特許第6665146号(P6665146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 美津濃株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6665146-大腿直筋トレーニング器具 図000002
  • 特許6665146-大腿直筋トレーニング器具 図000003
  • 特許6665146-大腿直筋トレーニング器具 図000004
  • 特許6665146-大腿直筋トレーニング器具 図000005
  • 特許6665146-大腿直筋トレーニング器具 図000006
  • 特許6665146-大腿直筋トレーニング器具 図000007
  • 特許6665146-大腿直筋トレーニング器具 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6665146
(24)【登録日】2020年2月21日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】大腿直筋トレーニング器具
(51)【国際特許分類】
   A63B 23/00 20060101AFI20200302BHJP
   A47C 9/00 20060101ALI20200302BHJP
   A47C 13/00 20060101ALI20200302BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20200302BHJP
   A63B 21/05 20060101ALI20200302BHJP
   A63B 23/04 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   A63B23/00 F
   A47C9/00 Z
   A47C13/00 Z
   A61H1/02 N
   A63B21/05
   A63B23/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-213772(P2017-213772)
(22)【出願日】2017年11月6日
(65)【公開番号】特開2019-83994(P2019-83994A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2018年8月30日
【審判番号】不服2019-2692(P2019-2692/J1)
【審判請求日】2019年2月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 洋明
(72)【発明者】
【氏名】浅野 麻美
【合議体】
【審判長】 藤田 年彦
【審判官】 尾崎 淳史
【審判官】 吉村 尚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−75447(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/141407(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A63B 21/00-21/28,23/00,23/04 A47C7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面を有する座部と、
前記座部と対向するように配置された脚部と、
前記座部と前記脚部との間に配置され、前記座部と前記脚部とが対向する対向方向に伸縮可能に構成された弾性部材とを備え、
前記座部は、上面視において円形状の外周端を有しており、
前記脚部は、上面視において円形状の外周端を有しており、
前記対向方向に沿って前記座部を前記脚部と反対側から見て、前記脚部の外周端は、円形状の全周にわたって、前記座部の外周端よりも外側に位置しており、
前記弾性部材は、ガススプリングであり、前記対向方向に伸縮することによって、前記対向方向に対する前記座面の角度が維持された状態で、前記対向方向において前記脚部に対して最も遠い位置と最も近い位置との間で前記座部を移動させるように構成されており、前記座部に力が加えられない限り、前記座部の上端位置と下端位置との間で止まらないように構成されており、
前記脚部は、前記弾性部材に接続されたテーパ部を含み、
前記テーパ部は、前記座部から離れるにつれて前記テーパ部の直径が大きくなるように構成されている、大腿直筋トレーニング器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトレーニング器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者、怪我人等の筋力が弱い人は、特に大腿直筋が弱い傾向がある。そのため、高齢者、怪我人等の筋力が弱い人が大腿直筋を重点的に鍛えることができるトレーニング器具が求められる。
【0003】
従来、高齢者の立ち上がり動作を補助するための椅子が提案されている。例えば、特開2011−110304号公報(特許文献1)には、椅子から立ち上がる際の負担を軽減するための運動補助椅子が記載されている。この運動補助椅子は、リンクバネ装置を備えている。リンクバネ装置は、伸縮可能なリンク機構と、リンク機構に取り付けられた座部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−110304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報に記載された運動補助椅子においては、リンクバネ装置が伸長した状態で座部は前方に倒れ込むように傾斜する。このように座部が前方に倒れ込むように傾斜すると、水平方向において使用者の重心が使用者の足の接地点に近づくため、使用者は楽に立ち上がることができる。そのため、大腿直筋を重点的に鍛えることは困難である。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、大腿直筋を重点的に鍛えることができるトレーニング器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のトレーニング器具は、座部と、脚部と、弾性部材とを備えている。座部は座面を有する。脚部は、座部と対向するように配置される。弾性部材は、座部と脚部との間に配置され、座部と脚部とが対向する対向方向に伸縮可能に構成されている。座部は、上面視において円形状の外周端を有している。脚部は、上面視において円形状の外周端を有している。対向方向に沿って座部を脚部と反対側から見て、脚部の外周端は、円形状の全周にわたって、座部の外周端よりも外側に位置している。弾性部材は、ガススプリングであり、対向方向に伸縮することによって、対向方向に対する座面の角度が維持された状態で、対向方向において脚部に対して最も遠い位置と最も近い位置との間で座部を移動させるように構成されており、座部に力が加えられない限り、座部の上端位置と下端位置との間で止まらないように構成されている。脚部は、弾性部材に接続されたテーパ部を含んでいる。テーパ部は、座部から離れるにつれてテーパ部の直径が大きくなるように構成されている。
【0008】
本発明のトレーニング器具においては、弾性部材は、対向方向に伸縮することによって、対向方向に対する座面の角度が維持された状態で、対向方向において脚部に対して最も遠い位置と最も近い位置との間で座部を移動させるように構成されている。これにより、水平方向において使用者の重心が使用者の足の接地点に近づかないため、大腿直筋を重点的に鍛えることができる。
【0009】
上記のトレーニング器具において、好ましくは、対向方向に沿って座部を脚部と反対側から見て、脚部の外周端は、座部の外周端よりも外側に位置する。このため、使用者の足が脚部の外側に置かれることによって、大腿直筋を重点的に鍛えることができる。
【0010】
上記のトレーニング器具において、好ましくは、脚部は、前記弾性部材に接続されたテーパ部を含んでいる。テーパ部は、座部から離れるにつれてテーパ部の直径が大きくなるように構成されている。このため、テーパ部によって使用者が足を脚部の上に載せることを抑制することができる。これにより、使用者の足が脚部の外側に置かれやすくなる。したがって、大腿直筋を効果的に鍛えることができる。
【0011】
上記のトレーニング器具において、好ましくは、弾性部材は、ガススプリングである。このため、対向方向に直線的に座部を移動させることができる。したがって、ガススプリングによって、対向方向に対する座面の角度が維持された状態で、対向方向において脚部に対して最も遠い位置と最も近い位置との間で座部を移動させることができる。
【0012】
上記のトレーニング器具において、好ましくは、弾性部材は、100mm/秒以上130mm/秒以下の速度で座部を移動させるように構成されている。弾性部材が100mm/秒以上の速度で座部を移動させることにより、スクワットの運動回数を確保することができるため、運動効率が良くなる。弾性部材が130mm/秒以下の速度で座部を移動させることにより、大腿直筋へ効果的に負荷をかけることができる。
【0013】
上記のトレーニング器具において、好ましくは、弾性部材の反力は、下降初期の値を基準にして200N以上400N以下である。弾性部材の反力が200N以上であることにより、使用者が弾性部材の反力による補助力を感じることができるため、運動の補助効果が得られる。弾性部材の反力が400N以下であることにより、過度な補助力とならないため、体重が軽い使用者でもトレーニング器具を用いて運動することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のトレーニング器具によれば、大腿直筋を重点的に鍛えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態に係るトレーニング器具の構成を概略的に示す斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るトレーニング器具の構成を概略的に示す正面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係るトレーニング器具の構成を概略的に示す側面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係るトレーニング器具の構成を概略的に示す上面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係るトレーニング器具の使用状態を示す側面図である。
図6】実施例、比較例1および比較例2の各々の大殿筋、大腿直筋、大腿二頭筋の各々の筋活動量を示すグラフである。
図7】実施例、比較例1および比較例2の各々の大殿筋、大腿直筋、大腿二頭筋の合計における大腿直筋の割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について図を参照して説明する。
図1図4を参照して、本発明の一実施の形態に係るトレーニング器具1の構成について説明する。本実施の形態に係るトレーニング器具1は、高齢者、怪我人等の筋力が弱い人が大腿直筋を重点的に鍛えるために好適に用いられるものである。
【0017】
主に図1および図2を参照して、本実施の形態に係るトレーニング器具1は、座部2と、脚部3と、弾性部材4とを備えている。本実施の形態では、座部2は、座面2aと、高部2bと、低部2cと、取付部2dと、補強部2eとを有している。
【0018】
主に図2および図3を参照して、座部2は使用者の臀部を載せるためのものである。座部2は、上面視において円形状の外周端を有している。座面2aは、座部2の上面に設けられている。高部2bは、座面2aの高さ位置が最も高くなる部分である。高部2bは、座部2の後側に設けられている。低部2cは、座面2aの高さ位置が最も低くなる部分である。低部2cは、座部2の前側に設けられている。座面2aは、全体として高部2bから低部2cに向かって高さ位置が低くなるように構成されている。高部2bの高さ位置と、低部2cとの高さ位置との差は、例えば5mm以上50mm以下である。したがって、座面2aは、全体として前方に向かって高さ位置が低くなるように小さく傾斜している。このため、使用者が座部2に座ったときに、使用者の骨盤が前傾することによって使用者の背筋を伸ばすことができる。なお、座面2aは傾斜していなくてもよい。すなわち、座面2aは水平に設けられていてもよい。
【0019】
取付部2dは、弾性部材4を取り付けるためのものである。取付部2dは、座部2の底面の中央に配置されている。補強部2eは、取付部2dを補強するためのものである。補強部2eは、取付部2dと座部2の底面とを接続している。これにより、補強部2eは、取付部2dを補強している。
【0020】
脚部3は、座部2と対向するように配置されている。すなわち、脚部3は、座部2と向かい合う方向に配置されている。脚部3は、座面2aと反対側に配置されている。脚部3は、全体として裾広がり形状を有している。脚部3は、上面視において円形状の外周端を有している。
【0021】
弾性部材4は、座部2と脚部3との間に配置されている。弾性部材4は、座部2と脚部3とを接続している。弾性部材4は、座部2と脚部3とが対向する対向方向D1に伸縮可能に構成されている。
【0022】
弾性部材4は、対向方向D1に伸縮することによって、対向方向D1に対する座面2aの角度Aが維持された状態で、対向方向D1において脚部3に対して最も遠い位置と最も近い位置との間で座部2を移動させるように構成されている。対向方向D1において座部2の脚部3に対して最も遠い位置は座部2の上端位置であり、最も近い位置は座部2の下端位置である。したがって、弾性部材4は、座部2を対向方向D1に沿って直線状にのみ移動させるように構成されている。
【0023】
弾性部材4は、座部2に力が加えられない限り、座部2を上端位置に位置させるように構成されている。すなわち、弾性部材4は、座部2に力が加えられない限り、上端位置と下端位置との間で止まらないように構成されている。また、対向方向D1に対する座面2aの角度Aが維持されるため、座面2aが前方に倒れ込むことはない。
【0024】
本実施の形態では、弾性部材4は、ガススプリング40である。ガススプリング40は、ロッド4aと、本体部4bとを主に有している。ガススプリング40は、ガススプリング40の軸方向にロッド4aが本体部4bに対して移動することによって、伸縮するように構成されている。
【0025】
ロッド4aは座部2に接続されている。具体的には、ロッド4aの先端が座部2の取付部2dの中央に設けられた取付孔に挿入された状態で、ロッド4aは座部2に取り付けられている。本体部4bは脚部3に接続されている。具体的には、本体部4bの根元が脚部3の中央に設けられた取付孔に挿入された状態で、本体部4bは脚部3に取り付けられている。
【0026】
弾性部材4は、好ましくは、100mm/秒以上130mm/秒以下の速度で座部2を移動させるように構成されている。座部2の移動速度が100mm/秒未満だと速度が遅いため、回数を稼げない。したがって、運動効率が悪い。また、座部2の移動速度が130mm/秒を超えると速度が速いため筋肉への負荷が少なくなる。
【0027】
弾性部材4の反力は、好ましくは、200N以上400N以下である。弾性部材4の反力が200N未満だと弾性部材4の反力による補助力(サポート力)が感じられず、スクワット運動の補助効果が得られない。また、弾性部材4の反力が400Nを超えるとサポート力が強すぎて体重が軽い使用者はスクワット運動できない。
【0028】
座部2を移動させるときの弾性部材4の反力の最小値に対する最大値の増加率は、好ましくは、500mm/min(分)の条件で圧縮試験した場合、10%/1cm以内である。このため、座部2を移動させるときの弾性部材4の反力の変動が抑えられる。
【0029】
なお、弾性部材4は、ガススプリング40に限定されず、例えば、板ばねであってもよい。
【0030】
主に図3および図4を参照して、対向方向D1に沿って座部2を脚部3と反対側から見て、脚部3の外周端は、座部2の外周端よりも外側に位置する。具体的には、脚部3の外周端は、円形状の全周にわたって、座部2の外周端よりも外側に位置する。脚部3の外周端は、上面視における脚部3の中心から、好ましくは、例えば、200mm以上500mm以下の範囲に配置されている。
【0031】
脚部3は、弾性部材4に接続されたテーパ部3aを含んでいる。テーパ部3aは、座部2から離れるにつれてテーパ部3aの直径が大きくなるように構成されている。脚部3が地面に置かれた状態において、地面に対するテーパ部3aの角度は、テーパ部3aが座部2から離れるにつれて小さくなっている。テーパ部3aは、上面視において脚部3の中央に配置されている。
【0032】
次に、図5を参照して、本実施の形態に係るトレーニング器具1の使用状態について説明する。図5は、トレーニング器具1が地面20に置かれた状態で使用者10によって使用された状態が示されている。
【0033】
図5において、対向方向D1は上下方向に一致している。図5において、実線は座部2が上端位置まで上昇した状態を示しており、破線は座部2が下端位置まで下降した状態を示している。座部2が上端位置まで上昇した状態では、弾性部材4が最も伸びている。座部2が下端位置まで下降した状態では、弾性部材4が最も縮んでいる。
【0034】
座部2が上端位置まで上昇した状態において、座面2aの上端から脚部3の下端までの距離は、好ましくは、例えば、450mm以上800mm以下である。また、座部2が下端位置まで下降した状態において、座面2aの上端から脚部3の下端までの距離は、好ましくは、例えば、300mm以上700mm以下である。
【0035】
使用者10が膝12を曲げて腰を落とすことによって座部2に下方へ向かって力が加えられた場合、座部2は下方向に移動する。座部2が下方向に移動する際には、弾性部材4の反力によって使用者10の臀部の下方向への移動が補助される。このため、使用者10は弾性部材4の反力によって体重を支えられる。したがって、座部2が下方向に移動する際には、使用者10の筋肉にエキセントリック(筋肉が伸ばされながら負荷がかかる)な負荷が加わることが抑制される。
【0036】
使用者10がトレーニング器具1で補助された状態で立ち上がる場合には、座部2は上方向に移動する。座部2が上方向に移動する際には、弾性部材4の反力によって使用者の臀部の上方向への移動が補助される。対向方向D1に対する座面2aの角度Aが維持された状態で、対向方向D1において脚部3に対して最も遠い位置と最も近い位置との間で座部2が移動する。したがって、座面2aの角度Aがそのままの状態で座部2が上下に移動するため、水平方向(左右方向)において使用者10の重心と使用者10の足11の地面20との接地点とが近づかない。そのため、大腿直筋が効果的に鍛えられる。
【0037】
上述のように、使用者10が立ち上がって座部2が上昇する局面(上昇フェーズ)では、大きく筋活動することができる。他方、使用者10が腰を落として座部2が下降する局面(下降フェーズ)では、使用者10は休息することができる。
【0038】
弾性部材4の反力によって使用者10の臀部が支えられているため、使用者10の膝12を曲げた状態において足11の接地点の上方に膝12を位置させることができる。このため、使用者10の重心が後方に維持される。したがって、上昇フェーズにおいて大腿直筋の筋活量が高くなる。
【0039】
また、対向方向D1に沿って座部2を脚部3と反対側から見て、脚部3の外周端は、座部2の外周端よりも外側に位置する。このため、使用者10の膝12を曲げた状態において足11の接地点の上方に膝12を位置させることが促進される。また、使用者10の足11が座部2の真下に置かれることが抑制される。したがって、使用者10の膝12は屈曲しすぎない。すなわち、使用者10の膝関節が過剰に曲がることが抑制される。
【0040】
次に、本実施の形態に係るトレーニング器具1の作用効果について説明する。
本実施の形態のトレーニング器具1においては、弾性部材4は、対向方向D1に伸縮することによって、対向方向D1に対する座面2aの角度Aが維持された状態で、対向方向D1において脚部3に対して最も遠い位置と最も近い位置との間で座部2を移動させるように構成されている。これにより、水平方向において使用者10の重心が使用者10の足11の接地点に近づかないため、大腿直筋を重点的に鍛えることができる。
【0041】
また、本実施の形態に係るトレーニング器具1では、弾性部材4の反力によって使用者10の臀部が支えられているため、使用者10の足11の上方に膝12を位置させることができる。このため、大腿直筋を重点的に鍛えることができる。
【0042】
また、本実施の形態に係るトレーニング器具1では、使用者10は弾性部材4の反力によって体重を支えられる。したがって、座部2が下方向に移動する際には、使用者10の脚にエキセントリックな負荷が加わることが抑制される。このため、高齢者等の筋力が弱い人でも膝等を傷めずに、大腿直筋を安全に鍛えることができる。
【0043】
また、本実施の形態に係るトレーニング器具1においては、対向方向D1に沿って座部2を脚部3と反対側から見て、脚部3の外周端は、座部2の外周端よりも外側に位置する。このため、使用者10の足11が脚部3の外側に置かれることによって、大腿直筋を重点的に鍛えることができる。
【0044】
また、本実施の形態のトレーニング器具1においては、テーパ部3aは、座部2から離れるにつれてテーパ部3aの直径が大きくなるように構成されている。このため、テーパ部3aによって使用者10が足11を脚部3の上に載せることを抑制することができる。これにより、使用者10の足11が脚部3の外側に置かれやすくなる。したがって、大腿直筋を効果的に鍛えることができる。
【0045】
本実施の形態に係るトレーニング器具1においては、弾性部材4は、ガススプリング40である。このため、対向方向D1に直線的に座部2を移動させることができる。したがって、ガススプリング40によって、対向方向D1に対する座面2aの角度が維持された状態で、対向方向D1において脚部3に対して最も遠い位置と最も近い位置との間で座部2を移動させることができる。
【0046】
また、本実施の形態に係るトレーニング器具1では、例えば、特許文献1に記載された運動補助装置のリンク機構では、使用者がスクワットする速度で利用することが可能であるため、素早い速度で反動をつけて運動することが可能である。これに対して、本実施の形態に係るトレーニング器具1では、弾性部材4がガススプリング40であるため、弾性部材4の伸縮速度が制限される。これにより、座部2の昇降速度が制限されるため、強制的にゆっくりな速度で運動することになる。これにより、大腿直筋を重点的に鍛えることができる。
【0047】
また、本実施の形態に係るトレーニング器具1では、弾性部材4はガススプリング40であるため、上記のリンク機構に比べて構造を簡略化することができる。したがって、トレーニング器具1の故障のリスクを低減することができる。さらに構造を簡略化することができるため、トレーニング器具1のコストを低減することができる。
【0048】
また、トレーニング器具1においては、弾性部材4は、100mm/秒以上130mm/秒以下の速度で座部2を移動させるように構成されている。弾性部材4が100mm/秒以上の速度で座部2を移動させることにより、運動回数を確保することができるため、運動効率が良くなる。弾性部材4が130mm/秒以下の速度で座部2を移動させることにより、大腿直筋へ効果的に負荷をかけることができる。
【0049】
また、トレーニング器具1においては、弾性部材4の反力は、下降初期の値を基準にして200N以上400N以下である。弾性部材4の反力が200N以上であることにより、使用者10が弾性部材4の反力である補助力を感じることができるため、運動の補助効果が得られる。弾性部材4の反力が400N以下であることにより、過度な補助力とならないため、体重が軽い使用者10でもトレーニング器具1を用いて運動することができる。
【0050】
本実施の形態に係るトレーニング器具1においては、座部2を移動させるときの弾性部材4の反力の最小値に対する最大値の増加率は、500mm/minの条件で圧縮試験した場合、10%/1cm以内である。このため、座部2を移動させるときの弾性部材4の反力の変動が抑えられる。したがって、弾性部材の反力が過度に作用することが抑制されるため、大腿直筋を安全に鍛えることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例について比較例と対比して説明する。
図6および図7を参照して、実施例は本発明の実施例であり、比較例1および比較例2は本発明に対する比較例である。実施例、比較例1および比較例2の各々は、被験者がスクワットしたときの筋活動量を示している。このスクワットはいわゆるハーフスクワットである。実施例は、上記の実施の形態に係るトレーニング器具を用いて被験者がスクワットしたときの筋活動量を示している。比較例1は、トレーニング器具を用いずに被験者がスクワットしたときの筋活動量を示している。比較例2は、上記の特許文献1と同様の構成を備えた運動補助椅子を用いて被験者がスクワットしたときの筋活動量を示している。
【0052】
実施例、比較例1および比較例2の各々は、複数の被験者の筋活動量の平均値を示している。具体的には、被験者は健常な成人男性9名とした。実施例、比較例1および比較例2の被験者はいずれも同じである。実施例、比較例1および比較例2の各々は、各被験者毎の快適運動速度で実施された。各被験者毎の快適運動速度は、比較例1のおけるスクワットの速度である。すなわち、トレーニング器具を用いず各被験者がスクワットしたときの運動速度を各被験者の快適運動速度とした。この快適運動速度は、実施例1、比較例1および比較例2ともに一定条件とした。すなわち、実施例1、比較例1および比較例2ともに、被験者は、各被験者毎の快適運動速度でスクワットした。
【0053】
実施例1、比較例1および実施例2ともに各被験者がスクワットしたときの大殿筋、大腿直筋、大腿二頭筋の各々の筋活動量を測定した。この筋活動量は各被験者が立ち上がるときの筋活動量である。すなわち、この筋活動量は、上昇フェーズの筋活動量である。筋活動量は、次のように測定した。各被験者がスクワットしたときの大殿筋、大腿直筋、大腿二頭筋の各々の筋電図を測定した。測定により得られた筋電図生波形を全波整流し、スクワット一回の動作における筋活動を100%として正規化し平均して得られたデータを、最大筋活動を100%とした際の%MVC(%Maximum Voluntary Contraction)で示した。
【0054】
図6に示されるように、実施例は、比較例1および比較例2に比べて大腿直筋の筋活動量が大きくなった。また、図7に示されるように、実施例1は、比較例1および比較例2に比べて大殿筋、大腿直筋、大腿二頭筋の筋活動量の合計における大腿直筋の筋活動量の割合が大きくなった。したがって、実施例は、大殿筋および大腿二頭筋よりも大腿直筋を重点的に鍛えられることがわかった。そして、実施例は、比較例1および比較例2よりも大腿直筋を重点的に鍛えられることがわかった。
【0055】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0056】
1 トレーニング器具、2 座部、2a 座面、3 脚部、3a テーパ部、4 弾性部材、4a ロッド、4b 本体部、10 使用者、11 足、12 膝、20 地面、40 ガススプリング、D1 対向方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7