【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記低シス−ポリブタジエンゴムの全量を基準とすると、上記低シス−ポリブタジエンゴム中の1,2−構造単位含有量が8重量%〜14重量%である、請求項5または6に記載の組成物。
上記双峰分布における上記低分子量成分は線状重合体であり、上記双峰分布における上記高分子量成分はカップリング重合体である、請求項5〜9のうちいずれか1項に記載の組成物。
芳香族ビニル樹脂の調製方法であって、(i)芳香族ビニル単量体を含む重合性単量体を強化剤含有溶液と混合して、混合物を得る工程と、(ii)上記混合物を重合させる工程と、を含み、
上記強化剤含有溶液は、ブタジエン−スチレン線状共重合体含有溶液および低シス−ポリブタジエンゴム含有溶液を含み、
上記ブタジエン−スチレン線状共重合体含有溶液は、請求項12〜16のうちいずれか1項に記載の方法によって得られるブタジエン−スチレン線状共重合体を含む重合体溶液であり、
上記低シス−ポリブタジエンゴム含有溶液は、以下の工程を含む方法によって調製される低シス−ポリブタジエンゴムを含む重合体溶液である、方法:
(a)アニオン開始反応の条件下にて、アルキルベンゼン中でブタジエンを有機リチウム開始剤に接触させて、開始反応を行わせる工程;
(b)工程(a)の上記開始反応で得られた混合物にブロッキング剤を加え、アニオン重合反応の条件にて、上記ブロッキング剤を含む上記混合物に重合反応を行わせる工程;
(c)上記重合反応で得られた混合物をカップリング剤に接触させることにより、カップリング反応を行わせる工程;
(d)上記カップリング反応で得られた混合物を停止剤に接触させて停止反応を行わせ、低シス−ポリブタジエンゴムを含む重合体溶液を得る工程。
工程(a)において、上記アルキルベンゼンは、メチルベンゼン、エチルベンゼン、およびキシレンからなる群から選択される1種類以上である、請求項19または20に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態のいくつかを詳述する。本明細書において説明されている実施形態は、単に本発明を説明・解釈するために与えられており、本発明に対する何らの限定をも構成していないと見做されるべきであることを理解されたい。
【0013】
本発明において、開示されている範囲の最小値・最大値および全ての数値は、当該開示されている範囲または数値そのもののみに限定されない。当該範囲または数値は、これら範囲または数値に近い値を含むものとして解釈されるべきである。数値範囲について、範囲の最小値・最大値、範囲の最小値・最大値および個々の数値、ならびに、個々の数値を組み合わせることにより1つ以上の新たな数値範囲を得ることができる。この数値範囲も、本明細書において具体的に開示されているものと見做されるべきである。
【0014】
本発明の第1の態様によれば、本発明は、ブタジエン−スチレン線状共重合体を提供する。
【0015】
本発明において、上記ブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は単峰分布である。当該ブタジエン−スチレン線状共重合体の数平均分子量(Mn)は、70,000〜160,000である。当該ブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量分布指数(Mw/Mn、ここで、Mwは重量平均分子量を意味する)は、1.55〜2(好ましくは1.6〜2、より好ましくは1.8〜2)である。
【0016】
本発明において、低シス−ポリブタジエンゴムおよびブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量および分子量分布指数の測定は、ゲル透過クロマトグラフ装置TOSOH HLC-8320を用いたゲル透過クロマトグラフ分析によって行う。上記装置のクロマトグラフカラムには、TSKgel SuperMultiporeHZ-NおよびTSKgel SuperMultiporeHZ標準カラムを用いる。溶媒はクロマトグラフ的に純粋なテトラヒドロフラン(THF)とし、狭分布ポリスチレンを標準サンプルとして用いる。重合体サンプルは、1mg/mLのTHF溶液に調製し、当該サンプルの注入量は10.00μL、流速は0.35mL/分、試験温度は40.0℃とする。
【0017】
本発明のブタジエン−スチレン線状共重合体では、当該ブタジエン−スチレン線状共重合体の全量を基準とすると、スチレン構造単位の含有量は、10重量%〜45重量%であってもよく、好ましくは15〜43重量%であり;ブタジエン構造単位の含有量は、55重量%〜90重量%であってもよく、好ましくは57〜85重量%である。
【0018】
本発明において、「スチレン構造単位」という用語は、スチレン単量体を重合させることによって形成される構造単位を指す。「ブタジエン構造単位」という用語は、ブタジエン単量体を重合させることによって形成される構造単位を指す。本発明において、スチレン構造単位およびブタジエン構造単位の含有量は、
1H−NMR分析によって測定する。当該試験において、使用する溶媒は重水素化クロロホルムであり、テトラメチルシランを内部標準物質として用いる。
【0019】
本発明のブタジエン−スチレン線状共重合体では、当該ブタジエン−スチレン線状共重合体の全量を基準とすると、1,2−構造単位の含有量は、8〜14重量%であってもよく、好ましくは10〜13.5重量%である。
【0020】
本発明のブタジエン−スチレン線状共重合体では、当該ブタジエン−スチレン線状共重合体のムーニー粘度は50〜150であってもよく、好ましくは50〜140であり、より好ましくは50〜135である。
【0021】
本発明において、ムーニー粘度は、ムーニー粘度計SHIMADZU SMV-201 SK-160を用い、中国国家標準GB/T1232−92において規定されている方法に従って測定する。試験方法はML(1+4)とし、試験温度は100℃とする。
【0022】
本発明のブタジエン−スチレン線状共重合体では、当該ブタジエン−スチレン線状共重合体のゲル含有量は、20重量ppm未満、好ましくは15重量ppm以下、より好ましくは10重量ppm以下である。
【0023】
本発明において、ゲル含有量の測定には、重量法を用いる。具体的な工程は以下の通りである:重合体サンプルをスチレンに加え、振盪機内で25℃にて16時間振盪させる。これにより、可溶性物質を完全に溶解させ、重合体含有量が5重量%のスチレン溶液を得る(ゴム試料の質量をC(g)とする);汚れのない360メッシュのニッケル篩を計重し、この質量をB(g)とする;次いで、上記溶液を上記ニッケル篩にて濾過し、濾過後、上記ニッケル篩をスチレンで洗浄する;上記ニッケル篩を標準圧力にて150℃で30分間乾燥させた後、計重し、この質量をA(g)とする;ゲル含有量を、下記式により算出する。
ゲル含有量%=[(A−B)/C]×100%。
【0024】
好ましい実施形態において、本発明のブタジエン−スチレン線状共重合体では、当該ブタジエン−スチレン線状共重合体の数平均分子量は70,000〜150,000であり、好ましくは75,000〜140,000である。当該ブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量分布指数は1.6〜2であり、好ましくは1.8〜1.95である。当該ブタジエン−スチレン線状共重合体の全量を基準とすると、スチレン構造単位の含有量は、12〜40重量%であってもよく、好ましくは15〜35重量%であり;ブタジエン構造単位の含有量は、60〜88重量%であってもよく、好ましくは65〜85重量%である。この好ましい実施形態において、当該ブタジエン−スチレン線状共重合体のムーニー粘度は50〜145であり、好ましくは50〜135である。本実施形態のブタジエン−スチレン線状共重合体は、ABS樹脂の強化剤として特に好適である。
【0025】
他の好ましい実施形態において、本発明のブタジエン−スチレン線状共重合体では、当該ブタジエン−スチレン線状共重合体の数平均分子量は90,000〜160,000であり、好ましくは10,000〜160,000である。当該ブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量分布指数は1.6〜2であり、好ましくは1.8〜2である。当該ブタジエン−スチレン線状共重合体の全量を基準とすると、スチレン構造単位の含有量は、12〜45重量%であってもよく、好ましくは15〜42重量%であり;ブタジエン構造単位の含有量は、55〜88重量%であってもよく、好ましくは58〜85重量%である。この好ましい実施形態において、当該ブタジエン−スチレン線状共重合体のムーニー粘度は80〜140であり、好ましくは90〜130であり、より好ましくは100〜135である。本実施形態に係るブタジエン−スチレン線状共重合体は、耐衝撃性ポリスチレンの強化剤として特に好適である。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、ブタジエン−スチレン線状共重合体および低シス−ポリブタジエンゴムを含有する組成物であって、当該ブタジエン−スチレン線状共重合体が本発明の第1の態様に係るブタジエン−スチレン線状共重合体である、組成物を提供する。
【0027】
本発明の組成物では、上記低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は双峰分布である。上記双峰分布における低分子量成分は、数平均分子量が42,000〜90,000、かつ分子量分布指数が1.55〜2(好ましくは1.7〜2)である。上記双峰分布における高分子量成分は、数平均分子量が120,000〜280,000、かつ分子量分布指数が1.55〜2(好ましくは1.7〜2)である。上記低シス−ポリブタジエンゴムの全量を基準とすると、上記高分子量成分の含有量が60重量%〜95重量%である。
【0028】
上記低シス−ポリブタジエンゴムに関して、上記双峰分布における上記低分子量成分は線状重合体(カップリングされていない重合体)であり、上記双峰分布における上記高分子量成分はカップリング重合体(星状枝分れ重合体)である。カップリング重合体は、カップリング中心と、当該カップリング中心に結合した直鎖とを有する。当該直鎖は、線状重合体に由来するものである。本発明によれば、上記低シス−ポリブタジエンゴムは、カップリング剤を用いて線状重合体をカップリングさせることによって得ることができ、得られる生成物は、カップリングされていない重合体(低分子量成分)およびカップリング重合体(高分子量成分)を含有する。
【0029】
上記低シス−ポリブタジエンゴムに関して、当該低シス−ポリブタジエンゴムの分子量分布指数は1.9〜2.5である。
【0030】
本発明において、上記低シス−ポリブタジエンゴムの分子量分布指数は、ゴムの合計分子量の分布指数である。つまり、上記分子量分布指数は、2つのピークを基準に算出する。上記双峰分布における高分子量成分の分子量分布指数とは、当該高分子量成分の溶出ピークを基準に算出される分子量分布指数を指す。上記双峰分布における低分子量成分の分子量分布指数とは、当該低分子量成分の溶出ピークを基準に算出される分子量分布指数を指す。高分子量成分の含有量とは、2つのピークの総面積に対する、高分子量成分の溶出ピークの面積の割合を指す。
【0031】
上記低シス−ポリブタジエンゴムに関して、当該低シス−ポリブタジエンゴムの全量を基準とすると、当該低シス−ポリブタジエンゴム中の1,2−構造単位含有量は、8重量%〜14重量%であってもよく;当該低シス−ポリブタジエンゴムのシス−1,4−構造単位含有量は、30重量%〜40重量%である。
【0032】
本発明において、「1,2−構造単位」という用語は、ブタジエンの1,2−重合において形成される構造単位を指す。1,2−構造単位の含有量は、ビニル基含有量としても知られる。「シス−1,4−構造単位」という用語は、ブタジエンの1,4−重合において形成される構造単位を指し、シス配列を有するものである。つまり、以下の式Iに示す構造単位である。
【0034】
本発明において、1,2−構造単位およびシス−1,4−構造単位の含有量は、
13C−NMRを用いて測定する。当該試験において、溶媒は重水素化クロロホルムであり、テトラメチルシランを内部標準物質として用いる。
【0035】
本発明において、本発明の上記低シス−ポリブタジエンゴムのムーニー粘度は30〜70、好ましくは40〜70、より好ましくは45〜70である。
【0036】
本発明において、上記低シス−ポリブタジエンゴムのゲル含有量は、20重量ppm未満、好ましくは15重量ppm以下、より好ましくは10重量ppm以下である。
【0037】
本発明において、好ましい実施形態では、上記双峰分布における低分子量成分は、数平均分子量が45,000〜75,000、かつ分子量分布指数が1.7〜2である。また、上記双峰分布における高分子量成分は、数平均分子量が140,000〜190,000、かつ分子量分布指数が1.7〜2である。上記低シス−ポリブタジエンゴムの全量を基準とすると、上記高分子量成分の含有量は70〜95重量%である。この好ましい実施形態によれば、上記低シス−ポリブタジエンゴムのムーニー粘度は40〜65、好ましくは45〜60である。この好ましい実施形態に係る低シス−ポリブタジエンゴムは、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)の強化剤として特に好適である。
【0038】
本発明において、他の好ましい実施形態では、上記双峰分布における低分子量成分は、数平均分子量が50,000〜90,000、かつ分子量分布指数が1.7〜2である。また、上記双峰分布における高分子量成分は、数平均分子量が150,000〜270,000(好ましくは160,000〜260,000)、かつ分子量分布指数が1.7〜2(好ましくは1.8〜2)である。上記低シス−ポリブタジエンゴムの全量を基準とすると、上記高分子量成分の含有量は60〜95重量%であり、好ましくは65〜95重量%である。この好ましい実施形態によれば、上記低シス−ポリブタジエンゴムのムーニー粘度は45〜70であり、好ましくは50〜70である。この好ましい実施形態に係る上記低シス−ポリブタジエンゴムは、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS樹脂)の強化剤として特に好適である。
【0039】
本発明の組成物では、上記低シス−ポリブタジエンゴムの上記ブタジエン−スチレン線状共重合体に対する重量比は、(0.3〜6):1であってもよい。上記低シス−ポリブタジエンゴムの上記ブタジエン−スチレン線状共重合体に対する重量比が上記範囲内であれば、上記組成物は、芳香族ビニル樹脂の強化剤として特に好適である。上記低シス−ポリブタジエンゴムと上記ブタジエン−スチレン線状共重合体との重量比は、好ましくは(0.3〜6):1、好ましくは(0.4〜4):1、さらに好ましくは(0.45〜3):1、より好ましくは(0.5〜2):1である。
【0040】
好ましい実施形態において、上記低シス−ポリブタジエンゴムと上記ブタジエン−スチレン線状共重合体との重量比は、(0.6〜3):1であり、好ましくは(0.8〜2):1であり、より好ましくは(1〜1.5):1である。この好ましい実施形態に係る組成物は、ABS樹脂の強化剤として特に好適である。
【0041】
他の好ましい実施形態において、上記低シス−ポリブタジエンゴムと上記ブタジエン−スチレン線状共重合体との重量比は、(0.4〜3):1であり、好ましくは(0.45〜2):1であり、より好ましくは(0.5〜1.5):1である。この好ましい実施形態に係る組成物は、耐衝撃性ポリスチレンの強化剤として特に好適である。
【0042】
本発明の第3の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様に係るブタジエン−スチレン線状共重合体を調製する方法であって、
(1)アニオン開始反応の条件下にて、アルキルベンゼン中でブタジエンおよびスチレンを有機リチウム開始剤に接触させて、開始反応を行わせる工程と、
(2)工程(1)の上記開始反応で得られた混合物にブロッキング剤を加え、アニオン重合反応の条件にて、上記ブロッキング剤を含む上記混合物に重合反応を行わせる工程と、
(3)上記重合反応で得られた混合物を停止剤に接触させて停止反応を行わせ、上記ブタジエン−スチレン線状共重合体を含む重合体溶液を得る工程と、
を含む、方法を提供する。
【0043】
工程(1)において、上記アルキルベンゼンは、重合溶媒として使用する。当該アルキルベンゼンは、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、およびトリアルキルベンゼンのうち1種類以上であってもよい。具体的には、上記アルキルベンゼンは、式IIで表される化合物から選択することができる。
【0045】
式中、R
1およびR
2は、同一または異なって、水素原子またはC
1〜C
5アルキル基(例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソ−アミル基、tert−アミル基、またはネオ−アミル基)からそれぞれ独立に選択される。さらに、R
1およびR
2は、同時に水素原子とはならない。
【0046】
上記アルキルベンゼンは、好ましくは、トルエン、エチルベンゼン、およびジメチルベンゼンからなる群から選択される1種類以上である。上記アルキルベンゼンは、より好ましくは、エチルベンゼンである。
【0047】
工程(1)において、上記アルキルベンゼンは、重合溶媒として用いられる。上記アルキルベンゼンの量は、当該アルキルベンゼン中のブタジエンおよびスチレンの合計濃度を5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、特に好ましくは30重量%以上にする量であり得る。上記アルキルベンゼンの量は、当該アルキルベンゼン中のブタジエンおよびスチレンの合計濃度を70重量%以下、好ましくは65重量%以下、より好ましくは60重量%以下にする量であり得る。当該アルキルベンゼン中のブタジエンおよびスチレンの合計濃度は、好ましくは30〜60重量%であり、さらに好ましくは35〜55重量%であり、より好ましくは40〜55重量%である。上記の単量体濃度にて行われる重合によって得られるブタジエン−スチレン線状共重合体を含む重合体溶液は、溶媒を除去することなく、バルク重合のために芳香族ビニル樹脂の重合性単量体に直接混合して、芳香族ビニル樹脂(ABS樹脂およびHIPS樹脂等)を調製することができる。
【0048】
工程(1)において、スチレンおよびブタジエンの量は、所望のブタジエン−スチレン線状共重合体に応じて選択し得る。スチレンおよびブタジエンの合計量を基準とすると、スチレンの含有量は、10〜45重量%であってもよく、好ましくは15〜43重量%であり;ブタジエンの含有量は、55〜90重量%であってもよく、好ましくは57〜85重量%である。
【0049】
好ましい実施形態において、スチレンおよびブタジエンの合計量を基準とすると、スチレンの含有量は、12〜40重量%であってもよく、好ましくは15〜35重量%であり;ブタジエンの含有量は、60〜88重量%であってもよく、好ましくは65〜85重量%である。本実施形態によって得られる、ブタジエン−スチレン線状共重合体を含む重合体溶液は、ABS樹脂の強化剤として特に好適である。
【0050】
他の好ましい実施形態において、スチレンおよびブタジエンの合計量を基準とすると、スチレンの含有量は、12〜45重量%であってもよく、好ましくは15〜42重量%であり;ブタジエンの含有量は、55〜88重量%であってもよく、好ましくは58〜85重量%である。本実施形態によって得られる、ブタジエン−スチレン線状共重合体を含む重合体溶液は、耐衝撃性ポリスチレンの強化剤として特に好適である。
【0051】
工程(1)においては、開始反応を利用してスチレンおよびブタジエンを有機リチウム開始剤と接触反応させ、オリゴマー化させる。これにより、活性末端基を有するオリゴマー(例えば、活性末端基を有し、分子量が100〜200であるオリゴマー)を得る。通常、上記開始反応は、10〜50℃、好ましくは25〜40℃、より好ましくは30〜40℃にて行われ得る。上記開始反応の時間は、1〜8分間であってもよく、好ましくは1〜5分間、好ましくは2〜4.5分間、より好ましくは3〜4分間である。
【0052】
工程(1)において、上記有機リチウム開始剤は、アニオン重合の分野における、任意の一般的な有機リチウム開始剤であってよい。当該有機リチウム開始剤は、スチレンおよびブタジエンの重合を開始させることができる。当該有機リチウム開始剤は、好ましくは、有機モノ−リチウム化合物であり、より好ましくは、式IIIで表される化合物である。
R
3Li 式III
式中、R
3は、C
1〜C
10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソ−アミル基、tert−アミル基、ネオ−アミル基、ヘキシル基(その各種異性体を含む)、ヘプチル基(その各種異性体を含む)、オクチル基(その各種異性体を含む)、ノニル基(その各種異性体を含む)、またはデシル基(その各種異性体を含む))である。
【0053】
上記有機リチウム開始剤の具体例としては、リチウムエチド、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、およびイソブチルリチウムからなる群から選択される1種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
上記有機リチウム開始剤は、好ましくは、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、およびtert−ブチルリチウムからなる群から選択される1種類以上である。上記有機リチウム開始剤は、より好ましくは、n−ブチルリチウムである。
【0055】
上記有機リチウム開始剤の量は、所望の重合体の分子量に応じて選択し得る。上記有機リチウム開始剤の量は、好ましくは、工程(2)における重合反応で得られる重合体の数平均分子量を、70,000〜160,000にする量である。好ましい実施形態において、上記有機リチウム開始剤の量は、工程(2)における重合反応で得られる重合体の数平均分子量を、70,000〜150,000(好ましくは75,000〜140,000)にする量である。この実施形態におけるブタジエン−スチレン線状共重合体を含む重合体溶液は、ABS樹脂の強化剤として特に好適である。他の好ましい実施形態において、上記有機リチウム開始剤の量は、工程(2)における重合反応で得られる重合体の数平均分子量を、90,000〜160,000(好ましくは100,000〜160,000)にする量である。この好ましい実施形態におけるブタジエン−スチレン線状共重合体を含む重合体溶液は、耐衝撃性ポリスチレンの強化剤として特に好適である。
【0056】
所望の重合体の分子量に応じて開始剤の量を決定する方法は、当業者にとって周知であるため、本開示においては詳細な説明を省略する。
【0057】
工程(1)において、上記有機リチウム開始剤は、溶液の形で重合系に加える。上記有機リチウム開始剤の溶液における溶媒は、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、およびヘプタンのうち1種類以上であってもよい。上記溶液の濃度は、好ましくは0.5〜2mol/L、より好ましくは0.8〜1.5mol/Lである。
【0058】
工程(2)においては、開始反応で得られる混合物にブロッキング剤を加えて、重合反応を行わせる。当該ブロッキング剤は、金属アルキル化合物のうち1種類以上から選択され、好ましくは、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、および有機亜鉛化合物からなる群から選択される1種類以上である。
【0059】
上記有機アルミニウム化合物は、式IVで表される化合物のうち1種類以上であってもよい。
【0061】
式中、R
4、R
5、およびR
6は、同一または異なって、C
1〜C
8アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソ−アミル基、tert−アミル基、ネオ−アミル基、ヘキシル基(その各種異性体を含む)、ヘプチル基(その各種異性体を含む)、またはオクチル基(その各種異性体を含む))からそれぞれ独立に選択される。
【0062】
上記有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリ−エチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−イソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、およびトリ−イソ−ブチルアルミニウムからなる群から選択される1種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。上記有機アルミニウム化合物は、好ましくは、トリ−エチルアルミニウムおよび/またはトリ−イソ−ブチルアルミニウムから選択される。
【0063】
上記有機マグネシウム化合物は、式Vで表される化合物のうち1種類以上であってもよい。
【0065】
式中、R
7およびR
8は、同一または異なって、C
1〜C
8アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソ−アミル基、tert−アミル基、ネオ−アミル基、ヘキシル基(その各種異性体を含む)、ヘプチル基(その各種異性体を含む)、またはオクチル基(その各種異性体を含む))からそれぞれ独立に選択される。
【0066】
上記有機マグネシウム化合物の具体例としては、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−sec−ブチルマグネシウム、ジ−イソブチルマグネシウム、ジ−tert−ブチルマグネシウム、およびn−ブチル−sec−ブチルマグネシウムからなる群から選択される1種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。上記有機マグネシウム化合物は、好ましくは、n−ブチル−sec−ブチルマグネシウムである。
【0067】
上記有機亜鉛化合物は、式VIで表される化合物であってもよい。
【0069】
式中、R
9およびR
10は、同一または異なって、C
1〜C
8アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソ−アミル基、tert−アミル基、ネオ−アミル基、ヘキシル基(その各種異性体を含む)、ヘプチル基(その各種異性体を含む)、またはオクチル基(その各種異性体を含む))からそれぞれ独立に選択される。
【0070】
上記有機亜鉛化合物の具体例としては、ジエチル亜鉛、ジプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジ−sec−ブチル亜鉛、ジ−イソブチル亜鉛、およびジ−tert‐ブチル亜鉛からなる群から選択される1種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。上記有機亜鉛化合物は、好ましくは、ジエチル亜鉛および/またはジ−n−ブチル亜鉛から選択される。
【0071】
上記ブロッキング剤は、好ましくは、有機アルミニウム化合物および/または有機マグネシウム化合物である。上記ブロッキング剤は、より好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム、およびn−ブチル−sec−ブチルマグネシウムからなる群から選択される1種類以上である。
【0072】
上記ブロッキング剤の量は、当該ブロッキング剤の種類に応じて選択し得る。
【0073】
一実施形態において、上記ブロッキング剤は有機アルミニウム化合物である。当該有機アルミニウム化合物と上記有機リチウム開始剤とのモル比は、(0.6〜0.95):1であってもよく、好ましくは(0.7〜0.9):1である。上記有機アルミニウム化合物はアルミニウム元素換算であり、上記有機リチウム開始剤はリチウム元素換算である。
【0074】
他の実施形態において、上記ブロッキング剤は有機マグネシウム化合物である。当該有機マグネシウム化合物と上記有機リチウム開始剤とのモル比は、(1〜6):1であってもよく、好ましくは(2〜4):1である。上記有機マグネシウム化合物はマグネシウム元素換算であり、上記有機リチウム開始剤はリチウム元素換算である。
【0075】
他の実施形態において、上記ブロッキング剤は有機アルミニウム化合物と有機マグネシウム化合物との組み合わせである。当該有機マグネシウム化合物対当該有機マグネシウム化合物対上記有機リチウム開始剤のモル比は、(0.5〜2):(1〜5):1であってもよく、好ましくは(0.8〜1):(1.5〜3):1である。上記有機アルミニウム化合物はアルミニウム元素換算であり、上記有機マグネシウム化合物はマグネシウム元素換算であり、上記有機リチウム開始剤はリチウム元素換算である。
【0076】
他の実施形態において、上記ブロッキング剤は有機亜鉛化合物である。当該有機亜鉛化合物の上記有機リチウム開始剤に対するモル比は、(1〜6):1であってもよく、好ましくは(2〜4):1である。上記有機亜鉛化合物は亜鉛元素換算であり、上記有機リチウム開始剤はリチウム元素換算である。
【0077】
工程(2)において、上記重合反応は、従来のアニオン重合反応の条件下で行うことができる。通常、上記重合反応の条件としては、温度:50〜140℃、好ましくは70〜130℃、より好ましくは80〜120℃;および、時間:60〜150分間、好ましくは70〜120分間、が挙げられる。
【0078】
工程(3)においては、上記重合反応で得た混合物に停止剤を加えて、活性鎖を不活性化する。上記停止剤は、C
1〜C
4アルコール、有機酸、および二酸化炭素からなる群から選択される1種類以上であってもよく、好ましくは、イソプロパノール、ゲオセリン酸(geoceric acid)、クエン酸、および二酸化炭素からなる群から選択される1種類以上であり、より好ましくは二酸化炭素である。
【0079】
好ましい実施形態において、工程(3)は、工程(2)における重合反応で得た混合物を、二酸化炭素と接触反応させる工程を含む。二酸化炭素は、停止反応を行わせるために用いられる。二酸化炭素は、上記重合系において、金属イオン(Li、Mg、Al、Zn、およびFe)と共に炭酸塩を形成することができる。そのため、金属イオンの発色反応を避けられ、調製される重合体生成物の色度を抑えられる。上記二酸化炭素を、気体の形で上記重合系に注入してもよい。例えば、上記重合反応で得た混合物に、0.2〜1MPa(ゲージ圧)、好ましくは0.3〜0.6MPa(ゲージ圧)の二酸化炭素ガスを注入する。また、上記二酸化炭素を、上記重合反応で得た混合物に、ドライアイスの水溶液の形で導入してもよい。例えば、上記重合反応で得た混合物に、0.5〜2mol/Lのドライアイス水溶液を導入する。
【0080】
本実施形態において、停止反応の条件としては、温度:50〜80℃;時間:10〜40分間、が挙げられる。
【0081】
本発明におけるブタジエン−スチレン線状共重合体の調製方法によれば、工程(3)における停止反応で得られる重合体溶液を、溶媒除去処理を行うことなく、直接に生産物とすることができ、あるいは後続の製造工程において直接に使用することができる。例えば、当該重合体溶液をそのまま用いて、バルク重合工程で調製される芳香族ビニル樹脂の強化剤を調製してもよい。また、特定の条件下においては、工程(3)における停止反応で得られる上記重合体溶液を処理して、溶媒除去を行うこともできる。例えば、蒸発法を用いて溶媒の一部を除去することにより、後続の製造工程に必要な条件を満たすようにする。工程(3)における停止反応で得られる上記重合体溶液は、常法(例えば、凝固)による処理で溶媒を除去してもよい。その後、押出機(例えば、二軸スクリュー押出機)で押し出してペレット化し、対応する重合体の粒子を得る。
【0082】
本発明におけるブタジエン−スチレン線状共重合体の調製方法では、アルキルベンゼンを重合溶媒として用い、さらに重合反応中にブロッキング剤を導入することで、調製されるブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量分布の範囲を効果的に広くすることができる。本発明の調製方法で得られるブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量分布指数は、通常、1.55〜2であり、好ましくは1.6〜2であり、より好ましくは1.8〜2である。さらに、本発明における低シス−ポリブタジエンゴムの調製方法は、調製される重合体のゲル含有量を大幅に減らすことができる。例えば、上記ブタジエン−スチレン線状共重合体のゲル含有量は、20重量ppm未満であり、好ましくは15重量ppm以下であり、より好ましくは10重量ppm以下である。本発明に係る方法によって調製されるブタジエン−スチレン線状共重合体は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)および耐衝撃性ポリスチレン(HIPS樹脂)の強化剤として、特に好適である。
【0083】
本発明の第4の態様によれば、本発明は、芳香族ビニル単量体由来の構造単位および強化剤由来の構造単位を有する芳香族ビニル樹脂であって、上記強化剤が、本発明の第2の態様に係る組成物である、芳香族ビニル樹脂を提供する。
【0084】
本発明において、「芳香族ビニル単量体由来の構造単位」という用語は、芳香族ビニル単量体によって形成される構造単位を指す。当該構造単位と当該芳香族ビニル単量体とは、電子構造に何らかの違いがある以外は、同じ種類の原子および同じ原子数を有する。本発明において、「強化剤由来の構造単位」という用語は、強化剤によって形成される構造単位を指す。当該構造単位と当該強化剤とは、電子構造に何らかの違いがある以外は、同じ種類の原子および同じ原子数を有する。
【0085】
芳香族ビニル単量体とは、その分子構造内にアリール基(例えば、フェニル基)およびビニル基の両方を有する単量体を指す。芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、およびビニルナフタレンからなる群から選択される1種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。芳香族ビニル単量体は、好ましくは、スチレンである。
【0086】
上記芳香族ビニル樹脂は、(i)芳香族ビニル単量体由来の構造単位および強化剤由来の構造単位のみを含むものであってもよく、または、(ii)他のビニル単量体由来の他の構造単位をさらに含むものであってもよい。他のビニル単量体の具体例としては、アクリル酸、メチルアクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびマレイン酸からなる群から選択される1種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
好ましい実施形態において、上記芳香族ビニル樹脂は、芳香族ビニル単量体由来の構造単位および強化剤由来の構造単位のみを含むものであってもよい。上記実施形態において好ましい芳香族ビニル樹脂は、耐衝撃性ポリスチレンである。当該耐衝撃性ポリスチレンの全量を基準とすると、上記スチレン構造単位の含有量は、80〜95重量%であってもよく、好ましくは85〜93重量%であり、より好ましくは88〜92重量%であり;上記ブタジエン構造単位の含有量は、5〜20重量%であってもよく、好ましくは7〜15重量であり、より好ましくは8〜12重量%である。上記耐衝撃性ポリスチレンの、重量平均分子量は、150,000〜350,000であってもよく、好ましくは160,000〜320,000であり、より好ましくは170,000〜300,000であり;分子量分布指数は、1.8〜3.8であってもよく、好ましくは2〜3.5であり、より好ましくは2.5〜3.3である。
【0088】
他の好ましい実施形態において、上記芳香族ビニルマトリクス樹脂は、芳香族ビニル単量体由来の構造単位、強化剤由来の構造単位、およびアクリロニトリル由来の構造単位を含む。上記実施形態において好ましい芳香族ビニル樹脂は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体である。当該アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の組成は、常法に則って選択することができる。通常、当該アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の全量を基準とすると、上記ブタジエン構造単位の含有量は、5〜20重量%であってもよく、好ましくは8〜15重量%であり;上記スチレン構造単位の含有量は、55〜75重量%であってもよく、好ましくは60〜72重量%であり;上記アクリロニトリル構造単位(アクリロニトリルによって形成される構造単位)の含有量は、10〜35重量%であってもよく、好ましくは15〜30重量%である。上記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の、重量平均分子量は100,000〜400,000であってもよく、好ましくは150,000〜350,000であり、より好ましくは180,000〜300,000であり;分子量分布指数は、2〜4であってもよく、好ましくは2.2〜3.5であり、より好ましくは2.3〜3である。
【0089】
上記強化剤の総量は、常法に則り選択することができる。好ましくは、芳香族ビニル樹脂の全量を基準とすると、上記強化剤の含有量は、2〜25重量%であってもよく、好ましくは5〜20重量%である。強化剤の量は、芳香族ビニル樹脂の種類に応じて最適化されうる。
【0090】
好ましい実施形態において、上記芳香族ビニル樹脂は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂である。芳香族ビニル樹脂の全量を基準とすると、上記強化剤の好ましい含有量は、5〜20重量%であり、さらに好ましくは6〜15重量%であり、より好ましくは8〜13重量%である。
【0091】
他の好ましい実施形態において、上記芳香族ビニルマトリクス樹脂は、耐衝撃性ポリスチレンである。芳香族ビニル樹脂の全量を基準とすると、上記強化剤の好ましい含有量は、5〜15重量%であり、さらに好ましくは6〜12重量%である。
【0092】
本発明の第5の態様によれば、本発明は、芳香族ビニル樹脂の調製方法であって、(i)芳香族ビニル単量体を含む重合性単量体を強化剤含有溶液と混合して、混合物を得る工程と、(ii)上記混合物を重合させる工程と、を含み、
上記強化剤含有溶液は、ブタジエン−スチレン線状共重合体含有溶液および低シス−ポリブタジエンゴム含有溶液を含み、
上記ブタジエン−スチレン線状共重合体含有溶液は、本発明の第3の態様に係る方法によって得られるブタジエン−スチレン線状共重合体を含む重合体溶液であり、
上記低シス−ポリブタジエンゴム含有溶液は、
(a)アニオン開始反応の条件下にて、アルキルベンゼン中でブタジエンを有機リチウム開始剤に接触させて、開始反応を行わせる工程、
(b)工程(a)の上記開始反応で得られた混合物にブロッキング剤を加え、アニオン重合反応の条件にて、上記ブロッキング剤を含む上記混合物に重合反応を行わせる工程、
(c)上記重合反応で得られた混合物をカップリング剤に接触させることにより、カップリング反応を行わせる工程、
(d)上記カップリング反応で得られた混合物を停止剤に接触させて停止反応を行わせ、低シス−ポリブタジエンゴムを含む重合体溶液を得る工程、
含む方法によって調製される低シス−ポリブタジエンゴムを含む重合体溶液である、方法、を提供する。
【0093】
工程(a)において、上記アルキルベンゼンは、重合溶媒として使用する。当該アルキルベンゼンは、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、およびトリアルキルベンゼンからなる群から選択される1種類以上であってもよい。具体的には、上記アルキルベンゼンは、式IIで表される化合物から選択することができる。
【0095】
式中、R
1およびR
2は、同一または異なって、水素原子またはC
1〜C
5アルキル基(例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソ−アミル基、tert−アミル基、またはネオ−アミル基)からそれぞれ独立に選択される。さらに、R
1およびR
2は、同時に水素原子とはならない。
【0096】
上記アルキルベンゼンは、好ましくは、トルエン、エチルベンゼン、およびジメチルベンゼンからなる群から選択される1種類以上である。上記アルキルベンゼンは、より好ましくは、エチルベンゼンである。
【0097】
工程(a)において、上記アルキルベンゼンは、重合溶媒として用いられる。上記アルキルベンゼンの量は、当該アルキルベンゼン中のブタジエンの濃度を5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、特に好ましくは30重量%以上にする量であり得る。上記アルキルベンゼンの量は、当該アルキルベンゼン中のブタジエンの濃度を70重量%以下、好ましくは65重量%以下、より好ましくは60重量%以下にする量であり得る。当該アルキルベンゼン中のブタジエンの濃度は、好ましくは30〜60重量%であり、さらに好ましくは35〜55重量%であり、より好ましくは40〜55重量%である。上記の単量体濃度にて行われる重合によって得られる低シス−ポリブタジエンゴムを含む重合体溶液は、溶媒を除去することなく、バルク重合のために芳香族ビニル樹脂の重合性単量体に直接混合して、芳香族ビニル樹脂(ABS樹脂およびHIPS樹脂等)を調製することができる。
【0098】
工程(a)においては、開始反応を利用してブタジエンを有機リチウム開始剤と接触反応させ、オリゴマー化させる。これにより、活性末端基を有するオリゴマー(例えば、活性末端基を有し、分子量が100〜200であるオリゴマー)を得る。通常、上記開始反応は、10〜50℃、好ましくは25〜40℃、より好ましくは30〜40℃にて行われ得る。上記開始反応の時間は、1〜8分間であってもよく、好ましくは1〜5分間、好ましくは2〜4.5分間、より好ましくは3〜4分間である。
【0099】
工程(a)において、上記有機リチウム開始剤は、アニオン重合の分野における、任意の一般的な有機リチウム開始剤であってよい。当該有機リチウム開始剤は、ブタジエンの重合を開始させることができる。当該有機リチウム開始剤は、好ましくは、有機モノ−リチウム化合物であり、より好ましくは、式IIIで表される化合物である。
R
3Li 式III
式中、R
3は、C
1〜C
10のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソ−アミル基、tert−アミル基、ネオ−アミル基、ヘキシル基(その各種異性体を含む)、ヘプチル基(その各種異性体を含む)、オクチル基(その各種異性体を含む)、ノニル基(その各種異性体を含む)、またはデシル基(その各種異性体を含む))である。
【0100】
上記有機リチウム開始剤の具体例としては、リチウムエチド、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、およびイソブチルリチウムからなる群から選択される1種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
上記有機リチウム開始剤は、好ましくは、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、およびtert−ブチルリチウムからなる群から選択される1種類以上である。上記有機リチウム開始剤は、より好ましくは、n−ブチルリチウムである。
【0102】
上記有機リチウム開始剤の量は、所望の重合体の分子量に応じて選択し得る。上記有機リチウム開始剤の量は、好ましくは、工程(b)における重合反応で得られる重合体の数平均分子量を、42,000〜90,000にする量である。好ましい実施形態において、上記有機リチウム開始剤の量は、工程(b)における重合反応で得られる重合体の数平均分子量を、45,000〜75,000にする量である。この実施形態における低シス−ポリブタジエンゴムを含む重合体溶液は、ABS樹脂の強化剤として特に好適である。他の好ましい実施形態において、上記有機リチウム開始剤の量は、工程(2)における重合反応で得られる重合体の数平均分子量を、50,000〜90,000にする量である。この好ましい実施形態における低シス−ポリブタジエンゴムを含む重合体溶液は、耐衝撃性ポリスチレンの強化剤として特に好適である。
【0103】
所望の重合体の分子量に応じて開始剤の量を決定する方法は、当業者にとって周知であるため、本開示においては詳細な説明を省略する。
【0104】
工程(a)において、上記有機リチウム開始剤は、溶液の形で重合系に加える。上記有機リチウム開始剤の溶液における溶媒は、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、およびヘプタンのうち1種類以上であってもよい。上記溶液の濃度は、好ましくは0.5〜2mol/L、より好ましくは0.8〜1.5mol/Lである。
【0105】
工程(b)ににおいては、開始反応で得られる混合物にブロッキング剤を加えて、重合反応を行わせる。当該ブロッキング剤は、金属アルキル化合物のうち1種類以上から選択され、好ましくは、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、および有機亜鉛化合物からなる群から選択される1種類以上である。
【0106】
上記有機アルミニウム化合物は、式IVで表される化合物のうち1種類以上であってもよい。
【0108】
式中、R
4、R
5、およびR
6は、同一または異なって、C
1〜C
8アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソ−アミル基、tert−アミル基、ネオ−アミル基、ヘキシル基(その各種異性体を含む)、ヘプチル基(その各種異性体を含む)、またはオクチル基(その各種異性体を含む))からそれぞれ独立に選択される。
【0109】
上記有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリ−エチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−イソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、およびトリ−イソ−ブチルアルミニウムからなる群から選択される1種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。上記有機アルミニウム化合物は、好ましくは、トリ−エチルアルミニウムおよび/またはトリ−イソ−ブチルアルミニウムから選択される。
【0110】
上記有機マグネシウム化合物は、式Vで表される化合物のうち1種類以上であってもよい。
【0112】
式中、R
7およびR
8は、同一または異なって、C
1〜C
8アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソ−アミル基、tert−アミル基、ネオ−アミル基、ヘキシル基(その各種異性体を含む)、ヘプチル基(その各種異性体を含む)、またはオクチル基(その各種異性体を含む))からそれぞれ独立に選択される。
【0113】
上記有機マグネシウム化合物の具体例としては、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−sec−ブチルマグネシウム、ジ−イソブチルマグネシウム、ジ−tert−ブチルマグネシウム、およびn−ブチル−sec−ブチルマグネシウムからなる群から選択される1種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。上記有機マグネシウム化合物は、好ましくは、n−ブチル−sec−ブチルマグネシウムである。
【0114】
上記有機亜鉛化合物は、式VIで表される化合物であってもよい。
【0116】
式中、R
9およびR
10は、同一または異なって、C
1〜C
8アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソ−アミル基、tert−アミル基、ネオ−アミル基、ヘキシル基(その各種異性体を含む)、ヘプチル基(その各種異性体を含む)、またはオクチル基(その各種異性体を含む))からそれぞれ独立に選択される。
【0117】
上記有機亜鉛化合物の具体例としては、ジエチル亜鉛、ジプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジ−sec−ブチル亜鉛、ジ−イソブチル亜鉛、およびジ−tert‐ブチル亜鉛からなる群から選択される1種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。上記有機亜鉛化合物は、好ましくは、ジエチル亜鉛および/またはジ−n−ブチル亜鉛から選択される。
【0118】
上記ブロッキング剤は、好ましくは、有機アルミニウム化合物および/または有機マグネシウム化合物である。上記ブロッキング剤は、より好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム、およびn−ブチル−sec−ブチルマグネシウムからなる群から選択される1種類以上である。
【0119】
上記ブロッキング剤の量は、当該ブロッキング剤の種類に応じて選択し得る。
【0120】
一実施形態において、上記ブロッキング剤は有機アルミニウム化合物である。当該有機アルミニウム化合物と上記有機リチウム開始剤とのモル比は、(0.6〜0.95):1であってもよく、好ましくは(0.7〜0.9):1である。上記有機アルミニウム化合物はアルミニウム元素換算であり、上記有機リチウム開始剤はリチウム元素換算である。
【0121】
他の実施形態において、上記ブロッキング剤は有機マグネシウム化合物である。当該有機マグネシウム化合物と上記有機リチウム開始剤とのモル比は、(1〜6):1であってもよく、好ましくは(2〜4):1である。上記有機マグネシウム化合物はマグネシウム元素換算であり、上記有機リチウム開始剤はリチウム元素換算である。
【0122】
他の実施形態において、上記ブロッキング剤は有機アルミニウム化合物と有機マグネシウム化合物との組み合わせである。当該有機マグネシウム化合物対当該有機マグネシウム化合物対上記有機リチウム開始剤のモル比は、(0.5〜2):(1〜5):1であってもよく、好ましくは(0.8〜1):(1.5〜3):1である。上記有機アルミニウム化合物はアルミニウム元素換算であり、上記有機マグネシウム化合物はマグネシウム元素換算であり、上記有機リチウム開始剤はリチウム元素換算である。
【0123】
他の実施形態において、上記ブロッキング剤は有機亜鉛化合物である。当該有機亜鉛化合物の上記有機リチウム開始剤に対するモル比は、(1〜6):1であってもよく、好ましくは(2〜4):1である。上記有機亜鉛化合物は亜鉛元素換算であり、上記有機リチウム開始剤はリチウム元素換算である。
【0124】
工程(b)において、上記重合反応は、従来のアニオン重合反応の条件下で行うことができる。通常、上記重合反応の条件としては、温度:50〜140℃、好ましくは70〜130℃、より好ましくは80〜120℃;および、時間:60〜150分間、好ましくは70〜120分間、が挙げられる。
【0125】
工程(c)においては、カップリング剤を用いて、工程(b)における重合反応で得た混合物をカップリングさせ、重合鎖の一部を結合して多腕星状重合体を形成させる。これにより、調製される低シス−ポリブタジエンゴムの分子量が、双峰分布になる。上記カップリング剤の具体例としては、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、1,8−オクタメチレンブロマイド、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メチルアクリリル)プロピルトリメトキシシラン、およびN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。上記カップリング剤は、好ましくは、テトラクロロシランおよび/またはメチルトリクロロシランである。
【0126】
上記カップリング剤の量は、低シス−ポリブタジエンゴム中の、所望の多腕星状重合体の導入量に応じて選択してもよい。好ましくは、上記カップリング剤の量は、最終的に調製される低シス−ポリブタジエンゴムの分子量を双峰分布にする量である。上記双峰分布における高分子量成分(カップリングによって形成される重合体成分)の数平均分子量は、120,000〜280,000である。上記高分子量成分の含有量(カップリング効率とも呼ばれる)は、65〜95重量%である。
【0127】
好ましい実施形態において、上記カップリング剤の量は、最終的に調製される低シス−ポリブタジエンゴムの分子量を双峰分布にする量である。上記双峰分布における高分子量成分の数平均分子量は、140,000〜190,000である。上記高分子量成分の含有量は、70〜95重量%である。本実施形態に係る低シス−ポリブタジエンゴムを含む重合体溶液は、ABS樹脂の強化剤として特に好適である。
【0128】
他の好ましい実施形態において、上記カップリング剤の量は、最終的に調製される低シス−ポリブタジエンゴムの分子量を双峰分布にする量である。上記双峰分布における高分子量成分の数平均分子量は150,000〜270,000、好ましくは160,000〜260,000である。上記高分子量成分の含有量は60〜95重量%、好ましくは65〜95重量%である。本実施形態に係る低シス−ポリブタジエンゴムを含む重合体溶液は、耐衝撃性ポリスチレンの強化剤として特に好適である。
【0129】
カップリング剤の量は、所望のカップリング効率に応じて決定してもよい。通常、カップリング剤の有機リチウム開始剤に対するモル比は、(0.1〜0.5):1であってもよく、好ましくは(0.15〜0.4):1である。上記有機リチウム開始剤とは、工程(a)における開始反応に用いられる有機リチウム開始剤のことを指す。反応系における不純物を除去するために、重合性単量体を加える前に加える有機リチウム開始剤は、これに含まない。上記カップリング剤は、溶液の形で重合系に加えてもよい。上記カップリング剤を溶解するための溶媒は、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、およびヘプタンから選択される1種類以上であってもよい。カップリング剤の濃度は、好ましくは0.05〜1mol/L、好ましくは0.1〜0.5mol/L、より好ましくは0.1〜0.2mol/Lである。
【0130】
工程(c)において、カップリング反応は、従来の条件下で行うことができる。通常、上記カップリング反応の条件としては、温度:50〜100℃、好ましくは60〜80℃;および、時間:20〜150分間、好ましくは30〜120分間、が挙げられる。
【0131】
工程(d)においては、上記カップリング反応で得た混合物に停止剤を加えて、活性鎖を不活性化する。上記停止剤は、C
1〜C
4アルコール、有機酸、および二酸化炭素からなる群から選択される1種類以上であってもよく、好ましくは、イソプロパノール、ゲオセリン酸(geoceric acid)、クエン酸、および二酸化炭素からなる群から選択される1種類以上であり、より好ましくは二酸化炭素である。
【0132】
好ましい実施形態において、工程(d)は、工程(c)におけるカップリング反応で得た混合物を、二酸化炭素と接触反応させる工程を含む。二酸化炭素は、停止反応を行わせるために用いられる。二酸化炭素は、上記重合系において、金属イオン(Li、Mg、Al、Zn、およびFe)と共に炭酸塩を形成することができる。そのため、金属イオンの発色反応を避けられ、調製される重合体生成物の色度を抑えられる。上記二酸化炭素を、気体の形で上記重合系に注入してもよい。例えば、上記カップリング反応で得た混合物に、0.2〜1MPa(ゲージ圧)、好ましくは0.3〜0.6MPa(ゲージ圧)の二酸化炭素ガスを注入する。また、上記二酸化炭素を、上記カップリング反応で得た混合物に、ドライアイスの水溶液の形で導入してもよい。例えば、上記カップリング反応で得た混合物に、0.5〜2mol/Lのドライアイス水溶液を導入する。
【0133】
本実施形態において、停止反応の条件としては、温度:50〜80℃;時間:10〜40分間、が挙げられる。
【0134】
工程(d)における停止反応で得た重合体溶液をそのまま用いて、バルク重合工程で調製される芳香族ビニル樹脂の強化剤を調製してもよい。
【0135】
アルキルベンゼンを重合溶媒として用い、さらに重合反応中にブロッキング剤を導入することで、調製される低シス−ポリブタジエンゴムの分子量の分布範囲を効果的に広くすることができる。本発明で得られる低シス−ポリブタジエンゴムを含む重合体溶液中における、低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布である。上記双峰分布における低分子量成分の分子量分布の範囲は、1.55〜2であってもよく、好ましくは1.7〜2である。上記双峰分布における高分子量成分の分子量分布の範囲は、1.55〜2であってもよく、好ましくは1.7〜2である。さらに、本発明で得られる低シス−ポリブタジエンゴムを含む重合体溶液は、ゲル含有量が低い。当該ゲル含有量は、例えば、20重量ppm未満であり、好ましくは15重量ppm以下であり、より好ましくは10重量ppm以下である。
【0136】
本発明の芳香族ビニル樹脂の調製方法によれば、溶媒除去処理を行うことなく、強化剤を含む重合体溶液をそのまま使用して、芳香族ビニル樹脂を調製することができる。これにより工程経路が短縮され、操業エネルギーの消費量が低減される。さらに上記方法によれば、重合体中のゲル含有量の増加および色度の悪化を、効果的に防止できる。ゲル含有量の増加および色度の悪化は、溶媒除去工程により引き起こされる可能性があり、最終的に調製される芳香族ビニル樹脂の耐衝撃性および光沢度に影響を及ぼす。
【0137】
本発明の芳香族ビニル樹脂の調製方法では、上記低シス−ポリブタジエンゴムの上記ブタジエン−スチレン線状共重合体に対する重量比は、(0.3〜6):1であってもよい。上記低シス−ポリブタジエンゴムの上記ブタジエン−スチレン線状共重合体に対する重量比が上記範囲内であれば、上記組成物は、芳香族ビニル樹脂の強化剤として特に好適である。上記低シス−ポリブタジエンゴムと上記ブタジエン−スチレン線状共重合体との重量比は、好ましくは(0.3〜6):1、好ましくは(0.4〜4):1、好ましくは(0.45〜3):1、より好ましくは(0.5〜2):1である。
【0138】
本発明の芳香族ビニル樹脂の調製方法では、上記芳香族ビニル単量体の具体例として、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、およびビニルナフタレンのうち1種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。上記芳香族ビニル単量体は、好ましくは、スチレンである。
【0139】
上記重合性単量体は、芳香族ビニル単量体に加え、他のビニル単量体を含んでいてもよい。他のビニル単量体の具体例としては、アクリル酸、メチルアクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびマレイン酸からなる群から選択される1種類以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
本発明の芳香族ビニル樹脂調製方法では、重合反応をフリーラジカル重合により行ってもよい。上記フリーラジカル重合に用いるフリーラジカル開始剤の種類は特に限定されず、常法に則り選択することができる。上記フリーラジカル開始剤としては、例えば、熱分解フリーラジカル開始剤のうち1種類以上を挙げることができる。上記フリーラジカル開始剤は、好ましくは、過酸化物開始剤およびアゾジニトリル開始剤のうち1種類以上である。上記フリーラジカル開始剤の具体例としては、過酸化ジベンゾイル、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ペルオキシジカーボネート、過カルボン酸エステル、過酸化アルキル、およびアゾジニトリル化合物(例えば、アゾジイソブチロニトリルおよびアゾ−ビス−イソ−ヘプトニトリルからなる群から選択される1種類以上)が挙げられるが、これらに限定されない。上記フリーラジカル開始剤は、好ましくは、過酸化ジベンゾイル、ジ(o−メチルベンゾイル)ペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、およびtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートからなる群から選択される1種類以上である。
【0141】
上記フリーラジカル開始剤の量は、所望の分子量の芳香族ビニル樹脂を得ることができるよう、常法に則り選択することができる。所望の重合体の分子量に応じて開始剤の量を決定する方法は当業者に周知であるため、本開示においては詳細に説明しない。
【0142】
本発明の芳香族ビニル樹脂調製方法では、重合反応は通常の条件下で行うことができる。上記重合反応の条件には、温度:100〜155℃(例えば100〜150℃);および、時間:4〜12時間(例えば7〜9時間)、が含まれていることがより好ましい。
【0143】
好ましい実施形態において、上記重合反応の条件には、以下が含まれる:まず、100〜110℃にて1〜3時間反応させる;任意構成で、115〜125℃にて1〜3時間(例えば1.5〜2.5時間)反応させる;次いで、130〜140℃にて1〜3時間(例えば1.5〜2.5時間)反応させる;最後に、145〜155℃にて1〜3時間(例えば1.5〜2.5時間)反応させる。上記重合反応の条件には、好ましくは、以下が含まれる:まず105〜110℃にて1〜2時間反応させる;次いで、120〜125℃にて1〜2時間反応させる;その後、130〜135℃にて1〜2時間反応させる;最後に、150〜155℃にて1〜2時間反応させる。
【0144】
以下、本発明をいくつかの実施形態においてさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されない。
【0145】
以下の実施例において、CO
2の圧力はゲージ圧で示す。
【0146】
以下の実施例において、以下の試験方法を用いた。
【0147】
(1)分子量および分子量分布指数:
分子量および分子量分布指数は、ゲル透過クロマトグラフ装置TOSOH HLC-8320を用いて測定した。上記ゲル透過クロマトグラフ装置には、TSKgel SuperMultiporeHZ-NおよびTSKgel SuperMultiporeHZ標準カラムを取り付けた。クロマトグラフ的に純粋なTHFを溶媒として用い、狭分布ポリスチレンを標準サンプルとして用いた。
【0148】
低シス−ポリブタジエンゴムおよびブタジエン−スチレン線状共重合体の、分子量および分子量分布指数の試験方法は、以下の通りである。溶媒はクロマトグラフ的に純粋なTHFとし、狭分布ポリスチレンを標準サンプルとして用いた。重合体サンプルは、1mg/mLのTHF溶液に調製した。サンプルの注入量は10.00μL、流速は0.35mL/分、試験温度は40.0℃とした。
【0149】
低シス−ポリブタジエンゴムの分子量分布指数は、ゴムの合計分子量の分布指数である。つまり、上記分子量分布指数は、2つのピークを基準に算出される。上記双峰分布における高分子量成分の分子量分布指数とは、当該高分子量成分の溶出ピークを基準に算出される分子量分布指数を指す。上記双峰分布における低分子量成分の分子量分布指数とは、当該低分子量成分の溶出ピークを基準に算出される分子量分布指数を指す。高分子量成分の含有量とは、2つのピークの総面積に対する、高分子量成分の溶出ピークの面積の割合を指す。
【0150】
ABS樹脂およびHIPS樹脂の、分子量および分子量分布指数の試験方法は、以下の通りである。ABS樹脂およびHIPS樹脂をトルエンに溶解させ、遠心分離した。上清をエタノールで凝集させた後、該上清をTHFに溶解させ、1mg/mLの溶液に調製した。THFを移動相として用い、試験温度は40℃とした。
【0151】
(2)重合体の微細構造(各構造単位の含有量、1,2−構造単位の含有量およびシス−1,4−構造単位の含有量を含む)
上記含有量は、核磁気共鳴装置AVANCEDRX400MHz(BRUKER製)を用いて測定した。試験においては、重水素化クロロホルムを溶媒として用い、テトラメチルシランを内部標準物質として用いた。
【0152】
(3)ムーニー粘度
ムーニー粘度は、GB/T1232−92において規定される方法に従い、ムーニー粘度計SHIMADZU SMV-201 SK-160を用いて測定した。試験方法はML(1+4)とし、試験温度は100℃とした。
【0153】
(4)ゲル含有量
ゲル含有量は、重量法を用いて測定した。具体的な工程は以下の通りである。重合体サンプルをスチレンに加え、振盪機内で25℃にて16時間振盪させた。これにより、可溶性物質を完全に溶解させ、重合体含有量が5重量%のスチレン溶液を得た(ゴム試料の質量をC(g)とする);汚れのない360メッシュのニッケル篩を計重し、この質量をB(g)とした;次いで、上記溶液を上記ニッケル篩にて濾過し、濾過後、上記ニッケル篩をスチレンで洗浄した;上記ニッケル篩を標準圧力にて150℃で30分間乾燥させた後、計重し、この質量をA(g)とした;ゲル含有量を、下記式により算出した。
ゲル含有量%=[(A−B)/C]×100%。
【0154】
(5)衝撃強さ
ABS樹脂の衝撃強さは、ASTMD256において規定されている、片持ち梁衝撃強さ(単位:J/m)試験法を用いて測定した。使用した試験片の寸法は、63.5mm×12.7mm×6.4mmであった。
【0155】
HIPS樹脂の衝撃強さは、GB/T1843−1996において規定されている、片持ち梁の切欠き付き衝撃強さ(単位:kJ/m
2)試験法を用いて測定した。使用した試験片の寸法は、80mm×10mm×4mmであった。
【0156】
(6)60°光沢度は、ASTM D526(60°)において規定されている方法を用いて測定した。
【0157】
〔実施例1〕
本実施例は、本発明の説明のために提供するものである。
【0158】
(1)275gのエチルベンゼンを225gのブタジエンと混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)5mLを加えながら、3分間反応させた。次いで、トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)4mLを加え、反応液の温度を90℃に昇温させ、当該温度にて混合物を120分間反応させた。四塩化ケイ素のn−ヘキサン溶液(四塩化ケイ素の濃度:0.2mol/L)6.5mLを反応系に加えた後、反応液の温度を80℃に降温させ、当該温度にて混合物を40分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液である低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液A1(重合体の濃度:45重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表1に示す。
【0159】
(2)275gのエチルベンゼン、67.5gのスチレン、および157.5gのブタジエンを混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)1.8mLを加えながら、3分間反応させた。トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)1.5mLを加え、反応液の温度を90℃に昇温させ、当該温度にて混合物を120分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液であるブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液B1(重合体の濃度:45重量%)を得た。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表2に示す。
(3)上記溶液A1および上記溶液B1を1:1の重合比にて混合し、混合溶液である強化剤C1を得た。40gの強化剤C1、140gのスチレン、40gのアクリロニトリル、および0.02gの過酸化ジベンゾイルを混合し、この混合物を105℃にて2時間重合させた。反応液の温度を120℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。反応液の温度を135℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。最後に、反応液の温度を150℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。重合後、反応生成物を真空中で急速蒸発に供することにより未反応の単量体および溶媒を除去し、ABS樹脂P1を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0160】
〔参考例1〕
実施例1の方法の工程(3)において(つまり、ABS樹脂の調製中)、強化剤C1を用いなかった。一方で、重合する単量体および溶媒の量を、スチレン:140g、アクリロニトリル:40g、ブタジエン:16g、エチルベンゼン:22gに調整した。これにより、ABS樹脂R1を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0161】
〔実施例2〕
本実施例は、本発明の説明のために提供するものである。
【0162】
(1)225gのエチルベンゼンを275gのブタジエンと混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)5.2mLを加えながら3分間反応させた。次いで、トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)4.4mLを加え、反応液の温度を90℃に昇温させ、当該温度にて混合物を120分間反応させた。四塩化ケイ素のn−ヘキサン溶液(四塩化ケイ素の濃度:0.2mol/L)5.8mLを反応系に加えた後、反応液の温度を70℃に降温させ、当該温度にて混合物を30分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を20分間維持しながら、0.5MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液である低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液A2(重合体の濃度:55重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表1に示す。
【0163】
(2)225gのエチルベンゼン、69gのスチレン、および206gのブタジエンを混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)2.3mLを加えながら、3分間反応させた。次いで、トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)1.9mLを加え、反応液の温度を90℃に昇温させ、当該温度にて混合物を120分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液であるブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液B2(重合体の濃度:55重量%)を得た。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表2に示す。
【0164】
(3)上記溶液A2および上記溶液B2を1:0.8の重量比にて混合し、混合溶液である強化剤C2を得た。50gの強化剤C2、130gのスチレン、50gのアクリロニトリル、および0.03gのジ−o−メチルベンゾイルぺルオキシドを混合し、この混合物を105℃にて2時間重合させた。反応液の温度を120℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。反応液の温度を135℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。最後に、反応液の温度を150℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。重合後、反応生成物を真空中で急速蒸発に供することにより未反応の単量体および溶媒を除去し、ABS樹脂P2を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0165】
〔実施例3〕
本実施例は、本発明の説明のために提供するものである。
【0166】
(1)250gのエチルベンゼンを250gのブタジエンと混合した。この混合物に、30℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)4.2mLを加えながら、4分間反応させた。次いで、トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)3.6mLを加え、反応液の温度を80℃に昇温させ、当該温度にて混合物を100分間反応させた。四塩化ケイ素のn−ヘキサン溶液(四塩化ケイ素の濃度:0.2mol/L)3.8mLを反応系に加えた後、反応液の温度を80℃に降温させ、当該温度にて混合物を30分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を13分間維持しながら、0.4MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液である低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液A3(重合体の濃度:50重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表1に示す。
【0167】
(2)250gのエチルベンゼン、50gのスチレン、および200gのブタジエンを混合した。この混合物に、35℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)1.8mLを加えながら、5分間反応させた。次いで、トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)1.5mLを加え、反応液の温度を80℃に昇温させ、当該温度にて混合物を110分間反応させた。最後に、反応液の温度を70℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液であるブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液B3(重合体の濃度:50重量%)を得た。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表2に示す。
【0168】
(3)上記溶液A3および上記溶液B3を1:1の重量比にて混合し、混合溶液である強化剤C3を得た。40gの強化剤C3、120gのスチレン、50gのアクリロニトリル、および0.02gの過酸化ジベンゾイルを混合し、この混合物を105℃にて1.5時間重合させた。反応液の温度を125℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。反応液の温度を135℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。最後に、反応液の温度を155℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。重合後、反応生成物を真空中で急速蒸発に供することにより未反応の単量体および溶媒を除去し、ABS樹脂P3を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0169】
〔実施例4〕
本実施例は、本発明の説明のために提供するものである。
【0170】
(1)250gのエチルベンゼンを250gのブタジエンと混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)3.7mLを加えながら、3分間反応させた。次いで、トリ−エチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−エチルアルミニウムの濃度:1mol/L)3mLを加え、反応液の温度を90℃に昇温させ、当該温度にて混合物を120分間反応させた。メチルトリクロロシランのn−ヘキサン溶液(メチルトリクロロシランの濃度:0.2mol/L)7mLを反応系に加えた後、反応液の温度を80℃に降温させ、当該温度にて混合物を30分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を13分間維持しながら、0.4MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液である低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液A4(重合体の濃度:50重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表1に示す。
【0171】
(2)250gのエチルベンゼン、40gのスチレン、および210gのブタジエンを混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)3.4mLを加えながら、5分間反応させた。トリ−エチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−エチルアルミニウムの濃度:1mol/L)2.7mLを加え、反応液の温度を80℃に昇温させ、当該温度にて混合物を120分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液であるブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液B4(重合体の濃度:50重量%)を得た。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表2に示す。
【0172】
(3)上記溶液Aおよび上記溶液B4を1:1の重量比にて混合し、混合溶液である強化剤C4を得た。40gの強化剤C4、130gのスチレン、50gのアクリロニトリル、および0.03gのtert−ブチルペルオキシベンゾエートを混合し、この混合物を105℃にて2時間重合させた。反応液の温度を120℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。反応液の温度を135℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。最後に、反応液の温度を150℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。重合後、反応生成物を真空中で急速蒸発に供することにより未反応の単量体および溶媒を除去し、ABS樹脂P4を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0173】
〔実施例5〕
本実施例は、本発明の説明のために提供するものである。
【0174】
(1)250gのエチルベンゼンを250gのブタジエンと混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)4.4mLを加えながら、3分間反応させた。次いで、トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)3.5mLを加え、反応液の温度を90℃に昇温させ、当該温度にて混合物を120分間反応させた。四塩化ケイ素のn−ヘキサン溶液(四塩化ケイ素の濃度:0.2mol/L)4.4mLを反応系に加えた後、反応液の温度を80℃に降温させ、当該温度にて混合物を30分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液である低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液A5(重合体の濃度:50重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表1に示す。
【0175】
(2)250gのエチルベンゼン、87.5gのスチレン、および162.5gのブタジエンを混合し、この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)2mLを加えながら、3分間反応させた。トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)1.6mLを加え、反応液の温度を80℃に昇温させ、当該温度にて混合物を120分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液であるブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液B5(重合体の濃度:50重量%)を得た。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表2に示す。
【0176】
(3)上記溶液A5および上記溶液B5を1:1の重量比にて混合し、混合溶液である強化剤C5を得た。40gの強化剤C5、150gのスチレン、40gのアクリロニトリル、および0.02gの過酸化ジベンゾイルを混合し、この混合物を105℃にて2時間重合させた。反応液の温度を120℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。反応液の温度を135℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。最後に、反応液の温度を150℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。重合後、反応生成物を真空中で急速蒸発に供することにより未反応の単量体および溶媒を除去し、ABS樹脂P5を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0177】
〔実施例6〕
本実施例は、本発明の説明のために提供するものである。
【0178】
工程(1)および工程(2)において、停止剤を二酸化炭素からイソプロパノールに置き換えたこと以外は、実施例1の方法と同様にした。つまり、反応系を15分間維持しながら、0.2gのイソプロパノールを反応系に加えた。
【0179】
工程(1)において、低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液A6(重合体の濃度:45重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの性質のパラメータを、表1に示す。
【0180】
工程(2)において、ブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液B6(重合体の濃度:45重量%)を得た。上記ブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、双峰分布であった。この重合体の性質のパラメータを、表2に示す。
【0181】
工程(3)において、ABS樹脂P6を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0182】
〔比較例1〕
工程(3)における強化剤を40gの溶液A1のみにしたこと、および、工程(3)におけるスチレンの量を145gに増加させたこと以外は、実施例1の方法と同様にした。真空中での急速蒸発によって未反応の単量体および溶媒を除去した後、ABS樹脂DP1を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0183】
〔比較例2〕
工程(3)における強化剤を40gの溶液B1のみにしたこと、および、工程(3)のスチレンの量を135gに減少させたこと以外は、実施例1の方法と同様にした。真空中での急速蒸発によって未反応の単量体および溶媒を除去した後、ABS樹脂DP2を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0184】
〔比較例3〕
工程(1)において、四塩化ケイ素を加えずにカップリング反応を行わせたこと以外は、実施例1の方法と同様にした。その結果、低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液DA1(重合体の濃度:45重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は単峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表1に示す。
【0185】
工程(3)において、上記強化剤中のA1をDA1で置き換えることにより、ABS樹脂DP3を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0186】
〔比較例4〕
以下の変更点以外は、実施例1の方法と同様にした。
(i)工程(1)において、275gのエチルベンゼンを225gのブタジエンと混合した。この混合物に、35℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)7.5mLを加えながら、3分間反応させた。
(ii)次いで、トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)6.4mLを加え、反応液の温度を80℃に昇温させ、当該温度にて混合物を120分間反応させた。
(iii)四塩化ケイ素のn−ヘキサン溶液(四塩化ケイ素の濃度:0.2mol/L)9.2mLを反応系に加えた後、反応液の温度を80℃に降温させ、当該温度にて混合物を30分間反応させたこと以外は、実施例1の方法と同様にした。
(iv)最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液である低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液DA2(重合体の濃度:45重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表1に示す。
【0187】
工程(3)において、A1をDA2で置き換えることにより、ABS樹脂DP4を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0188】
〔比較例5〕
以下の変更点以外は、実施例1の方法と同様にした。
(i)工程(1)において、275gのエチルベンゼンを225gのブタジエンと混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)2.7mLを加えながら、4分間反応させた。
(ii)次いで、トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)2.2mLを加え、反応液の温度を90℃に昇温させ、当該温度にて混合物を80分間反応させた。
(iii)四塩化ケイ素のn−ヘキサン溶液(四塩化ケイ素の濃度:0.2mol/L)3.3mLを反応系に加えた後、反応液の温度を80℃に降温させ、当該温度にて混合物を30分間反応させた。
(iv)最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液である低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液DA3(重合体の濃度:45重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表1に示す。
【0189】
工程(3)において、A1をDA3で置き換えることにより、ABS樹脂DP5を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0190】
〔比較例6〕
以下の変更点以外は、実施例1の方法と同様にした。
(i)工程(2)において、275gのエチルベンゼン、67.5gのスチレン、および157.5gのブタジエンを混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)4.7mLを加えながら、3分間反応させた。
(ii)トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)4mLを加え、反応液の温度を80℃に昇温させ、当該温度にて混合物を80分間反応させた。
(iii)最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液であるブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液DB1(重合体の濃度:45重量%)を得た。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表2に示す。
【0191】
工程(3)において、B1をDB1で置き換えることにより、ABS樹脂DP6を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0192】
〔比較例7〕
以下の変更点以外は、実施例1の方法と同様にした。
(i)工程(2)において、275gのエチルベンゼン、67.5gのスチレン、および157.5gのブタジエンを混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)1.3mLを加えながら、4分間反応させた。
(ii)トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)1mLを加え、反応液の温度を90℃に昇温させ、当該温度にて混合物を90分間反応させた。
(iii)最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液であるブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液DB2(重合体の濃度:45重量%)を得た。上記溶液のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表2に示す。
【0193】
工程(3)において、B1をDB2で置き換えることにより、ABS樹脂DP7を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0194】
〔比較例8〕
以下の変更点以外は、実施例1の方法と同様にした。
(i)工程(1)において、重合中に、トリ−イソ−ブチルアルミニウムを用いなかった。重合工程においては、重合速度および重合温度が制御不能であった。
(ii)爆発的な重合が起こり、さらに大量のゲルが発生した。
(iii)重合反応系から上澄みを分離し、低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液DA4(重合体の濃度:45重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、三峰分布であった。このゴムの性質のパラメータを、表1に示す。
【0195】
工程(3)において、A1をDA4で置き換えることにより、ABS樹脂DP8を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0196】
〔比較例9〕
工程(1)において、エチルベンゼンを同量のn−ヘキサンで置き換えたこと以外は、実施例1の方法と同様にした。得られた反応液は、低シス−ポリブタジエンゴムの重合体n−ヘキサン溶液DA5(重合体の濃度:45重量%)であった。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表1に示す。
【0197】
工程(3)において、蒸気凝固法によりDA5の溶媒を除去した。残留物を可塑化装置で乾燥させ、エチルベンゼンに溶解して、45重量%エチルベンゼン溶液を得た。当該45重量%エチルベンゼン溶液によってA1を置き換え、ABS樹脂DP9を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0198】
〔比較例10〕
以下の変更点以外は、実施例1の方法と同様にした。
(i)工程(2)において、重合中に、トリ−イソ−ブチルアルミニウムを用いなかった。重合工程においては、重合速度および重合温度が制御不能であった。
(ii)爆発的な重合が起こり、さらに大量のゲルが発生した。
(iii)重合反応系から上澄みを分離し、ブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液DB3(重合体の濃度:45重量%)を得た。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体は、双峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表2に示す。
【0199】
工程(3)において、B1をDB3で置き換えることにより、ABS樹脂DP10を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0200】
〔比較例11〕
工程(2)において、エチルベンゼンを同量のn−ヘキサンで置き換えたこと以外は、実施例1の方法と同様にした。得られた反応液は、ブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体n−ヘキサン溶液DB4(重合体の濃度:45重量%)であった。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表2に示す。
【0201】
そして、工程(3)において、蒸気凝固法によりDB4の溶媒を除去した。残留物を可塑化装置で乾燥させ、エチルベンゼンに溶解して、45重量%エチルベンゼン溶液を得た。当該45重量%エチルベンゼン溶液によってB1を置き換え、ABS樹脂DP11を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0202】
〔比較例12〕
工程(3)において、A1を比較例8で調製したDA4で置き換え、B1を比較例10で調製したDB3で置き換えたこと以外は、実施例1の方法と同様にした。これにより、ABS樹脂DP12を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0203】
〔比較例13〕
以下の変更点以外は、実施例1の方法と同様にした。
(i)工程(3)において、蒸気凝固法により、DA5およびDB4の溶媒を除去した。
(ii)残留物を可塑化装置で乾燥させ、エチルベンゼンに溶解して、45重量%エチルベンゼン溶液を得た。
(iii)当該45重量%エチルベンゼン溶液によって、A1およびB1を置き換えて、ABS樹脂DP13を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表3に示す。
【0207】
実施例1を比較例1〜7、12、13および参考例1と比較すると、低シス−ポリブタジエンゴムとブタジエン−スチレン線状共重合体との組み合わせを強化剤として用いたABS樹脂の衝撃強さおよび光沢度が、明白に改善していることがわかる。
【0208】
実施例1を比較例8〜11と比較すると、本発明の低シス−ポリブタジエンゴムおよびブタジエン−スチレン線状共重合体の調製方法では、重合工程が十分に制御されており、かつ、調製される重合体のゲル含有量が低いことがわかる。また、低シス−ポリブタジエンゴムとブタジエン−スチレン線状共重合体との組み合わせを強化剤として用いたABS樹脂は、耐衝撃性および光沢度が改善している。また、調製される低シス−ポリブタジエンゴムの重合体溶液および調製されるブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体溶液を、強化剤としてそのまま使用して、フリーラジカル重合反応によってABS樹脂を調製するために、重合性単量体と混合することができる。このとき、上記フリーラジカル重合反応を行わせる前に、溶媒の除去および再溶解が不要である。そのため、in situでABS樹脂を得ることができる。
【0209】
〔実施例7〕
本実施例は、本発明の説明のために提供するものである。
【0210】
(1)300gのエチルベンゼンを200gのブタジエンと混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)を3.7mL加えながら、3分間反応させた。次いで、トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)3.1mLを加え、反応液の温度を100℃に昇温させ、当該温度にて混合物を90分間反応させた。四塩化ケイ素のn−ヘキサン溶液(四塩化ケイ素の濃度:0.2mol/L)4.6mLを反応系に加えた後、反応液の温度を80℃に降温させ、当該温度にて混合物を80分間反応させた。最後に、反応液の温度を70℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液である低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液A7(重合体の濃度:40重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表4に示す。
【0211】
(2)300gのエチルベンゼン、60gのスチレン、および140gのブタジエンを混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)1.6mLを加えながら、3分間反応させた。トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)1.3mLを加え、反応液の温度を90℃に昇温させ、当該温度にて混合物を90分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液であるブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液B7(重合体の濃度:40重量%)を得た。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表5に示す。
【0212】
(3)上記溶液A7および上記溶液B7を1:1の重量比にて混合し、混合溶液である強化剤C7を得た。35gの強化剤C7、150gのスチレン、および0.02gのtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートを混合し、この混合物を300rpmにて撹拌しながら、105℃にて2時間重合させた。反応液の温度を120℃に昇温させ、当該温度にて混合物を2時間重合させた。反応液の温度を135℃に昇温させた後、混合物を100rpmにて撹拌しながら、当該温度にて2時間重合させた。最後に、反応液の温度を150℃に昇温させ、当該温度にて混合物を2時間重合させた。重合後、反応生成物を真空中で急速蒸発に供することにより未反応の単量体および溶媒を除去し、HIPS樹脂P7を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0213】
〔参考例2〕
実施例7の方法の工程(3)において(つまり、HIPS樹脂の調製中)、強化剤C7を用いなかった。一方で、重合する単量体および溶媒の量を、スチレン:150g、ブタジエン:14g、エチルベンゼン:18gに調整した。これにより、HIPS樹脂R2を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0214】
〔実施例8〕
本実施例は、本発明の説明のために提供するものである。
【0215】
(1)275gのエチルベンゼンを225gのブタジエンと混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)2.9mLを加えながら、3分間反応させた。次いで、トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)2.4mLを加え、反応液の温度を100℃に昇温させ、当該温度にて混合物を90分間反応させた。四塩化ケイ素のn−ヘキサン溶液(四塩化ケイ素の濃度:0.2mol/L)2.4mLを反応系に加えた後、反応液の温度を70℃に降温させ、当該温度にて混合物を80分間反応させた。最後に、反応液の温度を70℃に降温させ、当該温度を20分間維持しながら、0.5MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液である低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液A8(重合体の濃度:45重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表4に示す。
【0216】
(2)275gのエチルベンゼン、56.2gのスチレン、および168.8gのブタジエンを混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度;1mol/L)2.6mLを加えながら、3分間反応させた。トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)2.2mLを加え、反応液の温度を100℃に昇温させ、当該温度にて混合物を90分間反応させた。最後に、反応液の温度を70℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液であるブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液B8(重合体の濃度:45重量%)を得た。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表5に示す。
【0217】
(3)上記溶液A8および上記溶液B8を1:2の重量比にて混合し、混合溶液である強化剤C8を得た。40gの強化剤C8、170gのスチレン、および0.02gのtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートを混合し、300rpmにてこの混合物を撹拌しながら、105℃にて2時間重合させた。反応液の温度を120℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。反応液の温度を135℃に昇温させた後、混合物を100rpmで撹拌しながら当該温度にて2時間重合させた。最後に、反応液の温度を150℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。重合後、反応生成物を真空中で急速蒸発に供することにより未反応の単量体および溶媒を除去し、HIPS樹脂P8を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0218】
〔実施例9〕
本実施例は、本発明の説明のために提供するものである。
【0219】
(1)250gのエチルベンゼンを250gのブタジエンと混合した。この混合物に、30℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)5.0mLを加えながら、4分間反応させた。次いで、n−ブチル−sec−ブチルマグネシウムのメチルベンゼン溶液(n−ブチル−sec−ブチルマグネシウムの濃度:1mol/L)10mLを加え、反応液の温度を80℃に昇温させ、当該温度にて混合物を120分間反応させた。四塩化ケイ素のn−ヘキサン溶液(四塩化ケイ素の濃度:0.2mol/L)6mLを反応系に加えた後、反応液の温度を80℃に降温させ、当該温度にて混合物を90分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を13分間維持しながら、0.4MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液である低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液A9(重合体の濃度:50重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表4に示す。
【0220】
(2)250gのエチルベンゼン、50gのスチレン、および200gのブタジエンを混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)1.5mLを加えながら、3分間反応させた。n−ブチル−sec−ブチルマグネシウムのメチルベンゼン溶液(n−ブチル−sec−ブチルマグネシウムの濃度:1mol/L)3mLを加え、反応液の温度を100℃に昇温させ、当該温度にて混合物を90分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液であるブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液B9(重合体の濃度:50重量%)を得た。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表5に示す。
【0221】
(3)上記溶液A9および上記溶液B9を1:0.8の重量比にて混合し、混合溶液である強化剤C9を得た。40gの強化剤C9、170gのスチレン、および0.02の過酸化ジベンゾイルを混合し、この混合物を300rpmにて撹拌しながら、105℃にて2時間重合させた。反応液の温度を120℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。反応液の温度を135℃に昇温させた後、混合物を100rpmで撹拌しながら当該温度にて2時間重合させた。最後に、反応液の温度を150℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。重合後、反応生成物を真空中で急速蒸発に供することにより未反応の単量体および溶媒を除去し、HIPS樹脂P9を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0222】
〔実施例10〕
本実施例は、本発明の説明のために提供するものである。
【0223】
(1)300gのエチルベンゼンを200gのブタジエンと混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)2.4mLを加えながら、4分間反応させた。次いで、トリ−エチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−エチルアルミニウムの濃度:1mol/L)2mLを加え、反応液の温度を100℃に昇温させ、当該温度にて混合物を90分間反応させた。メチルトリクロロシランのn−ヘキサン溶液(メチルトリクロロシランの濃度:0.2mol/L)3.2mLを反応系に加えた後、反応液の温度を80℃に昇温させ、当該温度にて混合物を90分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液である低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液A10(重合体の濃度:40重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表4に示す。
【0224】
(2)300gのエチルベンゼン、30gのスチレン、および170gのブタジエンを混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)1.3mLを加えながら、3分間反応させた。トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)1mLを加え、反応液の温度を90℃に昇温させ、当該温度にて混合物を100分間反応させた。最後に、反応液の温度を70℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液であるブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液B10(重合体の濃度:40重量%)を得た。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表5に示す。
【0225】
(3)上記溶液A10および上記溶液B10を1:1の重量比にて混合し、混合溶液である強化剤C10を得た。35gの強化剤C10、170gのスチレン、および0.02gのtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートを混合し、この混合物を300rpmにて撹拌しながら、105℃にて2時間重合させた。反応液の温度を120℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。反応液の温度を135℃に昇温させた後、混合物を100rpmにて撹拌しながら、当該温度にて2時間重合させた。最後に、反応液の温度を150℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。重合後、反応生成物を真空中で急速蒸発に供することにより未反応の単量体および溶媒を除去し、HIPS樹脂P10を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0226】
〔実施例11〕
本実施例は、本発明の説明のために提供するものである。
【0227】
(1)300gのエチルベンゼンを200gのブタジエンと混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)3.9mLを加えながら、3分間反応させた。次いで、トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)3.1mLを加え、反応液の温度を120℃に昇温させ、当該温度にて混合物を70分間反応させた。四塩化ケイ素のn−ヘキサン溶液(四塩化ケイ素の濃度:0.2mol/L)4.3mLを反応系に加えた後、反応液の温度を80℃に降温させ、当該温度にて混合物を80分間反応させた。最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液である低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液A11(重合体の濃度:40重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量の分布は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表4に示す。
【0228】
(2)300gのエチルベンゼン、80gのスチレン、および120gのブタジエンを混合した。この混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)2.0mLを加えながら、3分間反応させた。トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)1.7mLを加え、反応液の温度を100℃に昇温させ、当該温度にて混合物を90分間反応させた。最後に、反応液の温度を70℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液であるブタジエン−スチレン線上共重合体の重合体エチルベンゼン溶液B11(重合体の濃度:40重量%)を得た。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表5に示す。
【0229】
(3)上記溶液A11および上記溶液B11を1:1の重量比にて混合し、混合溶液である強化剤C11を得た。40gの強化剤C11、170gのスチレン、および、0.02gのtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートを混合し、この混合物を300rpmにて撹拌しながら、105℃にて2時間重合させた。反応液の温度を120℃に昇温させた後、当該温度にて混合物を2時間重合させた。反応液の温度を135℃に昇温させた後、混合物を100rpmにて撹拌しながら、当該温度にて2時間重合させた。最後に、反応液の温度を150℃に昇温させた後、混合物を当該温度にて2時間重合させた。重合後、反応生成物を真空中で急速蒸発に供することにより未反応の単量体および溶媒を除去し、HIPS樹脂P11を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0230】
〔比較例14〕
工程(3)における上記強化剤を溶液A7のみにしたこと、および、工程(3)におけるスチレンの量を160gに増加させたこと以外は、実施例7の方法と同様にした。真空中での急速蒸発によって未反応の単量体および溶媒を除去した後、HIPS樹脂DP14を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0231】
〔比較例15〕
工程(3)における上記強化剤を溶液B7のみにしたこと、および、工程(3)におけるスチレンの量を145gに減少させたこと以外は、実施例7の方法と同様にした。真空中での急速蒸発によって未反応の単量体および溶媒を除去した後、HIPS樹脂DP15を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0232】
〔比較例16〕
工程(1)において、四塩化ケイ素を加えずにカップリング反応を行わせたこと以外は、実施例7の方法と同様にした。これにより、低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液DA6(重合体の濃度:40重量%)を得た。上記低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は単峰分布であった。このゴムの性質のパラメータを、表4に示す。
【0233】
工程(3)において、上記強化剤中のA7をDA7で置き換えることにより、HIPS樹脂DP16を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0234】
〔比較例17〕
以下の変更点以外は、実施例7の方法と同様にした。
(i)工程(1)において、上述の混合物に、40℃にて、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)5.0mLを加えながら5分間反応させた。
(ii)次いで、トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)4.2mLを加え、反応液の温度を100℃に昇温させ、当該温度にて混合物を80分間反応させた。
(iii)四塩化ケイ素のn−ヘキサン溶液(四塩化ケイ素の濃度:0.2mol/L)5.5mLを反応系に加えた後、反応液の温度を70℃に降温させ、当該温度にて混合物を90分間反応させた。
(iv)最後に、反応液の温度を60℃に降温させ、当該温度を15分間維持しながら、0.3MPaの圧力にて反応系に二酸化炭素ガスを導入した。その後、二酸化炭素の導入を停止して、反応液である低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液DA7(重合体の濃度:40重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの特性のパラメータを、表4に示す。
【0235】
工程(3)において、A7をDA7で置き換えることにより、HIPS樹脂DP17を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0236】
〔比較例18〕
工程(1)において、(i)n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)の量を2.2mLとし、(ii)トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)の量を1.9mLとし、かつ、(iii)四塩化ケイ素のn−ヘキサン溶液(四塩化ケイ素の濃度:0.2mol/L)の量を2.2mLとした以外は、実施例7の方法と同様にした。得られた反応液を、低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液DA8(重合体の濃度:40重量%)とした。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの性質のパラメータを、表4に示す。
【0237】
工程(3)において、A7をDA8で置き換えることにより、HIPS樹脂DP18を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0238】
〔比較例19〕
工程(2)において、(i)n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)の量を4mLとし、かつ、(ii)トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)の量を3.5mLとした以外は、実施例7の方法と同様にした。得られた反応液を、ブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液DB5(重合体の濃度:40重量%)とした。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表5に示す。
【0239】
工程(3)において、B7をDB5で置き換えることにより、HIPS樹脂DP19を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0240】
〔比較例20〕
工程(2)において、(i)n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(n−ブチルリチウムの濃度:1mol/L)の量を1.1mLとし、かつ、(ii)トリ−イソ−ブチルアルミニウムのメチルベンゼン溶液(トリ−イソ−ブチルアルミニウムの濃度:1mol/L)の量を0.85mLとした以外は、実施例7の方法と同様にした。得られた反応液を、ブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液DB6(重合体の濃度:40重量%)とした。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。上記重合体の特性のパラメータを、表5に示す。
【0241】
工程(3)において、B1をDB6で置き換えることにより、HIPS樹脂DP20を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0242】
〔比較例21〕
以下の変更点以外は、実施例7の方法と同様にした。
(i)工程(1)において、重合中に、トリ−イソ−ブチルアルミニウムを用いなかった。重合工程においては、重合速度および重合温度が制御不能であった。
(ii)爆発的な重合が起こり、さらに大量のゲルが発生した。
(iii)重合反応系から上澄みを分離し、低シス−ポリブタジエンゴムの重合体エチルベンゼン溶液DA9(重合体の濃度:40重量%)を得た。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、三峰分布であった。このゴムの性質のパラメータを、表4に示す。
【0243】
工程(3)において、A7でDA9と置き換えることにより、HIPS樹脂DP21を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0244】
〔比較例22〕
工程(1)において、エチルベンゼンを同量のn−ヘキサンで置き換えたこと以外は、実施例7の方法と同様にした。得られた反応液を、低シス−ポリブタジエンゴムの重合体n−ヘキサン溶液DA10(重合体の濃度:40重量%)とした。上記溶液中の低シス−ポリブタジエンゴムの分子量は、双峰分布であった。このゴムの性質のパラメータを、表4に示す。
【0245】
工程(3)において、蒸気凝固法によってDA10の溶媒を除去した。残留物を可塑化装置で乾燥させ、エチルベンゼンに溶解して、40重量%エチルベンゼン溶液を得た。当該40重量%エチルベンゼン溶液によってA7を置き換え、HIPS樹脂DP22を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0246】
〔比較例23〕
以下の変更点以外は、実施例7の方法と同様にした。
(i)工程(2)において、重合中、トリ−イソ−ブチルアルミニウムを用いなかった。重合工程においては、重合速度および重合温度が制御不能であった。
(ii)爆発的な重合体が起こり、さらに大量のゲルが発生した。
(iii)重合反応系の上澄みを分離し、ブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体エチルベンゼン溶液DB7(重合体の濃度:40重量%)を得た。上記ブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、双峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表5に示す。
【0247】
工程(3)において、B7をDB7で置き換えることにより、HIPS樹脂DP23を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0248】
〔比較例24〕
工程(2)において、エチルベンゼンを同量のn−ヘキサンで置き換えたこと以外は、実施例7の方法と同様にした。得られた反応液を、ブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体n−ヘキサン溶液DB8(重合体の濃度:40重量%)とした。上記溶液中のブタジエン−スチレン線状共重合体の分子量は、単峰分布であった。この重合体の特性のパラメータを、表5に示す。
【0249】
工程(3)において、蒸気凝固法によってDB8の溶媒を除去した。残留物を可塑化装置で乾燥させ、エチルベンゼンに溶解して、40重量%エチルベンゼン溶液を得た。当該40重量%エチルベンゼン溶液によってB7を置き換え、HIPS樹脂DP24を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0250】
〔比較例25〕
工程(3)において、A7を比較例21において調製したDA9で置き換え、B7を比較例23において調製したDB7で置き換えたこと以外は、実施例7の方法と同様にした。これにより、HIPS樹脂DP25を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0251】
〔比較例26〕
以下の変更点以外は、実施例7の方法と同様にした。
(i)工程(3)において、比較例22において調製したDA10の溶媒、および比較例24において調製したDB8の溶媒を蒸気凝固法によって除去した。
(ii)可塑化装置で乾燥させ、さらにエチルベンゼンに溶解して、40重量%エチルベンゼン溶液を得た。当該40重量%エチルベンゼン溶液によって、A7およびB7を置き換え、HIPS樹脂DP26を得た。この樹脂の性質のパラメータを、表6に示す。
【0255】
実施例7を比較例15〜20、25、26、および参考例2と比較すると、低シス−ポリブタジエンゴムとブタジエン−スチレン線状共重合体との組み合わせを強化剤として用いたHIPS樹脂の衝撃強さおよび光沢度が、明白に改善していることがわかる。
【0256】
実施例7を比較例21〜24と比較すると、本発明の低シス−ポリブタジエンゴムおよびブタジエン−スチレン線状共重合体の調製方法では、重合工程が十分に制御されており、かつ、調製される重合体のゲル含有量が低いことがわかる。また、低シス−ポリブタジエンゴムとブタジエン−スチレン線状共重合体との組み合わせを強化剤として用いたHIPS樹脂は、耐衝撃性および光沢度が改善している。また、調製される低シス−ポリブタジエンゴムの重合体溶液および調製されるブタジエン−スチレン線状共重合体の重合体溶液を、強化剤としてそのまま使用して、フリーラジカル重合反応によってHIPS樹脂を調製するために、重合性単量体と混合することができる。このとき、上記フリーラジカル重合反応を行わせる前に、溶媒の除去および再溶解が不要である。そのため、in situでHIPS樹脂を得ることができる。
【0257】
以上、いくつかの好ましい実施例を用いて本発明を詳細に説明した。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されない。本発明の技術方案に対しては、本発明の技術思想の範囲内で、種々の単純な変更(何らかの適切な技術的特徴の組み合わせを含む)を行うことができる。このような単純な変更および組み合わせは、本発明に開示されているものとして見なされるべきであり、本発明の保護範囲に属するものである。