(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6664983
(24)【登録日】2020年2月21日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】吊り戸の下部振止装置
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20200302BHJP
E05D 13/00 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
E05D15/06 101A
E05D13/00 K
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-25451(P2016-25451)
(22)【出願日】2016年2月15日
(65)【公開番号】特開2017-31788(P2017-31788A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年11月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-55773(P2015-55773)
(32)【優先日】2015年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-156072(P2015-156072)
(32)【優先日】2015年8月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000205476
【氏名又は名称】大阪金具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】南 卓司
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−166757(JP,A)
【文献】
実開平4−56883(JP,U)
【文献】
特開2014−43693(JP,A)
【文献】
特開2005−226368(JP,A)
【文献】
特開2011−184995(JP,A)
【文献】
特開平3−194085(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/089065(WO,A2)
【文献】
中国特許出願公開第102022052(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/06
E05D 13/00
E05F 5/06
E06B 3/48
E06B 3/92−3/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に設置されるケースに、先端部に磁石を配設したガイドピンを上方に突出可能に収納した床面設置部材と、ガイドピンが吸引される磁石を配設し、該磁石により吸引したガイドピンが挿入される吊り戸本体に設置される案内溝部材とを備えるようにした吊り戸の下部振止装置において、案内溝部材に配設した磁石が、長手方向に異なる極性の磁極をもつ棒状の磁石からなり、該棒状の磁石を、ガイドピンに配設した磁石が吸着する磁極側が吊り戸本体の移動方向の端部側に位置するように配置したことを特徴とする吊り戸の下部振止装置。
【請求項2】
棒状の磁石からガイドピンに配設した磁石が斥力を受けることになる吊り戸本体の移動方向の中央側の位置に、ガイドピンが保持される鍔状のレール部を設けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の吊り戸の下部振止装置。
【請求項3】
吊り戸本体の中央部の案内溝部材の案内溝の天面に全域に亘って磁性体を配設し、該磁性体に、ガイドピンに配設した磁石によって、鍔状のレール部に保持されたガイドピンが吸着するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の吊り戸の下部振止装置。
【請求項4】
棒状の磁石を、吊り戸本体の移動方向の端部側が低くなるように傾斜して配設するようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の吊り戸の下部振止装置。
【請求項5】
床面に設置されるケースに、先端部に磁石を配設したガイドピンを上方に突出可能に収納した床面設置部材と、ガイドピンが吸引される磁石を配設し、該磁石により吸引したガイドピンが挿入される吊り戸本体に設置される案内溝部材とを備えるようにした吊り戸の下部振止装置において、案内溝部材に配設した磁石が、上下面に異なる極性の磁極をもつ断面矩形をした棒状の磁石と、該棒状の磁石の吊り戸本体の移動方向の端面側に配設した、吊り戸本体の移動方向の両面に異なる極性の磁極をもつ断面矩形をした小片状の磁石とからなり、該小片状の磁石を、当該磁石の棒状の磁石の下面側の極性と異なる極性の面が棒状の磁石側に位置するように配置したことを特徴とする吊り戸の下部振止装置。
【請求項6】
棒状の磁石が、フェライト磁石からなり、小片状の磁石が、ネオジウム磁石からなることを特徴とする請求項5に記載の吊り戸の下部振止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り戸の下部振止装置に関し、特に、ガイドピンの保持を確実にして吊り戸を安定的にガイドできるようにした吊り戸のガイド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1〜3に開示されるように、天井レールにランナーを介して走行自在に吊り下げられた吊り戸に対し、床面に設置した床面設置部材に磁力によって突出可能に設けられたガイドピンが、吊り戸本体の下面に形成された案内溝に挿入されることにより、吊り戸のガイドを行う吊り戸の下部振止装置が知られている。
【0003】
このうち、特許文献1に開示された吊り戸の下部振止装置においては、床面に設置されるケースに、先端部に磁石を配設したガイドピンを上方に突出可能に収納した床面設置部材と、ガイドピンが吸引される磁石を配設し、該磁石により吸引したガイドピンが挿入される吊り戸本体に設置される案内溝部材とを備えるようにすることにより、すなわち、ガイドピン及び案内溝部材に配設した磁石同士を吸引させることにより、ガイドピンの吸引力を高めるようにしている。
【0004】
また、特許文献2〜3に開示された吊り戸の下部振止装置においては、床面に設置されるケースにガイドピンを上方に突出可能に収納した床面設置部材と、前記ガイドピンが挿入される吊り戸本体の案内溝部材とを備え、前記ガイドピンを、ケースに摺動可能に収納された第2ガイドと、該第2ガイドの内部に摺動可能に収納された第1ガイドとにより入れ子状に形成するとともに、案内溝部材の端部で突出させた第1ガイドを、所要幅狭く形成した案内溝の中間部に導入するようにすることにより、すなわち、ガイドピンをテレスコピック構造とすることにより、床面設置部材の高さを低く抑え、床面への設置の制約をなくすことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−226368号公報
【特許文献2】特開2005−163384号公報
【特許文献3】特開2007−308918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガイドピンの吸引力を高めるために、特許文献1に開示された吊り戸の下部振止装置のように、ガイドピン及び案内溝部材に磁石を配設した場合、案内溝部材に配設した磁石の吊り戸本体の移動方向の端部において、案内溝部材に配設した磁石の磁力線の作用によって、磁石間に斥力が発生し、例えば、吊り戸本体の移動速度が大きい場合等に、ガイドピンが吸引されずに案内溝部材がガイドピンの上を通過してしまうという問題があった。
【0007】
また、特に、床面設置部材の高さを低く抑えるために、特許文献2〜3に開示された吊り戸の下部振止装置のように、ガイドピンをテレスコピック構造とした場合には、先端部に磁石を配設するようにしたガイドピンの構造が複雑となり、その製造コストが高くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の吊り戸の下部振止装置が有する問題点に鑑み、ガイドピンを確実に吸引して、ガイドピンが吊り戸本体に設置した案内溝部材に挿入されるようにした吊り戸の下部振止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の目的を達成するため、本第1発明の吊り戸の下部振止装置は、床面に設置されるケースに、先端部に磁石を配設したガイドピンを上方に突出可能に収納した床面設置部材と、ガイドピンが吸引される磁石を配設し、該磁石により吸引したガイドピンが挿入される吊り戸本体に設置される案内溝部材とを備えるようにした吊り戸の下部振止装置において、案内溝部材に配設した磁石が、長手方向に異なる極性の磁極をもつ棒状の磁石からなり、該棒状の磁石を、ガイドピンに配設した磁石が吸着する磁極側が吊り戸本体の移動方向の端部側に位置するように配置したことを特徴とする吊り戸の下部振止装置。
【0010】
この場合において、棒状の磁石からガイドピンに配設した磁石が斥力を受けることになる吊り戸本体の移動方向の中央側の位置に、ガイドピンが保持される鍔状のレール部を設けるようにすることができる。
【0011】
また、棒状の磁石を、吊り戸本体の移動方向の端部側が低くなるように傾斜して配設するようにすることができる。
【0012】
また、吊り戸本体の中央部の案内溝部材の案内溝の天面に全域に亘って磁性体を配設し、該磁性体に、ガイドピンに配設した磁石によって、鍔状のレール部に保持されたガイドピンが吸着するようにすることができる。
【0013】
また、上記第1の目的を達成するため、本第2発明の吊り戸の下部振止装置は、床面に設置されるケースに、先端部に磁石を配設したガイドピンを上方に突出可能に収納した床面設置部材と、ガイドピンが吸引される磁石を配設し、該磁石により吸引したガイドピンが挿入される吊り戸本体に設置される案内溝部材とを備えるようにした吊り戸の下部振止装置において、案内溝部材に配設した磁石が、上下面に異なる極性の磁極をもつ断面矩形をした棒状の磁石と、該棒状の磁石の吊り戸本体の移動方向の端面側に配設した、吊り戸本体の移動方向の両面に異なる極性の磁極をもつ断面矩形をした小片状の磁石とからなり、該小片状の磁石を、当該磁石の棒状の磁石の下面側の極性と異なる極性の面が棒状の磁石側に位置するように配置したことを特徴とする。
【0014】
この場合において、棒状の磁石が、フェライト磁石からなり、小片状の磁石が、ネオジウム磁石からなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本第1発明の吊り戸の下部振止装置によれば、案内溝部材に配設した磁石が、長手方向に異なる極性の磁極をもつ棒状の磁石からなり、該棒状の磁石を、ガイドピンに配設した磁石が吸着する磁極側が吊り戸本体の移動方向の端部側に位置するように配置することにより、案内溝部材に配設した磁石の磁力線の作用によって案内溝部材に配設した磁石とガイドピンに配設した磁石間に斥力が発生することを防止し、ガイドピンを確実に吸引して、ガイドピンが吊り戸本体に設置した案内溝部材に挿入されるようにすることができる。
【0016】
また、棒状の磁石からガイドピンに配設した磁石が斥力を受けることになる吊り戸本体の移動方向の中央側の位置に、ガイドピンが保持される鍔状のレール部を設けるようにすることにより、ガイドピンをレール部に円滑に移行させることができる。
【0017】
また、棒状の磁石を、吊り戸本体の移動方向の端部側が低くなるように傾斜して配設するようにすることにより、ガイドピンをより確実に吸引するようにすることができる。
【0018】
また、吊り戸本体の中央部の案内溝部材の案内溝の天面に全域に亘って磁性体を配設し、該磁性体に、ガイドピンに配設した磁石によって、鍔状のレール部に保持されたガイドピンが吸着するようにすることにより、ガイドピンをレール部から吊り戸本体の中央部の案内溝部材の案内溝に円滑に移行させることができる。
【0019】
また、本第2発明の吊り戸の下部振止装置によれば、案内溝部材に配設した磁石が、上下面に異なる極性の磁極をもつ断面矩形をした棒状の磁石と、該棒状の磁石の吊り戸本体の移動方向の端面側に配設した、吊り戸本体の移動方向の両面に異なる極性の磁極をもつ断面矩形をした小片状の磁石とからなり、該小片状の磁石を、当該磁石の棒状の磁石の下面側の極性と異なる極性の面が棒状の磁石側に位置するように配置することにより、案内溝部材に配設した磁石の吊り戸本体の移動方向の端部における案内溝部材に配設した磁石の磁力線の方向を調整することができ、これによって、案内溝部材に配設した磁石の磁力線の作用によって案内溝部材に配設した磁石とガイドピンに配設した磁石間に斥力が発生することを防止し、ガイドピンを確実に吸引して、ガイドピンが吊り戸本体に設置した案内溝部材に挿入されるようにすることができる。
【0020】
また、棒状の磁石が、フェライト磁石からなり、小片状の磁石が、ネオジウム磁石からなるようにすることにより、価格の高いネオジウム磁石の使用量を少なくしながら、所期の作用効果を奏するようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の吊り戸の下部振止装置の一実施例を示し、(a)は案内溝部材の正面縦断面図、(b)は同底面図、(c)は端部の案内溝でガイドピンが突出した状態を示す断面図、(d)は案内溝の中間部でガイドピンが突出した状態を示す断面図である。
【
図2】案内溝部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(a)のA−A線断面図、(d)は同B−B線断面図、(e)は同C−C線矢視図である。
【
図3-1】本発明の吊り戸の下部振止装置に用いられる磁石の極性を示す説明図で、(a)は本第2発明に対応する実施例、(b)は本第1発明に対応する実施例である。
【
図3-2】本第1発明の吊り戸の下部振止装置に用いられる案内溝部材を示す説明図で、(a)は案内溝部材の正面縦断面図、(b)は同底面図、(c)は吊り戸本体の中央部の案内溝部材の正面縦断面図、(d)は側面図、(e)及び(f)は案内溝部材にガイドピンが挿入された状態を示す断面図である。
【
図4】床面設置部材を示し、(a)はガイドピンが突出した状態を示す断面図、(b)はガイドピンが退入した状態を示す断面図、(c)は床面設置部材の他の実施例を示す断面図である。
【
図5】床面設置部材のガイドピンの第1ガイドの各種実施例を示す説明図である。
【
図6】吊り戸本体と案内溝部材を示し、(a)は正面断面図、(b)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜
図6に、本発明の吊り戸の下部振止装置の一実施例を示す。
この吊り戸の下部振止装置は、床面に設置されるケース1にガイドピン2を上方に突出可能に収納した床面設置部材3と、前記ガイドピン2が挿入される吊り戸本体4の案内溝部材5とを備えている。
そして、前記ガイドピン2を、ケース1に摺動可能に収納された第2ガイド22と、該第2ガイド22の内部に摺動可能に収納された第1ガイド21とにより入れ子状に形成するとともに、案内溝部材5の端部6aで磁力により突出させた第1ガイド21を、所要幅狭く形成した案内溝の中間部6cに導入するようにしている。
【0023】
本実施例の吊り戸の下部振止装置は、かかる構成において、前記案内溝6の端部6aで開口端縁部から案内溝6内に斜めに突出し、前記第1ガイド21を案内溝6に案内するとともに、前記第2ガイド22と当接して第2ガイド22の案内溝6への第1ガイド21との共上がりを阻止する傾斜側壁7を設けている。
そして、第1ガイド21に細首部23を形成するとともに、該細首部23に側方から挿入して第1ガイド21を保持する鍔状のレール部8を案内溝の中間部6cに設けている。
【0024】
第1ガイド21は、
図4に示すように、外周部の対向する2箇所に摺動突起(図示省略)を備え、これらの摺動突起は、第2ガイド22のスリット溝(図示省略)にそれぞれ嵌入されるとともに、第2ガイド上部で係合して第2ガイド22を従動的に突出させる。
この第1ガイド21の上部には、先端部に磁石(図示省略)を配設し、下部が細径となる鉄等の磁性体材料からなる頭部24が固定されており、この頭部24下の細径部により細首部23が形成されている。
また、第2ガイド22は、ケース1に直接収納されており、ケース1は、アウターケース1aを介して床に設置される。
【0025】
この場合において、磁石を配設するガイドピンである第1ガイド21を、磁性体材料からなる成形品で構成することができる。
具体的には、第1ガイド21を、
図5(a)に示すように、内部が中空のプレス又は鋳造による成形品で構成し、中空の成形品の中空の内部に磁石25を嵌入するようにしたり、
図5(b)〜(d)に示すように、断面がT字状の成形品((d)及び(e)は汎用のリベット。)で構成し、T字状の成形品の軸部に磁石25を嵌入するようにすることができる。
ここで、T字状の成形品の軸部に嵌入した磁石25の下部をアルミニウム等の非磁性体金属や合成樹脂製のパイプ部材26を軸部に嵌入し、さらに、必要に応じて、ワッシャ27や、スナップリング、プッシュナット28等を併用することにより、支持、固定するようにしている。
これにより、先端部に磁石25を配設するようにしたガイドピンである第1ガイド21の構造を簡易化して、その製造コストを低廉にできる。
【0026】
一方、吊り戸本体4は、
図6に示すように、天井レールにランナー(図示省略)を介して走行自在に吊り下げられており、吊り戸本体4の下面には、床面設置部材3の突出したガイドピン2がその案内溝6に挿入される案内溝部材5が配設されている。
案内溝部材5は、案内溝6の端部6aと移行部6bにのみガイドピン2を吸引する磁石9が配設されている。
【0027】
この案内溝部材5は、
図1に示すように、案内溝6の端部6aで磁力により突出させた第1ガイド21を、所要幅狭く形成した案内溝の中間部6cに導入するようにしている。
この場合、本実施例では、案内溝の中間部6cの鍔状のレール部8が、吊り戸本体4の移動により、第1ガイド21の細首部23に挿入されるようにしている。
なお、案内溝の移行部6bは、案内溝の端部6aから中間部6cにガイドピン2が円滑に移行するための移行する部分であり、案内溝6の溝幅が中間部6cに向けて漸次狭くなるように形成されている。
【0028】
案内溝6の端部6aには、
図1(c)に示すように、その開口端縁部から案内溝6内に斜めに突出し、前記第1ガイド21を案内溝6に案内するとともに、前記第2ガイド22と当接して第2ガイド22の案内溝6への第1ガイド21との共上がりを阻止する傾斜側壁7が設けられている。
傾斜側壁7は、1対のものが対向するように形成されるとともに、長手方向に連続して同じ形状に形成されており、第2ガイド22の前部がレール部8にさしかかる位置まで設けられている。
【0029】
この場合において、案内溝部材5に配設した磁石9は、
図3−1(a)に示す実施例のように、上下面に異なる極性の磁極をもつ(本実施例においては、上面がN極、下面がS極。逆にすることも可能。)断面矩形をした棒状の磁石91と、この棒状の磁石91の吊り戸本体4の移動方向の端面側に配設した、吊り戸本体4の移動方向の両面に異なる極性の磁極をもつ断面矩形をした小片状の磁石92とからなり、この小片状の磁石92を、当該磁石92の棒状の磁石91の下面側の極性(S極)と異なる極性(N極)の面が棒状の磁石91側に位置するように配置(本実施例においては、当接させて配置)するようにしている。
これにより、案内溝部材5に配設した磁石9の吊り戸本体4の移動方向の端部における案内溝部材5に配設した磁石9の磁力線の方向を調整することができ、これによって、案内溝部材5に配設した磁石9の磁力線の作用によって案内溝部材5に配設した磁石9とガイドピン2に配設した磁石間に斥力が発生することを防止し、ガイドピン2を確実に吸引して、ガイドピン2が吊り戸本体4に設置した案内溝部材5に挿入されるようにすることができる。
【0030】
そして、棒状の磁石91には、フェライト磁石を、小片状の磁石92には、ネオジウム磁石を好適に用いることができる。
これにより、価格の高いネオジウム磁石の使用量を少なくしながら、所期の作用効果を奏するようにすることができる。
【0031】
このほか、案内溝部材5に配設する磁石9は、
図3−1(b)及び
図4に示す実施例のように、長手方向に異なる極性の磁極をもつ(本実施例においては、吊り戸本体4の移動方向の端部側がS極、中央側がN極。逆にすることも可能。)棒状の磁石9からなり、この棒状の磁石9を、ガイドピン2に配設した磁石が吸着する磁極側が吊り戸本体4の移動方向の端部側に位置するように配置することにより、案内溝部材5に配設した磁石9の磁力線の作用によって案内溝部材5に配設した磁石9とガイドピン2に配設した磁石間に斥力が発生することを防止し、ガイドピン2を確実に吸引して、ガイドピン2が吊り戸本体4に設置した案内溝部材5に挿入されるようにすることができる。
この場合、案内溝部材5に配設する磁石9は、水平に配設するほか、
図4に示すように、吊り戸本体4の移動方向の端部側が低くなるように傾斜して配設することもでき、これにより、ガイドピン2をより確実に吸引するようにすることができる。
ここで、案内溝部材5に配設した磁石9に吸引、吸着されたガイドピン2(N極)は、吊り戸本体4の移動に合わせて、磁石9のS極の位置からN極の位置に移動し、斥力を受けることになるが、この位置に、鍔状のレール部8を設けるようにすることにより、ガイドピン2が保持されるようにして、レール部8に円滑に移行させることができる。
【0032】
そして、棒状の磁石9には、フェライト磁石を好適に用いることができる。
これにより、価格の高いネオジウム磁石を使用せずに、所期の作用効果を奏するようにすることができる。
【0033】
ところで、この実施例において、吊り戸本体4の中央部の案内溝部材に、鍔状のレール部8を設けた案内溝部材を用いるほか、鍔状のレール部8を設けずに、案内溝6の天面に全域に亘って帯状の磁性体61を支持部材62を介して配設した案内溝部材5Aを用いることもできる。
これにより、磁性体61に、ガイドピン2に配設した磁石25によって、鍔状のレール部8に保持されたガイドピン2が吸着するようにすることで、ガイドピン2をレール部8から吊り戸本体4の中央部の案内溝部材5Aの案内溝6に円滑に移行させることができる。
なお、案内溝部材5Aに、鍔状のレール部8を設けないようにすることによって、ガイドピン2の吸着ミスや脱落があった場合でも、容易に磁性体61に再吸着させることができ、吊り戸を安定的にガイドすることができる。
【0034】
次に、本実施例の吊り戸の下部振止装置の作用を説明する。
この吊り戸の下部振止装置は、吊り戸本体4が、床面に設置された床面設置部材3の上方位置に来ると、
図1(c)に示すように、案内溝6の端部6aに配設した磁石9によって、第1ガイド21の頭部24が吸引され、第1ガイド21とこれに従動する第2ガイド22がケース1内から上方に突出する。
この場合、案内溝6の端部6aには、前記傾斜側壁7が設けられているため、第1ガイド21は斜面によって案内溝6の奥まで案内されるが、第2ガイド22は、その上部が傾斜側壁7に当接するため、床面設置部材3と案内溝部材5の距離が短い場合でも、第2ガイド22の案内溝6への第1ガイド21との共上がりが阻止される。
そして、吊り戸本体4が移動することにより、
図1(d)に示すように、第2ガイド22と案内溝の中間部6cとの干渉が防止された状態で、第1ガイド21の細首部23に案内溝6の鍔状のレール部8が側方から挿入され、ガイドピン2が保持される。
これにより、ガイドピン2を吸引する磁石9が存在しない案内溝の中間部6cにおいても、ガイドピン2を確実に保持することができる。
なお、吊り戸本体4が、床面に設置された床面設置部材3の上方位置から去ると、ガイドピン2(第1ガイド21及び第2ガイド22)は重力によりケース1内に退入する。
【0035】
かくして、本実施例の吊り戸の下部振止装置は、案内溝6の端部6aで開口端縁部から案内溝6内に斜めに突出し、前記第1ガイド21を案内溝6に案内するとともに、前記第2ガイド22と当接して第2ガイド22の案内溝6への第1ガイド21との共上がりを阻止する傾斜側壁7を設けることから、第2ガイド22の突出高さを傾斜側壁7で案内溝6の所定位置より下に制限することにより、第2ガイド22と案内溝の中間部6cとの干渉を防止することができ、これにより、案内溝部材5と床面設置部材3との距離が近い場合でも、第1ガイド21のみを確実に案内溝の中間部6cに導入し、吊り戸を安定的にガイドすることができる。
そして、第1ガイド21に細首部23を形成するとともに、該細首部23に側方から挿入して第1ガイド21を保持する鍔状のレール部8を案内溝の中間部6cに設けることにより、案内溝の中間部6cで磁力がなくてもガイドピン2の保持を確実にし、吊り戸を安定的にガイドすることができる。
さらに、案内溝部材5に配設した磁石9の吊り戸本体4の移動方向の端部における案内溝部材5に配設した磁石9の磁力線の方向を調整することができ、これによって、案内溝部材5に配設した磁石9の磁力線の作用によって案内溝部材5に配設した磁石9とガイドピン2に配設した磁石間に斥力が発生することを防止し、ガイドピン2を確実に吸引して、ガイドピン2が吊り戸本体4に設置した案内溝部材5に挿入されるようにすることができる。
【0036】
ここで、上記の吊り戸の下部振止装置の構成は、案内溝部材5に配設した磁石9の磁力を案内溝の中間部6cまで作用させることにより、
図4(c)に示すような、第1ガイド21に細首部23を形成しないガイドピン2を用い、案内溝部材5にレール部8を設けずに、案内溝6の天面に全域に亘って磁性体を配設するようにした吊り戸の下部振止装置にも適用することができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
以上、本発明の吊り戸の下部振止装置について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、各実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の吊り戸の下部振止装置は、ガイドピンを確実に吸引して、ガイドピンが吊り戸本体に設置した案内溝部材に挿入されるようにしたり、先端部に磁石を配設するようにしたガイドピンの構造を簡易化して、その製造コストを低廉にできるという特性を有していることから、吊り戸の下部振止装置の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ケース
2 ガイドピン
21 第1ガイド
22 第2ガイド
23 細首部(細径部)
24 頭部
25 磁石
3 床面設置部材
4 吊り戸本体
5 案内溝部材
5A 案内溝部材
6 案内溝
6a 端部
6b 移行部
6c 中間部
61 磁性体
7 傾斜側壁
8 レール部
9 磁石
91 棒状の磁石
92 小片状の磁石