特許第6665132号(P6665132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6665132
(24)【登録日】2020年2月21日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】シート・フィルム延伸装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/20 20060101AFI20200302BHJP
   B29C 55/12 20060101ALI20200302BHJP
   B65H 23/028 20060101ALI20200302BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20200302BHJP
【FI】
   B29C55/20
   B29C55/12
   B65H23/028
   B29L7:00
【請求項の数】1
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-97817(P2017-97817)
(22)【出願日】2017年5月17日
(65)【公開番号】特開2018-192684(P2018-192684A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2018年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 佳久
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 充彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩明
(72)【発明者】
【氏名】板垣 裕太郎
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−085736(JP,A)
【文献】 特許第5371523(JP,B2)
【文献】 米国特許第04807336(US,A)
【文献】 特開昭59−049939(JP,A)
【文献】 特開昭61−058723(JP,A)
【文献】 特開昭62−211124(JP,A)
【文献】 特表2017−524574(JP,A)
【文献】 特表2016−507401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00−55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された移動経路に沿って構成され、かつ、重力方向で見て、上下両側に基準レールを有するレールユニットと、
重力方向で見て、上下両側に走行ユニット及び転動ユニットを有し、前記レールユニットの上側及び下側の双方で拘束されつつ、前記レールユニットに沿って移動可能移動機構と、
前記移動機構が搭載され、かつ、前記移動機構が前記レールユニットに沿って移動することで、シートやフィルム把持しつつ前記移動経路に沿って移動可能な複数の把持機構と、
複数の前記把持機構の相互間に配置され、かつ、前記把持機構の相互の間隔を調整する機能を有するジョイント機構と、
前記ジョイント機構に押圧力を作用させることで、前記把持機構の相互の間隔を調整可能な間隔調整機構と、を有し、
前記移動経路は、無端状に連続した往路と復路を有し、
前記レールユニットには、前記往路に沿って構成された往路レールユニットと、前記復路に沿って構成された復路レールユニットと、が含まれ、
前記往路レールユニットと前記復路レールユニットは、別体として構成された複数のブロック構造に搭載され、
複数の前記ブロック構造は、前記間隔調整機構によって、一方の前記ブロック構造である往路ブロックに対して、他方の前記ブロック構造である復路ブロックを近付けたり、遠ざけたりすることが可能に構成され、
前記間隔調整機構によって、前記復路ブロック前記往路ブロックに近付けて、前記往路レールユニットと前記復路レールユニットの相互の間隔を狭めることで、複数の前記把持機構の相互の間隔が狭められた状態に維持されるシート・フィルム延伸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シートやフィルムなどの薄膜状の延伸対象物を延伸させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した延伸対象物の両縁部をクリップチェーンで把持した状態において、当該延伸対象物を搬送しつつ延伸させるシート・フィルム延伸装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。クリップチェーンは、複数の把持機構と、複数のジョイント機構とを1つずつ交互に無端状に連結させて構成されている。延伸対象物は、その両縁部が各把持機構(例えば、クリップ)によって把持される。ジョイント機構は、搬送方向に沿って隣り合う把持機構相互の間隔(ピッチ)を調整する間隔調整機能を有している。
【0003】
更に、シート・フィルム延伸装置は、弛緩(relax)ゾーンを有し、弛緩ゾーンに沿って間隔調整レールが設けられている。弛緩ゾーンには、上流の延伸ゾーンにて延伸処理が施された延伸対象物が搬送される。このとき、間隔調整レールによって、ジョイント機構の間隔調整機能が作動する。かくして、当該延伸対象物の熱収縮に追従するように、当該把持機構相互の間隔(ピッチ)が狭まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5371523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した延伸装置において、把持機構の走行経路を画定する基準レールは、レールブロック(レール支持部材)に取り付けられている。レールブロックは、レール台やフレームの上に取り付けられている。例えば、延伸対象物の種類や、延伸対象物の延伸前の幅、延伸倍率、延伸後の幅などの延伸仕様に基づき、基準レールの配置が調整されるように、レールブロックは、レール台やフレームの上で移動可能とされている。
【0006】
ここで、延伸処理に際し、各把持機構のクリップには、延伸対象物からの反力(即ち、引っ張り力)が作用する。このとき、各クリップが、延伸対象物に向かって引き寄せられる。これにより、延伸対象物の種類や、上記した延伸仕様によっては、各把持機構が、例えば、ベアリングと基準レールとの接点を中心に傾斜したり、或いは、捩じられたりする場合がある。
【0007】
この場合、傾斜(捩じれ)の大きさの程度によっては、基準レール自体の変形や捩じれなどが発生する場合がある。更に、状況によっては、レールブロックまでもが傾斜する場合もある。そうすると、各把持機構を一定の姿勢に安定させて走行させることが困難になってしまう。この結果、延伸対象物を、予め設定された形状や大きさに精度良く延伸させることができなくなる。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的は、把持機構を一定の姿勢に安定させて走行させることで、延伸対象物を精度良く延伸させるための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明は、レールユニット、移動機構、把持機構、ジョイント機構、間隔調整機構を有する。レールユニットは、予め設定された移動経路に沿って構成され、レールユニット及び移動機構は、重力方向で見て、上下両側に対称な構造を有する。移動機構は、重力方向で見て、上下両側に走行ユニット及び転動ユニットを有し、レールユニットの上側及び下側の双方で拘束されつつ移動する。把持機構は、延伸対象物を把持しつつ移動する。把持機構の相互間には、ジョイント機構が配置されている。間隔調整機構によってジョイント機構に押圧力を作用させることで、把持機構の相互の間隔が調整される。
この場合、移動経路は、無端状に連続した往路と復路を有し、レールユニットには、往路に沿って構成された往路レールユニットと、復路に沿って構成された復路レールユニットと、が含まれる。往路レールユニットと復路レールユニットは、別体として構成された複数のブロック構造に搭載されている。複数のブロック構造は、間隔調整機構によって、一方のブロック構造である往路ブロックに対して、他方のブロック構造である復路ブロックを近付けたり、遠ざけたりすることが可能に構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、把持機構を一定の姿勢に安定させて走行させることで、延伸対象物を精度良く延伸させるための技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るシート・フィルム延伸装置において、クリップチェーンの移動経路を示す平面図。
図2】最大間隔(ピッチ)に係るクリップチェーンの構成を示す平面図。
図3図1のf3線に沿う断面図。
図4図1のf4線に沿う断面図。
図5図1のf5線に沿う断面図。
図6図1のf6線に沿う断面図。
図7】最小間隔(ピッチ)に係るクリップチェーンの構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「一実施形態」
本実施形態のシート・フィルム延伸装置(図1図5参照)において、第1方向X及び第2方向Yは、水平面上において互いに直交する方向である。第1方向X及び第2方向Yと直交する方向を第3方向Zと定義する。第1方向Xは、当該延伸装置(例えば、シートやフィルムなどの薄膜状の延伸対象物)の幅方向(或いは、横方向、左右方向)として規定されている。第2方向Yは、当該延伸装置(延伸対象物)の搬送方向(或いは、縦方向、長手方向)として規定されている。第3方向Zは、当該延伸装置(延伸対象物)の重力方向(或いは、上下方向)として規定されている。なお、後述する2つの移動経路1L,1R(図1参照)において、搬送方向Yの上流側から見て、左側に左移動経路1Lが構成され、右側に右移動経路1Rが構成されている。
【0013】
「シート・フィルム延伸装置1の概要」
図1に示すように、シート・フィルム延伸装置1には、予め設定された2つの移動経路(例えば、左移動経路1L、右移動経路1R)が構成されている。左移動経路1Lは、往路2と復路3を無端状に接続させた一連の左レール構造体4Lによって構成されている。右移動経路1Rは、往路2と復路3を無端状に接続させた一連の右レール構造体4Rによって構成されている。
【0014】
左移動経路1L(左レール構造体4L)及び右移動経路1R(右レール構造体4R)において、往路2と復路3は、互いに交差することなく、かつ、後述する搬送エリア1Aの出口側から入口側に帰還するように構成されている。ここで、往路2は、搬送エリア1Aの両外側に沿って構成されている。復路3は、往路2の両外側に沿って構成されている。往路2と復路3は、後述する入口側スプロケット6及び出口側スプロケット7を経由して、互いに無端状に連続されている。
【0015】
左移動経路1L(左レール構造体4L)において、往路2は、入口側スプロケット6から出口側スプロケット7に至るまでの領域に構成されている。復路3は、出口側スプロケット7から入口側スプロケット6に至るまでの領域に構成されている。
【0016】
右移動経路1R(右レール構造体4R)において、往路2は、入口側スプロケット6から出口側スプロケット7に至るまでの領域に構成されている。復路3は、出口側スプロケット7から入口側スプロケット6に至るまでの領域に構成されている。
【0017】
なお、出口側スプロケット7は、図示しないモータによって回転駆動される。入口側スプロケット6は、回転フリーに構成される。ここで、入口側スプロケット6も、出口側スプロケット7と同様に、図示しないモータによって回転駆動させてもよい。
【0018】
この場合、後述するクリップチェーン8,9(複数の把持機構18)は、当該スプロケット6,7と噛み合っている。かくして、スプロケット6,7を回転駆動させることで、クリップチェーン8,9(複数の把持機構18)を、移動経路1L,1R(往路2、復路3)に沿って循環させることができる。
【0019】
ここで、左レール構造体4L及び右レール構造体4Rは、例えば、シートやフィルムなどの薄膜状の延伸対象物5の両側に、互いに対向させて配置されている。左レール構造体4Lと右レール構造体4Rとが対向する領域において、双方の往路2は、互いに対向するように配置されている。なお、延伸対象物5としては、例えば、熱可塑性樹脂を一定の方向(例えば、搬送方向Y)に沿って帯状に連続させた長尺物を想定することができる。
【0020】
更に、2つの往路2が対向する領域には、一連の搬送エリア1Aが構成されている。搬送エリア1Aは、搬送方向Yの上流側から下流側に亘って連続して構成されている。搬送エリア1Aは、入口側リターンゾーンZ1と、予熱ゾーンZ2と、延伸対象物5が幅方向X(或いは、横方向、左右方向)に延伸される延伸ゾーンZ3と、熱処理ゾーンZ4と、弛緩(relax)ゾーンZ5と、冷却ゾーンZ6と、出口側リターンゾーンZ7と、を有している。
【0021】
予熱ゾーンZ2、延伸ゾーンZ3、熱処理ゾーンZ4、弛緩ゾーンZ5、冷却ゾーンZ6は、入口側リターンゾーンZ1と出口側リターンゾーンZ7との間に設けられている。換言すると、搬送方向Yの上流側から下流側に向かって、入口側リターンゾーンZ1、予熱ゾーンZ2、延伸ゾーンZ3、熱処理ゾーンZ4、弛緩ゾーンZ5、冷却ゾーンZ6、出口側リターンゾーンZ7が、この順番で配置されている。
【0022】
入口側リターンゾーンZ1には、入口側スプロケット6が回転可能に配置されている。入口側スプロケット6は、復路3に沿って移動したクリップチェーン8,9(例えば、後述する複数の把持機構18)を、往路2に向かわせるように構成されている。かかる構成の一例として、復路3から入口側スプロケット6に移行する部分には、入口側傾斜部6pが設けられている。
【0023】
出口側リターンゾーンZ7には、出口側スプロケット7が回転可能に配置されている。出口側スプロケット7は、往路2に沿って移動したクリップチェーン8,9(例えば、複数の把持機構18)を、復路3に向かわせるように構成されている。かかる構成の一例として、出口側スプロケット7から復路3に移行する部分には、出口側傾斜部7pが設けられている。
【0024】
更に、図1図2に示すように、左移動経路1Lには、左レール構造体4Lに沿って移動可能なクリップチェーン8が設けられている。右移動経路1Rには、右レール構造体4Rに沿って移動可能なクリップチェーン9が設けられている。クリップチェーン8,9(例えば、複数の把持機構18)は、延伸対象物5の両縁部を把持可能に構成されている。クリップチェーン8,9は、移動経路1L,1R(レール構造体4L,4R)に沿って無端状に連続している。クリップチェーン8,9の詳細は後述する。
【0025】
かかる構成において、入口側リターンゾーンZ1に送り込まれた延伸対象物5は、把持開始点18p−ONで、その両縁部が順次、把持機構18で把持される。この状態において、スプロケット6,7を回転駆動させることで、クリップチェーン8,9を移動させる。このとき、把持機構18と共に延伸対象物5が、予熱ゾーンZ2、延伸ゾーンZ3、熱処理ゾーンZ4、弛緩ゾーンZ5、冷却ゾーンZ6に沿って搬送される。この間に、延伸対象物5は、例えば、加熱されつつ幅方向Xに延伸される。かくして、把持機構18による把持状態が解除された後、延伸済みの延伸対象物5が、出口側リターンゾーンZ7から送り出される。
【0026】
予熱ゾーンZ2において、双方の往路2は、互いに平行に構成されている。予熱ゾーンZ2では、延伸対象物5に対する延伸処理は行われない。予熱ゾーンZ2では、延伸対象物5を延伸可能な温度に予熱する処理が行われる。
【0027】
延伸ゾーンZ3において、往路2相互の幅方向Xに沿った間隔が、連続的かつ徐々に広がっていくように設定されている。換言すると、往路2相互の距離が、予熱ゾーンZ2から熱処理ゾーンZ4に向かうに従って、連続的かつ徐々に大きくなっていくように設定されている。延伸ゾーンZ3では、延伸対象物5を幅方向Xに延伸する処理が行われる。なお、往路2相互の間隔(距離)が最大となった状態において、当該往路2は、熱処理ゾーンZ4に連続する。
【0028】
熱処理ゾーンZ4において、幅方向Xに延伸された延伸対象物5に対する熱処理が行われる。熱処理としては、例えば、延伸対象物5を一定の温度で保温する。保温された延伸対象物5は、続いて、弛緩ゾーンZ5に移行する。
【0029】
弛緩ゾーンZ5において、延伸対象物5の収縮、例えば、熱収縮や延伸処理後の残留応力の解消による収縮(以下、収縮と言う)に追従するように、把持機構18による延伸対象物5の拘束状態が緩められる。即ち、把持機構18による幅方向X(或いは、横方向、左右方向)の拘束と、搬送方向Y(或いは、縦方向、長手方向)の拘束が緩められる。言い換えれば、延伸対象物5が収縮した際に当該延伸対象物5に生じる引っ張り状態が緩められる。即ち、延伸対象物5が収縮した際に当該延伸対象物5に生じる幅方向Xの引っ張り力の増加と、搬送方向Yの引っ張り力の増加を抑えるように緩められる。
【0030】
ここで、弛緩ゾーンZ5では、往路2相互の幅方向Xに沿った間隔が、連続的かつ徐々に狭くなっていくように設定されている。換言すると、往路2相互の距離が、熱処理ゾーンZ4から冷却ゾーンZ6に向かうに従って、連続的かつ徐々に小さくなっていくように設定されている。かくして、延伸対象物5の収縮に追従するように、横方向Xの拘束状態、言い換えれば、引っ張り状態が緩められる。
【0031】
更に、弛緩ゾーンZ5から冷却ゾーンZ6を越えて、出口側リターンゾーンZ7の一部(把持解除点18p−OFF)に亘る範囲27b−Zには、後述する間隔(ピッチ)調整機構27が設けられている。これにより、かかる範囲27b−Zにおいて、搬送方向Y(クリップチェーン8,9の移動方向)に沿って隣り合う把持機構18相互の間隔(ピッチ)が狭められる。かくして、延伸対象物5の収縮に追従するように、搬送方向Yの拘束状態、言い換えれば、引っ張り状態が緩められる。
【0032】
冷却ゾーンZ6において、双方の往路2は、互いに平行に構成されている。冷却ゾーンZ6では、拘束状態が緩められた延伸対象物5に対する冷却処理が行われる。冷却処理としては、例えば、熱処理ゾーンZ4の温度よりも低い温度で、延伸対象物5を保温する。冷却された延伸対象物5は、続いて、出口側リターンゾーンZ7に移行する。
【0033】
出口側リターンゾーンZ7に送り込まれた延伸対象物5は、把持解除点18p−OFFで、その両縁部が複数の把持機構18から解放される。かくして、延伸処理済みの延伸対象物5が、出口側リターンゾーンZ7から送り出される。
【0034】
更に、上記した搬送エリア1Aには、加熱装置が設けられている。加熱装置は、オーブン30と、オーブン30の温度を制御する温度制御部(図示しない)と、を備えている。上記した5つのゾーン(予熱ゾーンZ2、延伸ゾーンZ3、熱処理ゾーンZ4、弛緩ゾーンZ5、冷却ゾーンZ6)は、オーブン30で覆われている。
【0035】
オーブン30は、複数の加熱保温室T1〜T10を有している。上記した5つのゾーンZ2,Z3,Z4,Z5,Z6には、1又は複数の加熱保温室が割り振られている。例えば、予熱ゾーンZ2には、3つの加熱保温室T1〜T3が割り振られ、また、弛緩ゾーンZ5には、1つの加熱保温室T8が割り振られている。図面には一例として、縦方向Yのサイズ(長さ)が同一の加熱保温室T1〜T10が示されているが、延伸対象物5の種類や延伸仕様に応じて、異なるサイズの加熱保温室T1〜T10が用いられる場合もある。
【0036】
温度制御部は、加熱保温室T1〜T10毎に温度制御を行う。例えば、上記した5つのゾーンZ2,Z3,Z4,Z5,Z6毎に、加熱保温室T1〜T10の内部を、予め設定された温度まで加熱したり、或いは、一定の温度に保持したりする。かくして、ゾーンZ2,Z3,Z4,Z5,Z6を搬送される延伸対象物5に対する加熱ないし保温が行われる。
【0037】
「左レール構造体4L、右レール構造体4R」
図1図4に示すように、シート・フィルム延伸装置1は、左レール構造体4L及び右レール構造体4Rを有している。左レール構造体4L及び右レール構造体4Rは、互いに同一の構成を有している。図2図5には、双方のレール構造体4L,4Rの共通の構成が示されている。
【0038】
レール構造体4L,4Rは、それぞれ、往路レールユニット10と、復路レールユニット11と、を有している。往路レールユニット10は、搬送エリア1Aの両外側に沿って配置されている。復路レールユニット11は、往路レールユニット10の両外側に沿って配置されている。双方のレールユニット10,11は、入口側リターンゾーンZ1及び出口側リターンゾーンZ7を除いた(回避した)領域に設けられている。
【0039】
更に、双方のレールユニット10,11は、それぞれ、複数のブロック構造を連結することにより構成されている。ブロック構造としては、後述する往路ブロック13と復路ブロック14を想定することができる。例えば、往路レールユニット10は、一方のブロック構造(往路ブロック13)を連結することにより構成されている。復路レールユニット11は、他方のブロック構造(復路ブロック14)を連結することにより構成されている。
【0040】
シート・フィルム延伸装置1では、弛緩ゾーンZ5から出口側リターンゾーンZ7に亘る範囲に、間隔(ピッチ)調整機構27が適用されている。これにより、一方のブロック構造(往路ブロック13)に対して、他方のブロック構造(復路ブロック14)を近付けた位置関係に調整されている。この結果、複数の把持機構18の相互の間隔(ピッチ)が狭められた状態に維持されている。かくして、搬送方向Yに沿って、延伸対象物5の収縮に追従させている。以下、具体的に説明する。
【0041】
「往路レールユニット10」
往路レールユニット10は、上記した移動経路1L,1R(レール構造体4L,4R)の往路2に沿って連続的に構成されている。往路レールユニット10は、上記した5つのゾーン(予熱ゾーンZ2、延伸ゾーンZ3、熱処理ゾーンZ4、弛緩ゾーンZ5、冷却ゾーンZ6)に亘って設けられている。往路レールユニット10は、重力方向Zで見て、上下両側に対称な構造を有している。図面では一例として、往路レールユニット10は、上側基準レール10aと、下側基準レール10bと、を備えている。双方の基準レール10a,10bは、重力方向Zに沿って上下に一定の距離だけ離間させた状態において、互いに平行に対向させて配置されている。双方の基準レール10a,10bは、互いに同一の形状及び輪郭を有している。
【0042】
上側基準レール10aは、双方の移動経路1L,1Rの往路2に沿って連続的に敷設されている。上側基準レール10aは、複数の上側レールエレメント10Eaから構成されている。上側レールエレメント10Eaは、後述する複数の往路ブロック13(アーム部13p)に1つずつ固定されている。ここで、例えば、入口側リターンゾーンZ1と出口側リターンゾーンZ7との間に亘って、複数の往路ブロック13を搬送方向Yに沿って並べる。このとき、複数の上側レールエレメント10Eaが、移動経路1L,1Rの往路2に沿って一列に並べられる。かくして、上側基準レール10aが、移動経路1L,1Rの往路2に沿って連続的に敷設されている。
【0043】
下側基準レール10bは、双方の移動経路1L,1Rの往路2に沿って連続的に敷設されている。下側基準レール10bは、複数の下側レールエレメント10Ebから構成されている。下側レールエレメント10Ebは、後述する複数の往路ブロック13(アーム部13p)に1つずつ固定されている。ここで、例えば、入口側リターンゾーンZ1と出口側リターンゾーンZ7との間に亘って、複数の往路ブロック13を搬送方向Yに沿って並べる。このとき、複数の下側レールエレメント10Ebが、移動経路1L,1Rの往路2に沿って一列に並べられる。かくして、下側基準レール10bが、移動経路1L,1Rの往路2に沿って連続的に敷設されている。
【0044】
往路レールユニット10は、後述する移動機構20(走行ユニット25、転動ユニット26)が移動可能に構成されている。往路レールユニット10には、後述する走行ユニット25(上側走行ベアリング25a、下側走行ベアリング25b)が走行可能な走行面(上側走行面10Ta、下側走行面10Tb)が構成されている。かかる往路レールユニット10の上側走行面10Ta及び下側走行面10Tbは、重力方向Zで見て、上側基準レール10aと下側基準レール10bとが互いに平行に対向する部分(対向面)に構成されている。
【0045】
即ち、上側走行面10Taは、上側基準レール10aの対向面に構成されている。下側走行面10Tbは、下側基準レール10bの対向面に構成されている。上側走行面10Ta及び下側走行面10Tbは、重力方向Zに沿って互いに平行に対向している。走行ユニット25の上側走行ベアリング25aは、上側走行面10Taに沿って転がりながら移動する。走行ユニット25の下側走行ベアリング25bは、下側走行面10Tbに沿って転がりながら移動する。
【0046】
更に、往路レールユニット10には、重力方向Zにおいて、後述する転動ユニット26(上側転動ベアリング26a、下側転動ベアリング26b)が転動可能な転動面(上側転動面10Ra、下側転動面10Rb)が構成されている。往路レールユニット10の上側転動面10Raは、幅方向Xで見て、上側基準レール10aの両側(一方側10S−1a、他方側10S−2a)に平行に対峙させて構成されている。往路レールユニット10の下側転動面10Rbは、幅方向Xで見て、下側基準レール10bの両側(一方側10S−1b、他方側10S−2b)に平行に対峙させて構成されている。
【0047】
なお、基準レール10a,10b(往路レールユニット10)の一方側10S−1a,10S−1bは、後述するクリップ18pに対峙する側として規定される。基準レール10a,10b(往路レールユニット10)の他方側10S−2a,10S−2bは、クリップ18pの反対側として規定される。
【0048】
「復路レールユニット11」
復路レールユニット11は、上記した移動経路1L,1R(レール構造体4L,4R)の復路3に沿って連続的に構成されている。復路レールユニット11は、上記した5つのゾーン(予熱ゾーンZ2、延伸ゾーンZ3、熱処理ゾーンZ4、弛緩ゾーンZ5、冷却ゾーンZ6)に亘って設けられている。復路レールユニット11は、重力方向Zで見て、上下両側に対称な構造を有している。図面では一例として、復路レールユニット11は、上側基準レール11aと、下側基準レール11bと、を備えている。双方の基準レール11a,11bは、重力方向Zに沿って上下に一定の距離だけ離間させた状態において、互いに平行に対向させて配置されている。双方の基準レール11a,11bは、互いに同一の形状及び輪郭を有している。
【0049】
上側基準レール11aは、双方の移動経路1L,1Rの復路3に沿って連続的に敷設されている。上側基準レール11aは、複数の上側レールエレメント11Eaから構成されている。上側レールエレメント11Eaは、後述する複数の復路ブロック14(アーム部14p)に1つずつ固定されている。ここで、例えば、入口側リターンゾーンZ1と出口側リターンゾーンZ7との間に亘って、複数の復路ブロック14を搬送方向Yに沿って並べる。このとき、複数の上側レールエレメント11Eaが、移動経路1L,1Rの復路3に沿って一列に並べられる。かくして、上側基準レール11aが、移動経路1L,1Rの復路3に沿って連続的に敷設されている。
【0050】
下側基準レール11bは、双方の移動経路1L,1Rの復路3に沿って連続的に敷設されている。下側基準レール11bは、複数の下側レールエレメント11Ebから構成されている。下側レールエレメント11Ebは、後述する複数の復路ブロック14(アーム部14p)に1つずつ固定されている。ここで、例えば、入口側リターンゾーンZ1と出口側リターンゾーンZ7との間に亘って、複数の復路ブロック14を搬送方向Yに沿って並べる。このとき、複数の下側レールエレメント11Ebが、移動経路1L,1Rの復路3に沿って一列に並べられる。かくして、下側基準レール11bが、移動経路1L,1Rの復路3に沿って連続的に敷設されている。
【0051】
復路レールユニット11は、後述する移動機構20(走行ユニット25、転動ユニット26)が移動可能に構成されている。復路レールユニット11には、後述する走行ユニット25(上側走行ベアリング25a、下側走行ベアリング25b)が走行可能な走行面(上側走行面11Ta、下側走行面11Tb)が構成されている。かかる復路レールユニット11の上側走行面11Ta及び下側走行面11Tbは、重力方向Zで見て、上側基準レール11aと下側基準レール11bとが互いに平行に対向する部分(対向面)に構成されている。
【0052】
即ち、上側走行面11Taは、上側基準レール11aの対向面に構成されている。下側走行面11Tbは、下側基準レール11bの対向面に構成されている。上側走行面11Ta及び下側走行面11Tbは、重力方向Zに沿って互いに平行に対向している。走行ユニット25の上側走行ベアリング25aは、上側走行面11Taに沿って転がりながら移動する。走行ユニット25の下側走行ベアリング25bは、下側走行面11Tbに沿って転がりながら移動する。
【0053】
更に、復路レールユニット11には、重力方向Zにおいて、後述する転動ユニット26(上側転動ベアリング26a、下側転動ベアリング26b)が転動可能な転動面(上側転動面11Ra、下側転動面11Rb)が構成されている。復路レールユニット11の上側転動面11Raは、幅方向Xで見て、上側基準レール11aの両側(一方側11S−1a、他方側11S−2a)に平行に対峙させて構成されている。復路レールユニット11の下側転動面11Rbは、幅方向Xで見て、下側基準レール11bの両側(一方側11S−1b、他方側11S−2b)に平行に対峙させて構成されている。
【0054】
なお、基準レール11a,11b(往路レールユニット11)の一方側11S−1a,11S−1bは、後述するクリップ18pに対峙する側として規定される。基準レール11a,11b(往路レールユニット11)の他方側11S−2a,11S−2bは、クリップ18pの反対側として規定される。
【0055】
「レールブロック12、往路ブロック13、復路ブロック14」
図3図6に示すように、シート・フィルム延伸装置1は、複数のレールブロック12を有している。1つレールブロック12には、1組のブロック構造(往路ブロック13、復路ブロック14)が設けられている。レールブロック12を、上記した移動経路1L,1Rに沿って並べることで、往路2と復路3を無端状に接続させた一連のレール構造体4L,4Rが構成されている。なお、レールブロック12は、延伸対象物5の種類や、その延伸仕様に基づき、上側基準レール10aと下側基準レール10bの配置が調整されるように、図示しないレール台やフレームの上で移動可能に取り付けられる。
【0056】
かかる構成において、移動経路1L,1Rに沿って並べられる複数のレールブロック12は、用途や使用目的に応じて、互いに同一の大きさに設定してもよいし、或いは、互いに異なる大きさに設定してもよい。図面には一例として、上記した範囲27b−Zには、移動経路1L,1Rに沿って、互いに長さの異なる複数のレールブロック(調整レール調整区間とも言う)CB1,CB2,CB3,CB4,CB5が配置されている。
【0057】
レールブロック12において、往路ブロック13と復路ブロック14とは、幅方向Xに沿って互いに対向させて配置されている。この場合、往路ブロック13の背面13aと、復路ブロック14の背面14aとが、幅方向Xに沿って互いに平行に対向している。双方のブロック13,14のうち、背面13a,14a寄りの部分は、肉厚化され、剛性及び強度が高められている。往路ブロック13及び復路ブロック14の詳細は、後述する。
【0058】
レールブロック12は、往路ブロック13及び復路ブロック14を囲むように構成されたコ字状(U字状)の枠体構造を有している。レールブロック12は、上部ベース12aと、下部ベース12bと、支持ベース12cと、を備えている。上部ベース12a及び下部ベース12bは、重力方向Zに沿って上下に一定の距離だけ離間させた状態において、互いに平行に対向させて配置されている。支持ベース12cは、重力方向Zに沿って構成されている。上部ベース12aは、重力方向Zで見て、支持ベース12cの上側に支持されている。下部ベース12bは、重力方向Zで見て、支持ベース12cの下側に支持されている。上部ベース12aと下部ベース12bは、幅方向Xで見て、それぞれの一端側において、支持ベース12cに支持されている。
【0059】
往路ブロック13及び復路ブロック14は、上部ベース12aと下部ベース12bとの間に配置されている。
往路ブロック13は、上部ベース12a及び下部ベース12bの他端側において、双方のベース12a,12bの相互間に挟まれた状態で固定されている。固定方法としては、特に図示しないが、往路ブロック13を上部ベース12a及び下部ベース12bに対して、例えばネジ止めする方法を適用することができる。ここで、ベース12a,12bの相互間に往路ブロック13が固定された部分(領域)において、レールブロック12は、四角形状の枠体構造となる。かくして、往路レールユニット10は、強固で、剛性の高いものとなる。
【0060】
復路ブロック14は、位置調整構造によって、往路ブロック13に対する位置関係を調整可能に構成されている。位置調整構造は、上部スライダ15aと、下部スライダ15bと、支持スライダ15cと、を有している。支持スライダ15cは、重力方向Zに沿って構成されている。上部スライダ15a及び下部スライダ15bは、支持スライダ15cによって、互いに対向させて支持されている。
【0061】
上部スライダ15aは、重力方向Zで見て、復路ブロック14の上側に取り付けられている。下部スライダ15bは、重力方向Zで見て、復路ブロック14の下側に取り付けられている。上部スライダ15a及び下部スライダ15bは、幅方向Xで見て、それぞれの一端側が支持スライダ15cに支持され、それぞれの他端側が復路ブロック14に取り付けられている。図面では一例として、双方のスライダ15a,15bの一端側は、重力方向Zで見て、復路ブロック14の上下に対向配置されたアーム部14pに取り付けられている。アーム部14pは、後述する復路ブロック14の正面14b(背面14aの反対側)において、幅方向Xに沿って平行に突出している。なお、アーム部14pの詳細は、後述する。
【0062】
復路ブロック14は、上部スライダ15aと下部スライダ15bとの間に挟まれた状態で、双方のスライダ15a,15bに固定されている。固定方法としては、特に図示しないが、復路ブロック14をスライダ15a,15bに対して、例えばネジ止めする方法を適用することができる。ここで、スライダ15a,15bの相互間に復路ブロック14が固定された部分(領域)において、レールブロック12は、四角形状の枠体構造となる。かくして、復路レールユニット11は、強固で、剛性の高いものとなる。
【0063】
上部スライダ15a及び下部スライダ15bを復路ブロック14に取り付けた状態において、上部スライダ15aは、上部ベース12a(上部ガイド面12Ga)に沿って移動可能に構成され、下部スライダ15bは、下部ベース12b(下部ガイド面12Gb)に沿って移動可能に構成されている。
【0064】
かかるブロック構造によれば、往路ブロック13がベース12a,12b相互間に固定されて構成された四角形状の枠体構造の内部に、復路ブロック14が15a,15bの相互間に固定されて構成された四角形状の枠体構造が、納められた状態となる。この状態において、支持ベース12cと支持スライダ15cとが、幅方向Xに沿って互いに平行に対向する。同時に、往路ブロック13の背面13aと、復路ブロック14の背面14aとが、幅方向Xに沿って互いに平行に対向する。
【0065】
これにより、復路ブロック14は、支持スライダ15cに支持された上部スライダ15a及び下部スライダ15bに追従するように、上部ベース12a(上部ガイド面12Ga)、及び、下部ベース12b(下部ガイド面12Gb)に沿って幅方向Xに移動可能となる。かくして、往路ブロック13と復路ブロック14との間の位置関係を調整することができる。例えば、幅方向Xにおいて、往路ブロック13と復路ブロック14との間の距離(間隔)を、予め設定された距離(間隔)に調整することができる。
【0066】
図3図6には、往路ブロック13及び復路ブロック14の具体的な構成が示されている。
往路ブロック13は、幅方向Xに沿って互いに並列した背面13a及び正面13bを有するブロック構造を成している。背面13aは、復路ブロック14の背面14aに対して平行に対向させて配置されている。正面13bは、背面13aの反対側に位置し、延伸対象物5に向けて配置されている。
【0067】
往路ブロック13は、重力方向Zで見て、上下に対向配置されたアーム部13pを備えている。双方のアーム部13pにおいて、その一端側が、背面13a寄りの部分(即ち、肉厚化され、剛性及び強度が高められた領域)に支持され、その他端側が、正面13bに向けて幅方向Xに沿って平行に突出している。
【0068】
そして、当該アーム部13pの先端側に、上記した上側レールエレメント10Eaと下側レールエレメント10Ebが取り付けられている。更に、重力方向Zで見て、当該アーム部13pの先端側の相互間に、後述する把持機構18(クリップ18p)、走行ユニット25、転動ユニット26などが配置されている。
【0069】
復路ブロック14は、幅方向Xに沿って互いに並列した背面14a及び正面14bを有するブロック構造を成している。背面14aは、往路ブロック13の背面13aに対して平行に対向させて配置されている。正面14bは、背面14aの反対側に位置し、延伸対象物5の反対側に向けて配置されている。
【0070】
復路ブロック14は、重力方向Zで見て、上下に対向配置されたアーム部14pを備えている。双方のアーム部14pにおいて、その一端側が、背面14a寄りの部分(即ち、肉厚化され、剛性及び強度が高められた領域)に支持され、その他端側が、正面14bに向けて幅方向Xに沿って平行に突出している。
【0071】
そして、当該アーム部14pの先端側に、上記した上側レールエレメント11Eaと下側レールエレメント11Ebが取り付けられている。更に、重力方向Zで見て、当該アーム部14pの先端側の相互間に、後述する把持機構18(クリップ18p)、走行ユニット25、転動ユニット26などが配置されている。
【0072】
図3図4には一例として、上記した3つのゾーン(予熱ゾーンZ2、延伸ゾーンZ3、熱処理ゾーンZ4)において、往路ブロック13と復路ブロック14との間の距離(間隔)が、予め設定された距離(間隔)に設定された仕様が示されている。なお、図3図4には、図1に符号12−P1で示された1つのレールブロックの断面構造が示されている。
【0073】
かかる仕様において、シート・フィルム延伸装置1は、複数の固定ブロック16を有している。この場合、1つのレールブロック12−P1において、固定ブロック16は、移動経路1L,1Rに沿って両側に、予め設定された個数(例えば、2つ)ずつ配置されている。固定ブロック16は、往路ブロック13の背面13aと、復路ブロック14の背面14aとの間に配置されて固定されている。固定方法としては、例えばネジ止めなどを想定することができる。図面では一例として、固定ブロック16は、複数のボルト17によって、往路ブロック13の背面13a、及び、復路ブロック14の背面14aに固定されている。
【0074】
なお、固定ブロック16の大きさや形状は、例えば、往路ブロック13と復路ブロック14との間の広さ(距離)、或いは、往路ブロック13及び復路ブロック14の大きさや形状などに応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。また、固定ブロック16の材質としては、例えば、弾性変形し難い高剛性の金属材料を適用することが好ましい。
【0075】
この場合、固定ブロック16の位置は、重力方向Zで見て、往路ブロック13及び復路ブロック14の中央部分、換言すると、上側基準レール10a,11a(上側レールエレメント10Ea,11Ea)と、下側基準レール10b,11b(下側レールエレメント10Eb,11Eb)との相互間の距離を、重力方向Zに沿って2等分した部分に設定することが好ましい。
【0076】
これにより、往路ブロック13と復路ブロック14とを常に安定した位置関係に維持することができる。なお、かかる位置関係において、復路ブロック14は、上部ベース12aと下部ベース12bに固定されている。固定方法としては、特に図示しないが、往路ブロック13を上部ベース12a及び下部ベース12bに対して、例えばネジ止めする方法を適用することができる。
【0077】
図5図6には一例として、弛緩ゾーンZ5から冷却ゾーンZ6を越えて、出口側リターンゾーンZ7の一部(把持解除点18p−OFF)に亘る範囲27b−Zにおいて、往路ブロック13と復路ブロック14との間の距離(間隔)が、予め設定された距離(間隔)に設定された仕様が示されている。なお、図5図6には、図1に符号12−P2で示された1つのレールブロックの断面構造が示されている。
【0078】
かかる仕様において、シート・フィルム延伸装置1は、後述する複数の間隔(ピッチ)調整機構27を有している。この場合、1つのレールブロック12−P2において、間隔(ピッチ)調整機構27(後述する調整ブロック27a)は、移動経路1L,1Rに沿って両側に、予め設定された個数(例えば、2つ)ずつ配置されている。そして、双方の調整ブロック27aによって、後述する位置決めブロック31(調整レール27b)が、後述するジョイント機構19(調整ベアリング27c)に向けて押圧される。なお、本実施形態においては、調整ブロック27aと位置決めブロック31を一体構造としているが、別体として、固定するようにしてもよい。
【0079】
ここで、往路ブロック13を固定した状態において、間隔(ピッチ)調整機構27は、調整ブロック27a(調整レール27b)を、後述するジョイント機構19(調整ベアリング27c)に接触させた状態に維持されている。この結果、複数の把持機構18の相互の間隔(ピッチ)が、狭められた状態に維持される。かくして、搬送(長手)方向Yに沿って、延伸対象物5の収縮に追従させている。
【0080】
なお、本実施形態においては、1組の往路ブロック13と復路ブロック14を、同じ長さのレールブロック12で囲むようにしているが、これに限らず、長さの短い複数のレールブロック12で、間隔を開けて、複数箇所で囲むようにしてもよい。
【0081】
「クリップチェーン8,9」
図1図5に示すように、シート・フィルム延伸装置1は、上記した移動経路1L,1R(レール構造体4L,4R)に沿って移動可能な無端状のクリップチェーン8,9を有している。クリップチェーン8,9は、互いに同一の構成を有している。図2図5には、双方のクリップチェーン8,9の共通の構成が示されている。
【0082】
図2図5に示すように、クリップチェーン8,9は、複数の把持機構18と、複数のジョイント機構19と、複数の移動機構20と、を備えている。クリップチェーン8,9は、把持機構18とジョイント機構19とを1つずつ交互に無端状に連結させて構成されている。更に、複数の移動機構20は、把持機構18に1つずつ搭載されている。移動機構20は、上記した入口側スプロケット6及び出口側スプロケット7を経由しつつ、往路レールユニット10及び復路レールユニット11に沿って移動可能に構成されている。
【0083】
かかる構成において、図示しないモータによって双方のスプロケット6,7を回転駆動させる。このとき、当該スプロケット6,7に噛み合っているクリップチェーン8,9が、移動経路1L,1R(往路2、復路3)に沿って循環する。これに追従して、移動機構20が移動する。そうすると、把持機構18が、往路レールユニット10及び復路レールユニット11に沿って走行する。これにより、クリップチェーン8,9が、例えば、3つのゾーン(予熱ゾーンZ2、延伸ゾーンZ3、熱処理ゾーンZ4)に亘って移動する。かくして、延伸対象物5は、複数の把持機構18によって両縁部が把持された状態において、加熱されつつ幅方向Xに延伸される。
【0084】
「把持機構18」
把持機構18は、把持本体18aと、クリップ18pと、を備えている。把持本体18aは、延伸対象物5の両縁部を支持可能な部分(部位)、例えば、支持面18Saを備えている。支持面18Saは、凹凸の無い平坦面状に構成されている。ここで、クリップチェーン8,9が、移動経路1L,1R(レール構造体4L,4R)に沿って移動している状態において、全ての把持本体18aの支持面18Saは、第1方向X及び第2方向Yに沿って同一の水平面上に位置付けられる。
【0085】
また、クリップ18pは、把持本体18aに対して回動可能に支持されている。クリップ18pは、回動先端に把持面18Spを有している。ここで、延伸対象物5の両縁部を把持する際に、クリップ18pを回動させる。そうすると、把持面18Spが、当該延伸対象物5を介して、把持本体18aの支持面18Saに向けて圧接される。かくして、延伸対象物5は、その両縁部が把持面18Spと支持面18Saとの間に挟持された状態に維持される。
【0086】
かかる状態において、クリップ18pには、延伸対象物5からの反力(即ち、引っ張り力)が作用する。即ち、延伸対象物5がクリップ18pから外れようとする。このとき、クリップ18pは、延伸対象物5に向かって引き寄せられる。そうすると、クリップ18pの回動先端(即ち、把持面18Sp)が、更に支持面18Saに押し付けられる。かくして、延伸対象物5の両縁部は、より強い力で、把持面18Spと支持面18Saとの間に挟持される。よって、延伸対象物5がクリップ18pから外れることは無い。
【0087】
更に、把持機構18において、把持本体18aの支持面18Sa、及び、延伸対象物5を把持する部位(部分)は、移動機構20及びレールユニット10,11における上下両側に対称な構造を、重力方向Zに沿って2等分した位置に設定されている。
【0088】
具体的には、把持機構18において、把持本体18aの支持面18Sa、或いは、延伸対象物を把持する部位(部分)は、上側基準レール10a,11a(上側レールエレメント10Ea,11Ea)と、下側基準レール10b,11b(下側レールエレメント10Eb,11Eb)との相互の間隔(例えば、距離、高さ)を、重力方向Zに沿って2等分した位置に位置付けられている。
【0089】
換言すると、延伸対象物5を把持する部位(部分)は、重力方向Zに沿って上下両側に対称な構造を有する移動機構20の重心に一致した位置に位置付けられている。なお、移動機構20の重心とは、上下両側に対称な構造を、重力方向Zに沿って2等分した位置として規定される。
【0090】
「ジョイント機構19」
ジョイント機構19は、搬送方向Y(クリップチェーン8,9の移動方向)に沿って隣り合う2つの把持機構18の相互間に配置されている。即ち、複数の把持機構18と複数のジョイント機構19とは、1つずつ交互に無端状に連結されている。この場合、ジョイント機構19は、搬送方向Yに沿って隣り合う把持機構18相互の間隔(ピッチ)を調整する機能を有している。ここで、説明の都合上、搬送方向Yに沿って隣り合う2つの把持機構18のうち、一方の把持機構18を第1把持機構18−1とし、他方の把持機構18を第2把持機構18−2とする。
【0091】
ジョイント機構19は、第1継手部材19−1と、第2継手部材19−2と、を備えている。この場合、第1継手部材19−1及び第2継手部材19−2の重心は、例えば、上記した把持本体18aの支持面18Sa、及び、延伸対象物5を把持する部位(部分)に一致した位置に設定されている。なお、第1継手部材19−1及び第2継手部材19−2の重心とは、当該継手部材19−1,19−2を、重力方向Zに沿って2等分した位置として規定される。
【0092】
第1継手部材19−1は、両端を有している。第1継手部材19−1の一端は、第1枢軸部21を介して、第1把持機構18−1(即ち、把持本体18a)に回動自在に連結されている。第1継手部材19−1の他端は、中継軸部22を介して、第2継手部材19−2に回動自在に連結されている。
【0093】
第2継手部材19−2は、両端と、突出部23と、を有している。第2継手部材19−2の一端は、第2枢軸部24を介して、第2把持機構18−2(即ち、把持本体18a)に回動自在に連結されている。第2継手部材19−2の他端は、上記した中継軸部22を介して、第1継手部材19−1に回動自在に連結されている。
【0094】
更に、突出部23は、例えば、第2枢軸部24と中継軸部22との間の中間領域において、延伸対象物5(クリップ18p)の反対側に向けて突出させて構成されている。換言すると、突出部23は、当該中間領域を、延伸対象物5(クリップ18p)から離間する方向に出っ張らせて構成されている。当該突出部23には、後述する間隔(ピッチ)調整機構27の調整ベアリング27cが回転自在に取り付けられている。この場合、調整ベアリング27cは、その回転面が突出部23からはみ出した状態で回転可能に構成されている。
【0095】
ここで、調整ベアリング27cに押圧力が作用していない場合、換言すると、複数の把持機構18が、上記した3つのゾーン3つのゾーン(予熱ゾーンZ2、延伸ゾーンZ3、熱処理ゾーンZ4)に亘って移動している場合、スプロケット6,7がクリップチェーン8,9を引っ張ることで、第1継手部材19−1と第2継手部材19−2は、往路2に沿って展開した状態に維持される(図2参照)。
【0096】
かかる状態において、第1枢軸部21と、中継軸部22と、第2枢軸部24とが、往路2に沿って真っ直ぐに整列する。このとき、第1把持機構18−1と第2把持機構18−2との間の間隔(距離)、即ち、往路2に沿って隣り合う2つの把持機構18の相互の間隔(距離)は、最大となる。
【0097】
一方、調整ベアリング27cに押圧力が作用している場合、換言すると、複数の把持機構18が、弛緩ゾーンZ5から冷却ゾーンZ6を越えて、出口側リターンゾーンZ7の一部(把持解除点18p−OFF)に亘る範囲27b−Zを移動している場合、ジョイント機構19は、中継軸部22を中心に折れ曲がった状態に維持される(図5参照)。
【0098】
かかる状態において、中継軸部22は、延伸対象物5(クリップ18p)に接近する方向に変位する。同時に、第1枢軸部21と第2枢軸部24とは、往路2に沿って互いに接近する方向に変位する。このとき、第1把持機構18−1と第2把持機構18−2との間の間隔(距離)、即ち、往路2に沿って隣り合う2つの把持機構18の相互の間隔(距離)は、最小となる。
【0099】
なお、調整ベアリング27cの重心と、継手部材19−1,19−2の重心とは、重力方向Zで見て、互いに同一平面上に設定されている。換言すると、調整ベアリング27cの重心は、上記した把持本体18aの支持面18Sa、及び、延伸対象物5を把持する部位(部分)に一致した位置に設定されている。また、調整ベアリング27cの重心とは、例えば、当該調整ベアリング27cを重力方向Zに沿って2等分した位置と、当該調整ベアリング27cの回転中心との交点として規定される。
【0100】
「移動機構20」
移動機構20は、把持機構18に1つずつ搭載されている。移動機構20は、重力方向Zで見て、上下両側に対称な構造を有して構成されている。上記したレールユニット10,11において、移動機構20は、上側及び下側の双方で拘束されつつ、当該レールユニット10,11に沿って移動可能に構成されている。
【0101】
換言すると、移動機構20は、レールユニット10,11に沿って移動する間に、重力方向(上下方向)Zに拘束されつつ同時に、幅方向Xにも拘束される。かくして、当該移動機構20を搭載した把持機構18の移動姿勢は、常時(移動していない時も含めて)、一定に維持される。
【0102】
具体的に説明すると、移動機構20は、重力方向Zの上側と下側の双方に、走行ユニット25及び転動ユニット26を有している。走行ユニット25及び転動ユニット26は、往路レールユニット10(上側基準レール10a、下側基準レール10b)、及び、復路レールユニット11(上側基準レール11a、下側基準レール11b)に沿って転がりながら移動可能に構成されている。
【0103】
走行ユニット25は、例えば、上側走行ベアリング25aと、下側走行ベアリング25bと、を備えている。上側走行ベアリング25aは、上記した上側走行面10Ta,11Taに沿って転がりながら移動可能に構成されている。下側走行ベアリング25bは、上記した下側走行面10Tb,11Tbに沿って転がりながら移動可能に構成されている。かくして、走行ユニット25は、重力方向(上下方向)Zに拘束されつつ、往路レールユニット10及び復路レールユニット11に沿って移動する。
【0104】
転動ユニット26は、例えば、上側転動ベアリング26aと、下側転動ベアリング26bと、を備えている。上側転動ベアリング26aは、上記した上側転動面10Ra,11Raに沿って転がりながら移動可能に構成されている。下側転動ベアリング26bは、上記した下側転動面10Rb,11Rbに沿って転がりながら移動可能に構成されている。
【0105】
図面では一例として、上記した上側基準レール10a,11aの両側に、合計3つの上側転動ベアリング26aが設けられている。これら3つの上側転動ベアリング26aは、幅方向Xに沿って同一平面上に並んでいる。この場合、上側基準レール10a,11aの一方側に、1つの上側転動ベアリング26aが配置されている。上側基準レール10a,11aの他方側に、2つの上側転動ベアリング26aが配置されている。
【0106】
図面では一例として、上記した下側基準レール10b,11bの両側に、合計3つの下側転動ベアリング26bが設けられている。これら3つの下側転動ベアリング26bは、幅方向Xに沿って同一平面上に並んでいる。この場合、下側基準レール10b,11bの一方側に、1つの上側転動ベアリング26aが配置されている。下側基準レール10b,11bの他方側に、2つの上側転動ベアリング26aが配置されている。
【0107】
かかる構成において、上側転動ベアリング26aは、双方の上側転動面10Ra,11Raに沿って転がりながら移動する。下側転動ベアリング26bは、双方の下側転動面10Rb,11Rbに沿って転がりながら移動する。即ち、上側転動ベアリング26aは、上側転動面10Ra,11Raを両側から挟んだ状態で転がりながら移動する。下側転動ベアリング26bは、下側転動面10Rb,11Rbを両側から挟んだ状態で転がりながら移動する。かくして、転動ユニット26は、幅方向Xに拘束されつつ、往路レールユニット10及び復路レールユニット11に沿って移動する。
【0108】
なお、上述では、上側転動ベアリング26aと下側転動ベアリング26bが、それぞれ、合計3つの場合について説明したが、上側転動ベアリング26aと下側転動ベアリング26bを、それぞれ、合計4つとしてもよい。上側基準レール10a,11aを挟んで、2か所で、2つの上側転動ベアリング26aが対向するように配置しても良い。同様に下側基準レール10b,11bを挟んで、2か所で、2つの下側転動ベアリング26bが対向するように配置しても良い。
【0109】
「間隔(ピッチ)調整機構27」
図1図5に示すように、間隔(ピッチ)調整機構27は、上記した範囲27b−Zに亘って設けられている。かかる範囲27b−Zは、弛緩ゾーンZ5から、少なくとも把持解除点18p−OFFまでの範囲に設定される。当該範囲27b−Zでは、幅(横)方向Xに沿った延伸対象物5の収縮に追従させる横方向弛緩処理と同時に、搬送(縦)方向Yに沿った延伸対象物5の収縮に追従させる縦方向弛緩処理が行われる。間隔(ピッチ)調整機構27は、当該縦方向弛緩処理に供される。
【0110】
間隔(ピッチ)調整機構27は、調整ブロック27aと、調整レール27bと、調整ベアリング27cと、調整通路27dと、調整ネジ27eと、を有している。この場合、間隔(ピッチ)調整機構27は、重力方向Zで見て、移動機構20及びレールユニット10,11の中間の部分に配置されている。中間の部分とは、重力方向Zに沿って上下対称な構造の中間の部分、換言すると、当該上下対称な構造を上下方向に2等分した位置ないし領域を指す。別の捉え方をすると、中間の部分とは、後述する重心の位置ないし重心を含んだ領域を指す。
【0111】
調整ブロック27aの重心、調整レール27bの重心、調整ベアリング27cの重心、調整通路27dの重心、調整ネジ27eの回転中心は、重力方向Zで見て、互いに同一平面上に設定されている。ここで、調整ブロック27aの重心、調整レール27bの重心、調整ベアリング27cの重心、調整通路27dの重心は、例えば、これらの構成要素(即ち、調整ブロック27a、調整レール27b、調整ベアリング27c、調整通路27d)を、重力方向Zに沿って2等分した位置として規定される。換言すると、これらの重心及び回転中心と、上記した把持本体18aの支持面18Sa、及び、延伸対象物5を把持する部位(部分)とは、幅方向Xに沿って相互に真っ直ぐに並んだ位置関係に設定されている。
【0112】
調整ブロック27aは、復路ブロック14に対して、予め設定された個数だけ固定されている。固定方法としては、例えば、移動経路1L,1Rで見て、復路ブロック14(背面14a)の両側に、当該調整ブロック27aを1つずつネジ止めする。図面では一例として、2つの調整ブロック27aが、複数のボルト28によって、復路ブロック14の背面14aに固定されている。
【0113】
調整レール27bは、移動経路1L,1Rに沿って構成された位置決めブロック31に設けられている。位置決めブロック31は、その両側が調整ブロック27aに支持されている。位置決めブロック31において、調整レール27bは、調整ベアリング27cに対向させるように配置されている。かかる構成において、調整ブロック27aによって、位置決めブロック31(調整レール27b)を調整ベアリング27cに向けて押し付ける。かくして、調整レール27bは、調整ベアリング27cに接触しつつ、当該調整ベアリング27cに押圧力を作用可能に構成されている。なお、調整レール27bは、位置決めブロック31と一体的に成形してもよいし、或いは、別体として構成し、位置決めブロック31に後付けしてもよい。
【0114】
調整ベアリング27cの回転面は、上記した突出部23からはみ出して位置付けられている。これにより、調整レール27bは、突出部23に干渉すること無く、調整ベアリング27cに接触可能となる。この結果、後述する押圧力を、調整レール27bから調整ベアリング27cにスムーズに伝えることができる。
【0115】
調整通路27dは、上記した調整ブロック27aに対向した位置に設けられ、往路ブロック14を、幅方向Xに沿って貫通させて構成されている。調整通路27dは、調整レール27bと共に、調整ブロック27aを挿通可能に構成されている。調整通路27dの大きさや形状は、例えば、調整ブロック27aの大きさや形状に応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0116】
調整ネジ27eは、上記した支持ベース12c(レールブロック12)に支持された状態において、先端側が支持スライダ15cに対して回動自在に連結されている。図面では一例として、調整ネジ27eの先端側は、軸受29を介して支持スライダ15cに連結されている。一方、調整ネジ27eの基端側は、上記したオーブン30の外側に位置付けられている(図1参照)。
【0117】
かかる構成において、例えば、調整ネジ27eを一方向に正回転させる。調整ネジ27eの先端側が、幅方向Xに沿って前進する。この前進運動は、支持スライダ15cから上部スライダ15a及び下部スライダ15bに伝わる。当該スライダ15a,15bに追従して、復路ブロック14が往路ブロック13に向かって移動する。そして、予め設定された距離だけ、調整ブロック27aが調整通路27dに沿って移動したとき、調整ネジ27eの回転を停止させる。
【0118】
このとき、調整レール27bが、調整ベアリング27cに接触する。調整レール27bから調整ベアリング27cに押圧力が作用する。当該押圧力は、調整ベアリング27cからジョイント機構19に作用する。この結果、ジョイント機構19が、中継軸部22を中心に折れ曲がる(図5参照)。即ち、第1枢軸部21と第2枢軸部24とが、互いに接近する。かくして、搬送方向Yに沿って隣り合う2つの把持機構18の相互の間隔(ピッチ、距離)が最小となる。
【0119】
これに対して、例えば、調整ネジ27eを他方向に逆回転させる。調整ネジ27eの先端側が、幅方向Xに沿って後退する。この後退運動は、支持スライダ15cから上部スライダ15a及び下部スライダ15bに伝わる。当該スライダ15a,15bに追従して、復路ブロック14が往路ブロック13から離間する方向に移動する。そして、予め設定された距離だけ、調整ブロック27aが調整通路27dに沿って移動したとき、調整ネジ27eの回転を停止させる。
【0120】
このとき、調整ベアリング27cに対する調整レール27bの接触状態が変更される。例えば、接触しない非接触状態、或いは、接触圧が弱まった弱接触状態となる。
非接触状態では、調整ベアリング27cに押圧力が作用しない。このとき、ジョイント機構19の張力作用によって、第1継手部材19−1と第2継手部材19−2が、搬送方向Yに沿って真っ直ぐに展開した状態に維持される。かくして、搬送方向Yに沿って隣り合う2つの把持機構18の相互の間隔(ピッチ、距離)が最大となる(図2参照)。
【0121】
一方、弱接触状態では、調整ベアリング27cに作用する押圧力が小さくなる。このとき、ジョイント機構19の折れ曲がり量が小さくなる。かくして、搬送方向Yに沿って隣り合う2つの把持機構18の相互の間隔(ピッチ、距離)は、中程度となる。なお、中程度とは、上記した最小と最大との間に亘って規定される。
【0122】
このように、調整ネジ27eを、正回転させたり、或いは、逆回転させたりする。これにより、搬送方向Yに沿って隣り合う2つの把持機構18の相互の間隔(ピッチ、距離)を、大きくしたり、或いは、小さくしたりすることができる。
【0123】
図面では一例として、搬送方向Yに沿って隣り合う2つの把持機構18の相互の間隔(ピッチ、距離)が最小となった仕様が示されている(図5参照)。かくして、上記した熱処理ゾーンZ4における長手方向処理に際し、搬送方向(長手方向)Yに沿って、延伸対象物5の収縮に追従させることができる。
【0124】
なお、熱処理ゾーンZ4を通過した把持機構18(クリップチェーン8,9)は、出口側リターンゾーンZ7の出口側スプロケット7を経由した後、復路3を通って入口側リターンゾーンZ1に戻される。このとき、入口側スプロケット6を経由した把持機構18は、入口側リターンゾーンZ1に送り込まれた延伸対象物5の両縁部を把持する。かくして、当該延伸対象物5に対する延伸処理が行われる。
【0125】
また、調整ネジ27eの調整では、手動で調整してもよいし、或いは、自動で調整してもよい。手動調整では、作業者が目視確認できるような目盛を調整ネジ27eに設けることが好ましい。一方、自動調整では、調整ネジ27eに連結可能なモータと、モータの回転状態(角度、位置など)を検出可能な検出装置と、を設けることが好ましい。
【0126】
いずれの場合でも、上記した設定範囲27b−Zにおいて、弛緩ゾーンZ5に対応する範囲27b−Z1では、調整ネジ27eによる押圧力の調整が行われる。そして、冷却ゾーンZ6から把持解除点18p−OFFに対応する範囲27b−Z2では、調整後の押圧力に保持される。言い換えれば、調整後の調整レール27bの調整量に保持される。
【0127】
「一実施形態の効果」
本実施形態によれば、延伸対象物5の両縁部を把持可能なクリップチェーン8,9(把持機構18)を移動させるための構成(例えば、往路レールユニット10、移動機構20)を、重力方向Zで見て、上下両側に対称な構造とする。これにより、移動機構20は、往路レールユニット10の上側及び下側の双方において、重力方向(上下方向)Zと幅方向Xの双方で拘束されつつ、往路レールユニット10に沿って移動可能となる。この結果、当該移動機構20を搭載した把持機構18の移動姿勢を、常時(移動していない時も含めて)、一定に維持することができる。この場合、例えば、延伸処理に際し、延伸対象物5からの反力(引っ張り力)が作用しても、クリップチェーン8,9(把持機構18)が傾斜することは無い。かくして、延伸対象物5を、予め設定された形状や大きさに精度良く延伸させることができる。
【0128】
本実施形態によれば、把持本体18aの支持面18Sa、及び、延伸対象物5を把持する部位(部分)は、重力方向Zに沿って上下両側に対称な構造を有する移動機構20及び往路レールユニット10の重心に一致した位置に位置付けられる。かかる構成によれば、延伸対象物5からの反力(引っ張り力)は、重力方向Zに沿って上下に均等に分散されて移動機構20から往路レールユニット10に伝わる。この結果、往路レールユニット10が、変形したり捩じれたりするといった不具合の発生を未然に防止することができる。往路ブロック13がレールブロック12に固定されると、四角形状の枠体構造となるので、往路レールユニット10は、強固で、剛性の高いものとなっている。
【0129】
本実施形態によれば、上記した往路ブロック13と復路ブロック14とを別体として構成し、復路ブロック14に調整ブロック27aを固定する。かかる構成によれば、調整ブロック27aの断面積を大きく確保することができる。このため、剛性に優れた高強度の調整ブロック27aを適用することができる。これにより、延伸対象物5からの反力(引っ張り力)に抗して、調整ブロック27aからジョイント機構19(調整ベアリング27c)に一定の押圧力を安定的に作用させることができる。この結果、熱処理ゾーンZ4から出口側リターンゾーンZ7に亘る範囲において、搬送(長手)方向Yに沿って、延伸対象物5の収縮に精度良く追従させることができる。
【0130】
本実施形態によれば、往路ブロック13がベース12a,12b相互間に固定されて構成された四角形状の枠体構造の内部に、復路ブロック14が15a,15bの相互間に固定されて構成された四角形状の枠体構造が、納められ、更に、上部スライダ15aは、上部ベース12a(上部ガイド面12Ga)に沿って移動可能に構成され、加えて、下部スライダ15bは、下部ベース12b(下部ガイド面12Gb)に沿って移動可能に構成されている。これにより、復路ブロック14が支持スライダ15cに支持された上部スライダ15aと下部スライダ15bに固定されて構成された、強固で、剛性の高い四角形状の枠体構造が、上部ガイド面12Gaおよび下部ガイド面12Gbに沿って移動するので、調整ブロック27aの調整を、スムーズに精度良く行うことができる。なお、調節ブロック27aを支持する支持部材を新たに設けることなく、復路ブロック14に調節ブロック27aを取り付けているので、構造が複雑になっていない。
【0131】
本実施例によれば、レールブロック12が往路ブロック13及び復路ブロック14を囲むように構成されている。これにより、往路ブロック13と復路ブロック14のそれぞれを、個別にレール台やフレームに取り付ける場合に比べて、往路ブロック13の調整レール27bの調整を可能にしつつ、往路ブロック13と復路ブロック14との間隔を狭くすることができる。とくに、オーブン30の中に、往路レールユニット10と復路レールユニット11とを配する場合に、オーブン30の幅を狭くすることができる。
【0132】
「変形例」
上記した実施形態では、往路ブロック13(往路レールユニット10)と、復路ブロック14(復路レールユニット11)とを別体として構成したが、これに限定されることは無く、例えば、予熱ゾーンZ2から延伸ゾーンZ3に亘る範囲において、往路ブロック13(往路レールユニット10)と、復路ブロック14(復路レールユニット11)とを一体的に構成してもよい。
【0133】
予熱ゾーンZ2から延伸ゾーンZ3に亘る範囲では、ジョイント機構19(調整ベアリング27c)に押圧力を作用させる必要がない。このため、往路ブロック13(往路レールユニット10)と、復路ブロック14(復路レールユニット11)との位置関係は、一定に設定することができる。従って、例えば、上記した固定ブロック16(図3参照)に代えて、往路ブロック13と復路ブロック14とを一体的に成形することができる。この結果、固定ブロック16を不要とした分だけ、シート・フィルム延伸装置の1製造コストを低減させることができる。
【0134】
「変形例」
上記した実施形態では、間隔(ピッチ)調整機構27(例えば、調整ブロック27a、調整レール27b、調整ベアリング27c)を、移動機構20及び往路レールユニット10の中間の部分に配置させたが、これに代えて、当該間隔(ピッチ)調整機構27を、移動機構20及び往路レールユニット10の両外側の部分に配置させてもよい。かくして、例えば、特開昭62−211124号公報に示された延伸装置にも、本変形例と同様の構造を適用することができる。
【0135】
「変形例」
上記した実施形態では、弛緩ゾーンZ5に1つの加熱保温室T8を割り振り、延伸対象物5の把持機構18による幅方向X(或いは、横方向、左右方向)の拘束と搬送方向Y(或いは、縦方向、長手方向)の拘束を同時に緩めたが、幅方向Xの拘束と搬送方向Yの拘束の緩和の開始点、区間については種々変更することができる。
【0136】
例えば、図1に示すように、加熱保温室T8に2つの調整レール調整区間CB1、CB2が、加熱保温室T9に2つの調整レール調整区間CB3、CB4が、加熱保温室T10に1つの調整レール調整区間CB5が設けられている場合を想定する。調整レール調整区間CB1、CB2、CB3、CB4、CB5は上流からこの順にて設けられている。なお、1つの調整レール調整区間は、一組のレールブロック12と往路ブロック13と復路ブロック14にて構成される。
【0137】
弛緩ゾーンZ5を1つの加熱保温室T8として、加熱保温室T8で幅方向Xの拘束の緩和を行い、搬送方向Yの拘束の緩和は、タイミングを遅らせて、調整レール調整区間CB2から行うようにしても良い。
【0138】
弛緩ゾーンZ5を2つの加熱保温室T8、T9とし、冷却ゾーンZ6を1つの加熱保温室T10として、加熱保温室T8で幅方向Xの拘束の緩和を行い、搬送方向Yの拘束の緩和は、加熱保温室T8での幅方向Xの拘束の緩和の後に、加熱保温室T9の調整レール調整区間CB3から行うようにしても良い。
【0139】
弛緩ゾーンZ5を2つの加熱保温室T8、T9とし、冷却ゾーンZ6を1つの加熱保温室T10として、加熱保温室T8、T9で幅方向Xの拘束の緩和を行い、搬送方向Yの拘束の緩和は、加熱保温室T9の調整レール調整区間CB3から行うようにしても良い。
【0140】
その他、弛緩ゾーンZ5を1つの加熱保温室T8または2つの加熱保温室T8、T9として、種々、設定することが可能である。
【符号の説明】
【0141】
1…シート・フィルム延伸装置、2…往路、3…復路、4R…右レール構造体、
4L…左レール構造体、5…延伸対象物、10…往路レールユニット、
11…復路レールユニット、18…把持機構、19…ジョイント機構、20…移動機構、
18p…クリップ、25…走行ユニット、26…転動ユニット、27…間隔調整機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7