(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
「第一の実施形態」
本発明の第一の実施形態の難燃性吸音材は、中層と、該中層の少なくとも一方の面に設けられた表面層とからなるシート状の難燃性吸音材である。
【0009】
[中層]
中層は、難燃剤粒子と、中空管状および捲縮状の少なくとも一方の形態を有する繊維(α)を40質量%以上含有する原料繊維(a)と、熱融着性繊維(b)とを用いて形成されたエアレイド不織布からなる。難燃剤粒子は中層に難燃性を付与する成分であり、原料繊維(a)は吸音性を担う成分である。また、熱融着性繊維(b)は、原料繊維(a)同士を接合するとともに、原料繊維(a)間に難燃剤粒子を固着するためのバインダー成分である。
【0010】
エアレイド不織布とは、空気流を利用して、不織布を構成する繊維を3次元的にランダムに積層させるエアレイド法によりウェブが形成された不織布である。
原料繊維(a)および熱融着性繊維(b)の積層時に、難燃剤粒子も加えて、エアレイド法によりウェブを形成し、その後、熱処理することにより、原料繊維(a)と熱融着性繊維(b)と難燃剤粒子とが点で接着し、難燃剤粒子が繊維間に分散、保持されたエアレイド不織布が得られる。このようなエアレイド不織布においては、吸音性を担う原料繊維(a)が比較的フリーな状態で存在し、吸音性に優れるとともに、難燃剤粒子による優れた難燃性も得られる。ここで仮に、難燃剤が溶解した難燃剤水溶液に含浸後、乾燥する方法や、難燃剤水溶液をスプレーなどで散布後、乾燥する方法で、エアレイド不織布に難燃性を付与した場合には、原料繊維(a)の自由度が低下し、また、繊維間の空隙が難燃剤により閉塞される。そのため、優れた難燃性は得られても、吸音性が低下する。
【0011】
(難燃剤粒子)
難燃剤粒子は、粒子状で中層中に保持される。難燃剤粒子としては、たとえば、ハロゲン臭素系、水和金属系、酸化アンチモン系、リン系、リン・窒素系縮合物等の難燃剤粒子が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。なかでも難燃剤粒子としては、原料繊維(a)と熱融着性繊維(b)とを含んで形成される中層に対して、難燃性を付与する効果に優れることから、リン・窒素系縮合物を含有する難燃剤粒子が好ましい。リン・窒素系縮合物を含有する難燃剤粒子は、炎熱によるチャー生成、リン溶融による原料繊維(a)の表面被覆、発泡チャーの生成、気相におけるラジカルトラップ、窒素ガスによる酸素の希薄化、等を促進させ、難燃性を発揮する。
リン・窒素系縮合物を含有する難燃剤粒子としては、たとえば、丸菱油化工業製の「ノンネンR028−1」が挙げられる。
【0012】
難燃剤粒子の粒子径には特に制限はないが、平均粒子径が10〜500μmの範囲が好ましく、30〜100μmの範囲がより好ましい。平均粒子径が上記範囲内であれば、難燃剤粒子が中層から脱落しにくく、安定に保持されやすい。
なお、本明細書において、平均粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA製 LA−910)での測定値である。
【0013】
(原料繊維(a))
原料繊維(a)は、中空管状および捲縮状の少なくとも一方の形態を有する繊維(α)を40質量%以上含有する。中空管状の形態を有する繊維とは、軸方向に沿う中空部を有する繊維である。捲縮状の形態を有する繊維とは、繊維の少なくとも一部分がクリンプ、カール、スパイラル等により湾曲したり屈曲したりしている繊維である。湾曲、屈曲は、規則性を有していても、有していなくてもよい。
中空管状の形態を有する繊維は、中空部(空隙)を有することにより、騒音、振動を減衰させ、優れた吸音性を奏するものと考えられる。捲縮状の形態を有する繊維は、繊維同士が絡みやすく繊維間に空隙が形成されやすいことにより、優れた吸音性を奏するものと考えられる。
【0014】
原料繊維(a)は、吸音性の点から、繊維(α)を40質量%以上含有し、60質量%以上であることが好ましい。原料繊維(a)は、繊維(α)のみから構成されていてもよい。すなわち、原料繊維(a)は、繊維(α)を100質量%含んでもよい。また、原料繊維(a)は、その他の繊維として、中空管状でも捲縮状でもない、天然繊維または合成樹脂からなるその他の繊維を60質量%以下の範囲で含んでもよく、含む場合には、40質量%以下の範囲で含むことが好ましい。
【0015】
繊維(α)は、中空管状および捲縮状の少なくとも一方の形態を有するものであれば、その材質には制限はなく、天然繊維であっても合成樹脂からなる繊維であってもよい。繊維(α)は1種以上を使用できる。
【0016】
天然繊維としては、パルプ繊維が挙げられる。
パルプ繊維は、不規則に屈曲した形状を有し、捲縮状の形態を有する繊維であるとともに、植物細胞の原形質が占めていた空孔(ルーメン)を有する中空管状の形態を有する繊維でもある。パルプ繊維の形状特性を示す指標として、パルプ繊維の(実繊維長−両端間距離)/(両端間距離)で示されるカール指数や、(繊維壁厚×2)/(ルーメン径)で示されるルンケル比などが知られている。パルプ繊維が化学パルプである場合には、化学処理方法、樹種等によっては、ルーメンがつぶれた扁平形状である場合もあるが、繊維(α)として問題なく使用できる。
【0017】
パルプ繊維としては、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)、ラグパルプ、リンターパルプ、リネンパルプ、楮・三椏・雁皮パルプなどの非木材パルプ、古紙パルプなどのパルプ;これらのパルプを原料パルプとし、該原料パルプを機械的処理により繊維状に解繊したフラッフパルプ;が挙げられる。なかでも、吸音性に優れる点から、フラッフパルプが好ましい。フラッフパルプのなかでは、強度に優れたエアレイド不織布が得られやすい点からは、原料パルプとして針葉樹パルプを用いたフラッフパルプが好ましい。
【0018】
原料パルプのパルプ化法は特に限定されず、公知の方法で得られたものを使用できる。
一般に、フラッフ化する前の原料パルプの含水率は35質量%以下であり、好ましくは10質量%以下、2質量%以上程度である。含水率の低いドライな状態の原料パルプを解繊することにより、繊維間結合しにくく、それ自体が嵩高なパルプが効率的に得られる。
そして、このようなフラッフパルプを用いて製造した不織布は、内部に隙間が生じ、低密度化し、吸音性に優れる傾向にある。
【0019】
原料パルプを機械的処理により解繊する際に用いる装置には特に制限はないが、たとえば紙おむつ等の吸収性材料の製造時等に使用されている公知の解繊機、機械的処理として摩擦力やせん断力を利用する解繊機等を好適に使用できる。具体的には、歯付きシリンダーを有する解繊装置を好適に使用できる(特許第2521577号公報参照)。
機械的処理に供する原料パルプの形状は特に限定されないが、シート状にしたパルプ(いわゆるパルプシート)やシート状に漉き取ったパルプを巻取ロールのような状態にしたものが、取扱いが容易なため好ましい。
【0020】
合成樹脂からなる繊維としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ナイロン(登録商標)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)等からなる繊維が挙げられ、中空管状および捲縮状の少なくとも一方の形態を有する限り、合成樹脂の種類には制限はない。ただし、合成樹脂からなる繊維を使用する場合には、中層の製造工程中に、熱融着性繊維(b)を溶融させて原料繊維(a)および難燃剤粒子を接着する際の熱処理において、溶融しないものを採用する。
【0021】
合成樹脂からなり、中空管状の形態を有する繊維としては、たとえば、熱可塑性樹脂からなる中空管状の繊維前駆体を延伸して細径化する方法;少なくとも中心部と外周部とで成分の異なる繊維前駆体を製造し、該繊維前駆体から中心部の成分を溶解する等して除去し、中空管状とする方法;等で製造したものが挙げられる。中空管状の形態を有する繊維としては、いずれの方法で製造したものも使用できる。中空管状の形態を有する繊維の中空率にも特に制限はない。
【0022】
中空管状の形態を有する市販の繊維としては、たとえば、帝人ファイバー製の中空ポリエステル繊維「エアロカプセル」、旭化成製のポリエステル繊維「ツインエアー」、東レ製の中空ナイロン繊維「ファリーロ」、ダイワボウレーヨン製の扁平中空レーヨン繊維「コロナSBH」、ユニチカ製のポリ乳酸繊維「HP8F」等が挙げられる。
【0023】
合成繊維からなり、捲縮状の形態を有する繊維としては、捲縮のない繊維に対して人工的な手法で捲縮を付与した繊維が使用できる。
繊維に捲縮を付与する方法としては、仮撚り加工、一部に延伸を行う半延伸法のような外力による方法;熱膨張率の異なる複数種の材料を貼り合せるなどして製造された複合繊維に対して、熱処理を行うことによって捲縮させる方法等が挙げられる。なお、元々は捲縮を有していないが、中層を製造する際の熱処理等により捲縮が生じる潜在捲縮繊維も使用できる。
複合繊維には、サイドバイサイド型、芯鞘型、海島型、多層型などがある。熱膨張率の異なる複数種の材料の組合せとしては、PET/PET、PE/PE、PP/PP、PE/PET、PP/PET、PE/PP等が挙げられる。
【0024】
捲縮状の形態を有する市販の繊維としては、たとえば、ユニチカ製の潜在捲縮ポリエステル繊維「C81」、ユニチカ製のポリ乳酸繊維「テラマック」、クラレ製のポリエステル系2成分複合型合成繊維である潜在捲縮繊維「ミクロクリンプ」、ダイワボウポリテック製のポリエステル・ポリオレフィン複合型合成繊維である嵩高繊維「ミラクルファイバーCQ−V」等が挙げられる。
【0025】
合成樹脂からなる繊維(α)の繊度は、0.01〜22dtexであることが好ましく、1〜12dtexであることがより好ましい。繊度が上記範囲の下限値以上であると、中層中に難燃剤粒子を安定に保持しやすく、上限値以下であると、難燃性吸音材の吸音性が優れる傾向がある。
合成樹脂からなる繊維(α)の長さ加重平均繊維長は、エアレイド法によってウェブを形成する際に、繊維が3次元的にランダムに積層し、適度な密度を有し、吸音性に優れるエアレイド不織布が得られやすい点から、1〜30mmであることが好ましく、2〜15mmであることがより好ましい。長さ加重平均繊維長が上記範囲の下限値未満または上限値を超えると、繊維が3次元的には積層しにくく、2次元的に配向する傾向がある。
なお、原料繊維(a)が中空管状でも捲縮状でもない、天然繊維または合成樹脂からなるその他の繊維を含む場合、該繊維の繊度および長さ加重平均繊維長も、それぞれ上述の範囲内であることが好ましい。
【0026】
繊維(α)は、吸音性の点から、捲縮状の形態を有し、かつ、中空管状の形態を有する繊維が好ましく、なかでもコスト等の工業性の点から、パルプ繊維を含むことが好ましく、繊維(α)中パルプ繊維を50質量%以上含むことがより好ましく、パルプ繊維のみを含むことが特に好ましい。
【0027】
(熱融着性繊維(b))
熱融着性繊維(b)は、中層をなすエアレイド不織布を製造する際の熱処理により、少なくとも一部が溶融し、バインダーとして作用するものである。熱融着性繊維(b)としては、融点の異なる2種類の樹脂を複合化させて得られ、繊維が部分的に溶融する芯鞘型構造等の熱融着性繊維が好ましい。芯鞘型構造の熱融着性繊維は、融点の高い樹脂からなる芯の外周上に、融点の低い樹脂からなる鞘が形成された構造を有し、具体的には、融点が異なる2種の樹脂を組み合わせた形態(PET/PET複合繊維、PE/PE複合繊維、PP/PP複合繊維、PE/PET複合繊維、PP/PET複合繊維、PE/PP複合繊維)が挙げられる。
【0028】
熱融着性繊維(b)の市販品としては、たとえば、2成分複合型合成繊維(ESファイバービジョン製の「ESC871」、PE/PP、長さ加重平均繊維長5mm、繊度1.7dtex)、2成分複合型合成繊維(ユニチカファイバーの「メルティ4080Wet」、PET/PET、長さ加重平均繊維長5mm、繊度2.2dtex)、2成分複合型合成繊維(ユニチカ製の「キャスベン#7080」、PET/PET、繊度2.2dtex、長さ加重平均繊維長5mm)等が挙げられる。より高い難燃性が要求される場合には、LOI値の高い「メルティ7080Wet」が好ましい。なお、LOI値とは、難燃性を測る尺度として用いられる数値で、JIS K7201の限界酸素指数において規定されている。
【0029】
熱融着性繊維(b)の繊度は、0.01〜22dtexであることが好ましく、1〜12dtexであることがより好ましい。繊度が上記範囲の下限値以上であると、嵩高く厚みのあるエアレイド不織布とすることができ、上限値以下であると、繊維間の接点を多くしやすいため、吸音性に優れたエアレイド不織布とすることができる。
熱融着性繊維(b)の長さ加重平均繊維長は、エアレイド法によってウェブを形成する際に、繊維が3次元的にランダムに積層し、適度な密度を有し、吸音性に優れるエアレイド不織布が得られやすい点から、1〜30mmであることが好ましく、2〜15mmであることがより好ましい。長さ加重平均繊維長が上記範囲の下限値未満または上限値を超えると、繊維が3次元的には積層しにくく、2次元的に配向する傾向がある。
【0030】
(中層における各成分の含有量、厚み、坪量)
中層における難燃剤粒子の含有量は、中層の質量を100質量%としたときに、10〜50質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましく、15〜25質量%がさらに好ましい。難燃剤粒子の含有量が上記範囲の下限値以上であると、難燃性吸音材の難燃性がより優れる。上記範囲の上限値以下であると、難燃剤粒子が中層から脱落しにくく、安定に保持されやすいとともに、原料繊維(a)および熱融着性繊維(b)の割合が相対的に増加し、難燃性吸音材の吸音性および中層の強度が優れる傾向にある。
中層における原料繊維(a)の含有量は、中層の質量を100質量%としたときに、20〜70質量%が好ましく、50〜70質量%がより好ましく、55〜65質量%がさらに好ましい。原料繊維(a)の含有量が上記範囲の下限値以上であると、難燃性吸音材の吸音性が優れる。上記範囲の上限値以下であると、熱融着性繊維(b)および難燃剤粒子の割合が相対的に増加し、難燃性吸音材の難燃性および中層の強度が優れる傾向にある。
中層における熱融着性繊維(b)の含有量は、中層の質量を100質量%としたときに、5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましく、15〜25質量%がさらに好ましい。熱融着性繊維(b)の含有量が上記範囲の下限値以上であると、中層の強度が優れる。上記範囲の上限値以下であると、原料繊維(a)および難燃剤粒子の割合が相対的に増加し、難燃性吸音材の吸音性および難燃性が優れる傾向にある。
【0031】
難燃性吸音材の厚みを100%としたときの中層の厚みの割合は、70.0〜99.8%であることが好ましく、75.0〜99.0%がより好ましい。中層の厚みの割合が上記範囲内であると、難燃性吸音材の吸音性が充分に得られる。
また、中層の厚みは、2〜50mmが好ましく、4〜40mmがより好ましい。中層の厚みが上記範囲の下限値以上であると、難燃性吸音材の吸音性が充分に得られる。上記範囲の上限値以下であると、難燃性吸音材をコンパクトにできる。
【0032】
中層の坪量は、100〜3000g/m
2が好ましく、450〜2000g/m
2がより好ましい。中層の坪量が上記範囲の下限値以上であると、吸音性に優れた難燃性吸音材を得ることができ、上記範囲の上限値以下であると、コンパクトで実装性に優れた難燃性吸音材とすることができる。
【0033】
[表面層]
表面層は、中層の少なくとも一方の面に設けられる層であって、UL94による難燃性がHF−1以上の多孔質シートからなる。多孔質シートのUL94による難燃性がHF−1以上であると、難燃性吸音材全体としての難燃性が優れる。また、表面層に多孔質シートを用いることにより、騒音、振動が表面層で反射せず、騒音、振動を中層で確実に減衰させることができる。なお、多孔質シートは、詳しくは後述するが、表裏に貫通する微細な空孔を多数有するシートである。
また、表面層は、中層に含まれる難燃剤粒子が難燃性吸音材の外部に脱落すること(「粉落ち」ともいう。)を防止する作用を奏する。表面層は、粉落ちを効果的に防止する観点からは、中層の両面に設けることが好ましいが、たとえば、家電製品等の対象物に直接巻回するようにして難燃性吸音材を設置する場合等には、対象物と接する側の面には、多孔質シートからなる表面層を設けなくてもよい。すなわち、表面層を中層の一方の面に設けるか、または、両面に設けるかは、難燃性吸音材の使用条件、使用形態等に応じて、適宜選択できる。また、難燃性吸音材の一方の面のみに、吸音性を持たせればよい場合には、該一方の面には上述の多孔質シートからなる表面層を設け、他方の面には、UL94による難燃性がHF−1以上の非多孔質シートを設けてもよい。
【0034】
多孔質シートとしては、天然繊維(たとえば、パルプ繊維等。)、合成樹脂(たとえば、PET、PBT等のポリエステル等。)からなる繊維、ガラス繊維等の繊維を用いて製造された不織布、織布、編布;無機繊維紙;等の繊維シート、多数の微細な穴が形成された樹脂シート等が挙げられる。
多孔質シートには、中層に含まれる難燃剤粒子の粉落ちを抑制できるように、難燃剤粒子の粒径に応じて、適切なサイズの空孔が形成されたシートが選択される。たとえば、不織布の場合には、不織布の製法、使用する繊維の繊度などを調整することにより、空孔のサイズを調整できる。
【0035】
多孔質シートは、UL94による難燃性がHF−1以上である限り、難燃剤が付与されたものでも、難燃剤が付与されていないものでもよい。
【0036】
難燃剤の付与方法としては、難燃剤が溶解した難燃剤水溶液中に多孔質シートを含浸後、乾燥する方法;多孔質シートまたは多孔質シートの前駆体に、難燃剤が溶解した難燃剤水溶液をスプレーなどで散布する方法;多孔質シートの製造に使用される成分にあらかじめ難燃剤を練り込むなどして、難燃剤を含ませる方法;多孔質シートの製造時に難燃剤粒子を用い、多孔質シートに難燃剤粒子を含有させる方法;等が挙げられ、これらのうちの1種以上の方法を採用できる。
多孔質シートの前駆体としては、たとえば、エアレイド法により形成され、未だ繊維同士が接合していないウェブ等が挙げられる。
多孔質シートの製造時に難燃剤粒子を用い、多孔質シートに難燃剤粒子を含有させる方法としては、エアレイド法でウェブを形成する際に、繊維とともに難燃剤粒子を用いることにより、エアレイド不織布に難燃剤粒子を含有させる方法が挙げられる。
【0037】
ただし、多孔質シートに難燃剤粒子を含有させる場合において、多孔質シート100質量%中の難燃剤粒子の含有量が10質量%を超えると、該多孔質シートからの難燃剤粒子の粉落ちが顕著となる可能性がある。そのため、多孔質シートに難燃剤粒子を含有させる場合において、多孔質シート100質量%中の難燃剤粒子の含有量は10質量%以下とする。好ましくは5質量%以下であり、0質量%(多孔質シートが難燃剤粒子を含有しない。)であることがより好ましい。
また、多孔質シートが、難燃剤粒子以外の粒子(例えば、着色剤粒子、導電性粒子等。)を含有する場合には、難燃剤粒子と、難燃剤粒子以外の粒子との合計の含有量が、多孔質シート100質量%中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
難燃剤が付与されなくても、UL94による難燃性がHF−1以上を示し得る多孔質シートとしては、たとえば、ガラス繊維を用いた織布、不織布等の繊維シートが挙げられる。
【0039】
表面層に使用される多孔質シートとしては、難燃剤水溶液を用いて難燃性が付与されたエアレイド不織布、メルトブローン不織布などの不織布;難燃剤粒子を10質量%以下の範囲で含有するとともに、難燃剤水溶液を用いて難燃性が付与されたエアレイド不織布;難燃剤が付与されていないガラスクロス;等が好ましい。なお、エアレイド不織布やメルトブローン不織布などの不織布に難燃剤水溶液を用いて難燃性を付与すると、難燃剤が不織布を構成する繊維の一部または全部を被覆する状態や、難燃剤が不織布中でアメーバ状のように存在する状態となる。ここで、「アメーバ状のように存在する」とは、不規則な方向に延びる複数の糸状の突起を有する難燃剤が、不織布を構成する繊維と繊維との間に存在することを意味する。
なかでも、難燃性吸音材のコストを重視する場合には、パルプ繊維を主成分(50質量%超含有。)とするエアレイド不織布に、難燃剤水溶液と、必要に応じて難燃剤粒子を用いて難燃性を付与した多孔質シートが好ましく、より高い吸音性を重視する場合には、難燃剤水溶液を用いて難燃性が付与されたメルトブローン不織布が好ましい。メルトブローン不織布は、該不織布を構成する繊維が細いことに起因して、吸音性に優れるものと考えられる。
【0040】
エアレイド不織布を採用する場合、エアレイド不織布を構成する繊維の繊度および長さ加重平均繊維長は、中層に用いた繊維(α)について記載した繊度および長さ加重平均繊維長と同様の範囲内であることが好ましい。
難燃剤粒子としては、たとえば、中層の説明において例示した難燃剤粒子を使用できる。
難燃剤水溶液としては、たとえば、リン酸グアニジン系難燃剤の水溶液、リン酸グアニル尿素の水溶液、スルファミン酸グアニジンの水溶液等が使用できる。
【0041】
表面層の厚みは、特に制限はないが、0.01〜2.0mmが好ましく、0.05〜1.0mmがより好ましい。表面層の厚みが上記範囲の下限値以上であれば、中層に含まれる難燃剤粒子の粉落ちをより効果的に防止できる。上記範囲の上限値以下であると、難燃性吸音材をコンパクトにできる。
表面層の坪量は、特に制限はないが、10〜100g/m
2が好ましく、20〜60g/m
2がより好ましい。表面層の坪量が上記範囲の下限値以上であれば、中層に含まれる難燃剤粒子の粉落ちをより効果的に防止できる。上記範囲の上限値以下であれば、難燃性吸音材をコンパクトにできる。
【0042】
[難燃性吸音材]
本発明の第一の実施形態の難燃性吸音材は、JIS−L1096:1998によるフラジール通気度が5〜100cm
3/cm
2・s
−1であることが好ましく、5〜60cm
3/cm
2・s
−1がより好ましく、5〜30cm
3/cm
2・s
−1が特に好ましい。フラジール通気度が上記範囲内であれば、対象物からの騒音や振動が、表面層を通り抜け、中層で効果的に減衰されるため、吸音性に優れる。難燃性吸音材のフラジール通気度は、主に、表面層の構成に依存する傾向にある。よって、表面層に用いる多孔質シートを適宜選択することにより、難燃性吸音材のフラジール通気度を上記範囲内に調整できる。難燃性吸音材のフラジール通気度を上記範囲内とするためには、表面層を構成する多孔質シート単独のフラジール通気度が5〜500cm
3/cm
2・s
−1であることが好ましく、5〜200cm
3/cm
2・s
−1がより好ましく、10〜30cm
3/cm
2・s
−1が特に好ましい。
【0043】
難燃性吸音材全体としての厚みは、3〜50mmが好ましく、5〜20mmがより好ましい。
難燃性吸音材全体としての坪量は、吸音性および実装性の両立の点から、100〜5000g/m
2が好ましく、200〜2000g/m
2がより好ましい。
【0044】
中層の両面に表面層を有する3層構成の難燃性吸音材は、次のようにして製造できる。
まず、サクションボックスを有するメッシュコンベア上に、表面層を構成する多孔質シートを繰出し、該多孔質シート上に、粉体接着剤を散布する。ついで、中層を構成する原料繊維(a)と熱融着性繊維(b)と難燃剤粒子とを空気中で均一に混合、解繊し、乾式のエアレイドウェブ形成装置を用いて、多孔質シート上に、中層を構成するエアレイドウェブを形成する。
ついで、該エアレイドウェブ上に、粉体接着剤を散布し、さらにその上に、多孔質シートを積層するように繰出し、熱風乾燥機に導いて、熱融着性繊維(b)の少なくとも一部が溶融し、バインダーとして作用する温度以上に加熱する。
これにより、難燃剤粒子をエアレイドウェブ中に固着すると共に、エアレイドウェブの両面に多孔質シートを接着して、積層体(以下、「積層体S」ともいう。)を形成する。
その後、該積層体Sをさらにプレスロールに通し、所望の坪量、厚み、見掛け密度となるように成型することにより、表面層(I)と表面層(II)との間に中層が形成された3層構成の難燃性吸音材が得られる。
粉体接着剤は、表面層(I)と中層との接着、中層と表面層(II)との接着のために使用される接着剤であって、たとえば、PE、PP、PET、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等からなる粉体を使用できる。
【0045】
中層の一方の面に表面層を有する2層構成の難燃性吸音材は、次のようにして製造できる。
まず、サクションボックスを有するメッシュコンベア上に、表面層を構成する多孔質シートを繰出し、該多孔質シート上に、粉体接着剤を散布する。ついで、中層を構成する原料繊維(a)と熱融着性繊維(b)と難燃剤粒子とを空気中で均一に混合、解繊し、乾式のエアレイドウェブ形成装置を用いて、多孔質シート上に、中層を構成するエアレイドウェブを形成する。
ついで、該エアレイドウェブ上に、粉体接着剤を散布せずにキャリアシートを積層するように繰出し、熱風乾燥機に導いて、熱融着性繊維(b)の少なくとも一部が溶融し、バインダーとして作用する温度以上に加熱する。
これにより、難燃剤粒子をエアレイドウェブ中に固着すると共に、エアレイドウェブの一方の面に多孔質シートが接着し、他方の面にキャリアシートが配置された積層体(以下、「積層体S’」ともいう。)を形成する。
その後、該積層体S’をさらにプレスロールに通し、所望の坪量、厚み、見掛け密度となるように成型し、その後、キャリアシートを剥離することにより、表面層と中層の2層構成の難燃性吸音材が得られる。
【0046】
以上説明したように、本発明の第一の実施形態の難燃性吸音材は、表面層として、難燃剤粒子の含有量が10質量%以下であって、かつ、UL94による難燃性がHF−1以上の多孔質シートを有し、一方、中層として、難燃剤粒子と、中空管状および捲縮状の少なくとも一方の形態を有する繊維(α)を40質量%以上含有する原料繊維(a)と、熱融着性繊維(b)とを用いて形成されたエアレイド不織布を有している。そのため、本発明の第一の実施形態の難燃性吸音材は、吸音性と難燃性に優れ、含有する難燃剤粒子の脱落も抑制されている。
すなわち、中層をエアレイド不織布とすることにより、難燃剤粒子と原料繊維(a)と熱融着性繊維(b)とを点で接着するとともに、難燃剤粒子を繊維間に分散させて保持できる。そのため、吸音性を担う原料繊維(a)が比較的フリーな状態で存在し、吸音性に優れるとともに、難燃剤粒子による優れた難燃性も有する中層を形成できる。また、熱融着性繊維(b)が難燃剤粒子を固着、保持しているため、難燃性粒子の粉落ちも防止できる。
また、このような中層は難燃剤として粒子状の難燃剤粒子を含んでいるため、難燃剤粒子の粉落ちが懸念されるが、本発明の第一の実施形態の難燃性吸音材は、表面層を有しているため、中層に含まれる難燃剤粒子の外部への粉落ちを防止できる。
さらに、表面層は、難燃剤粒子の含有量が10質量%以下であるため、表面層からの粉落ちも抑制されている。また、表面層は、UL94による難燃性がHF−1以上のシートから形成されているため、難燃性吸音材全体としての難燃性もHF−1以上を達成できる。また、表面層をなすシートは、多孔質シートであるため、家電製品等からの騒音、振動を反射せずに、中層において効果的に減衰させることができる。
【0047】
なお、本発明の第一の実施形態の難燃性吸音材は、通常、家電製品に組み込まれ、モータ、コンプレッサ等に巻回したり貼り付けたりする形態で使用されるが、そのような使用形態に限定されない。
【0048】
「第二の実施形態」
本発明の第二の実施形態の難燃性吸音材は、中層と、該中層の一方の面に設けられた表面層(I)と、該中層の他方の面に設けられたゴム層とを備えたシート状の難燃性吸音材である。すなわち、本発明の第二の実施形態の難燃性吸音材は、ゴム層上に、少なくとも中層と表面層(I)とがこの順で積層された積層体であり、前記中層とゴム層との間には表面層(II)がさらに設けられていてもよい。この積層体の具体的な形態としては、たとえば、以下に示す(1)、(2)などが挙げられる。
(1):少なくともゴム層、表面層(II)、中層、表面層(I)がこの順に積層されてなる積層体、すなわち、中層の両面に表面層を有し、かつ一方の表面層の中層とは反対側の面にゴム層を有する層構成の積層体。前記ゴム層は、前記表面層(II)の主面上に直接または接着剤層を介して隣接して配置されている。
(2):少なくともゴム層、中層、表面層(I)がこの順に積層されてなる積層体、すなわち、中層の一方の面に表面層を有し、中層の他方の面にゴム層を有する層構成の積層体。前記ゴム層は、前記中層の主面上に直接または他の層を介して隣接して配置されている。
【0049】
前記(2)の形態における他の層としては、接着剤層、ティシュ層などが挙げられる。
【0050】
なお、本発明の第二の実施形態の難燃性吸音材における中層と各表面層(表面層(I)および表面層(II))は、第一の実施形態における中層と表面層と同じであり、好ましい条件等も同一であるため、説明を省略する。
【0051】
[ゴム層]
ゴム層を構成するゴムとしては、天然ゴムや合成ゴムなどが挙げられる。
合成ゴムとしては、例えばエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、イソブチレン・イソプレンゴム(IIR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム(SR)、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。なかでも、EPDM、IIR、またはこれらの併用が好ましい。
【0052】
ゴム層には、ゴム成分以外の任意成分が含まれていてもよい。
任意成分としては、黒色充填剤(カーボンブラックなど)、白色充填剤(硫酸バリウムなど)等の無機質充填剤;フェノール樹脂、スチレン樹脂等の有機充填剤;炭酸カルシウム等の非補強性充填剤などが挙げられる。
【0053】
ゴム層の厚みは、難燃性吸音材に吸音性だけでなく遮音性を付与するという観点から、0.5mm以上が好ましい。また、前記吸音性や遮音性を付与するだけでなく、切断等の加工をしやすいという観点から、ゴム層の厚みは0.5〜3.0mmがより好ましく、1.0〜2.5mmがさらに好ましい。
【0054】
ゴム層の密度は、難燃性吸音材に吸音性だけでなく遮音性を付与するという観点から、1.0g/cm
3以上が好ましい。また、前記吸音性や遮音性を付与するだけでなく、切断等の加工をしやすいという観点から、ゴム層の密度は1.0〜5.0g/cm
3がより好ましく、1.5〜3.0g/cm
3がさらに好ましい。
【0055】
[難燃性吸音材]
本発明の第二の実施形態の難燃性吸音材におけるゴム層を除いた部分は、JIS−L1096:1998によるフラジール通気度が5〜100cm
3/cm
2・s
−1であることが好ましく、5〜60cm
3/cm
2・s
−1がより好ましく、5〜30cm
3/cm
2・s
−1が特に好ましい。フラジール通気度が上記範囲内であれば、対象物からの騒音や振動が、表面層(I)を通り抜け、中層で効果的に減衰されるため、吸音性に優れる。難燃性吸音材のフラジール通気度は、主に、各表面層の構成に依存する傾向にある。よって、各表面層に用いる多孔質シートを適宜選択することにより、難燃性吸音材のフラジール通気度を上記範囲内に調整できる。難燃性吸音材のフラジール通気度を上記範囲内とするためには、各表面層を構成する多孔質シート単独のフラジール通気度が5〜500cm
3/cm
2・s
−1であることが好ましく、5〜200cm
3/cm
2・s
−1がより好ましく、10〜30cm
3/cm
2・s
−1が特に好ましい。特に、表面層(I)を構成する多孔質シート単独のフラジール通気度は、上記範囲内であることが好ましい。
【0056】
難燃性吸音材全体としての厚みは、3〜55mmが好ましく、5〜25mmがより好ましい。
難燃性吸音材全体としての坪量は、吸音性および実装性の両立の点から、100〜7000g/m
2が好ましく、200〜5000g/m
2がより好ましく、300〜3000g/m
2がさらに好ましい。
【0057】
少なくともゴム層、表面層(II)、中層、表面層(I)がこの順に積層されてなる積層体は、たとえば、次のようにして製造できる。
まず、第一の実施形態と同様にして中層の両面に表面層を接着して積層体Sを形成し、該積層体Sをプレスロールに通し、所望の坪量、厚み、見掛け密度となるように成型し、積層体Tを得る。
ついで、シート状のゴム層の一方の面に接着剤を塗工して接着剤層を形成する。積層体Tの表面層(II)となる一方の表面層と、接着剤層とが隣接するように、接着剤層上に積層体Tを積層する。
ついで、難燃性吸音材の用途に応じた抜き金型を用いてプレス抜き加工を施すことにより、ゴム層、表面層(II)、中層、表面層(I)がこの順に積層されてなる積層体であって、前記ゴム層は前記表面層(II)の主面上に接着剤層を介して隣接して配置された層構成の難燃性吸音材が得られる。
なお、積層体Tの表面層(II)となる一方の表面層の中層とは反対側の面に接着剤を塗工して接着剤層を形成し、この上にゴム層を積層してもよい。
【0058】
接着剤は、表面層(II)とゴム層との接着のために使用されるものであり、接着剤層を形成する。接着剤としては、たとえば、固形ホットメルト系接着剤、溶液系(ラテックスエマルジョン系)接着剤などを使用できる。また、両面テープを用いて表面層(II)とゴム層とを貼り合せてもよい。
固形ホットメルト系接着剤としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)系接着剤、オレフィン系接着剤(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン等の接着剤)などが挙げられる。
溶液系接着剤としては、アクリル樹脂系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤などが挙げられる。
また、接着剤としては、難燃性を有する接着剤が好ましい。難燃性を有する接着剤を用いれば、難燃性吸音材の難燃性がより向上する。
【0059】
接着剤の塗工量(単位面積当たりの固形分量)は、1〜20g/m
2が好ましく、5〜10g/m
2がより好ましい。
なお、接着剤として溶液系接着剤を用いる場合、塗工量は乾燥塗工量とする。
【0060】
少なくともゴム層、中層、表面層(I)がこの順に積層されてなる積層体は、たとえば、次のようにして製造できる。
まず、第一の実施形態と同様にして中層の一方の面に表面層を接着して積層体S’を形成し、該積層体S’をプレスロールに通し、所望の坪量、厚み、見掛け密度となるように成型し、積層体T’を得る。
ついで、シート状のゴム層の一方の面に接着剤を塗工して接着剤層を形成する。積層体T’の中層と、接着剤層とが隣接するように、接着剤層上に積層体T’を積層する。
ついで、難燃性吸音材の用途に応じた抜き金型を用いてプレス抜き加工を施すことにより、ゴム層、中層、表面層(I)がこの順に積層されてなる積層体であって、前記ゴム層は前記中層の主面上に接着剤層を介して隣接して配置された層構成の難燃性吸音材が得られる。
なお、積層体T’の中層の表面層とは反対側の面に接着剤を塗工して接着剤層を形成し、この上にゴム層を積層してもよい。
中層とゴム層とを接着するための接着剤としては、表面層(II)とゴム層とを接着するための接着剤として先に例示したものが挙げられる。
【0061】
以上説明したように、本発明の第二の実施形態の難燃性吸音材は、各表面層として、UL94による難燃性がHF−1以上の多孔質シートを有し、一方、中層として、難燃剤粒子と、中空管状および捲縮状の少なくとも一方の形態を有する繊維(α)を40質量%以上含有する原料繊維(a)と、熱融着性繊維(b)とを用いて形成されたエアレイド不織布を有している。そのため、本発明の第二の実施形態の難燃性吸音材は、吸音性と難燃性に優れる。
また、このような中層は難燃剤として粒子状の難燃剤粒子を含んでいるため、難燃剤粒子の粉落ちが懸念されるが、本発明の第二の実施形態の難燃性吸音材は、表面層(I)を有しているため、中層に含まれる難燃剤粒子の外部への粉落ちを防止できる。
さらに、表面層(I)は、難燃剤粒子の含有量が10質量%以下であるため、表面層(I)からの難燃剤粒子の粉落ちも抑制されている。一方、表面層(II)としても難燃剤粒子の含有量が10質量%以下であれば、ゴム層の接着性が高まる。加えて、ゴム層を接着する前の段階(加工途中)での、表面層(II)からの難燃剤粒子の粉落ちも抑制できる。また、各表面層は、UL94による難燃性がHF−1以上のシートから形成されているため、難燃性吸音材全体としての難燃性もHF−1以上を達成できる。また、表面層(I)をなすシートは、多孔質シートであるため、家電製品等からの騒音、振動を反射せずに、中層において効果的に減衰させることができる。
しかも、本発明の第二の実施形態の難燃性吸音材は、中層の他方の面にゴム層を備えるので、中層が完全に騒音や振動を吸収できずに、騒音や振動の一部が中層を通り抜けてしまったとしても、ゴム層によって騒音や振動は反射されるので、遮音性にも優れる。反射された騒音や振動は中層に戻り、中層において減衰される。
【0062】
なお、本発明の第二の実施形態の難燃性吸音材は、通常、家電製品に組み込まれ、モータ、コンプレッサ等に巻回したり貼り付けたりする形態で使用されるが、そのような使用形態に限定されない。
【0063】
また、本発明の第二の実施形態の難燃性吸音材においては、中層とゴム層との間の表面層(II)はあってもよいし、なくてもよいが、中層とゴム層との間に表面層(II)があれば(たとえば、前記(1)の形態)、ゴム層の接着性が高まる。中層とゴム層との間に表面層(II)がない場合(たとえば、前記(2)の形態)、ゴム層の接着性が不充分となることがある。そのような場合は、上述したように、接着剤層やティシュ層等の他の層を介して、中層とゴム層とを積層することが好ましい。
また、表面層(II)として、難燃剤粒子の含有量が10質量%以下である多孔質シートに代えて、難燃剤粒子の含有量が10質量%を超える多孔質シートを用いてもよい。ただし、ゴム層の接着性や加工途中での表面層(II)からの難燃剤粒子の粉落ちを考慮すると、表面層(II)における難燃剤粒子の含有量は10質量%以下が好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例中、特にことわりのない限り、「部」とは「質量部」を意味し、「%」とは「質量%」を意味する。
また、実施例5は参考例である。
【0065】
<表面層用の多孔質シート>
[多孔質シートA]
本州製紙法のエアレイド法不織布マシンで、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)からなるパルプシートを乾式解繊装置で解繊し、長さ加重平均繊維長2.0mmのパルプ繊維を得た。該パルプ繊維を空気流と共に落下堆積させて、坪量35g/m
2のウェブを形成した。
該ウェブ上に、バインダーとしてEVAエマルジョン(商品名:スミカフレックス752、住友ケムテックス製、不揮発分50%分散液)の50部に、難燃剤であるリン酸グアニジン系難燃剤(商品名:アピノン−307、三和ケミカル製、濃度50%の水溶液)の50部を加えた処理液を、固形分が10.0g/m
2となるようにスプレー散布した後、熱風(雰囲気温度170℃)を通過させ、パルプ繊維相互間を結合させた。
ついで、該ウェブの表裏を反転させ、上記にて処理液をスプレー散布した面の反対面に対して、固形分が10.0g/m
2となるように、上述の処理液をスプレー散布した後、再度、熱風(雰囲気温度170℃)を通過させて、坪量55g/m
2の難燃性乾式エアレイド不織布を得て、これを多孔質シートAとした。
多孔質シートAは、後述の難燃性評価の結果、水平難燃性HF−1であった。
また、JIS−L1096:1998による、フラジール通気度は500cm
3/cm
2・s
−1であった。
【0066】
[多孔質シートB]
リン酸グアニジン系難燃剤溶液(商品名:アピノン−307、固形分濃度50%、三和ケミカル製)を用い、リン酸グアニジン系難燃剤の固形量が7g/m
2となるように、PBTメルトブローン不織布(商品名:クラフレックス、坪量25g/m
2、厚さ0.06mm、クラレ製)に含浸させて付与し、熱風中で乾燥させて、坪量32.0g/m
2の難燃性乾式不織布を得て、これを多孔質シートBとした。
多孔質シートBは、後述の難燃性評価の結果、水平難燃性HF−1であった。また、JIS−L1096:1998による、フラジール通気度は20cm
3/cm
2・s
−1であった。
【0067】
[多孔質シートC]
ガラスクロス(商品名:ガラスクロス、坪量45g/m
2、ユニチカ製)を多孔質シートCとした。
多孔質シートCは、後述の難燃性評価の結果、水平難燃性HF−1であった。
また、JIS−L1096:1998による、フラジール通気度は200cm
3/cm
2・s
−1であった。
【0068】
[多孔質シートD]
多孔質シートAの製造に用いたものと同じ長さ加重平均繊維長2.0mmのパルプ繊維94部と、リン・窒素系縮合物粒子(商品名:ノンネンR028−1、平均粒子径40μm、丸菱油化工業製)の6部とを混合し、空気流と共に落下堆積させて、坪量75.0g/m
2のウェブを形成させた。
該ウェブ上に、多孔質シートAの製造に用いたものと同じEVAエマルジョンの60部に、多孔質シートAの製造に用いたものと同じリン酸グアニジン系難燃剤の水溶液40部を加えた処理液を、固形分が8.0g/m
2となるようにスプレー散布した後、熱風(雰囲気温度170℃)を通過させ、パルプ繊維相互間を結合させた。
ついで、該ウェブの表裏を反転させ、上記にて処理液をスプレー散布した面の反対面に対して、固形分が8.0g/m
2となるように、上述の処理液をスプレー散布した後、再度、熱風(雰囲気温度170℃)を通過させて、坪量91.0g/m
2の難燃性乾式エアレイド不織布を得て、これを多孔質シートDとした。
多孔質シートDは、後述の難燃性評価の結果、水平難燃性HF−1であった。
また、JIS−L1096:1998による、フラジール通気度は400cm
3/cm
2・s
−1であった。
【0069】
[多孔質シートE]
多孔質シートAの製造に用いたものと同じ長さ加重平均繊維長2.0mmのパルプ繊維80部と、多孔質シートDの製造に用いたものと同じリン・窒素系縮合物粒子の20部とを混合し、空気流と共に落下堆積させて、坪量70g/m
2のウェブを形成させた。
該ウェブ上に、多孔質シートAの製造に用いたものと同じEVAエマルジョンの80部に、多孔質シートAの製造に用いたものと同じリン酸グアニジン系難燃剤の水溶液20部を加えた処理液を、固形分が10.0g/m
2となるようにスプレー散布した後、熱風(雰囲気温度170℃)を通過させ、パルプ繊維相互間を結合させた。
ついで、該繊維シートの表裏を反転させ、上記にて処理液をスプレー散布した面の反対面に対して、固形分が10.0g/m
2となるように、上述の処理液をスプレー散布した後、再度、熱風(雰囲気温度170℃)を通過させて、坪量90.0g/m
2の難燃性乾式エアレイド不織布を得て、これを多孔質シートEとした。
多孔質シートEは、後述の難燃性評価の結果、水平難燃性HF−1であった。
また、JIS−L1096:1998による、フラジール通気度は500cm
3/cm
2・s
−1であった。
【0070】
[多孔質シートF]
多孔質シートBの製造に用いたPBTメルトブローン不織布を多孔質シートFとした。
多孔質シートFは、後述の難燃性評価の結果、水平難燃性が不合格であった。
【0071】
[多孔質シートG]
多孔質シートAの製造に用いたものと同じ長さ加重平均繊維長2.0mmのパルプ繊維を、空気流と共に落下堆積させてウェブを形成させた。
該ウェブ上に、多孔質シートAの製造に用いたものと同じEVAエマルジョンを、固形分が4.5g/m
2となるようにスプレー散布した後、熱風(雰囲気温度170℃)を通過させ、パルプ繊維相互間を結合させた。
ついで、該繊維シートの表裏を反転させ、先にEVAエマルジョンをスプレー散布した面の反対面に対して、固形分が4.5g/m
2となるように、EVAエマルジョンをスプレー散布した後、再度、熱風(雰囲気温度170℃)を通過させて、坪量45g/m
2の乾式エアレイド不織布を得て、これを多孔質シートGとした。
多孔質シートGは、後述の難燃性評価の結果、水平難燃性が不合格であった。
【0072】
[実施例1]
多孔質シートAからなる表面層(I)と、多孔質シートAからなる表面層(II)と、原料繊維としてパルプ繊維を用いた中層とを備えた難燃性吸音シートを以下のように製造した。
サクションボックスを有するメッシュコンベア上に多孔質シートA(表面層(I))を繰出し、該多孔質シートA上に、5g/m
2のPET粉体(粉体接着剤)をスプレー装置で散布した。ついで、フラッフパルプ(品番:NB−416、ウェアーハウザー社製)と、熱融着性繊維(PET/PET複合型合成繊維(商品名:キャスベン#7080、ユニチカ製、繊度2.2dtex、長さ加重平均繊維長5mm))と、難燃剤粒子であるリン・窒素系縮合物粒子(商品名:ノンネンR028−1、丸菱油化工業製、平均粒子径40μm)とを、空気中で混合、解繊し、乾式のエアレイドウェブ形成装置を用いて、多孔質シートA上にエアレイドウェブ(中層)を形成させた。
なお、フラッフパルプ、熱融着性繊維および難燃剤粒子は、質量比として、フラッフパルプ:熱融着性繊維:難燃剤粒子=60:20:20となるように混合、解繊し、かつ、形成されるエアレイドウェブの坪量が490g/m
2となるように、用いた。
ついで、該エアレイドウェブ上に、先に使用したものと同じPET粉体(粉体接着剤)を層状散布装置にて散布し、さらにその上に、多孔質シートA(表面層(II))を積層するように繰出し、熱風乾燥機に導いて、熱融着性繊維の鞘が溶融するように、鞘の融点以上に加熱した。
これにより、難燃剤粒子を含有するエアレイドウェブの両面に、多孔質シートAを接着して、積層体Sを形成した。
その後、該積層体Sをさらにプレスロールに通し、表1に示す坪量、厚み、見掛け密度となるように成型し、実施例1の難燃性吸音材を得た。
【0073】
得られた難燃性吸音材について、後述の方法で、フラジール通気度を測定するとともに、難燃性、難燃剤粒子の粉落ち、吸音率(吸音性)を測定、評価した。結果を表1に示す。また、表1に、各層および得られた難燃性吸音材についての、各坪量、厚みを示す。
なお、表面層(I)、(II)の坪量、厚みは実測値である。中層の坪量は、難燃性吸音材の坪量を実測し、その実測値から、表面層(I)、(II)の坪量を差し引いた値である。中層の厚みは、難燃性吸音材の厚みを実測し、その実測値から、表面層(I)、(II)の厚みを差し引いた値である。難燃性吸音材の見掛け密度は、坪量と厚さから計算して求めた。厚さの実測には、アプライト式ダイヤルゲージを用いた(測定子直径:30mm、測定荷重圧:20g/cm
2)。
【0074】
[評価方法]
(フラジール通気度)
JIS−L1096:1998に則って測定した。
なお、実施例10では、多孔質シートA(表面層(II))上にゴム層を積層する前の積層体(後述の積層体T)について測定した。
【0075】
(難燃性(水平難燃試験))
UL94(米国UnderLaboratolies社)の発泡材料の水平難燃試験HF(ISO3582、JIS K6400、ASTM D4986)に則って試験を実施し、HF−1に合格するか否かを試験した。合格の場合、表には「HF−1」と記載した。
具体的には、実施例1で得られた難燃性吸音材を150±1(mm)×50±1(mm)のサイズに裁断し、これを試験片とした。該試験片を水平に保持し、38mm炎を60秒間接炎し、標線間100mmの燃焼速度および燃焼挙動により判定を行った。
試験は、5枚の試験片に対して行い、
(1)5枚のうちの少なくとも4枚の試験片の燃焼時間が2秒以下であること(1枚は、2秒を超えても10秒以下であればよい。);
(2)各試験片の燃焼+グローイング時間が30秒以内であること;
(3)各試験片の破損した長さが60mm以下であること;
(4)滴下物による綿着火はないこと;
のすべてを満たせば、HF−1に合格である。
【0076】
(粉落ち)
実施例1で得られた難燃性吸音材を、その端面(シートの面方向に対して垂直面)が下に向くようにして黒紙の上に10回叩きつけ、黒紙上に脱落した粉(難燃剤粒子)を透明粘着テープで固定した。黒紙上の粉の量を下記の2段階で目視評価した。
○:黒紙上に粉は僅かで、粉を固定した透明粘着テープの粘着性も残っている。
×:黒紙上に粉が多く、固定した透明粘着テープの粘着性が無くなる。
【0077】
(吸音率および吸音性)
JIS A1405−2:2007に則って、3150Hzにおける垂直入射吸音率測定を行った。
なお、材料の吸音率は音が入射する角度によって変化する為、測定方法により吸音率の値は異なる。音響管を用いて音が材料へ垂直に入射する条件で測定した吸音率を「垂直入射吸音率」という。「垂直入射吸音率」は吸音材料の開発や特性の把握などに用いられる。
具体的には、まず、音響管の終端に試料を装着する(試料の背後空気層0mm)。試料の大きさは高音用(500〜6400Hz用)φ29mmとする。ついで、音響管内のスピーカーからノイズ音を放射し、音響管内に音場を生成する。そして、2本のマイクロフォンの音圧信号をFFT分析しマイクロフォン間の複素音圧伝達関数H
12を算出し、該関数から3150Hzにおける「垂直入射吸音率」を算出する。
吸音性は、算出された吸音率に応じて、以下の3段階で評価した。
◎:吸音率が70%以上
○:吸音率が70%未満40%以上
×:吸音率が40%未満
【0078】
[実施例2〜9]
表面層(I)、中層、表面層(II)の構成をそれぞれ表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして難燃性吸音シートを製造し、実施例1と同様の項目について、測定、評価を行った。結果を表1に示す。
なお、実施例2〜5、実施例8および9では、中層の製造に用いる原料繊維として、実施例1で用いたものと同じフラッフパルプを使用した。
実施例6では、中層の製造に用いる中空管状の原料繊維として、ポリ乳酸製中空状繊維(商品名:PLA繊維「HP8F」、繊度:17dtex、長さ加重平均繊維長:5mm、ユニチカ株式会社製)を用いた。
実施例7では、中層の製造に用いる原料繊維として、ポリエステル製潜在捲縮繊維(商品名:潜在捲縮繊維「C81」、繊度:2.2dtex、長さ加重平均繊維長:5mm、ユニチカ株式会社製)を用いた。該潜在捲縮繊維は、中層を形成する際の熱風乾燥機による熱処理により、捲縮が発生する。
【0079】
[比較例1、比較例3〜5]
表面層(I)、中層、表面層(II)の構成をそれぞれ表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、3層構成のシートを製造し、実施例1と同様の項目について、測定、評価を行った。結果を表2に示す。
なお、比較例1では、中層の製造に用いる原料繊維として、中空管状および捲縮状のいずれにも該当しないレーヨンチョップ(商品名:レーヨンチョップ繊維「コロナ」、繊度:1.7dtex、長さ加重平均繊維長:5mm、ダイワボウレーヨン株式会社製)を用いた。
【0080】
[比較例2]
表面層(I)および表面層(II)を具備せず、中層のみからなるシートを以下のように製造した。
サクションボックスを有するメッシュコンベア上に、通気性を有するキャリアシートを繰出し、実施例1と同様にして、フラッフパルプ、熱融着性繊維および難燃剤粒子とを空気中で混合、解繊し、乾式のエアレイドウェブ形成装置を用いて、キャリアシート上にエアレイドウェブ(中層)を形成させた。ついで、この上に別のキャリアシートを重ねた後、熱風乾燥機に導いて、熱融着性繊維の鞘が溶融するように、鞘の融点以上に加熱した。
ついで、プレスロールに通し、表2に示す坪量、厚み、見掛け密度となるように成型し、その後、両面のキャリアシートを剥離して、比較例2のシートを得た。
得られたシートに対して、実施例1と同様の項目について、測定、評価を行った。
結果を表2に示す。
【0081】
[比較例6]
多孔質シートAを10枚積層したものを比較例6のシート(厚み6.0mm、坪量550.0g/m
2、見かけ密度0.092g/cm
3、フラジール通気度80cm
3/cm
2・s
−1)とした。
得られたシートに対して、実施例1と同様の項目について、測定、評価を行ったところ、難燃性はHF−1に合格し、粉落ちも「○」であったが、吸音率は低く、吸音性は「×」であった。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
各実施例の難燃性吸音材は、吸音性と難燃性に優れ、含有する難燃剤粒子の粉落ちも抑制されていた。
これに対して、比較例1のシートは、中層の原料繊維が中空管状および捲縮状のいずれにも該当しないレーヨンチョップであり、吸音性が劣った。比較例2のシートは、一層構成であり、表面層を有しないため、また、比較例3のシートは、表面層(I)が難燃剤粒子を該表面層(I)中10質量%以上含んでいるため、いずれも粉落ちが顕著であった。
比較例4および5の各シートは、表面層(I)の難燃性が不充分であるため、シート全体としての難燃性が劣った。HF−1の難燃性シートのみを重ね合わせた比較例6のシートは、難燃性は充分であったが吸音性は劣っていた。
【0085】
[実施例10]
多孔質シートAからなる表面層(I)と、多孔質シートAからなる表面層(II)と、原料繊維としてパルプ繊維を用いた中層と、ゴム層とを備えた難燃性吸音シートを以下のように製造した。
まず、実施例1と同様にして、難燃剤粒子を含有するエアレイドウェブの両面に、多孔質シートAを接着して積層体Sを形成し、得られた積層体Sをさらにプレスロールに通して加熱成型し、積層体Tを得た。なお、プレスロールに通す際の加熱温度は130℃であった。
ついで、EPDM、IIR、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムから構成されるゴム層(厚さ2mm、密度1.8g/cm
3)の主面上に、SBR系ホットメルト接着剤を塗工量が5g/m
2となるように押し出し塗工(製膜)して接着剤層を形成し、その接着剤層上に前記積層体Tを積層して、積層体Uを得た。なお、接着剤層と積層体Tは、接着剤層の主面と多孔質シートAからなる表面層(II)の主面が隣接するようにして積層した。
これにより、難燃剤粒子を含有するエアレイドウェブの両面に、多孔質シートAを接着し、さらに一方の多孔質シートAの表面にゴム層を接着して、積層体Uを形成した。
その後、該積層体Uを任意の金型を用いてプレス抜き加工することにより、実施例10の難燃性吸音材を得た。
【0086】
得られた難燃性吸音材について、実施例1と同様にしてフラジール通気度を測定するとともに、難燃性、難燃剤粒子の粉落ち、吸音率(吸音性)を測定、評価した。結果を表3に示す。
また、表3に、得られた難燃性吸音材についての坪量、厚み、見掛け密度を示す。
また、後述の方法で、遮音性を評価した。結果を表3に示す。
【0087】
[測定方法]
(遮音性)
遮音性の評価には、垂直入射音響計測(音響管)システムによる吸音率・透過損失計測方法を採用した。計測器としては、リオン株式会社製の「垂直入射 吸音率・透過損失計測システム(9301型)」を用いた。
計測器の所定の場所に難燃性吸音材をセットした。音響管内部の端部に設置されたスピーカーから放射され、難燃性吸音材に入射する音(入射音)を難燃性吸音材の前側(スピーカー側)に設置された2つのマイクロフォンにて測定した。さらに、難燃性吸音材を透過した後の音(透過音)を難燃性吸音材の後側に設置された2つのマイクロフォンにて測定した。入射音および透過音の測定は、JIS A 1405−2(ISO 10534−2:1998)に準拠して測定した。
ついで、専用のソフト(垂直入射・透過損失特性推定ソフト、リオン株式会社製)を用いて測定データのカーブを近似的に表現し、大きな材料サイズで透過損失の質量則カーブを推定計算し、以下の2段階で遮音性を評価した。
○:1/3oct周波数が500〜6000Hzの間での最小値が30dB以下
×:1/3oct周波数が500〜6000Hzの間での最小値が30dB超
【0088】
【表3】
【0089】
実施例10の難燃性吸音材は、吸音性と難燃性に加え、遮音性にも優れ、含有する難燃剤粒子の粉落ちも抑制されていた。