(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
脚構造体と、この脚構造体に海陸方向に移動可能に支持されるシャトルブームと、このシャトルブームに沿って前記海陸方向に走行可能に配置されるトロリとを備える岸壁クレーンにおいて、
前記脚構造体または前記シャトルブームに設置される巻取ドラムと、この巻取ドラムから繰り出されて前記シャトルブームの海側端部に設置されるガイド手段を経由して前記トロリに至る海側のロープと、前記巻取ドラムから繰り出されて前記シャトルブームの陸側端部に設置されるガイド手段を経由して前記トロリに至る陸側のロープと、前記シャトルブームと前記脚構造体との相対位置を固定および固定解除するブーム固定装置と、前記巻取ドラムが前記脚構造体に設置されているときは前記トロリと前記シャトルブームとの相対位置を固定および固定解除して前記巻取ドラムが前記シャトルブームに設置されているときは前記トロリと前記脚構造体との相対位置を固定および固定解除するトロリ固定装置とを備えていて、
前記ブーム固定装置により前記シャトルブームと前記脚構造体との相対位置を固定して前記巻取ドラムで前記海側のロープおよび前記陸側のロープのうち一方を繰り出し他方を巻き取ることにより前記トロリを走行させるトロリ駆動制御と、前記トロリ固定装置により前記シャトルブームまたは前記脚構造体に対する前記トロリの相対位置を固定して前記巻取ドラムで前記海側のロープおよび前記陸側のロープのうち一方を繰り出し他方を巻き取ることにより前記シャトルブームを移動させるブーム駆動制御とを行なう構成を備えることを特徴とする岸壁クレーン。
前記ブーム固定装置および前記トロリ固定装置の少なくとも一方が、相対位置を固定される一方の部材に設置される被把持部と、相対位置を固定される他方の部材に設置されて前記被把持部を前記海陸方向の両側から挟み込むメインラッチおよびサブラッチとを備える請求項1または2に記載の岸壁クレーン。
前記ブーム固定装置および前記トロリ固定装置の少なくとも一方が、相対位置を固定される一方の部材に形成されるアンカーガイド孔と、相対位置を固定される他方の部材に設置されて前記アンカーガイド孔に抜き差し可能に構成される柱状または筒状のアンカーとを備える請求項1または2に記載の岸壁クレーン。
前記ブーム固定装置および前記トロリ固定装置の少なくとも一方が、相対位置を固定される一方の部材に設置されるガイドレールと、相対位置を固定される他方の部材に設置されて前記ガイドレールを挟持するクランパとを備える請求項1または2に記載の岸壁クレーン。
前記ブーム固定装置および前記トロリ固定装置の少なくとも一方が、相対位置を固定される一方の部材に形成される係合凹部と、相対位置を固定される他方の部材に設置されて前記係合凹部に抜き差し可能に構成される係合機構とを備えていて、
前記係合機構が、支軸と、この支軸に回転可能な状態で連結されている一対のアームと、前記支軸を中心にして前記一対のアームを回動させる駆動部とを備え、
前記駆動部により、前記一対のアームが所定の開き角度になって前記支軸を中心として回動不可能になるロック位置と、前記ロック位置の開き角度よりも開き角度が小さくて前
記一対のアームが前記支軸を中心として回動自在である待機位置とに回動し、
前記待機位置の状態の前記一対のアームを前記係合凹部に挿入した後、前記ロック位置に回動させて、それぞれの前記アームの先端部を前記係合凹部の対向する面に押圧して、前記一対のアームを前記係合凹部に固定させる構成である請求項1または2に記載の岸壁クレーン。
脚構造体に海陸方向に移動可能に支持されるシャトルブームと、このシャトルブームに沿って前記海陸方向に走行可能に配置されるトロリとを備える岸壁クレーンの制御方法において、
前記脚構造体または前記シャトルブームに巻取ドラムを設置して、この巻取ドラムから前記シャトルブームの海側端部に設置されているガイド手段を経由して前記トロリに至る海側のロープを配置して、前記巻取ドラムから前記シャトルブームの陸側端部に設置されているガイド手段を経由して前記トロリに至る陸側のロープを配置して、
前記脚構造体と前記シャトルブームとの相対位置を固定した後に、前記巻取ドラムで前記海側のロープおよび前記陸側のロープのうち一方を繰り出して他方を巻き取ることにより前記トロリを走行させるトロリ駆動制御と、
前記巻取ドラムが前記脚構造体に設置されているときは前記トロリと前記シャトルブームとの相対位置を固定して前記巻取ドラムが前記シャトルブームに設置されているときは前記トロリと前記脚構造体との相対位置を固定した後に、前記巻取ドラムで前記海側のロープおよび前記陸側のロープのうち一方を繰り出して他方を巻き取ることにより前記シャトルブームを移動させるブーム駆動制御とを行なうことを特徴とする岸壁クレーンの制御方法。
前記海側のロープおよび前記陸側のロープを、前記トロリに設置されているガイド手段を経由して前記トロリの下方に配置されている吊り具に連結するとともに、前記海側のロープまたは前記陸側のロープのいずれか一方の張力を調整するロープテンショナーを設置して、
前記海側のロープまたは前記陸側のロープのいずれか一方の張力を調整しながら前記トロリ駆動制御または前記ブーム駆動制御を行なう請求項7に記載の岸壁クレーンの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、本発明の第1実施形態について説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明に係る岸壁クレーン1は、海脚2a及び陸脚2b等より構成された脚構造体2と、脚構造体2に対して海側又は陸側方向にスライド可能に設置したトラス構造のシャトルブーム(以下、ブームと称する。)3と、海脚2a及び陸脚2bの下部に設けた複数の走行装置4によって構成され、岸壁Gに敷設したレール(図示せず)上を走行可能になっている。上記レールは、紙面を貫通する方向に敷設されている。
【0016】
岸壁クレーン1は、
図2及び
図3に示すように、海脚2a及び陸脚2bにそれぞれ片持ち梁式のブーム支持体5を備え、その自由端に支持ローラ6を備えている。正面視、凹字状に形成されたブーム3は、複数の支持ローラ6によって支持され、海側又は陸側方向に移動可能になっている。海脚2a及び陸脚2bの上端部に設けられている水平部材9は、支持車輪10を備え、ブーム3の浮き上がりを抑制するようになっている。本明細書において脚構造体2とは、海脚2aおよび陸脚2bに加えて、上記のブーム支持体5や水平部材9を含む構造をいう。
【0017】
岸壁クレーン1は、
図1に示すように、ブーム3内に機械室11及びトロリ7を備え、機械室11内に設置された巻取ドラム12より繰り出した一方(海側)のロープ13aをブーム3の海側端部に設けたシーブ(ガイド手段)14aを経由してトロリ7の海側端7aに連結すると共に、巻取ドラム12より繰り出した他方(陸側)のロープ13bをブーム3の陸側端部に設けたシーブ(ガイド手段)14bを経由してトロリ7の陸側端7bに連結している。上記巻取ドラム12の設置個所は、ブーム3に限るものではなく、脚構造体2でも良い。
【0018】
この際、海側のロープ13aは、巻取ドラム12の周面に一方向に巻き付けられ、陸側のロープ13bは、巻取ドラム12の周面に海側のロープ13aとは逆方向に巻き付けられている。そのため巻取ドラム12を回転させると海側のロープ13aまたは陸側のロープ13bの一方が繰り出され、他方が巻き取られる。
【0019】
トロリ7には図示しない巻取ドラムが設置されている。この巻取ドラムから繰り出されたロープにより吊り具8の上下移動が制御される。吊り具8の上下移動を行なう巻取ドラムが脚構造体2に設置される構成にしてもよい。
【0020】
脚構造体2は、ラッチ式のシャトルブーム固定装置(以下、ブーム固定装置と云う。)15a,15bを備え、
図1のコンテナ荷役作業時は、陸脚2bに設けたブーム固定装置15bによって海側に突き出したブーム3を固定し、
図4のコンテナ船離接岸時は、海脚2aに設けたブーム固定装置15aによって陸側に後退したブーム3を固定するようになっている。
【0021】
図5に示すように、陸脚2bに設けたブーム固定装置15bは、陸脚2bに設置されるL字状のメインラッチ16と直線状のサブラッチ17の2つのラッチと、ブーム3に設置される被把持部23bとで構成されている。
【0022】
メインラッチ先端のL字状の屈曲部16aとサブラッチ先端の円弧状の切欠部17aによって、ブーム3の陸側に設けられていて横断面が円筒状又は円柱状の被把持部23bを把持するようになっている。この被把持部23bは、シャトルブーム3の移動方向である海陸方向において、海側または陸側への移動のうち一方をメインラッチ16により拘束され、他方をサブラッチ17により拘束されている。つまり被把持部23bは、メインラッチ16およびサブラッチ17により、海陸方向の両側から挟み込まれた状態となっている。この被把持部23bは、ブーム3を横切る横桁状の部材であり、ブーム3が海側に突き出したコンテナ荷役作業時に、陸脚2bに設けたブーム固定装置15bが把持できる位置に設置されている。
【0023】
図5では、被把持部23bに接触するL字状の屈曲部16aの接触部(内側部)が直線状に図示されているが、これに限定されるものではなく、円弧状でも良い。また、メインラッチ16の屈曲部16a、つまり、先端部は、L字状に限定されるものではなく、例えば、アルファベットのJの字のようなフック形でも良い。
【0024】
L字状の屈曲部16aの内側部にブーム3に設けた被把持部23bの有無を検出するラッチ掛り確認センサ22をメインラッチ16に設置する構成にしてもよい。ラッチ掛り確認センサ22は、所望により被把持部23bに設置しても良い。
【0025】
メインラッチ16及びサブラッチ17は、ブラケット18を介して陸脚2bに設けた支持軸19に起伏自在に取り付けられている。メインラッチ16の起伏は、メインラッチ16と陸脚2bの間に設けた第1の起伏装置20によって行われ、サブラッチ17の起伏は、サブラッチ17と陸脚2bの間に設けた第2の起伏装置21によって行われる。第1及び第2の起伏装置20,21としては、流体シリンダ、電動スクリュージャッキ等を挙げることができる。
【0026】
なお、海脚2aに設けたブーム固定装置15aは(
図6参照)、陸脚2bに設けたブーム固定装置15bと構造が同じであるから、同じ部品に同じ符号を付け、詳しい説明を省略する。なお、ラッチ式のブーム固定装置15a、15bの構成は上記に限定されない。例えばラッチ16、17をブーム3に設置して、被把持部23bを脚構造体2側に設置する構成にしてもよい。上記の実施形態では二つのブーム固定装置15a、15bを岸壁クレーン1に設置する構成としているが、本発明はこれに限定されない。ブーム固定装置15は、
図1に例示する海側に突出した作業位置と
図4に例示する陸側に突出した休止位置とで、脚構造体2に対してブーム3を固定できる構成を有していればよい。そのため岸壁クレーン1に設置されるブーム固定装置15は、一つでもよく三つ以上でもよい。
【0027】
更に、岸壁クレーン1は、アンカー式のトロリ固定装置25を備えている。アンカー式のトロリ固定装置25は、
図9に示すように、脚構造体2に設置した流体シリンダ26と、流体シリンダ26の摺動軸27に設けた平板状又は柱状又は筒状のアンカー28と、トロリ7に設けたアンカーガイド孔31とで構成されている。流体シリンダ26は、例えば油圧シリンダやエアシリンダ等で構成することができる。
【0028】
アンカー28は、位置決め等を図るため、側方に突出するフランジ状の耳部28aを備えている。
図9に例示するようにトロリ固定装置25が、脚構造体2に設置されるガイド29を備える構成にしてもよい。ガイド29はアンカー28を案内する開口部29aを有
している。脚構造体2に対してトロリ7が水平方向に移動しようとしたとき、アンカー28がガイド29に接触することにより、ガイド29が水平方向の力を支持することができる。流体シリンダ26の故障等を回避するには有利である。
【0029】
アンカー式のトロリ固定装置25の構成は上記に限定されない。トロリ固定装置25は、トロリ7と脚構造体2との相対位置を固定できる構成を有していればよく、例えばアンカー28等をトロリ7側に設置してアンカーガイド孔31を脚構造体2に形成する構成にしてもよい。
【0030】
巻取ドラム12が脚構造体2に設置されている場合には、トロリ固定装置25はトロリ7とブーム3との相対位置を固定できる構成を有していればよい。
【0031】
ここで、アンカー式のトロリ固定装置25の設置位置としては、
図4に例示するようにブーム3の海側端より距離Lだけ陸側に後退した位置、すなわち、ブーム3を陸側に後退させた時に、トロリ7の運転室70が脚構造体2に設置した階段やエレベータ等に対峙する位置が望ましい。
次に、岸壁クレーン1の動作について説明する。
【0032】
図1に示すように、海側に突出したブーム3をブーム固定装置15bによって陸脚2bに固定する一方、トロリ固定装置25を解除してトロリ7を横行自在の状態とする。機械室11内の巻取ドラム12を回転させて陸側のロープ13bを巻き取ると同時に海側のロープ13aを繰り出すと、トロリ7が陸側に後退する(トロリ駆動制御)。
【0033】
一方、巻取ドラム12を回転させて海側のロープ13aを巻き取ると同時に陸側のロープ13bを繰り出すと、トロリ7が海側に前進する(トロリ駆動制御)。吊り具8の巻き上げ及び巻下げは、トロリ7または脚構造体2に設置した巻取りドラム(図示せず)によって行われる。符合Cは、吊り具8に把持されたコンテナを示している。
【0034】
コンテナの荷役作業終了後、岸壁Gから離岸するコンテナ船Sが岸壁クレーン1のブーム3と干渉しないようにするためには、ブーム3を陸側に後退させる。
【0035】
先ず、トロリ7をブーム3の海側端から距離Lだけ陸側に後退した所定の位置に移動させる。トロリ7の移動距離は、例えば、巻取ドラム12を回転させる駆動モータのモータ軸に設けたエンコーダ等の検出装置によって検出することができる。
【0036】
次に、
図9に示すように、脚構造体2に設けたトロリ固定装置25の流体シリンダ26を作動させてアンカー28を上方に突き出す。トロリ7に形成されるアンカーガイド孔31にアンカー28の先端が挿入され、トロリ7が脚構造体2に固定される。
【0037】
次に、陸脚2bに設けたブーム固定装置15bを解除してブーム3を移動可能にした後、巻取ドラム12を回転させて陸側のロープ13bを巻き取ると同時に海側のロープ13aを繰り出すと、
図4に示すようにブーム3が陸側に後退する(ブーム駆動制御)。
【0038】
次に、海脚2aに設置したブーム固定装置15aによってブーム3を海脚2aに固定する。その際、
図7に示すように、先ず、L字状のメインラッチ16を下方に向けて回動させてメインラッチ16のアーム部をブーム3の海側端に設けた横桁状の被把持部23aに持たせ掛ける。次いで、ブーム3を海側に前進させる。メインラッチ16のアーム部をブーム3の被把持部23aに持たせ掛けた後、ブーム3を海側に前進させる工程は、先端部がJの字のようなフック形のメインラッチ16を用いた場合も同じである。
【0039】
ブーム3の前進により、ブーム3の海側端に設けた被把持部23aがメインラッチ先端のL字形の屈曲部16aに設けられているセンサ22に接触すると、センサ22の接触信号によりブーム3を自動的に停止させる。ブーム3が停止すると、サブラッチ17を下方に向けて回動させ、
図8に示すように、サブラッチ先端の円弧状の切欠部17aをブーム3の海側端に設けた被把持部23aに押し当てる。それ故、ブーム3の被把持部23aがメインラッチ先端のL字状の屈曲部16aとサブラッチ先端の円弧状の切欠部17aによって把持され、ブーム3が海脚2aに固定される。
【0040】
ここで、ブーム固定装置15a,15bとしては、既に説明したラッチ式のブーム固定装置のほか、アンカー式のブーム固定装置、クランプ式のブーム固定装置、開脚式のブーム固定装置等を挙げることができる。
【0041】
クランプ式のブーム固定装置15cは、
図10に示すように、正面視におけるブーム3の上方の左右両側に設けられている各ガイドレール33と、脚構造体2の水平部材9に設置されるクランパ34とで構成される。クランプ式のブーム固定装置15cは、左右一対のクランパ34でガイドレール33を挟持することにより、脚構造体2とブーム3との相対位置を固定する。クランプ式のブーム固定装置15cの構成は上記に限定されない。例えばガイドレール33を脚構造体2側に設置して、クランパ34をブーム3に設置する構成にしてもよい。
【0042】
アンカー式のブーム固定装置15dは、
図11に示すように、脚構造体2に設置した流体シリンダ26と、流体シリンダ26の摺動軸27の自由端に設けた柱状又は筒状のアンカー28と、ブーム3の一部を貫通する状態で形成されるアンカーガイド孔31より構成されている。アンカー28は、位置決め、或いは落下防止等を図るため、その上端部にフランジ状の耳部28aを備えている。
【0043】
図11に例示するようにブーム固定装置15dが、脚構造体2に設置されるガイド29を備える構成にしてもよい。ガイド29はアンカー28を案内する開口部29aを有している。脚構造体2に対してシャトルブーム3が水平方向に移動しようとしたとき、アンカー28がガイド29に接触することにより、ガイド29が水平方向の力を支持することができる。流体シリンダ26の故障等を回避するには有利である。
【0044】
アンカー式のブーム固定装置15dの構成は上記に限定されない。例えばアンカー28をブーム3に設置して、アンカーガイド孔31を脚構造体2に形成する構成にしてもよい。
【0045】
開脚式のブーム固定装置15eは、
図12に示すように、ブーム3に設置されて一対のアーム54等を備える係合機構と、脚構造体2に形成される係合凹部53とを備えている。係合機構は固定具51により移動体であるブーム3の側面に固定されていて、対象体である脚構造体2または脚構造体2の天面に形成された係合凹部53に対して係脱自在に構成される。なお、
図12では、脚構造体2の天面に設置した部材52に設けた係合凹部53を破線で示している。
【0046】
この係合機構は、一対のアーム54と、このアーム54を回動可能に支持する支軸55を備える。この支軸55は、アーム54の正面と背面を挟み込んだ状態に配置される連結具56を介して駆動部57に連結される。この実施形態おいて、駆動部57は、鉛直方向zに伸縮し、係合凹部53に対してアーム54を接近離間させることができる伸縮シリンダ57で構成される。なお、
図12では、連結具56を破線で示し、その背後の支軸55を見通した状態を図示している。
【0047】
支軸55に連結される一対のアーム54は、支軸55が貫通する内側端部とは反対側となる外側端部に回転可能な状態にそれぞれ設置されるローラ58を備えている。このローラ58は、略円柱形状に形成され、アーム54を挟み込んだ状態でアーム54の正面と背面の両側にそれぞれ設置される。
【0048】
係合凹部53は、係合機構側に開口して、ブーム3の移動方向である横行方向xを長手方向とする状態に形成される。この係合凹部53は、アーム54が挿入された際にアーム54の外側端部に設置されるローラ58に押圧される押圧面59を備える。この押圧面59は、ブーム3の移動方向(横行方向x)の軸線上に位置する対向する面であり、ローラ58の周面に沿う曲面で構成されている。係合凹部53は、脚構造体2に直接形成しても良い。
【0049】
図12に例示するアーム54は、待機位置であり、待機位置にある一対のアーム54が成す角度であって係合凹部53側の開き角θは、180°よりも小さく構成される。横行方向xにおけるアーム54の開き幅W1は係合凹部53の対向する押圧面59の間の開き幅Wxよりも小さく構成される。なお、アーム54の開き幅W1は、横行方向xにおけるアーム54およびローラ58の最大全長をいう。
【0050】
次に、上記ブーム固定装置15eの作用を説明する。まず、ブーム3を
図1に示す荷役作業位置または
図4に示す休止位置に対応する係合凹部53に対して係合機構の位置を合わせる。この位置合わせが完了した後、係合機構の伸縮シリンダ57を伸長させて、一対のアーム54を係合凹部53に向かって移動させる。待機位置にあるアーム54の開き幅W1は係合凹部53の開き幅Wxよりも小さいので、アーム54を係合凹部53にスムーズに挿入することができる。
【0051】
アーム54の外側端部に設置されるローラ58が係合凹部53の底面に接触すると、ローラ58が回転しながら互いに離れる方向に移動していき、これに伴い一対のアーム54は開いていく。更に伸縮シリンダ57が伸長すると、ローラ58がそれぞれ係合凹部53の押圧面59に押圧され、一対のアーム54はロック状態となる。
【0052】
開脚式のブーム固定装置15eの構成は上記に限定されない。例えば係合機構を脚構造体2に設置して、係合凹部53をブーム3に形成する構成にしてもよい。
【0053】
他方、トロリ固定装置25としては、既に説明したアンカー式のトロリ固定装置のほか、ラッチ式のトロリ固定装置等を挙げることができる。ラッチ式のトロリ固定装置は、
図5に示すようなラッチ式のブーム固定装置と同様の機構で構成することができる。
【0054】
つまりブーム3と脚構造体2との相対位置を固定するブーム固定装置15と、トロリ7と脚構造体2との相対位置を固定するトロリ固定装置25とはいずれも二つの部材の相対位置を固定するものであり、いずれも上記のラッチ式、アンカー式、クランプ式、開脚式の固定装置を適宜選択して採用することができる。例えばラッチ16、17と被把持部23aなど固定装置を構成する一組の機構は、相対位置を固定される二つの部材のうちいずれにラッチ16、17が設置されてもよい。
【0055】
なお巻取ドラム12が脚構造体2に設置される場合には、トロリ固定装置25はトロリ7とブーム3との相対位置を固定する構成を有する。
【0056】
固定装置15、25を構成する機構の一部を脚構造体2に設置する場合、海脚2aまたは陸脚2bに設置する場合の他に、ブーム支持体5や水平部材9に設置してもよい。
【0057】
またブーム固定装置15およびトロリ固定装置25は、二つの部材の相対位置を固定する構成を備えていれば、前述したラッチ式、アンカー式、クランプ式、開脚式以外の構成を採用してもよい。
【0058】
上記のとおり、ブーム固定装置15によりブーム3を脚構造体2に固定した後にトロリ7を移動させるトロリ駆動制御と、トロリ固定装置25によりトロリ7を脚構造体2に固定した後にブーム3を移動させるブーム駆動制御とは、いずれか一方が選択的に実行されるものであり、両方が同時に実行されることはない。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0059】
第2実施形態は、下記の(a)及び(b)の2つの構成を除くと、第1実施形態と変わりがないため、(a)及び(b)の2つの構成以外の大部分の構成は、第1実施形態の構成をそのまま適用する。
【0060】
第2実施形態は、(a)脚構造体又はシャトルブームに設置した巻取ドラムより繰り出した一方(海側)のロープをシャトルブームの海側に設けたガイド手段及びトロリに設けたガイド手段を経てトロリの下方に位置する吊り具に連結すると共に、巻取ドラムより繰り出した他方(陸側)のロープをシャトルブームの陸側に設けたガイド手段及びトロリに設けたガイド手段を経てトロリの下方に位置する吊り具に連結すること、及び(b)巻取ドラムの海側又は陸側のいずれか一方に設置したロープテンショナーによってロープの張力を調整しながらシャトルブームのスライド操作又はトロリの横行操作を行うことの2点が第1実施形態と相違している。
【0061】
図13に示すように、岸壁クレーン1は、ブーム3内に機械室11及びトロリ7を備え、機械室11内に設置された巻取ドラム12より繰り出した一方(海側)のロープ13aがブーム3の海側に設けたシーブ(ガイド手段)14a及びトロリ7の海側に設けたシーブ(ガイド手段)24a(
図14参照)を経由してトロリ7の下方に位置している吊り具8に連結される。巻取ドラム12より繰り出した他方(陸側)のロープ13bがブーム3の陸側に設けたシーブ(ガイド手段)14b及びトロリ7の陸側に設けたシーブ(ガイド手段)24b(
図14参照)を経由してトロリ7の下方に位置している吊り具8に連結される。
【0062】
また、岸壁クレーン1は、巻取ドラム12よりも陸側に位置するように陸脚2bの近傍にロープテンショナー35を備え、陸側のロープ13bおよび海側のロープ13aの張力を調整するようになっている。
【0063】
ロープテンショナー35は、上下一対のローラ36,37から構成され、流体シリンダ38によって上部ローラ36が上下することにより、陸側のロープ13bの張力が海側のロープ13aの張力と同等となるように制御されるようになっている。つまり陸側のロープ13bの見かけ上の長さを変化させることができる。なお、所望により、巻取ドラム12よりも海に位置して設置したロープテンショナー35によって海側のロープ13aの張力を調整することも可能である。
【0064】
このロープテンショナー35は例えば箱体等の中に配置して、箱体とともに脚構造体2またはブーム3に設置する構成にすることができる。また一対のローラ36、37を水平方向に並べる構成にしてもよい。
次に、岸壁クレーン1の動作について説明する。
(1)トロリ7の横行:
【0065】
図13に示すように、海側に突出したブーム3をブーム固定装置15bによって陸脚2
bに固定し、トロリ固定装置(図示せず)を解除してトロリ7を横行可能にし(トロリ駆動制御)、更に、ブレーキ手段39a(
図14参照)によって海側のロープ13aをトロリ7のシーブ24aに固定すると共に、ブレーキ手段39b(
図14参照)によって陸側のロープ13bをトロリ7のシーブ24bに固定する。その後巻取ドラム12を回転させて海側のロープ13aを巻き取るとともに陸側のロープ13bを繰り出すと、トロリ7が海側に前進する。この際に陸側のロープ13bの張力が変動すると、ロープテンショナー35の上部ローラ36が上下動して、陸側のロープ13bの張力が海側のロープ13aの張力と同等になるように調整される。
【0066】
一方、巻取ドラム12を回転させて陸側のロープ13bを巻き取るとともに海側のロープ13aを繰り出すと、トロリ7が陸側に後退する。この際にも上記と同様に陸側のロープ13bおよび海側のロープ13aの張力がロープテンショナー35により調整される。
【0067】
上記ブレーキ手段39a,39bは、
図14に示すように、ロープ13a,13bをシーブ24a,24bに押圧するブレーキシュー40と、ブレーキシュー40を上下する流体シリンダ41から構成されている。
(2)吊り具8の巻き上げ及び巻き下げ:
【0068】
図13に示すように、ブーム固定装置15bによりブーム3を固定して、ブレーキ手段39a,39bによるロープ13a,13bの固定を解除した後に、巻取ドラム12を回転させて海側のロープ13aを繰り出す。海側のロープ13aの繰り出しとともに陸側のロープ13bは巻き取られる。この際にロープテンショナー35により陸側のロープ13bの見かけ上の長さを長くすると、吊り具8が巻き下げられる。陸側のロープ13bは、巻取ドラム12に巻き取られるが、吊り具8の巻き下げを妨げないように巻取ドラム12により巻き取られる長さ以上にロープテンショナー35から繰り出される。
【0069】
また、巻取ドラム12を回転させて海側のロープ13aを巻き取ると吊り具8が巻き上げられる。陸側のロープ13bは、巻取ドラム12から繰り出されるが、吊り具8の巻き上げを妨げないように巻取ドラム12から繰り出される長さ以上にロープテンショナー35から繰り出される。
【0070】
つまりロープテンショナー35の作動にともなう陸側のロープ13bの長さの変化により、吊り具8の上下動を制御することができる。
(3)更に、ブーム3の前後動:
【0071】
図13に示すように、海側に突出したブーム3を陸脚2bに固定しているブーム固定装置15bを解除し、トロリ固定装置(図示せず)によってトロリ7を脚構造体2に固定し(ブーム駆動制御)、更に、ブレーキ手段39a(
図14参照)によってロープ13aをトロリ7のシーブ24aに固定すると共に、ブレーキ手段39b(
図14参照)によってロープ13bをトロリ7のシーブ24bに固定した後、巻取ドラム12で陸側のロープ13bを巻き取るとともに海側のロープ13aを繰り出すと、ブーム3が陸側に後退する。ブーム3の移動にともなう陸側のロープ13bの張力の変動は、ロープテンショナー35により調整される。
【0072】
また、陸側に後退したブーム3を海脚2aに固定しているブーム固定装置15aを解除し、トロリ固定装置(図示せず)によってトロリ7を脚構造体2に固定し、更に、ブレーキ手段39a(
図14参照)によってロープ13aをトロリ7のシーブ24aに固定すると共に、ブレーキ手段39b(
図14参照)によってロープ13bをトロリ7のシーブ24bに固定した後、巻取ドラム12で海側のロープ13aを巻き取るとともに陸側のロープ13bを繰り出すと、ブーム3が海側に前進する。
【0073】
図15に例示するように海側のロープ13aの巻き取りおよび繰り出しを行なう海側の巻取ドラム12aと、陸側のロープ13bの巻き取りおよび繰り出しを行なう陸側の巻取ドラム12bとを備える構成にすることができる。つまり二つの巻取ドラム12によりロープ13の巻き取りおよび繰り出しを独立して制御する構成にすることができる。この二つの巻取ドラム12はブーム3に設置されている。
【0074】
海側および陸側の巻取ドラム12で各ロープ13a、13bを同時に巻き取ることにより吊り具8を上昇させ、各ロープ13a、13bを同時に繰り出すことにより吊り具8を下降させることができる。
【0075】
ブーム固定装置15によりブーム3を脚構造体2に固定してトロリ7を横行可能な状態とした後に、海側のロープ13aを繰り出し陸側のロープ13bを巻き取ると、トロリ7は陸側に横行する。海側のロープ13aを巻き取り陸側のロープ13bを繰り出すと、トロリ7は海側に横行する。
【0076】
ブーム固定装置15の解除によりブーム3をスライド可能な状態としてトロリ固定装置25によりトロリ7を脚構造体2に固定した後に、海側のロープ13aを繰り出し陸側のロープ13bを巻き取るとブーム3は陸側にスライドする。海側のロープ13aを巻き取り陸側のロープ13bを繰り出すと、ブーム3は海側にスライドする。なお、前述と同様に巻取ドラム12が脚構造体2に設置されている場合には、トロリ固定装置25によりトロリ7がブーム3に固定される。
【0077】
二つの巻取ドラム12で各ロープ13a、13bの長さを独立して制御する構成により、
図13に例示するロープテンショナー35の設置が不要となる。ロープテンショナー35を設置するスペース等が確保し難い場合に有利である。
【0078】
また二つの巻取ドラム12の制御によりトロリ7の横行およびブーム3のスライドを制御できるため、
図14に例示するブレーキ手段39a、39bの設置が不要となる。トロリ7の重量をより軽量にするには有利である。トロリ7が軽量なほど、トロリ7の横行時の慣性力が小さくなり、トロリ7の停止位置の精度を向上するには有利である。
【0079】
図16に例示するように吊り具8の上面にシーブ8aを設置して、海側のロープ13aおよび陸側のロープ13bをこのシーブ8aに掛け回す構成にすることができる。この実施形態では海側のロープ13aおよび陸側のロープ13bは一つながりの一本のロープで構成されている。
【0080】
またロープ13a、13bをトロリ7のシーブ24a、24bに対して同時に固定するブレーキ手段39が、トロリ7に設置されている。つまり一つのブレーキ手段39により二つのシーブ24a、24bにブレーキをかけることができる。
【0081】
図15に例示する実施形態と同様に、二つのドラム12a、12bで各ロープ13a、13bを同時に巻き取りまたは繰り出すことにより、吊り具8の上昇および下降を制御することができる。
【0082】
トロリ7の横行やブーム3のスライドを行なう際には、ブレーキ手段39により各ロープ13a、13bを各シーブ24a、24bに固定した後に、
図15に例示する実施形態と同様の制御を行なう。
【0083】
海側のロープ13aと陸側のロープ13bとが一つながりであるため、両方のロープ1
3a、13bの張力を一定に保つことができる。海側のロープ13aと陸側のロープ13bとの張力差により吊り具8が傾くことを防止できる。吊り具8の振れを抑制し易くなるので、荷役等の作業効率を向上するには有利である。
【0084】
ブレーキ手段39により各シーブ24a、24bと吊り具8のシーブ8aとの間のロープの長さが固定されるので、ブーム3およびトロリ7の移動の際に吊り具8やコンテナCが上下動することがない。吊り具8の振れを抑制し易くなるので、荷役等の作業効率を向上するには有利である。また岸壁クレーン1の操作時における安全性を向上するには有利である。