(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6665603
(24)【登録日】2020年2月25日
(45)【発行日】2020年3月13日
(54)【発明の名称】エレベータ用機器の揚重方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20200302BHJP
B66B 11/04 20060101ALI20200302BHJP
【FI】
B66B7/00 K
B66B11/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-49381(P2016-49381)
(22)【出願日】2016年3月14日
(65)【公開番号】特開2017-165504(P2017-165504A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 宗一
【審査官】
羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−169058(JP,A)
【文献】
特開平04−140290(JP,A)
【文献】
特開2015−229570(JP,A)
【文献】
実開昭52−154862(JP,U)
【文献】
実開平01−076880(JP,U)
【文献】
実開昭58−016772(JP,U)
【文献】
実開昭60−016478(JP,U)
【文献】
実開昭55−007801(JP,U)
【文献】
特開昭54−013153(JP,A)
【文献】
実開昭60−177175(JP,U)
【文献】
特開2008−297741(JP,A)
【文献】
特開2005−82391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00− 7/12
B66B 11/00−11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上機支持台が防振装置を介して設置されたマシンビームにエレベータ用機器を設置するためのエレベータ用機器の揚重方法において、
前記エレベータ用機器は、少なくとも巻上機、マシンベッド及びそらせシーブのいずれか一つを含み、
前記エレベータ用機器の揚重装置を前記巻上機支持台に取り付ける工程と、
前記巻上機支持台と前記マシンビームとの間に、本体と前記本体に形成されたフランジ部とサポートブラケットを有する外れ止めの前記本体を、前記フランジ部を介して取り付ける工程と、
前記巻上機支持台の下部に上部が凹んだ前記サポートブラケットを嵌合させる工程と、
前記サポートブラケットを前記フランジ部に固定する工程と、
を有することを特徴とするエレベータ用機器の揚重方法。
【請求項2】
前記巻上機支持台に一対の下梁を取り付ける工程と、
前記下梁にそれぞれ竪柱を取り付ける工程と、
前記竪柱に上梁を取付ける工程と、
長手に沿って移動可能に吊具が設けられているトロリービームを前記上梁に取り付ける工程と、
中央に凹部が形成された支持ブラケットを、前記凹部によって前記巻上機支持台の一部を挟み、且つ前記下梁に固定する工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ用機器の揚重方法。
【請求項3】
前記巻上機支持台は、スペーサビームであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータ用機器の揚重方法。
【請求項4】
前記巻上機支持台は、マシンベッドであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータ用機器の揚重方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの機械室において、巻上機等を揚重するための揚重装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に機械室を有するエレベータでは、機械室の床にマシンビームを固定し、このマシンビームの上にマシンベッドや巻上機を設置している。
従来、経年劣化等により巻上機を交換する場合には、マシンビームは残し、その上のマシンベッドや巻上機を交換する方法が取られることが多い。この場合、巻上機等を揚重する必要があるため、機械室に揚重装置を設置して、揚重を行なっている。
【0003】
従来の揚重装置としては、例えば特許文献1に記載のように、機械室の床に揚重装置を設置し、この揚重装置を使って巻上機等を揚重するものがある。
この場合、機械室内に揚重装置を設置するだけのスペースが必要であり、また、揚重装置の設置位置の床に十分な強度がなければならない。更にマシンビームを跨いで揚重装置を設置するため、揚重装置が大型化するという問題もある。
【0004】
そこで、揚重装置をマシンビームに取り付ける方法が考えられている。マシンビームは既設のものをそのまま残すため、このマシンビームに揚重装置を取り付ければ、機械室内に揚重装置用の大きなスペースを必要とせず、また強度的にも問題はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001―151476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マシンビームに揚重装置を取り付ける方法の場合、マシンビームに揚重装置を設置できるスペースが必要になる。また現場毎に異なるマシンビームの形状や配置のレイアウトに、揚重装置を合わせなければならないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、巻上機支持台が防振装置を介して設置されたマシンビームにエレベータ用機器を設置するためのエレベータ用機器の揚重方法において、前記エレベータ用機器は、少なくとも巻上機、マシンベッド及びそらせシーブのいずれか一つを含み、前記エレベータ用機器の揚重装置を前記巻上機支持台に取り付ける工程と、前記巻上機支持台と前記マシンビームとの間に
、本体と前記本体に形成されたフランジ部とサポートブラケットを有する外れ止め
の前記本体を、
前記フランジ部を介して取り付ける工程と、
前記巻上機支持台の下部に上部が凹んだ前記サポートブラケットを嵌合させる工程と、
前記サポートブラケットを前記フランジ部に固定する工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0008】
また本発明は、
前記巻上機支持台に一対の下梁を取り付ける工程と、前記下梁にそれぞれ竪柱を取り付ける工程と、前記竪柱に上梁を取付ける工程と、長手に沿って移動可能に吊具が設けられているトロリービームを前記上梁に取り付ける工程と、中央に凹部が形成された支持ブラケットを、前記凹部によって前記巻上機支持台の一部を挟み、且つ前記下梁に固定する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
また本発明は、
前記巻上機支持台は、スペーサビームであることを特徴とするものである。
更にまた本発明は、
前記巻上機支持台は、マシンベッドであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来に比べ揚重装置の設置が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態による揚重装置及び各ビームの組立を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態による揚重装置及び各ビームの組立を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態による揚重装置及び各ビームの組立を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態による揚重装置による巻上機の揚重を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図により説明する。本実施の形態では、エレベータ機械室のマシンビームを残し、マシンビームの上に配置されている巻上機等を交換する場合について説明する。
図1〜
図3は本実施の形態による揚重装置及び各ビームの組立を示す説明図であり、各図において(b)が正面図、(a)が(b)の平面図である。
図4は
図3(b)の左側面図、
図5は
図4のA―A断面図であり、奥側に設置されている防振装置は図示省略してある。
図6は揚重装置による巻上機の揚重を示す説明図、
図7は
図6の右側面図、
図8は
図6の平面図である。
【0013】
図1において、1は機械室に固定された既設のマシンビームであり、このマシンビーム1の上に設置されていた巻上機等は撤去されている。この状態において、新設の防振装置2を介して、新設のスペーサビーム3をマシンビーム1の上に設置する。更に、スペーサビーム3の上にマシンベッド4を固定する。
【0014】
次に、
図2に示すように、マシンベッド4を挟むように一対の下梁10a及び10bをスペーサビーム3に取り付ける。この下梁10a及び10bは、マシンベッド4側が開いた断面コ字形をなしており、レールクリップ11によって、スペーサビーム3のフランジ3fに位置調整可能に取り付ける。12は下梁10a,10bに空けた穴であり、マシンベッド4側のレールクリップ11の取り付け作業のためのものである。
更に、各下梁10a,10bの端部をそれぞれ連結バー13aと13bで連結する。
【0015】
次に、
図3〜
図5に示すように、マシンビーム1とスペーサビーム3との間に外れ止め20を設ける。これは、揚重装置の使用時に大きな荷重が掛かった場合でも、スペーサビーム3がずれないようにするための補強である。
【0016】
外れ止め20は、略C字状の本体21と本体21に形成されたフランジ部22を有しており、フランジ部22の下部のボルト23をマシンビーム1のフランジ1fに当接するとともに、フランジ部22の上部のボルト24をスペーサビーム3のフランジ3fに当接することによって、外れ止め20をマシンビーム1とスペーサビーム3に取り付ける。
【0017】
更に、上部が凹んだサポートブラケット25をスペーサビーム3の下部に嵌合して、サポートブラケット25を本体21のフランジ部22に固定する。これは、前記フランジ1f,3fとボルト23,24との当接面が傾斜しているため、使用時にボルト23,24が、
図5の左方にずれて外れる可能性が考えられるため、ボルト23,24のずれを防止したものである。
【0018】
14は中央に凹部15が形成された支持ブラケットであり、凹部15をスペーサビーム3の上部のフランジ3fに挟んで、下梁10aにボルト締めする。これにより、スペーサビーム3と下梁10aのずれを防止する。同様に、下梁10b側にも支持ブラケット14を取り付ける。
【0019】
次に、
図6〜
図8に示すように、下梁10aの両端部に竪柱30a,30bの下端部を固定し、下梁10bの両端部に竪柱30c,30dの下端部を固定する。そして、竪柱30aと30cの上端部を上梁31aで連結し、竪柱30bと30dの上端部を上梁31bで連結する。
【0020】
また、竪柱30a,30bの上部外側に連結材32aを、竪柱30a,30bの上部内側に連結材32bを、互いに交差するように連結して、交差部を締結具(例えばボルト・ナット)33aで連結する。同様に、竪柱30c,30dの上部外側に連結材32cを、竪柱30c,30dの上部内側に連結材32dを、互いに交差するように連結して、交差部を締結具33bで連結する。更に、竪柱と上梁の連結部4箇所にブレースブラケット34を取り付けて補強する。
【0021】
次に、上梁31a及び31bにトロリービーム35を固定する。このトロリービーム35は断面H型をしており、このトロリービーム35に吊具36を取り付ける。この吊具36はトロリービーム35の長手方向(
図6の左右方向)に移動可能である。37a,37bはトロリービーム35と平行に、上梁31a及び31bに固定された揚重アングルである。
【0022】
以上のような手順で、揚重装置がスペーサビーム3上に組み立てられる。
尚、本実施の形態における揚重装置は、下梁10a,10b、レールクリップ11、連結バー13a,13b、支持ブラケット14、外れ止め20、竪柱30a,30b,30c,30d、上梁31a,31b、連結材32a,32b,32c,32d、締結具33a、33b、ブレースブラケット34、トロリービーム35、吊具36及び揚重アングル37a、37bからなっている。
【0023】
上記構成において、巻上機40を据え付ける場合は、
図6の右方の二点鎖線の位置で吊具36によって巻上機40を吊り上げ、マシンベッド4の所定の位置まで移動して、マシンベッド4上に巻上機40を設置し、巻上機40の据え付け後、前記揚重装置を撤去するものである。
しかしながら、巻上機40は大きくて重い場合が多く、機械室や建物への搬入スペース等の問題から、巻上機40を分解して搬入し、機械室内で組み立てる場合が多い。
【0024】
この場合、例えば巻上機40が、モータ部41、巻上機構部42、ブレーキユニット43a、43b、43cに分解されているとすると、吊具36によって、モータ部41、巻上機構部42を順次吊り上げてマシンベッド4上で組み立て、更にブレーキユニット43a、43b、43cを順次吊り上げてマシンベッド4上で組み立てていく。このとき、
図7に示すように、ブレーキユニット43a、43cは、トロリービーム35の直下にはないため、吊具36で吊ると巻上機構部42へのブレーキユニット43a、43cの組み立て作業が難しくなる。
【0025】
そこで、ブレーキユニット43a、43cの直上部に配置された揚重アングル37a、37bを利用して、ブレーキユニット43a、43cを吊ることにより、巻上機構部42へのブレーキユニット43a、43cの組み立て作業が容易に行なえるようにしている。
更に巻上機40がもっと多数に分解されていても同様に行なうことができる。また、ブレーキユニットが巻上機構部42に組み込まれた状態で搬入される場合には、揚重アングル37a、37bは省略することも可能である。
【0026】
本実施の形態は、上記の構成であるから、揚重装置を機械室床やマシンビームに設置することがないため、揚重装置を容易に設置することができる。
【0027】
前記の実施の形態では、
図6に示すように、外れ止め20及び支持ブラケット14は左方にのみ設けているが、これは、吊具36が上梁31aの右方にあるときに、上方への大きな力が掛かるからである。従って、トロリービーム35の突出方向と逆方向にあるスペーサビーム3に、外れ止め20及び支持ブラケット14を設けることになる。
【0028】
また、前記の実施の形態では、下梁10a及び10bとして、マシンベッド4側が開いた断面コ字形の部材を使用しているが、断面コ字形の部材の向きを逆にして、反マシンベッド4側が開いた方向に取り付けることも出来る。更に、下梁10a及び10bは、スペーサビーム3に係止できるものであればよい。
【0029】
更に、前記の実施の形態では、防振装置2として、防振ゴムを挟んだ通常の防振装置を使用しているが、
図9のような形状の防振装置を使用することもできる。この防振装置50は、スペーサビーム3に固定した上板51と、マシンビーム1に固定した下板52の間に防振ゴム53を挟んだ構成のものにおいて、下板52を延長して断面コ字状の係止部54を形成したものである。そして、揚重作業時に、係止部54とスペーサビーム3のフランジ3fの間にフラットバー等を挿入するものである。
この構成であれば、スペーサビーム3の浮き上がりをある程度防止することができる。
【0030】
従って、
図6の左方側のマシンビーム1とスペーサビーム3との間に防振装置50を使用すれば、揚重装置による巻上機40の吊り上げ荷重が小さい場合には、外れ止め20を省略又は外れ止め20の設置数を減らすことができる。
【0031】
また、前記の実施の形態では、スペーサビーム3に揚重装置を設置しているが、スペーサビーム3の代わりにマシンベッド4に揚重装置を設置することも可能である。
【0032】
また前記の実施の形態では、揚重装置によって巻上機40を揚重しているが、巻上機40に限らず、そらせシーブやマシンベッドの揚重も可能である。
尚、前記の実施の形態では、マシンビームを残し、マシンビームの上に配置されている巻上機等を交換する場合、いわゆるリニューアルの場合について説明したが、新設の場合であっても、搬入スペースの問題等により。機械室内で巻上機を組み立てる場合には、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 マシンビーム
2,50 防振装置
3 スペーサビーム
4 マシンベッド
10a,10b 下梁
20 外れ止め
30a,30b,30c,30d 竪柱
31a,31b 上梁
35 トロリービーム
36 吊具
37a,37b 揚重アングル
40 巻上機