特許第6665248号(P6665248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6665248
(24)【登録日】2020年2月21日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】ウェットワイパー積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/17 20060101AFI20200302BHJP
   A47K 11/10 20060101ALI20200302BHJP
   A47K 7/00 20060101ALI20200302BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
   A47L13/17 A
   A47K11/10
   A47K7/00 J
   A47K7/00 102
   D21H27/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-163273(P2018-163273)
(22)【出願日】2018年8月31日
(62)【分割の表示】特願2014-202523(P2014-202523)の分割
【原出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2019-10528(P2019-10528A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2018年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷澤 敦子
【審査官】 遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−168118(JP,A)
【文献】 特開2000−005092(JP,A)
【文献】 特開2013−249573(JP,A)
【文献】 特開2010−042846(JP,A)
【文献】 特開2008−079814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/17
A47K 7/00
A47K 11/10
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェットワイパー原紙を折り畳んだ後、これを積層して積層体を形成し、
その後に、この積層体をその積層端面が上下方向となるようにし、
この積層体をその紙面方向から支持することにより、又は、この積層体の下部を紙面方向から挟持することにより、上面となる積層端面の層間を拡開させ、
その拡開された積層体の上面となる積層端面から層間に上方から薬液供給ノズルを差し込んで、この薬液供給ノズルから層間に、薬液を供給する薬液付与工程を有する、ことを特徴とするウェットワイパー積層体の製造方法。
【請求項2】
ウェットワイパー原紙を折り畳んだ後、これを積層して積層体を形成し、
その積層体を一方開口の袋体にその積層端面が開口側に向くようにして挿入した状態とし、
この袋体の前記一方開口を上方に向けた状態として、積層体の一方の積層端面が上方となるようにする、請求項1記載のウェットワイパー積層体の製造方法。
【請求項3】
積層端面が上下方向となるようにした後、その積層体の上面となる積層端面から層間に上方から薬液供給ノズルを差し込んで、この薬液供給ノズルから層間に、薬液を供給するとともに、束側面に対しても薬液を付与する請求項記載のウェットワイパー積層体の製造方法。
【請求項4】
前記薬液付与工程を、積層体を搬送する過程で行う請求項1〜の何れか1項に記載のウェットワイパー積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳まれたウェットワイパーが複数枚積層されウェットワイパー積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレの清掃などに、繊維シートに薬液を含浸させたウェットワイパーが使用されている。このウェットワイパーは、二つ折り、四つ折り、八つ折り等、適宜に折り畳まれ、その折り畳まれた状態のものが複数枚積層された束状の積層体が包装フィルムなどによって包装されて製品とされることが多い。
【0003】
そして、係るウェットワイパー製品の内包物であるウェットワイパー積層体は、従来、以下のようにして製造されていた。
【0004】
すなわち、乾燥状態のウェットワイパー原紙を適宜に折畳み、その折り畳み後の乾燥状態のウェットワイパー原紙を上下方向に積み重ねて束状の積層体を形成し、さらにその後にその積層体を次段に搬送する過程等において、積層体の上方から束上面に向かって薬液をシャワー状にして付与し、薬液を積層体に含浸させるようにして製造されている。薬液の付与は、上方からに加えて、折り畳まれた乾燥状態のウェットワイパー原紙の縁が並ぶ積層体の側面に、側方から薬液をシャワー状にして付与することが行なわれることもある。
【0005】
しかしながら、この従来のウェットワイパー積層体の製造方法は、積層体内部、特に積層体の中心部分(積層体の中間に位置するウェットワイパーの紙面中央近傍)に至るまで薬液が十分に含浸しないことや、中心部分と積層体の外周面部分とで薬液の含浸量に差が生ずるなどして、ウェットワイパーにおいて部分的に、或いは積層体を構成するウェットワイパー間において、強度などの紙質に差が生じてしまうことがあった。また、薬液が防腐剤や防カビ剤を含むものである場合には、その効果が十分に発揮されず、特に上記積層体の中心部分にカビ等が発生するおそれがあった。
【0006】
このような問題は、ウェットワイパー積層体製造時における薬液の付与が、製品化のための流れ作業の工程で行なわれることが多く、薬液付与時間や十分な含浸時間が確保しがたいという事情があるうえ、上記従来の製造方法では、上下方向に積み重ねられた積層体の上面に向かって上方から薬液を付与するため、幾重にも重ねられたウェットワイパー原紙の層間を薬液が浸透し難く、また、側方から薬液を付与しても積層体側部において薬液が重力によって下方に向かうため、結局のところ中心部への浸透が効果的に助長されないことによると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−249573号公報
【特許文献2】特開2008−84283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、積層体中心部まで薬液を十分に含浸させることができるウェットワイパー積層体の製造方法、特に、ウェットワイパー製品を流れ工程で製造するような、薬液付与が短時間で行なわれる場合であっても、積層体中心部まで薬液を十分に含浸させることができるウェットワイパー積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は次記のとおりである。
【0010】
〔請求項1記載の発明〕
ウェットワイパー原紙を折り畳んだ後、これを積層して積層体を形成し、
その後に、この積層体をその積層端面が上下方向となるようにし、
この積層体をその紙面方向から支持することにより、又は、この積層体の下部を紙面方向から挟持することにより、上面となる積層端面の層間を拡開させ、
その拡開された積層体の上面となる積層端面から層間に上方から薬液供給ノズルを差し込んで、この薬液供給ノズルから層間に、薬液を供給する薬液付与工程を有する、ことを特徴とするウェットワイパー積層体の製造方法。
【0011】
〔請求項2記載の発明〕
ウェットワイパー原紙を折り畳んだ後、これを積層して積層体を形成し、
その積層体を一方開口の袋体にその積層端面が開口側に向くようにして挿入した状態とし、
この袋体の前記一方開口を上方に向けた状態として、積層体の一方の積層端面が上方となるようにする、請求項1記載のウェットワイパー積層体の製造方法。
【0012】
【0013】
〔請求項記載の発明〕
積層端面が上下方向となるようにした後、その積層体の上面となる積層端面から層間に上方から薬液供給ノズルを差し込んで、この薬液供給ノズルから層間に、薬液を供給するとともに、束側面に対しても薬液を付与する請求項記載のウェットワイパー積層体の製造方法。
【0014】
〔請求項記載の発明〕
前記薬液付与工程を、積層体を搬送する過程で行う請求項1〜の何れか1項に記載のウェットワイパー積層体の製造方法。
【0015】
【発明の効果】
【0016】
以上の本発明によれば、積層体中心部まで薬液を十分に含浸させることができるウェットワイパー積層体の製造方法、特に、ウェットワイパー製品を流れ工程で製造するような、薬液付与が短時間で行なわれる場合であっても、積層体中心部まで薬液を十分に含浸させることができるウェットワイパー積層体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明にかかるウェットワイパー製品の製造工程例を説明するための概略図である。
図2】本発明に係る薬液付与工程の第1の形態を示す図である。
図3】本発明に係る薬液付与工程の第2の形態を示す図である。
図4】本発明に係る薬液付与工程の第3の形態を示す図である。
図5】本発明に係る薬液付与工程の第4の形態を示す図である。
図6】本発明に係る薬液付与工程の第5の形態を示す図である。
図7】本発明に係る薬液付与工程の第6の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳説する。本実施形態に係るウェットワイパー積層体Xは、薬液が含浸された複数枚のウェットワイパーが束にされた状態で適宜に包装されてなるウェットワイパー製品の中間体である。
【0019】
本実施形態に係るウェットワイパー積層体Xの製造方法の概略を図1に示す。この図1に示す本実施形態に係るウェットワイパー積層体Xの製造方法は、長尺のウェットワイパー原紙1Aが巻かれた原反ロール1からウェットワイパー原紙1Aを繰り出し、適宜にエンボス装置50によってエンボスなどを施すなどしたのち折畳み装置60等で裁断・折畳みを行い、個々の折り畳まれた状態のウェットワイパー原紙1Bとする。その後、その折り畳まれた状態のウェットワイパー原紙1Bを、複数、積層して積層体10を形成し、さらに、その積層体10をその積層端面が上下方向となるようにし、その積層体10の上面となる積層端面11に上方から薬液付与装置30によって薬液20を付与する。以下、この概略示す製造法を基本として各段階について詳述していく。
【0020】
まず、前記ウェットワイパー原紙1A(1B)は、繊維シート一枚からなる1プライのものに限らず、繊維シートを2又は3枚重ねとした複数プライのものとすることができる。但し、1プライではウェットワイパーとして使用する際に、拭き取りに必要な十分な強度とするのが難しく、4プライ以上では強度は向上するが厚みや強度が過度になりすぎて使用し難いものとなるとともに、薬液も含浸し難くなるため、好適には2又は3プライである。予め複数プライとされたウェットワイパー原紙1A及びそれをロール状にした原反ロール1は、プライマシン等の既知の積層設備において形成することができる。また、複数プライのウェットワイパー原紙1Aは、1プライの繊維シートを巻き取った原反ロール1からそれぞれ1プライの繊維シートを繰り出し、積層して複数プライにした上で、再度の巻き取りを行なうことなく後段の工程へと供給するようにして形成してもよい。
【0021】
ウェットワイパー原紙1Aへのエンボスの付与は、スチールラバー方式、スチールマッチ方式等の公知のエンボス装置50により行なうことができる。但し、本発明では、エンボスの付与は必須ではない。また、エンボスを付与する場合、図示例では、原反ロール1から帯状のウェットワイパー原紙1Aを繰出し、その帯状のウェットワイパー原紙1Aをエンボス装置50に供給して、エンボスを付与した後に、巻き取ることなく後段の折畳み装置60に供給する形態となっているが、エンボスの付与はこのようにして行なわなくてもよく、例えば、図示されない別途の装置で予めエンボスを付与したウェットワイパー原紙を巻き取って原反ロールを形成しておき、その原反ロールからエンボスが付与されたウェットワイパー原紙を繰出すようにしてもよい。
【0022】
他方、ウェットワイパー原紙1Aの折畳みは、インターフォルダー等の公知の折畳み装置60によって行なうことができる。折畳みの形態としては、ウェットワイパーの一般的な折畳みが採用でき、二つ折り、四つ折り、八つ折り、観音折り等が例示できる。各折畳みを行なうには、各折畳みの形態に応じた折畳み装置を用いればよい。なお、本実施形態では、折畳み後の形状が矩形となっているが必ずしもこの形状に限られない。また、折畳みの前段における帯状のウェットワイパー原紙1Aの裁断は、インターフォルダー等の折畳み装置60に付随するカッター装置により折畳みの直前で行なうことができる。もちろん、折畳み装置60の前段においてウェットワイパー原紙1Aを裁断して枚葉の状態としておいてもよい。
【0023】
また、ウェットワイパー積層体X、或いはウェットワイパー製品を製造するにあたっては、ウェットワイパーとして使用する際に、適宜の大きさに分断して使用することができるように、ウェットワイパー原紙1A(1B)にインターフォルダー等の折畳み装置60に付随するミシン目線形成装置等において、ウェットワイパー原紙を折畳む際、或いはその前後においてウェットワイパー原紙に対して分断用のミシン目線を形成することがある。本実施形態においても公知の技術にしたがって係る分断用のミシン目線を形成することができる。
【0024】
他方、本実施形態に係る積層体10は、折り畳まれた状態のウェットワイパー原紙1Bの縁が並んで形成される積層端面11,12を有するものである。係る積層体10の形成は、折り畳まれたウェットワイパー原紙1Bを上下方向に適宜の枚数積み重ねていくことで形成することができる。また、折り畳まれたウェットワイパー原紙1Bの縁が上下方向に向く状態で、その紙面を付き合わせていくことで形成してもよい。この場合、積層端面が上下方向に向いた状態で積層体10が形成される。積層体10を構成する折畳み状態のウェットワイパー原紙1Bの枚数は、必ずしも限定されないが、背景技術の欄に記載の従来製造方法による薬液の含浸が不十分となる問題が、5枚以上から顕著になり、またウェットワイパー製品としての消費者が要求するウェットワイパーの枚数が、概ね8〜13枚程度であることからすれば、好適には8〜13枚である。
【0025】
本実施形態に係る積層体10を、その積層端面が上下方向となるようにするには、図示されないが、例えば、折り畳まれたウェットワイパー原紙1Bを上下方向に適宜の枚数積み重ねて形成した場合には、積層体10の積層端面以外の上下方向に位置する各紙面13側から挟持し、そのまま積層体10を90°転回起立させるようにすればよい。また、当該上下各紙面13,13をガイド手段でガイドしつつ搬送し、その搬送過程で前記ガイド手段によって積層体を90°転回起立させるようにしてもよい。もちろん、人手によって行なってもよい。さらに、積層端面が上下方向に向いた状態で積層体10を形成する場合には、そのまま側面を構成する紙面13,13を支持しつつ後段に搬送すればよい。
【0026】
他方、本実施形態に係る薬液付与工程は、特徴的に、積層体10をその積層端面が上下方向となるようにし、その状態で積層体10の上方側から薬液を付与する。なお、ウェットワイパー原紙1Bの折畳みや積層体10の形成は、ウェットワイパー原紙1A(1B)が乾燥状態であるほう容易であることから、薬液付与工程に至るまではウェットワイパー原紙1A(1B)が乾燥状態であるほうがよい。換言すれば、薬液付与工程に至る積層体10は、乾燥状態であるのが望ましい。但し、薬液付与工程の前段において、薬液の含浸性を高めるために、ウェットワイパー原紙1A、折畳み状態のウェットワイパー原紙1B或いは積層体10に対してプレ薬液付与を行なってもよい。
【0027】
まず、積層体10に対する薬液付与の具体的な参考形態の方法を述べると、特に図2に示すように、積層体10の上面を構成する積層端面11に対して、薬液付与装置30としてシャワー装置等を用い、薬液を上方から降りかけるように付与することが挙げられる。この場合、薬液20はある程度の圧力で噴射するようにしてもよい。また、図示はしないが、薬液付与装置30としてノズル式噴霧装置などを用いて薬液を噴霧してもよいし、薬液付与装置30としてカーテン塗工装置を用いて、薬液をカーテン膜のように垂らし、その薬液カーテン膜を積層体が通過するようにしてもよい。
【0028】
本参考形態では、このように折り畳まれた状態のウェットワイパー原紙1Bの縁が並ぶ上面側の積層端面11に向かって上方から薬液20を付与することにより、折り畳まれた状態の各ウェットワイパー原紙1B,1B…の間隙に薬液20が入り込み、積層体10の深さ方向へ、すなわち積層体10の中心部へ薬液20が直接に到達しやすいうえ、重力による落下及び層間で生ずる毛管現象によって薬液の下方への移動も促進されるため、積層体10の中心部に至るまで容易にかつ短時間に十分な量の薬液を含浸させることができる。
【0029】
また、本発明に係る実施形態では、特に図3に示すように、積層体10の上面を構成する積層端面11側からの薬液付与に加えて、積層体10の側面方向からも薬液を付与するようにしてもよい。この側面方向からの薬液付与も上述のシャワー装置やノズル式噴霧装置など適宜の薬液付与手段により付与することができる。図示例では、積層体10の側方に位置する壁40に多数の薬液付与孔41,41…を設け、この薬液付与孔41,41…から積層体10の側面に向かって薬液を付与する形態を示している。また、折り畳まれた状態のウェットワイパー原紙1Bを積層した積層体10を、その積層端面が上下方向となるように配した状態では、積層体の側面は積層端面12と紙面13とで構成されるようになるが、側方から積層体10に薬液を付与する場合においても、図示例の如く当該側面のうち積層端面12で構成される側面に向かって薬液を付与するのが望ましい。積層端面12へ薬液を付与するほうが積層体10の中心部へ薬液が浸透しやすいからである。
【0030】
ここで、積層体10に対する薬液付与の本実施形態の具体的な方法を述べると、薬液付与装置30として薬液供給ノズル70を有するものを用い、積層体10の上面となる積層端面11から層間に薬液供給ノズル70を差し込み、この薬液供給ノズル70から層間に、薬液を供給する方法が挙げられる。この方法は、例えば、図4に示すように、多数の薬液供給孔71x,71x…を有する複数の細管71,71…を先端下方に向けて櫛形或いは剣山形に配置した薬液供給ノズル70を、積層体10の搬送路等の上方位置で、公知の昇降機構によって上昇、下降可能としたうえ配置し、前記薬液供給ノズル70の下方に位置させた積層体10の積層端面11に向かって、前記昇降機能によって薬液供給ノズル70を積層端面11に向かって下降させ、各細管71,71…を積層端面11から層間に挿入し、その挿入過程で或いは挿入後に薬液を前記薬液供給孔71x,71x…から層間へと付与する。好ましくは、プレ薬液付与等を行なわない乾燥状態の積層体に対して薬液供給ノズル70を差し込んだ後、薬液供給を開始し、その後薬液供給ノズルを上昇させつつ薬液を供給するようにする。乾燥状態の積層体10であると湿潤状態よりも剛性が高いため薬液供給ノズル70の差し込みが容易であり、また、差し込み完了後及び上昇過程において薬液を供給することにより、積層体10の特に下方部分から上方部分に向かって順次束内部において薬液が供給されるため薬液の含浸性及び束の形状保持性の点でより優れる。層間への十分な薬液の供給が終えたならば、薬液供給ノズル70を上昇させて、積層体10の後段へ移動を可能にすればよい。なお、薬液供給孔71x,71x…からの薬液の付与は、過度の噴射圧とすると、積層体が崩れる要因となるため積層体が崩れない程度の圧とする。また、薬液供給ノズル70の構成は図示例に限られるものではなく、積層体10の層間へ差し込み可能かつその差し込み状態で層間に薬液を供給できるものであれば形状が限定されるものではない。この第二の方法は、積層体の中心部へ、直接的に薬液を供給するため積層体の中心部に薬液が確実に浸透されるようになる。図示はしないが、もちろん、この方法においても、薬液供給ノズル70からの薬液供給に加えて、積層体10の側面方向からも薬液を付与するようにしてもよい。
【0031】
ここで、上記薬液付与の方法は、図2〜4に示すように、適宜の薬液付与位置において積層体10が露出された状態で行なうことができるが、これに限らず、例えば、図5に示すように、積層体10を一方開口の包装のための袋体80に、その積層端面11が開口81側に向くようにして挿入した状態としたうえ、この袋体80の前記一方開口81を上方に向けて、その袋開口部81を介して積層端面11に向かって薬液20を付与するようにしてもよい。この場合には、薬液20が袋体80内に留まるため、使用薬液の量を少なくすることができ、また、回収作業の手間ないものとなる。さらに、袋内80の内面に付着した薬液が間接的に積層体10に付着するようになり、特に積層体10の外周面近傍への薬液の付与も促進される。
【0032】
積層体10の袋体80への挿入方法は限定されるものではなく、結果的に積層体10の積層端面が袋体の一方開口側に向くようにして挿入されている状態となっていればよい。例えば、予め一方開口の袋体に積層体を挿入してもよいし、筒状の袋体の前駆体内に積層体を収め、その後一方筒開口縁を封止するようにしてもよい。また、連続するフィルムシートで、積層体を巻き込むようにして包囲した後、その両側縁をシールすることで、一部筒状にした連続フィルムシート内に積層体を位置させ、その後に当該筒状部分を幅方向に裁断・融着することで、一方開口の袋体に積層体が挿入された状態としてもよい。なお、この形態では、上記第一の方法において述べた付加的に行なわれる側方からの薬液付与は行えない。
【0033】
他方で、積層体10を構成する折り畳まれた各ウェットワイパー原紙1B自体は、自立が困難であるため、特に紙面13方向に倒れやすく、積層体10をそのまま積層端面が上下方向に向かう状態とすると積層体10が崩れてしまうおそれがある。したがって、図1〜4においては示していないが、本実施形態では、薬液付与時等おいて積層体10の崩れを防止する手段を設けるようにするのがよい。積層体の倒れ・崩れの防止は、積層体の側面を構成する両紙面間の距離と同等或いはやや広い距離を持って立設したガイド壁やガイド棒などによって適宜に各紙面を支持するようにすればよい。特に、図6に示すように、各折畳み状態のウェットワイパー原紙の紙面が実質的に接している状態の積層体10における側面を構成する両紙面間の距離よりもやや長い離間距離L1で一対のガイド壁45,45等を設け、積層体10の両紙面13,13がそれらガイド壁45,45に向くようにして配置すれば、積層体10を過度に崩すことなく、積層体としてのまとまりを維持した状態で上方の積層端面11の層間が拡開されるようになる。そして、この状態で薬液の付与を行えば、積層体の中心部への薬液含浸がより効果的に行なわれる。すなわち、上記薬液付与の具体的な第一の方法によれば、拡開された層間から積層体10の中心部或いはこれに近い位置まで薬液が直接的に到達しやすくなり、上記薬液付与の具体的な第二の方法では、薬液供給ノズル70がより差し込みやすくなる。さらに、このように積層体10の崩れを防止しつつ薬液付与を効果的に行なう方法として、図7に示すように、積層体10の下部を紙面方向から挟持手段46,46によって挟持するようにして、上面となる積層端面11の層間を拡開させてもよい。このように挟持すれば、積層体10の崩れを確実に防止しつつ上面となる積層端面11の層間を拡開させることができ、より効果的に薬液の含浸がなされる。なお、ガイド壁45やガイド棒の設置高さや離間距離、積層体10の挟持位置は、ウェットワイパー原紙1A(1B)の剛性や、積層体10を構成するウェットワイパー原紙1Bの枚数、層間の開き具合と積層体10の形状保持具合等に応じて適宜に設計すればよい。
【0034】
他方、本実施形態に係る積層体10に対する薬液付与は、積層体10を搬送する過程において行なうのが望ましい。図1〜3に示す例では、移動する搬送面Fに積層体10を載せて搬送する過程で、上方から薬液の付与を行なうようにしている。このようにすれば積層体10を移動させつつ或いは一時的な停止のみで薬液20を付与することができ、生産性を低下させることがない。薬液付与工程後のウェットワイパー積層体Xは、後段の工程で適宜に包装するなどしてウェットワイパー製品とすることができる。特に、予め一方開口の袋体内で薬液を付与する方法であれば、その一方開口81を密封するだけで製品とすることができる。なお、本実施形態では、薬液付与の際に積層体10の積層端面11が上方を向いていればよく、次段へ搬送するに際して、本実施形態では、搬送安定化のためにウェットワイパー積層体Xを、紙面が上下方向を向くように積層体の向きを変更してもよい。
【0035】
他方、本実施形態においては、薬液の付与量は、適宜の設計事項であるが、例示すれば製品後のウェットワイパーにおける薬液の含浸率が150〜220質量%を確保できる程度とするのが望ましい。
【0036】
ここで、本実施形態に係るウェットワイパー原紙1A(1B)を構成する繊維シートは、不織布シート、クレープ紙等の紙などウェットワイパーに用いられる適宜のシートである。クレープ紙とするならば、ドライクレープが付与されたものであってもよいし、ウェットクレープが付与されたものであってもよい。但し、本実施形態に係るウェットワイパー原紙を構成する繊維シートは、特に、ドライクレープとウェットクレープの二種類のクレープ加工がされたものであるのが望ましい。ドライクレープは、概ねCD方向に沿う谷線、稜線を多く有する微細な凹凸であり、抄紙工程において湿紙をヤンキードライヤーで乾燥し、その後にこのヤンキードライヤーからクレーピングドクターで引き剥がす際に形成されるものである。このドライクレープによって、シートに柔らかさや伸び、特にMD方向の伸びが付与されるとともに、原紙に凹凸分の厚み感が発現する。また、その微細な凹凸によって原紙のみと比較して汚物の拭き取り性が向上する。一方、ウェットクレープは、抄紙工程の湿紙をヤンキードライヤーに移行させる際に付与されるものである。湿紙の繊維の並び自体が凹凸のある状態で乾燥されて固定化されるため、薬液含浸によって伸びるということがなく、ドライクレープと相まって、ウェットワイパーにおける拭き取り性、とりわけ乾燥してこびりついてしまった便等の拭き取り性と表面強度とが向上される。また、とりわけウェットクレープは、薬液の含浸に伴う形状変化が極めて小さいことから薬液の含浸性、特に含浸速度が向上される。このように、ウェットワイパー原紙を構成する繊維シートを好適にドライクレープとウェットクレープの双方が付与されたものとすることで、拭き取り性などの使用時における効果の向上と製造時の特に薬液含浸性が優れたものとなる。
【0037】
他方、本実施形態のウェットワイパー原紙1A(1B)を構成する繊維シートの好ましい例をさらに説明すると、本実施形態の繊維シートは、目付量を60〜95g/m2、より好ましくは目付量を75〜90g/m2とするのがよい。目付量が75g/m2未満であると、拭き取りに必要な十分な強度とすることが難しくなるとともに、繊維が粗となって十分な薬液の保持性を確保することが困難となる。また、95g/m2を超えると繊維が密になって繊維間への汚れの入り込みがし難くなるとともに、硬くなりしなやかさが低下することになり、拭き取り性の向上が難しくなるとともに、薬液の含浸性、特の含浸速度が低下する。
【0038】
なお、本実施形態における目付は、製造後のウェットワイパーを10cm四方に裁断し、これを50℃の恒温槽内で0.5時間以上、十分に乾燥させた試料を10枚作成し、その重量を測定して、その重量と試料の大きさから算出した値である。
【0039】
また、本実施形態に係る薬液20は、特に限定されず、ウェットワイパーに用いる公知の薬液を使用することができる。薬液に含まれる成分としては、アルコール、除菌剤、界面活性剤、シリコーンなどが例示できる。また、薬液中には、好ましく、ホウ酸又は金属イオンを含ませることができる。ホウ酸を含む場合には、原紙中にさらにポリビニルアルコール繊維(PVA繊維とも称される)を含ませるのがより望ましい。ホウ酸とPVA繊維とを組み合わせることで紙力増強剤としての機能が発揮され、水解性を有しつつ強度を向上させることができる。金属イオンを含む場合には、原紙中又は原紙表面にさらにカルボキシメチルセルロース(CMCとも称される)を含ませるのがより望ましい。金属イオンとCMCとを組み合わせることで、ホウ酸とPVA繊維とを組み合わせる効果と同様に水解性を有しつつ強度を向上させることができる。
【0040】
他方、本実施形態に係るウェットワイパー原紙の繊維原料は、クレープ紙であれば、針葉樹パルプと広葉樹パルプを混合したパルプ、又は古紙パルプが好適に用いられる。針葉樹パルプ及び広葉樹パルプは、漂白されたものであっても無漂白のものであってもよい。また、無漂白の未晒しパルプと漂白パルプとを混合したものであってもよい。針葉樹パルプと広葉樹パルプを混合して用いる場合、針葉樹由来のパルプを60〜95%、広葉樹由来のパルプを5〜40%含むものがよい。針葉樹由来のパルプは、繊維長が長く抄紙段階における繊維配向性が所定方向となりやすく剥離強度の縦横比に差が生じやすいが、針葉樹由来のパルプを60〜95%、広葉樹由来のパルプを5〜40%の配合割合とすると、広葉樹由来のパルプの存在によって、剥離強度の縦横比に差が生じ難くなる。さらに、広葉樹由来のパルプの繊維長が短いことから、繊維が密になりしなやかさが向上する。なお、針葉樹由来のパルプは、繊維の太さ(幅)が概ね30〜40μm、平均繊維長が概ね2.5〜5mm程度である。さらに、本実施形態に係るウェットワイパー原紙1A(1B)に係る繊維原料は、薬液20との関係で適宜の化学繊維を含有させることができる。すなわち、上述のとおり薬液としてホウ酸を含むものを用いるのであれば、繊維原料中に、針葉樹、広葉樹由来のパルプに加えて適宜の量のポリビニルアルコール繊維を配合させるのが望ましい。
【符号の説明】
【0041】
X…ウェットワイパー積層体、1…原反ロール、10…ウェットワイパー原紙の積層体
1A…ウェットワイパー原紙(連続状態)、1B…ウェットワイパー原紙(折畳み状態)
50…エンボス装置、60…折畳み装置、20…薬液、11…積層端面(上方側)、12…積層端面(側方側)、13…紙面、30…薬液付与装置(シャワー装置)、40…壁、41…薬液付与孔、70…薬液供給ノズル、71…細管、71x…薬液供給孔、80…袋体、81…袋体の開口、45…ガイド壁、L1…ガイド壁間距離、46…挟持手段、F…搬送面。
図1
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図5
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図7