(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シートパイルは、側部両側の長手方向が屈曲構造となるよう成形又は折り曲げられた連結部を有し、一方の連結部の下端部の内側に外止具がさらに設けられたものを用い、一のシートパイルの外止具が設けられていない連結部と他のシートパイルの外止具が設けられた連結部とを係合し、一のシートパイルと他のシートパイルとを連結することを特徴とする請求項1又は2記載のシートパイル埋設方法。
前記打設装置を用いてシートパイルを埋設するに際して、シートパイルの上端部に金属製の保護アタッチメントを接続して、シートパイルを埋設することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシートパイル埋設方法。
シートパイルの沈下を防止する機能を有する沈下防止装置を用いて、前記一のシートパイルを保持しながら、前記打設装置を用いて他のシートパイルを地中の所望の位置まで埋設することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のシートパイル埋設方法。
前記沈下防止装置として、やぐら形状からなり、シートパイルを保持するための保持具を上下方向に昇降する昇降具を有する装置を用い、一のシートパイルの上端部に前記保持具を接続し、前記昇降具で牽引することによって一のシートパイルを保持することを特徴とする請求項6記載のシートパイル埋設方法。
シートパイル埋設後、シートパイルを引き抜くに際して、前記沈下防止装置の保持具を埋設済みのシートパイルに接続し、前記昇降具で牽引することで前記シートパイルを吊り上げ、縁切りした後、前記シートパイル引き抜くことを特徴とする請求項7記載のシートパイル埋設方法。
前記打設装置にアウトリガーを複数設け、各アウトリガーに対応する複数の斜面用台を使用して打設装置を固定し、複数の前記斜面用台を連結具で連結して、シートパイルを埋設することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のシートパイル埋設方法。
前記重錘に保護アタッチメントと接続するための金具を設け、ワイヤーを接続した保護アタッチメントを前記金具に接続し、シートパイルを吊り上げ、埋設することを特徴とする請求項4から10のいずれかに記載のシートパイル埋設方法。
前記保護アタッチメントにシートパイルを吊り上げるための金具を設け、シートパイルを接続したワイヤーを前記金具に接続し、シートパイルを吊り上げ、埋設することを特徴とする請求項11記載のシートパイル埋設方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バイブロハンマーを用いるものは勿論、油圧によるシートパイル埋設方法であっても、シートパイルを埋設するためには大型装置を用いる必要があり、街中の道路上での工事では、道路を通行止めにしなければ工事ができなかった。また、シートパイルは、河川の氾濫を防ぐ役割で用いられ、河川の堤防において埋設することになるが、河川の堤防の上部(天端部分)は道路と比較してその幅がさらに狭く、大型の油圧装置やバイブロハンマーが設けられた土木機械を堤防上に乗せてシートパイルを埋設することができないといった問題があった。
【0005】
他方で、作業スペースが狭い場所では、小型動力装置を用いてシートパイルを埋設することも考えられるところ、小型動力装置は動力が弱く、所望の位置までシートパイルを埋設することが容易ではないことから、シートパイルを埋設する前に予め地面を掘る先行掘を行い、シートパイル埋設領域の地中の土を予め柔らかくした後、シートパイルを先行掘した地上に設置し、小型動力装置のクレーンの先端部分等をシートパイルの先端に押し当てるなどしてシートパイルを所望の位置に埋設することも考えられる。もっとも、地盤が固い場合には、所望の位置にシートパイルを埋設することは困難であった。
【0006】
そこで本発明者は、大型装置や小型動力装置ではなく、重錘を用いて打撃することでシートパイルを打設する機能を有する打設装置を用いてシートパイルを埋設することを想起し、種々の検討を行った。その結果、シートパイルは、一般的に板状の構造からなることから、重錘を用いて打撃する方法で埋設すると、シートパイルが変形してしまったり、十分に重錘による打撃力が伝わらず、所望の位置に埋設することができないという問題に気が付いた。また、重錘を用いて打撃することでシートパイルを打設する打設装置を用いて、シートパイルを連結して連続的にシートパイルを埋設しようとすると、他のシートパイル埋設の際に、既に所望の位置に埋設したシートパイルが位置ずれを起こしてしまうことがあることにも気が付いた。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、河川の堤防の上部等、作業スペースが狭い場所において、複数のシートパイルを連結して打設により容易に埋設する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するべく、本発明によるシートパイル埋設方法は、複数のシートパイルを連結して埋設する方法であって、シートパイルは、シートパイルの上端部にシートパイル平面からその外側に延出するように衝撃補強部材を備え、シートパイルの下端部にシートパイル平面からその外側に延出
し、下端部先端方向に向かって傾斜した形状の衝撃補強部材を備え、下端部の中心方向に向かって幅狭となる形状のものを使用し、重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置を用いて、一のシートパイルを地中の所望の位置まで埋設し、他のシートパイルの連結部を一のシートパイルの連結部に連結し、連結状態を維持しながら、打設装置を用いて他のシートパイルを地中の所望の位置まで埋設することを特徴とする。
【0010】
本発明によるシートパイル埋設方法では、シートパイルの上端部と下端部の衝撃補強部材が一体的に形成されたシートパイルを用いて、シートパイルを埋設することを特徴とする。
【0011】
本発明によるシートパイル埋設方法では、シートパイルは、側部両側の長手方向が屈曲構造となるよう成形又は折り曲げられた連結部を有し、一方の連結部の下端部の内側に外止具がさらに設けられたものを用い、一のシートパイルの外止具が設けられていない連結部と他のシートパイルの外止具が設けられた連結部とを係合し、一のシートパイルと他のシートパイルとを連結することを特徴とする。
【0012】
本発明によるシートパイル埋設方法では、打設装置を用いてシートパイルを埋設するに際して、シートパイルの上端部に金属製の保護アタッチメントを接続して、シートパイルを埋設することを特徴とする。
【0013】
本発明によるシートパイル埋設方法では、保護アタッチメントを接続してシートパイルを埋設するに際して、重錘と保護アタッチメントの間に、緩衝部材を介在させて打設することを特徴とする。
【0014】
本発明によるシートパイル埋設方法では、シートパイルの沈下を防止する機能を有する沈下防止装置を用いて、一のシートパイルを保持しながら、打設装置を用いて他のシートパイルを地中の所望の位置まで埋設することを特徴とする。
【0015】
本発明によるシートパイル埋設方法では、沈下防止装置として、やぐら形状からなり、シートパイルを保持するための保持具を上下方向に昇降する昇降具を有する装置を用い、一のシートパイルの上端部に保持具を接続し、昇降具で牽引することによって一のシートパイルを保持することを特徴とする。
【0016】
本発明によるシートパイル埋設方法では、シートパイル埋設後、シートパイルを引き抜くに際して、沈下防止装置の保持具を埋設済みのシートパイルに接続し、昇降具で牽引することでシートパイルを吊り上げ、縁切りした後、シートパイル引き抜くことを特徴とする。
【0017】
本発明によるシートパイル埋設方法では、打設装置にアウトリガーを複数設け、各アウトリガーに対応する複数の斜面用台を使用して打設装置を固定し、複数の斜面用台を連結具で連結して、シートパイルを埋設することを特徴とする。
【0018】
本発明によるシートパイル埋設方法では、本発明によるシートパイルを埋設する場所を、オーガーを用いて先行掘を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明によるシートパイル埋設方法では、重錘に保護アタッチメントと接続するための金具を設け、ワイヤーを接続した保護アタッチメントを金具に接続し、シートパイルを吊り上げ、埋設することを特徴とする。
【0020】
本発明によるシートパイル埋設方法では、保護アタッチメントにシートパイルを吊り上げるための金具を設け、シートパイルを接続したワイヤーを金具に接続し、シートパイルを吊り上げ、埋設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明による方法では、堤防上のような狭い場所においてもシートパイルを埋設することができ、かつ、その打撃力を調整することにより、大型装置と同程度の打撃力でシートパイルを埋設することができ、固い地盤においても所望の位置までシートパイルを埋設することが可能となると共に、シートパイルの上端部や下端部、さらに上端部から下端部に一体として、シートパイル平面から外側に延出するように衝撃補強部材を備えたり、下端部の中心方向に幅狭となる形状のシートパイルを用いて埋設することにより、シートパイルに打撃力を十分に伝えることができ、かつ、シートパイルが変形することを防止し、所望の位置に適切にシートパイルを埋設することが可能となる。
【0022】
本発明による方法では、シートパイルの連結において、シートパイルの連結部の構造を屈曲構造とし、外止具が設けられたものとすることにより、シートパイル埋設時の打設によって、埋設済みのシートパイルと埋設しようとするシートパイルとの連結が途中で外れることを防止でき、所望の位置にシートパイルを埋設することができる。
【0023】
本発明による方法では、シートパイル上端部に金属製の保護アタッチメントを接続して打設することや、重錘と保護アタッチメントの間に緩衝部材を介在させて打設することにより、打設時の騒音発生等を防止し、また、シートパイルが変形されることなく、かつ、十分な打撃力を与え、所望の位置に適切にシートパイルを埋設することが可能となる。
【0024】
また、シートパイルへの打撃力を大きくすれば、連結した状態でのシートパイルの埋設においては、連結されたシートパイル間で打撃力が伝播し、既に埋設済みのシートパイルの位置がずれてしまうことがあるところ、本発明による方法では、沈下防止装置により既に地中に埋められたシートパイルを固定保持した状態で、他のシートパイルを埋設することになるため、埋設しようとするシートパイルに打撃力を加えても、既に埋設されているシートパイルの位置は保持された状態で埋設することが可能となり、結果、複数の連続したシートパイルがそれぞれ位置ずれを起こすことなく所望の位置に埋設することが可能となる。
【0025】
本発明による方法では、沈下防止装置の構造を簡易にすることにより、狭い作業現場においても簡単に組立・設置することが可能となり、狭い現場において打設によるシートパイルの連結埋設が可能となり、また、このような沈下防止装置を用いれば、シートパイルの埋設だけでなくシートパイルの引き抜きも行うことができる。
【0026】
本発明による方法では、斜面用台を互いに固定することで斜面を含む現場においても容易にシートパイルを埋設することが可能となる。さらに、シートパイル埋設前に先行掘を行うことにより、容易にシートパイルを所望の位置まで埋設することが可能となる。
【0027】
本発明による方法では、保護アタッチメントや重錘の形状を工夫することにより、保護アタッチメントや重錘を取り外すことなくシートパイルの吊り上げが可能となり、作業効率が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1乃至
図12は、本発明によるシートパイル埋設方法の一実施形態及びそれに使用する装置等を示すものであり、まず、
図1に示されるような重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置1を用いて、一のシートパイル2を地中の所望の位置まで埋設する。
【0030】
具体的には、シートパイルを埋設しようとする位置の地面上に目印をつけ、その位置決めした場所(埋設予定位置)に、人力又はミニショベル等を用いて溝を掘る。また、シートパイルを埋設しようとする位置の地盤がより強固な場合、埋設予定位置の地面に対して、先行掘を行う。
【0031】
先行堀とは、シートパイルを埋設する場所の地中を、オーガー等を用いて予め掘削した後、オーガーを引き抜くことで近接地中に穴をあけ、又は土を戻し、場所をずらして同じ作業を繰り返すことによって、地中に多数の穴をあけシートパイルを埋設する位置全体の地中の土の状態をシートパイル埋設前に柔らかくしておく工法をいうが、その方法については特に問わない。たとえば、三次元方向に移動可能なブーム及び回転駆動機構を有する建設機械のミニショベルの先にオーガーを取り付け、オーガーを回転駆動機構で回転させることで、オーガーを地中に埋設し、埋設後、逆回転させることで引き抜くという作業を繰り返すことで、地中の土を柔らかくすることができる。ここでは一本のオーガーの埋設と引き抜きを繰り返して先行掘する例を説明したが、複数のオーガーを用いて効率的に先行掘を行うこともでき、さらに、先行掘に用いるオーガーの形状についても適宜変更することが可能である。この先行掘に用いる装置については、打設装置と兼用してもよい。現場の状態により、先行掘を行うか適宜選択することができる。
【0032】
次に、重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置1を埋設予定位置付近の地上に配置する。堤防等の狭い現場においてはシートパイルを設置するために大型の動力装置を用いることができず、他方で、小型の動力装置を用いると十分に打撃力が確保できないため、狭い場所でかつ強固な地盤に対してシートパイルを埋設する場合には、小型であっても打撃力の強い重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置を用いることが必要となる。
【0033】
打設装置1は、たとえば、
図1に示されるとおり、関節または伸縮機構により先端位置を三次元方向に移動可能なブーム11とアウトリガー7を有するミニクレーンからなり、ブーム11の先端位置から垂下された位置にリーダーを有さず、鋼鉄製の重錘12を備えた打設具8を備えた装置を用いる。また、打設装置1はシートパイルを吊り上げ、シートパイルを所望の位置に設置する際にも用いることができる。なお、
図1では、ミニクレーンに重錘を接続した装置であるが、ミニクレーンではなく、穴掘建柱車やミニショベル等であってもよいし、建設車両ではなく現場で組立・設置可能なやぐら形状の固定式の打設装置であってもよく、重錘12を接続可能な装置であればよい。
【0034】
打設具8は、作業現場における作業半径を狭める走行レールのついたアタッチメントであるリーダーを有しておらず、
図1で示される例では、直接、ブーム11の先端位置に打設具8が接続される。打設具8は、ブーム11の先端位置に打設具接続装置13が接続され、当該接続装置13内に鉄棒14が挿入され、ワイヤー15、フック19、重錘12を上下方向に昇降させるための移動装置16でモンケン等の鋼鉄製の重錘12を吊った構成からなり、その下に、緩衝部材17、保護アタッチメント18が順次接続される。もっとも、打設具8は、上記のような構成に限定されるものではなく、埋設するシートパイルに加重をかけることが可能な重錘を地面に対して上下方向に昇降させ、シートパイルを打撃することでシートパイルを埋設し得る構成であればその構成は問わない。また、重錘については、鋼鉄製のモンケン等が想定されるがこれに限定されるものではない。
【0035】
次に埋設予定位置付近において、打設装置1又は打設装置1とは別の装置等を使用し、工事現場に平積みされている一のシートパイル2を吊り上げ、一のシートパイル2を埋設予定位置に移動させ、一のシートパイル2を地面に建て込む。シートパイルの吊り上げには、打設装置のフック19等を用いて行うことができるが、後述のとおり保護アタッチメント18を用いて行うこともできる。
【0036】
本発明では、シートパイルを打撃することにより埋設することから、打撃によりシートパイルの上端部が損傷してしまい、シートパイルの上端部が変形したりすることがある。また、シートパイルは板状の杭からなるものであるため、打撃を加えられる面積が小さければ、十分に打撃力が伝わらず、シートパイルに十分な力が伝播せず、所望の位置に埋設することができないことがある。そのため、本発明で用いるシートパイルについては、以下に述べるような形状のものを用いる。
【0037】
たとえば、
図2(a)の斜視図及びシートパイル上端部側からみた
図2(b)に示されるように、シートパイルの上端部にシートパイル平面からその外側に延出するように第一の衝撃補強部材23(33)を備えたシートパイルを用いる。
【0038】
シートパイルは板状の杭であるため、上端部での打撃面の面積が小さく、上部からの打撃力が十分にシートパイルに伝わらず、また、打撃力が一定の場所に集中することから上端部が変形してしまうこともある。さらに、重錘を用いて打設すると、上部からの打撃力でシートパイルが一瞬でも弓型に曲がってしまうこともある。しかし、
図2に示されるような上端部にシートパイル平面からその外側に延出するように第一の衝撃補強部材23(33)を備えたものを用いれば、打設面積を大きくすることができ、十分に力を伝播することができるようになる。加えて、後述する保護アタッチメント18との接続も良好になり、シートパイルの変形やシートパイルが曲がってしまうことが少なくなる。
【0039】
第一の衝撃補強部材23(33)は、溶接等、既存の技術を用いてシートパイルに設けることができ、シートパイルの上端部で打撃力が加わる面積を大きくする態様で形成すればよく、
図2で示される例では第一の衝撃補強部材が複数(3個)設けられており、シートパイルの両面に設けられている。このようなシートパイルの片面だけでなく両面に設ける構成とすることにより、シートパイルへの打撃力をまんべんなく伝えることができ好ましい。また、
図2では、3箇所に中心部からみて対称に配置し、かつ、保護アタッチメント等を介して重錘により打撃力が加わるシートパイルの中心付近(重錘の大きさにより異なる)に設けられているが、このような配置が重錘からの打撃力を効率的に与えることができるためより望ましいが、これに限られるものではない。また、
図2で示される例では、鉄板からなる三角形状としているが、その材質、形状に限定されない。さらに、第一の衝撃補強部材を設ける数についても限定されず、たとえば、
図3に示されるように、第一の衝撃補強部材23(33)は、打撃される位置に4個を均等かつ対称に配置すれば、より打撃力を効率的に与えることができる。
【0040】
また、地盤がある程度硬いような場合には、
図3に示されるように、さらにシートパイルの下端部に、シートパイル平面からその外側に延出するように第二の衝撃補強部材24(34)を備え、かつ、地中に埋設される下端部の中心方向に幅狭となる形状のシートパイルを使用することが好ましい。
【0041】
地盤が固い場合には、シートパイルの下端部の形状を幅狭構造とすることでシートパイルの埋設を容易化することができる。他方で、シートパイルの下端側の形状を地中に埋設しやすくするよう下端側が斜めに切り落とされた形状としたことから、下端側は打撃力に対して弱く、打撃力を受けることで先端が曲がってしまい、埋設できなくなってしまうおそれがある。そのため、下端側を幅狭構造としつつ、強度低下した点を補強するために、下端部側にシートパイル平面からその外側に延出するように第二の衝撃補強部材24(34)を備えたものである。
【0042】
第二の衝撃補強部材24は、溶接等の既存技術を用いて設けられ、
図3で示される例では、鉄板からなる三角形状としているが、その材質、形状、設置個数についても限定されるものではない。また、下端側の幅狭とする角度等についても地盤の状態を勘案して適宜変更することができる。
【0043】
さらに、
図4に示されるように、シートパイルの上端部から下端部まで一体として、シートパイル短手方向からその外側に延出するように第一と第二の衝撃補強部材を一体化した一体型衝撃補強部材25(35)を備えたシートパイルを用いれば、さらに地盤が固い場所でもシートパイルを埋設することができる。
【0044】
上端部から下端部まで一体とした一体型衝撃補強部材25(35)が設けられることにより、上端側から下端側にまんべんなく圧力が伝わることになり、また、シートパイル自体が弓型に曲がってしまうという問題についても、上端部から下端部まで一体とした一体型衝撃補強部材を設けることで発生しなくなる。
【0045】
以上のとおりシートパイルに衝撃補強部材を設け、また、形状を変更することで、よりシートパイルの変形等を防ぎ、十分な力を伝播させることができ、確実にシートパイル埋設が可能となる。
【0046】
上記のような一のシートパイル2を埋設予定位置に建て込んだ後、打設装置1のブーム11を操作し、一のシートパイル2の上部に接触するように移動させる。緩衝部材17及び保護アタッチメント18が一のシートパイル2の上部の中心に位置し、接触していることを確認した後、移動装置16を人力で操作し、鋼鉄製の重りである重錘12を上下に何度も昇降させ、一のシートパイル2に上方から打撃力を繰り返し与え、一のシートパイル2を地中の所望の位置まで埋め込む。
【0047】
一のシートパイル2の埋設が完了すれば、これから埋設しようとする
図2乃至
図4に示されるような他のシートパイル3の下端側の連結部32を一のシートパイル2の連結部21の上端側に連結する。
【0048】
一のシートパイルと他のシートパイルの連結については、以下のように行うことが確実に連結できる点から好ましい。すなわち、各シートパイルには、たとえば
図2乃至
図4、
図5乃至
図6に示されるように、シートパイルの側部両側の長手方向において屈曲構造となるよう成形又は折り曲げられた連結部21、22を有しているが、側部の一方の連結部の下端部の内側先端部分に外止具30が設けられたものを用いる。
図5に示されるように、地中に埋設された一のシートパイル2の上端側の外止具が設けられていない連結部21とこれから埋設する他のシートパイル3の外止具30が設けられた下端側の連結部32とを係合し、一のシートパイル2と他のシートパイル3とを連結する。このように単にシートパイルの連結部を係合するだけでなく、外止具をシートパイルの連結部の内側に設けることで、確実に連結することが可能となる。なお、外止部は縦(シートパイルの長手方向)3乃至5センチ、横(シートパイルの短手方向)1乃至2センチ程度、高さ0.6センチ程度の、直方体形状で鉄板等からなり溶接等により設けられるが、この形状については特に限定はない。また、工事現場の状況によって外止部は設けないで打設する場合もあり、適宜選択される。
【0049】
次いで、
図5及び
図6に示されるように一のシートパイル2と他のシートパイル3を連結した状態で、一のシートパイル2の埋設に使用した打設装置1等を用いて、他のシートパイル3を地中の所望の位置まで打設することによって埋設する。
【0050】
他のシートパイル3の所望の位置までの移動、設置及び埋設については、一のシートパイル2の移動及び埋設と同様の方法で行う。この作業により、2枚のシートパイルを連結して所望の位置に埋設することが可能となる。
【0051】
以上はシートパイルを2枚連結して行う場合について説明したが、シートパイルを3枚以上連続して埋設する場合には、埋設予定のシートパイルに隣接する地中に埋め込まれているシートパイルを連結した上で、他のシートパイルを、打設装置1等を用いてさらに埋設し、この作業を繰り返すことで連続してシートパイルの埋設が可能となる。
【0052】
また、上記のとおりシートパイルの形状を変更する他にも、シートパイルを打設するに際して、シートパイル上端部に金属製の保護アタッチメント18を接続して打設することも可能である。この保護アタッチメント18を介して打設することにより、打撃されることによりシートパイルの形状が変形することを防止することが可能となる。さらに、保護アタッチメント18は、シートパイルを吊り上げる際にも用いることができる。
【0053】
保護アタッチメント18は、たとえば、
図7にその六面図が示されるように、中心に円形の穴181のあいた扇形の鉄板の下部182に、爪183、及び2本の爪184をそれぞれ設ける。爪183、184にそれぞれワイヤーを引っ掛けるための金具185、186を設けられる。また、保護アタッチメント18には、運搬用の接続部187、188が設けられている。なお、扇形の鉄板の形状は、円形でもよいし他の形状でもよく、扇形の形状も適宜変更することができ、保護アタッチメントの形状、爪の形状、本数などについても特に限定されることはない。
【0054】
シートパイルを埋設する前に行われるシートパイルの吊り上げについては、打設装置1に備わっているフック19を用いて行うことができるが、フック19を用いて行う場合には、重錘12、保護アタッチメント18、緩衝部材17を作業前に一度取り外す必要があり、作業効率が悪い。そこで、たとえば、
図12に示されるように、重錘12の上部に保護アタッチメント運搬用のワイヤー202を掛けるための金具121を設け、同金具121に運搬用ワイヤー202を掛け、シートパイル2、3にワイヤー201を接続し、同ワイヤー201を保護アタッチメント金具186に掛け、重錘12を引き上げることにより、重錘12、緩衝部材17、保護アタッチメント18をいずれも接続した状態のまま、シートパイル2、3を吊り上げることがより好ましい。このような吊り上げ方法を使用すれば、重錘12、緩衝部材17、保護アタッチメント18を取り外すことなく、シートパイル2、3を吊り上げ、移動させ、地面に建て込み、シートパイル2、3を自立させることが可能となる。
【0055】
さらに保護アタッチメント18を接続して重錘12でシートパイルを打設する際に、重錘12と保護アタッチメント18の間に、緩衝部材17を介在させて打設することがより好ましい。保護アタッチメント18の上部に重錘12が衝突する度に保護アタッチメント18の鉄材と重錘12の鉄材とが激しく衝突し、大きな騒音、振動が発生することになるが、緩衝部材17を設けることにより、発生する大きな騒音、振動を小さくし、かつ、保護アタッチメント及びシートパイルを保護することが可能となる。
【0056】
緩衝部材17は、たとえば
図8(a)の正面図及び
図8(b)の半分切り取った断面図に示されるように、外周にワイヤーロープ174を巻きつけたドーナツ形状からなるものであり、芯材としては、太めのワイヤーロープ171を円形にした上で鉛等の材料172で結束し、その外周に板状のゴム173を巻き付け、さらに、その外周にワイヤーロープ174を巻きつけた形状等が考えられる。強度を維持しながら衝撃を緩衝させるために、
図8に示されるような、ワイヤーロープ、ゴム、ワイヤーロープの三重構造とすることが望ましいが、重錘からの打撃力を緩衝させる機能を有する構造であれば、特に限定されない。
【0057】
さらに、
図10に示されるように、一のシートパイルを埋設した後、一のシートパイルと他のシートパイルを連結した状態で、シートパイルの沈下を防止するための沈下防止装置4を用いて一のシートパイル2を保持しながら、他のシートパイル3を埋設することが、確実にシートパイルの位置ずれを防止できる点から好ましい。
【0058】
沈下防止装置4は、既に埋設されたシートパイルの位置を固定できるものであればよいが、
図9に示されるような沈下防止装置4を用いれば、狭い現場において、その場で組立可能で、作業を容易に行うことが可能となる点でより好ましい。具体的には、
図9(a)に示されるような、全体としては複数の柱41と筋交42からなるやぐら形状とし、その頂部43に金具44が設置され、
図9(b)に示されるような同金具44に装着されたチェーン451、チェーン451より太いチェーン454、滑車452、フック453からなるチェーンブロック等の昇降具45を用いて、シートパイルを保持するためのクランプ等からなる保持具46をフック453に接続し、シートパイルを上下方向に移動させる装置である。
【0059】
この沈下防止装置4を
図10に示されるように配置し、地上に一部露出している又は地中に打設されている一のシートパイル2の上端部の図示しない第一の衝撃補強部材23に挟み込む形で保持具46を接続し、チェーンブロック等の昇降具45で牽引することによって所望の位置に一のシートパイル2を保持し、一のシートパイル2と他のシートパイル3を連結した状態で、他のシートパイル3を埋設する。これら作業が終了すれば、沈下防止装置4を取り外すことで作業は終了する。
【0060】
この沈下防止装置4を用いて既に埋め込んだ一のシートパイル2を固定した状態で他のシートパイル3を埋設するのは、重錘を用いて打撃することでシートパイルを打設する打設装置1を用いて埋設する場合、打撃力を重錘によって自由に調整でき、地盤の固い場所では、重錘を重くすることで打撃力を大きくし、所望の位置まで埋設することが可能となる。一方で、その打撃力が強力であるが故に、既に埋め込んだ一のシートパイル2に対して連結部21、31を通じて伝播してしまい、既に埋め込んだ一のシートパイル2の位置がさらに地中に沈んでしまうという問題がある。そのような問題に対して、打設装置1の強力な打撃力というメリットを維持しつつ、打撃力が伝播してしまうというデメリットを解消すべく、本願発明では、一のシートパイル2を連結した状態で他のシートパイル3を埋設する際にこの沈下防止装置4を用いることに意義がある。沈下防止装置4を用いることにより、打設装置1の打撃力を維持しながら、既に埋め込んだ一のシートパイル2への影響をなくし、連続して所望の位置にシートパイルを連続して埋設することが可能となる。
【0061】
さらに一旦埋設したシートパイルの位置ずれがあり再度シートパイル埋設をやり直すような場合、また、工事完了によりシートパイルの埋設がもはや不要となったような場合、埋設済みのシートパイルを引き抜く必要があるが、この場合には、引き抜きたいシートパイルに沈下防止装置4を接続し、昇降具45で牽引することでシートパイルを吊り上げ、縁切りした後、シートパイルを打設装置1又は他の装置等に接続し、引き抜くことができる。このように沈下防止装置4は、埋設済みのシートパイルを固定するだけでなく、シートパイルの引き抜きの際にも使用できる。なお、縁切りとは、シートパイルを引き抜く際、通常、周囲の地盤の土によりシートパイルに土圧がかかっているのを取り除く作業をいい、その方法については公知の方向で行われる。
【0062】
その他、狭い現場や斜面を含む特殊な現場では、
図11に示されるように、斜面にアウトリガー7を設置して打設装置1を配置することになるが、その場合、アウトリガー7を設置するための斜面用台71が必要となる。斜面用台71は重量が重く、人力で設置することはできないため、斜面用台71を、次に打設装置1が移動して設置する位置のアウトリガーの設置位置まで、打設装置1で吊り上げて持っていき設置する必要がある。それ故、斜面用台の数は、アウトリガーの数の2倍必要となる。また、
図11に示されるように、堤防の斜面にアウトリガー斜面用台71を設置するとき、斜面用台71が下側にずれてしまうおそれがある。それを防止するために、斜面用台と斜面用台とを鎖やワイヤー等の結合具72で連結してずれないようにしておくことが狭い斜面のある現場での作業では望ましい。
【実施例】
【0063】
ミニクレーンからなる打設装置1を使用して、斜面を含む狭い現場において本発明を実施した場合について説明するが、本発明は斜面を含まない現場でも当然適用できる。また、下記の例では先行掘を実施しているが、先行掘が必要ない場合には、これを省略することも可能である。
【0064】
事前にシートパイルを埋設する位置決めをするための白線を引き、同白線の近くに先行掘をするための装置を準備する。先行掘の装置としては、たとえば、ミニショベルのブームの先端に垂下された鉛直回転軸を備えた回転駆動機構が取り付けられ、同回転駆動機構の下端にアタッチメント及び先端に爪を有するオーガーが設けられているものなどを用いる。ブームを操作し、シートパイルを埋設する予定の位置にオーガーを移動させ、回転駆動機構を作動させ、オーガーを正回転させ掘削を開始し、所定の深さまで掘削した後、逆回転させることでオーガーを地上まで引き抜く。この作業を埋設する予定の位置において繰り返し行い、先行掘を完了させる。他方、先行掘をしない場合には、シートパイルの埋設しようとする位置の地面に印をつけ、その位置決めした場所に人力又はミニショベル等を用いて溝を掘る。
【0065】
次に、
図1に示されるような打設装置1をシートパイルの埋設予定位置付近の地上に配置する。打設装置を配置する際、斜面を含む狭い現場であれば、
図11に示されるように、斜面用台71を設置し、各斜面用台間をそれぞれ鎖やワイヤー72で固定する。その後、打設装置1のアウトリガー7を斜面用台71の上に配置する。なお、本実施例では、打設装置1として
図1からなるものを使用し、緩衝部材17については
図8、保護アタッチメント18については
図7のようなものを使用している。
【0066】
埋設予定位置付近において、保護アタッチメント18、重錘12、緩衝部材17をそれぞれ
図1のように連結した状態で、工事現場に平積みされているシートパイル2を吊り上げ、打設装置1のブーム11を操作して、シートパイル2を埋設する予定位置に移動させ、シートパイル2を溝内に建て込み自立させる。なお、打設装置1のフック19を用いてシートパイルを吊り上げ、建て込むことも可能であるが、この場合には、保護アタッチメント18、重錘12、緩衝部材17を建て込む前に一度取り外し、建て込みが終わった段階で再度取付ける。なお、シートパイルとしては、
図2乃至
図4のものを用い、現場の地盤の状況に応じて適宜選択される。
【0067】
次いで、打設装置1のブーム11を操作し、打設具8を建て込まれているシートパイル2の上部に接触するように移動させる。打設具8の下に設けられている緩衝部材17及び保護アタッチメン18がシートパイル2の上部の中心に位置し、接触していることを確認した後、移動装置16を人力で操作し、重錘(モンケン)12を上下に何度も昇降させ、シートパイル2に上方から打撃力を繰り返し加え、シートパイル2を地中の所望の位置まで埋め込む。
【0068】
シートパイル2の埋設が完了すれば、
図9に示される沈下防止装置4を用いて、地中に打設し又は地上に一部露出しているシートパイル2の上端部にクランプからなる保持具46を接続し、チェーンブロックからなる昇降具45で牽引することによって所望の位置にシートパイル2を保持する。
【0069】
さらに、打設装置1でシートパイル3を吊り上げ、シートパイル3をシートパイル2の横に所望の位置まで移動させ、埋設するシートパイル3の下端側の連結部32を一のシートパイル2の連結部21の上端側に連結する。連結については、
図6に示されるように、シートパイル2の上端側の外止具が設けられていない連結部21とこれから埋設するシートパイル3の外止具30が設けられた下端側の連結部32とを係合し、シートパイル2とシートパイル3とを連結する。
【0070】
次いで、
図10に示されるように、シートパイル2とシートパイル3を連結、かつ、シートパイル2の上端部を沈下防止装置4によって固定した状態で、打設装置1に重錘12、緩衝部材17、保護アタッチメント18を再び取付け、シートパイル2の埋設と同様の方法でシートパイル3を地中の所望の位置まで打設することによって埋設する。
【0071】
さらにシートパイルを埋設する場合には、シートパイル3について沈下防止装置4を用いて固定、連結した上で、新たな埋設する別のシートパイルについて打設装置1を用いて埋設する。この作業を繰り返すことで複数のシートパイルが連結された状態で埋設される。これら作業が終了すれば、沈下防止装置4を取り外すことで作業は終了する。
【0072】
さらに埋設したシートパイルに位置ずれがありシートパイル埋設をやり直すような場合、また、本工事が完了し、シートパイルの埋設がもはや不要となったような場合、埋設済みのシートパイルを引き抜くことが必要となる。この場合、引き抜きたいシートパイルに沈下防止装置4のクランプ46を接続し、沈下防止装置4の昇降具45を強く引き上げることによりシートパイルを吊り上げ、縁切りした後、シートパイルを打設装置1又は他の装置等に接続し引き抜く。なお、引き抜きの場合、昇降具45は埋設時に用いたものよりも強力なものを用いたほうがより容易に引き抜くことができる。
【0073】
以上の実施例では、ミニクレーンを打設装置1として使用する方法を説明したが、他の装置を用いてもよい。また、シートパイルの埋設の方法として、複数の打設装置を利用して行うこともでき、沈下防止装置を使用しないで行うこともできる。
【解決手段】複数のシートパイルを連結して埋設する方法であって、シートパイルは、シートパイルの上端部にシートパイル平面からその外側に延出するように衝撃補強部材23を備えたものを使用し、重錘を打撃する方法により対象物を打設する機能を有する打設装置を用いて、一のシートパイルを地中の所望の位置まで埋設し、他のシートパイルの連結部32を一のシートパイルの連結部21に連結し、連結状態を維持しながら、打設装置を用いて他のシートパイルを地中の所望の位置まで埋設する。