(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、サイドシルパネル等の車体に対して内装部品本体を取り付けるための係合爪を有する取付構造を備えるキッキングプレート等の内装部品がある(特許文献1)。
従来の内装部品における取付構造は、係合爪の両側にスリットを有するとともに、係合爪の一部が型抜方向に対して交差して外方に突出しているので、内型及び外型の2つの金型だけでは形成できないアンダーカット部が存在している。
ここで、アンダーカット処理のため、内型及び外型とは別に、内型及び外型を脱型する方向とは異なる方向に脱型可能なスライド型を利用している。
そして、係合爪の両側に、係合爪が弾性変形する方向に開口するスリットを形成するため、スライド型を脱型する方向は、係合爪が弾性変形する方向と同じ方向としている。
また、スライド型は、脱型の際に、水平移動させるものであるから、スライド型の移動軌跡の範囲に製品の一部が干渉物として存在しないことが前提となる。
このため、従来は、スライド型の移動軌跡の範囲に内装部品本体の周縁に設けられるフランジ等の干渉物が存在しないように配慮して、例えばフランジの一部を切り欠く等することにより内装部品本体を設計するか、あるいは、内装部品本体に対して取付構造をなるべく中央に寄せて配置する必要があった。
しかしながら、このような制約は、内装部品本体における設計の自由度を低下させて内装部品本体自体の剛性を低下させたり、また、内装部品本体に対する取付構造の配置設計の自由度を低下させて車体に対する内装部品の支持剛性を低下させたりしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、設計の自由度及び剛性を高められる内装部品及び内装部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の内装部品は、内装部品本体と、前記内装部品本体を車体に取り付けるための取付構造と、を備える内装部品であって、前記取付構造は、前記内装部品本体から立設する脚部と、前記脚部の先端に設けられるガイド部と、前記ガイド部から前記内装部品本体側に延在し、互いに離間して対向する一対の弾性係合爪と、前記脚部と前記弾性係合爪との間にスリットを有し、前記一対の弾性係合爪における離間方向の間隔は、前記脚部における離間方向の寸法以上である。
(2)上記(1)の構成において、前記離間方向は、前記内装部品本体の短手方向である。
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記一対の弾性係合爪における離間方向の間隔は、前記脚部における離間方向の寸法に等しい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかの構成において、前記内装部品本体は、複数の前記取付構造を有し、前記取付構造は、前記内装部品本体の長手方向に沿う仮想中立線より一方側と他方側とにそれぞれ偏心するように配置される。
(5)上記(1)から(4)のいずれかの構成において、前記内装部品本体は、複数の前記取付構造を有し、前記取付構造は、前記内装部品本体の長手方向に沿う仮想中立線より一方側に偏心する偏心量の合計と、他方側に偏心する偏心量の合計とが等しくなるように配置される。
(6)本発明の内装部品の製造方法は、互いに離間して対向する一対の弾性係合爪を有する取付構造を備えた内装部品の製造方法であって、前記取付構造の外形状を形成するための一対のスライド型を設置するスライド型設置ステップと、前記取付構造の内形状を形成するための内型を設置する内型設置ステップと、前記一対のスライド型と前記内型との間に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出する射出ステップと、前記一対のスライド型及び前記内型から前記取付構造を脱型する脱型ステップと、を含み、前記脱型ステップにおいて、前記一対のスライド型を、前記離間方向に対して直交する方向において互いに反対方向に平行移動させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、設計の自由度及び剛性を高められる内装部品及び内装部品の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態)
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。特に説明のない限り、車外側、車室側、前方、後方、左方、右方、上方及び下方は、それぞれ車両を中心とした際の方向を示す。また、キッキングプレート100の長手方向をX、長手方向Xに直交するキッキングプレート100の短手方向をY、車両の上下方向又はキッキングプレート100の高さ方向をZとする(
図2参照)。
なお、以下の実施形態においては、車両のドアサイドシルパネル200(車体)に取り付けられるキッキングプレート100(内装部品)を例として挙げて説明するが、これに限らず、車両の他部に取り付けられる他の内装部品にも本発明を適用できる。
【0009】
図1は、車両のドアサイドシルパネル200(車体)に取り付けられたキッキングプレート100(内装部品)の斜視図である。
図2は、キッキングプレート100の斜視図である。
図3は、
図2におけるA矢視断面詳細図である。
図4は、
図2におけるキッキングプレート100を裏返した状態のキッキングプレート100の斜視図である。
図5は、
図4におけるB部詳細図である。
図6は、
図5におけるC矢視図である。
図7は、
図5におけるD矢視図である。
図8は、スライド型L,Rを脱型する方向を説明する説明図であり、
図8(a)は一方のスライド型Lの断面図であり、
図8(b)は取付構造20とスライド型L,Rとの関係を示す断面図であり、
図8(c)は他方のスライド型Rの断面図であり、
図8(d)は
図8(b)におけるF矢視端面図であり、
図8(e)は取付構造20の平面図であり、
図8(f)は取付構造20の正面図である。
図9(a)は
図5におけるE矢視断面図であり、
図9(b)はE矢視断面図に対応する第1変形例における断面図であり、
図9(c)はE矢視断面図に対応する第2変形例における断面図であり、
図9(d)はE矢視断面図に対応する第3変形例における断面図である。
【0010】
図1から
図4に示すように、キッキングプレート100(内装部品)は、車両のドアサイドシルパネル200(車体)に取り付けられるものである。
キッキングプレート100は、
図4に示すように、内装部品本体10と、内装部品本体10をドアサイドシルパネル200に取り付けるための取付構造20と、を備える。なお、本実施形態において、取付構造20は内装部品本体10の下面の四箇所に設けられている。
キッキングプレート100は、射出成形によって形成される樹脂製の部材であり、全体が板状であり、ドアサイドシルパネル200の形状に沿って細長い形状となっている。
【0011】
ドアサイドシルパネル200は、取付構造20が挿入されて係合される係合孔200aを有している。係合孔200aは、取付構造20の形状に対応する大きさ及び形状の矩形状の孔となっている。
そして、係合孔200aに取付構造20を挿入して係合することにより、キッキングプレート100がドアサイドシルパネル200に取り付けられる。
【0012】
図5に示すように、取付構造20は、内装部品本体10から立設する脚部21と、脚部21の先端に設けられるガイド部22と、ガイド部22から内装部品本体10側に延在し、互いに離間して対向する一対の弾性係合爪23と、脚部21と弾性係合爪23との間にスリット24を有する。
取付構造20は、内装部品本体10と一体に形成されている。これにより、内装部品本体10と取付構造20との間の強度を確保でき、量産性を確保できる。なお、取付構造20は、内装部品本体10と別体に形成してもよい。
【0013】
脚部21は、内装部品本体10と一体に形成され、取付構造20の先端に設けられるガイド部22を支持する。
また、脚部21は、一対あり、お互いが離間して対向している。そして、一対の脚部21のそれぞれが、ガイド部22を矩形状に構成する四辺のうちの対向する二辺を支持している。
【0014】
ガイド部22は、全体が平面視において矩形状となっている(
図5、
図7、
図8(e)参照)。
また、ガイド部22は、先端側に傾斜部22s(
図5及び
図6参照)を有する。これにより、取付構造20を係合孔200aに円滑に案内できる。
ガイド部22には、ガイド部22を矩形状に構成する四辺のうち、対向する二辺と内装部品本体10との間を繋ぐように脚部21が形成されており、脚部21が形成されていない対向する二辺には、弾性係合爪23がそれぞれの辺に設けられている。
【0015】
弾性係合爪23は、隣接するスリット24の間に設けられ、全体が板状のものである。そして、弾性係合爪23は、中央に、係合孔200aの内寸法より大きい外寸法を有し、外側に膨らんだ膨出部23gを有する。
弾性係合爪23は、一対あり、お互いが離間して対向している。また、弾性係合爪23は、ガイド部22から内装部品本体10側に延在している。そして、一対の弾性係合爪23のそれぞれが、内装部品本体10と、ガイド部22を矩形状に構成する四辺のうちの脚部21が形成されていない対向する二辺との間を繋いでいる。なお、弾性係合爪23は、内装部品本体10と直接連結しないようにして、内装部品本体10とガイド部22との間で支持されなくてもよく、ガイド部22を矩形状に構成する四辺のうちの脚部21が形成されていない対向する二辺に対して片持ち支持されてもよい。
【0016】
スリット24は、脚部21と弾性係合爪23との間に設けられている。
図9等に示されるように、本実施形態において、取付構造20は、スリット24を四箇所に有している。
スリット24により、隣接するスリット24の間に形成される弾性係合爪23の弾性変形をしやすくでき、スリット24の長さや幅を調節することにより、弾性係合爪23の係合孔200aへの挿入性及び係合性の両方を考慮して、弾性係合爪23の弾性率を適切に設定できる。
【0017】
そして、係合孔200aに取付構造20を挿入して係合する際、詳細には、まず、ガイド部22を係合孔200aに挿入する。そのまま挿入していくと、係合孔200aの内寸法より大きな外寸法を有する一対の弾性係合爪23が、係合孔200aからの反力を受けて弾性変形し、内側に変形していく。続いて、一対の弾性係合爪23は、係合孔200aを通過すると、弾性により、外側に変形し、元の形状に戻る。形状が元に戻ると、係合孔200aの内寸法より、一対の弾性係合爪23の外寸法の方が大きくなり、弾性係合爪23が係合孔200aに係合される。このようにして、係合孔200aに対して、取付構造20が係合される。
【0018】
次に、
図8を用いて、キッキングプレート100の取付構造20を射出成形によって形成する際の脱型方法(製造方法)について説明する。
図8(b)及び
図8(d)に示すように、取付構造20と内装部品本体10とを備えるキッキングプレート100を一体成形によって形成するには、まず、上下方向Zに互いに向かい合う内型Pと外型Qに加えて、取付構造20の外形状を形成するための長手方向Xに互いに向かい合う一対のスライド型L,Rによって囲まれた、キッキングプレート100の形状に対応するキャビティを形成する。
具体的には、取付構造20の外形状を形成するための一対のスライド型L,Rを設置する(スライド型設置ステップ)。
次に、取付構造20の内形状を形成するための内型Pを設置する(内型設置ステップ)。
この際、内型Pとスライド型Lとは接しており、同様に、内型Pとスライド型Rとは接しているので、接している部分には溶融樹脂が充填されず、内型P、外型Q及び一対のスライド型L,Rを脱型すると、接している部分がスリット24となる。
なお、キッキングプレート100を一体成形によって形成するにあたり、内型P及び外型Qのみならず、一対のスライド型L,Rを要する理由は、内型P及び外型Qのみだと、弾性係合爪23の膨出部23gと内装部品本体10との間の窪みK(
図8(d)参照)及びガイド部22と内装部品本体10との間にあるスリット24を形成できないからである。
【0019】
次に、一対のスライド型L,Rと内型Pとの間に形成されるキャビティに、キッキングプレート100を成す溶融樹脂を射出して充填した後(射出ステップ)、溶融樹脂が固まるまでこの状態を保持する。
【0020】
溶融樹脂が固まった後、内型Pと外型Qを、内型Pと外型Qとが互いに離れる方向、すなわち、上下方向Zにおいて互いに反対方向に移動させて脱型する。なお、外型Qを脱型するタイミングは、一対のスライド型L,Rを脱型するタイミングより後であってもよい。
【0021】
続いて、一対のスライド型L,Rを、スライド型Lとスライド型Rとが互いに離れる方向、すなわち、離間方向Yに対して直交する方向である長手方向Xにおいて互いに反対方向に平行移動させて脱型する。
【0022】
すると、一対のスライド型L,R及び内型Pから取付構造20が脱型され(脱型ステップ)、内装部品本体10と取付構造20とが一体となったキッキングプレート100が形成される。
【0023】
図9(a)は
図5におけるE矢視断面図であり、
図8(b)における取付構造20の断面のみを示したものである。
図9(b)はE矢視断面図に対応する第1変形例における断面図であり、
図9(c)はE矢視断面図に対応する第2変形例における断面図であり、
図9(d)はE矢視断面図に対応する第3変形例における断面図である。
ここで、
図9(a)に示すように、取付構造20を構成する一対の弾性係合爪23における離間方向Y(一方の弾性係合爪23と他方の弾性係合爪23とが向かい合う方向)の間隔αは、脚部21における離間方向Yの寸法βと等しくなっている。すなわち、α=βとなっている。
図9(b)に示す第1変形例も同様に、α=βとなっている。
また、
図9(c)に示す第2変形例及び
図9(d)に示す第3変形例のように、α>βとしてもよい。
つまり、間隔αは、脚部21における離間方向Yの寸法β以上(α≧β)となっている。これにより、
図8に示すように、スライド型L,Rを脱型する際の移動方向を、離間方向Yとせずに、離間方向Yと交差する方向である長手方向Xにしても、スリット24を形成でき、窪みkを形成できる。
【0024】
離間方向Yは、内装部品本体10の短手方向(
図2参照)である。言い換えると、一対の弾性係合爪23が離間する方向(
図5や
図8における離間方向Y)を、内装部品本体10の短手方向と一致するようにしている。これにより、取付構造20の離間方向Yにおける取付構造20と重なる範囲に、内装部品本体10の縁部に形成されたフランジ等の内装部品本体10の下面から突出する干渉物があっても、スライド型L,Rを離間方向Yにスライドさせて脱型する必要がなく、スライド型L,Rを長手方向Xにスライドさせて脱型でき、スライド型L,Rが干渉物に干渉しないので、取付構造20を内装部品本体10の縁部に設けられる。
【0025】
ところで、
図4に示すように、内装部品本体10は、複数の取付構造20を有する。また、例えば、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、取付構造20の配置は、自由に設定できる。
【0026】
図10(a)は、取付構造20が同一仮想直線上に並んで配置されたキッキングプレート100の一部を下方から見た図である。
図10(b)は、取付構造20が千鳥状に配置されたキッキングプレート100の一部を下方から見た図である。なお、
図10(a)及び
図10(b)において、取付構造20は構造の詳細が省略されて点で示されている。
【0027】
つまり、取付構造20は、上述のように、スライド型L,Rを長手方向Xにスライドさせて脱型することにより製造できるので、内装部品本体10に対する取付構造20の配置設計の自由度が高まり、
図10(b)に示すように、内装部品本体10の長手方向Xに沿う直線状の仮想中立線Jより一方側Mと他方側Nとにそれぞれ偏心するように配置できる。これにより、特に、
図10(a)に示すように同一仮想直線上に取付構造20を並べて配置したキッキングプレート100に比べて、複数の取付構造20の総合力によって長手方向X回りの回転変形に対する剛性が高まり、ドアサイドシルパネル200(車体)に対するキッキングプレート100の支持剛性を高められる。
【0028】
さらに、
図10(b)に示すように、取付構造20は、千鳥状に配置されてもよく、内装部品本体10の長手方向Xに沿う仮想中立線Jより一方側Mに偏心する偏心量mの合計Σm(=m1+m2)と、他方側Nに偏心する偏心量nの合計Σn(n1+n2)とが等しくなるように配置することが好ましい。これにより、ドアサイドシルパネル200(車体)に対するキッキングプレート100の支持剛性を、一部に偏ることなく、全体的にバランス良く高められる。
【0029】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明に係るキッキングプレート100は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変化が可能である。
【0030】
本発明によれば、キッキングプレート100が、内装部品本体10と、内装部品本体10をドアサイドシルパネル200(車体)に取り付けるための取付構造20と、を備え、取付構造20は、内装部品本体10から立設する脚部21と、脚部21の先端に設けられるガイド部22と、ガイド部22から内装部品本体10側に延在し、互いに離間して対向する一対の弾性係合爪23と、脚部21と弾性係合爪23との間にスリット24を有し、一対の弾性係合爪23における離間方向Yの間隔αは、脚部21における離間方向Yの寸法β以上であるので、スライド型L,Rを内装部品本体10の長手方向Xに平行移動して脱型させて取付構造20を形成できる。よって、内装部品本体10における設計の自由度を高めて内装部品本体10自体の剛性を高めることができる。また、内装部品本体10に対する取付構造20の配置設計の自由度を高めてドアサイドシルパネル200(車体)に対するキッキングプレート100の支持剛性を高めることができる。