
さらに、可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等が挙げられる。消泡剤、レベリング剤としては、例えばシリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物等が挙げられる。
【0183】
(連鎖移動剤)
連鎖移動剤としては、例えば、単官能チオール化合物、多官能チオール化合物が好ましく、なかでも、多官能チオール化合物が好ましい。
【0184】
単官能チオール化合物としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾオキサゾール、2−メルカプトメチルベンゾチアゾール等が挙げられる。中でも、光重合開始剤が発生するラジカルを連鎖移動させ、硬化性を向上させる観点から、単官能チオール化合物は、2−メルカプトメチルベンゾチアゾールが好ましい。
【0185】
多官能チオール化合物としては、特に限定されることなく、種々の化合物を用いることができる。多官能チオール化合物は、例えば、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,6−へキサンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、デカンジチオール、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオグリコレート、1,4−ブタンジオールジチオグリコレート、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)、その他、種々の多価アルコールとチオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール基含有カルボン酸とのエステルが挙げられる。
【0186】
また、多官能チオール化合物としては、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等が挙げられる。また、多官能チオール化合物は、2,5−ヘキサンジチオール、2,9−デカンジチオール、1,4−ビス(1−メルカプトエチル)ベンゼン、フタル酸ジ(1−メルカプトエチルエステル)、フタル酸ジ(2−メルカプトプロピルエステル)、フタル酸ジ(3−メルカプトブチルエステル)、フタル酸ジ(3−メルカプトイソブチルエステル)等のチオール基に対してα位及び/またはβ位の炭素原子に置換基を有する多官能チオール化合物;エチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、オクタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(2−メルカプトプロピオネート)、オクタンジオールビス(2−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)、オクタンジオールビス(3−メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトイソブチレート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトイソブチレート)、プロピレングリコールビス(2−メルカプトイソブチレート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(2−メルカプトイソブチレート)、オクタンジオールビス(2−メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−メルカプトイソブチレート)、エチレングリコールビス(4−メルカプトバレレート)、プロピレングリコールビス(4−メルカプトイソバレレート)、ジエチレングリコールビス(4−メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(4−メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(4−メルカプトバレレート)、トリメチロールプロパントリス(4−メルカプトバレレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(4−メルカプトバレレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(4−メルカプトバレレート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトバレレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトバレレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(3−メルカプトバレレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトバレレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトバレレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトバレレート)等が挙げられる。
本発明においては、なかでも、上記多官能チオール化合物が、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)であることが好ましい。
製品としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(PTMP;昭和電工社製、「カレンズMT(商標)PE1」)が挙げられる。
【0187】
<着色樹脂組成物における各成分の配合割合>
レーキ色材及びその他の色材の合計の含有量は、着色樹脂組成物の固形分全量に対して、3〜65質量%、より好ましくは4〜55質量%の割合で配合することが好ましい。上記下限値以上であれば、着色樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0〜5.0μm)に塗布した際の着色層が充分な色濃度を有する。また、上記上限値以下であれば、分散性及び分散安定性に優れると共に、充分な硬度や、基板との密着性を有する着色層を得ることができる。
また、分散剤の含有量としては、レーキ色材を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、着色樹脂組成物の固形分全量に対して3〜40質量%用いることができる。更に、着色樹脂組成物の固形分全量に対して5〜35質量%が好ましく、特に5〜25質量%がより好ましい。上記下限値以上であれば、レーキ色材の分散性及び分散安定性に優れ、粘度の経時安定性に優れている。また、上記上限値以下であれば、着色層の輝度が良好なものとなる。
アルカリ可溶性樹脂と多官能モノマーと、開始剤との合計の含有量は、着色樹脂組成物の固形分全量に対して10〜92質量%、好ましくは15〜87質量%の割合で配合するのが好ましい。上記下限値以上であれば、充分な硬度や、基板との密着性を有する着色層を得ることができる。また上記上限値以下であれば、現像性に優れたり、熱収縮による微小なシワの発生も抑制される。
また、溶剤の含有量は、着色層を精度良く形成することができる範囲で適宜設定すればよい。当該溶剤を含む上記着色樹脂組成物の全量に対して、通常、55〜95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも、65〜88質量%の範囲内であることがより好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
【0188】
<カラーフィルタ用着色樹脂組成物の製造方法>
本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物の製造方法は、レーキ色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、開始剤と、溶剤と所望により用いられる各種添加成分とを含有し、レーキ色材が分散剤により溶剤中に均一に分散されうる方法であればよく、公知の混合手段を用いて混合することにより、調製することができる。
当該樹脂組成物の調製方法としては、例えば、(1)まずレーキ色材の分散液を調製し、当該分散液に、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、開始剤と所望により用いられる各種添加成分を混合する方法;(2)溶剤中に、レーキ色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、開始剤と、所望により用いられる各種添加成分とを同時に投入し混合する方法;(3)溶剤中に、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、開始剤と、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、レーキ色材を加えて分散する方法;(4)溶剤中に、色材と、分散剤と、アルカリ可溶性樹脂とを添加して分散液を調製し、当該分散液に、更にアルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、開始剤と、所望により用いられる各種添加成分を添加し、混合する方法;などを挙げることができる。
これらの方法の中で、上記(4)方法が、色材の凝集を効果的に防ぎ、均一に分散させ得る点から好ましい。
【0189】
レーキ色材の分散液を調製する方法は、従来公知の分散方法の中から適宜選択して用いることができる。例えば、(1)予め、分散剤を溶剤に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製し、次いで有機酸化合物を混合して分散剤が有するアミノ基と有機酸化合物との塩形成させる。これをレーキ色材と必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散させる方法;(2)分散剤を溶剤に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製し、次いで、レーキ色材及び有機酸化合物と、必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散させる方法;(3)分散剤を溶剤に混合、攪拌し、分散剤溶液を調整し、次いで、レーキ色材及び必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散液としたのちに、有機酸化合物を添加する方法などが挙げられる。
本発明においては、上記(1)の方法とすることが、色材の分散安定性の点から好ましい。
【0190】
分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03〜2.00mmが好ましく、より好ましくは0.10〜1.0mmである。
【0191】
具体的には、ビーズ径が比較的大きめな2mmジルコニアビーズで予備分散を行い、更にビーズ径が比較的小さめな0.1mmジルコニアビーズで本分散することが挙げられる。また、分散後、0.5〜0.1μmのメンブランフィルターで濾過することが好ましい。
【0192】
2.カラーフィルタ
本発明に係るカラーフィルタは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが、前記本発明に係る着色樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層を有する。
【0193】
このような本発明に係るカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、透明基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0194】
(着色層)
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、少なくとも1つが、前記本発明に係るカラーフィルタ用着色樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層である。
着色層は、通常、後述する透明基板上の遮光部の開口部に形成され、通常3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、着色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0195】
当該着色層は、例えば、着色樹脂組成物が感光性樹脂組成物の場合、下記の方法により形成することができる。
まず、前述した本発明のカラーフィルタ用着色樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、コールコート法、スピンコート法、ダイコート法などの塗布手段を用いて後述する透明基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、アルカリ可溶性樹脂及び多官能モノマー等を光重合反応させて、感光性の塗膜とする。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用する着色樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0196】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶剤にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、着色樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0197】
カラーフィルタの着色層の色度は、光源等に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、青色着色層の場合、C光源における色度(x、y)において、xが0.12〜0.27、yが0.04〜0.18の範囲内であることが好ましい。
【0198】
(遮光部)
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、後述する透明基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。この遮光部としては、例えば、黒色顔料をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものや、クロム、酸化クロム等の金属薄膜等が挙げられる。この金属薄膜は、CrO
x膜(xは任意の数)及びCr膜が2層積層されたものであってもよく、また、より反射率を低減させたCrO
x膜(xは任意の数)、CrN
y膜(yは任意の数)及びCr膜が3層積層されたものであってもよい。
当該遮光部が黒色色材をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、遮光部用着色樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法等を挙げることができる。
パターン状の遮光部は、例えば、前記着色層の形成と同様の方法で形成することができる。
【0199】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2〜0.4μm程度で設定され、黒色色材をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5〜2μm程度で設定される。
【0200】
(透明基板)
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板、フレキシブルガラス等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、上記透明基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や配向突起、柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0201】
3.表示装置
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有することを特徴とする。本発明において表示装置の構成は特に限定されず、従来公知の表示装置の中から適宜選択することができ、例えば、液晶表示装置や、有機発光表示装置などが挙げられる。
【0202】
[液晶表示装置]
液晶表示装置は、前述した本発明に係るカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。
図2は、液晶表示装置の一例を示す概略図である。
図2に例示するように液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この
図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0203】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0204】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
【0205】
[有機発光表示装置]
有機発光表示装置は、前述した本発明に係るカラーフィルタと、有機発光体とを有することを特徴とする。
このような有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。
図3は、有機発光表示装置の一例を示す概略断面図である。
図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルタ10と、有機発光体80とを有している。カラーフィルタ10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0206】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルタ上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この
図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0207】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0208】
(合成例1:中間体1の合成)
和光純薬(株)製 1−ヨードナフタレン15.2g(60mmol)、三井化学(株
)製 ノルボルナンジアミン(NBDA)(CAS No.56602−77−8)4.
63g(30mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド 8.07g(84mmol)、アルドリッチ製 2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’,−ジメトキシビフェニル 0.09g(0.2mmol)、和光純薬(株)製 酢酸パラジウム 0.021g(0.1mmol)、キシレン 30mLに分散し130−135℃で48時間反応させた。反応終了後、室温に冷却し水を加え抽出した。次いで硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮することにより下記化学式(1)で示される中間体1 8.5g(収率70%)を得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):407(M+H)、
・元素分析値:CHN実測値 (85.47%、8.02%、6.72%);理論値(8
5.26%、8.11%、6.63%)
【0209】
【化18】
【0210】
(合成例2:中間体2の合成)
中間体1 8.46g(20.8mmol)、東京化成工業製 4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン13.5g(41.6mmol)トルエン60mLを入れ45−50℃で攪拌した。和光純薬工業製オキシ塩化リン 6.38g(51.5mmol)を滴下し、2時間還流し冷却した。反応終了後、トルエンをデカントした。樹脂状析出物をクロロホルム40mL、水40mL、濃塩酸を加えて溶解しクロロホルム層を分液した。クロロホルム層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮した。濃縮物に酢酸エチル65mLを加え還流した。冷却の後に析出物を濾過し下記化学式(2)で示される中間体2(BB7−Nb−dimer)を15.9g(収率70%)得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI) (m/z):511(+)、2価
・元素分析値:CHN実測値 (78.13%、7.48%、7.78%);理論値(7
8.06%、7.75%、7.69%)
【0211】
【化19】
【0212】
(合成例3:色材Aの合成)
中間体2 5.00g(4.58mmol)を水300mlに加え、90℃で溶解させ中間体2溶液とした。次に日本無機化学工業製リンタングステン酸・n水和物 H
3[PW
12O
40]・nH
2O(n=30) 10.44g(3.05mmol)を水100mLに入れ、90℃で攪拌し、リンタングステン酸水溶液を調製した。先の中間体2溶液にリンタングステン酸水溶液を90℃で混合し、生成した沈殿物を濾取し、水で洗浄した。得られたケーキを乾燥して下記化学式(3)で表される色材Aを13.25g(収率98%)を得た。
得られた化合物は、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。(モル比W/Mo=100/0)
・MS(ESI) (m/z):510(+)、2価
・元素分析値:CHN実測値 (41.55%、5.34%、4.32%);理論値(41.66%、5.17%、4.11%)
また、リンタングステン酸のポリ酸構造が色材Aとなった後も保たれていることを
31P−NMRにより確認した。
【0213】
【化20】
【0214】
(製造例1:ブロック共重合体A溶液の作製)
500mlの4口セパラブルフラスコを減圧して乾燥後、Ar(アルゴン)置換した。Arフローしながら、脱水THF100g、メチルトリメチルシリルジメチルケテンアセタール1.6g、テトラブチルアンモニウム−3−クロロベンゾエート(TBACB)の1Mアセトニトリル溶液0.15ml、メシチレン0.2gを加えた。そこに滴下ロートを用いて、メチルメタクリレート33gを45分かけて滴下した。反応が進むと発熱するため、氷冷することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、ジメチルアミノエチルメタクリレート17gを15分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール5gを加えて反応を停止させた。溶剤を減圧除去して、ブロック共重合体Aを得た。GPC測定(NMP LiBr10mM)により求めた重量
平均分子量
Mwは7,600、アミン価は120mgKOH/gであった。
なお、本発明においてブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求める。測定は、東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、20650、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
得られたブロック共重合体AをPGMEAに溶解させ、60wt%のブロック共重合体A溶液を作製した。
【0215】
(製造例2:色材分散液Aの調製)
225mLマヨネーズ瓶中に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)71.0質量部、ブロック共重合体A溶液(アミン価120mgKOH/g,固形分60質量%)14.0質量部を入れ攪拌した。そこへフェニルホスホン酸(商品名:PPA、日産化学社製)1.99質量部(ブロック共重合体の3級アミノ基に対して0.7モル当量)を加え、室温で30分攪拌して塩型ブロック共重合体溶液を得た。
次いで、前記色材A 13.0質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部を入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)で1時間振とうし、次いで粒径0.1mmのジルコニアビーズ200部に変更し本解砕としてペイントシェーカーで4時間分散を行い、色材分散液Aを得た。
【0216】
(比較製造例1:顔料分散液Bの調製)
製造例2において、色材Aを市販のピグメントブルー15:6(PB15:6) 11.3質量部、ピグメントバイオレット23(PV23) 1.7質量部に変更した以外は製造例2と同様にして、比較製造例1の顔料分散液Bを得た。
【0217】
(製造例3:アルカリ可溶性樹脂Aの合成)
重合槽に、PGMEAを150質量部仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、メタクリル酸(MAA)21質量部、メタクリル酸メチル(MMA)15質量部、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)50質量部及びパーブチルO(日油株式会社製)6質量部、連鎖移動剤(n−ドデシルメルカプタン)2質量部を1.5時間かけて連続的に滴下した。その後、100℃を保持して反応を続け、上記主鎖形成用混合物の滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p−メトキシフェノール0.1質量部を添加して重合を停止した。
次に、空気を吹き込みながら、エポキシ基含有化合物としてメタクリル酸グリシジル(GMA)14質量部を添加して、110℃に昇温した後、トリエチルアミン0.8質量部を添加して110℃で15時間付加反応させ、アルカリ可溶性樹脂A(重量平均分子量(Mw)9020、酸価90mgKOH/g、固形分40質量%)を得た。
なお、上記重量平均分子量の測定方法は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム−21H(Shodex GPC System−21H)により重量平均分子量を測定した。また酸価の測定方法は、JIS K 0070に基づいて測定した。
【0218】
(製造例4〜9:アルカリ可溶性樹脂B〜Gの合成)
製造例3においてモノマーの種類と比率を表1のようにそれぞれ変更した以外は製造例3と同様にアルカリ可溶性樹脂B〜GのPGMEA溶液(固形分40質量%)を得た。アルカリ可溶性樹脂B〜Gの重量平均分子量及び酸価を表1に示す。
【0219】
(比較製造例2:アルカリ可溶性樹脂Hの調製)
製造例3においてモノマーの種類と比率を表1のように変更した以外は製造例3と同様にしてアルカリ可溶性樹脂HのPGMEA溶液(固形分40質量%)を得た。アルカリ可溶性樹脂Hの重量平均分子量及び酸価を表1に示す。
【0220】
(比較製造例3:アルカリ可溶性樹脂Iの調製)
重合槽に、PGMEAを150質量部仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、メタクリル酸(MAA)11質量部、メタクリル酸メチル(MMA)39質量部、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)50質量部及びパーブチルO(日油株式会社製)6質量部、連鎖移動剤(n−ドデシルメルカプタン)2質量部を1.5時間かけて連続的に滴下した。その後、100℃を保持して反応を続け、上記主鎖形成用混合物の滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p−メトキシフェノール0.1質量部を添加して重合を停止させ、アルカリ可溶性樹脂I((重量平均分子量(Mw)9010、酸価73mgKOH/g、固形分40質量%)を得た。
【0221】
(比較製造例4:アルカリ可溶性樹脂Jの調製)
比較製造例3においてモノマーの種類と比率を表1のように変更した以外は比較製造例3と同様にアルカリ可溶性樹脂JのPGMEA溶液(固形分40質量%)を得た。アルカリ可溶性樹脂Jの重量平均分子量及び酸価を表1に示す。
【0222】
【表1】
【0223】
なお、表1中の略号は以下のとおりである。
・CHMA シクロヘキシルメタクリレート
・DCPMA ジシクロペンタニルメタクリレート
・BzMA ベンジルメタクリレート
・MMA メチルメタクリレート
・MAA メタクリル酸
・GMA グリシジルメタクリレート
【0224】
(製造例10:感光性バインダーAの調製)
製造例3で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)31.4質量部に対して、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物(アロニックスM520(東亜合成製))18.8質量部、開始剤としてイルガキュア907(BASF製)5.9質量部、カヤキュアーDETX−S(日本化薬製)2.0質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF製)0.8質量部、PGMEA41.2質量部を加えて、感光性バインダーAを得た。
【0225】
(製造例11〜16:感光性バインダーB〜Gの調製)
製造例10において、アルカリ可溶性樹脂A溶液の代わりにそれぞれアルカリ可溶性樹脂B〜G溶液を用いた以外は、製造例10と同様にして感光性バインダーB〜Gを得た。
【0226】
(製造例17:感光性バインダーA−2の調製)
製造例10において、酸化防止剤を加えない以外は製造例10と同様にして、感光性バインダーA−2を得た。
【0227】
(製造例18:感光性バインダーA−3の調製)
製造例10において、多官能モノマーをジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(アロニックスM402(東亜合成製))18.8質量部に変更した以外は製造例10と同様にして、感光性バインダーA−3を得た。
【0228】
(比較製造例5〜7:感光性バインダーH〜Jの調製)
製造例10において、アルカリ可溶性樹脂A溶液の代わりにそれぞれアルカリ可溶性樹脂H〜J溶液を用いた以外は、製造例10と同様にして感光性バインダーH〜Jを得た。
【0229】
(実施例1:着色樹脂組成物1の調製)
製造例2で得られた色材分散液A 30.9質量部、製造例10で得られた感光性バインダーA26.9質量部、界面活性剤メガファックR08MH(DIC製)0.04質量部、PGMEA42.2質量部を混合し、実施例1の着色樹脂組成物1を得た。
【0230】
(実施例2〜4、
参考例6
、実施例7〜9:着色樹脂組成物2〜4、6〜9の調製)
実施例1において感光性バインダーAを感光性バインダーB〜D、F〜G、A−1、A−2に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜4、
参考例6
、実施例7〜9の着色樹脂組成物2〜4、6〜9を得た。
【0231】
(比較例5a:比較着色樹脂組成物5aの調製)
実施例1において感光性バインダーAを感光性バインダーEに変更した以外は実施例1と同様にして、比較例5aの比較着色樹脂組成物5aを得た。
【0232】
(実施例10:着色樹脂組成物10の調製)
製造例2で得られた色材分散液A 30.8質量部、製造例10で得られた感光性バインダーA26.9質量部、界面活性剤メガファックR08MH(DIC製)0.04質量部、KBM503(信越化学製;シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン))0.09質量部、(全固形分に対して0.5%)PGMEA42.1質量部を混合し、実施例10の着色樹脂組成物10を得た。
【0233】
(実施例11:着色樹脂組成物11の調製)
製造例2で得られた色材分散液A 30.8質量部、製造例10で得られた感光性バインダーA26.9質量部、界面活性剤メガファックR08MH(DIC製)0.04質量部、KBM503(信越化学製)0.18質量部(全固形分に対して1.0%)、PGMEA42.1質量部を混合し、実施例11の着色樹脂組成物11を得た。
【0234】
(比較例1:比較着色樹脂組成物1の調製)
製造例2で得られた色材分散液A 30.8質量部、製造例10で得られた感光性バインダーA26.8質量部、界面活性剤メガファックR08MH(DIC製)0.04質量部、KBM503(信越化学製)0.36質量部(全固形分に対して2.0%)、PGMEA42.0質量部を混合し、比較例1の比較着色樹脂組成物1を得た。
【0235】
(比較例2:比較着色樹脂組成物2の調製)
実施例1において、感光性バインダーAを感光性バインダーHに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の比較着色樹脂組成物2を得た。
【0236】
(比較例3:比較着色樹脂組成物3の調製)
実施例11において、感光性バインダーAを感光性バインダーHに変更した以外は、実施例11と同様にして、比較例3の比較着色樹脂組成物3を得た。
【0237】
(比較例4:比較着色樹脂組成物4の調製)
比較例1において、感光性バインダーAを感光性バインダーHに変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例4の比較着色樹脂組成物4を得た。
【0238】
(比較例5〜6:比較着色樹脂組成物5〜6の調製)
実施例1において感光性バインダーAを感光性バインダーI〜Jに変更した以外は実施例1と同様にして、比較例5〜6の比較着色樹脂組成物5〜6を得た。
【0239】
(比較例7:比較着色樹脂組成物7の調製)
比較例1において、色材分散液Aを比較製造例1の顔料分散液Bに変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例7の比較着色樹脂組成物7を得た。
【0240】
(比較例8:比較着色樹脂組成物8の調製)
比較例4において、色材分散液Aを比較製造例1の顔料分散液Bに変更した以外は、比較例4と同様にして、比較例8の比較着色樹脂組成物8を得た。
【0241】
(基板密着性評価)
調製直後の実施例及び比較例の着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った後、超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm
2の紫外線を照射した。その後、230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベイクして、膜厚が2.5μmの着色膜を得た。
得られた着色膜にカッターナイフで碁盤目状の切れ目を入れた後、その上にメンディングテープを貼り、垂直方向にすばやく剥がした。碁盤目状の膜が1つでも完全に剥離したものをB、それ以外はAとした。評価結果がAであれば基板への密着性に優れており実用範囲と評価される。結果を表2に示す。
【0242】
(基板密着性変化の評価)
実施例及び比較例の着色樹脂組成物を調製後、当該着色樹脂組成物をそれぞれ5℃で1ヶ月保存した。保存後の各着色樹脂組成物を用いて上記基板密着性評価と同様にして着色膜を形成し、上記基板密着性評価と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0243】
(線幅変化の評価)
調製直後の実施例及び比較例の着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った後、開口幅が90μmである細線パターンを有するフォトマスクパターンを介して、超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm
2の紫外線を照射した。その後、着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いてシャワー現像し、230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベイクし、膜厚は2.5μmに調整した。ガラス基板に形成された着色層細線パターンを光学顕微鏡で観察し、線幅を測定した。
また、実施例及び比較例の着色樹脂組成物を調製後、当該着色樹脂組成物をそれぞれ5℃で1ヶ月保存し、得られた保管後の着色樹脂組成物について、上記と同様に着色層の細線パターンを作製して、上記と同様に線幅を測定した。
調製直後の着色樹脂組成物を用いて作製した着色層の細線パターンの線幅と、1ヶ月保管後の着色樹脂組成物を用いて作成した着色層の細線パターンとの線幅の差が、1μm未満の場合をA、1μm以上の場合をBとした。結果を表2に示す。
【0244】
(現像耐性の評価)
調製直後の実施例及び比較例の着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った後、超高圧水銀灯を用いて40mJ/cm
2の紫外線を照射した。この時点での膜厚を測定して、T1(μm)とする。その後、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いてシャワー現像した。現像後の膜厚を測定してT2(μm)とする。T2/T1×100(%)を計算して、95%以上の場合をA、95%未満の場合をBとした。結果を表2に示す。評価結果がAであれば現像耐性に優れており、実用範囲と評価される。
【0245】
(耐溶剤性評価:NMP膨潤試験)
実施例の着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後の膜厚が2.5μm程度になるように塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。フォトマスクを介さずに超高圧水銀灯を用いて40mJ/cm2の紫外線を照射し、220℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークすることによって硬化膜(青色着色膜)を得た。
得られた硬化膜の膜厚を測定してT1とする。その後、この膜を25℃のN−メチルピロリドンに60分浸漬し、取り出した直後の膜厚を測定してT2とする。T2/T1×100(%)を計算して、103%未満の場合をAA、103%以上105%未満の場合をA、105%以上110%未満の場合をB、110%以上115%未満の場合をC、115%以上の場合をDとした。上記評価基準がA、B又はCであれば、実用上使用できるが、評価結果がB、更にAであればより効果が優れている。結果を2に示す。
【0246】
(水染み評価)
実施例及び比較例の着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、厚さ3.0μmの着色層を形成した。その後フォトマスクを介さずに超高圧水銀灯を用いて40mJ/cm
2の紫外線を全面照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム(KOH)を現像液としてスピン現像し、現像液に60秒間接液させた後に純水で洗浄することで現像処理し、洗浄後の基板を10秒間回転させ水を遠心除去した直後に、下記のように純水の接触角を測定して水染みを評価した。
純水の接触角の測定は、前記水を遠心除去した直後の着色層表面に、純水1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後の静的接触角をθ/2法に従って計測した。測定装置は、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて、測定した。結果を2に示す。
<評価基準>
A:接触角80度以上
B:接触角65度以上80度未満
C:接触角50度以上65度未満
D:接触角50度未満
水染み評価基準がA又はBであれば、実用上使用できるが、評価結果がAであればより効果が優れている。
【0247】
(光学特性評価)
調製直後の実施例及び比較例の着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った後、超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm
2の紫外線を照射した。その後、230℃のクリーンオーブンで75分間ポストベイクし、得られた着色膜色度(x、y)、輝度(Y)を測定した。塗布時の膜厚はポストベイク後のy値が0.092となるように調整した。色度及び輝度はオリンパス(株)社製「顕微分光測定装置OSP−SP200」を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0248】
【表2】
【0249】
[結果のまとめ]
レーキ色材と、エチレン性二重結合を有し、酸価が80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のアルカリ可溶性樹脂とを含有し、シランカップリング剤の含有割合が、着色樹脂組成物中の全固形分に対して1質量%以下である実施例1〜4、
参考例6
、実施例7〜11の着色樹脂組成物を用いて形成された着色層は、基板密着性や現像耐性に優れ、1ヶ月保管後においても基板密着性や線幅に変化がなく、経時安定性に優れていることが明らかとなった。また、実施例1〜4、
参考例6
、実施例7〜11の着色層は、いずれも輝度Yが高く、耐熱性に優れていることも明らかとなった。
それぞれ異なるアルカリ可溶性樹脂を用いた実施例1〜4、
参考例6
、実施例7の比較から、脂肪族環を有する構成単位を含むアルカリ可溶性樹脂を用いた実施例1〜4及び実施例7の着色層は輝度が高く、中でも、酸価が100mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂を用いた実施例2〜4の着色層がより輝度が高いことが明らかとなった。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーを用いた実施例1と他のモノマーを用いた実施例9との比較から、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーを用いることにより、更に輝度が向上することが明らかとなった。
実施例8に示される通り、酸化防止剤を用いない場合であっても、基板密着性や現像耐性に優れ、1ヶ月保管後においても基板密着性や線幅に変化がなく、経時安定性に優れ、輝度の高い着色層が得られるが、実施例1との比較から、酸化防止剤を用いることにより、より輝度の高い着色層が得られることが明らかとなった。
また、実施例1、10、11及び比較例1の比較から、シランカップリング剤の含有割合が1%以下であれば、着色樹脂組成物の経時安定性に優れていることが明らかとなった。
炭化水素環を有しないアルカリ可溶性樹脂Eを用いた比較例5aの着色樹脂組成物は、基板密着性や現像性は良好であったが、NMPで膨潤しやすく、また水染みが生じやすかった。
【0250】
(合成例4:色材Bの合成)
(1)K
4(SiMoW
11O
40)の調製
13mol/lのHNO
3水溶液9.8mlに1mol/lのNa
2MoO
4水溶液16.4mlを加えた攪拌した。この溶液にInorganic Synthesis vol27 p85に記載の方法で調製したK
8(α型SiW
11O
39)・13H
2O 16.4gを少量ずつ添加した。室温で4時間攪拌後、飽和KCl水溶液で洗浄した。得られた固体を室温で乾燥し、12.2gのK4(SiMoW
11O
40)を得た。
【0251】
(2)色材Bの合成
C.I.ベーシックブルー7(BB7)(東京化成株式会社製)6.46gを精製水390mlに投入し、40℃で攪拌して溶解した。これとは別に、上記(1)で調製したK
4(SiMoW
11O
40) 12.2gを精製水50mlに溶解した。BB7溶液に、K
4(SiMoW
11O
40)溶液を投入、そのまま40℃で1時間攪拌し、次いで、内温を80℃に上げ、更に1時間攪拌してレーキ化を行った。冷却後濾過し、300mlの精製水で3回洗浄した。得られた固体を90℃で乾燥させることにより、黒青色固体で平均一次粒径が50nmの色材Bを13.4g得た。
【0252】
(合成例5:色材Cの合成)
(1)K
6(P
2MoW
17O
62)の調製
NaWO
4・2H
2O(和光純薬工業株式会社製)44.0g、Na
2MoO
4・2H
2O(関東化学株式会社製)1.90gを精製水230gに溶解した。この溶液に85%リン酸64.9gを滴下ロート用いて攪拌しながら添加した。得られた溶液を8時間加熱還流した。反応液を室温に冷却し、臭素水を1滴加え、攪拌しながら塩化カリウム45gを添加した。更に1時間攪拌し後、沈殿物を濾別した。得られた固体を90℃で乾燥させることにより、29.4gのK
6(P
2MoW
17O
62)を得た。
【0253】
(2)色材Cの合成
BB7 5.30gを精製水350mlに投入し、40℃で攪拌して溶解した。これとは別に、上記(1)で調製したK
6(P
2MoW
17O
62)10.0gを精製水40mlに溶解した。BB7溶液に、K
6(P
2MoW
17O
62)溶液を投入し、そのまま40℃で1時間攪拌した。次いで、内温を80℃に上げ、更に1時間攪拌しレーキ化を行った。冷却後濾過し、300mlの精製水で3回洗浄した。得られた固体を90℃で乾燥させることにより、黒青色固体で平均一次粒径が40nmの、トリアリールメタンレーキ化色材Cを10.4g得た。
【0254】
(製造例19:色材分散液Cの調製)
製造例2において、色材Aを色材Bに変更した以外は製造例2と同様にして、色材分散液Cを得た。
【0255】
(製造例20:色材分散液Dの調製)
製造例2において、色材Aを色材Cに変更した以外は製造例2と同様にして、色材分散液Dを得た。
【0256】
(実施例12〜16:着色樹脂組成物12〜16の調製)
実施例1〜4、11において色材分散液Aをそれぞれ色材分散液Cに変更した以外は、当該各実施例と同様にして、実施例12〜16の着色樹脂組成物12〜16を得た。
【0257】
(比較例9〜13:比較着色樹脂組成物9〜13の調製)
比較例1〜2、4〜6において色材分散液Aをそれぞれ色材分散液Cに変更した以外は当該各比較例と同様にして、比較例9〜13の比較着色樹脂組成物9〜13を得た。
【0258】
(実施例17〜21:着色樹脂組成物17〜21の調製)
実施例1〜4、11において色材分散液Aをそれぞれ色材分散液Dに変更した以外は、当該各実施例と同様にして、実施例17〜21の着色樹脂組成物17〜21を得た。
【0259】
(比較例14〜18:比較着色樹脂組成物14〜18の調製)
比較例1〜2、4〜6において色材分散液Aをそれぞれ色材分散液Dに変更した以外は当該各比較例と同様にして、比較例14〜18の比較着色樹脂組成物14〜18を得た。
【0260】
(評価)
前記着色組成物の各評価において、ポストベイク温度を200℃に変更した以外は、前記各評価方法と同様にして、基板密着性評価、基板密着性変化の評価、線幅変化の評価、現像耐性の評価、耐溶剤性評価、水染み評価及び光学特性評価を行った。結果を表3に示す。
【0261】
【表3】
【0262】
[結果のまとめ]
実施例12〜16及び実施例17〜21の結果から、エチレン性二重結合を有し、酸価が80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のアルカリ可溶性樹脂とを含有し、シランカップリング剤の含有割合を着色樹脂組成物中の全固形分に対して1質量%以下とすることにより、基板密着性や現像耐性に優れ、1ヶ月保管後においても基板密着性や線幅に変化がなく、経時安定性に優れていることが明らかとなった。
【0263】
(合成例6:色材Dの合成)
以下の手順により、下記構造式で表される色材Dを合成した。
500mlの4つ口フラスコに、下記化学式(4)のスルホフルオラン化合物40.2重量部、メタノール312重量部、N−メチル−2,6−キシリジン6.8重量部及びN−メチル−o−トルイジン6.0重量部を仕込み、30時間還流させた。この反応液を60℃でろ過して不溶解分を除いた後、反応液が約70mlになるまで減圧下で溶剤を除き、6%塩酸200重量部に注いだ。次いで、水600重量部を加えて室温で30分間攪拌した後、ウェットケーキをろ取した。このウェットケーキを100重量部の水に懸濁させて60℃で2時間攪拌した後、再びろ取して60℃の湯で水洗後、乾燥させることにより、下記化学式(5)で表される色材D27.4重量部を得た。
【0264】
【化21】
【0265】
【化22】
【0266】
(製造例21:色材分散液Eの調製)
フラスコに、色材D 100重量部に対し、メタノールを1000重量部加えてマグネチックスターラーにて溶解させた。溶解を確認後、濃塩酸19重量部を加え攪拌して、さらにPGMEA1000重量部を加えた。次いで分散剤BYK−LPN6919(商品名、ビックケミー社製、3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部を含むブロックポリマー、不揮発分60重量%、アミン価 120mgKOH/g、重量平均分子量 8000)331重量部を加えて攪拌した。その後、還流冷却管を接続し、ウォーターバスにて80℃まで昇温させ、80℃到達後4時間反応させた。その後エバポレーターにより、ウォーターバス45℃でメタノールを溜去し、PGMEA1000重量部を加えた後16時間室温で冷却放置した。次いでろ過して得られたろ液を回収し、染料が均一に分散された色材分散液Eを得た。
【0267】
(製造例22:色材分散液Fの調製)
フラスコに、AR289 100質量部に対し、メタノールを1000質量部加えてマグネチックスターラーにて溶解させた。溶解を確認後、濃塩酸31質量部を加え攪拌して、スルホン酸塩をスルホン酸基(−SO
3H)に変換し色材Eとし、さらにPGMEA1000質量部を加えた。次いで分散剤BYK−LPN6919(商品名、ビックケミー社製、3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部を含むブロックポリマー、不揮発分60質量%、アミン価 120mgKOH/g、重量平均分子量 8000)288質量部を加えて攪拌した。その後、還流冷却管を接続し、ウォーターバスにて80℃まで昇温させ、80℃到達後4時間反応させた。その後エバポレーターにより、ウォーターバス45℃でメタノールを溜去し、PGMEA1000質量部を加えた後16時間室温で冷却放置した。次いで析出物をろ別し、100質量部程度のPGMEAにてろ過物を洗浄し、得られたろ液を回収し、色材Eが均一に分散された色材分散液Fを得た。
【0268】
(製造例23:色材分散液Gの調製)
製造例2において、色材Aを市販のPV23(ジオキサジンバイオレット顔料)に変更した以外は製造例2と同様にして、色材分散液Gを得た。
【0269】
(実施例22:着色樹脂組成物22の調製)
製造例2で得られた色材分散液A 26.9質量部、製造例21で得られた色材分散液E 2.9質量部、製造例11で得られた感光性バインダーA 20.7質量部、界面活性剤メガファックR08MH(DIC製)0.01質量部、PGMEA49.6質量部を混合し、実施例22の着色樹脂組成物22を得た。
【0270】
(実施例23:着色樹脂組成物23の調製)
製造例2で得られた色材分散液A 26.9質量部、製造例21で得られた色材分散液E 2.9質量部、製造例11で得られた感光性バインダーA 20.7質量部、界面活性剤メガファックR08MH(DIC製)0.01質量部、KBM503(信越化学製)0.15質量部(全固形分に対して1.0%)、PGMEA49.6質量部を混合し、実施例23の着色樹脂組成物23を得た。
【0271】
(比較例19:比較着色樹脂組成物19の調製)
製造例2で得られた色材分散液A 26.9質量部、製造例21で得られた色材分散液E 2.9質量部、製造例11で得られた感光性バインダーA 20.7質量部、界面活性剤メガファックR08MH(DIC製)0.01質量部、KBM503(信越化学製)0.30質量部(全固形分に対して2.0%)、PGMEA49.6質量部を混合し、比較例19の比較着色樹脂組成物19を得た。
【0272】
(比較例20:比較着色樹脂組成物20の調製)
実施例22において、感光性バインダーAを感光性バインダーHに変更した以外は実施例22と同様にして、比較例20の比較着色樹脂組成物20を得た。
【0273】
(実施例24〜25:着色樹脂組成物24〜25の調製)
実施例22〜23において、色材分散液の配合量を、色材分散液A27.2質量部、色材分散液Fを4.1質量部とし、更にPGMEAを48.2質量部とした以外は、実施例22〜23とそれぞれ同様にして、実施例24〜25の着色樹脂組成物24〜25を得た。
【0274】
(比較例21〜22:比較着色樹脂組成物21〜22の調製)
比較例19〜20において、色材分散液の配合量を、色材分散液A27.2質量部、色材分散液Fを4.1質量部とし、更にPGMEAを48.2質量部とした以外は比較例19〜20とそれぞれ同様にして、比較例21〜22の比較着色樹脂組成物21〜22を得た。
【0275】
(実施例26〜27:着色樹脂組成物26〜27の調製)
実施例22〜23において、色材分散液の配合量を、色材分散液A26.3質量部、色材分散液Gを2.3質量部とし、更にPGMEAを50.3質量部とした以外は、実施例22〜23とそれぞれ同様にして、実施例26〜27の着色樹脂組成物26〜27を得た。
【0276】
(比較例23〜24:比較着色樹脂組成物23〜24の調製)
比較例19〜20において、色材分散液の配合量を、色材分散液A26.3質量部、色材分散液Gを2.3質量部とし、更にPGMEAを50.3質量部とした以外は比較例19〜20とそれぞれ同様にして、比較例23〜24の比較着色樹脂組成物23〜24を得た。
【0277】
(評価)
実施例及び比較例の着色樹脂組成物について、ポストベイク温度を230℃とし、前記各評価方法と同様にして、基板密着性評価、基板密着性変化の評価、線幅変化の評価、現像耐性の評価、耐溶剤性評価、水染み評価及び光学特性評価を行った。結果を表4に示す。
【0278】
【表4】
【0279】
[結果のまとめ]
レーキ色材をキサンテン系色材と組み合わせて用いた実施例22〜25及び、レーキ色材と、顔料とを組み合わせて用いた実施例26〜27の場合も、エチレン性二重結合を有し酸価が80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のアルカリ可溶性樹脂を含有し、シランカップリング剤の含有割合を着色樹脂組成物中の全固形分に対して1質量%以下とすることにより、基板密着性や現像耐性に優れ、1ヶ月保管後においても基板密着性や線幅に変化がなく、経時安定性に優れていることが明らかとなった。
【0280】
(製造例24:ブロック共重合体Bの合成)
製造例1でメチルメタクリレート36.5gに、ジメチルアミノエチルメタクリレートを13.5gに変更した以外は合成例4と同様にして、ブロック共重合体Bを得た。重量平均分子量Mwは7,600、アミン価は95mgKOH/gであった。
【0281】
(製造例25:ブロック共重合体Cの合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコにTHF250質量部、塩化リチウム0.6質量部を加え、充分に窒素置換を行った。反応フラスコを−60℃まで冷却した後、ブチルリチウム4.9質量部(15質量%ヘキサン溶液)、ジイソプロピルアミン1.1質量部、イソ酪酸メチル1.0質量部をシリンジを用いて注入した。Bブロック用モノマーのメタクリル酸1−エトキシエチル(EEMA)2.2質量部、メタクリル酸2−(トリメチルシリルオキシ)エチル(TMSMA) 29.1質量部、メタクリル酸2−エチルヘキシル(EHMA)12.8質量部、メタクリル酸n−ブチル(BMA)13.7質量部、メタクリル酸ベンジル(BzMA)9.5質量部、メタクリル酸メチル(MMA)17.5質量部を、添加用ロートを用いて60分かけて滴下した。30分後、Aブロック用モノマーであるメタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMMA)26.7質量部を20分かけて滴下した。30分間反応させた後、メタノール1.5質量部を加えて反応を停止させた。得られた前駆体ブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、PGMEAで希釈し固形分30質量%溶液とした。水を32.5質量部加え、100℃に昇温し7時間反応させ、EEMA由来の構成単位を脱保護しメタクリル酸(MAA)由来の構成単位とし、TMSMA由来の構成単位を脱保護してメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)由来の構成単位とした。得られたブロック共重合体PGMEA溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、ブロック共重合体X(酸価 8mgKOH/g、Tg38℃)を得た。このようにして得られたブロック共重合体Xを、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて確認したところ、重量平均分子量Mwは7730であった。また、アミン価は95mgKOH/gであった。
【0282】
(製造例26:感光性バインダーA−4の調製)
製造例3で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)36.9質量部に対して、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(アロニックスM402(東亜合成製))22.1質量部、開始剤としてイルガキュア907(BASF製)1.8質量部、カヤキュアーDETX−S(日本化薬製)0.6質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF製)0.8質量部、PGMEA37.9質量部を加えて、感光性バインダーA−4を得た。
【0283】
(製造例27:感光性バインダーA−5の調製)
製造例3で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)36.9質量部に対して、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(アロニックスM402(東亜合成製))22.1質量部、開始剤としてイルガキュアOXE01(BASF製)1.2質量部、イルガキュアOXE02(BASF製)1.2質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF製)0.8質量部、PGMEA37.9質量部を加えて、感光性バインダー成分A−5を得た。
【0284】
(製造例28:感光性バインダーA−6の調製)
製造例3で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)36.9質量部に対して、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(アロニックスM402(東亜合成製))22.1質量部、開始剤としてアデカアークルズNCI−930(ADEAKA製、オキシムエステル系光開始剤)1.2質量部、TR−PBG−304(常州強力電子新材料社製、オキシムエステル系光開始剤)1.2質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF製)0.8質量部、PGMEA37.9質量部を加えて、感光性バインダーA−6を得た。
【0285】
(製造例29:感光性バインダーA−7の調製)
製造例3で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)36.9質量部に対して、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(アロニックスM402(東亜合成製))22.1質量部、開始剤としてイルガキュア907(BASF製)1.2質量部、イルガキュアOXE02(BASF製)1.2質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF製)0.8質量部、PGMEA37.9質量部を加えて、感光性バインダーA−7を得た。
【0286】
(製造例30:感光性バインダーA−8の調製)
製造例3で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)36.9質量部に対して、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(アロニックスM402(東亜合成製))22.1質量部、開始剤としてイルガキュア907(BASF製)1.2質量部、TR−PBG−304(常州強力電子新材料社製、オキシムエステル系光開始剤)1.2質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF製)0.8質量部、PGMEA37.9質量部を加えて、感光性バインダーA−8を得た。
【0287】
(製造例31:感光性バインダーA−9の調製)
製造例3で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)37.5質量部に対して、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(アロニックスM402(東亜合成製))22.5質量部、イルガキュアOXE02(BASF製)1.8質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF製)0.8質量部、PGMEA37.5質量部を加えて、感光性バインダーA−9を得た。
【0288】
(製造例32:感光性バインダーA−10の調製)
製造例1で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)37.5質量部に対して、多官能モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(アロニックスM402(東亜合成製))22.5質量部、イルガキュアOXE01(BASF製)1.8質量部、酸化防止剤IRGANOX1010(BASF製)0.8質量部、PGMEA37.5質量部を加えて、感光性バインダーA−10を得た。
【0289】
(製造例33〜39:感光性バインダーM−1〜M−7の調製)
アルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)の代わりとして、アルカリ可溶性樹脂
溶液(カルド構造を含むカルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、品番INR−16M ナガセケムテック(株)製、固形分54.5%)に変更して、固形分が同じ質量部となるように使用量を調整して用いた以外は、製造例26〜32と同様にして、感光性バインダーM−1〜M−7を得た。
【0290】
(製造例40〜46:感光性バインダーN−1〜N−7の調製)
アルカリ可溶性樹脂A溶液(固形分40質量%)の代わりとして、アルカリ可溶性樹脂
溶液(フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液、商品名V259ME、新日鉄住金化学(株)製、固形分55.8%)に変更して、固形分が同じ質量部となるように使用量を調整して用いた以外は、製造例26〜32と同様にして、感光性バインダーN−1〜N−7を得た。
【0291】
(製造例47:感光性バインダーE−2の調製)
製造例26において、アルカリ可溶性樹脂を製造例7のアルカリ可溶性樹脂Eに変更した以外は、製造例26と同様にして、感光性バインダーE−2を得た。
【0292】
(製造例48〜49:色材分散液H〜Iの調製)
製造例2において、ブロック共重合体Aの代わりに、それぞれブロック共重合体B又はブロック共重合体Cを用いた以外は、製造例2と同様にして、色材分散液H〜Iを得た。
【0293】
(製造例50:色材分散液Jの調製)
製造例19において、ブロック共重合体Aの代わりに、ブロック共重合体Cを用いた以外は、製造例19と同様にして、色材分散液Jを得た。
【0294】
(製造例51:色材分散液Kの調製)
製造例20において、ブロック共重合体Aの代わりに、ブロック共重合体Cを用いた以外は、製造例20と同様にして、色材分散液Kを得た。
【0295】
(製造例51:色材分散液Lの調製)
製造例21において、ブロック共重合体Aの代わりに、ブロック共重合体Cを用いた以外は、製造例21と同様にして、色材分散液Lを得た。
【0296】
(製造例51:色材分散液Mの調製)
製造例22において、ブロック共重合体Aの代わりに、ブロック共重合体Cを用いた以外は、製造例22と同様にして、色材分散液Mを得た。
【0297】
(製造例51:色材分散液Nの調製)
製造例23において、ブロック共重合体Aの代わりに、ブロック共重合体Cを用いた以外は、製造例23と同様にして、色材分散液Nを得た。
【0298】
(実施例28〜
36、参考例37〜52、実施例53〜61、参考例62〜77、実施例78,80、参考例79,81:着色樹脂組成物の調製)
実施例1において、色材分散液、感光性バインダー成分、及びシランカップリング剤(KBM503)の含有割合を、下表5〜7の組合せに変更し、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(PTMP;昭和電工社製、「カレンズMT(商標)PE1」))0.47重量部を加えた以外は、実施例1と同様にして実施例28〜
36、参考例37〜52、実施例53〜61、参考例62〜77、実施例78,80、参考例79,81の着色樹脂組成物27〜81を得た。
なお、表5〜7中の開始剤量は、全固形分に対する含有割合(質量%)を表す。
【0299】
(比較例25〜32:着色樹脂組成物の調製)
実施例1において、色材分散液、感光性バインダー成分、及びシランカップリング剤(KBM503)の含有割合を、下表5〜6の組合せに変更し、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(PTMP;昭和電工社製、「カレンズMT(商標)PE1」))0.47重量部を加えた以外は、実施例1と同様にして比較例25〜32の着色樹脂組成物25〜32を得た。
【0300】
(実施例82:着色樹脂組成物82の調製)
製造例49で得られた色材分散液I 26.9質量部、製造例53で得られた色材分散液L 2.9質量部、製造例28で得られた感光性バインダーA−6 20.7質量部、界面活性剤メガファックR08MH(DIC製)0.01質量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(PTMP;昭和電工社製、「カレンズMT(商標)PE1」))0.47重量部、PGMEA49.6質量部を混合し、実施例82の着色樹脂組成物82を得た。
【0301】
(
参考例83:着色樹脂組成物83の調製)
実施例82において、感光性バインダーA−6を製造例35で得られた感光性バインダーM−2に変更した以外は実施例82と同様にして、
参考例83の着色樹脂組成物83を得た。
【0302】
(実施例84
、参考例85:着色樹脂組成物84〜85の調製)
実施例82
、参考例83において、色材分散液の配合量を、色材分散液I 27.2質量部、製造例54で得られた色材分散液M 4.1質量部とし、更にPGMEAを48.2質量部とした以外は、実施例82
、参考例83とそれぞれ同様にして、実施例84
、参考例85の着色樹脂組成物84〜85を得た。
【0303】
(実施例86
、参考例87:着色樹脂組成物86〜87の調製)
実施例82
、参考例83において、色材分散液の配合量を、色材分散液I 26.3質量部、色材分散液N 2.3質量部とし、更にPGMEAを50.3質量部とした以外は、実施例82
、参考例83とそれぞれ同様にして、実施例86
、参考例87の着色樹脂組成物86〜87を得た。
【0304】
【表5】
【0305】
【表6】
【0306】
【表7】
【0307】
(評価)
前記着色樹脂組成物の各評価方法において、ポストベイク温度を230℃(色材B又は色材Cを用いた実施例78
,80、参考例79,81についてはポストベイク温度を200℃)とした以外は、各評価方法と同様にして、基板密着性評価、基板密着性変化の評価、線幅変化の評価、及び現像耐性の評価を行った。結果を表8〜11に示す。
【0308】
【表8】
【0309】
【表9】
【0310】
【表10】
【0311】
【表11】
【0312】
[結果のまとめ]
表8〜11の結果から、一般式(B)で表わされるカルド骨格を有するアルカリ可溶性樹脂M又なNを用いた実施例では、特に耐溶剤性が向上することが明らかとなった。更に、カルド骨格を有するアルカリ可溶性樹脂と、オキシム系開始剤とを組み合わせた実施例は、水染みの優れた抑制効果が得られることが明らかとなった。