(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6665384
(24)【登録日】2020年2月25日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】車両バックドア用ラッチ装置
(51)【国際特許分類】
E05B 83/18 20140101AFI20200302BHJP
E05B 79/04 20140101ALI20200302BHJP
E05B 81/14 20140101ALI20200302BHJP
E05B 85/02 20140101ALI20200302BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20200302BHJP
E05B 83/26 20140101ALN20200302BHJP
【FI】
E05B83/18
E05B79/04
E05B81/14
E05B85/02
B60J5/10 H
!E05B83/26
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-118716(P2016-118716)
(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-223034(P2017-223034A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2018年11月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】田村 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】竹中 寿夫
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−182400(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0239124(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカ(12)と係合するラッチ(26)と;前記ラッチ(26)と係合して前記ラッチ(26)と前記ストライカ(12)との係合状態を保持するとラチェット(28)と;回転すると前記ラチェット(28)を前記ラッチ(26)から離脱させる出力部材(54)と;前記出力部材(54)を回転させるモータ(51)と;前記ラチェット(28)を前記ラッチ(26)から離脱させる手動オープンレバー(37)とを備えた車両バックドア用ラッチ装置において、
前記出力部材(54)の近傍にはブロック位置と非ブロック位置に変位し前記ブロック位置にあると前記出力部材(54)との当接により前記出力部材(54)のリリース回転を規制するブロックレバー(58)を設け;
前記ブロックレバー(58)は前記ラッチ(26)との当接により前記ラッチ(26)が開扉位置に至ると前記ブロック位置に変位する構成とし;
前記モータ(51)は前記バックドアのインナー金属パネル(15C)とアウター金属パネル(15A)との間のドア内部(25)に配置し;
前記手動オープンレバー(37)は前記バックドアのライニングパネル(15B)と前記インナー金属パネル(15C)との間に配置した車両バックドア用ラッチ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ラチェット(28)を軸止するラチェット軸(29)の軸芯と前記出力部材(54)を軸止する支持軸(55)の軸芯は平行に設定した車両バックドア用ラッチ装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ブロックレバー(58)はブロックスプリング(60)により前記ブロック位置に向けて付勢させた車両バックドア用ラッチ装置。
【請求項4】
ストライカ(12)と係合するラッチ(26)と;前記ラッチ(26)と係合して前記ラッチ(26)と前記ストライカ(12)との係合状態を保持するとラチェット(28)と;回転すると前記ラチェット(28)を前記ラッチ(26)から離脱させる出力部材(54)と;前記出力部材(54)を回転させるモータ(51)と;前記ラチェット(28)を前記ラッチ(26)から離脱させる手動オープンレバー(37)とを備えた車両バックドア用ラッチ装置において、
前記出力部材(54)の近傍にはブロック位置と非ブロック位置に変位し前記ブロック位置にあると前記出力部材(54)との当接により前記出力部材(54)のリリース回転を規制するブロックレバー(58)を設け;
前記ブロックレバー(58)は前記ラッチ(26)との当接により前記ラッチ(26)が開扉位置に至ると前記ブロック位置に変位する構成とし;
前記ラチェット(28)には前記出力部材(54)と当接する先端部(57)を設けた車両バックドア用ラッチ装置。
【請求項5】
請求項4において、前記先端部(57)は前記ラチェット(28)を軸止するラチェット軸(29)と前記出力部材(54)を軸止する支持軸(55)との間に配置した車両バックドア用ラッチ装置。
【請求項6】
請求項4又は5において、前記出力部材(54)の一方側面には前記ラチェット(28)と当接する押圧部(56)を、他方側面には前記ブロックレバー(58)と当接するストッパー(64)を設けた車両バックドア用ラッチ装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項において、前記ブロックレバー(58)はブロックスプリング(60)により前記ブロック位置に向けて付勢させた車両バックドア用ラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ動力による開扉作動可能な車両バックドア用ラッチ装置に関するものであり、特に、その小型化・軽量化・低コスト化において改良したラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のバックドア(トランクドア)用ラッチ装置は、車体に固定されたストライカと係合してバックドアを閉扉状態に維持するラッチ・ラチェットからなる噛合機構と、ストライカと噛合機構との係合状態をモータ動力で解除してバックドアを開扉可能とするアクチュエータ機構と、トランクキーシリンダやトランクオープナー等の手動開扉手段による開扉操作により噛合機構を開放して開扉可能にする手動オープン機構とを備えている(特許文献1〜4)。
また、手動オープン機構の一部は、非常操作ノブとして、トランクルーム側に露出させ、トランクルーム内からでも非常開扉操作可能になっている。
バックドアは、通常、車外に面するアウター金属パネルと、車内に面するライニングパネルと、両パネルの間に位置するインナー金属パネルとからなる3重構造で(特許文献3の
図1参照)、公知のバックドア用ラッチ装置は、バックドアの形状に合わせて、車両を基準とした側方視において、上下の中央で屈曲或いは傾斜した形状を呈している(特許文献1の
図6、特許文献2の
図2、特許文献3の
図1、特許文献4の
図6参照)。
つまり、アクチュエータ機構や手動オープン機構が配設されるラッチ装置の上部側は、インナー金属パネルの車内側面に固定されため、車両上下方向に対してほぼ並行に延在するが、噛合機構が配設されるラッチ装置の下部側は、バックドアを開閉する際に車体に固定されたストライカに対して円滑に噛合・開放できるようにラッチ装置の上部側に対して約45度程度傾斜させてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−047521号公報
【特許文献2】特開2015−209642号公報
【特許文献3】特開2001−182400号公報
【特許文献4】米国特許第7111877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知のように、ラッチ装置を側方視上で屈曲形成すると、噛合機構の回転軸芯と、アクチュエータ機構や手動オープン機構の回転軸芯とは約45度ずれて非平行となるから、アクチュエータ機構や手動オープン機構から噛合機構への駆動力伝達に効率ロスが生じやすく、また、駆動力伝達経路も長くなり、ラッチ装置の小型の支障になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
よって、本発明は、ストライカ12と係合するラッチ26と;前記ラッチ26と係合して前記ラッチ26と前記ストライカ12との係合状態を保持するとラチェット28と;回転すると前記ラチェット28を前記ラッチ26から離脱させる出力部材54と;前記出力部材54を回転させるモータ51と;前記ラチェット28を前記ラッチ26から離脱させる手動オープンレバー37とを備えた車両バックドア用ラッチ装置において、前記出力部材54の近傍にはブロック位置と非ブロック位置に変位し前記ブロック位置にあると前記出力部材54との当接により前記出力部材54のリリース回転を規制するブロックレバー58を設け;前記ブロックレバー58は前記ラッチ26との当接により前記ラッチ26が開扉位置に至ると前記ブロック位置に変位する構成とし;前記モータ51は前記バックドアのインナー金属パネル15Cとアウター金属パネル15Aとの間のドア内部25に配置し;前記手動オープンレバー37は前記バックドアのライニングパネル15Bと前記イン
ナー金属パネル15Cとの間に配置した車両バックドア用ラッチ装置としたものである。
また、本発明は、ストライカ12と係合するラッチ26と;前記ラッチ26と係合して前記ラッチ26と前記ストライカ12との係合状態を保持するとラチェット28と;回転すると前記ラチェット28を前記ラッチ26から離脱させる出力部材54と;前記出力部材54を回転させるモータ51と;前記ラチェット28を前記ラッチ26から離脱させる手動オープンレバー37とを備えた車両バックドア用ラッチ装置において、前記出力部材54の近傍にはブロック位置と非ブロック位置に変位し前記ブロック位置にあると前記出力部材54との当接により前記出力部材54のリリース回転を規制するブロックレバー58を設け;前記ブロックレバー58は前記ラッチ26との当接により前記ラッチ26が開扉位置に至ると前記ブロック位置に変位する構成とし;前記ラチェット28には前記出力部材54と当接する
先端部57を設けた車両バックドア用ラッチ装置としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本願発明の請求項
1に係る発明では、モータ51の収容スペースをインナー金属パネル15Cより車外側に設定できるため、ライニングパネル15Bをインナー金属パネル15Cに近接配置してトランクルームの容積確保を図れる。
本願発明の請求項2に係る発明では、駆動力の伝達効率に優れたものになる。
本願発明の請求項3および請求項
7に係る発明では、ブロックスプリング60は、ブロックレバー58をがたつき無くブロック位置に保持できると共に、ブロックレバー58を非ブロック位置に変位させる際の動力に、ラッチ26の閉扉回転力を使用するので、ラッチ26の閉扉回転力を効率よく吸収でき、良好な閉扉音を期待できる。
本願発明の請求項
4に係る発明では、ラチェット28には出力部材54と当接する
先端部57を直接設けることができるため、ラチェット28自体の小型化が期待でき、また、ラチェット28と出力部材54との間隔を短くできるため、全体の小型化に寄与できる。
本願発明の請求項
5に係る発明では、ラチェット28は支持軸55と干渉することなく回転できる。
本願発明の請求項
6に係る発明では、出力部材54を挟んで両側にラチェット28およびブロックレバー58をそれぞれ配置できるので、全体をコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る車両バックドア用ラッチ装置と車両バックドアの縦断側面図である。
【
図2】ラッチ装置のラッチユニットの正面側斜視図である。
【
図3】ラッチユニットからカバーケースを外した状態の正面側斜視図である。
【
図4】ラッチユニットのリリースアクチュエータ機構と噛合機構の正面図である。
【
図5】閉扉状態におけるリリースアクチュエータ機構と噛合機構の正面図である。
【
図6】開扉状態におけるリリースアクチュエータ機構と噛合機構の正面図である。
【
図7】ラッチユニットの手動オープンレバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明によるバックドア用ラッチ装置10の一実施形態を図面により説明する。ラッチ装置10は、ラッチユニット11と、ラッチユニット11と係合するストライカ12とから構成される。ラッチユニット11は、車体に蝶番を介して取付けられるバックドア(トランクドア、ラゲージドア)13に固定され、ストライカ12は車体14に固定される。
【0009】
バックドア13は、外部(車外)に面するアウター金属パネル15Aと、トランクルーム(カーゴルーム)等の室内に面するライニングパネル15Bと、アウター金属パネル15Aとライニングパネル15Bとの間のインナー金属パネル15Cとを備える。
【0010】
ラッチユニット11のメインハウジング16は3つの区画に大別され、その第1は、噛合ハウジング17であり、ストライカ12と係合する噛合機構(ラッチ・ラチェット機構)18が収納される。第2はアクチュエータハウジング19であり、ストライカ12と噛合機構18との係合をモータ動力で解放するリリースアクチュエータ機構20が収納される。第3は、手動オープン機構21を収納する手動操作ハウジング22となる。
【0011】
各ハウジング17、19、22はベースプレートとカバーケースとを組み合わせて形成される。噛合ハウジング17のベースプレート23は、好適には金属製で、インナー金属パネル15Cにボルト等により固定される取付ブラケット24を一体形成している。その他のベースプレートとカバーケースは軽量化を図るため好適には合成樹脂製となる。
【0012】
噛合ハウジング17とアクチュエータハウジング19とは直列的に配置して同一平面上に伸びると共に、アクチュエータハウジング19は後方に延在させて、インナー金属パネル15Cを介してインナー金属パネル15Cとアウター金属パネル15Aとの間のドア内部25に配置させる。これにより、アクチュエータハウジング19の収容スペースをインナー金属パネル15Cより車外側に設定できるため、ライニングパネル15Bをインナー金属パネル15Cに近接配置してトランクルームの容積確保を図れる。また、手動操作ハウジング22は、噛合ハウジング17とアクチュエータハウジング19の境界部付近から両ハウジング17、19に対して起立させた後、約45度上方に傾斜させてインナー金属パネル15Cの室内側面に沿わせている。このため、ライニングパネル15Bとインナー金属パネル15Cとの間のスペースをより小さくできる。
【0013】
ラッチユニット11(噛合ハウジング17)のベースプレート23には、ストライカ12と係合可能なラッチ26がラッチ軸27により支持され、また、ラッチ26と係合することによりラッチ26とストライカ12との係合を保持するラチェット28がラチェット軸29により支持される。ラッチ26はラッチバネ30により
図3において反時計回転方向に付勢され、ラチェット28はラチェットバネ31により時計回転方向に付勢される。なお、
図5、6は、
図3を裏側から見た状態を示しており、ラッチ26およびラチェット28はそれぞれ付勢方向が反対になる。
【0014】
バックドア13を閉扉方向に移動させると、ストライカ12はオープン位置のラッチ26(
図6参照)の凹部32に係合してラッチ26をラッチバネ30に抗して回転させ、ラッチ26がラッチ位置まで回転すると、
図3、5のように、ラッチ26のラッチ段部33にラチェット28の係合爪34が係合し、これにより、ラッチ26とストライカ12との係合状態が維持され、閉扉状態が保持される。
【0015】
ラッチ26およびラチェット28は、好適には、噛合ハウジング17
のカバーケース35により一部を除いてカバーされる。カバーケース35は、噛合ハウジング17および手動操作ハウジング22のカバーケースを兼ねており、側面視L型若しくはS型に類似した形状を呈している。
【0016】
図3に示したように、手動操作ハウジング22のベースプレート36には、手動オープン機構21の手動オープンレバー37(
図7)が、枢軸38により軸止される。なお、ベースプレート36は噛合ハウジング17のベースプレート23に対して約45度傾斜しているため、枢軸38はラチェット軸29に対して同程度傾斜している。
【0017】
手動オープンレバー37の上方延在部39は、実施例においては、二重構造になっていて、その正面側レバー部には連結スロット40を形成し、キーシリンダ(手動開扉手段)に至る連結具41を連結し、また、背面側レバー部にはトランクオープナー(手動開扉手段)に至る連結具42を連結している。手動オープンレバー37を収納する手動操作ハウジング22は、ライニングパネル15Bとインナー金属パネル15Cとの間のスペース内に伸びるため、連結具41、42を効率よく配置して手動開扉手段に対して連結できる。
【0018】
手動オープンレバー37には屈曲して下方に伸びる係合アーム43を形成する。屈曲傾斜させた係合アーム43は、噛合ハウジング17のベースプレート23に対して略直交する角度(ラチェット軸29の軸芯に対して略平行)になる。係合アーム43の先端は、ラチェット28の端部からラチェット軸29の軸芯方向に伸びる係合凸部44に対して係合当接可能に対峙させる。
【0019】
図3の閉扉状態の時に、キーシリンダやトランクオープナー等の手動開扉手段による開扉操作で手動オープンレバー37を時計回転させると、係合アーム43の先端が係合凸部44に当接して、ラチェット28を反時計回転させ、これにより、係合爪34がラッチ段部33から離脱してラッチ26が解放され、バックドア13は開扉可能となる。これが、通常時の手動開扉となる。
【0020】
カバーケース35の上部には、トランクルームに向かって突き出る環状フランジ45を設ける。環状フランジ45は、好適には、ライニングパネル15Bに形成した透孔46を介してトランクルーム内に延在させる。環状フランジ45の内側は非常操作孔47として開口させる。
【0021】
手動オープンレバー37の上方延在部39の突起48(
図7)には、非常操作ノブ49を取り付ける。非常操作ノブ49は、環状フランジ45で囲われた非常操作孔47を介してトランクルームに対して露出し、トランクルーム内から操作可能となる。
【0022】
非常操作ノブ49は畜光性質を備え、表面には「OPEN」等の文字や操作方向を示す矢印等の非常用シンボルを表示するのが望ましい。これにより、トランクルーム内に子供等が誤って閉じ込められる事態が発生しても、子供等は畜光材の残光により非常操作ノブ49を容易に認識して、非常操作孔47を介して非常操作ノブ49を手で掴み、シンボル表示に従って非常操作ノブ49を移動させ得る。この非常操作が行われれば、手動オープンレバー37が
図3の状態から時計回転して、係合アーム43の先端が係合凸部44に当接し、ラチェット28を反時計回転させることができ、ラッチ26は解放されバックドア13は開扉可能となる。これが、非常時の手動操作による開扉となる。
【0023】
アクチュエータハウジング19は、ベースプレート50Aとカバーケース50Bとを備えている。カバーケース50Bは
図1に示したように噛合ハウジング17のベースプレート23に対して平行に延在し、好適には連続平面に設定されている。ベースプレート50Aは、手動操作ハウジング22のベースプレート36と一体形成可能である。
【0024】
アクチュエータハウジング19にはリリースアクチュエータ機構20のモータ51が固定され、モータ51の出力軸52にはウォームギヤ等のギヤ53が固定され、ギヤ53にはウォームホイール等の円形出力部材54を噛合させる。出力部材54はアクチュエータハウジング19の支持軸55に軸止する。支持軸55の軸芯は、ラッチ軸27およびラチェット軸29の軸芯と平行に設定する。出力部材54は、モータ51の動力でラチェット28をラッチ26から離脱させて開扉可能状態にするものであるが、出力部材54にはモータ51がオフになったときに出力部材54を中立位置や初期位置に復帰させるリターンスプリングは付加されていない。つまり、出力部材54はモータ51が通電されると
図4で時計回転し、非通電となると減速機構のギア抵抗でその場に保持される。
【0025】
図5、6に示したように、出力部材54の裏面には、回転中心部からやや前進角を持って半径方向に伸びる押圧部56を形成する。
図5の閉扉状態において、出力部材54がモータ51の動力で反時計回転(リリース回転)すると、出力部材54の裏面側で出力部材54と重なり合っているラチェット28の先端部57に押圧部56が当接して、ラチェット28をラチェットバネ31の弾力に抗してラチェット軸29を中心に時計回転させ、ラチェット28をラッチ26から離脱させ、バックドア13を開扉可能にする。
【0026】
ラチェット28は、その先端部57が出力部材54に対して直接重合し、出力部材54の押圧部56と直接当接する。このため、ラチェット28と出力部材54との間隔は最短となり、全体の小型化に寄与できる。
【0027】
出力部材54の近傍にはブロックレバー58が配置され、支持軸55と平行のブロック軸59によりベースプレート50Aとカバーケース50Bに軸止される。ブロックレバー58はブロックスプリング60の弾力で、
図5、6において時計回転方向に付勢される。ブロック軸59は、ラッチ軸27と出力部材54の支持軸55との間に配置され、ブロックレバー58は、モータ51側に伸びる当接レバー61と、ラッチ26側に伸びる従動レバー62とを備えている。
【0028】
ブロックレバー58は、従動レバー62がラッチ26の外周縁63と当接することにより回転する。従動レバー62は、
図6のようにラッチ26がアンラッチ位置にあると、外周縁63とは当接せず、このため、ブロックレバー58はブロックスプリング60の弾力でブロック位置に保持される。ブロック位置では、当接レバー61の先端は出力部材54の表面側と重合し、出力部材54の表面側に形成したストッパー64に対して係合可能に対峙し、出力部材54のリリース回転を規制する。
【0029】
図6の開扉状態において、バックドア13の閉扉移動により、ストライカ12がラッチ26の凹部32に係合し、ラッチ26を閉扉回転させると、ラッチ26の外周縁63がブロックレバー58の従動レバー62を押圧して、ブロックレバー58を徐々にブロックスプリング60の弾力に抗して反時計回転させる。ラッチ26がラッチ位置に至ると、ラッチ26のラッチ段部33にラチェット28の係合爪34が係合して閉扉が完了すると共に、ブロックレバー58も大きく反時計回転してブロック位置から離脱し、当接レバー61の先端は、出力部材54のストッパー64の回転軌跡上から立ち退き、
図5の閉扉状態となる。
【0030】
なお、ブロックスプリング60は、ブロックレバー58をガタツキ無くブロック位置に保持できると共に、ブロックレバー58を非ブロック位置に変位させる際の動力に、ラッチ26の閉扉回転力を使用するので、ラッチ26の閉扉回転力を効率よく吸収でき、良好な閉扉音を期待できる。
【0031】
図5の閉扉状態では、ブロックレバー58は出力部材54のストッパー64の回転軌跡上から外れているため、モータ51をオンにすると出力部材54はブロックレバー58に影響されずに反時計回転(リリース回転)し、出力部材54の押圧部56が出力部材54と重なり合っているラチェット28の先端部57に当接する。これにより、ラチェット28は時計回転してラッチ26から離脱し、バックドア13は開扉可能になる。これが、リリースアクチュエータ機構20による動力開扉である。
【0032】
バックドア13が開扉によりラッチ26がフルラッチ位置(
図5)からアンラッチ位置(
図6)に開扉回転すると、ラッチ26の外周縁63はブロックレバー58の従動レバー62に対する押圧を徐々に解除することになり、ブロックレバー58はブロックスプリング60の弾力によりブロック位置に変位する。ブロックレバー58のブロック位置への変位はごく短時間で完成し、その後も、モータ51による出力部材54のリリース回転は継続され、ブロック位置で待機しているブロックレバー58の当接レバー61に、出力部材54のストッパー64が当接することになる。この当接によるメカロック状態により、出力部材54のリリース回転は停止し、モータ51への通電がオフになる(電源のオフは作動時間による制御)。
【0033】
このように、出力部材54はモータ51の作動後も確実に同じ位置まで360度回転してから停止するから、出力部材54を中立位置に復帰させるリターンバネが不要であり、
部品点数が少なくなり、面倒なバネの組み付け作業を省け、モータ51の回転抵抗を少なくでき、リターンバネの破損による不具合の発生を回避できる等、様々な効果を期待できる。
【0034】
また、出力部材54、ラッチ26、ラチェット28、ブロックレバー58は、同じ方向の回転中心軸にできるので、駆動力の伝達効率に優れる。
【0035】
また、ラッチ26等を支えるベースプレート23は強度的に金属製プレートを使用するが、ベースプレート23に対して同一平面上に配置されるアクチュエータハウジング19のカバーケース50Bは樹脂製とし、樹脂成形可能のカバーケース50Bを強度に影響がでない範囲で広く大きくし、金属製ベースプレート23を狭く小さくすることで、軽量化を計れる。
【符号の説明】
【0036】
10…ラッチ装置、11…ラッチユニット、12…ストライカ、13…バックドア、14…車体、15A…アウター金属パネル、15B…ライニングパネル、15C…インナー金属パネル、16…メインハウジング、17…噛合ハウジング、18…噛合機構、19…アクチュエータハウジング、20…リリースアクチュエータ機構、21…手動オープン機構、22…手動操作ハウジング、23…ベースプレート、24…取付ブラケット、25…ドア内部、26…ラッチ、27…ラッチ軸、28…ラチェット、29…ラチェット軸、30…ラッチバネ、31…ラチェットバネ、32…凹部、33…ラッチ段部、34…係合爪、35…カバーケース、36…ベースプレート、37…手動オープンレバー、38…枢軸、39…上方延在部、40…連結スロット、41…連結具、42…連結具、43…係合アーム、44…係合凸部、45…環状フランジ、46…透孔、47…非常操作孔、48…突起、49…非常操作ノブ、50A…ベースプレート、50B…カバーケース、51…モータ、52…出力軸、53…ギヤ、54…出力部材、55…支持軸、56…押圧部、57…先端部、58…ブロックレバー、59…ブロック軸、60…ブロックスプリング、61…当接レバー、62…従動レバー、63…外周縁、64…ストッパー。